特許第6332105号(P6332105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332105
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】巻取体の装着方法及び脱着方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 19/12 20060101AFI20180521BHJP
   B65H 19/30 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B65H19/12 A
   B65H19/30
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-68866(P2015-68866)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188133(P2016-188133A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】西山 芳英
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−144198(JP,A)
【文献】 特開2001−302050(JP,A)
【文献】 特開平9−202500(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0237180(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0247111(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0150990(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/00−19/30
B65H 21/00−21/02
B65H 16/00−16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定径及び所定幅の中空コアに、前記所定幅より狭い幅の長尺フィルムが巻き取られている巻取体を搬送シャフトに装着し、巻出部から繰り出して巻取部で巻き取りながら前記長尺フィルムを垂直状態で搬送する垂直ロールツウロール方式の搬送系において、前記巻取体を、前記巻出部の搬送シャフトへ、リフターを用いて装着する方法であって、下記の工程(1)から工程(5)を備える巻取体の装着方法。
工程(1):鉛直方向上下に巻取体を昇降可能な昇降ステージと、前記搬送シャフトと略同一径の位置合わせシャフトが鉛直下方に向けて配置され、かつ、鉛直方向上下に昇降可能な位置合わせシャフト昇降部と、を備える移動可能なリフターを用意する工程。
工程(2):前記昇降ステージが下降した状態の昇降ステージ上に、前記中空コアの外径未満で前記搬送シャフトを貫通可能な径の貫通穴を有するコア支持体と、前記垂直状態の前記巻取体とを順次配置し、前記巻取体を垂直状態で前記コア支持体上に仮支持する工程。
工程(3):前記仮支持された状態で、前記昇降ステージを上昇させ、前記巻取体の中空コア及び前記コア支持体を、前記位置合わせシャフトに貫通させる工程。
工程(4):前記リフターを移動して、前記位置合わせシャフトと、前記搬送シャフトとが一直線上になるように配置し、その後に前記位置合わせシャフトを下降させて、両シャフトを一直線上に仮接続し、更に前記昇降ステージを下降させて、前記巻取体及び前記コア支持体を搬送シャフトに移動装着する工程。
工程(5):前記位置合わせシャフトを上昇させて、前記昇降ステージと共に前記リフターを前記搬送シャフトから離脱させる工程。
【請求項2】
所定径及び所定幅の中空コアに、前記所定幅より狭い幅の長尺フィルムが巻き取られている巻取体を搬送シャフトに装着し、巻出部から繰り出して巻取部で巻き取りながら前記長尺フィルムを垂直状態で搬送する垂直ロールツウロール方式の搬送系において、前記巻取体を、前記巻取部の搬送シャフトから、リフターを用いて脱着する方法であって、下記の工程(6)から工程(10)を備える巻取体の脱着方法。
工程(6):鉛直方向上下に巻取体を昇降可能な昇降ステージと、前記搬送シャフトと略同一径の位置合わせシャフトが鉛直下方に向けて配置され、かつ、鉛直方向上下に昇降可能な位置合わせシャフト昇降部と、を備える移動可能なリフターを用意する工程。
工程(7):巻取部の搬送シャフトにあらかじめ、前記中空コアの外径未満で前記搬送シャフトを貫通可能な径の貫通穴を有するコア支持体を貫通配置し、その上に前記中空コアを貫通配置した状態で巻き取りを行う工程。
工程(8):前記リフターを移動して、前記コア支持体の下に前記昇降ステージを挿入すると共に、前記位置合わせシャフトと、前記搬送シャフトとが一直線上になるように配置し、その後に前記位置合わせシャフトを下降させて、両シャフトを一直線上に仮接続し、更に前記昇降ステージを上昇させて、前記巻取体及び前記コア支持体を前記位置合わせシャフトに移動装着する工程。
工程(9):前記位置合わせシャフトを上昇させて、前記リフターを前記搬送シャフトから離脱させる工程。
工程(10):前記リフターを移動して、前記昇降ステージを下降させて、前記巻取体を前記位置合わせシャフトから脱着させる工程。
【請求項3】
前記昇降ステージは、前記搬送シャフトの径を挟みこみ可能な開口部を有する平面視U字状をなしている請求項1又は2に記載の巻取体の装脱着方法。
【請求項4】
前記昇降ステージの表面には、前記コア支持体の外周に沿った段部が形成されており、前記段部の底部内に前記コア支持体が配置される請求項1から3のいずれかに記載の巻取体の装脱着方法。
【請求項5】
前記位置合わせシャフトと前記搬送シャフトとの仮接続部分には、互いに嵌合可能な凹凸部が形成されている請求項1から4のいずれかに記載の巻取体の装脱着方法。
【請求項6】
前記位置合わせシャフトの中央部の外径が両端部の外径よりも小さい請求項1から5のいずれかに記載の巻取体の装脱着方法。
【請求項7】
電気めっきにより基材上に金属めっき層を設ける金属張積層体の製造に用いられる請求項1から6のいずれかに記載の巻取体の装脱着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、金属張積層体の製造に用いられる巻取体の装着方法及び脱着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会を支える各種機器用いられる材料には異物質同士が接着、接合及び結合した部品が重要となっている。例えば、電子機器の小型化で多用されているCOF(Chip on film)に用いられるフレキシブル配線基板は、基材の樹脂フィルムの表面に銅の膜を形成した銅張積層基板(FCCL:Flexible Copper Clad Laminates)材料が用いられている。
【0003】
銅張積層体は、一般にロールツウロール方式の搬送系を用いて次のように製造される。まず、ポリイミドフィルム等に金属層等が積層された長尺フィルム(基材)が巻き取られている巻取体(巻出部)から基材をめっき装置に搬送する。次にめっき装置内で硫酸銅等のめっき浴中にて電気めっきを行うことにより金属めっき層を積層し金属張積層体を製造する。その後、金属めっき層を積層した金属張積層体をロールツウロール方式により巻取部で回収する。
【0004】
ロールツウロール方式の搬送系を用いる製造方法のうち所定の目的により長尺フィルムを垂直方向で搬送する場合がある。例えば、ロールツウロール方式の搬送系において、巻出部からめっき装置までの金属条材及びめっき装置から巻取部までの金属条材を垂直方向に流動するように設けられた連続めっき装置が開示されている(特許文献1)。垂直方向に流動することで、めっき液の定位置に間欠的に移動する際、金属条材が把持されない間であっても引っ張り力に平行関係が崩れず、所望の位置でめっき処理を正確に行うことができる。
【0005】
また、ロールツウロール方式の搬送系において、ICリードフレーム製造におけるエッチング工程等において、材料を現像液中に侵漬後、垂直方向に搬送し両面から現像液を吹きかけるレジストの現像装置が開示されている(特許文献2)。現像液を吹き付ける中、垂直に材料を引き上げることができるため、均一性の高いレジストパターンを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1−134669号公報
【特許文献2】特開平4−276757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、巻取体を垂直に装着して長尺フィルムを垂直状態で搬送する方式(垂直ロールツウロール方式)により電気めっき等を行う工程を有する銅張積層体等の製造方法において、巻取体の長尺フィルムを傷付けることなく、巻取体を簡便かつ安全な方法で搬送シャフトに装着・脱着が可能な巻取体の装着方法及び巻取体の脱着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、巻取体を所定のリフターを用いた方法により搬送シャフトへの装着・脱着を行うことで上記課題が解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち第一の発明は、所定径及び所定幅の中空コアに、前記所定幅より狭い幅の長尺フィルムが巻き取られている巻取体を搬送シャフトに装着し、巻出部から繰り出して巻取部で巻き取りながら前記長尺フィルムを垂直状態で搬送する垂直ロールツウロール方式の搬送系において、前記巻取体を、前記巻出部の搬送シャフトへ、リフターを用いて装着する方法であって、下記の工程(1)から工程(5)を備える巻取体の装着方法である。
工程(1):鉛直方向上下に巻取体を昇降可能な昇降ステージと、前記搬送シャフトと略同一径の位置合わせシャフトが鉛直下方に向けて配置され、かつ、鉛直方向上下に昇降可能な位置合わせシャフト昇降部と、を備える移動可能なリフターを用意する工程。
工程(2):前記昇降ステージが下降した状態の昇降ステージ上に、前記中空コアの外径未満で前記搬送シャフトを貫通可能な径の貫通穴を有するコア支持体と、前記垂直状態の前記巻取体とを順次配置し、前記巻取体を垂直状態で前記コア支持体上に仮支持する工程。
工程(3):前記仮支持された状態で、前記昇降ステージを上昇させ、前記巻取体の中空コア及び前記コア支持体を、前記位置合わせシャフトに貫通させる工程。
工程(4):前記リフターを移動して、前記位置合わせシャフトと、前記搬送シャフトとが一直線上になるように配置し、その後に前記位置合わせシャフトを下降させて、両シャフトを一直線上に仮接続し、更に前記昇降ステージを下降させて、前記巻取体及び前記コア支持体を搬送シャフトに移動装着する工程。
工程(5):前記位置合わせシャフトを上昇させて、前記昇降ステージと共に前記リフターを前記搬送シャフトから離脱させる工程。
【0010】
第二の発明は、所定径及び所定幅の中空コアに、前記所定幅より狭い幅の長尺フィルムが巻き取られている巻取体を搬送シャフトに装着し、巻出部から繰り出して巻取部で巻き取りながら前記長尺フィルムを垂直状態で搬送する垂直ロールツウロール方式の搬送系において、前記巻取体を、前記巻取部の搬送シャフトから、リフターを用いて脱着する方法であって、下記の工程(6)から工程(10)を備える巻取体の脱着方法である。
工程(6):鉛直方向上下に巻取体を昇降可能な昇降ステージと、前記シャフトと略同一径の位置合わせシャフトが鉛直下方に向けて配置され、かつ、鉛直方向上下に昇降可能な位置合わせシャフト昇降部と、を備える移動可能なリフターを用意する工程。
工程(7):巻取部の搬送シャフトにあらかじめ、前記中空コアの外径未満で前記搬送シャフトを貫通可能な径の貫通穴を有するコア支持体を貫通配置し、その上に前記中空コアを貫通配置した状態で巻き取りを行う工程。
工程(8):前記リフターを移動して、前記コア支持体の下に前記昇降ステージを挿入すると共に、前記位置合わせシャフトと、前記搬送シャフトとが一直線上になるように配置し、その後に前記位置合わせシャフトを下降させて、両シャフトを一直線上に仮接続し、更に前記昇降ステージを上昇させて、前記巻取体及び前記コア支持体を前記位置合わせシャフトに移動装着する工程。
工程(9):前記位置合わせシャフトを上昇させて、前記リフターを前記搬送シャフトから離脱させる工程。
工程(10):前記リフターを移動して、前記昇降ステージを下降させて、前記巻取体を前記位置合わせシャフトから脱着させる工程。
【0011】
第三の発明は、前記昇降ステージは、前記搬送シャフトの径を挟みこみ可能な開口部を有する平面視U字状をなしている第一又は第二の発明に記載の巻取体の装脱着方法である。
【0012】
第四の発明は、前記昇降ステージの表面には、前記コア支持体の外周に沿った段部が形成されており、前記段部の底部内に前記コア支持体が配置される第一から第三のいずれかの発明に記載の巻取体の装脱着方法である。
【0013】
第五の発明は、前記位置合わせシャフトと前記搬送シャフトとの仮接続部分には、互いに嵌合可能な凹凸部が形成されている第一から第四のいずれかの発明に記載の巻取体の装脱着方法である。
【0014】
第六の発明は、前記位置合わせシャフトの中央部の外径が両端部の外径よりも小さい第一から第五のいずれかの発明に記載の巻取体の装脱着方法である。
【0015】
第七の発明は、電気めっきにより基材上に金属めっき層を設ける金属張積層体の製造に用いられる第一から第六のいずれかの発明に記載の巻取体の装脱着方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、巻取体を垂直に搬送シャフトに装着して長尺フィルムを垂直状態で搬送する方式(垂直ロールツウロール方式)においても、長尺フィルムを傷付けることなく、巻取体を簡便かつ安全な方法で搬送シャフトに装着・脱着が可能な巻取体の装着方法及び巻取体の脱着方法である。そのため、特に長尺フィルムを垂直状態で搬送する方式により搬送し電気めっきを行い長尺フィルム上に金属めっき層を設ける工程を含む金属張積層体の製造において有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】巻取体が搬送シャフトに装着された状態の模式図である。
図2】垂直ロールツウロール方式により電気めっきが行われる本発明の一実施形態を表した平面模式図である。
図3】基材11aと積層体11bの断面を表した模式図である。
図4】長尺フィルム11と中空コア16からなる巻取体と、コア支持体15と、昇降ステージ12上との配置を表した斜視図である。
図5】工程(2)での巻取体の仮支持の態様を表した模式図である。
図6】工程(2)を経た後のリフター1と巻取体との関係を図示した模式図である。
図7】工程(3)により昇降ステージ12を上昇させ、位置合わせシャフトに中空コア16及びコア支持体15を貫通させている状況を表した模式図である。
図8】工程(4)にて位置合わせシャフト13と搬送シャフト14とを一直線上になるように仮配置させる状況を表した模式図である。
図9】工程(4)を経た後のリフター1と巻取体との関係を図示した模式図である。
図10】工程(1)から(5)の流れを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0019】
<巻取体の装着方法>
本発明の巻取体の装着方法は、巻出部から繰り出して巻取部で巻き取りながら長尺フィルムを垂直状態で搬送する方式(以後、垂直ロールツウロール方式と表記することがある。)の搬送系を有する工程において使用することのできる巻取体の装着方法であって、巻取体を巻出部の搬送シャフトに所定のリフターを用いて装着する方法である。なお、本発明における長尺フィルムとは、例えば樹脂フィルム単体のみならず、各種積層体を含む意味であり、巻取部に装着されるフィルム、巻取部に装着されるフィルムの双方を含む概念である。また、本明細書における基材とは、めっき工程前の長尺フィルムを意味し、これも樹脂フィルム単体のみならず、各種金属層等が積層された積層体を含む意味である。
【0020】
図1に、巻取体が搬送シャフトに装着された状態の模式図を示す。巻取体2は、例えば、長尺フィルム11と中空コア16からなる構成であり、長尺状の長尺フィルム11が中空コア16に巻き取られているものである。中空コア16は、所定径の空洞を有する筒状の形状である。そして、中空コア16には中空コア貫通穴16aが設けられ、中空コア貫通穴16aに搬送シャフト14に貫通することで巻取体2が搬送シャフト14に装着される。図1のように、巻取体2が搬送シャフト14に装着(固定)されることで、巻取体2が倒れることなく巻取体2が回転し、長尺フィルム11を垂直状態で搬送することができる。
【0021】
また、長尺フィルム11は、中空コア16の長手方向の幅よりも狭い。そのため、中空コア16の両端は、巻き取られた長尺フィルム11の両端側から延出している。そのため、巻取体を垂直方向に設置したとしても長尺フィルムが設置面に直接接触することはない。そのため、長尺フィルム11を垂直状態で搬送したとしても長尺フィルム11が傷付くことはない。
【0022】
[垂直ロールツウロール方式が用いられる一実施形態]
垂直ロールツウロール方式が用いられる一実施形態を図2に示す。図2は、垂直ロールツウロール方式により電気めっきが行われる状態を模式図化したものである。長尺フィルムである基材11aを巻出部2aから垂直状態で電気めっき装置100に繰り出す。そして、電気めっき装置100で硫酸銅等のめっき浴中に浸され、電気めっきにより、基材11aに銅等の金属めっき層が積層される。そして金属めっき層が積層された積層体11bを巻取部2bで巻き取る。
【0023】
基材11aと積層体11bの断面を表した模式図を図3に示す。図3においては、基材11aは、樹脂フィルム110の表面に下地金属層111及び銅薄膜層112が積層されている。下地金属層111は、例えばニッケル、クロム、又はこれらを主成分とする合金のいずれか1種を挙げることができる。銅薄膜層112は、主に銅で構成された層である。これらの金属層は、蒸着法やスパッタリング法等の乾式めっき法等によって積層することができる。基材11aは、図3に示すように金属層等が積層された樹脂フィルム層でもよいし、樹脂フィルム単独(図示せず)でもよい。
【0024】
積層体11bは、長尺フィルム11aに、更に金属めっき層113が積層された積層体である。金属めっき層113は、図2のめっき装置100にて、硫酸銅等のめっき浴中に浸され、電気めっきによって積層することができる。
【0025】
なお、本発明の巻取体の装着方法及び脱着方法は、上記のような金属めっきラインに限定されるものではなく、コーティング、印刷、表面処理、巻き返し等、垂直ロールツウロール方式であればいずれの搬送系においても適用可能である。
【0026】
[リフターを用いた巻取体の装着方法]
本発明の巻取体の装着方法は、リフターを用いた巻取体であって、下記工程(1)から工程(5)を備える巻取体の装着方法である。
【0027】
工程(1):鉛直方向上下に巻取体を昇降可能な昇降ステージと、搬送シャフトと略同一径の位置合わせシャフトが鉛直下方に向けて配置され、かつ、鉛直方向上下に昇降可能な位置合わせシャフト昇降部と、を備える移動可能なリフターを用意する工程。
工程(2):前記昇降ステージが下降した状態の昇降ステージ上に、前記中空コアの外径未満で前記搬送シャフトを貫通可能な径の貫通穴を有するコア支持体と、前記垂直状態の前記巻取体とを順次配置し、前記巻取体を垂直状態で前記コア支持体上に仮支持する工程。
工程(3):前記仮支持された状態で、前記昇降ステージを上昇させ、前記巻取体の中空コア及び前記コア支持体を、前記位置合わせシャフトに貫通させる工程。
工程(4):前記リフターを移動して、前記位置合わせシャフトと、前記搬送シャフトとが一直線上になるように配置し、その後に前記位置合わせシャフトを下降させて、両シャフトを一直線上に仮接続し、更に前記昇降ステージを下降させて、前記巻取体及び前記コア支持体を搬送シャフトに移動装着する工程。
工程(5):前記位置合わせシャフトを上昇させて、前記昇降ステージと共に前記リフターを前記搬送シャフトから離脱させる工程。
以下、各工程について、工程全体の概要を示す図10を適宜併せて参照しつつ、各工程を説明する。
【0028】
(工程(1)について)
工程(1)は、所定のリフター1を用意する工程である。図6に本発明の巻取体の装着方法で用いられるリフターの一例を示す。リフター1は、鉛直方向上下に昇降可能な昇降ステージ12と、搬送シャフト14と略同一径であって鉛直方向上下に配置されている位置合わせシャフト13と、それを基部で支持する支持部13aとからなり、位置合わせシャフト昇降部を構成している。この支持部13aは、図6の矢印方向、すなわち、鉛直方向上下に昇降可能であり、これによって、位置合わせシャフト13が鉛直方向上下に移動可能に構成されている。
【0029】
位置合わせシャフト13の外径は後述するように、搬送シャフトと一直線上に仮接続されるため(図8図9参照)、搬送シャフトの外径と略同一径である。なお、位置合わせシャフトの材質は特に制限されるものではないが、堅牢性の観点から金属等の材質であることが好ましい。また、位置合わせシャフトの中央部の外径が位置合わせシャフトの両端部の外径よりも小さいことが好ましい(図示せず)。このような構造であれば、巻取体2の中空コア16の装着及び脱着が容易になる。
【0030】
また、位置合わせシャフト13は、鉛直方向上下に昇降可能であるものとする。鉛直方向上下に昇降可能であることで、後述するように、位置合わせシャフトと搬送シャフトとを一直線上に仮接続及び離脱を行うことが可能となる。昇降は、モーター等を用いた電動式で実現できるものでも手動式で実現できるものでもよく、特に制限されるものではない。
【0031】
昇降ステージ12は巻取体を上下に昇降する機能を有する。昇降は、モーター等を用いた電動式で実現できるものでも手動式で実現できるものでもよく、特に制限されるものではない。また、昇降ステージ12は、コア支持体15を設置し易く、かつコア支持体15の固定が容易な構造であることが、操作の容易性の観点から好ましい。例えば、図4の昇降ステージ12のように、コア支持体の外周に沿った段部12aが形成されていることが好ましい。
【0032】
また、昇降ステージ12は、後述するように巻取体2の中空コア16とコア支持体15とを位置合わせシャフト及び搬送シャフトに貫通させる必要がある。そのため、昇降ステージ12は、図4のように搬送シャフトの径を挟み込み可能な開口部12bを有する形状であって、その開口部12bの形状が平面視U字状をなしていることが好ましい。
【0033】
リフター1は、後に示す工程により、位置合わせシャフトと搬送シャフトとが一直線上になるように配置できるようにする必要がある。また、巻取体を搬送シャフトに設置後は搬送シャフトから離脱する必要がある。そのため、リフター1は、移動可能である必要がある。移動手段は、動力を有するものでも、例えばキャスターのようなものが備わったものでもよく、特に制限はされない。
【0034】
(工程(2)について)
工程(2)は、リフターの昇降ステージに、コア支持体と巻取体とを順次配置し、巻取体を垂直状態でコア支持上に配置(仮支持)する工程である(図10(a)の状態)。コア支持体と巻取体とを順次配置するとは、図4に示すように昇降ステージ12にコア支持体15と中空コア16(巻取体2)とを重ねて配置することをいう。
【0035】
コア支持体15は、図4に示すように搬送シャフト及び位置合わせシャフトを貫通することができるコア支持体貫通穴15aを備える。また、コア支持体15のコア支持体貫通穴15aの内径は中空コア16の外径未満にする。コア支持体15のコア支持体貫通穴15aの内径は中空コア16の外径以上の場合、中空コア16がコア支持体15のコア支持体貫通穴15aを通過してしまい、長尺フィルム11がコア支持体15に接触するため、巻取体2の長尺フィルムを傷付けないという本発明の目的を達成できなくなる。
【0036】
また、中空コア16とコア支持体15とを同時にシャフトに貫通させるようにするには、例えば図5のように中空コア16のエッジとコア支持体15とが接触するように、コア支持体15上に乗るように配置(仮支持)されることが好ましい。
【0037】
中空コア16は所定の幅を有し、長尺フィルム11は、所定の幅よりも狭く、中空コア16の両端は、巻き取られた長尺フィルム11の両端側から延出している。そのため、コア支持体15上に巻取体の中空コア16を配置(仮支持)したとしても長尺フィルム11がコア支持体15や昇降ステージ12に接触することはない。そのため、巻取体の長尺フィルム11を傷付けることなく配置(仮支持)することができる。
【0038】
昇降ステージ12上にコア支持体15と巻取体の中空コア16とを配置(仮支持)する方法は特に制限されない。例えば治具等を用いて配置(仮支持)してもよいし、手動により配置(仮支持)する方法でもよい。
【0039】
(工程(3)について)
工程(3)は、昇降ステージ12を上昇させて、巻取体2の中空コア16及びコア支持体15を位置合わせシャフト13に貫通させる工程である(図10(b)の状態)。工程(2)を経ることでコア支持体15及び中空コア16と長尺フィルム11からなる巻取体2は図6に示すような構成となる。そして昇降ステージ12を図7に示すように上昇させて、中空コア16の中空コア貫通穴16aに位置合わせシャフト13を中空コア16の上部から貫通させる。昇降ステージ12は、図8に示すように中空コア16、コア支持体15、昇降ステージ12が貫通するまで上昇させる。工程(3)を経ることによって、巻取体2は、図8のようにリフター1の位置合わせシャフト13に仮装着されることになる(図10(c)の状態)。
【0040】
(工程(4)について)
工程(4)は、リフター1を移動して、位置合わせシャフト13と、搬送シャフトとが一直線上になるように配置する工程である。つまり、工程(1)から(3)の作業は、例えば、装着すべき巻取体2の保管場所等で行われるのに対して、この工程(4)を開始するにあたり、搬送系の搬送シャフト上にリフター1を移動することになる。ここで、位置合わせシャフト昇降部、具体的には支持部13aを下降させることで、位置合わせシャフト13を下降させて、両シャフトを一直線上に仮接続し、更に昇降ステージ12を下降させて、巻取体2及びコア支持体15を搬送シャフト14に移動装着する工程である。
【0041】
巻取体2がリフター1に装着された状態でリフター1の位置合わせシャフト13と搬送シャフト14が一直線上に配置されるようにリフター1を移動させる(図8参照)。位置合わせシャフト13と搬送シャフト14が一直線上に配置されるようにリフター1を移動させた後は、位置合わせシャフト13を下降させて、両シャフトを一直線上に仮接続する。この場合、仮接続を容易にする観点から、図8のように位置合わせシャフト13と搬送シャフト14との仮接続部分には、互いに嵌合可能な凹凸部が形成されていることが好ましい。
【0042】
この仮接続状態で、昇降ステージ12を下降させると、巻取体2及びコア支持体15は自重で下方にスライドして、位置合わせシャフト13から搬送シャフト14のほうにスライド移動する。工程(4)を経た後、巻取体は図9のように配置される(図10(d)の状態)。
【0043】
(工程(5)について)
工程(5)は、位置合わせシャフト昇降部を上昇させて、搬送シャフト14と位置合わせシャフト13の仮接続を解除し、その後に、昇降ステージ12と共にリフター1を移動することで、リフター1を搬送シャフト14から離脱させる工程である。リフター1を搬送シャフトか14ら離脱させる工程を経ることで、図1のように巻取体2が搬送シャフト14に装着された状態となる(図10(e)の状態)。
【0044】
以上、本発明の巻取体の装着方法を用いることで巻取体の長尺フィルムを傷付けることなく、簡便かつ安全な方法で行うことができる。そのため、本発明の巻取体の装着方法は、例えば、垂直ロールツウロール方式により、長尺フィルム上に金属めっき層を設ける工程を含む金属張積層体の製造において有用に使用することができる。
【0045】
<巻取体の脱着方法>
本発明の巻取体の脱着方法は、垂直ロールツウロール方式の搬送系において、巻取体を、巻取部の搬送シャフトにリフターを用いて脱着する方法である。
【0046】
[リフターを用いた巻取体の脱着方法]
本発明の巻取体の脱着方法は、本発明の巻取体の装着方法により装着された巻取体の脱着方法であって、下記工程(6)から工程(10)を備える巻取体の脱着方法である。本発明の巻取体の脱着方法は、本発明の巻取体の装着方法同様のリフターを用いることができる。
【0047】
工程(6):鉛直方向上下に巻取体を昇降可能な昇降ステージと、前記シャフトと略同一径の位置合わせシャフトが鉛直下方に向けて配置され、かつ、鉛直方向上下に昇降可能な位置合わせシャフト昇降部と、を備える移動可能なリフターを用意する工程。
工程(7):巻取部の搬送シャフトにあらかじめ、前記中空コアの外径未満で前記搬送シャフトを貫通可能な径の貫通穴を有するコア支持体を貫通配置し、その上に前記中空コアを貫通配置した状態で巻き取りを行う工程。
工程(8):前記リフターを移動して、前記コア支持体の下に前記昇降ステージを挿入すると共に、前記位置合わせシャフトと、前記搬送シャフトとが一直線上になるように配置し、その後に前記位置合わせシャフトを下降させて、両シャフトを一直線上に仮接続し、更に前記昇降ステージを上昇させて、前記巻取体及び前記コア支持体を前記位置合わせシャフトに移動装着する工程。
工程(9):前記位置合わせシャフトを上昇させて、前記リフターを前記搬送シャフトから離脱させる工程。
工程(10):前記昇降ステージを下降させて、前記巻取体を前記位置合わせシャフトから脱着させる工程。
【0048】
(工程(6)について)
工程(6)は、工程(1)同様に所定のリフター1を用意する工程である。
【0049】
(工程(7)について)
工程(7)は、巻取部の搬送シャフト14にあらかじめ、中空コア16の外径未満で搬送シャフト14を貫通可能な径の貫通穴を有するコア支持体15を貫通配置し、その上に中空コア16を貫通配置した状態で巻き取りを行う工程である。すなわち、搬送シャフト14に装着された中空コア16によって巻出部から搬送された長尺フィルムを巻き取る工程である。工程(7)を経ることによって、図1のように中空コア16に長尺フィルム11が巻き取られた状態になる。搬送シャフト14にはあらかじめ、本発明の巻取体の装着方法で用いられたコア支持体15が貫通して配置されている。
【0050】
(工程(8)について)
工程(8)は、リフター1を移動して、コア支持体15の下に昇降ステージ12を挿入すると共に、位置合わせシャフト13と、搬送シャフト14とが一直線上になるように配置し、その後に位置合わせシャフト13を下降させて、両シャフトを一直線上に仮接続し、更に昇降ステージ12を上昇させて、巻取体2及びコア支持体15を位置合わせシャフト13に移動装着する工程である。
【0051】
リフター1を移動して、コア支持体15の下に昇降ステージ12を挿入すると共に、位置合わせシャフト13と、搬送シャフト14とが一直線上になるように配置する方法は、上記工程と同様である。位置合わせシャフト13を下降させて、両シャフトを一直線上に仮接続する方法は、上記工程と同様である。昇降ステージ12を上昇させて、巻取体2及びコア支持体15を位置合わせシャフト13に移動装着する方法は、巻取体2の移動方向が搬送シャフト14側から位置合わせシャフト13へとスライド移動する点を除いて上記工程と同様である。
【0052】
(工程(9)について)
工程(9)は、位置合わせシャフト13を上昇させて、リフター1を搬送シャフト14から離脱させる工程である。工程(9)を経ることによって、巻取体2が図8のように配置される。巻取体2が図8のように配置されることで、移動可能なリフター1によって巻取体2及びコア支持体15を移動させることが可能となる。
【0053】
(工程(10)について)
工程(10)は、リフター1を移動した後、昇降ステージ12を下降させて、巻取体2を位置合わせシャフト13から脱着させる工程である。リフター1を移動する方法及び昇降ステージ12を下降方法は上記工程と同様に行うことができる。工程(10)を経ることによって、巻取体2を脱着することが可能となる。
【0054】
(工程(6)から(10)について)
垂直ロールツウロール方式の搬送系において必要となる巻取体の脱着は、工程(6)から(10)を備える本発明の巻取体の脱着方法を用いることで巻取体の長尺フィルムを傷付けることなく、巻取体の脱着を簡便かつ安全な方法で行うことができる。そのため、本発明の巻取体の脱着方法は、例えば、垂直ロールツウロール方式により、長尺フィルム上に金属めっき層を設ける工程を含む金属張積層体の製造において有用に使用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 リフター
11 長尺フィルム
11a 基材
11b 金属積層体
12 昇降ステージ
12a 段部
12b 開口部
13 位置合わせシャフト
13a 支持部
14 搬送シャフト
15 コア支持体
15a コア支持体貫通穴
16 中空コア
16a 中空コア貫通穴
2 巻取体
2a 巻出部
2b 巻取部
110 樹脂フィルム
111 下地金属層
112 銅薄膜層
113 金属めっき層
100 電気めっき装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10