特許第6332404号(P6332404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332404
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】露光装置及びデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20180521BHJP
   G02B 21/26 20060101ALI20180521BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   G03F7/20 521
   G02B21/26
   H02J9/06 120
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-210356(P2016-210356)
(22)【出願日】2016年10月27日
(62)【分割の表示】特願2015-223657(P2015-223657)の分割
【原出願日】2004年8月27日
(65)【公開番号】特開2017-62481(P2017-62481A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年11月28日
(31)【優先権主張番号】特願2003-307771(P2003-307771)
(32)【優先日】2003年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2004-150353(P2004-150353)
(32)【優先日】2004年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 大
(72)【発明者】
【氏名】原 英明
(72)【発明者】
【氏名】高岩 宏明
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/049504(WO,A1)
【文献】 特開平02−097239(JP,A)
【文献】 特開2002−141278(JP,A)
【文献】 特開平10−340846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光学系の下側空間の液体で基板の表面の一部を覆いつつ、その液体を介して前記基板を露光する露光装置であって、
前記空間への液体供給に用いられる液体供給流路と、
液体回収流路を介して前記空間からの液体回収が可能な液体回収機構と、
前記液体供給流路に接続され、前記空間へ供給されなかった液体が流れる流路と、を備え
前記液体供給流路を介しての液体供給と前記液体回収流路を介しての液体回収を前記基板の上方から行いつつ、前記投影光学系の下側に液浸領域を形成して、前記液浸領域の液体を介して前記基板の露光を行い、
前記液体回収機構は、前記液体回収流路を介して回収した液体と気体とを分離する分離器を有し、
前記液体回収機構は、前記空間への液体供給が不要なときに前記液体回収流路を介して液体回収動作を行い、
前記空間への液体供給が不要なときに、前記液体供給流路に接続された前記流路に前記空間へ供給されなかった液体が流れる露光装置。
【請求項2】
前記液体供給流路から前記空間への液体供給を停止可能な供給停止部をさらに備えた請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記供給停止部は、前記液体供給流路を遮断可能な遮断部を有し、
前記空間へ供給されなかった液体が、前記遮断部の下流で前記液体供給流路に接続された前記流路を流れる請求項1記載の露光装置。
【請求項4】
前記供給停止部は、前記液体供給流路に接続された切換部を有し、
前記空間へ供給されなかった液体が、前記切換部を介して前記液体供給流路に接続された前記流路を流れる請求項1記載の露光装置。
【請求項5】
前記供給停止部を用いて前記空間への液体供給を停止した状態で、前記供給停止部の下流の前記液体供給流路から液体が無くなるように、前記供給停止部の下流の前記液体供給流路の液体が、前記液体供給流路に接続された前記流路を流れる請求項2〜4のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項6】
前記液体供給流路に接続された前記流路に設けられたバルブを使って前記流路を開放することによって、前記空間に供給されなかった液体が、前記液体供給流路に接続された前記流路に流れる請求項1〜5のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載の露光装置を用いるデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体回収装置、露光装置、露光方法及びデバイス製造方法に関し、特に、投影光学系と基板との間を液体で満たし、投影光学系と液体とを介して基板にパターンを露光する露光装置、及びこの露光装置を用いるデバイス製造方法に関するものである。
本願は、2003年8月29日に出願された特願2003−307771号、および2004年5月20日に出願された特願2004−150353号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示デバイスは、マスク上に形成されたパターンを感光性の基板上に転写する、いわゆるフォトリソグラフィの手法により製造される。このフォトリソグラフィ工程で使用される露光装置は、マスクを支持するマスクステージと基板を支持する基板ステージとを有し、マスクステージ及び基板ステージを逐次移動しながらマスクのパターンを投影光学系を介して基板に転写するものである。近年、デバイスパターンのより一層の高集積化に対応するために投影光学系の更なる高解像度化が望まれている。投影光学系の解像度は、使用する露光波長が短くなるほど、また投影光学系の開口数が大きいほど高くなる。そのため、露光装置で使用される露光波長は年々短波長化しており、投影光学系の開口数も増大している。そして、現在主流の露光波長は、KrFエキシマレーザの248nmであるが、更に短波長のArFエキシマレーザの193nmも実用化されつつある。また、露光を行う際には、解像度と同様に焦点深度(DOF)も重要となる。解像度R、及び焦点深度δはそれぞれ以下の式で表される。
R=k1・λ/NA … (1)
δ=±k2・λ/NA2 … (2)
ここで、λは露光波長、NAは投影光学系の開口数、k1、k2はプロセス係数である。(1)式、(2)式より、解像度Rを高めるために、露光波長λを短くして、開口数NAを大きくすると、焦点深度δが狭くなることが分かる。
【0003】
焦点深度δが狭くなり過ぎると、投影光学系の像面に対して基板表面を合致させることが困難となり、露光動作時のマージンが不足する恐れがある。そこで、実質的に露光波長を短くして、且つ焦点深度を広くする方法として、例えば国際公開第99/49504号パンフレットに開示されている液浸法が提案されている。この液浸法は、投影光学系の下面と基板表面との間を水や有機溶媒等の液体で満たし、液体中での露光光の波長が、空気中の1/n(nは液体の屈折率で通常1.2〜1.6程度)になることを利用して解像度を向上するとともに、焦点深度を約n倍に拡大するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第99/49504号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の文献に開示されている露光装置は、液体供給機構及び液体回収機構を使って液体の供給及び回収を行うことで基板上に液体の液浸領域を形成する構成であるが、停電等による電源の異常が生じることによって液体回収機構の駆動が停止すると、基板上に残留した液体が基板ステージの外側に漏れたり、飛散したりすることにより、その液体が基板ステージ周辺の機械部品にかかって錆びや故障等といった不都合を引き起こす。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、停電等による電源の異常が生じた場合にも、液体の流出や飛散を抑えることができる液体回収装置、露光装置、露光方法、及びこの露光装置を用いたデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の露光装置は、投影光学系と基板との間を液体で満たし、投影光学系と液体とを介して基板上にパターンの像を投影することによって基板を露光する露光装置において、第1電源から供給される電力によって駆動する駆動部を有する液体回収機構と、第1電源とは別の第2電源とを備え、第1電源の停電時に、駆動部に対する電力の供給が第2電源に切り替わることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1電源から供給される電力によって液体回収機構が駆動しているとき、その第1電源の異常時でも、液体回収機構に対する電力の供給は第2電源に切り替わるので、基板上に残留した液体は放置されずに第2電源より供給される電力によって駆動する液体回収機構で回収される。したがって、液体の流出を防止し、液体の流出に起因した不都合の発生を防止することができる。
【0009】
本発明の第2の露光装置は、投影光学系によりパタ−ン像を基板上に露光する露光装置において、基板に供給された液体を第1電源から供給される電力により回収する液体回収機構と、少なくとも第1電源の異常時に液体回収機構に電力を供給する第2電源とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、第1電源の異常時に第2電源が液体回収機構に電力を供給するので、第1電源の異常時でも基板に供給された液体を回収することができ、基板周辺の機械部品や電気部品の劣化を防止することができる。
【0010】
本発明の第3の露光装置は、投影光学系と基板との間を液体で満たし、投影光学系と液体とを介して基板上にパターンの像を投影することによって基板を露光する露光装置において、液体を供給する液体供給機構を備え、液体供給機構は、停電後に液体供給流路に留まっている液体を排出する排出機構を有することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、停電が生じた場合は、排出機構によって、液体供給流路に留まっている液体を排出するので、排出した液体を回収しておけば、その後は液体供給機構から基板上に液体が漏出する不都合を防止することができる。
【0012】
本発明の第4の露光装置は、投影光学系と基板との間を液体で満たし、投影光学系と液体とを介して基板上にパターンの像を投影することによって前記基板を露光する露光装置において、液体を供給する液体供給流路を有した液体供給機構を備え、液体供給機構は、異常時に液体供給流路を遮断する遮断部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、遮断部が液体供給流路を遮断するので、異常時においても液体に起因する基板周辺の機械部品や電気部品の劣化を防止することができる。
【0014】
本発明の第5の露光装置は、投影光学系と基板との間を液体で満たし、投影光学系と液体とを介して基板上にパターンの像を投影することによって基板を露光する露光装置において、液体を供給する液体供給機構を備え、液体供給機構は、停電時に液体供給流路に残存している液体の有無を検出するセンサを有することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、停電が生じた場合、液体供給流路に残存している液体の有無を確認できるので、センサによって液体が残存していることが分かった場合はその液体を回収しておくことにより、その後は液体供給機構から基板上に液体が漏出する不都合を防止するこ
とができる。
【0016】
本発明の液体回収装置は、基板に供給された液体を第1電源から供給される電力により回収する液体回収機構を備えた液体回収装置において、少なくとも第1電源の異常時に液体回収機構に電力を供給する第2電源を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、第1電源の異常時に第2電源が液体回収機構に電力を供給するので、第1電源の異常時でも基板に供給された液体を回収することができ、基板周辺の機械部品や電気部品の劣化を防止することができる。
【0018】
本発明の第1の露光方法は、投影光学系と基板との間に液体を供給し、投影光学系と前記液体とを介して基板にパタ−ンを露光する露光方法において、第1電源から供給される電力を用いて液体回収機構により液体を回収するステップと、少なくとも第1電源の異常時に第1電源とは異なる第2電源から供給される電力を用いて液体回収機構により液体を回収するステップと、を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、第1電源の異常時に第2電源が液体回収機構に電力を供給するので、第1電源の異常時でも基板に供給された液体を回収することができ、基板周辺の機械部品や電気部品の劣化を防止することができる。
【0020】
本発明の第6の露光装置は、投影光学系によりパターン像を基板上に露光する露光装置において、投影光学系と基板との間へ液体を供給する供給路を有した液体供給機構を備え、液体供給機構に液体を吸引する吸引路を有した吸引部を設けたことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、吸引路を介して吸引部が液体供給機構の液体を吸引するので、液体供給機構や露光装置本体に異常が生じた場合でも、液体供給機構からの液体の漏れ等の不都合を防止することができる。このため、基板周辺の機械部品や電気部品が劣化することない。
【0022】
本発明の第2の露光方法は、投影光学系と基板との間へ液体を供給する液体供給機構を有し、投影光学系によりパターン像を基板上に露光する露光方法において、露光の処理状態に応じて、液体供給機構から液体を吸引するステップを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、露光の処理状態に応じて液体供給機構から液体を吸引するので、液体供給機構に異常が生じた場合でも、液体供給機構からの液体の漏れ等の不都合を防止することができる。このため、基板周辺の機械部品や電気部品が劣化することがない。
【0024】
なお、本発明をわかりやすく説明するために一実施例を表す図面の符号に対応つけて説明したが、本発明が実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0025】
本発明によれば、停電等の電源の異常が生じた場合でも液体の流出を防止することができるので、流出した液体に起因する不都合の発生を防止することができる。また、液体供給不要時において液体供給機構から液体が漏れ出す不都合を防止することもできる。したがって、基板に対して精度良くパターン転写でき、高いパターン精度を有するデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本実施の形態の露光装置を示す概略構成図である。
図2図2は、投影光学系の先端部と液体供給機構及び液体回収機構との位置関係を示す図である。
図3図3は、供給ノズル及び回収ノズルの配置例を示す図である。
図4図4は、基板ステージの概略斜視図である。
図5図5は、第2液体回収機構の一実施形態を示す要部拡大断面図である。
図6図6は、本発明の露光装置の別の実施形態を示す概略構成図である。
図7図7A図7Bおよび図7Cは、本発明の露光動作の一例を示す模式図である。
図8図8Aおよび図8Bは、供給路の液体の挙動を示す模式図である。
図9図9Aおよび図9Bは、供給路の液体の挙動を示す模式図である。
図10図10は、半導体デバイスの製造工程の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態の露光装置を示す概略構成図である。
【0028】
図1において、露光装置EXは、マスクMを支持するマスクステージMSTと、基板Pを支持する基板ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板ステージPSTに支持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。なお、図1に点線で示すチャンバーは、少なくともマスクステージMST、基板ステージPST、照明光学系IL、及び投影光学系PLを収納し、所定の温度・湿度を保っている。露光装置EX全体は、電力会社から供給され、チャンバーの外側に配設された商用電源(第1電源)100からの電力によって駆動されるようになっている。
【0029】
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、基板P上に液体1を供給する液体供給機構10と、基板P上の液体1を回収する液体回収機構20とを備えている。露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板P上に転写している間、液体供給機構10から供給した液体1により投影光学系PLの投影領域AR1を含む基板P上の一部に(局所的に)液浸領域AR2を形成する。具体的には、露光装置EXは、投影光学系PLの先端部(終端部)の光学素子2と基板Pの表面との間に液体1を満たし、この投影光学系PLと基板Pとの間の液体1及び投影光学系PLを介してマスクMのパターン像を基板P上に投影することによってこの基板Pを露光する。
【0030】
本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をX軸方向、Z軸方向及びX軸方向に垂直な方向(非走査方向)をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、ここでいう「基板」は半導体ウエハ上に感光性材料であるフォトレジストを塗布したものを含み、「マスク」は基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。
【0031】
照明光学系ILは、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明するものであり、この露光光ELを射出する露光用光源、露光用光源から射出された露光光ELの照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、露光光ELによるマスクM上の照明領域をスリット状に設定する可変視野絞り等を有している。マスクM上の所
定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。露光用光源から射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157
nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態ではArFエキシマレーザ光を用いることにする。
【0032】
本実施形態において、液体供給機構10から供給される液体1には純水が用いられる。純水はArFエキシマレーザ光のみならず、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)も透過可能である。
【0033】
マスクステージMSTは、マスクMを支持するものであって、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。マスクステージMSTはリニアモータ等のマスクステージ駆動装置MSTDにより駆動される。マスクステージ駆動装置MSTDは制御装置CONTにより制御される。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及び回転角は不図示のレーザ干渉計によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することでマスクステージMSTに支持されているマスクMの位置決めを行う。
【0034】
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、複数の光学素子(レンズなど)で構成されており、これら光学素子は鏡筒PKで支持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小倒立系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、投影光学系PLは、屈折系だけでなく反射屈折系又は反射系でもよいし、倒立像と正立像とのいずれを形成してもよい。また、本実施形態の投影光学系PLの先端側(基板P側)には、光学素子2が鏡筒PKより露出している。この光学素子2は鏡筒PKに対して着脱(交換)可能に設けられている。
【0035】
基板ステージPSTは、基板Pを支持するものであって、基板Pを基板ホルダを介して保持するZステージ(基板ホルダ)51と、Zステージ51を支持するXYステージ52と、XYステージ52を支持するベース53とを備えている。基板ステージPSTはリニアモータ等の基板ステージ駆動装置PSTDにより駆動される。基板ステージ駆動装置PSTDは制御装置CONTにより制御される。Zステージ51を駆動することにより、Zステージ51に保持されている基板PのZ軸方向における位置(フォーカス位置)、及びθX、θY方向における位置が制御される。また、XYステージ52を駆動することにより、基板PのXY方向における位置(投影光学系PLの像面と実質的に平行な方向の位置)が制御される。すなわち、Zステージ51は、基板Pのフォーカス位置及び傾斜角を制御して基板Pの表面をオートフォーカス方式、及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込み、XYステージ52は基板PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。なお、ZステージとXYステージとを一体的に設けてよいことは言うまでもない。
【0036】
基板ステージPST(Zステージ51)上には移動鏡45が設けられている。また、移動鏡45に対向する位置にはレーザ干渉計46が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計46によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計46の計測結果に基づいて基板ステージ駆動装置PSTDを駆動することで基板ステージPSTに支持されている基板Pの位置決めを行う。
【0037】
また、基板ステージPST(Zステージ51)上には、基板Pを囲むように補助プレート43が設けられている。補助プレート43はZステージ(基板ホルダ)51に保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さの平面を有している。基板Pのエッジ領域を露光する場合にも、補助プレート43により投影光学系PLの下に液体1を保持することができる。
【0038】
また、Zステージ51のうち補助プレート43の外側には、基板Pの外側に流出した液体1を回収する第2液体回収機構60の回収口61が設けられている。回収口61は補助プレート43を囲むように形成された環状の溝部であって、その内部にはスポンジ状部材や多孔質体等からなる液体吸収部材62が配置されている。
【0039】
図2は、液体供給機構10、液体回収機構20、及び投影光学系PL先端部近傍を示す拡大図である。液体供給機構10は、投影光学系PLと基板Pとの間へ液体1を供給するものであって、液体1を送出可能な液体供給部11と、液体供給部11に供給管15を介して接続され、この液体供給部11から送出された液体1を基板P上に供給する供給ノズル14とを備えている。供給ノズル14は基板Pの表面に近接して配置されている。液体供給部11は、液体1を収容するタンク、及び加圧ポンプ等を備えており、供給管15及び供給ノズル14を介して基板P上に液体1を供給する。液体供給部11の液体供給動作は制御装置CONTにより制御され、制御装置CONTは液体供給部11による基板P上に対する単位時間あたりの液体供給量を制御可能である。なお、液体供給部11は、露光装置に設けないで工場の液体供給系を用いてもよい。
【0040】
供給管15の途中には、供給管15の流路を開閉するバルブ(遮断部)13が設けられている。バルブ13の開閉動作は制御装置CONTにより制御されるようになっている。
【0041】
なお、本実施形態におけるバルブ13は、例えば停電等により露光装置EX(制御装置CONT)の駆動源(商用電源100)が停止した場合に供給管15の液体供給流路を機械的に遮断する所謂ノーマルクローズ方式となっている。
【0042】
また、供給管15のうちバルブ13と供給ノズル14との間には、その一端部を第3液体回収機構17に接続する吸引管18の他端部が接続(合流)している。また、吸引管18の途中には、この吸引管18の流路を開閉するバルブ16が設けられている。吸引管18の他端部は、供給管15の液体供給流路のうちバルブ13下流側の直後の位置に合流している。
【0043】
液体回収機構20は、液体供給機構10によって供給された基板P上の液体1を回収するものであって、基板Pの表面に近接して配置された回収ノズル21と、回収ノズル21に回収管24を介して接続された真空系25とを備えている。真空系25は真空ポンプを含んで構成されており、その動作は制御装置CONTに制御される。真空系25が駆動することにより、基板P上の液体1はその周囲の気体(空気)とともに回収ノズル21を介して回収される。なお、真空系25として、露光装置に真空ポンプを設けずに、露光装置EXが配置される工場の真空系を用いるようにしてもよい。
【0044】
回収管24の途中には、回収ノズル21から吸い込まれた液体1と気体とを分離する気液分離器22が設けられている。ここで、上述したように、回収ノズル21からは基板P上の液体1とともにその周囲の気体も回収される。気液分離器22は、回収ノズル21より回収した液体1と気体とを分離する。気液分離器22としては、例えば複数の穴部を有する管部材に回収した液体と気体とを流通させ、液体を重力作用により前記穴部を介して落下させることで液体と気体とを分離する重力分離方式や、回収した液体と気体とを遠心力を使って分離する遠心分離方式等を採用可能である。そして、真空系25は、気液分離
器22で分離された気体を吸引するようになっている。
【0045】
回収管24のうち、真空系25と気液分離器22との間には、気液分離器22によって分離された気体を乾燥させる乾燥器23が設けられている。仮に気液分離器22で分離された気体に液体成分が混在していても、乾燥器23により気体を乾燥し、その乾燥した気体を真空系25に流入させることで、液体成分が流入することに起因する真空系25の故障等の不都合の発生を防止することができる。乾燥器23としては、例えば気液分離器22より供給された気体(液体成分が混在している気体)を、その液体の露点以下に冷却することで液体成分を除く方式や、その液体の沸点以上に加熱することで液体成分を除く方式等を採用可能である。
【0046】
一方、気液分離器22で分離された液体1は第2回収管26を介して液体回収部28に回収される。液体回収部28は、回収された液体1を収容するタンク等を備えている。液体回収部28に回収された液体1は、例えば廃棄されたり、あるいはクリーン化されて液体供給部11等に戻され再利用される。
【0047】
液体回収機構20には、商用電源100の停電時に、この液体回収機構20の駆動部に対して電力を供給する無停電圧電源(バックアップ電源)102が接続されている。無停電圧電源102(UPS:Uninterruptible Power System)は、停電や電圧変動などさまざまな電源トラブルが発生した場合でも、内部に設けられた蓄電池に蓄えられた電気により安定した電気を供給する装置である。本実施例においては、無停電圧電源102の発熱の影響を避けるため、無停電圧電源102をチャンバーの外側に配設している。本実施例では商用電源100の停電時において、無停電圧電源102は、液体回収機構20のうち、真空系25の電力駆動部、分離器22の電力駆動部、及び乾燥器23の電力駆動部に対してそれぞれ電力を供給する。なお、無停電圧電源102は、商用電源100とともに各電力駆動部に電力を供給させてもいいし、商用電源100の電圧変動に応じて各電力駆動部に電力を供給させてもいい。また、無停電圧電源102をチャンバーの内側に配設してもよい。
【0048】
供給管15には、この供給管15に液体1が存在しているかどうか(液体1が流通しているかどうか)を検出する液体センサ81が設けられている。液体センサ81は、供給管15のうち供給ノズル14近傍に設けられている。また、回収管24には、この回収管24に液体1が存在しているかどうか(液体1が流通しているかどうか)を検出する液体センサ82が設けられている。液体センサ82は、回収管24のうち回収ノズル21近傍に設けられている。本実施形態において、液体センサ81(82)は液体1を光学的に検出する。例えば供給管15(回収管24)を透明部材により構成しその供給管15(回収管24)の外側に液体センサ81(82)を取り付けることにより、液体センサ81(82)は透明部材からなる供給管15(回収管24)を介して液体1が流通しているかどうかを検出することができる。また、これら液体センサ81、82は商用電源100から供給される電力によって駆動するが、商用電源100が停電したとき、無停電電源102より供給された電力により駆動する。
【0049】
更に、液体回収機構20には、液体1に関する情報を含む液浸露光処理に関する各種情報を記憶した記憶装置MRYが設けられている。後述するように、商用電源100の停電時において、液体回収機構20は記憶装置MRYの記憶情報に基づいて駆動する。
【0050】
図3は、液体供給機構10及び液体回収機構20と投影光学系PLの投影領域AR1との位置関係を示す平面図である。投影光学系PLの投影領域AR1はY軸方向に細長い矩形状(スリット状)となっており、その投影領域AR1をX軸方向に挟むように、+X側に3つの供給ノズル14A〜14Cが配置され、−X側に2つの回収ノズル21A、21
Bが配置されている。そして、供給ノズル14A〜14Cは供給管15を介して液体供給部11に接続され、回収ノズル21A、21Bは回収管24を介して真空系25に接続されている。また、供給ノズル14A〜14Cと回収ノズル21A、21Bとをほぼ180°回転した位置関係となるように、供給ノズル14A’〜14C’と、回収ノズル21A’、21B’とが配置されている。供給ノズル14A〜14Cと回収ノズル21A’、21B’とはY軸方向に交互に配列され、供給ノズル14A’〜14C’と回収ノズル21A、21BとはY軸方向に交互に配列され、供給ノズル14A’〜14C’は供給管15’を介して液体供給部11に接続され、回収ノズル21A’、21B’は回収管24’を介して真空系25に接続されている。なお、供給管15’の途中には、供給管15同様、バルブ13’が設けられているとともに、第3液体回収機構17’に接続しその途中にバルブ16’を有する吸引管18’が合流している。また、回収管24’の途中には、回収管24同様、気液分離器22’及び乾燥器23’が設けられている。
【0051】
なお、上述したノズルの形状は特に限定されるものでなく、例えば投影領域AR1の長辺について2対のノズルで液体1の供給又は回収を行うようにしてもよい。なお、この場合には、+X方向、又は−X方向のどちらの方向からも液体1の供給及び回収を行うことができるようにするため、供給ノズルと回収ノズルとを上下に並べて配置してもよい。
【0052】
図4はZステージ51の斜視図、図5はZステージ51に設けられた第2液体回収機構60を示す要部拡大断面図である。第2液体回収機構60は、基板Pの外側に流出した液体1を回収するものであって、Zステージ(基板ホルダ)51上において補助プレート43を囲むように環状に形成された回収口61と、回収口61に配置され、スポンジ状部材や多孔質セラミックス等の多孔質体からなる液体吸収部材62とを備えている。液体吸収部材62は所定幅を有する環状部材であり、液体1を所定量保持可能である。補助プレート43の外周を所定幅で取り囲むように配置されている液体吸収部材62は、液体回収機構20で回収しきれず、補助プレート43の外側へ流出した液体1を吸収(回収)する役割を果たしている。Zステージ51の内部には、回収口61と連続する流路63が形成されており、回収口61に配置されている液体吸収部材62の底部は流路63に接続されている。また、Zステージ51上の基板Pと補助プレート43との間には複数の液体回収孔64が設けられている。これら液体回収孔64も流路63に接続している。
【0053】
基板Pを保持するZステージ(基板ホルダ)51の上面には、基板Pの裏面を支持するための複数の突出部65が設けられている。これら突出部65のそれぞれには、基板Pを吸着保持するための吸着孔66が設けられている。そして、吸着孔66のそれぞれは、Zステージ51内部に形成された流路67に接続している。
【0054】
回収口61及び液体回収孔64のそれぞれに接続されている流路63は、Zステージ51外部に設けられている管路68の一端部に接続されている。一方、管路68の他端部は真空ポンプを含む真空系70に接続されている。管路68の途中には気液分離器71が設けられており、気液分離器71と真空系70との間には乾燥器72が設けられている。真空系70の駆動により回収口61から液体1がその周囲の気体とともに回収される。真空系70には、気液分離器71によって分離され、乾燥器72によって乾燥された気体が流入する。一方、気液分離器71によって分離された液体1は、液体1を収容可能なタンク等を備える液体回収部73に流入する。なお、液体回収部73に回収された液体1は、例えば廃棄されたり、あるいはクリーン化されて液体供給部11等に戻され再利用される。
【0055】
また、吸着孔66に接続されている流路67は、Zステージ51外部に設けられている管路69の一端部に接続されている。一方、管路69の他端部は、Zステージ51外部に設けられた真空ポンプを含む真空系74に接続されている。真空系74の駆動により、突出部65に支持された基板Pは吸着孔66に吸着保持される。管路69の途中には気液分
離器75が設けられており、気液分離器75と真空系74との間には乾燥器76が設けられている。また、気液分離器75には、液体1を収容可能なタンク等を備える液体回収部73が接続されている。液体1が基板Pと補助プレート43との間から浸入して、基板Pの裏面側に回り込んだとしても、その液体は吸着孔66から周囲の気体とともに回収される。
【0056】
なお、図4において、Zステージ51の+X側端部にはY軸方向に延在する移動鏡45Xが設けられ、Y側端部にはX軸方向に延在する移動鏡45Yが設けられている。レーザ干渉計はこれら移動鏡45X、45Yにレーザ光を照射して基板ステージPSTのX軸方向及びY軸方向における位置を検出する。
【0057】
次に、上述した露光装置EXを用いてマスクMのパターンを基板Pに露光する手順について説明する。
【0058】
マスクMがマスクステージMSTにロードされるとともに、基板Pが基板ステージPSTにロードされた後、制御装置CONTは、液体供給機構10の液体供給部11を駆動し、供給管15及び供給ノズル14を介して単位時間あたり所定量の液体1を基板P上に供給する。このとき、供給管15の液体供給流路は開放されており、吸引管18の流路はバルブ16によって閉じられている。また、制御装置CONTは、液体供給機構10による液体1の供給に伴って液体回収機構20の真空系25を駆動し、回収ノズル21及び回収管24を介して単位時間あたり所定量の液体1を回収する。これにより、投影光学系PLの先端部の光学素子2と基板Pとの間に液体1の液浸領域AR2が形成される。このとき、露光装置EX全体は商用電源100から供給された電力により駆動している。ここで、液浸領域AR2を形成するために、制御装置CONTは、基板P上に対する液体供給量と基板P上からの液体回収量とがほぼ同じ量になるように、液体供給機構10及び液体回収機構20のそれぞれを制御する。そして、制御装置CONTは、露光装置EXが照明光学系ILによりマスクMを露光光ELで照明し、マスクMのパターンの像を投影光学系PL及び液体1を介して基板Pに投影するように制御を行う。
【0059】
走査露光時には、投影領域AR1にマスクMの一部のパターン像が投影され、投影光学系PLに対して、マスクMが−X方向(又は+X方向)に速度Vで移動するのに同期して、基板ステージPSTを介して基板Pが+X方向(又は−X方向)に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。そして、1つのショット領域への露光終了後に、基板Pのステッピングによって次のショット領域が走査開始位置に移動し、以下、ステップ・アンド・スキャン方式で各ショット領域に対する露光処理が順次行われる。本実施形態では、基板Pの移動方向と平行に、基板Pの移動方向と同一方向に液体1を流すように設定されている。つまり、矢印Xa(図3参照)で示す走査方向(−X方向)に基板Pを移動させて走査露光を行う場合には、供給管15、供給ノズル14A〜14C、回収管24、及び回収ノズル21A、21Bを用いて、液体供給機構10及び液体回収機構20による液体1の供給及び回収が行われる。すなわち、基板Pが−X方向に移動する際には、供給ノズル14(14A〜14C)より液体1が投影光学系PLと基板Pとの間に供給されるとともに、回収ノズル21(21A、21B)より基板P上の液体1がその周囲の気体とともに回収され、投影光学系PLの先端部の光学素子2と基板Pとの間を満たすように−X方向に液体1が流れる。一方、矢印Xb(図3参照)で示す走査方向(+X方向)に基板Pを移動させて走査露光を行う場合には、供給管15’、供給ノズル14A’〜14C’、回収管24’、及び回収ノズル21A’、21B’を用いて、液体供給機構10及び液体回収機構20による液体1の供給及び回収が行われる。すなわち、基板Pが+X方向に移動する際には、供給ノズル14’(14A’〜14C’)より液体1が投影光学系PLと基板Pとの間に供給されるとともに、回収ノズル21’(21A’、21B’)より基板P上の液体1がその周囲の気体ともに回収され、投影光学系PLの先端部の光学素子2と基板Pと
の間を満たすように+X方向に液体1が流れる。この場合、例えば供給ノズル14を介して供給される液体1は基板Pの−X方向への移動に伴って光学素子2と基板Pとの間に引き込まれるようにして流れるので、液体供給機構10(液体供給部11)の供給エネルギーが小さくても液体1を光学素子2と基板Pとの間に容易に供給できる。そして、走査方向に応じて液体1を流す方向を切り替えることにより、+X方向、又は−X方向のどちらの方向に基板Pを走査する場合にも、光学素子2と基板Pとの間を液体1で満たすことができ、高い解像度及び広い焦点深度を得ることができる。
【0060】
基板Pの中央付近のショット領域を露光している間において、液体供給機構10から供給された液体1は液体回収機構20により回収される。一方、図5に示すように、基板Pのエッジ領域を露光処理することによって液浸領域AR2が基板Pのエッジ領域付近にあるとき、補助プレート43により投影光学系PLと基板Pとの間に液体1を保持し続けることができるが、流体1の一部が補助プレート43の外側に流出する場合がある。この流出した液体1は、液体吸収部材62を配置した回収口61より回収される。ここで、制御装置CONTは、上記液体供給機構10及び液体回収機構20の駆動開始とともに、第2液体回収機構60の動作を開始している。したがって、回収口61より回収された液体1は、真空系70の吸引により、周囲の空気とともに流路63及び管路68を介して回収される。また、基板Pと補助プレート43との隙間に流入した液体1は、液体回収孔64を介して周囲の空気とともに流路63及び管路68を介して回収される。このとき、分離器71は、回収口61及び回収孔64から回収された液体1と気体とを分離する。分離器71によって分離された気体は乾燥器72で乾燥された後に真空系70に流入する。これにより、真空系70に液体成分が流入する不都合を防止できる。一方、分離器71によって分離された液体は液体回収部73に回収される。
【0061】
基板Pの外側に流出した液体1は、基板Pと補助プレート43との隙間から浸入して基板Pの裏面側に達する場合も考えられる。そして、基板Pの裏面側に入り込んだ液体1が基板Pを吸着保持するための吸着孔66に流入する可能性もある。この場合、基板Pを吸着保持するためにZステージ51に設けられている吸着孔66は、流路67及び管路69を介して真空系74に接続され、その途中には気液分離器75、及び気液分離器75で分離された気体を乾燥する乾燥器76が設けられている。したがって、仮に吸着孔66に液体1が流入しても、真空系74に液体成分が流入する不都合を防止することができる。
【0062】
ところで、本実施形態の露光装置EXにおいて、液体供給機構10、液体回収機構20、及び第2液体回収機構60を含む露光装置EXを構成する各電力駆動部は、商用電源100から供給される電力によって駆動されるが、商用電源100が停電したとき、液体回収機構20の駆動部に対する電力の供給が無停電電源(バックアップ電源)102に切り替わるようになっている。以下、商用電源100が停電したときの露光装置EXの動作について説明する。
【0063】
商用電源100が停電したとき、無停電電源102は、前述のように液体回収機構20に対する電力供給を、例えば内蔵バッテリに切り替えて無瞬断給電する。その後、無停電電源102は、長時間の停電に備えて、内蔵発電機を起動し、液体回収機構20に対する電力供給をバッテリから発電機に切り替える。このとき、無停電電源102は、液体回収機構20のうちの少なくとも真空系25、分離器22、及び乾燥器23に対する電力供給を行う。こうすることにより、商用電源100が停電しても、液体回収機構20に対する電力供給が継続され、液体回収機構20による液体回収動作を維持することができる。なお、無停電電源102としては上述した形態に限られず、公知の無停電電源を採用することができる。また、本実施形態では、商用電源100が停電したときのバックアップ電源として無停電電源装置を例にして説明したが、もちろん、バックアップ電源としてバックアップ用バッテリを用い、商用電源100の停電時に、そのバッテリに切り替えるように
してもよい。また、工場の自家発電装置などをバックアップ電源としてもよいし、蓄電器(例えばコンデンサー)をバックアップ電源としてもよい。
【0064】
また、商用電源100が停電したとき、無停電電源102は、第2液体回収機構60に対しても電力の供給を行う。具体的には、無停電電源102は、第2液体回収機構60のうちの少なくとも真空系70、分離器71、及び乾燥器72に対する電力の供給を行う。こうすることにより、例えば液体1の液浸領域AR2の一部が補助プレート43上に配置されている状態のときに商用電源100が停電して、基板Pの外側に液体1が流出しても、第2液体回収機構60はその流出した液体1を回収することができる。なお、商用電源100が停電したとき、無停電電源102は、真空系74、分離器75、及び乾燥器76に対して電力を供給するようにしてもよい。こうすることにより、商用電源100が停電した場合であってもZステージ51による基板Pの吸着保持を維持することができるので、停電によってZステージ51に対する基板Pの位置ずれが生じない。したがって、停電復帰後において露光動作を再開する場合の露光処理再開動作を円滑に行うことができる。
【0065】
ところで、商用電源100が停電したとき、液体供給機構10の供給管15に設けられたノーマルクローズ方式のバルブ13が作動し、供給管15の液体供給流路が遮断される。こうすることにより、商用電源100の停電後において、液体供給機構10から基板P上に液体1が漏出する不都合がなくなる。更に、本実施形態において、商用電源100が停電したとき、吸引管18のバルブ16が機械的に作動して吸引管18の流路が開放されるとともに、無停電電源102が第3液体回収機構17に電力を供給する。第3液体回収機構17は、液体回収機構20、第2液体回収機構60とほぼ同様の機能を有し、図示していない吸引ポンプ等の真空系、乾燥器、分離器、液体回収部を有している。無停電電源102から供給される電力により、例えば、第3液体回収機構17の吸引ポンプが作動すると、供給管15のうちバルブ13下流側の液体流路及び供給ノズル14に留まっている(溜まっている)液体1が、吸引管18を介して吸引ポンプ17に吸引される。吸引管18は、供給管15の液体供給流路のうちバルブ13下流側の直後の位置に接続されているため、供給管15のうちバルブ13と供給ノズル14との間の液体供給流路に留まっている液体1が吸引、回収される。こうすることにより、商用電源100の停電後において、液体供給機構10から基板P上に液体1が漏出する不都合を更に確実に防止することができ、液体1が基板ステージPST上や基板ステージPST周辺に飛散する等といった不都合の発生を防止することができる。
【0066】
そして、無停電電源102は、商用電源100の停電後において、基板P上に残留していた液体1、及び第3液体回収機構17で回収されずに液体供給機構10(供給管15)から排出された液体1が回収しきれるまで、液体回収機構20及び第2液体回収機構60に対する電力の供給を継続する。
【0067】
例えば、回収管24のうち回収ノズル21近傍に設けられた液体センサ82の検出結果に基づいて、無停電電源102から供給された電力により液体回収機構20が駆動される。具体的には、液体センサ82が液体1を検出している間は、液体1が基板P上から回収されている状態(つまり基板P上に液体1が留まっている状態)であるため、液体回収機構20は、少なくとも液体センサ82が液体1を検出しなくなるまで、その駆動を継続する。同様に、第2液体回収機構60の管路68、69に液体センサを設けておき、その液体センサの検出結果に基づいて、第2液体回収機構60が駆動する構成であってもよい。
【0068】
この場合においても、第2液体回収機構60は、前記液体センサが液体1を検出しなくなるまで、その駆動を継続する。
【0069】
また、供給ノズル14近傍に設けられた液体センサ81の検出結果に基づいて、排出機
構を構成する第3液体回収機構17が駆動されるようにしてもよい。例えば、液体センサ81が液体1を検出している間は、供給管15に液体1が留まっている状態のため、第3液体回収機構17は、液体センサ81が液体1を検出しなくなるまで、その駆動を継続する。
【0070】
あるいは、商用電源100の停電後において、液体供給機構10の供給ノズル14の供給口から排出される液体量に関する情報を、例えば実験あるいはシミュレーション等によって予め求め、その求めた情報を記憶装置MRYに記憶しておき、その記憶情報に基づいて液体回収機構20、第2液体回収機構60、及び第3液体回収機構17が駆動されるようにしてもよい。例えば、商用電源100の停電後において、バルブ13によって供給管15の液体供給流路を遮断後、第3液体回収機構17を駆動することによって回収される液体量は、供給管15の液体供給流路の容積に基づいて予め求めることができる。また、商用電源100の停電後において、基板P上に残留している液体量は、液浸領域AR2の液体量とほぼ等しく、例えば投影光学系PLの光学素子2と基板Pとの間の距離及び液浸領域AR2の面積によって予め求めることができる。商用電源100の停電後において基板P上に残留している液体量及び供給管15より排出される液体量の総和に関する情報を記憶装置MRYに予め記憶させておき、液体回収機構20及び第2液体回収機構60は、商用電源100の停電後において、回収した液体量の総和が記憶装置MRYに記憶されている液体量の総和に達するまで、少なくとも回収動作を継続する。
【0071】
なお、商用電源100の停電後において、例えば第2液体回収機構60は、液体回収量を停電前より多くするようにしてもよい。具体的には、第2液体回収機構60の真空系の駆動量(駆動力)を上昇する。第2液体回収機構(真空系)の駆動は振動源となるため、露光処理中においては第2液体回収機構の駆動力を低下あるいは停止していることが好ましいが、商用電源100の停電後においては露光処理も停止するので、第2液体回収機構60は、無停電電源102から供給される電力のもとで真空系の駆動力を上昇することで基板ステージPSTの外側(少なくとも回収口61より外側)への液体1の漏洩を防止、あるいは漏洩の拡大を防止することができる。
なお、商用電源100の異常時にはチャンバーも温度・湿度管理ができなくなってしまい、特に投影光学系PLの性能を劣化させてしまう恐れがある。このため、無停電電源102の電力をチャンバーにも供給してもいい。または、無停電電源102とは別の無停電電源(第3電源)を用いて商用電源100の異常時にチャンバーに電力を供給してもいい。この場合、チャンバーを複数の領域に分割して構成し、少なくとも投影光学系PLを収納するチャンバーに電力を供給してもいい。これにより、商用電源100の復帰後に速やかに露光装置EXを可動することができ、商用電源100の異常による悪影響を最小限にとどめることができる。更に、投影光学系PL自体を局所温調している不図示の局所温調装置に無停電電源102の電力を供給してもいい。この場合は、無停電電源102によるチャンバーへの電力の供給を行ってもよいし、行わなくてもよい。
【0072】
また、無停電電源102(および別の無停電電源(第3電源))は必ずしも1台の露光装置に1つ設ける必要はなく、複数の露光装置に共用して用いてもいい。これにより、無停電電源102の数を少なくすることができるとともに無停電電源102を含めた露光装置EXの設置面積を少なくすることができる。
【0073】
以上説明したように、商用電源100から供給される電力によって液体回収機構20(第2液体回収機構60)が駆動しているとき、その商用電源100が停電した場合でも、液体回収機構20、60に対する電力の供給は無停電電源102に切り替わるので、基板P上に残留した液体1は放置されずに無停電電源102より供給される電力によって駆動する液体回収機構20、60で回収される。したがって、液体1の流出を防止し、基板Pを支持する基板ステージPST周辺の機械部品の錆びや故障、あるいは基板Pのおかれて
いる環境の変動といった不都合の発生を防止することができる。したがって、商用電源100の停電復帰後においても、流出した液体1に起因する露光精度の低下といった不都合の発生を防止することができ、高いパターン精度を有するデバイスを製造することができる。
【0074】
また、第2液体回収機構60として基板ステージPST上に液体吸収部材62を設けたことにより、液体1を広い範囲で確実に保持(回収)することができる。また、液体吸収部材62に流路63及び管路68を介して真空系70を接続したことにより、液体吸収部材62に吸収された液体1は常時基板ステージPST外部に排出される。したがって、基板Pのおかれている環境の変動をより一層確実に抑制できるとともに、基板ステージPSTの液体1による重量変動を抑えることができる。一方、真空系70を設けずに、液体吸収部材62で回収した液体1を自重により液体回収部73側に垂れ流す構成であってもよい。更に、真空系70や液体回収部73等を設けずに、基板ステージPST上に液体吸収部材62のみを配置しておき、液体1を吸収した液体吸収部材62を定期的に(例えば1ロット毎に)交換する構成としてもよい。この場合、基板ステージPSTは液体1により重量変動するが、液体吸収部材62で回収した液体1の重量に応じてステージ制御パラメータを変更することで、ステージ位置決め精度を維持できる。
【0075】
なお、第3液体回収機構17の代わりに、加圧ポンプを設け、吸引管18(この場合は気体排出管)を介して供給管15の液体供給流路のうち、バルブ13下流側直後の位置から供給ノズル14に向かって気体(空気)を流すようにしてもよい。こうすることで、商用電源100の停電後に、供給管15のうちバルブ13下流側の液体流路及び供給ノズル14に留まっている液体1が、基板P上に排出される。この排出された液体を液体回収機構20や第2液体回収機構60で回収するようにすればよい。また、この場合も、記憶装置MRYに記憶した情報に基づいて加圧ポンプを駆動するようにすることができる。
【0076】
なお、通常使用される真空系25とは別の真空系を設けてこの別の真空系に無停電電源102を接続させてもいい。この場合、別の真空系の吸引力を真空系25の吸引力よりも大きく設定しておけば短時間で液体1を回収することができる。
【0077】
次に、別の実施形態について図6を参照しながら説明する。以下の説明において、上述した実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略もしくは省略する。
【0078】
図6において、露光装置EXは、投影光学系PLと基板Pとの間へ液体1を供給する供給管15を有した液体供給機構10と、基板P上の液体を回収する回収管24を有した液体回収機構20とを備えている。そして、液体供給機構10は、液体1を吸引可能な吸引管18を有した吸引部を構成する第3液体回収機構17を備えている。
【0079】
第3液体回収機構17は、液体回収機構20、第2液体回収機構60とほぼ同様の機能を有し、吸引管18の一端部に接続された真空系90と、吸引管18の途中に設けられた気液分離器92と、気液分離器92で分離された気体を乾燥させる乾燥器91とを備えている。また、気液分離器92で分離された液体1は回収管93を介して液体回収部94に回収される。
【0080】
液体供給機構10は、液体供給部11に接続されている供給管15の供給路と真空系90に接続されている吸引管18の吸引路とを切り換える切換部19を備えている。本実施形態において、切換部19はソレノイドバルブを含んで構成されており、供給管15及び吸引管18のそれぞれは切換部19に接続されている。
【0081】
本実施形態においては、真空系90と切換部19とを接続する流路を形成する管部材を吸引管18と称し、液体供給部11と切換部19とを接続する流路を形成する管部材を供給管15と称する。そして、切換部19と液体供給口14Aとを接続する流路を形成する管部材を供給ノズル14と称する。
【0082】
切換部19の動作は制御装置CONTにより制御され、切換部19が供給管15に接続されると、供給ノズル14の供給口14Aと液体供給部11とが供給管15を介して接続される。このとき、吸引管18の吸引路は遮断されている。一方、切換部19が吸引管18に接続されると、供給ノズル14の供給口14Aと第3液体回収機構17の真空系90とが吸引管18を介して接続される。このとき、供給管15の供給路は遮断されている。なお、切換部19は熱源となる可能性があるため、熱による露光精度の劣化を防止するために、露光装置EXを収容するチャンバー装置外部に設けられていることが好ましい。
【0083】
また、本実施形態における切換部19は、例えば停電等により露光装置EX(制御装置CONT)の駆動源(商用電源100)が停止した場合など異常が生じたときに、供給管15の供給路をばね等を使って機械的に遮断する所謂ノーマルクローズ方式となっている。そして、本実施形態の切換部19においては、異常が生じたときに供給管15の供給路を機械的に閉じると同時に、吸引管18の吸引路に接続して吸引管18の吸引路を開けるようになっている。
【0084】
吸引管18には逆止弁95が設けられている。逆止弁95は、切換部19と真空系90とを接続する吸引管18のうち、切換部19と気液分離器92との間に設けられており、切換部19に近い位置に設けられている。逆止弁95は、吸引管18を流れる液体1のうち、真空系90側から切換部19側への液体1の流れを阻止するようになっている。
【0085】
次に、上述した構成を有する露光装置EXの動作について図7に示す模式図を参照しながら説明する。
【0086】
基板ステージPSTに支持されている基板Pを液浸露光する際には、図7(a)に示すように、制御装置CONTは切換部19を液体供給機構10の供給管15に接続し、液体供給部11と供給ノズル14の供給口14Aとを供給管15を介して接続する。これにより、液体供給部11から送出された液体1は、供給管15、切換部19、及び供給ノズル14の供給口14Aを介して基板P上に供給され、基板P上に液浸領域AR2を形成する。
【0087】
基板Pの液浸露光終了後、基板P上の液体1を回収するために、制御装置CONTは、液体供給機構10の液体供給部11からの液体1の送出(供給)を停止するとともに、液体回収機構20及び第2液体回収機構60の駆動を所定期間継続する。更に、制御装置CONTは、切換部19を駆動して吸引管18に接続し、供給管15の供給路を閉じるとともに、吸引管18の吸引路を開ける。これにより、図7(b)に示すように、基板P上の液体1が第3回収機構17によって回収される。このように、露光終了後において液体1を回収する際に、液体回収機構20、第2液体回収機構60、及び第3液体回収機構17を併用して液体回収動作を行うことにより、液体1の回収動作を短時間で効率良く行うことができる。
【0088】
液体回収機構20、第2液体回収機構60、及び第3液体回収機構17の駆動を所定期間継続して、基板P上の液体1を回収した後、制御装置CONTは、液体回収機構20及び第2液体回収機構60の駆動を停止する。一方、液体回収機構20及び第2液体回収機構60の駆動の停止後においても、切換部19の吸引管18の吸引路に対する接続は維持され、第3液体回収機構17による吸引動作は継続される。
【0089】
制御装置CONTは、基板Pを基板ステージPSTからアンロードするために、図7(c)に示すように、基板ステージPSTをアンロード位置まで移動する。このとき、切換部19は吸引管18の吸引路に接続されており、供給ノズル14の供給口14Aと真空系90とは吸引管18を介して接続されている。したがって、液浸露光終了後(あるいは前)など液体供給機構10が液体1を供給していない液体供給不要時において、液体供給機構10に設けられた第3液体回収機構17による液体吸引動作が継続されているので、供給ノズル14の流路内や供給口14A近傍に残留している液体1は、第3液体回収機構17によって吸引回収される。そのため、液浸露光終了後(あるいは前)など液体供給機構10が液体1を供給していない液体供給不要時において、供給ノズル14などに残留している液体1が基板P上や基板ステージPST上、あるいは基板ステージPST周辺の機械部品などに漏れ出す(滴り落ちる)不都合が防止される。したがって、漏れ出した液体に起因する基板ステージ周辺の機械部品の錆びや故障等といった不都合の発生を防止することができる。
【0090】
なおここでは、液体回収機構20及び第2液体回収機構60の駆動を所定期間継続した後に停止しているが、その駆動を更に継続してもよい。こうすることにより、仮に供給ノズル14などから液体1が滴り落ちても、その液体1を液体回収機構20や第2液体回収機構60で回収することができる。
【0091】
また、基板Pの液浸露光中において、商用電源100が停電するなど異常が生じたとき、液体供給機構10のノーマルクローズ方式の切換部19が作動し、供給管15の供給路が遮断される。こうすることにより、商用電源100の停電後において、液体供給機構10から基板P上に液体1が漏出する不都合がなくなる。更に、商用電源100が停電したとき、切換部19が作動して吸引管18の吸引路に接続され、吸引管18の吸引路が開放されて供給ノズル14の供給口14Aと真空系90とが吸引管18を介して接続される。更に、商用電源100が停電したとき、無停電電源102が第3液体回収機構17に電力を供給する。無停電電源102から供給される電力により、第3液体回収機構17の真空系90が作動すると、供給ノズル14内部や供給口14A近傍に残留している液体1が、吸引管18を介して第3液体回収機構17の真空系90に吸引される。こうすることにより、商用電源100の停電後において、液体供給機構10から基板P上に液体1が漏れ出す不都合を更に確実に防止することができ、液体1が基板ステージPST上や基板ステージPST周辺に飛散する等といった不都合の発生を防止することができる。
【0092】
以上説明したように、液体供給機構10が液体1を供給していないときに、第3液体回収機構17を駆動して液体1を吸引することにより、液体供給機構10の供給ノズル14などに残留している液体1を吸引回収することができるため、液体供給不要時などにおける液体供給機構10からの液体1の漏れを防止することができる。したがって、漏れ出した液体1に起因する基板ステージPST周辺の機械部品の錆びや故障等といった不都合の発生を防止することができる。
また、停電などの異常が生じたときに露光不能となり液体供給不要となるが、その場合においても第3液体回収機構17で液体1を吸引回収することにより、停電後における液体供給機構10からの液体1の漏れ等の不都合を防止することができる。
【0093】
また、吸引管18の途中に、真空系90側から切換部19側への液体1の流れを阻止する逆止弁95を設けたことにより、何らかの原因で真空系90が動作不能となった場合においても、吸引した液体1が基板P側に逆流する不都合を防止することができる。この場合において、逆止弁95を切換部19に近い位置に設けて、逆止弁95と切換部19との間の吸引管18の吸引路の容積を可能な限り小さくすることで、仮に液体1が基板P側に逆流する不都合が生じても、その液体1の量を最小限に抑えることができる。
【0094】
なお本実施形態においては、液浸露光終了後や商用電源100が停電したときに切換部19が作動するように説明したが、基板Pの液浸露光中に、例えば液体回収機構20が何らかの原因で動作不能となり、基板P上の液体1を回収できない場合、切換部19を作動して液体供給機構10の第3液体回収機構17で液体1を吸引回収するようにしてもよい。このとき、液体回収機構20による液体回収量を検出可能な流量センサを例えば回収管24に設けておけば、前記流量センサの検出結果に基づいて、液体回収機構20の動作状況を把握することができる。制御装置CONTは、前記流量センサの検出結果に基づいて、液体回収量が所定値以下になったと判断したとき、液体供給機構10の液体供給部11による液体供給動作を停止するとともに、切換部19を作動して第3液体回収機構17で液体1を吸引回収する。このように、液体回収機構20の液体回収動作に異常が生じた場合においても、切換部19を作動して液体供給機構10の第3液体回収機構17で液体1を吸引回収することで、液体1の基板P外側への漏出や飛散を防止でき、機械部品の錆びや電子機器(基板ステージPSTを動かすリニアモータなどの駆動装置やフォトマルなどのセンサ等)の漏電等の不都合の発生を防止することができる。
【0095】
また、基板Pを支持する基板ステージPSTと投影光学系PLとの位置関係の異常が検出されたときに、液体供給機構10による液体供給を停止するとともに、第3液体回収機構17による液体1の吸引動作を開始するようにしてもよい。ここで、基板ステージPSTと投影光学系PLとの異常な位置関係とは、投影光学系PLの下に液体1を保持できない状態であり、Z軸方向及びXY方向のうちの少なくとも一方の位置関係の異常を含む。
【0096】
つまり、例えば液体供給機構10や液体回収機構20の動作が正常であっても、基板ステージPSTの動作に異常が生じ、基板ステージPSTが投影光学系PLに対する所望位置に対してXY方向(あるいはZ方向)に関してずれた位置に配置された場合、投影光学系PLと基板ステージPSTに支持された基板Pとの間に液体1の液浸領域AR2が良好に形成できない状態(投影光学系PLの下に液体1を保持できない状態)が生じる。この場合、液体1が基板Pの外側や基板ステージPSTの外側に漏洩したり、基板ステージPSTの移動鏡45に液体1がかかる状況が発生する。すると、液体回収機構20は所定量の液体1を回収できないため、制御装置CONTは、前記回収管24などに設けられた流量センサの検出結果に基づいて異常が生じたことを検出することができる。制御装置CONTは、その異常を検出したときに、切換部19を作動して、液体供給機構10による液体供給動作を停止するとともに、液体供給機構10の第3液体回収機構17を使って液体1を吸引回収する。
【0097】
なお、投影光学系PLに対する基板ステージPSTの位置関係の異常を検出するために、液体回収機構20の回収管24などに設けた流量センサの検出結果を用いずに、例えば干渉計46により基板ステージPSTのXY方向の位置を検出し、その位置検出結果に基づいて、位置関係の異常を検出することができる。制御装置CONTは、干渉計46による基板ステージ位置検出結果と予め設定されている許容値とを比較し、干渉計46のステージ位置検出結果が前記許容値を超えたときに、液体1の供給動作の停止や切換部19の作動等を行うようにしてもよい。また、基板P表面のZ軸方向の位置を検出するフォーカス検出系により基板PのZ軸方向の位置を検出し、フォーカス検出系によるステージ位置検出結果と予め設定されている許容値とを比較し、フォーカス検出系の検出結果が許容値を超えたときに、制御装置CONTは、液体1の供給動作の停止や切換部19の作動等を実行するようにしてもよい。このように、制御装置CONTは、干渉計46及びフォーカス検出系を含む基板ステージ位置検出装置の検出結果に基づいて、投影光学系PLと基板ステージPSTとの位置関係の異常を検出し、異常が検出されたときに、液体供給動作の停止や切換部19の作動、及び第3液体回収機構17による液体1の吸引回収等を実行することができる。
【0098】
なお本実施形態においては、切換部19は、供給管15と吸引管18とを切り換えるように説明したが、供給管15及び吸引管18の双方に接続されないモード(スタンバイモード)を有する構成であってもよい。ここで、液体供給機構10のスタンバイモードとは、液体1の供給及び回収の双方を行わないモードを含む。
【0099】
ところで、供給口14Aと切換部19との間の供給路の断面積は、液体1(本実施形態では水)の表面張力に基づいて決定されている。供給路の断面積を液体1の表面張力に基づいて最適化することにより、液体供給機構10が液体1を供給していないときに、供給口14Aから液体1が漏れ出す(滴り落ちる)不都合を更に防止できる。具体的には、液体1が供給口14Aと切換部19との間の供給路に残留したとき、その液体1の表面張力によって供給路が覆われる程度に、供給路の断面積が決定される。すなわち、断面積(内径)D1に設定されている供給路の内部に液体1がある場合において、図8(a)の模式図に示すように、液体1がその表面張力によって供給路を塞いでいる場合、液体1に対する供給路の切換部19側(真空系90側)と供給口14A側との圧力差が大きくなるため、その液体1は良好に吸引回収される。ところが、液体(液滴)1の表面張力が低い場合には、図8(b)に示すように供給路を塞ぐことができない状況が発生する可能性があり、その場合、液体(液滴)1の自重(重力作用)などによって落下し、第3液体回収機構17に回収されずに、供給口14Aより漏出する不都合が生じる。そして、そのような液体(液滴)1を吸引回収するには、第3液体回収機構17の吸引力(駆動量)を上昇しなければならず、エネルギーロスとなる。
【0100】
そこで、そのような液体1を第3液体回収機構17によって良好に吸引回収するために、液体1の表面張力に基づいて、供給路の断面積を小さくする。図9(a)は、断面積(内径)D1より小さい断面積(内径)D2を有する供給路に液体1がある状態を示す模式図である。表面張力が低い液体1であっても、液体1の表面張力に基づいて供給路の断面積を決定することで、図9(a)に示すように供給路を液体1で塞ぐことができ、これにより液体1を良好に吸引回収することができる。また、図9(b)に示す模式図のように、小さい断面積D2を有する供給路においては、液体(液滴)1が残留する状況が発生しても、その液体1の液滴は十分に小さいため、自重(重力作用)によって落下して供給口14Aより漏出することなく、且つ第3液体回収機構17の吸引力(駆動力)を上昇することなく、その液体1の液滴を良好に吸引回収することができる。
【0101】
また、上述以外の異常として、地震の発生が考えられる。この場合は、露光装置本体や露光装置本体の設置場所に加速度センサなどの振動検出器を設けておき、この加速度センサの出力に基づいて、液体供給動作を含む露光動作を停止するとともに、上述の実施例で説明したような液体回収機構による液体の回収動作およびチャンバーによる温度・湿度管理は継続させるようにすればいい。
【0102】
なお、振動検出器として、地震波の中で最も早く伝わり、初期微動として感じられるP波を検出するP波検出装置を採用してもよい。
【0103】
上述したように、本実施形態における液体1は純水により構成されている。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。
【0104】
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44であるため、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を
用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
【0105】
本実施形態では、投影光学系PLの先端にレンズ2が取り付けられているが、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板であってもよい。また液体1の流れによって生じる投影光学系の先端の光学素子と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
【0106】
なお、本実施形態の液体1は水であるが、水以外の液体であってもよい、例えば、露光光ELの光源がF2レーザである場合、このF2レーザ光は水を透過しないので、この場合、液体1としてはF2レーザ光を透過可能な例えばフッ素系オイルや過フッ化ポリエーテ
ル(PFPE)等のフッ素系の液体であってもよい。また、液体1としては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。
【0107】
また、上述の実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとの間に局所的に液体を満たす露光装置を採用しているが、特開平6−124873号に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる液浸露光装置や、特開平10−303114号に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する液浸露光装置にも本発明を適用可能である。
【0108】
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。また、本発明は基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写するステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0109】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0110】
更に、マスクMを用いることなく、スポット光を投影光学系により投影して基板P上にパターンを形成する露光装置にも適用できる。
【0111】
また、本発明は、特開平10−163099号、特開平10−214783号、特表2000−505958号などに開示されているツインステージ型の露光装置に適用することもできる。
【0112】
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータ(USP5,623,853またはUSP5
,528,118参照)を用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ
力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
【0113】
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
【0114】
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−166475号公報(USP5,528,118)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−330224号公報(USS/N 08/416,558)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
【0115】
移動鏡45を基板ステージに固定する代わりに、例えばZステージ(基板ホルダ)51の端面(側面)を鏡面加工して得られる反射面を用いても良い。また、補助プレート43は凸部としたが、基板ホルダをZステージ51に埋め込んで設けるときは凹部としても良
い。更に基板ホルダはZステージ51とは別体としてもよい。また、基板ホルダはピンチャックタイプでも良い。
【0116】
また、液体回収機構20の回収管にノーマルクローズバルブを設けて、停電時にはバックアップ電源により、真空系70,74のうち少なくとも真空系70に電力を供給するだけにしても良い。
【0117】
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0118】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図10に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0119】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の
クレームの範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、投影光学系によりパタ−ン像を基板上に露光する露光装置であって、前記基板に供給された液体を第1電源から供給される電力により回収する液体回収機構と、少なくとも前記第1電源の異常時に前記液体回収機構に電力を供給する第2電源とを備える露光装置に関する。
【0121】
本発明によれば、停電等の電源の異常が生じた場合でも液体の流出を防止することができるので、流出した液体に起因する不都合の発生を防止することができる。また、液体供給不要時において液体供給機構から液体が漏れ出す不都合を防止することもできる。したがって、基板に対して精度良くパターン転写でき、高いパターン精度を有するデバイスを製造することができる。
【符号の説明】
【0122】
1…液体、10…液体供給機構、13…バルブ(遮断部)、15…供給管(供給路)、17…第3液体回収機構(吸引部)、18…吸引管(吸引路)、19…切換部、20…液体回収機構、25…真空系、60…第2液体回収機構、70、74…真空系、81、82…液体センサ、95…逆止弁、100…商用電源(第1電源)、102…無停電電源(第2電源)、CONT…制御装置、EX…露光装置、MRY…記憶装置、P…基板、PL…投影光学系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10