(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非導通部は、前記半導体積層体の下面のうち、前記上部電極の直下領域と、前記上部電極の直下領域と前記下部電極が設けられた領域との間の領域と、に設けられている請求項1に記載の発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係る発光素子100の上面視を示す図である。
図2は、発光素子100の構成を説明するための部分断面図である。
図3は、発光素子100において半導体積層体10の上面及び下面に設けられている部材が配置された領域を説明するための上面図である。
図4は、発光素子100の一部を拡大し、発光素子100において半導体積層体10の上面及び下面に設けられている部材の配置領域を説明するための部分拡大上面図である。
図5は、実施形態2に係る発光素子200の構成を説明するための部分断面図である。なお、
図3及び
図4において、ハッチングで示す領域は、半導体積層体10の下面に設けられる下部電極12及び金属部材14の上面視から見たときに配置される領域を示すものであり、断面を示すものではない。
【0009】
発光素子100は、半導体積層体10と、半導体積層体10の下方に設けられた導電性の基板18と、を有する。発光素子100は、さらに、半導体積層体10の上面の一部に設けられた上部電極11と、半導体積層体10の下面のうち上部電極11の直下領域と離間した領域に設けられた、半導体積層体10と基板18とを導通させる下部電極12と、半導体積層体10の下面のうち上部電極11の直下領域と下部電極12が設けられた領域との間の領域を含む領域に設けられた、半導体積層体10と基板18とを上下方向に導通させない非導通部13と、を備えている。そして、非導通部13は、半導体積層体10の下面に設けられた光反射性を有する金属部材14と、金属部材14の下面に設けられ、半導体積層体10と基板18とが金属部材14を介して上下方向に導通しないように設けられた絶縁部材15と、を有する。
【0010】
これにより、半導体積層体10からの光を金属部材14により効率良く反射できるため、発光素子100の光取り出し効率を向上させることができる。以下、この点について説明する。
【0011】
半導体積層体の上面に上部電極、下面に下部電極が設けられている発光素子では、半導体積層体における上部電極と下部電極との間に電流が流れることにより、半導体積層体が発光する。このとき、上部電極と下部電極を最短距離で結ぶ領域に電流が流れやすく、その領域のみが強く発光しやすい。そこで、本実施形態では、下部電極12を半導体積層体10の下面のうち上部電極11の直下領域と離間した領域に設けることで、半導体積層体10のうち、上部電極11の直下領域ではなく、上面視において上部電極11と下部電極12との間に位置する領域を主な電流経路としている。つまり、本実施形態では、半導体積層体10の広い範囲に電流が拡散されやすくなり発光領域を大きくすることができる。このとき、上面視において、半導体積層体10のうち上部電極11と下部電極12との間の領域は、上部電極と下部電極を最短距離で結ぶ領域に相当するため、他の領域に比較して強く発光する傾向にある。そこで、本実施形態では、その領域の下方に位置する半導体積層体10の下面に、光反射性を有する金属部材14を直接配置している。つまり、半導体積層体10と金属部材14との間に何も介在させないことで、半導体積層体10からの光を効率良く反射できるため、発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。
【0012】
以下、図を参照しながら発光素子100の構成について説明する。
【0013】
半導体積層体10は、
図2に示すように、基板18が配置されている側から順に、p側半導体層10pと、活性層10aと、n側半導体層10nと、が積層されてなる。半導体積層体10の上面視形状は、1辺が約2mmの略正方形である。n側半導体層10n、活性層10aおよびp側半導体層10pには、例えば、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)などの窒化物半導体を用いることができる。
【0014】
上部電極11は、
図1及び
図2に示すように、半導体積層体10の上面の一部に設けられ、n側半導体層10nと電気的に接続されている。つまり、本実施形態において、上部電極11は、負の極性を備えたn電極として機能する。
【0015】
上部電極11は、外部接続部11aと、外部接続部11aから延伸する延伸部11bと、を備えている。外部接続部11aは、ワイヤーなどの外部部材と接続するための領域であり、延伸部11bは、外部接続部11aに供給された電流を半導体積層体10の上面に拡散させるための電極である。
図1に示すように、半導体積層体10の上面に、複数の外部接続部11aが設けられており、それぞれの外部接続部11aに延伸部11bが設けられている。上部電極11には、例えば、Ni、Au、W、Pt、Al、Rh、Tiなどの金属、又はこれらの金属を積層した多層構造を用いることができる。
【0016】
下部電極12は、半導体積層体10の下面の一部に設けられ、p側半導体層10pと電気的に接続されている。つまり、本実施形態において、下部電極12は、正の極性を備えたp電極として機能する。
図3において左上がりの斜線のハッチングを施して示す第1領域12Rは下部電極12が設けられている領域である。
図3から理解できるように、下部電極12は、半導体積層体10の下面のうち上部電極11の直下領域と離間した領域に設けられている。これにより、半導体積層体10のうち上部電極11の直下領域以外に電流が流れやすくなり、半導体積層体10の広い範囲に電流が拡散されることで、発光素子100の発光領域を増加させることができる。
【0017】
下部電極12は、半導体積層体10からの光を、半導体積層体10において主な光取り出し面となる、半導体積層体10のうち上部電極11が設けられた上面側に反射するので、発光素子100の光取り出し効率を向上させることができる。そのため、下部電極12は高い反射率を有する金属を用いて形成されることが好ましく、例えば、Ag、Alなどの金属、又はこれらの金属を主成分とする合金を用いることができる。
【0018】
図2に示すように、非導通部13は、半導体積層体10の下面のうち、上部電極11の直下領域と下部電極12が設けられた領域との間の領域を含む領域に設けられている。言い換えると、
図3及び
図4に示すように、非導通部13は、上面視において、上部電極11と下部電極12との間の領域を含む領域に位置する、半導体積層体10の下面に設けられている。非導通部13は、光反射性を有する金属部材14と、絶縁部材15とを有しており、半導体積層体10と基板18とを上下方向に導通させないために設けられる。ここで、上面視において、半導体積層体10のうち、上部電極11と下部電極12との間に位置する領域は、電流が供給されやすく他の領域に比較して強く発光する傾向にある。そのため、その領域に位置する半導体積層体10の下面に、金属部材14を形成し、金属部材14の下方と上部電極11の直下領域に絶縁部材15を設けることで、電流を広げつつ、半導体積層体10からの光を金属部材14で効率よく反射することができる。
【0019】
図2に示すように、非導通部13は、半導体積層体10の下面のうち、上部電極11の直下領域と、上部電極11の直下領域と下部電極12が設けられた領域との間の領域と、に設けられている。また、
図3及び
図4に示すように、非導通部13は、上面視において、上部電極11が設けられている領域よりも大きく形成されている。ここで、上部電極11の直下領域における半導体積層体10からの光は、上部電極11により反射、または吸収されやすく発光素子100から取り出すことが難しい。そのため、上部電極11の直下領域に非導通部13を設け、上部電極11の直下領域以外の領域を主な発光領域とすることで、発光素子100の光取り出し効率を向上できる。
【0020】
金属部材14は半導体積層体10の下面に設けられ、絶縁部材15は金属部材14の下面に設けられている。言い換えれば、半導体積層体10の下面に設けられた金属部材14の下面は、絶縁部材15により被覆されている。ここで、SiO
2などの絶縁部材のみで非導通部を形成した場合、半導体積層体10からの光のうち、絶縁部材に対して、低角度で入射する光は反射できるが、高角度で入射する光は反射することができない。本実施形態においては、半導体積層体10の下面に金属部材14を配置し、その金属部材14の下面を絶縁部材15により被覆している。これにより、非導通部13における絶縁性を保ちながら、光の入射角に関係なく金属部材14で光を反射できるため、光取り出し効率を向上させることができる。なお、金属部材14の下面とは、半導体積層体10に接している部分以外の部分である。また、光取り出し効率を向上させるために、半導体積層体10の下面のうち、非導通部13とする領域全域に金属部材14を設けても良い。
【0021】
金属部材14は、半導体積層体10の下面のうち、上部電極11の直下領域と、下部電極12が設けられた領域との間の領域に設けられ、絶縁部材15は、半導体積層体10の下面のうち、上部電極11の直下領域と、金属部材14の下面とに連続して設けられている。また、
図4において右上がりの斜線のハッチングを施して示す第2領域14Rは、金属部材14が設けられる領域である。これにより、半導体積層体10のうち上部電極11の直下領域での絶縁性を確保しながら、金属部材14と基板18とが上下方向に導通しないようにすることができる。また、絶縁部材15を、上部電極11の直下領域と、金属部材14の下面とに連続して設けることが好ましい。つまり、絶縁部材15を、上部電極11の直下領域と、金属部材14の下面と、の双方に一体的に設けることで、上部電極11の直下領域と、金属部材14とに別々の絶縁部材をそれぞれ設ける場合に比較して、半導体積層体10の下面において、絶縁部材間における半導体積層体10と基板18との導通を抑制できる。これにより、非導通部13における絶縁性をより確保しやすくすることができる。なお、絶縁部材15は、上部電極11の直下領域よりも大きい。つまり、上面視において、絶縁部材15は、上部電極11よりも大きく形成される。また、絶縁部材15を一体的に設けるとは、1つの工程で1つの材料を用いて設けることを指す。
【0022】
図2等に示すように、金属部材14は、半導体積層体10の下面のうち、上部電極11の直下領域と下部電極12が設けられた領域との間の領域のみに設けられることが好ましい。半導体積層体10の下面のうち、非導通部13とする領域全域に金属部材14を設けることで光取り出し効率を向上できるが、金属部材14を設ける領域が大きくなるため、金属部材14を介して上下方向に導通する虞が高くなってしまう。そこで、金属部材14を設ける領域を、半導体積層体10の下面のうち、上部電極11の直下領域と下部電極12が設けられた領域との間の領域のみとすることで、金属部材14が設けられた領域が導通部となる事態を生じにくくすることができる。これにより、光取り出し効率を向上させつつ、発光素子100の信頼性も向上させることができる。
【0023】
非導通部13は、
図3及び
図4に示すように、上面視において、上部電極11の外部接続部11aの直下領域と、上部電極11の延伸部11bの直下領域と、を含む領域に設けられている。これにより、上記した非導通部13による効果が得られる領域が増加し、発光素子100の光取り出し面における輝度むらを改善できる。
【0024】
金属部材14は、Al、Agなどの金属、またはこれらの金属を主成分とする合金を用いることが好ましい。これにより、効率よく光を反射できる。
【0025】
金属部材14の厚みは、半導体積層体10からの光を反射するために十分な厚みである0.2μm以上とすることが好ましい。また、製造コストを削減するために、金属部材14の厚みは、0.5μm以下とすることが好ましい。
【0026】
絶縁部材15は、半導体積層体10と基板18とが金属部材14を介して上下方向に導通しないように設けられる。つまり、半導体積層体10の下面のうちに金属部材14が設けられた領域が、半導体積層体10と基板18とを導通する領域とならないように設けられる。
【0027】
絶縁部材15の材料には、絶縁性の観点から、例えば、SiO
2、SiON、SiNを用いることができる。
【0028】
絶縁部材15の厚みは、絶縁性が確保できるように0.05μm以上とすることが好ましく、0.1μm以上とすることがさらに好ましい。また製造コストを削減するために、絶縁部材15の厚みは、1μm以下とすることが好ましく、0.5μm以下とすることがさらに好ましい。
【0029】
保護膜16は、半導体積層体10及び上部電極11の表面の略全面を被覆して設けられ、発光素子100を保護する機能を有する。なお、外部との接続を確保するために、外部接続部11aの一部の領域には保護膜16は設けられておらず、この領域に導電性のワイヤーなどがボンディングされ、外部の電源と電気的に接続される。保護膜16には、前記した絶縁部材15と同様の材料を用いることができる。本実施形態では、保護膜16にSiO
2を用いている。
【0030】
接合部材17は、半導体積層体10と基板18との間に設けられ、両者を接合させるために設けられる。このとき、半導体積層体10に設けられた下部電極12と基板18とは、接合部材17を介して導通している。接合部材17は、半導体積層体10の下面の略全域と、基板18の上面とに設けられ、半導体積層体10と基板18とを互いに接合する。そのため、半導体積層体10の下面に非導通部13が設けられていない場合、半導体積層体10の下面の略全域が導通部となるため、上部電極11に供給された電流を広い範囲に拡散することが難しい。本実施形態では、上部電極11の直下領域における半導体積層体10の下面に非導通部13を設けることにより、半導体積層体10と基板18とを導電性の接合部材17を用いて導通させる場合であっても、半導体積層体10の広い範囲に電流を拡散し発光素子100の発光領域を増加させることができる。接合部材17には、接合性及び導電性の観点から、例えば、AuSn、NiSn、AgSnなどを主成分とするはんだ材料を用いることが好ましい。
【0031】
基板18は、導電性を有し、半導体積層体10の下方に設けられている。基板18には、例えば、CuW、Si、Moを用いることができる。
【0032】
<実施形態2>
本実施形態に係る発光素子200について、
図5を参照して説明する。
【0033】
発光素子200は、半導体積層体10の下面に設けられる非導通部13が有する、金属部材14及び絶縁部材15の構成が実施形態1と異なっている。その他の構成については実施形態1と同様である。
【0034】
図5に示すように、金属部材14は、半導体積層体10の下面のうち上部電極11の直下領域と下部電極12が設けられた領域との間に設けられている。さらに、半導体積層体10の下面のうち、上部電極11の直下領域に設けられた第1絶縁部材15aと、金属部材14の下面に、半導体積層体10と基板18とが金属部材14を介して上下方向に導通しないように設けられた第2絶縁部材15bを有している。つまり、上部電極11の直下領域は、第1絶縁部材15aにより絶縁され、金属部材14が設けられた領域は、金属部材14の下面に設けられた第2絶縁部材15bにより絶縁されている。このとき、第2絶縁部材15bは、半導体積層体10と基板18とが金属部材14を介して上下方向に導通しないように設けられている。この構成によれば、上部電極11の直下領域、金属部材14が設けられた領域、それぞれの領域に適した絶縁部材を選択し設けることができるため、絶縁性を確保しやすい。このような形態であっても、実施形態1と同様に、発光素子200の光取り出し効率を向上できる。
【0035】
第1絶縁部材15a及び第2絶縁部材15bには、上記した絶縁部材15と同様の材料を用いることができる。また、第1絶縁部材15a及び第2絶縁部材15bを同一の材料を用いて形成してもよい。
【0036】
第2絶縁部材15bは、金属部材14に含まれる金属を主成分とする酸化膜により形成されていることが好ましい。これにより、金属部材14と第2絶縁部材15bとの密着性が向上し、金属部材14と基板18との導通を安定して抑制できるため、発光素子200の信頼性を向上できる。例えば、金属部材14にアルミニウムを用いた場合、第2絶縁部材15bは金属部材14の下面が酸化されることによって得られるAl
2O
3(酸化アルミニウム)で構成される。この構成によれば、アルミニウムは高い反射率を有し、酸化アルミニウムは絶縁性を有するため、半導体積層体10の下面において金属部材14が設けられた領域の絶縁性を保ちつつ光取り出し効率を向上させることができる。
【0037】
以上、実施形態1及び実施形態2について説明したが、これらの説明は本発明を何ら限定するものではない。