【実施例】
【0020】
(実施例1)
上記回転速度測定システムに係る実施例について、
図1〜
図8を用いて説明する。本例の回転速度測定システム1は、
図1〜
図3に示すごとく、磁気センサ3と、加速度センサ4と、終了検出部6と、算出部7とを備える。磁気センサ3は、少なくとも一軸方向の地磁気を測定する。加速度センサ4は、少なくとも一軸方向の加速度を測定する。磁気センサ3及び加速度センサ4は、ボール2内に設けられている。
【0021】
終了検出部6は、加速度センサ4によって測定された加速度の、予め定められた微小時間単位における変化量の絶対値である加速度変化量|ΔA|(
図5参照)が予め定められた第1の閾値V1以下にある低変動状態S
L(
図4、
図5参照)が、予め定められた時間以上続いた後、上記加速度変化量|ΔA|が予め定められた第2の閾値V2以上となる高変動状態S
Hへ切り替わる時点を、ボール2の空中移動が終了したとみなす終了時点T
Eとして検出する。また、ボール2は、上記加速度変化量|ΔA|の計算に必要な、加速度センサ4の測定値を記憶する加速度センサ用メモリ112を備えている。なお、加速度センサ用メモリ112は、低変動状態S
Lから高変動状態S
Hに切り替わる時点の判断に必要な加速度の測定データを記憶できる容量を確保できていればよく、大容量のメモリは不要である。
【0022】
算出部7は、終了時点T
Eまでに磁気センサ3によって取得された、地磁気の測定データ(
図6参照)の周波数を解析することにより、空中を移動するボール2の回転速度を算出する。
【0023】
本例では
図1、
図2に示すごとく、ボール2内に、開始検出部5と、メモリ111(磁気センサ用)と、加速度センサ用メモリ112と、無線送信部12と、バッテリ13とを設けてある。ボール2は、野球用のボールである。ボール2は、空中移動を開始した後、ミットやネット等の外部部材(図示しない)に当たって、空中移動を終了する。この外部部材の近傍には、
図3に示すごとく、外部機器10が配されている。外部機器10内には、算出部7と、表示部14と、無線受信部15とが設けられている。
【0024】
開始検出部5は、加速度センサ4によって加速度の測定が開始された後に上記加速度変化量|ΔA|が予め定められた第3の閾値V3以上となる初期変動状態S
B(
図4、
図5参照)を終了した時点を、ボール2の空中移動が開始されたとみなす開始時点T
Sとして検出する。また、算出部7は、上記開始時点T
Sから上記終了時点T
Eまでに磁気センサ3によって取得された、地磁気の測定データの周波数を解析する。これにより、空中を移動するボール2の回転速度を算出する。算出した回転速度は、表示部14に表示される。
なお、上記表示部14には、上記開始時点T
Sから上記終了時点T
Eまでの平均的な回転速度を表示しても良いが、ボール2が空中を移動している時間を複数に分けて、例えば初期回転速度、中間回転速度、最終回転速度のように、複数の回転速度を表示することも可能である。
【0025】
また、上記メモリ111には、地磁気の測定データが記憶され、加速度センサ用メモリ112には、加速度センサ4の測定データが記憶される。本例では、加速度センサ用メモリ112から、加速度の測定データを取り出し、これを用いて開始時点T
S及び終了時点T
Eを求めている。メモリ111には、地磁気の測定データを全て記憶するのではなく、上記開始時点T
Sから上記終了時点T
Eまでの間に得られた測定データのみを記憶する。ボール2が上記外部部材に当たり、空中移動を終了すると、メモリ111に記憶された地磁気の測定データは、無線送信部12によって、無線受信部15に無線送信される。この、無線送信された地磁気の測定データを用いて、算出部7がボール2の回転速度を算出する。
【0026】
また、本例の磁気センサ3は、互いに直交する3つの軸方向における地磁気をそれぞれ測定するよう構成されている。同様に、本例の加速度センサ4は、互いに直交する3つの軸方向における加速度をそれぞれ測定するよう構成されている。磁気センサ3
の構造は、後述する。
【0027】
次に、
図4、
図6を用いて、ボールを空中移動させたときの、加速度センサ4及び磁気センサ3の出力の時間変化について説明する。まず、同図のグラフを得たときの条件について説明する。これらのグラフを得るにあたって、まず、野球のボール2に磁気センサ3及び加速度センサ4を設けた。そして、このボール2を、手に持って回転させつつ鉛直方向上方に放出し、落下したボール2を、手の中で回転させつつ受け止めた。このとき、加速度センサ4によって測定された、3つの軸方向についての加速度の測定データのうち、高変動状態S
Hにおける変動量が最も大きい測定データを、
図4に示す。また、磁気センサ3によって測定された、3つの軸方向についての地磁気の測定データのうち、振幅が最も大きい測定データを、
図6に示す。
【0028】
加速度センサ4は、4ms毎に加速度の測定データを出力するよう構成してある。つまり、
図4のグラフの各測定データは、4ms間隔で取得されたものである。この測定データを用いて、
図5のグラフを作成した。
図5のグラフを作成するにあたって、加速度センサ4によって取得された各測定データA(n)から、一つ前に取得した測定データ、すなわち4ms前に取得した測定データA(n−1)を減算し、これの絶対値をとって上記加速度変化量|ΔA|とした。すなわち、
|ΔA|=|A(n)−A(n−1)| ・・・(1)
として加速度変化量|ΔA|を算出した。このように、本例では、加速度変化量|ΔA|を算出する際の上記微小時間単位を、4msにした。
なお、本例では、加速度の測定データを、測定時間の情報と共に加速度センサ用メモリ112に記憶しつつ、加速度センサ用メモリ112から加速度の測定データを読み出し、その測定データを用いて、各測定時間における加速度変化量|ΔA|を算出している。また、本例では、算出した加速度変化量|ΔA|も、時間情報と共に加速度センサ用メモリ112に記憶している。これにより、低変動状態がどの程度継続したかの判断を容易に行うことが可能になる。
【0029】
図4に示すごとく、加速度の測定を開始した後、上記初期変動状態S
Bが現れる。これは、ボール2を空中に放出する際に、ボール2が手から力を受けるため、加速度が短時間で大きく変化するからである。
【0030】
初期変動状態S
Bが終了した後、上記低変動状態S
Lが現れる。低変動状態S
Lでは、ボール2は空気抵抗を僅かに受けるものの、その他の外力は殆ど受けない。そのため、加速度センサ4は、外部からの力に起因する加速度を殆ど検出しない。また、ボール2は自由落下しているため、重力加速度も検出されない。低変動状態S
Lでは、ボール2が回転して遠心力が発生するため、この遠心力に起因する加速度を、加速度センサ4は主に検出する。ボール2が空中を移動している間は、遠心力は略一定であるため、低変動状態S
Lでは、加速度の測定値は略一定になる。
【0031】
低変動状態S
Lが暫く続いた後、高変動状態S
Hが現れる。高変動状態S
Hでは、ボール2が受け止められるため、ボール2が手から大きな力を受ける。そのため、加速度センサ4が加速度の大きな変化を検出する。
【0032】
以上説明したように、ボール2が空中移動を開始する際には、ボール2は手から大きな力を受けるため、加速度の測定データが短時間で大きく変化する上記初期変動状態S
Bが現れる。したがって、この初期変動状態S
Bが終了する時点を、ボール2が空中移動を開始する時点とみなすことができる。
また、空中移動を終了する際には、ボール2は外部から再び大きな力を受けるため、加速度の測定データが短時間で大きく変化する上記高変動状態S
Hが現れる。したがって、低変動状態S
Lから高変動状態S
Hに切り替わる時点を、ボール2の空中移動が終了する時点とみなすことができる。
【0033】
上記加速度変化量|ΔA|を用いれば、上記開始時点Ts及び終了時点
TEを自動的に検出することができる。すなわち、
図5に示すごとく、初期変動状態S
Bでは、ボール2が力を受けて加速度が短時間で大きく変化するため、加速度変化量|ΔA|が高くなる。そのため、加速度変化量|ΔA|が第3の閾値V3以上になった状態を、初期変動状態S
Bとして検出できる。また、この初期変動状態S
Bが終了する時点、すなわち加速度変化量|ΔA|が第3の閾値V3以下になる時点を、上記開始時点Tsとして検出することができる。
【0034】
また、低変動状態S
Lでは、加速度が大きく変化しないため、加速度変化量|ΔA|は小さな値になる。そのため、開始時点Tsの後、加速度変化量|ΔA|が第1の閾値V1以下になったか否かを判断することにより、低変動状態S
Lになったか否かを判断できる。また、ボール2が空中移動を終了し、ミット等の外部の物体に当たると、高変動状態S
Hとなり、ボール2が力を受けて加速度が短時間で大きく変化する。そのため、加速度変化量|ΔA|が高くなる。したがって、加速度変化量|ΔA|が第2の閾値V2以上になった状態を、高変動状態S
Hとして検出できる。また、低変動状態S
Lから高変動状態S
Hに切り替わる時点、すなわち加速度変化量|ΔA|が第2の閾値V2以上になる時点を、終了時点T
Eとして検出できる。
【0035】
なお、
図4に示すごとく、初期変動状態S
Bの前にも、加速度が比較的大きく変化する状態(投球準備状態S
P)が現れる。この投球準備状態S
Pは、ボール2を持つ手が、ボール2を放出する準備動作を行ったため現れた状態であると考えられる。投球準備状態S
Pは、測定データの変化が、初期変動状態S
Bほど大きくない。すなわち、投球準備状態S
Pでは、加速度が初期変動状態S
Bほど急激に変化していない。そのため、投球準備状態S
Pにおける加速度の変化が初期変動状態S
Bほど急でなければ、投球準備状態S
Pと初期変動状態S
Bとを区別することができる。なお、投球準備状態S
Pと初期変動状態S
Bとを区別できない場合は、投球準備状態S
Pが終了した時点を、開始時点T
Sとして検出してもよい。
【0036】
また、
図4に示すごとく、初期変動状態S
Bから低変動状態S
Lに切り替わる際に、加速度が僅かに変動する遷移状態S
Tが現れる。遷移状態S
Tでは、ボール2が手から離れつつあるが、完全に離れておらず、指から僅かに力を受けるため、加速度センサ4が小さな加速度を検出すると考えられる。この遷移状態S
Tも、加速度が初期変動状態S
Bほど急激に変化しない。本例の回転速度測定システム1は、遷移状態S
Tは、
図5に示すごとく、加速度変化量|ΔA|が第3の閾値V3よりも小さいため、初期変動状態S
Bとして検出しない。
【0037】
図6に示すごとく、磁気センサ3による地磁気の測定データは、ボール2が空中移動している間、略一定の周期で変化する。これは、空中でボール2が回転しているため、地磁気に対する磁気センサ3の向きが周期的に変化するからである。したがって、地磁気の測定データの周波数は、ボール2の単位時間当たりの回転数と等しい。そのため、上記周波数を算出することにより、ボール2の回転速度を求めることができる。なお、周波数を算出する際には、地磁気の測定データをFFT(高速フーリエ変換)処理する方法を用いることができる。
【0038】
終了時点T
Eの後、地磁気の測定データの周波数は、暫くの間は、空中移動中の周波数と略同じであるが、次第に低くなる。すなわち、周期が次第に長くなる。これは、本例では、ボール2を手で受け止めた後、すぐにボール2を手でつかんで回転を止めずに、ボール2が手の中で暫く回転を続け、ゆっくりと、摩擦によって回転速度が低下する状況で、地磁気を測定したからである。このように、ボール2を受け止めた後、回転がすぐに止まらない場合は、地磁気の測定データの周波数が終了時点T
Eの前後で大きく変化しない。そのため、この場合、磁気センサ3のみを用いて終了時点T
Eを正確に検出することは困難である。これに対して、加速度センサ4の測定データは、終了時点T
Eの前後で大きく変化する。そのため、加速度センサ4の測定データを用いれば、ボール2を受け止めた後、回転がすぐに止まらない場合であっても、終了時点T
Eを正確に検出することが可能となる。
【0039】
次に、本例の回転速度測定システム1のフローチャートについて説明する。
図7に示すごとく、回転速度測定システム1は、まず、ステップS1を行う。ここでは、加速度センサ4の測定データを用いて、上記初期変動状態S
Bになったか否かを判断する。すなわち、上記加速度変化量|ΔA|(
図5参照)が第3の閾値V3以上となる状態(初期変動状態S
B)になったか否かを判断する。ここでYesと判断した場合は、ステップS2に移る。ここでは、初期変動状態S
Bが終了した時点を、上記開始時点T
Sとして検出する。
【0040】
その後、ステップS3に移る。ここでは、ボール2が低変動状態S
Lとなり、その後、高変動状態S
Hになったか否かを判断する。すなわち、上記加速度変化量|ΔA|が第1の閾値V1以下にある低変動状態S
Lから、加速度変化量|ΔA|が第2の閾値V2以上となる状態(高変動状態S
H)へ切り替わったか否かを判断する。ここでYesと判断した場合は、ステップS4に移る。
【0041】
ステップS4では、低変動状態S
Lから高変動状態S
Hに切り替わった時点を、終了時点T
Eとして検出する。その後、ステップS5に移る。ステップS5では、開始時点T
Sから終了時点T
Eまでに得られた地磁気の測定データを、無線送信部12を用いて、外部機器10に無線送信する。その後、ステップS6に移る。ステップS6では、算出部7を用いて、開始時点T
Sから終了時点T
Eまでに磁気センサ3によって得られた地磁気の測定データの周波数を解析する。これにより、ボール2の回転速度を算出する。そして、算出した回転速度を表示部14に表示する。
【0042】
次に、磁気センサ3の構造について説明する。本例の磁気センサ3は、マグネトインピーダンスセンサからなる。
図8に示すごとく、磁気センサ3は、センサ基板30と、ワイヤ固定部31と、アモルファスワイヤ32と、検出コイル33とを備える。アモルファスワイヤ32は、ワイヤ固定部31に固定されている。アモルファスワイヤ32は、3本設けられている。個々のアモルファスワイヤ32に、上記検出コイル33を巻回してある。
【0043】
3本のアモルファスワイヤ32は、互いに異なる軸方向(X方向、Y方向、Z方向)を向いている。個々のアモルファスワイヤ32を用いて、各軸方向における、地磁気の強さを測定するよう構成されている。
【0044】
また、加速度センサ4としては、市販の静電容量型で、互いに直交する3軸方向の加速度が測定可能なセンサを用いた。
【0045】
なお、本発明では、ボール2の回転による遠心力が加速度センサ4の検出値に影響を与えても、開始時点T
S及び終了時点T
Eの判断は可能であるため、加速度センサ4は、必ずしも、遠心力の影響が小さいボール2の中心に設ける必要はなく、ボール2の表面付近に設けてもよい。但し、現実の試合に用いる普通のボールと、持ったときの感覚に差異が生じないようにすることは必要である。
【0046】
次に、本例の作用効果について説明する。
図2、
図3に示すごとく、本例においては、ボール2に加速度センサ4を設けてある。また、本例の回転速度測定システム1は、上記終了検出部6を備える。
そのため、終了検出部6により、ボール2の空中移動が終了したとみなすことができる時点である上記終了時点T
Eを検出することができる。すなわち、ボール2が空中を移動しているときは、ボール2には、空気抵抗が僅かに作用するものの、外部から大きな力は殆ど作用しない。そのため、ボール2が空中移動している間は、加速度センサ4は、外部からの力に起因する加速度は殆ど検出せず、ボール2の回転によって生じる遠心力に起因する、略一定の加速度を主に測定することになる。したがって、この間は、加速度センサ4の出力は略一定になる。また、ボール2がミット等の外
部部材に当たり、空中移動を終了すると、ボール2に大きな力が加わるため、加速度が短時間で大きく変化する。そのため、加速度センサ4によって検出できる加速度の変化を用いて、上記終了時点T
Eを検出することができる。つまり、ボール2が空中移動して加速度が大きく変化しない状態(低変動状態S
L)から、加速度が短時間で大きく変化する状態(高変動状態S
H)に切り替わる時点を、上記終了時点T
Eとして検出することができる。
【0047】
なお、ボール2に加速度センサ4を設けず、磁気センサ3のみを用いて、上記終了時点T
Eを検出する方法も考えられる。すなわち、ボール2がミット等に当たって空中移動を終了し、ミット内でボール2の回転速度が急速に低下する場合は、地磁気の測定データの周波数が急速に低下する。そのため、この場合には、上記周波数が急に低下する時点を検出することにより、終了時点T
Eを検出することができる。しかしながら、ボール2がネット等の柔らかい部材に当たって空中移動を終了した場合は、ボール2はネット等に当たった後も暫く回転運動を続けるため、回転速度が急速には低下しない。そのため、この場合、地磁気の測定データは、終了時点T
Eの前後において、暫くの時間は大きく変化しない(
図6参照)。したがって、磁気センサ3のみを用いても、ボール2の空中移動が終了したタイミングを正確に検出できない。これに対して、本例のように加速度センサ4を用いれば、ボール2がネット等の柔らかい部材に当たったときでも、加速度センサ4によって加速度の大きな変化を検出できるため(
図4参照)、ボール2の空中移動が終了したタイミングを正確に検出することが可能になる。
【0048】
また、本例の回転速度測定システム1は、開始検出部5を備える。開始検出部5は、加速度センサ4によって加速度の測定が開始された後に上記加速度変化量|ΔA|が予め定められた第3の閾値V3以上となる初期変動状態S
Bを終了した時点を、ボール2の空中移動が開始されたとみなす開始時点T
Sとして検出する。
このようにすると、加速度センサ4によって測定した加速度の変化を用いて、開始時点T
Sを検出することができる。すなわち、ボール2が空中移動を開始するときは、手や足等からボール2に大きな力が加わるため、加速度が短時間で大きく変化する。したがって、加速度センサ4によって加速度の測定を開始した後に、加速度の値が急に変化する時点を検出することにより、開始時点T
Sを検出することができる。
【0049】
また、上記開始時点T
Sと上記終了時点T
Eとをそれぞれ検出すると、ボール2が空中移動を開始する前や、空中移動を終了した後に得られた地磁気の測定データを、外部機器10に無線送信しなくてすむ。つまり、ボール2が空中移動しているときに得られた地磁気の測定データのみを、外部機器10に無線送信できる。そのため、無線送信に必要なバッテリ13の消費速度を低減することができる。
【0050】
また、本例の加速度センサ4は、互いに異なる複数の軸方向の加速度を測定するよう構成されている。そして、終了検出部6は、複数の軸方向についての加速度の測定データのうち、高変動状態S
Hにおける加速度の変化量が最も大きい測定データを用いて、終了時点T
Eを検出するよう構成されている。
このようにすると、複数の軸方向について加速度を測定しているため、これら複数の軸方向のうちいずれか一つは、高変動状態S
Hに加速度の大きな変化を測定できる可能性が高い。そのため、一軸方向だけ加速度を測定する場合よりも、終了時点T
Eを検出しやすくなる。
【0051】
また、本例の開始検出部5は、複数の軸方向についての加速度の測定データのうち、初期変動状態S
Bにおける加速度の変化量が最も大きい測定データを用いて、上記開始時点T
Sを検出するよう構成されている。
このようにすると、複数の軸方向について加速度を測定しているため、これら複数の軸方向のうちいずれか一つは、初期変動状態S
Bに加速度の大きな変化を測定できる可能性が高い。そのため、一軸方向だけ加速度を測定する場合よりも、開始時点T
Sを検出しやすくなる。
【0052】
また、本例の磁気センサ3は、互いに異なる複数の軸方向の地磁気を測定するよう構成されている。そして、算出部7は、複数の軸方向についての地磁気の測定データのうち、振幅が最も大きい測定データを用いて、ボール2の回転速度を算出するよう構成されている。
このようにすると、複数の軸方向についての地磁気の測定データのうち、振幅が最も大きい測定データを用いるため、上記周波数をより正確に算出することができる。したがって、ボール2の回転速度をより正確に算出することができる。
【0053】
また、本例では、ボール2内に、地磁気の測定データを記憶するメモリ111を設けてある。
後述するように、地磁気の測定データをメモリ111に記憶せず、外部に設けた算出部7に無線送信することも可能であるが、この場合には、送信エラーが発生すると、測定データを再送信できないため、ボール2の回転速度を算出できなくなる。しかしながら、地磁気の測定データをメモリ111に記憶すれば、送信エラーが生じた場合には、メモリ111から測定データを読み出して再び送信することが可能になる。そのため、ボール22の回転速度を確実に算出できる。
【0054】
なお、ボール2の回転速度を測定するために必要な地磁気の測定データは膨大になりやすいため、ボール2にメモリ111を搭載する場合は特に、記憶する測定データの量を少なくする工夫が望まれる。例えば野球のボール2では、回転速度は速い場合で50回転/sにもなる。また、周波数を正確に算出するためには、地磁気の測定データを1回転につき5点以上取得することが好ましい。そのため、回転速度が速い場合でもこれを正確に測定できるようにするために、例えば地磁気の測定データを1秒間に250点以上取得することが好ましい。つまり、単位時間に取得する地磁気の測定データの量を多くする必要がある。したがって、ボール2が空中移動しているときに得られた測定データか否かにかかわらず、全ての測定データを記憶しようとすると、記憶する測定データの総量が多くなり、メモリ111が大型化しやすい。これに対して、本例の回転速度測定システム1のように終了時点T
Eを検出すれば、終了時点T
Eの後に得られた測定データを記憶しなくてすむ。したがって、単位時間当たりの地磁気の測定データの量が多くても、メモリ111に記憶する測定データの総量を少なくすることができ、メモリ111を小型化することができる。
【0055】
また、本例の終了検出部6は、ボール2内に設けられている。
終了検出部6をボール2外に設けることも可能であるが、この場合には、ボール2側で終了時点T
Eを検出できなくなる。そのため、終了時点T
Eの前に得られた地磁気の測定データだけでなく、終了時点T
Eの後に得られた地磁気の測定データをも、ボール2外に設けた終了検出部6に送信しなければ、終了時点T
Eを検出することができなくなる。そのため、送信する測定データの量が多くなりやすい。これに対して、本例のように終了検出部6をボール2内に設ければ、ボール2側で終了時点T
Eを検出できるため、終了時点T
Eの前に得られた地磁気の測定データのみを、外部に送信することができる。そのため、送信する測定データの量を少なくすることができる。
【0056】
また、本例の磁気センサ3は、MIセンサからなる。
MIセンサは、磁気の測定感度が高い。また、応答性に優れているため、短時間に多数の測定値を取得できる。そのため、磁気センサ3としてMIセンサを用いれば、例えば1秒間に250点測定する場合等、短時間に多数の測定を行う必要がある場合でも、地磁気の測定値を正確かつ確実に取得でき、ボール2の回転速度を正確に算出することが可能になる。
【0057】
以上のごとく、本例によれば、ボールの空中移動が終了したタイミングを自動的に検出できる回転速度測定システムを提供することができる。
【0058】
なお、本例の回転速度測定システム1は、上記開始検出部5を備えるが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、ボール2に起動スイッチを設けておき、この起動スイッチをオンにしてからすぐにボール2を投げれば、開始時点T
Sと略等しい時点から、地磁気の測定データを取得できる。そのため、この場合でも、ボール2の回転速度を比較的正確に算出できる。
【0059】
また、本例の開始検出部5は、加速度センサ4によって測定した加速度の値を用いて、上記開始時点T
Sを検出しているが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ボール2に、指が触れたか否かを検出する接触センサを設けておき、ボール2が投げられて指が接触センサから離れた時点を、上記開始時点T
Sとして検出してもよい。
【0060】
また、本例では、回転速度測定システム1の測定対象として、野球のボールを想定して説明したが、ソフトボール、バレー、サッカー、テニス、ゴルフ、卓球等の、他の球技のボールを測定対象としてもよい。
【0061】
また、本例では、加速度変化量|ΔA|を算出する際における上記微小時間単位を4msにしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、微小時間単位は4msより長くてもよく、短くても良い。また、本例では、上記式(1)を用いて加速度変化量|ΔA|を算出した。すなわち、加速度センサ4によって得られた各測定データA(n)から、一つ前に得られた加速度の測定データA(n−1)を減算して絶対値をとったが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、上記測定データA(n)から、2つ前に得られた加速度の測定データA(n−2)を減算してもよく、3つ前に得られた加速度の測定データA(n−3)を減算してもよい。
【0062】
(実施例2)
以下の実施例においては、図面に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0063】
本例は、地磁気の測定データの送信方法を変更した例である。
図9に示すごとく、本例では、ボール2にコネクタ16を形成してある。また、実施例1と同様に、ボール2が空中移動を行っている際に、地磁気の測定データをメモリ111に記憶するよう構成してある。そして、
図10に示すごとく、ボール2の空中移動が終了した後、配線17をコネクタ16に接続し、この配線17を介して、メモリ111に記憶した地磁気の測定データを外部機器10に送信するよう構成してある。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0064】
(実施例3)
本例は、ボール2内の部品の構成を変更した例である。
図11に示すごとく、本例では、ボール2内に、回転速度測定システム1を構成する部品を全て搭載している。すなわち、ボール2内に、磁気センサ3と、加速度センサ4と、開始検出部5と、終了検出部6と、メモリ111と、バッテリ13と、算出部7と、表示部14とを設けてある。実施例1と同様に、本例では、開始検出部5と終了検出部6とを用いて、上記開始時点T
Sおよび上記終了時点T
Eを検出する。また、算出部7は、開始時点T
Sから終了時点T
Eまでの間に、磁気センサ3によって得られた地磁気の測定データを用いて、空中移動しているボール2の回転速度を算出する。そして、算出した回転速度を、ボール2に設けた表示部14に表示するよう構成されている。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。