特許第6332272号(P6332272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6332272金属酸化物膜の製造方法、及びトランジスタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332272
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】金属酸化物膜の製造方法、及びトランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/32 20060101AFI20180521BHJP
   C01F 7/30 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C01B13/32
   C01F7/30
   H01L21/316 C
   H01L21/90 L
   H01L21/90 Q
   H01L29/78 617V
   H01L29/78 617T
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-530741(P2015-530741)
(86)(22)【出願日】2014年6月18日
(86)【国際出願番号】JP2014066130
(87)【国際公開番号】WO2015019717
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2016年12月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-164248(P2013-164248)
(32)【優先日】2013年8月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中積 誠
(72)【発明者】
【氏名】西 康孝
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−188938(JP,A)
【文献】 特開平11−256342(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/155635(WO,A1)
【文献】 国際公開第03/031673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/32
C01F 7/02
C01G 9/02
C23C 18/14
C23C 26/00
H01L 21/28 − 21/288
H01L 21/316
H01L 21/336
H01L 21/768
H01L 23/532
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属錯体を含む溶液を基板に塗布する塗布工程と、
得られた塗膜に、所望の開口パターンを有するマスクを介してオゾン暴露するオゾン暴露工程と、
前記オゾン暴露工程の後、前記塗膜を有機溶媒に接触させ、前記塗膜のうち前記オゾンに暴露されていない部分を溶解する洗浄工程と、
前記洗浄工程の後、前記塗膜を加熱する加熱工程と、
を備える金属酸化物膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属酸化物膜の製造方法であって、
前記オゾン暴露工程において、前記マスクは前記塗膜に接触して配置される、
金属酸化物膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属酸化物膜の製造方法であって、
前記マスクは、メタルマスクである、
金属酸化物膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の金属酸化物膜の製造方法であって、
前記マスクは、フォトレジストである、
金属酸化物膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の金属酸化物膜の製造方法であって、
前記加熱工程における加熱温度が180度以下であ
属酸化物膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の金属酸化物膜の製造方法であって、
前記有機金属錯体は、1分子中の全炭素数が4〜30である金属錯体の少なくとも1種であ
属酸化物膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の金属酸化物膜の製造方法であって、
前記有機金属錯体は、アセチルアセトナート金属錯体であり、
前記有機金属錯体を含む溶液の溶媒は、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、環状炭化水素類の少なくとも1種を含
属酸化物膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の金属酸化物膜の製造方法であって、
前記金属酸化物膜は、少なくともAlとOとCとHの4つの元素を含み、前記4つの元素間におけるCとHの組成比の合計が70%以上であ
属酸化物膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の金属酸化物膜の製造方法であって、
前記洗浄工程で用いる前記有機溶媒は、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、環状炭化水素類の少なくとも1種を含
属酸化物膜の製造方法。
【請求項10】
ゲート電極に接触して設けられる絶縁膜と、
前記絶縁膜に接触し、且つソース電極、及びドレイン電極に接触して設けられる半導体層と、
を備えるトランジスタの製造方法であって、
前記絶縁膜を、請求項1から9のいずれか一項に記載の金属酸化物膜の製造方法で形成する工程を含む、
トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物膜の製造方法、及びトランジスタの製造方法に関する。本発明は2013年8月7日に出願された日本国特許の出願番号2013−164248の優先権を主張し、文献の参照による織り込みが認められる指定国については、その出願に記載された内容は参照により本出願に織り込まれる。
【背景技術】
【0002】
酸化アルミニウムや酸化シリコン等の金属酸化物は、半導体デバイスや光学薄膜などの用途に使用されている。金属酸化物を所望の場所に所望の膜厚で形成することが望まれており、より簡便に薄膜形成を行うことができれば、低コスト高スループットにつながる。
【0003】
特許文献1には、基板の成膜面に、成膜材料の粒子に対して高い親和性を示す高親和性領域と、前記親和性領域よりも低い親和性を示す低親和性領域とを形成する工程と、前記基板との間に電子捕捉部を備えたスパッタ装置を用いて、前記成膜面に前記成膜材料の粒子を飛来させ、前記高親和性領域に選択的に前記成膜材料を堆積させる工程と、を有する成膜方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−199402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された成膜方法では、基板に対してスパッタ装置を用いて選択的に成膜材料を堆積している。このように、スパッタ法や蒸着法を用いた乾式法で金属酸化物を成膜する技術が知られている。しかしながら、乾式法は主に真空装置を用いて行われるものであるため、湿式法で行われる場合に比べてコストが高くなり、またスループットも低くなる傾向がある。
【0006】
また、基板に対して紫外線を照射することで選択的に金属酸化物を成膜する技術が普及しているが、基板への密着性がよいとは言い難い。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、効率的に密着性のよい金属酸化物膜を得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は上記の目的を達成するためになされたもので、本発明に係る金属酸化物膜の製造方法は、有機金属錯体を含む溶液を基板に塗布する塗布工程と、得られた塗膜に、所望の開口パターンを有するマスクを介してオゾン暴露するオゾン暴露工程と、前記オゾン暴露工程の後、前記塗膜を有機溶媒に接触させ、前記塗膜のうち前記オゾンに暴露されていない部分を溶解する洗浄工程と、前記洗浄工程の後、前記塗膜を加熱する加熱工程と、を備える。
【0009】
また、本発明の態様に係る金属酸化物膜の製造方法における前記オゾン暴露工程において、前記マスクは前記塗膜に接触して配置されてもよい。
【0010】
また、本発明の態様に係る金属酸化物膜の製造方法における前記マスクは、メタルマスクであってもよい。
【0011】
また、本発明の態様に係る金属酸化物膜の製造方法における前記マスクは、フォトレジストであってもよい。
【0012】
また、本発明の態様に係る金属酸化物膜の製造方法において、前記加熱工程における加熱温度が180℃以下であってもよい。
【0013】
また、前記有機金属錯体は、1分子中の全炭素数が4〜30である金属錯体の少なくとも1種であってもよい。
【0014】
また、前記有機金属錯体は、アセチルアセトナート金属錯体であり、前記有機金属錯体を含む溶液の溶媒は、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、環状炭化水素類の少なくとも1種を含んでもよい。
【0015】
また、前記金属酸化物膜は、少なくともAlとOとCとHの4つの元素を含み、前記4つの元素間におけるCとHの組成比の合計が70%以上であってもよい。
【0016】
また、前記洗浄工程で用いる前記有機溶媒は、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、環状炭化水素類の少なくとも1種を含んでもよい。
また、本発明の態様に係るトランジスタの製造方法は、ゲート電極に接触して設けられる絶縁膜と、前記絶縁膜に接触し、且つソース電極、及びドレイン電極に接触して設けられる半導体層と、を備えるトランジスタの製造方法であって、前記絶縁膜を、請求項1から9のいずれか一項に記載の金属酸化物膜の製造方法で形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0017】
効率的に密着性のよい金属酸化物の金属酸化物膜を得る技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る金属酸化物膜の製造方法の一例を説明するための断面図である。
図2】本変形例に係る金属酸化物膜の製造方法の一例を説明するための断面図である。
図3】得られた酸化アルミニウム膜の140倍のSEM像である。
図4】得られた酸化アルミニウム膜の600倍の光学顕微鏡像である。
図5】酸化アルミニウム膜によるライン&スペースの170倍のSEM像である。
図6】酸化アルミニウム膜によるライン&スペースの100倍のSEM像及びEDXによるラインスキャン結果を示す図である。
図7】得られた酸化アルミニウム膜の120倍のSEM像である。
図8】酸化アルミニウム膜によるライン&スペースの120倍のSEM像及びEDXによるラインスキャン結果を示す図である。
図9】酸化アルミニウム膜の170倍のSEM像である。
図10】得られた酸化アルミニウム膜の120倍のSEM像である。
図11】得られた酸化アルミニウム膜の120倍のSEM像及びEDXによるラインスキャン結果を示す図である。
図12】加熱温度と比誘電率・絶縁破壊電圧を測定した結果を示す図である。
図13】酸化アルミニウム膜の加熱温度と組成比を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る金属酸化物膜の製造方法の一例を説明するための断面図である。
【0021】
(第1の工程)
まず、図1(A)に示すように、有機金属錯体溶液1を調製する。有機金属錯体溶液1は、有機金属錯体11を溶媒12に溶解することによって得る。有機金属錯体11に用いられる材料としては、例えば、Cu(acac)2、Mn(acac)3、VO(acac)2、Fe(acac)3、Co(acac)3、Zn(acac)2等の金属アセチルアセトナート錯体を用いることができる。なお、「acac」はアセチルアセトナートを示す。
【0022】
溶媒12は、有機金属錯体11が可溶な液体であればよく、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、ベンジルアルコール、メチルシクロヘキサノール、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ヘキサントリオールなどのアルコール類をはじめ、蟻酸ブチル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸ベンジル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペンチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ヘプタノン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテルなどのエーテル類、アニソール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状エーテル類、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルなどのエチレングリコールエーテル類、メチラール、アセタールなどのアセタール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカンなどのパラフィン系炭化水素類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、ミシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリンなどの環状炭化水素類、クロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、クロロブタン、ジクロロブタン、トリクロロブタン、クロロペンタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロトルエン、ブロモメタン、ブロモプロパン、ブロモベンゼン、クロロブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類、を用いることができる。
【0023】
(第2の工程)
次に、図1(B)に示すように、基板2上に有機金属錯体溶液1を塗布し、被膜10を形成する。基板2には、一般に用いられる基板材料を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等の樹脂基板、又はケイ素(Si)、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)等の半導体基板、又は二酸化ケイ素(SiO2)、サファイア、酸化亜鉛(ZnO)等の酸化物基板等を用いることができる。
【0024】
なお、有機金属錯体溶液1の塗布については、公知の塗布方法を用いることができ、例えばスピンコート法、ディップコート法、スプレー法等の塗布方法を用いて、基板2に有機金属錯体溶液1を塗布し、被膜10を形成する。なお、このような塗布方法に限定されず、得られる膜の均一性やコスト等によって適宜他の塗布方法を選択することが可能である。
【0025】
(第3の工程)
次に、図1(C)に示すように、有機金属錯体溶液1の被膜10上に、所望の開口パターンを有するマスク21を準備する。マスク21としては、例えばメタルマスクや、パターニングされたフォトレジスト等を用いることができる。なお、メタルマスクを用いる場合、被膜10に直接接触するように配置してもよいし、被膜10に接触しないように被膜10との間に間隙を設けて配置してもよいが、本実施形態では後述の第4の工程でマスクの開口パターンに対応させて被膜10をオゾンに暴露させるため、被膜10に接触させてマスク21を配置すると、マスク21の非開口部と被膜10との間へのオゾンの暴露を防止することができ、より所望のパターンを得やすい傾向にある。なお、フォトレジストを用いる場合、被膜10上にフォトレジストを形成し通常のリソグラフィ工程を行うことでパターニングされたフォトレジストを得ることができる。
【0026】
(第4の工程)
次に、図1(D)に示すように、マスク21を介して被膜10をオゾン22に暴露させる。オゾン22への暴露方法としては、例えば、紫外光に含まれる波長約250mm以下の光にてオゾンを発生させるオゾン洗浄装置を用いてオゾン22に暴露させる方法のほか、オゾナイザー等で発生させたオゾン22に暴露させる方法や、酸素とプラズマの反応によってオゾンを発生させるプラズマ発生装置を用いてオゾン22に暴露させる方法等があるが、コストやスループットに基づいて適宜選択する。
【0027】
図1(E)は、被膜10をオゾン22に暴露させた結果得られる基板2を示す。被膜10は第3の工程でマスク21により選択的に覆われているため、被膜10が形成された基板2をオゾン22に暴露させると、オゾン22に暴露されていない被膜10aと、オゾン22に暴露された被膜10bとが形成される。
【0028】
有機金属錯体11はアルコールやアセトン等の有機溶媒に対して可溶であるため、オゾンに暴露されていない被膜10aは有機溶媒への耐性が低い。一方、オゾン22に暴露された被膜10bは、有機金属錯体における構造内の化学結合の切断や再結合が起こり、アルコールやアセトン等の有機溶媒への耐性が高くなる。つまり、被膜10のオゾン22に暴露された部分と暴露されていない部分とで、有機溶媒に対する溶解のしやすさに差が生じる。
【0029】
(第5の工程)
次に、図1(F)に示すように、被膜10a及び被膜10bが施された基板2を有機溶媒に接触させて洗浄する。洗浄に用いる有機溶媒は、第1の工程で用いた有機金属錯体が可溶であればよいが、ここでは例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、ベンジルアルコール、メチルシクロヘキサノール、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ヘキサントリオールなどのアルコール類をはじめ、蟻酸ブチル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸ベンジル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペンチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ヘプタノン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテルなどのエーテル類、アニソール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状エーテル類、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルなどのエチレングリコールエーテル類、メチラール、アセタールなどのアセタール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカンなどのパラフィン系炭化水素類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、ミシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリンなどの環状炭化水素類、クロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、クロロブタン、ジクロロブタン、トリクロロブタン、クロロペンタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロトルエン、ブロモメタン、ブロモプロパン、ブロモベンゼン、クロロブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類、を用いることができる。被膜10aは有機溶媒に対する耐性が低いため、洗浄によって溶解するが、被膜10bは溶解せずに残存する。従って、オゾン暴露部分と未暴露部分とでパターニング形成が可能となる。なお、洗浄は有機溶媒に漬け置くことで足りるが、超音波洗浄を用いたり撹拌したりすることで、処理時間を短縮することができる。なお、洗浄時間が短すぎると被膜10aが十分に溶解されず、また、洗浄時間が長すぎると被膜10bまで溶解してしまう場合があるので、洗浄時間は有機金属錯体や有機溶媒の種類に応じて適宜設定される。
【0030】
(第6の工程)
次に、図1(G)に示すように、被膜10bを加熱処理(焼成)する。加熱処理については、加熱温度が180℃以下である場合に高い誘電率が得られるため、180℃以下で加熱を行うのが望ましい。加熱処理により、被膜10bと基板2との高い密着性を有する金属酸化物である被膜10cが形成される。
【0031】
加熱処理の結果、図1(H)に示すように、被膜10cの形状でパターニングされた、高い絶縁性を持つ金属酸化物を得ることができる。
【0032】
以上、本実施形態では、湿式法によって被膜形成を行い、オゾンを用いてパターニングを行うことによって、選択的な金属酸化物膜を効率的に得ることができる。パターニングのために、腐食性の高い強酸をエッチング溶液として使用する必要がないため、配線や基板にダメージを与えることを防ぐことができる。
【0033】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0034】
図2は、本変形例に係る金属酸化物膜の製造方法の一例を説明するための断面図である。本変形例では、上述の実施形態によって形成される金属酸化物膜を用いてトランジスタを製造する。
【0035】
(第1の工程)
まず、図2(A)に示すように、基板2aに対してゲート電極31を形成する。ゲート電極は、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて形成されるものとする。
【0036】
(第2の工程)
次に、図2(B)に示すように、上述の実施形態と同様に調製した有機金属錯体溶液1を塗布し、被膜10Aを形成する。被膜10Aは後にトランジスタの絶縁体層となるため、ゲート電極31を覆うよう塗布することが望ましい。
【0037】
(第3の工程)
次に、図2(C)に示すように、有機金属錯体溶液1により形成された被膜上に、マスク21を準備する。マスク21はメタルマスクであってもよいし、レジストを塗布、パターニングすることによってマスク21を形成してもよい。なお、マスク21は有機金属錯体溶液1により形成された被膜10Aに接触するよう形成してもよい。
【0038】
(第4の工程)
次に、図2(D)に示すように、被膜10Aをオゾン22に暴露させる。暴露方法は、上述の実施形態と同様である。
【0039】
(第5の工程)
次に、図2(E)に示すように、上述の実施形態と同様に被膜10Aを有機溶媒で洗浄する。有機溶媒は上述の実施形態と同様、アセトン等である。洗浄によって、オゾン22に暴露された被膜10Ab部分が基板2aに残り、オゾン未暴露部分は溶解する。その後、被膜10Abを加熱処理し、絶縁膜を得る。なお、絶縁膜として酸化アルミニウムを得る場合、比誘電率の高い絶縁膜を得るために、加熱温度を180℃以下とすることが望ましい。
【0040】
(第6の工程)
次に、図2(F)に示すように、絶縁膜上にソース電極32とドレイン電極33とを形成する。ソース電極32及びドレイン電極33の形成も、ゲート電極と同様にフォトリソグラフィ等の公知の技術を用いる。
【0041】
(第7の工程)
次に、図2(G)に示すように、公知の技術を用いて、基板2a上に有機又は無機の半導体層40を形成する。
【0042】
本変形例によれば、強酸性の有機溶媒を用いることなく、効率的に密着性の高い絶縁膜を得ることができる。また、一般的な絶縁膜に比べて比誘電率が高いため、トランジスタのゲート絶縁膜として高い性能を有し、好適である。
【0043】
以下に、実施例を示して本発明の態様をより具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0044】
<実施例1>
(塗布)
まず、アルミニウムアセチルアセトナート0.003mol(東京化成工業(株)製)に対して、エタノール(和光純薬工業(株)製)35mlを加えてよく撹拌し、アルミニウムアセチルアセトナートがすべて溶解したことを確認した。得られた混合溶液である有機金属錯体溶液1をSiからなる基板2上に滴下し、スピンコーターにて回転数700rpm、30秒間、回転塗布した。
【0045】
(オゾン暴露及び洗浄)
その後、得られた試料にメタルマスクを載せ、UVオゾン洗浄機(OC−2506:岩崎電気(株)製)にて10分間オゾンに暴露した。メタルマスクの形状は、200μm幅のライン&スペースである。オゾン暴露後には、暴露していた部分と未暴露部分とではコントラスト差がついており、相変化が起こっていることが予測された。オゾン暴露後、有機溶媒であるアセトンに漬け、5分間放置した。その後、アセトンから試料を取り出し、エアーガンでブローし、エタノール、蒸留水の順で洗浄し、エアーブローを行った。
【0046】
(加熱処理)
その後、得られた試料を150℃にて加熱し、焼成した。これにより、被膜10cとして酸化アルミニウム膜が形成でき、メタルマスクのライン&スペースと同様のパターニング形状が形成できた。
【0047】
(評価)
図3は、得られた酸化アルミニウム膜の140倍のSEM像である。欠陥やクラックもなく均一に被膜されていることが分かった。
【0048】
図4は、得られた酸化アルミニウム膜の600倍の光学顕微鏡像である。図4左側にSi基板の領域が、右側に酸化アルミニウムの領域が示されている。図4に示す光学顕微鏡像では、酸化アルミニウム膜とSi基板との境目が確認できた。この段差を利用して膜の膜厚を触針式段差計(P16+:Tencor社製)にて測定したところ、50nmであった。
【0049】
図5は、酸化アルミニウム膜によるライン&スペースの170倍のSEM像である。図5中央を縦断しているのが酸化アルミニウムの領域であり、他の部分がSi基板の領域である。シャドーマスクの幅と同じ200μmと同様のライン&スペースが形成されており、パターニングに成功していることが分かった。
【0050】
図6は、酸化アルミニウム膜によるライン&スペースの100倍のSEM像及びエネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X−ray spectrometry:EDX)によるラインスキャン結果を示す図である。線(a)に沿ってラインスキャンを行い、Alと基板に由来するSiの元素分析を行った。線(b)によれば、オゾン暴露部では酸化アルミニウム膜に由来するAlが検出され、線(c)によれば、オゾン未暴露部分ではSi基板に由来するSiが検出されていることが分かる。これにより、パターニングが形成できていると判断できた。
【0051】
以上のように、湿式法を用いて金属酸化物膜を形成することができ、フッ化物等のエッチング溶液を使うことなく、簡便にパターニングされた膜を形成できることが確認できた。
【0052】
<実施例2>
有機金属錯体11として、アルミニウムアセチルアセトナートを実施例1と同様に準備し、実施例1と同様に、エタノールを用いて有機金属錯体溶液1を調製、基板2に塗布し、オゾン暴露を行った。その後、実施例1と異なり、上述の第5の工程である洗浄を行わずに、150℃にて10分間焼成を行った。
【0053】
図7は、その後得られた酸化アルミニウム膜の120倍のSEM像である。この結果から分かるように、オゾン暴露部と未暴露部とでライン&スペースを形成することができた。オゾン未暴露部である被膜10aについては、洗浄工程を経ずとも、加熱工程で一定程度の昇華が見られるため、ライン&スペースが形成された。
【0054】
図8は、酸化アルミニウム膜によるライン&スペースの120倍のSEM像及びEDXによるラインスキャン結果を示す図である。ラインスキャンについては、実施例1と同様にAlとSiについてスキャンを行った。線(b)は、Alのスキャン結果を示すが、これによればオゾン暴露部と未暴露部とでAlの検出量の違いがあることが分かった。ライン&スペースの膜厚差を段差計にて測定したところ、実施例1と同様の50nmであった。しかしながら、実施例1で行った試料と異なり、行程中に有機溶媒による洗浄を行わないため、残渣が見られた。
【0055】
図9は、酸化アルミニウム膜の170倍のSEM像である。残渣10dは、Si基板上に残る残渣を示す。オゾン未暴露部であっても被膜10aが完全に昇華しておらず、場所によって残渣10dが残っていることが分かった。
【0056】
残渣10dを除去するため、本実施例では、焼成後に有機溶媒を用いた洗浄を行った。図8の状態から基板2をアセトンに5分間浸漬させ、ブロワで乾燥させた。
【0057】
図10は、得られた酸化アルミニウム膜の120倍のSEM像である。
【0058】
図11は、得られた酸化アルミニウム膜の120倍のSEM像及びEDXによるラインスキャン結果を示す図である。AlとSi基板とのコントラストが高まり、残渣が低減したことが分かった。
【0059】
<実施例3>
有機金属錯体11として、アルミニウムアセチルアセトナートを実施例1と同様に準備し、実施例1と同様にエタノールを用いて有機金属錯体溶液1を調製、基板2に塗布し、オゾン暴露を行った。その後、オゾン未暴露部の除去を目的として、エタノールを用いて洗浄を行った。その後、150℃で焼成し、SEM像で確認したところ、実施例1と同様に、オゾン暴露部が残り、オゾン未暴露部のみが選択的に除去されることによる金属酸化物膜のパターニングを確認した。
【0060】
<実施例4>
有機金属錯体11として、アルミニウムアセチルアセトナートを実施例1と同様に準備する。有機金属錯体11を溶解する溶媒として、アセトン35mlを用い、有機金属錯体11を溶解させ、有機金属錯体溶液1を調製した。次に、実施例1と同様の方法で基板2に有機金属錯体溶液1を塗布し、オゾン暴露を行った。その後、オゾン未暴露部の除去を目的として、アセトンを用いて洗浄を行った。その後、150℃で焼成し、SEM像で確認したところ、実施例1と同様に、オゾン暴露部が基板2上に残り、オゾン未暴露部が除去されることによる金属酸化物膜のパターニングを確認した。
【0061】
<実施例5>
有機金属錯体11として、アルミニウムアセチルアセトナートを実施例1と同様に準備し、有機金属錯体11を溶解する溶媒として、アセトン35mlを用いた。有機金属錯体11を溶解させ、有機金属錯体溶液1を調製した。次に、実施例1と同様の方法で基板2に有機金属錯体溶液1を塗布し、オゾン暴露を行った。その後、オゾン未暴露部の除去を目的として、エタノールを用いて洗浄を行った。その後、150℃で焼成し、SEM像で確認したところ、実施例1と同様に、オゾン暴露部が基板2上に残り、オゾン未暴露部が除去されることによる金属酸化物膜のパターニングを確認した。
【0062】
<実施例6>
有機金属錯体11として、アルミニウムアセチルアセトナートを実施例1と同様に準備し、有機金属錯体11を溶解する溶媒として、トルエン15mlを用いた。有機金属錯体11を溶解させ、有機金属錯体溶液1を調製した。次に、実施例1と同様の方法で基板2に有機金属錯体溶液1を塗布し、オゾン暴露を行った。その後、オゾン未暴露部の除去を目的として、アセトンを用いて洗浄を行った。その後、150℃で焼成し、SEM像で確認したところ、実施例1と同様に、オゾン暴露部が基板2上に残り、オゾン未暴露部が除去されることによる金属酸化物膜のパターニングを確認した。
【0063】
<実施例7>
有機金属錯体11として、アルミニウムアセチルアセトナートを実施例1と同様に準備し、有機金属錯体11を溶解する溶媒として、クロロホルム35mlを用いた。有機金属錯体11を溶解させ、有機金属錯体溶液1を調製した。次に、実施例1と同様の方法で基板2に有機金属錯体溶液1を塗布し、オゾン暴露を行った。その後、オゾン未暴露部の除去を目的として、アセトンを用いて洗浄を行った。その後、150℃で焼成し、SEM像で確認したところ、実施例1と同様に、オゾン暴露部が基板2上に残り、オゾン未暴露部が除去されることによる金属酸化物膜のパターニングを確認した。
【0064】
<比較例>
有機金属錯体11として、アルミニウムアセチルアセトナートを実施例1と同様に準備し、実施例1と同様に溶媒にエタノールを用いて有機金属錯体溶液1を調製、基板2に塗布し、オゾン暴露を行った。その後、オゾン未暴露部の除去を目的として、水を用いたところ、他の実施例と異なり、オゾン暴露部及びオゾン未暴露部共に被膜が除去された。本実施例から、水を含んでいる無機溶液で洗浄を行うと金属酸化物膜のパターニングが困難であるため、洗浄には無水の有機溶媒を用いることが好適であることが分かった。
【0065】
<実施例8>
有機金属錯体11として、亜鉛アセチルアセトナート0.003mol(東京化成工業(株)製)を用い、溶媒としてエタノール35mlを用いた。溶媒に有機金属錯体11を溶解させ、有機金属錯体溶液1を作成した。その後、実施例1と同様の方法で基板2に有機金属錯体溶液1を塗布し、オゾン暴露を行い、アセトンを用いて洗浄を行い、150℃で焼成した。その結果、ライン&スペースのSEM像が得られ、酸化亜鉛膜のパターニング形状が確認できた。
【0066】
<実施例9>(加熱温度の調整)
有機金属錯体11として、アルミニウムアセチルアセトナートを実施例1と同様に準備し、実施例1と同様に溶媒12にエタノールを用いて有機金属錯体溶液1を調製した。有機金属錯体溶液1を基板2に塗布する際、膜厚が200nmとなるように塗布した。次に、塗膜に付着した微細なごみ除去を目的として、塗膜をアセトンで洗浄した。次に、マスクを用いたパターニングは行わず、実施例1と同様の方法で塗膜をオゾンに暴露させた。その後、120℃から200℃の範囲で、数パターンの焼成を行った。焼成後、得られた酸化アルミニウム膜上に直径2mmの金電極をスパッタ法にて形成し、基板2と金電極を上部・下部電極として膜の電気特性を測定した。測定には半導体パラメータアナライザー(4200−SCS:keithley社製)を用いた。
【0067】
図12は、加熱温度と比誘電率・絶縁破壊電圧を測定した結果を示す図である。αは加熱温度と絶縁破壊電圧との関係を、βは加熱温度と比誘電率との関係を示す。また、図12に示した測定結果の数値を下記の表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
一般的な酸化アルミニウムの比誘電率は10以下であるが、βを参照すると、加熱温度が180℃以下の領域では比誘電率が一般的な酸化アルミニウムよりも高い傾向にあることが分かった。
【0070】
この結果は、本実施例の酸化アルミニウムの組成が、化学量論組成と異なっているということを示す。一般的な酸化アルミニウムよりも比誘電率が高いということは、本実施例による酸化アルミニウムは、トランジスタ等のゲート絶縁膜として用いるのに好適であるといえる。
【0071】
<実施例10>
有機金属錯体11として、アルミニウムアセチルアセトナートを実施例1と同様に準備し、溶媒としてイソプロピルアルコールを用いて有機金属錯体溶液1を調製した。有機金属錯体溶液1を実施例1と同様に基板2に塗布し、オゾン暴露を行った。その後、実施例1と異なり、第5の工程である洗浄を行わずに、4パターンの異なる温度で加熱処理を行った。結果として、120℃、150℃、180℃、又は200℃で加熱処理が行われた4種類の酸化アルミニウム膜を得た。
【0072】
得た各々の酸化アルミニウム膜に対して、ラザフォード後方散乱分析(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS)と、水素前方散乱分析(Hydrogen Forward scattering Spectrometry:HFS)と、核反応分析(Nuclear Reaction Analysis:NRA)を用いて、Al、O、C、Hの4つの元素間の組成比(相対値)を測定した。
【0073】
図13は、酸化アルミニウム膜の加熱温度と組成比を測定した結果を示す図である。また、図13に示した測定結果の数値を下記の表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
図13を参照すると、加熱温度が高くなるにつれてHとCの組成比の合計が減少するとともに、AlとOの組成比の合計が増加していることが分かる。この結果により、有機金属錯体11に由来するハイドロカーボン(CH)結合が、加熱温度の上昇と共に消失していると考えられる。
【0076】
<実施例9>及び<実施例10>の結果を考察する。<実施例9>では、加熱温度が180℃以下の領域で比誘電率が一般的な酸化アルミニウムよりも高い傾向にあったが、<実施例10>によれば、加熱温度が180℃以上の領域でCとHの組成比の合計が減少している。従って、180℃以下の領域での比誘電率の高さはCH結合に由来しており、被膜10中のCH結合が多いと比誘電率が高くなると考えられる。換言すれば、200℃以上の加熱温度で加熱する場合には、従来技術で得られるような酸化アルミニウム膜が得られるものの、得られた酸化アルミニウム膜は高い比誘電率を示すものではない。
【0077】
また、<実施例10>、及び表2によれば、<実施例9>において高い誘電率を示した加熱温度180℃以下の場合には、CとHの組成比の合計が70%以上である。つまり、酸化アルミニウム膜中のAl、O、C、Hの4元素間におけるCとHの組成比の合計が70%以上である場合に、高い誘電率を示す酸化アルミニウム膜が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0078】
1:有機金属錯体溶液、2、2a:基板、10、10A、10a、10b、10Ab:被膜、11:有機金属錯体、12:溶媒、31:ゲート電極、32:ソース電極、33:ドレイン電極、40:半導体層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13