【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に従うアリールアミン化合物を用いることでこの目的は達成される。
【0020】
本発明に従うアリールアミン化合物は、アリールアミンコアと、以下の基
【化4A】
からなる群から選択される少なくとも1つの付加−重合性基Xを有しており、前記付加重合性基は一般式(1)
C(R
1R
2)−(C(R
3R
4))m (1)
(式中、
R
1及びR
2は互いに独立にそれぞれC
1〜C
8のアルキル基又は5〜30個の炭素原子のアリール基を表し、
R
3及びR
4は互いに独立に水素、C
1〜C
8のアルキル基又は5〜30個の炭素原子のアリール基であり、mは0〜20の整数である)
のスペーサーを介して、又は一般式(2)又は(3)
【化5】
(式中、
R
5は水素、C
1〜C
8のアルキル、又はC
5〜C
30のアリールを表し、
R
6及びR
7は互いに独立にC
1アルキレン又はC
5〜C
30のアリーレン基を表すが、
R
6がメチレン基の場合にはR
6及びR
7の両方が付加−重合性基Xを保持しR
5は水素ではない)
のフルオレンサブユニットを介して、アリールアミンコアの1つの環に結合している。
【0021】
本発明の好ましい実施形態は従属項及び本明細書の以下で明らかにされている。
【0022】
本発明に従うアリールアミン化合物は、アリールアミンコアを有している。用語アリールアミンコアは、本明細書で用いられる場合、通常、アリール基が1つ以上の窒素原子と結合している構造要素のことをいう。
【0023】
通常、アリールアミンコアは、NAr
1Ar
2Ar
3(式中、Ar
1、Ar
2、及びAr
3は同じでも異なってもよく、置換又は無置換のC
5〜C
30のアリール、又は置換又は無置換のC
2〜C
30のヘテロアリール基を表す)と表現することができる。アリール基の好ましい例は、フェニル、ナフチル、アントラセニルであり、特にはフェニル又はナフチルである。好ましいヘテロアリール基は、少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはO、N、及びSから選択されるヘテロ原子を含有する、5員環又は6員環のヘテロアリール化合物であり、特にこの好ましくはヘテロアリール環は少なくとも1つの窒素原子を含有している。
【0024】
用語付加−重合性基は、本発明との関係で用いられる場合、付加重合反応、すなわち(縮重合によって重合する基とは対照的に)低分子量化合物の形成又は分離なしに化学結合の転移によってポリマーを形成する反応、を行うことが可能な基のことをいう。付加重合性基は、その化学構造に応じて、熱的に、又は、UV若しくは可視光の照射によって、重合することができる。当業者であれば、その知識に基づいて、意図する重合方法及びポリマーに求められる特性に応じた、適切な付加−重合性基を選択するであろう。
【0025】
本発明に従うアリールアミン化合物は、スペーサー又は以下でより具体的に定義されるようなフルオレン基を介してアリールアミンコアの1つの環と結合している少なくとも1つの付加重合性基を有している。
【0026】
スペーサーは、一般式C(R
1R
2)−(C(R
3R
4))
m(式中、R
1及びR
2は互いに独立に、それぞれC
1〜C
8のアルキル基又は5〜30個の炭素原子のアリール基を表す)を有している。
【0027】
驚くべきことに、アリールアミンコアに結合している炭素原子上に水素原子を持たないスペーサーは、有機電子デバイス中で使用された場合、それぞれ炭素原子に1つ以上の水素原子を有する対応する化合物と比較して、より安定性を高めるということが見出された。
【0028】
本発明の好ましい実施形態に従うと、式(1)のスペーサーは、置換基R
1及びR
2を有する炭素原子を介してアリールアミンコアと結合している。
【0029】
R
3及びR
4は互いに独立に、水素、C
1〜C
8のアルキル基、又は5〜30個の炭素原子のアリール基であり、mは0〜20の整数である。好ましい実施形態に従うと、R
1及びR
2は共にC
1〜C
4のアルキル基、特に好ましくはメチル基を表す。
【0030】
別の好ましい実施形態に従うと、mは0〜6、好ましくは0〜3の整数であり、特に好ましくはmは0又は1〜3の整数である。
【0031】
あるいは、付加重合性基は、式(2)又は(3)のフルオレンサブユニットを介してアリールアミンコアの環と結合していてもよい。
【化6】
式中、R
5は水素、C
1〜C
8のアルキル、又はC
5〜C
30のアリールを表し、
R
6及びR
7は互いに独立にC
1アルキレン又はC
5〜C
30のアリーレン基を表すが、
ただし、R
6がメチレンの場合にはR
6及びR
7の両方が付加−重合性基Xを保持しR
5は水素ではない。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、R
5は水素又はC
1〜C
4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0033】
別の好ましい実施形態に従うと、R
6及びR
7は共にメチレン基(−CH
2−)である。
【0034】
本明細書では、用語C
1−アルキレンは、CH
2だけでなく、一方又は両方の水素原子が例えばアルキル基又はアルコキシ基などの置換基で置換されたメチレン基も含むことが意図されている。
【0035】
本発明に従う第1の好ましい分類のアリールアミン化合物は、一般式(4)の化合物で表される。
【化7】
式中、A及びR
10〜R
13のうちの少なくとも1つは、一般式(1)のスペーサーを介して結合している付加−重合性基を保持しており、Aは上で定義したAr
1と同じ意味を有していてもよく、好ましくはAは置換又は無置換の5〜7員環のアリール環又はヘテロアリール環からなる群から選択され、nは1、2、又は3であり、R
10〜R
13はAr
1で前に定義したような無置換又は置換のC
5〜C
30のアリール又はC
2〜C
30ヘテロアリール環である。
【0036】
別の好ましい実施形態に従うと、式(4)で表される本発明の化合物は、置換又は無置換のフェニル基又はナフチル基を有している。
【0037】
付加重合性基は、好ましくは、付加重合によって重合できる少なくとも1つの不飽和結合を有している。
【0038】
X基としては通常ビニル基が好ましく、特にはビニルフェニルが好ましい(一般的にはスチリル又はビニルフェニルとも呼ばれる)。
【0039】
アリールアミン化合物の以下の具体例(式I〜式XLV)は、それぞれ本発明に従う好ましいものであり、化合物XVII〜XLVが特に好ましい。
【化8A】
【化8B】
【化8C】
【化8D】
【化8E】
【化8F】
【化8G】
【化8H】
【0040】
本発明に従う2つの特に好ましい化合物は、式XLVI及び式XLVIIの化合物である。
【化9】
【0041】
本発明に従う化合物は、文献に記載の方法及び当業者に公知の方法に従って合成することができる。したがって、ここでは詳細に記載する必要はない。当業者であれば、目的とする生成物に応じて、適切な反応条件及び反応物を選択するであろう。
【0042】
本発明に従う化合物は、多層有機電子デバイスのいずれの層の作製にも、特にはOLED積層体のいずれの層の作製にも(正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層等)、使用することができる。当業者であれば、層に求められる機能に応じた適切な化合物を選択するであろう。
【0043】
本発明に従う組成物を用いることで、本発明のアリールアミン化合物から得られるフィルム層の架橋密度を細かく制御することができ、また、例えばガラス転移温度を下げる(その結果より多くの溶媒の除去、高い二重結合変換率、及び硬化に必要なエネルギーの低減が可能)などの複数の利点を得ることができる。更に、収縮及びフィルムの形態が改良される。
【0044】
本発明に従うアリールアミン化合物は、特にはOLEDの正孔輸送層の製造に好適であり、したがって、本発明の別の実施形態は、OLEDの正孔輸送層を製造するために本発明に従う組成物を使用することに関する。
【0045】
実用上の理由から、形成されるポリマーに悪影響を与えない温度で効率的に架橋するアリールアミン化合物を用いることが好ましい。通常、必要とされる架橋形成のための反応温度は150〜250℃の範囲であり、好ましくは化合物b)は、220℃以下の温度で、特には200℃以下で、必要な架橋度を得るために選択される。
【0046】
最後に、本発明の第3の実施形態は、本発明に従うアリールアミン化合物から得られるポリマーに関する。
【0047】
デバイスの特性の望ましくない変化を避けるために前に積層された層は次に積層する層の反応条件で不活性である必要ある、溶液プロセス法や気相プロセス法によって多層OLEDデバイスを製造するのに、本発明に従う化合物は特に有用である。このような多層有機電子デバイスの製造方法のための溶液プロセス及び気相プロセスは当業者に知られており、また文献にも記載されているため、ここでは詳しく説明する必要はない。