特許第6332023号(P6332023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332023
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】有機半導体材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/06 20060101AFI20180521BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20180521BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C07D495/06CSP
   C08G61/12
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 250G
   H01L29/78 618B
   C09K11/06 690
【請求項の数】10
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2014-512539(P2014-512539)
(86)(22)【出願日】2013年4月16日
(86)【国際出願番号】JP2013061701
(87)【国際公開番号】WO2013161728
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-99605(P2012-99605)
(32)【優先日】2012年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】寺井 宏樹
【審査官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−205986(JP,A)
【文献】 特開2009−033067(JP,A)
【文献】 特開2009−009964(JP,A)
【文献】 特開2009−182033(JP,A)
【文献】 特開2011−116964(JP,A)
【文献】 特開2012−036357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08G
C09K
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)で表される化合物。
〔式中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、アルケニル基、またはアルキニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい
およびZは、それぞれ独立に、式(Z−1)〜式(Z−5)で表される基からなる群から選ばれる1種の基を表す。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、式(B−1)〜式(B−8)で表される基からなる群から選ばれる1種の基、ホウ酸残基(−B(OH)で表される基を意味する。)または-SnR(Rは、アルキル基またはアリール基)で表される基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
およびXは、硫黄原子を表す。
およびYは、−CH=で表される基で表される基を表す。〕
〔式中、
Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
〔式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。〕
【請求項2】
式(4)で表される構造単位を含む高分子化合物。
〔式中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、アルケニル基、またはアルキニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい
およびZは、それぞれ独立に、式(Z−1)〜式(Z−5)で表される基からなる群から選ばれる1種の基を表す。
およびXは、硫黄原子を表す。
およびYは、−CH=で表される基を表す。〕
〔式中、
Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【請求項3】
、R、RおよびRが、水素原子である、請求項1または2に記載の化合物または高分子化合物。
【請求項4】
前記Zおよび前記Zが、式(Z−1)で表される基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物または高分子化合物。
【請求項5】
さらに、式(5)で表される構造単位を含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載の高分子化合物。
〔式中、
Arは、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ただし、Arは、前記式()で表される構造単位とは異なる。〕
【請求項6】
前記式(5)で表される構造単位が、式(6)で表される構造単位である、請求項5に記載の高分子化合物。
〔式中、
R’’は、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表す。複数存在するR’’は、同一でも異なっていてもよい。
aおよびbは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。〕
【請求項7】
前記式()で表される構造単位と、前記式(6)で表される構造単位と、の共重合体である、請求項6に記載の高分子化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物または高分子化合物を含有する、有機半導体材料。
【請求項9】
請求項8に記載の有機半導体材料を含有する有機層を有する、有機半導体素子。
【請求項10】
ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極および活性層を有し、該活性層に請求項8に記載の有機半導体材料を含有する、有機トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物および高分子化合物、並びに該化合物または該高分子化合物を含有する有機半導体材料、有機半導体素子および有機トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
有機トランジスタは、低コストであり、また柔軟で折り曲げ可能である等の特性を有する。そのため、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ等の用途に好適であり、近年、注目されている。
【0003】
有機トランジスタは、有機物により構成される電荷(ホールおよび電子を意味し、以下、同様である。)輸送性を有する層を備えており、この有機物としては、主として有機半導体材料が用いられる。
【0004】
有機トランジスタの性能としては、電界効果移動度およびオン/オフ比が重要であり、有機トランジスタに用いる有機半導体材料に大きく依存する。そのため、有機半導体材料には、高い移動度が求められている。また、有機半導体材料が酸化されると、有機トランジスタのオン/オフ比が低下する傾向があるため、酸化に対する安定性も求められている。有機半導体材料のイオン化ポテンシャルが高ければ、酸化に対して安定となる傾向がある。
【0005】
有機トランジスタに用いる有機半導体材料として、高分子化合物であるポリ(3−ヘキシルチオフェン)が提案されており、該高分子化合物を用いた有機トランジスタの電界効果移動度は、10−5〜10−2cm/Vs程度であり、オン/オフ比は、10以下である(非特許文献1)。なお、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)のイオン化ポテンシャルは5.0eV程度で必ずしも高いとはいえず、酸化されやすい傾向にある。
【0006】
また、有機トランジスタに用いる有機半導体材料として、ナフタレン構造、チオフェン構造およびベンゾチアジアゾール構造を有する、下記高分子化合物が提案されており、該高分子化合物を用いた有機トランジスタの電界効果移動度は、0.003cm/Vsである(特許文献1)。
【0007】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第10−1042530号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Applied Physics Letters、1996年、第69巻、4108頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の高分子化合物を用いた有機トランジスタでは、近年求められているような高い電界効果移動度および高いオン/オフ比の双方が達成されているとは言えなかった。
【0011】
そこで本発明は、電界効果移動度およびオン/オフ比の双方に優れる有機トランジスタの製造に有用な化合物および高分子化合物を提供することも目的とする。本発明はまた、該化合物または該高分子化合物を含有する有機半導体材料、有機半導体素子および有機トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の化合物および高分子化合物、並びに、該化合物または該高分子化合物を含有する有機半導体材料、有機半導体素子および有機トランジスタを提供する。
【0013】
[1] 式(1)で表される化合物。
〔式中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH)で表される基を意味する。)または有機スズ残基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
環Aおよび環Bは、それぞれ独立に、複素環を表し、該複素環は置換基を有していてもよい。
およびZは、それぞれ独立に、式(Z−1)〜式(Z−11)で表される基からなる群から選ばれる1種の基を表す。〕
〔式中、
Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
[2] 前記式(1)で表される化合物が、式(2)で表される化合物である、[1]に記載の化合物。
〔式中、
、R、R、R、ZおよびZは、前記と同じ意味を表す。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH)で表される基を意味する。)または有機スズ残基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
およびXは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子を表す。
およびYは、それぞれ独立に、窒素原子または−CR=で表される基を表す。
は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表す。〕
[3] 式(3)で表される構造単位を含む高分子化合物。
〔式中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH)で表される基を意味する。)または有機スズ残基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
環Aおよび環Bは、それぞれ独立に、複素環を表し、該複素環は置換基を有していてもよい。
およびZは、それぞれ独立に、式(Z−1)〜式(Z−11)で表される基からなる群から選ばれる1種の基を表す。〕
〔式中、
Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
[4] 前記式(3)で表される構造単位が、式(4)で表される構造単位である、[3]に記載の化合物。
〔式中、
、R、R、R、ZおよびZは、前記と同じ意味を表す。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH)で表される基を意味する。)または有機スズ残基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
およびXは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子を表す。
およびYは、それぞれ独立に、窒素原子または−CR=で表される基を表す。
は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表す。〕
[5] 前記Xおよび前記Xが、硫黄原子である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の化合物または高分子化合物。
[6] 前記Yおよび前記Yが、−CH=で表される基である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の化合物または高分子化合物。
【0014】
[7] 前記Zおよび前記Zが、式(Z−1)で表される基である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の化合物または高分子化合物。
[8] さらに、式(5)で表される構造単位を含む、[3]〜[7]のいずれか一項に記載の高分子化合物。
〔式中、
Arは、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ただし、Arは、前記式(3)で表される構造単位とは異なる。〕
[9] 前記式(5)で表される構造単位が、式(6)で表される構造単位である、[8]に記載の高分子化合物。
〔式中、
R’’は、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表す。複数存在するR’は、同一でも異なっていてもよい。
aおよびbは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。〕
[10] 前記式(3)で表される構造単位と、前記式(6)で表される構造単位と、の共重合体である、[9]に記載の高分子化合物。
[11] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の化合物または高分子化合物を含有する、有機半導体材料。
[12] [11]に記載の有機半導体材料を含有する有機層を有する、有機半導体素子。
[13] ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極および活性層を有し、該活性層に[11]に記載の有機半導体材料を含有する、有機トランジスタ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の有機トランジスタの一例を示す模式断面図である。
図2】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
図3】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
図4】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
図5】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
図6】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
図7】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
図8】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
図9】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、必要に応じて図面を参照することにより、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
<式(1)で表される化合物>
本発明の化合物は、式(1)で表される化合物である。
【0018】
【0019】
式(1)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH)で表される基を意味する。)または有機スズ残基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0020】
が表すアルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基のいすれでもよく、シクロアルキル基であってもよい。アルキル基が有する炭素原子数は、通常1〜30(分岐アルキル基およびシクロアルキル基の場合、通常3〜30)であり、1〜20(分岐アルキル基およびシクロアルキル基の場合、3〜20)であることが好ましい。なお、上記の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基等の分岐アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
アルキル基は置換基を有していてもよく、アルキル基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているアルキル基の具体例としては、メトキシエチル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0021】
が表すアルコキシ基は、直鎖アルコキシ基、分岐アルコキシ基のいずれでもよく、シクロアルコキシ基であってもよい。アルコキシ基が有する炭素原子数は、通常1〜30(分岐アルコキシ基およびシクロアルコキシ基の場合、通常3〜30)であり、1〜20(分岐アルコキシ基およびシクロアルコキシ基の場合、3〜20)であることが好ましい。なお、上記の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基等の直鎖アルコキシ基、イソプロピルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基等の分岐アルコキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のシクロアルコキシ基が挙げられる。
アルコキシ基は置換基を有していてもよく、アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0022】
が表すアルキルチオ基は、直鎖アルキルチオ基、分岐アルキルチオ基のいずれでもよく、シクロアルキルチオ基であってもよい。アルキルチオ基が有する炭素原子数は、通常1〜30(分岐アルキルチオ基およびシクロアルキルチオ基の場合、通常3〜30)であり、1〜20(分岐アルキルチオ基およびシクロアルキルチオ基の場合、3〜20)であることが好ましい。なお、上記の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、n−オクチルチオ基、n−ドデシルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等の直鎖アルキルチオ基、イソプロピルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基等の分岐アルキルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等のシクロアルキルチオ基が挙げられる。
アルキルチオ基は置換基を有していてもよく、アルキルチオ基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0023】
が表すアリール基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団であり、縮合環を有する基、独立したベンゼン環および縮合環からなる群から選ばれる2個以上が直接結合した基を含む。
アリール基が有する炭素原子数は、通常6〜30であり、6〜20であることが好ましい。なお、上記の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
アリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、4−フェニルフェニル基等が挙げられる。
アリール基は置換基を有していてもよく、アリール基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、1価の複素環基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているアリール基としては、4−ヘキサデシルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。アリール基が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましい。
【0024】
が表す1価の複素環基は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から、環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団であり、縮合環を有する基、独立した複素環および縮合環からなる群から選ばれる2個以上が直接結合した基を含む。1価の複素環基が有する炭素原子数は、通常2〜30であり、3〜20であることが好ましい。なお、上記の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
1価の複素環基の具体例としては、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−チエノチエニル基、4−(2,1,3−ベンゾチアジアゾリル)基等が挙げられる。
1価の複素環基は置換基を有していてもよく、1価の複素環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有している1価の複素環基としては、5−オクチル−2−チエニル基、5−フェニル−2−フリル基等が挙げられる。1価の複素環基が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましい。
【0025】
が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0026】
が表すシリル基は、置換基を有していてもよい。シリル基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。置換基を有しているシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0027】
が表すアミノ基は、置換基を有していてもよい。アミノ基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。置換基を有しているアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0028】
が表すアルケニル基は、直鎖アルケニル基、分岐アルケニル基のいずれでもよく、シクロアルケニル基であってもよい。アルケニル基が有する炭素原子数は、通常2〜30(分岐アルケニル基およびシクロアルケニル基の場合、通常3〜30)であり、2〜20(分岐アルケニル基およびシクロアルケニル基の場合、3〜20)であることが好ましい。なお、上記の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ヘキセニル基、1−ドデセニル基、1−ヘキサデセニル基、1−シクロヘキセニル基等が挙げられる。
アルケニル基は置換基を有していてもよく、アルケニル基が有していてもよい置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、シリル基等が挙げられる。
【0029】
が表すアルキニル基は、直鎖アルキニル基、分岐アルキニル基のいずれでもよい。
アルキニル基が有する炭素原子数は、通常2〜30(分岐アルキニル基の場合、通常4〜30)であり、2〜20(分岐アルキニル基の場合、4〜20)であることが好ましい。
なお、上記の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ヘキシニル基、1−ドデシニル基、1−ヘキサデシニル基等が挙げられる。
アルキニル基は置換基を有していてもよく、アルキニル基が有していてもよい置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、シリル基等が挙げられる。
【0030】
が表すアルキルカルボニル基としては、上記アルキル基とカルボニル基が結合した基が挙げられる。
アルキルカルボニル基の具体例としては、アセチル基、n−プロパノイル基、n−ブタイル基、n−ヘキサノイル基、n−オクタノイル基、n−ドデカノイル基、n−ヘキサデカノイル基等の直鎖アルキルカルボニル基、イソブタノイル基、sec−ブタノイル基、tert−ブタノイル基、2−エチルヘキサノイル基等の分岐アルキルカルボニル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基等のシクロアルキルカルボニル基が挙げられる。
【0031】
前記Rが表すアルコキシカルボニル基としては、上記アルコキシ基とカルボニル基が結合した基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、n−ヘキサデシルオキシカルボニル基等の直鎖アルコキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の分岐アルコキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等のシクロアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0032】
が表すホウ酸エステル残基としては、下記式:
【0033】
〔式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。〕
で表される基が挙げられる。
【0034】
が表す有機スズ残基としては、−SnRで表される基等が挙げられる。ここでRは、アルキル基またはアリール基を表し、アルキル基を表すことが好ましい。
有機スズ残基の具体例としては、−SnMe、−SnEt、−SnBuおよび−SnPhが挙げられ、好ましくは−SnMe、−SnEtまたは−SnBuである。ここで、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Buはブチル基を、Phはフェニル基を表す。
【0035】
、RおよびRが表す、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホウ酸エステル残基または有機スズ残基の定義および具体例は、上記Rが表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホウ酸エステル残基または有機スズ残基の定義および具体例と同様である。
【0036】
本発明の化合物を用いて製造される有機トランジスタの電界効果移動度およびオン/オフ比をより高める観点から、R、R、RおよびRは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、アルケニル基またはアルキニル基が好ましく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基またはアルキニル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0037】
式(1)中、環Aおよび環Bは、それぞれ独立に、複素環を表し、該複素環は置換基を有していてもよい。複素環の炭素原子数は、好ましくは2〜30であり、より好ましくは2〜14であり、さらに好ましくは3〜8である。なお、上記の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、2,1,3−ベンゾチアジアゾール環等が挙げられる。
複素環が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH)で表される基を意味する。)または有機スズ残基等が挙げられ、該置換基の定義および具体例は、上記Rが表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホウ酸エステル残基または有機スズ残基の定義および具体例と同様である。
【0038】
本発明の化合物の合成の容易さの観点から、環Aおよび環Bは、同一の複素環を表すことが好ましい。
【0039】
本発明の化合物を用いて製造される有機トランジスタの電界効果移動度およびオン/オフ比をより高める観点から、環Aおよび環Bは、5〜6員環を表すことが好ましく、5員環を表すことがより好ましい。
【0040】
式(1)中、ZおよびZは、それぞれ独立に、式(Z−1)〜式(Z−11)で表される基からなる群から選ばれる1種の基を表す。
【0041】
【0042】
本発明の化合物の合成の容易さの観点から、ZおよびZは、同一の基を表すことが好ましい。
【0043】
本発明の化合物を用いて製造される有機トランジスタの電界効果移動度およびオン/オフ比を高める観点から、ZおよびZは、式(Z−1)〜式(Z−5)で表される基が好ましく、式(Z−1)〜式(Z−3)で表される基がより好ましく、式(Z−1)で表される基がさらに好ましい。
【0044】
式(Z−1)〜(Z−11)中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子の定義および具体例は、上記Rが表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子の定義および具体例と同様である。
【0045】
本発明の化合物を用いて製造される有機トランジスタの電界効果移動度およびオン/オフ比をより高める観点から、Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基が好ましく、アルキル基またはアリール基がより好ましい。
【0046】
本発明の化合物の合成の容易さの観点から、式(1)で表される化合物は、式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0047】
〔式中、
、R、R、R、ZおよびZは、前記と同じ意味を表す。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH)で表される基を意味する。)または有機スズ残基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
およびXは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子を表す。
およびYは、それぞれ独立に、窒素原子または−CR=で表される基を表す。
は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表す。〕
【0048】
およびRが表す、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホウ酸エステル残基または有機スズ残基の定義および具体例は、上記Rが表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ホウ酸エステル残基または有機スズ残基の定義および具体例と同様である。
【0049】
本発明の化合物を用いて製造される有機トランジスタの電界効果移動度およびオン/オフ比をより高める観点からは、RおよびRは、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、アルケニル基またはアルキニル基が好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基がより好ましい。
一方、後述する、本発明の高分子化合物を得るための原料化合物として使用する観点から、RおよびRは、ハロゲン原子、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH)で表される基を意味する。)または有機スズ残基が好ましく、臭素原子、ヨウ素原子、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH)で表される基を意味する。)または有機スズ残基がより好ましい。
【0050】
本発明の化合物の合成の容易さの観点から、XおよびXは、酸素原子または硫黄原子を表すことが好ましく、硫黄原子を表すことがより好ましい。
【0051】
本発明の化合物の合成の容易さの観点から、YおよびYは、−CR=を表すことが好ましく、−CH=を表すことがより好ましい。
【0052】
式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、例えば、以下の式(1−1)〜式(1−55)で表される化合物が挙げられる。
本発明の化合物を用いて製造される有機トランジスタの電界効果移動度およびオン/オフ比がより優れるため、環Aおよび環Bが5員環である、式(1−1)〜式(1−7)で表される化合物または式(1−13)〜式(1−55)で表される化合物が好ましく、式(1−1)〜式(1−6)で表される化合物または式(1−13)〜式(1−24)で表される化合物がより好ましく、式(1−1)、式(1−2)、式(1−5)、式(1−13)、式(1−14)、式(1−17)、式(1−18)、式(1−21)または式(1−22)がさらに好ましい。
本発明の化合物を用いて、後述する本発明の高分子化合物を製造した場合、該高分子化合物を用いて製造される有機トランジスタの電界効果移動度およびオン/オフ比がより優れるため、式(1−36)〜式(1−55)で表される化合物が好ましく、ZおよびZが式(Z−1)で表される、式(1−36)〜式(1−44)で表される化合物または式(1−48)〜式(1−53)で表される化合物がより好ましい。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
<化合物の製造方法>
次に、式(1)で表される化合物の製造方法を説明する。
式(1)で表される化合物は、いかなる方法で製造してもよいが、例えば、以下に説明するように、臭素化、Suzukiカップリング、Wolff−Kishner還元、Buchwald−Hartwigアミノ化、酸化的環化等により製造することができる。
【0068】
およびZが、式(Z−5)で表される基の場合、例えば、
式(S1)で表される化合物と、式(S2)で表される化合物と、式(S3)で表される化合物と、をSuzukiカップリング反応により反応させる第一工程と、
第一工程で得られた式(S4)で表される化合物を分子内環化させる第二工程と、
により製造することができる。この場合に得られる化合物は、式(S5)で表される化合物である。
【0069】
〔式中、
、R、R、R、環Aおよび環Bは、前記と同じ意味を表す。
およびMは、それぞれ独立に、ホウ酸エステル残基またはホウ酸残基(−B(OH)で表される基を意味する。)を表す。
Halは、それぞれ独立に、ヨウ素原子、臭素原子または塩素原子を表す。〕
【0070】
およびZが式(Z−1)で表される基の場合は、例えば、
上記式(S5)で表される化合物をWolff−Kishner還元により反応させる第一工程と、
第一工程で得られた式(S6)で表される化合物と、ナトリウムアルコキシド等の塩基と、アルキルハライドと、を反応させる第二工程と、
により製造することができる。この場合に得られる化合物は、式(S7)で表される化合物である。
【0071】
〔式中、
、R、R、R、R、環A、環BおよびHalは、前記と同じ意味を表す。〕
【0072】
およびZが式(Z−1)で表される基の場合は、他にも、
式(S1)で表される化合物と、式(S8)で表される化合物と、式(S9)で表される化合物と、をSuzukiカップリング反応により反応させる第一工程と、
第一工程で得られた式(S10)で表される化合物と、ブチルリチウムと、を反応させてリチオ化し、さらにケトンを反応させる第二工程と、
第二工程で得られた式(S11)で表される化合物と、トリフルオロホウ酸や硫酸等の酸と、を反応させて環化させる第三工程と、
により製造することができる。この場合に得られる化合物は、式(S7)で表される化合物である。
【0073】
〔式中、
、R、R、R、R、M、M、環A、環BおよびHalは、前記と同じ意味を表す。〕
【0074】
およびZが式(Z−2)または式(Z−3)で表される基の場合は、例えば、
上記式(S10)で表される化合物と、N−ブロモスクシンイミド等のハロゲン化剤と、を反応させる第一工程と、
第一工程で得られた式(S12)で表される化合物と、ブチルリチウムと、を反応させてリチオ化し、さらにREClで表される化合物等を反応させる第二工程と、
により製造することができる。この場合に得られる化合物は、式(S13)で表される化合物である。
【0075】
〔式中、
、R、R、R、R、環A、環BおよびHalは、前記と同じ意味を表す。
EはSi原子またはGe原子を表す。〕
【0076】
およびZが式(Z−4)で表される基の場合は、例えば、
上記式(S12)で表される化合物と、式(S14)で表される化合物と、をBuchwald−Hartwigアミノ化により反応させて製造することができる。この場合に得られる化合物は、式(S15)で表される化合物である。
【0077】
〔式中、
、R、R、R、R、環A、環BおよびHalは、前記と同じ意味を表す。〕
【0078】
およびZが式(Z−6)〜式(Z−11)で表される基の場合は、例えば、
式(S16)で表される化合物と、塩化鉄等の酸化剤と、を反応させることにより製造することができる。この場合に得られる化合物は、式(S17)で表される化合物である。
【0079】
〔式中、
、R、R、R、環A、環B、ZおよびZは、前記と同じ意味を表す。〕
【0080】
<高分子化合物>
(第1構造単位)
本発明の高分子化合物は、式(3)で表される構造単位(以下、「第1構造単位」ということがある。)を有する高分子化合物である。本発明の高分子化合物は、上記式(1)で表される化合物(上記式(2)で表される化合物であってもよい。)を原料として、好適に製造することができる。第1構造単位は、高分子化合物中に一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。本発明の高分子化合物は、共役高分子化合物であることが好ましい。
【0081】
〔式中、
、R、R、R、環A、環B、ZおよびZは、前記と同じ意味を表す。〕
【0082】
本発明の高分子化合物の原料となる化合物の合成の容易さの観点から、式(3)で表される構造単位は、式(4)で表される構造単位であることが好ましい。
【0083】
〔式中、
、R、R、R、環A、環B、X、X、Y、Y、ZおよびZは、前記と同じ意味を表す。〕
【0084】
式(3)で表される構造単位の好ましい具体例としては、例えば、以下の式(3−1)〜式(3−31)で表される構造単位が挙げられる。
本発明の化合物を用いて製造される有機トランジスタの電界効果移動度およびオン/オフ比をより高める観点から、式(3−1)〜式(3−12)で表される化合物が好ましく、式(3−1)〜式(3−5)で表される化合物または式(3−7)〜式(3−12)で表される化合物がより好ましく、式(3−2)〜式(3−5)で表される化合物または式(3−8)〜式(3−10)で表される化合物がさらに好ましい。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
(第2構造単位)
本実施形態の高分子化合物は、上記式(3)で表される構造単位のほかに、さらに式(5)で表される構造単位(以下、「第2構造単位」ということがある。)を含んでいることが好ましい。
【0094】
〔式中、
Arは、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ただし、Arは、式(3)で表される構造単位とは異なる。〕
【0095】
第2構造単位を含む場合、式(3)で表される構造単位(式(4)で表される構造単位であってもよい。)と、式(5)で表される構造単位と、が共役を形成していることが好ましい。
本明細書における共役とは、不飽和結合−単結合−不飽和結合の順に連鎖し、π軌道の2個のπ結合が隣り合い、それぞれのπ電子が平行に配置し、不飽和結合上にπ電子が局在するのではなく、隣の単結合上にπ電子が広がってπ電子が非局在化している状態のことを指す。ここで不飽和結合とは、二重結合や三重結合を指す。
【0096】
アリーレン基とは、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であり、芳香族炭化水素の炭素原子数は通常6〜60であり、好ましくは6〜20である。なお、上記の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
アリーレン基としては、ベンゼン環を有する基、縮合環を有する基、独立したベンゼン環および縮合環からなる群から選ばれる2個以上が直接結合した基、独立したベンゼン環および縮合環からなる群から選ばれる2個以上がビニレン等の基を介して結合した基が含まれる。
【0097】
アリーレン基としては、例えば、下記式1〜12で表されるアリーレン基が例示される。
【0098】
【0099】
〔式中、
R’’は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表す。複数存在するR’’は、同一でも異なっていてもよい。〕
【0100】
R’’が表す、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子の定義および具体例は、上記Rが表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子の定義および具体例と同様である。
【0101】
2価の複素環基とは、複素環式化合物から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団である。複素環式化合物の炭素原子数は通常2〜30であり、3〜20であることが好ましい。なお、上記の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。2価の複素環基としては、2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
ここに複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、ヒ素原子等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。
2価の複素環基としては、縮合環を有する基、独立した複素環および縮合環からなる群から選ばれる2個以上が直接結合した基が含まれる。
【0102】
2価の複素環基としては、例えば、下記式13〜63で表される2価の複素環基が例示される。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
〔式中、
R’’は、前記と同じ意味を表す。
aおよびbは、それぞれ独立に、繰り返しの数を表し、通常0〜5の整数であり、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0〜1の整数である。〕
【0111】
本実施形態の高分子化合物を用いて製造される有機トランジスタの電界効果移動度およびオン/オフ比をより高める観点からは、第2構造単位は、2価の複素環基であることが好ましく、式49〜式53または式60で表される2価の複素環基であることがより好ましく、式51で表される2価の複素環基であることがさらに好ましい。
【0112】
本発明の高分子化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と言う。)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常、1×10〜1×10である。薄膜作製の際に良好な薄膜を形成する観点から、数平均分子量は3×10以上が好ましい。溶媒への溶解性を高め、薄膜作製を容易にする観点から、数平均分子量は1×10以下であることが好ましい。
【0113】
また、本発明の高分子化合物は、溶媒(好ましくは、有機溶媒)溶解性が高いものであるが、具体的には、本発明の高分子化合物を0.1重量%(以下、「wt%」ということがある。)以上含む溶液を作製し得る溶解性を有することが好ましく、0.4wt%以上含む溶液を作製し得る溶解性を有することがより好ましい。
【0114】
本発明の高分子化合物において、前記式(3)で表される構造単位の含有量は、高分子化合物中に少なくとも1つ含まれていればよいが、好ましくは、高分子化合物中に3個以上、さらに好ましくは、高分子化合物中に5個以上含まれる。
【0115】
本発明の高分子化合物は、いかなる種類の共重合体であってもよく、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。本実施形態の高分子化合物を用いて製造される有機トランジスタの電界効果移動度およびオン/オフ比をより高める観点からは、式(3)で表される構造単位と、式(5)で表される構造単位と、の共重合体であることが好ましく、式(3)で表される構造単位と、式(5)で表される構造単位と、の交互共重合体であることがより好ましい。
【0116】
本発明の高分子化合物は、分子鎖末端に重合反応に活性である基が残っていると、該高分子化合物を用いて製造される有機トランジスタの電界効果移動度が低下する可能性がある。そのため、該分子鎖末端は、アリール基、1価の芳香族複素環基等の安定な基であることが好ましい。
【0117】
<高分子化合物の製造方法>
次に、本発明の高分子化合物の製造方法を説明する。
本発明の高分子化合物は、いかなる方法で製造してもよいが、例えば、式:X11−A11−X12で表される化合物と、式:X13−A12−X14で表される化合物と、を、必要に応じて有機溶媒に溶解し、必要に応じて塩基を加え、適切な触媒を用いた公知のアリールカップリング等の重合方法により合成することができる。
【0118】
前記式中、A11は式(3)で表される構造単位を表し、A12は式(5)で表される構造単位を表す。X11、X12、X13およびX14は、それぞれ独立に、重合反応性基を表す。
【0119】
重合反応性基としては、ハロゲン原子、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH))、3つのアルキル基で置換されたスタンニル基等が挙げられる。
【0120】
重合反応性基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0121】
重合反応性基であるホウ酸エステル残基としては、下記式で示される基が挙げられる。
【0122】
【0123】
重合反応性基である3つのアルキル基で置換されたスタンニル基としては、3つのメチル基で置換されたスタンニル基、3つのブチル基で置換されたスタンニル基が挙げられる。
【0124】
上記アリールカップリング等の重合方法としては、Suzukiカップリング反応により重合する方法(Chemical Review、1995年、第95巻、2457−2483項)、Stilleカップリング反応により重合する方法(European Polymer Journal、2005年、第41巻、2923−2933項)等が挙げられる。
【0125】
重合反応性基は、Suzukiカップリング反応等のニッケル触媒またはパラジウム触媒を用いる場合には、ハロゲン原子、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基等である。重合反応の簡便さの観点からは、臭素原子、ヨウ素原子、ホウ酸エステル残基が好ましい。
本発明の高分子化合物をSuzukiカップリング反応により重合する場合は、上記重合反応性基である臭素原子、ヨウ素原子の合計モル数と、上記重合反応性基であるホウ酸エステル残基の合計モル数と、の比率が0.7〜1.3とすることが好ましく、0.8〜1.2とすることがより好ましい。
【0126】
重合反応性基は、Stilleカップリング反応等のパラジウム触媒を用いる場合には、ハロゲン原子、3つのアルキル基で置換されたスタンニル基等である。重合反応の簡便さの観点からは、臭素原子、ヨウ素原子、3つのアルキル基で置換されたスタンニル基が好ましい。
本発明の高分子化合物をStilleカップリング反応により重合する場合は、上記重合反応性基である臭素原子、ヨウ素原子の合計モル数と、上記重合反応性基である3つのアルキル基で置換されたスタンニル基の合計モル数と、の比率が0.7〜1.3とすることが好ましく、0.8〜1.2とすることがより好ましい。
【0127】
重合に用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0128】
重合に用いられる塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リン酸三カリウム等の無機塩基、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の有機塩基が挙げられる。
【0129】
重合に用いられる触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、パラジウムアセテート、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム等のパラジウム錯体等の遷移金属錯体と、必要に応じて、トリフェニルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の配位子とからなる触媒である。これらの触媒は、予め合成したものを用いてもよいし、反応系中で調製したものをそのまま用いてもよい。また、これらの触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0130】
重合の反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは0〜150℃であり、更に好ましくは0〜120℃である。
【0131】
重合の反応時間は、通常、1時間以上であり、好ましくは2〜500時間である。
【0132】
重合の後処理は、公知の方法で行うことができ、例えば、メタノール等の低級アルコールに上記重合で得られた反応液を加えて析出させた沈殿をろ過、乾燥させる方法で行うことができる。
【0133】
本発明の高分子化合物の純度が低い場合には、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の方法にて精製することが好ましい。
【0134】
<有機半導体材料>
本発明の有機半導体材料は、本発明の化合物(本発明の高分子化合物であってもよい。
)を1種類単独で含むものであってもよく、2種類以上を含むものであってもよい。また、本実施形態の有機半導体材料は、本発明の化合物に加え、キャリア輸送性を有する化合物(低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。)を更に含んでいてもよい。本実施形態の有機半導体材料が、本発明の化合物以外の成分を含む場合は、本発明の化合物を30重量%以上含むことが好ましく、50重量%以上含むことがより好ましく、70重量%以上含むことがさらに好ましい。
【0135】
キャリア輸送性を有する化合物としては、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、オリゴチオフェンおよびその誘導体、オキサジアゾール誘導体、フラーレン類およびその誘導体等の低分子化合物、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリフルオレンおよびその誘導体等が挙げられる。
【0136】
有機半導体材料は、その特性を向上させるため、本発明の高分子化合物とは異なる高分子化合物材料を高分子バインダーとして含有していてもよい。高分子バインダーとしては、キャリア輸送性を過度に低下させないものが好ましい。
【0137】
高分子バインダーの例としては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)およびその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンが挙げられる。
【0138】
<有機半導体素子>
本発明の化合物および本発明の高分子化合物は、高い移動度を有することから、本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)を含む有機薄膜を有機半導体素子に用いた場合、電極から注入された電子やホール、或いは、光吸収によって発生した電荷を輸送することができる。これらの特性を活かして、本発明の化合物は、光電変換素子、有機トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子等の種々の有機半導体素子に好適に用いることができる。以下、これらの素子について個々に説明する。
【0139】
(光電変換素子)
本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)を含む光電変換素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極間に、本発明の化合物を含む1層以上の活性層を有する。
本発明の化合物を含む光電変換素子の好ましい形態としては、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極と、p型の有機半導体とn型の有機半導体との組成物から形成される活性層を有する。本発明の化合物は、p型の有機半導体として用いることが好ましい。この形態の光電変換素子の動作機構を説明する。透明または半透明の電極から入射した光エネルギーがフラーレン誘導体等の電子受容性化合物(n型の有機半導体)および/または本発明の化合物等の電子供与性化合物(p型の有機半導体)で吸収され、電子とホールが結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると、界面でのそれぞれのHOMOエネルギーおよびLUMOエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷(電子とホール)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0140】
本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)を用いて製造される光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明または半透明であることが好ましい。
【0141】
本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)を有する光電変換素子の他の態様は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極間に、本発明の化合物を含む第1の活性層と、該第1の活性層に隣接して、フラーレン誘導体等の電子受容性化合物を含む第2の活性層を含む光電変換素子である。
【0142】
上記の透明または半透明の電極材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(以下、「ITO」ということがある。)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜、NESAや、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0143】
一方の電極は透明でなくてもよく、該電極の電極材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができる。電極材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、およびそれらのうち2つ以上の合金、または、1種以上の前記金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステンおよび錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0144】
光電変換効率を向上させるための手段として活性層以外の付加的な中間層を使用してもよい。中間層として用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化チタン等の酸化物、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)などが挙げられる。
【0145】
活性層は、本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)を一種単独で含んでいても二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、活性層中に電子供与性化合物および/または電子受容性化合物として、本発明の化合物以外の化合物を混合して用いることもできる。なお、電子供与性化合物、電子受容性化合物は、これらの化合物のエネルギー準位から相対的に決定される。
【0146】
上記電子供与性化合物としては、本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)のほか、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェンおよびその誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミン残基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体が挙げられる。
【0147】
上記電子受容性化合物としては、本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)のほか、例えば、炭素材料、酸化チタン等の金属酸化物、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体、ポリキノリンおよびその誘導体、ポリキノキサリンおよびその誘導体、ポリフルオレンおよびその誘導体、2、9−ジメチル−4、7−ジフェニル−1、10−フェナントロリン(バソクプロイン)等のフェナントレン誘導体、フラーレン、フラーレン誘導体が挙げられ、好ましくは、酸化チタン、カーボンナノチューブ、フラーレン、フラーレン誘導体であり、特に好ましくはフラーレン、フラーレン誘導体である。
【0148】
フラーレン、フラーレン誘導体としてはC60、C70、C76、C78、C84およびその誘導体が挙げられる。フラーレンの誘導体の具体的構造としては、以下のようなものが挙げられる。
【0149】
【0150】
【0151】
また、フラーレン誘導体の例としては、[6,6]フェニル−C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]−Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C70酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]−Phenyl C70 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C84酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]−Phenyl C84 butyric acid methyl ester)、[6,6]チェニル−C60酪酸メチルエステル([6,6]−Thienyl C60 butyric acid methyl ester)等が挙げられる。
【0152】
活性層中に本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)とフラーレン誘導体とを含む場合、フラーレン誘導体の割合が、本発明の化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、20〜500重量部であることがより好ましい。
【0153】
活性層の厚さは、通常、1nm〜100μmが好ましく、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、より好ましくは20nm〜200nmである。
【0154】
活性層の製造方法は、如何なる方法で製造してもよく、例えば、本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)を含む溶液からの成膜や、真空蒸着法による成膜方法が挙げられる。
【0155】
光電変換素子の好ましい製造方法は、第1の電極と第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に活性層を有する光電変換素子の製造方法であって、該第1の電極上に本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)と溶媒とを含む溶液(インク)を塗布法により塗布して活性層を形成する工程、該活性層上に第2の電極を形成する工程を有する素子の製造方法である。
【0156】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)を溶解させるものであればよい。該溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒が挙げられる。本発明の化合物(特に、本発明の高分子化合物)は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0157】
溶液を用いて成膜する場合、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スリットコート法、キャピラリーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ノズルコート法、インクジェット印刷法、スピンコート法が好ましい。
【0158】
成膜性の観点からは、25℃における溶媒の表面張力が15mN/mより大きいことが好ましく、15mN/mより大きく100mN/mよりも小さいことがより好ましく、25mN/mより大きく60mN/mよりも小さいことがさらに好ましい。
【0159】
(有機薄膜太陽電池)
本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)を用いた光電変換素子は、透明または半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0160】
また、電極間に電圧を印加した状態、あるいは無印加の状態で、透明または半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【0161】
有機薄膜太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の高分子化合物を用いて製造される有機薄膜太陽電池も使用目的や使用場所および環境により、適宜これらのモジュール構造を選択できる。
【0162】
代表的なスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプのモジュールは、片側または両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル同士が金属リードまたはフレキシブル配線等によって接続され、外縁部に集電電極が配置されており、発生した電力を外部に取り出される構造となっている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率向上のため、目的に応じエチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフィルムまたは充填樹脂の形で用いてもよい。また、外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所において使用する場合には、表面保護層を透明プラスチックフィルムで構成し、または上記充填樹脂を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくすことが可能である。支持基板の周囲は、内部の密封およびモジュールの剛性を確保するため金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームの間は封止材料で密封シールする。また、セルそのものや支持基板、充填材料および封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。
ポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いた太陽電池の場合、ロール状の支持体を送り出しながら順次セルを形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells,48,p383−391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。更に、フレキシブル支持体を用いた太陽電池は曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【0163】
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」ということがある。)に用いることもできる。有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極間に発光層を有する。有機EL素子は、発光層の他にも、正孔輸送層、電子輸送層を含んでいてもよい。該発光層、正孔輸送層、電子輸送層のいずれかの層中に本発明の化合物が含まれる。発光層中には、本発明の化合物の他にも、電荷輸送材料(電子輸送材料と正孔輸送材料の総称を意味する)を含んでいてもよい。有機EL素子としては、陽極と発光層と陰極とを有する素子、さらに陰極と発光層の間に、該発光層に隣接して電子輸送材料を含有する電子輸送層を有する、陽極と発光層と電子輸送層と陰極とを有する素子、さらに陽極と発光層の間に、該発光層に隣接して正孔輸送材料を含む正孔輸送層を有する、陽極と正孔輸送層と発光層と陰極とを有する素子、陽極と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と陰極とを有する素子等が挙げられる。
【0164】
(有機トランジスタ)
有機トランジスタとしては、ソース電極およびドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。)を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられる。このような構成を有する有機トランジスタとしては、電界効果型有機トランジスタ、静電誘導型有機トランジスタ等が挙げられる。
【0165】
電界効果型有機トランジスタは、通常、ソース電極およびドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。
)を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極と、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層とを有する有機トランジスタである。特に、ソース電極およびドレイン電極が、活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられている有機トランジスタが好ましい。
【0166】
静電誘導型有機トランジスタは、通常、ソース電極およびドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、本発明の化合物(本発明の高分子化合物であることが好ましい。
)を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを有し、該ゲート電極が活性層中に設けられている有機トランジスタである。特に、ソース電極、ドレイン電極および前記ゲート電極が、前記活性層に接して設けられている有機トランジスタが好ましい。
【0167】
ゲート電極は、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成でき、かつ、ゲート電極に印加した電圧で該電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし型電極である。
【0168】
図1は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の一例を示す模式断面図である。図1に示す有機トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、ソース電極5およびドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の領域上の絶縁層3を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0169】
図2は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図2に示す有機トランジスタ110は、基板1と基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2およびドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の領域上の絶縁層3を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0170】
図3は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図3に示す有機トランジスタ120は、基板1と基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、ソース電極5およびドレイン電極6の一部を覆うように絶縁層3上に形成された活性層2とを備えるものである。
【0171】
図4は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図4に示す有機トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5の一部を覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、活性層2の一部を覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0172】
図5は、本発明の有機トランジスタ(静電誘導型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図5に示す有機トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一であっても異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0173】
図6は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図6に示す有機トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、ソース電極5およびドレイン電極6の一部を覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0174】
図7は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図7に示す有機トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、活性層2の一部を覆うように活性層2上に形成されたソース電極5と、活性層2の一部を覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0175】
図8は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図8に示す有機トランジスタ170は、ゲート電極4と、ゲート電極4上に形成された絶縁層3と、絶縁層3上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、を備えるものである。この場合、ゲート電極4は基板1を兼ねる構成となっている。
【0176】
図9は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図9に示す有機トランジスタ180は、ゲート電極4と、ゲート電極4上に形成された絶縁層3と、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、ソース電極5およびドレイン電極6の一部を覆うように絶縁層3上に形成された活性層2とを備えるものである。
【0177】
上述した本発明の有機トランジスタにおいては、活性層2および/または活性層2aは、本発明の化合物または本発明の高分子化合物を含有する膜によって構成され、ソース電極5とドレイン電極6との間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0178】
このような電界効果型有機トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機トランジスタは、特開2004−006476号に公報記載の方法等の公知の方法により製造することができる。
【0179】
基板1の材料は、有機トランジスタの特性を阻害しない材料であればよい。基板としては、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板、プラスチック基板を用いることができる。
【0180】
絶縁層3の材料は、電気の絶縁性が高い材料であればよく、SiO、SiN、Ta、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス、フォトレジスト等を用いることができるが、低電圧化の観点からは、誘電率の高い材料を用いることが好ましい。
【0181】
絶縁層3の上に活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3の表面を処理して表面改質した後に活性層2を形成することも可能である。
【0182】
電界効果型トランジスタの場合、電子やホール等の電荷は、一般に絶縁層と活性層の界面付近を通過する。従って、この界面の状態がトランジスタの電界効果移動度に大きな影響を与える。そこで、界面状態を改良して特性を向上させる方法として、シランカップリング剤による界面の制御が提案されている(例えば、表面化学、2007年、第28巻、第5号、p.242−248)。
【0183】
シランカップリング剤の例としては、アルキルクロロシラン類(オクチルトリクロロシラン(OTS)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS)、フェニルエチルトリクロロシラン等)、アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリルアミン化合物が挙げられる。また、表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV処理、Oプラズマ処理してもよい。
【0184】
このような処理によって、絶縁層として用いられるシリコン酸化膜等の表面エネルギーを制御することができる。また、表面処理により、活性層を構成している膜の絶縁層上での配向性が向上し、より高い電界効果移動度が得られる。
【0185】
ゲート電極4には、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、低抵抗ポリシリコン、低抵抗アモルファスシリコン等の金属や、錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物(ITO)等の材料を用いることができる。
これらの材料は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、ゲート電極4としては、高濃度にドープされたシリコン基板を用いることも可能である。高濃度にドープされたシリコン基板は、ゲート電極としての性能とともに、基板としての性能も併有する。このような基板としての性能も有するゲート電極4を用いる場合には、基板1とゲート電極4とが接している有機トランジスタにおいて、基板1を省略してもよい。
【0186】
ソース電極5およびドレイン電極6は、低抵抗の材料から構成されることが好ましく、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン等から構成されることが特に好ましい。これらの材料は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0187】
上記有機トランジスタにおいて、ソース電極5およびドレイン電極6と、活性層2との間には、更に他の化合物から構成された層が介在していてもよい。このような層としては、電子輸送性を有する低分子化合物、ホール輸送性を有する低分子化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、これらの金属と有機化合物との錯体、ヨウ素、臭素、塩素、塩化ヨウ素等のハロゲン、硫酸、無水硫酸、二酸化硫黄、硫酸塩等の酸化硫黄化合物、硝酸、二酸化窒素、硝酸塩等の酸化窒素化合物、過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲン化化合物、アルキルチオール化合物、芳香族チオール類、フッ素化アルキル芳香族チオール類等の芳香族チオール化合物等からなる層が挙げられる。
【0188】
また、上記のような有機トランジスタを作製した後には、素子を保護するため、有機トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機トランジスタが大気から遮断され、有機トランジスタの特性の低下を抑制することができる。また、有機トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する場合、その形成工程における有機トランジスタへの影響も該保護膜により低減することができる。
【0189】
保護膜を形成する方法としては、有機トランジスタを、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiON膜等で覆う方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機トランジスタを作製後、有機トランジスタを大気にさらすことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等で)保護膜を形成することが好ましい。
【0190】
このように構成された有機トランジスタの一種である電界効果型トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子等として適用できる。そして、上述した本実施形態の電界効果型トランジスタは、活性層として本発明の化合物または本発明の高分子化合物を含有し、そのことにより移動度に優れた活性層を備えているため、その電界効果移動度が高いものとなる。したがって、十分な応答速度を持つディスプレイの製造等に有用である。
本発明によれば、電界効果移動度およびオン/オフ比の双方に優れる有機トランジスタの製造に有用な化合物および高分子化合物を提供することができる。また、本発明によれば、該化合物または該高分子化合物を含有する有機半導体材料、有機半導体素子および有機トランジスタを提供することができる。
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、イオン化ポテンシャルの高い化合物および高分子化合物を提供することができる。該化合物および該高分子化合物を用いることで、オン/オフ比の安定性にも優れる有機トランジスタが期待される。
【実施例】
【0191】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0192】
(質量分析)
質量分析は、AccuTOF TLC JMS−T100TD(日本電子製)を用いて行った。
【0193】
(NMR分析)
NMR測定は、化合物を重クロロホルムに溶解させ、NMR装置(Varian社製、INOVA300)を用いて行った。
【0194】
(分子量分析)
高分子化合物の数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC、Waters社製、商品名:Alliance GPC 2000)を用いて求めた。測定する高分子化合物は、オルトジクロロベンゼンに溶解させ、GPCに注入した。
GPCの移動相にはオルトジクロロベンゼンを用いた。カラムは、TSKgel GMHHR−H(S)HT(2本連結、東ソー製)を用いた。検出器にはUV検出器を用いた。
【0195】
(イオン化ポテンシャル分析)
高分子化合物を含む有機薄膜のイオン化ポテンシャルは、後述する有機トランジスタの作製方法によって得られた有機薄膜を、大気中光電子分光装置(理研計器製AC−2)を用いて測定し求めた。
【0196】
合成例1
(化合物2の合成)
【0197】
反応容器内に、化合物1を12.1g(58.4mmol)、濃硫酸を10mL、メタノールを250mL入れ、6時間還流させた。得られた反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。得られたトルエン溶液を濃縮することで得られた液体を、シリカゲルカラムを用いて精製し、化合物2を得た。得量は12.8gであり、収率は99%であった。
【0198】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=7.36(d,1H)、7.22(d,1H)、3.88(s,3H).
【0199】
合成例2
(化合物4の合成)
【0200】
反応容器内に、化合物3を6.00g(37.5mmol)、ピリジンを180mL入れ、0℃に冷却した。その後、反応容器内へ無水トリフルオロ酢酸を23.3g(82.4mmol)加えた。得られた反応溶液を室温まで昇温し、クロロホルムを120mL加えて、8時間撹拌した。得られた反応溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、クロロホルムで抽出した。得られたクロロホルム溶液を濃縮することで得られた溶液をメタノールに注いだところ、析出物が得られた。得られた析出物をろ取し、メタノールで洗浄し、化合物4を得た。得量は10.8gであり、収率は68%であった。
【0201】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=8.14(d,2H)、7.70(t,2H)、7.61(d,2H).
【0202】
合成例3
(化合物5の合成)
【0203】
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物4を1.00g(2.36mmol)、ビスピナコラートジボロンを1.44g(5.66mmol)、酢酸カリウムを1.39g(14.1mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウムジクロリドを96.2mg(0.12mmol)、ジオキサンを50mL入れ、8時間還流させた。得られた反応溶液をセライトろ過し、ヘキサンで洗浄した。その後、得られた溶液を水に注ぎ、ヘキサンで抽出した。得られたヘキサン溶液を濃縮し、化合物5を得た。得量は0.88gであり、収率は98%であった。
【0204】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=8.88(d,2H)、8.06(d,2H)、7.51(t,2H)、1.42(s,24H).
【0205】
合成例4
(化合物6の合成)
【0206】
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物5を3.40g(8.95mmol)、化合物2を4.35g(19.7mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを0.328g、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートを0.415g、テトラヒドロフランを100mL入れて撹拌した。得られた反応溶液に、2mol/Lの炭酸カリウム水溶液を22mL滴下し、5時間還流させた。得られた反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。得られたトルエン溶液を濃縮し、得られた固体をシリカゲルカラムを用いて精製し、化合物6を得た。得量は3.15gであり、収率は86%であった。
【0207】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=7.69(d,2H)、7.64(d,2H)、7.35−7.55(m,6H)、3.51(s,6H).
【0208】
実施例1
(化合物7の合成)
【0209】
反応容器内に、化合物6を1.54g(3.77mmol)、硫酸を54mL、水を6mL入れ、130℃で5時間反応させた。得られた反応溶液を水に注いだところ、析出物が得られた。得られた析出物をろ取し、メタノールで洗浄した。得られた固体を昇華精製し、化合物7を得た。得量は0.31gであり、収率は24%であった。
【0210】
MS(m/z)345
【0211】
合成例5
(化合物9の合成)
【0212】
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物5を7.77g(20.4mmol)、2,3−ジブロモチオフェンを10.9g(45.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを0.749g、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートを0.949g、テトラヒドロフランを100mL入れて撹拌した。得られた反応溶液に、2mol/Lの炭酸カリウム水溶液を51mL滴下し、5時間還流させた。得られた反応溶液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。得られたトルエン溶液を濃縮し、得られた固体をシリカゲルカラムを用いて精製し、化合物9を得た。得量は4.30gであり、収率は47%であった。
【0213】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=7.84(d,2H)、7.50−7.60(m,4H)、7.44(d,2H)、7.15(d,2H).
【0214】
合成例6
(化合物10の合成)
【0215】
反応容器内に、化合物9を1.00g(2.22mmol)、ジエチルエーテルを300mL入れ、−78℃に冷却した。その後、反応容器内へn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6mol/L、2.92mL、4.66mmol)を滴下した。得られた反応溶液を−78℃で1時間撹拌した。その後、反応容器内へ4,4’−ジヘキサデシルベンゾフェノンを2.94g(4.66mmol)加え、該反応溶液を室温で6時間撹拌した。得られた反応溶液を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。得られたジエチルエーテル溶液を濃縮し、得られた固体をシリカゲルカラムを用いて精製し、化合物10を得た。得量は3.05gであり、収率は86%であった。
【0216】
実施例2
(化合物11の合成)
【0217】
反応容器内に、化合物10を3.05g(2.00mmol)、トリフルオロボレートエーテル錯体を0.315g(2.22mmol)、クロロホルムを100mL入れ、2時間撹拌した。得られた反応溶液を水に注ぎ、クロロホルムで抽出した。得られたクロロホルム溶液を濃縮し、得られた固体をシリカゲルカラムを用いて精製し、化合物11を得た。得量は2.50gであり、収率は86%であった。
【0218】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=7.54(d,2H)、7.00−7.23(m,22H)、6.75(d,2H)、2.54(t,8H)、1.57(m,8H)、1.20−1.40(m,104H)、0.88(t,12H).
【0219】
実施例3
(化合物12の合成)
【0220】
反応容器内に、化合物5を1.20g(0.79mmol)、N−ブロモスクシンイミドを0.309g(1.74mmol)、テトラヒドロフラン50mLを入れ、4時間還流させた。得られた反応液を水に注ぎ、ヘキサンで抽出した。得られたヘキサン溶液を水で洗浄した。得られたヘキサン溶液を濃縮することで得られた液体をシリカゲルカラムを用いて精製し、化合物6を得た。得量は0.76gであり、収率は57%であった。
【0221】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=7.24−7.40(m,4H)、7.05(m,16H)、6.71(s,2H)、2.55(t,8H)、1.55(m,8H)、1.20−1.40(m,104H)、0.88(t,12H).
【0222】
実施例4
(高分子化合物Aの合成)
【0223】
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物12を0.200g(0.119mmol)、化合物13を46.3mg(0.119mmol)、テトラヒドロフランを30mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを4.4mg、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートを5.5mg入れて撹拌した。得られた溶液に、2mol/Lの炭酸カリウム水溶液を0.60mL滴下し、3時間還流させた。
得られた反応溶液に、フェニルボロン酸を10.0mg加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液にN,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物を0.1g加えて、3時間還流させた。得られた反応液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。得られたトルエン溶液を酢酸水溶液および水で洗浄した後、シリカゲルカラムを用いて精製した。得られたトルエン溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。
得られた析出物を、アセトンを溶媒として用いてソックスレー洗浄し、高分子化合物Aを得た。得量は22mgであり、ポリスチレン換算の数平均分子量は1.5×10であり、重量平均分子量は3.2×10であった。
【0224】
実施例5
(高分子化合物Bの合成)
【0225】
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物12を0.150g(0.0895mmol)、化合物14を0.0560g(0.0895mmol)、トルエンを50mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを1.2mg、トリオルトトリルホスフィンを2.5mg入れて、5時間還流させた。得られた反応液に、ブロモベンゼンを30mg加えて、1時間還流させた。得られた反応液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をろ取し、トルエンと水とN,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物を加えて、3時間還流させた。その後、トルエン層を抽出した。得られたトルエン溶液を、酢酸水溶液および水で洗浄した後、シリカゲルカラムを用いて精製した。得られたトルエン溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。
得られた析出物を、アセトンを溶媒として用いてソックスレー洗浄し、高分子化合物Bを得た。得量は15mgであり、ポリスチレン換算の数平均分子量は5.0×10であり、重量平均分子量は1.3×10であった。
【0226】
実施例6
(有機トランジスタ1の作製および評価)
高分子化合物Aを含む溶液を用いて、図9に示す構造を有する有機トランジスタ1を作製した。
ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板の表面を熱酸化し、シリコン酸化膜(以下、「熱酸化膜」という。)を形成した。熱酸化膜は絶縁層として機能する。次に、フォトリソグラフィー工程により熱酸化膜上にソース電極およびドレイン電極を作製した。該ソース電極および該ドレイン電極は、熱酸化膜側からクロム(Cr)層と金(Au)層とを有し、チャネル長が20μm、チャネル幅が2mmであった。こうして得られた熱酸化膜、ソース電極およびドレイン電極を形成した基板をアセトンで超音波洗浄を行ない、オゾンUVクリーナーでUVオゾン処理を行なった。その後、β−フェネチルトリクロロシランで熱酸化膜の表面を修飾し、ペンタフルオロベンゼンチオールでソース電極およびドレイン電極の表面を修飾した。次に、上記表面処理した熱酸化膜、ソース電極およびドレイン電極上に、0.5重量%の高分子化合物Aのオルトジクロロベンゼン溶液を1000rpmの回転速度でスピンコートし、有機半導体層(活性層)を形成した。その後、有機半導体層を大気中で170℃で30分間加熱し、有機トランジスタ1を製造した。
【0227】
得られた有機トランジスタ1のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。電界効果移動度は、1.8×10−2cm/Vsであり、オンオフ比は10であった。高分子化合物Aを含む有機薄膜のイオン化ポテンシャルは5.5eVであった。
【0228】
実施例7
(有機トランジスタ2の作製および評価)
高分子化合物Aに代えて高分子化合物Bを用いたこと以外は、実施例6と同様にして有機トランジスタ2を作製した。
【0229】
得られた有機トランジスタ2のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。電界効果移動度は、4.3×10−2cm/Vsであり、オンオフ比は10であった。高分子化合物Bを含む有機薄膜のイオン化ポテンシャルは5.5eVであった。
【0230】
実施例8
(高分子化合物Cの合成)
【0231】
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物12を0.200g(0.119mmol)、化合物15を59.2mg(0.119mmol)、テトラヒドロフランを30mL、クロロベンゼンを30mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを4.4mg、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートを5.5mg入れて撹拌した。得られた溶液に、2mol/Lの炭酸カリウム水溶液を0.60mL滴下し、3時間還流させた。
得られた反応溶液に、フェニルボロン酸を10.0mg加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液にN,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物を0.1g加えて、3時間還流させた。得られた反応液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。得られたトルエン溶液を酢酸水溶液および水で洗浄した後、シリカゲルカラムを用いて精製した。得られたトルエン溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。
得られた析出物を、アセトンを溶媒として用いてソックスレー洗浄し、高分子化合物を得た。得量は120mgであり、ポリスチレン換算の数平均分子量は1.6×10であり、重量平均分子量は3.7×10であった。

【符号の説明】
【0232】
1…基板、
2、2a…活性層、
3…絶縁層、
4…ゲート電極、
5…ソース電極、
6…ドレイン電極、
100、110、120、130、140、150、160、170、180…有機トランジスタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9