特許第6332530号(P6332530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332530
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/24 20060101AFI20180521BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20180521BHJP
   G03F 1/00 20120101ALI20180521BHJP
【FI】
   G03F7/24 Z
   G03F7/20 501
   G03F1/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-114874(P2017-114874)
(22)【出願日】2017年6月12日
(62)【分割の表示】特願2014-529380(P2014-529380)の分割
【原出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2017-151489(P2017-151489A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-173982(P2012-173982)
(32)【優先日】2012年8月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】小松 宏一郎
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−299918(JP,A)
【文献】 特表2008−530788(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/129369(WO,A1)
【文献】 特開2011−221537(JP,A)
【文献】 特開2011−221538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/24
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸から一定半径の外周面に沿ってマスクパターンが形成された回転ドラムを前記中心軸の回りに回転させつつ、可撓性を有する長尺のシート状の基板を長尺の方向に搬送して、前記マスクパターンを前記基板上に投影露光する露光装置であって、
前記回転ドラムの外周面上の前記基板に近い側に設定される近接位置と前記中心軸とを含む中心面に対して周方向に傾いた第1の光軸を有し、前記近接位置から前記外周面上の周方向にずれた位置に設定される照明領域内のマスクパターンに対応した中間像を、前記照明領域の接平面と前記中間像の接平面とが非平行な配置の状態で形成する第1投影光学系と、
前記中心面に対して周方向に傾いた第2の光軸を有し、前記中間像を、前記基板上に設定される投影領域の面と前記中間像の接平面とが非平行な配置の状態で前記投影領域に投影する第2投影光学系と、
前記第1投影光学系と前記第2投影光学系との間に配置され、前記第1の光軸に沿って進んだ光を前記第2の光軸に沿って偏向させるように、前記回転ドラムの外周面の前記一定半径に応じた焦点距離を有するレンズ部材と、
前記投影領域が設定される前記基板の部分を前記投影領域の面と平行な平面状に支持する支持部材と、
を備える露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置であって、
前記第1投影光学系は前記第1の光軸と垂直な瞳面を有し、
前記第1投影光学系の像倍率をkとしたとき、
前記照明領域の接平面と前記中間像の接平面とが成す角度αと、前記中間像の接平面と前記投影領域の面とが成す角度βとが、β=kαの関係に設定される、
露光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の露光装置であって、
前記第1投影光学系の前記照明領域と前記瞳面の間に配置されるレンズ系の焦点距離をf1、前記瞳面と前記投影領域の間に配置されるレンズ系の焦点距離をf2、そして前記回転マスクの外周面の前記一定半径をRとしたとき、
前記レンズ部材は、R×(f1+f2)/(2×f1)で定まる焦点距離を有するフィールドレンズで構成される、
露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の露光装置であって、
前記フィールドレンズは、シリンドリカルレンズで構成される、
露光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の露光装置であって、
前記支持部材は、前記基板の前記投影領域が設定される部分を非接触で支持する為のエアパッド面を有する、
露光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の露光装置であって、
前記エアパッド面で平面状に支持された前記基板を長尺の方向に搬送する為に、前記支持部材の前後に配置されて前記基板が掛け渡される2つの搬送ローラを、さらに含む、
露光装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の露光装置であって、
前記第1投影光学系は、前記照明領域の接平面と前記中間像の接平面とをシャインプルーフの条件を満たして共役関係にし、
前記第2投影光学系は、前記中間像の接平面と前記投影領域の面とをシャインプルーフの条件を満たして共役関係にする、
露光装置。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の露光装置であって、
前記回転ドラムの外周面上に設定される前記照明領域を、前記照明領域の前記接平面に対して非垂直な方向から照明する照明系を、さらに備える、
露光装置。
【請求項9】
請求項8に記載の露光装置であって、
前記マスクパターンは、透過型のマスクパターンであって、
前記照明系は、前記回転ドラムの内側に配置される、
露光装置。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の露光装置であって、
前記レンズ部材は、
前記中間像の接平面に関して前記照明領域と同じ側に配置された第1シリンドリカルレンズと、前記中間像の接平面に関して前記照明領域と反対側に配置された第2シリンドリカルレンズと、前記第1シリンドリカルレンズと前記第2シリンドリカルレンズとに挟まれた絞り部と、を含む、
露光装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の露光装置であって、
前記照明領域の接平面、前記中間像面の接平面、及び前記投影領域の面は、互いに一ヶ所で交差するように設定される、
露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関する。
本願は、2012年8月6日に出願された特願2012−173982号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビなどの表示装置として、例えば液晶表示パネルなどのフラットパネルディスプレイが多用されている。フラットパネルディスプレイのような各種のデバイスは、例えば、露光処理およびエッチング技術を利用して、ガラスプレートなどの基板上に透明薄膜電極などの各種の膜パターンを形成することによって製造される。
【0003】
上記の露光処理は、例えば、露光パターンが形成されたマスクパターン上に設定される照明領域に応じた像を、基板上に設定される投影領域に転写することで行われる。このような露光処理を行う露光装置としては、例えば、円筒面状のマスクパターンを回転させながら露光を行う露光装置が提案されている(下記の特許文献1参照)。
また、デバイス製造方法としては、送出用のロールから回収用のロールへフィルム等の基板を搬送しながら、搬送経路上において基板に露光処理などの各種処理を行うロール・ツー・ロール方式の製造方法が提案されている(下記の特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/029917号
【特許文献2】国際公開第2008/129819号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、露光処理は、投影領域が照明領域に対して非平行な状態で行われることがある。例えば、円筒面状に湾曲したマスクパターンを用いる露光装置において、マスクパターン上の照明領域の位置によっては、投影領域が照明領域に対して非平行になる。
また、ロール・ツー・ロール方式において、例えばロール上で湾曲している基板を露光する場合に、基板上の投影領域の位置によっては、投影領域が照明領域に対して非平行になる。このように、投影領域と照明領域とが互いに非平行な関係であると、露光の精度が低下することがある。
【0006】
本発明の態様は、投影領域と照明領域とが互いに非平行な関係であっても精度よく露光できる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、中心軸から一定半径の外周面に沿ってマスクパターンが形成された回転ドラムを前記中心軸の回りに回転させつつ、可撓性を有する長尺のシート状の基板を長尺の方向に搬送して、前記マスクパターンを前記基板上に投影露光する露光装置であって、前記回転ドラムの外周面上の前記基板に近い側に設定される近接位置と前記中心軸とを含む中心面に対して周方向に傾いた第1の光軸を有し、前記近接位置から前記外周面上の周方向にずれた位置に設定される照明領域内のマスクパターンに対応した中間像を、前記照明領域の接平面と前記中間像の接平面とが非平行な配置の状態で形成する第1投影光学系と、前記中心面に対して周方向に傾いた第2の光軸を有し、前記中間像を、前記基板上に設定される投影領域の面と前記中間像の接平面とが非平行な配置の状態で前記投影領域に投影する第2投影光学系と、前記第1投影光学系と前記第2投影光学系との間に配置され、前記第1の光軸に沿って進んだ光を前記第2の光軸に沿って偏向させるように、前記回転ドラムの外周面の前記一定半径に応じた焦点距離を有するレンズ部材と、前記投影領域が設定される前記基板の部分を前記投影領域の面と平行な平面状に支持する支持部材と、を備える露光装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、投影領域と照明領域とが互いに非平行な関係であっても精度よく露光できる露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】デバイス製造システムの一例を示す図である。
図2】第1実施形態による露光装置を示す図である。
図3】両側テレセントリックな光学系でシャインプルーフの条件を示す図である。
図4】中間像形成光学系の構成の一例を示す図である。
図5】中間像形成光学系の諸元の一例を示す表1である。
図6】第2実施形態による処理装置(露光装置)を示す斜視図である。
図7図6と異なる方向から見た露光装置を示す斜視図である。
図8】フィールドレンズの一例を示す分解斜視図である。
図9】絞り部の一例を示す平面図である。
図10】第3実施形態による露光装置を概略して示す図である。
図11A】照明系の構成の一例を示す図である。
図11B】照明系の構成の一例を示す図である。
図12】照明系の諸元の一例を示す表2である。
図13】第4実施形態による露光装置を概略して示す図である。
図14】投影領域の配置例を示す平面図である。
図15】第5実施形態による露光装置を概略して示す図である。
図16】第6実施形態による露光装置を概略して示す図である。
図17】第7実施形態による露光装置を概略して示す図である。
図18】デバイス製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1は、デバイス製造システムSYS(フレキシブル・ディスプレイ製造ライン)の構成例を示す図である。ここでは、供給ロールFR1から引き出された可撓性の基板P(シート、フィルムなど)が、順次、n台の処理装置U1,U2,U3,U4,U5,・・・Unを経て、回収ロールFR2に巻き上げられるまでの例を示している。
【0011】
図1において、XYZ直交座標系は、基板Pの表面(または裏面)がXZ面と垂直となるように設定され、基板Pの搬送方向(長尺方向)と直交する方向(幅方向)がY軸方向に設定される。Z軸方向は、例えば鉛直方向に設定され、X軸方向およびY軸方向は水平方向に設定される。
【0012】
供給ロールFR1に巻かれている基板Pは、ニップされた駆動ローラDR1によって引き出されて処理装置U1に搬送される。基板PのY軸方向(幅方向)の中心は、エッジポジションコントローラEPC1によって、目標位置に対して±十数μmから数十μm程度の範囲に収まるようにサーボ制御される。
【0013】
処理装置U1は、例えば塗布装置であって、基板Pの表面に感光性機能液(フォトレジスト、感光性カップリング材、UV硬化樹脂液など)を印刷方式で塗布する。処理装置U1において、例えば、塗布機構Gp1は、基板Pが巻き付けられる圧胴ローラDR2上で、基板Pの表面に感光性機能液を一様に塗布する。乾燥機構Gp2は、基板Pに塗布された感光性機能液に含まれる溶剤または水分を急速に除去する。
【0014】
処理装置U2は、例えば加熱装置であって、処理装置U1から搬送されてきた基板Pを所定温度(例えば、数10℃から120℃程度)まで加熱して、表面に塗布された感光性機能層を安定に定着する。処理装置U2において、例えば、複数のローラとエア・ターン・バーは、基板Pを折返し搬送する。加熱チャンバー部HA1は、搬入されてきた基板Pを加熱する。冷却チャンバー部HA2は、基板Pを後工程の環境温度と揃うように冷却する。ニップされた駆動ローラDR3は、基板Pを搬出する。
【0015】
処理装置U3は、露光装置を含み、例えば処理装置U2から搬送されてきた基板Pの感光性機能層に対して、ディスプレイ用の回路パターンや配線パターンに対応した紫外線のパターニング光を照射する。処理装置U3において、エッジポジションコントローラEPC2は、基板PのY方向(幅方向)の中心を一定位置に制御する。ニップされた駆動ローラDR4は、露光装置に基板Pを搬入する。2組の駆動ローラDR6、DR7は、基板Pに所定のたるみ(あそび)DLを与えつつ基板Pを搬出する。
【0016】
処理装置U3において、回転ドラムDM(マスク保持部材)は、外周面にシート状のマスクパターンM(マスク基板)を保持する。照明系IUは、回転ドラムDMに保持されているマスクパターンMの一部を照明する。処理装置U3において、投影系PLは、マスクパターンMの照明されている部分の像を投影領域に投影する。回転ドラムDP(基板支持部材)は、所定のテンションでX軸方向に搬送される基板Pを投影領域において支持する。
アライメント顕微鏡AMは、露光(転写)されるパターンと基板Pとを相対的に位置合せ(アライメント)するために、基板Pに予め形成されたアライメントマークなどを検出する。
【0017】
処理装置U4は、例えばウェット処理装置であって、処理装置U3から搬送されてきた基板Pの感光性機能層に対して、湿式による現像処理、無電解メッキ処理などのような各種の湿式処理の少なくとも1つを行なう。処理装置U4において、例えば、複数のローラは、基板Pを折り曲げて搬送する。搬送されている基板Pは、Z方向に階層化された3つの処理槽BT1、BT2、BT3に浸漬される。ニップされた駆動ローラDR8は、基板Pを搬出する。
【0018】
処理装置U5は、例えば加熱乾燥装置であって、処理装置U4から搬送されてきた基板Pを暖めて、湿式プロセスで湿った基板Pの水分含有量を所定値に調整する。
上述のようないくつかの処理装置を経て、一連のプロセスの最後の処理装置Unを通った基板Pは、ニップされた駆動ローラDR9を介して回収ロールFR2に巻き上げられる。その巻上げの際も、基板PのY軸方向(幅方向)の中心、あるいはY軸方向の基板端が、Y軸方向にばらつかないように、エッジポジションコントローラEPC3によって、駆動ローラDR9と回収ロールFR2のY軸方向の相対位置が逐次補正制御される。
【0019】
上位制御装置CONTは、製造ラインを構成する各処理装置U1からUnの運転を統括制御する。上位制御装置CONTは、各処理装置U1からUnにおける処理状況や処理状態の監視、処理装置間での基板Pの搬送状態のモニター、事前・事後の検査・計測の結果に基づくフィードバック補正やフィードフォワード補正なども行なう。
【0020】
本実施形態で使用される基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼などの金属または合金からなる箔(フォイル)などである。樹脂フィルムの材質は、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂のうち1または2以上を含む。
【0021】
基板Pは、各種の処理工程において受ける熱による変形量が実質的に無視できるように、熱膨張係数が顕著に大きくないものを選定することができる。熱膨張係数は、例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって、プロセス温度などに応じた閾値よりも小さく設定されていてもよい。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などでもよい。
また、基板Pは、フロート法などで製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよい。基板Pは、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔などを貼り合わせた積層体であってもよい。基板Pは、予め所定の前処理によって、その表面を改質して活性化したもの、あるいは、表面に精密パターニングのための微細な隔壁構造(凹凸構造)を形成したものでもよい。上記の厚さは一例であって、本発明はこれに限定されない。
【0022】
本実施形態のデバイス製造システムSYSは、デバイス(ディスプレイパネルなど)製造のための各種の処理を、基板Pに対して繰り返し、あるいは連続して実行する。各種の処理が施された基板Pは、デバイスごとに分割(ダイシング)されて、複数個のデバイスになる。
基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となるY軸方向)の寸法が10cmから2m程度であり、長さ方向(長尺となるX軸方向)の寸法が10m以上である。上記の寸法は一例であって、本発明はこれに限定されない。基板Pの幅方向の寸法は、10cm以下、または2m以上であってもよい。基板Pの長さ方向の寸法は、10m未満であってもよい。
【0023】
次に、本実施形態の処理装置U3(露光装置)の構成について説明する。図2は、本実施形態による露光装置EXを示す図である。図2に示す露光装置EXは、いわゆる走査露光装置であり、基板P(感光シート)とマスクパターンMと移動させ、マスクパターンMからの露光光L2で基板Pを走査することで、マスクパターンMに形成されている露光パターンを基板Pに転写(投影露光)する。
【0024】
露光装置EXは、マスクパターンMを湾曲した状態で保持する回転ドラムDM(マスク保持部材)と、基板Pを支持する回転ドラムDP(基板支持部材)と、マスクパターンMの一部を照明する照明系IUと、マスクパターンM上に形成される照明領域IRに対応した中間像IMを形成する第1投影光学系PL1(中間像形成光学系)と、回転ドラムDPに支持されている基板P上に配置される投影領域PRに中間像IMを投影する第2投影光学系PL2(投影光学系)と、露光装置EXの各部を制御する制御装置10とを備える。
【0025】
回転ドラムDMは、マスクパターンMを保持するマスク保持部材である。回転ドラムDMは、円筒面状の外周面(以下、円筒面DMaともいう)を有し、マスクパターンMを円筒面DMaに沿うように円筒面状に湾曲させて保持する。円筒面は、所定の中心線の回りに所定半径で湾曲した面のことであり、例えば、円柱又は円筒の外周面の少なくとも一部である。
【0026】
マスクパターンMは、例えば、透過型のマスクパターンであり、回転ドラムDMにクロムなどの遮光部材で形成されたパターンを含む。マスクパターンMは、例えば平面的に形成されたシート状のマスク基板であって、円筒面状に湾曲させることが可能なフレキシビリティ(可撓性)を有し、回転ドラムDMの円筒面DMaに巻きつけられることで回転ドラムDMに保持されてもよい。このように、回転ドラムDMは、マスクパターンMをリリース可能(交換可能)に保持してもよい。
【0027】
回転ドラムDMは、回転中心軸AX1の周りで回転可能なように設けられており、駆動部11から供給されるトルクによって回転する。回転ドラムDMの回転位置は、検出部12によって検出され、検出部12による検出の結果に基づいて制御される。制御装置10は、検出部12から取得した検出結果に基づいて駆動部11を制御することにより、回転ドラムDMの回転位置を制御する。すなわち、制御装置10は、回転ドラムDMに保持されているマスクパターンMの回転位置を制御できる。
【0028】
回転ドラムDPは、基板Pを保持する基板保持部材(基板支持部材)である。回転ドラムDPは、円筒面状の外周面DPa(支持面)を有し、回転中心軸AX2の周りで回転可能なように設けられている。回転ドラムDPの回転中心軸AX2は、例えば回転ドラムDMの回転中心軸AX1と実質的に平行に設定される。以下の説明において、回転ドラムDMの回転中心軸AX1および回転ドラムDPの回転中心軸AX2を含む面を、適宜、中心面13という。
【0029】
回転ドラムDPの外周面DPaは、基板Pを支持する支持面である。基板Pは、回転ドラムDPが回転することで、回転ドラムDPに巻きつけられるように搬送される。そのため、回転ドラムDPの外周面DPa上を搬送されている際の基板Pにおいて、投影領域PRは、回転ドラムDPの外周面DPaに沿って湾曲する。
基板Pの搬送経路において回転ドラムDPの前後には、ガイドローラー14aおよびガイドローラー14bが設けられている。ガイドローラー14aおよびガイドローラー14bは、基板Pが回転ドラムDPにたるみなく密着するように、基板Pの張力を調整する。
【0030】
制御装置10は、検出部16が検出した回転ドラムDPの回転位置に基づいて駆動部15を制御し、駆動部15によって回転ドラムDPを回転させる。すなわち、制御装置10は、回転ドラムDPが支持している基板Pの位置を制御できる。制御装置10は、駆動部11および駆動部15を制御することによって、マスクパターンMと基板Pとの相対位置を制御する。
【0031】
露光装置EXにおいて、回転ドラムDMが駆動部11により回転すると、マスクパターンMが照明領域IRに対して相対的に移動(回転)する。回転ドラムDPが駆動部15により回転すると、基板Pが投影領域PRに対して相対的に移動(回転)する。換言すると、回転ドラムDM、駆動部11、回転ドラムDP、および駆動部15は、マスクパターンMと基板Pとを移動する移動装置として機能する。
【0032】
回転ドラムDMの回転速度(マスクパターンMの周速度)、および回転ドラムDPの回転速度(基板Pの搬送速度)は、回転ドラムDMの外径と回転ドラムDPの外径の比率、投影系PLの倍率などに応じて設定される。例えば、回転ドラムDMの外径が回転ドラムDPの外径と実質的に同じであって、投影系PLが等倍である場合に、制御装置10は、基板P上の所定の位置に露光パターンが投影されるように、回転ドラムDMと回転ドラムDPを実質的に同じ速度で回転させる。
【0033】
露光装置EXにおいて露光光L2により基板Pが走査される走査方向は、回転中心軸AX1と実質的に垂直な方向である。以下の説明において、回転中心軸AX1(Y軸方向)と垂直な方向(X軸方向)を走査方向、Y軸方向を非走査方向ということがある。
【0034】
駆動部11は、X軸方向とY軸方向とZ軸方向の少なくとも1方向において、回転ドラムDMを移動可能であってもよい。この場合に、検出部12は、駆動部11が回転ドラムDMを移動させる方向において、回転ドラムDMの位置を検出してもよい。制御装置10は、検出部12の検出結果に基づいて駆動部11を制御することで、任意の方向のおける回転ドラムDMの位置を制御してもよい。
【0035】
このような回転ドラムDMの位置調整は、回転ドラムDPに適用してもよい。露光装置EXは、回転ドラムDMと回転ドラムDPの一方または双方の位置を制御することで、回転ドラムDMと回転ドラムDPの相対位置を制御することができる。これにより、露光装置EXは、例えば、照明領域IRと投影領域PRとの相対位置を調整することができる。
【0036】
照明系IUは、回転ドラムDMに保持されているマスクパターンMを照明光L1で照明することによって、マスクパターンMに形成されているパターンに応じた露光光L2を発生させる。照明系IUは、ケーラー照明などによって照明領域IRを均一な明るさで照明する。照明系IUは、例えば、光源20および照明光学系21を備える。
光源20は、例えば、g線、h線、i線等の輝線光を放射するランプ光源、レーザーダイオード(LD)あるいは発光ダイオード(LED)などの固体光源の少なくとも1つを含む。照明光学系21は、例えば、照明領域IRにおける照度を均一化するためのインテグレータ光学系などの照度均一化光学系を含む。
【0037】
照明領域IRは、マスクパターンM(回転ドラムDM)のうち基板P(回転ドラムDP)に最も近い位置(近接位置CP)から円筒面DMaの周方向にずれた位置に形成される。照明領域IRは、マスクパターンMの形状に対応して、円筒面状に湾曲している。以下の説明において、照明領域IRにおける任意の点(例えば、照明領域IRの中心)で照明領域IRに接する平面を、照明領域IRの接平面IRaという。
【0038】
なお、照明領域IRは、例えば、回転ドラムDMの周方向における寸法(弧長)が回転ドラムDMの周長に対して十分に小さく設定され、実質的に平面として扱うことができる。そのため、以下の説明で参照する各図において、照明領域IRを接平面IRaの一部として近似的に示すことがある。照明領域IRの他の湾曲面についても同様である。
【0039】
図2のマスクパターンMは透過型であり、照明系IUは、回転ドラムDMの内側からマスクパターンMに照明光L1を照射する。回転ドラムDMは、その内部に照明系IUを収容できるように、円筒状に形成されている。照明系IUは、回転ドラムDMが回転している間に回転ドラムDMの外部に対して回転しないように、回転ドラムDMの外部から支持されている。
マスクパターンMの周方向の各部は、回転ドラムDMが照明領域IRに対して回転することで、照明領域IRを順に通過する。マスクパターンMを通過(透過)した照明光L1は、露光光L2となる。マスクパターンMから出射した露光光L2は、投影系PLに入射する。
【0040】
次に、投影系PLについて詳しく説明する。図2の投影系PLは、照明領域IRにおけるマスクパターンMの像を、等倍の正立正像として基板Pに投影(転写)する。投影系PLの第1投影光学系PL1と第2投影光学系PL2は、いずれも同様の構成であり、回転ドラムDMと回転ドラムDPの間の中心を通り中心面13に垂直な面22に関して、対称的に配置されている。
【0041】
投影系PLの視野(物体面)は、照明領域IRの少なくとも一部に設定される。投影系PLの視野に共役な投影領域PR(像面)は、面22に関して照明領域IRと対称的に配置される。照明領域IRは、上述したように、中心面13から回転ドラムDMの周方向にずれた位置に設定される。照明領域IRの接平面IRaは、面22と非平行である。
そのため、投影系PLの投影領域PRは、中心面13から回転ドラムDPの周方向にずれた位置に配置される。投影領域PRの接平面PRaは、面22と非平行な関係になる。なお、投影領域PRの接平面PRaは、投影領域PRにおける任意の点(例えば、投影領域PRの中心)で投影領域PRに接する平面である。
【0042】
投影系PLの第1投影光学系PL1は、照明領域IRにおけるマスクパターンMに応じた中間像IMを、中間像IMの一部が面22上に配置されるように形成する。中間像IMが形成される中間結像面23は、照明領域IRの形状に対応して円筒面状に湾曲している。中間結像面23の一部は、面22を通るように配置される。中間結像面23の接平面23aは、面22と実質的に平行である。中間結像面23の接平面23aは、照明領域IRの接平面IRaと非平行な関係である。
【0043】
中間結像面23の接平面23aに合焦させるために、投影系PLの第1投影光学系PL1(中間像形成光学系)は、照明領域IRの接平面IRaと中間結像面23の接平面23aとがシャインプルーフの条件を満たすように、構成されている。中間結像面23の接平面23aは、中間結像面23上の任意の点(例えば、中間結像面23の中心)で中間結像面23に接する面である。
【0044】
投影系PLの第2投影光学系PL2(投影光学系)は、第1投影光学系PL1が形成した中間像IMを投影領域PRに投影する。中間結像面23の接平面23aは、投影領域PRの接平面PRaと非平行な関係である。投影領域PRの接平面PRaに合焦させるために、投影系PLの第2投影系光学系PL2は、中間結像面23の接平面23aと投影領域PRの接平面PRaとがシャインプルーフの条件を満たすように、構成されている。
【0045】
投影系PLにおいて、第2投影光学系PL2における露光光L2の光路は、第1投影光学系PL1における露光光L2の光路に対して折れ曲がる。例えば、第1投影光学系PL1と第2投影光学系PL2は、それぞれが軸対称な光学系として構成され、第1投影光学系PL1の光軸40と第2投影光学系PL2の光軸45とが面22で交差するように、配置される。
第1投影光学系PL1と第2投影光学系PL2との間には、第1投影光学系PL1からの照明光L1を偏向して第2投影光学系PL2に向かわせるように、フィールドレンズ24が配置されている。フィールドレンズ24は、その一部が中間結像面23に配置されるように、中間結像面23の近傍に配置されている。
【0046】
次に、シャインプルーフの条件について説明する。図3は、両側テレセントリックな光学系30でのシャインプルーフの条件を示す図である。
【0047】
図3において、符号31は物体面、符号32は像面、符号θは物体面31と像面32とがなす角度を示す。光学系30が第1投影光学系PL1である場合に、物体面31は投影系PLの視野(照明領域IR)に対応し、像面32は中間結像面23に対応する。光学系30が第2投影光学系PL2である場合に、物体面31は中間結像面23に対応し、像面32は投影領域PRに対応する。
【0048】
ここでは、説明の便宜上、光学系30が、レンズ群33およびレンズ群34からなり、レンズ群33およびレンズ群34が所定の軸(光軸30a)に関して軸対称(回転対称)であるものとする。図3において、符号f1はレンズ群33(第1レンズ群)の焦点距離、符号f2はレンズ群34(第2レンズ群)の焦点距離を示す。光学系30の像倍率(結像倍率、投影倍率)をkとすると、像倍率kは、第1レンズ群の焦点距離f1に対する第2レンズ群の焦点距離f2の比(k=f2/f1)になる。
【0049】
光学系30は、レンズ群33の後側焦点位置とレンズ群34の前側焦点位置とが実質的に一致するように構成される。光学系30において、レンズ群33の前側焦点位置を通る物体面31に対して、レンズ群33の後側焦点位置を通り光軸30aに垂直な面がいわゆる瞳面35になり、レンズ群34の後側焦点位置に物体面31と共役な像面32が配置される。
【0050】
ここで、物体面31と瞳面35とがなす角度をαとし、適宜、sinαをαで近似する。軸外物点36は、光軸30aに垂直な方向において軸上物点37から物体高hだけ離れているとすると、光軸30aに平行な方向において、軸上物点37からh×sinα(近似的なずれ量がαh)だけ離れることになる。
【0051】
軸外物点36が結像する軸外像点38は、光軸30aに垂直な方向において、この方向の光学系30の倍率(横倍率)を物体高hに乗算した量(kh)だけ軸上像点39から離れることになる。また、軸外像点38は、光軸30aに平行な方向において、この方向の光学系30の倍率(縦倍率)を、ずれ量αhに乗算したずれ量だけ軸上像点39から離れることになる。
光学系30の横倍率をkとすると、縦倍率は横倍率の2乗(k)に等しい。このため、軸外物点36は、光軸30aに垂直な方向において軸上像点39からkhだけ離れた位置であって、光軸30aに平行な方向において軸上像点39からkαhだけ離れた位置(軸外像点38)に結像する。このことは、像面32と瞳面35とのなす角度βがkαになることを示す。
ここで、光学系30と光学的に等価な1枚のレンズを想定すると、このレンズから像面32までの距離は、物体面31からレンズまでの距離に像倍率kを乗算した値である。したがって、レンズの主面(瞳面35)を延長した平面と物体面31との交線は、レンズの主面(瞳面35)を延長した平面と像面32との交線と一致することになる。
【0052】
ここで、図2に示した投影系PLの視野の中心が、中心面13から角度θだけ回転した位置に配置されているとする。この場合に、図3に示す像面32が物体面31となす角度(α+β)が角度θになる。θ=α+β,β=kα,k=f2/f1の3式から、瞳面35と物体面31とがなす角度αは、角度θを、レンズ群33の焦点距離f1とレンズ群34の焦点距離f2で内分する角度、すなわちα=θ×f1/(f1+f2)になる。
このような光学系30で第1投影光学系PL1を構成するには、第1投影光学系PL1の光軸40を中心面13に対して角度(θ−α)、すなわちθ×f2/(f1+f2)だけ傾ければよい。例えば、レンズ群33とレンズ群34とで焦点距離が等しい場合には、第1投影光学系PL1の光軸40が中心面13になす角度は、θ/2になる。
【0053】
次に、第1投影光学系PL1の構成例について説明する。図4は、第1投影光学系PL1の構成の一例を示す図である。図5は第1投影光学系PL1の諸元の一例を示す表1である。図4の第1投影光学系PL1は、光軸40の周りで軸対称(回転対称)な光学系である。図4において、第1投影光学系PL1を通る光線を分かりやすくするために、物体面41および像面42が光軸40と垂直に設定されている。
【0054】
図4の第1投影光学系PL1は、レンズ群33、レンズ群34、および開口絞り43を備える。開口絞り43は、例えば、第1投影光学系PL1の瞳面35の位置またはその近傍に配置される。レンズ群33およびレンズ群34は、いずれも同様の構成であり、開口絞り43に関して対称的(面対称的)に配置されている。そのため、図5の表1には、レンズ群33についての諸元を記載し、レンズ群34についての諸元を省略する。
【0055】
図5の表1における面番号は、開口絞り43(瞳面35)を起点(面番号0)とし、開口絞り43から物体面41に近づくほど、昇順する番号である。例えば、面番号1に対応する第1光学面は、瞳面35の次に物体面41側に配置されている光学面である。第1光学面を符号A1、第2光学面を符号A2というように、0以上の整数nに対して第n光学面を符号Anで示す。
【0056】
第n光学面Anの「曲率半径」は、瞳面35に向って凸である場合に正とし、物体面41に向って凸である場合に負とする。また、第n光学面Anの「中心間距離」は、第nの光学面Anから第(n+1)光学面A(n+1)までの距離を示す。例えば、第0光学面A0に対する「中心間距離」は、第0光学面A0(瞳面35)から第1光学面A1までの距離を示す。
第1光学面A1から第10光学面A10のそれぞれは、レンズの表面である。第1光学面A1から第2光学面A2までの中心間距離は、このレンズの中心の厚みを示す。なお、第10光学面A10に対する「中心間距離」は、第10光学面A10から物体面41までの距離を示す。
【0057】
レンズ群33は、開口絞り43から物体面41に向かう順に、レンズ44aからレンズ44eが光軸40に沿って配列された構成である。
【0058】
レンズ44aは、瞳面35側を向く第1光学面A1、および物体面41側を向く第2光学面A2を有する。レンズ44aは、いわゆる平凸レンズのような形状である。レンズ44aは、第1光学面A1が瞳面35に向って凸(曲率半径が正)であるとともに、第2光学面A2が実質的に平面状(物体面41に向ってわずかに凸)である。
【0059】
レンズ44bは、瞳面35側を向く第3光学面A3、および物体面41側を向く第4光学面A4を有する。レンズ44bは、いわゆるメニスカスレンズのような形状である。レンズ44bは、第3光学面A3が瞳面35に向って凸であるとともに、第4光学面A4が物体面41に向って凹である。
【0060】
レンズ44cは、瞳面35側を向く第5光学面A5、および物体面41側を向く第6光学面A6を有する。レンズ44cは、いわゆる両凹レンズのような形状である。レンズ44cは、第5光学面A5が瞳面35に向って凹であるとともに、第6光学面A6が物体面41に向って凹である。
【0061】
レンズ44dは、瞳面35側を向く第7光学面A7、および物体面41側を向く第8光学面A8を有する。レンズ44dは、いわゆる平凸レンズのような形状である。レンズ44dは、第7光学面A7が実質的に平面状(瞳面35に向ってわずかに凹)であるとともに、第8光学面A8が物体面41に向って凸である。
【0062】
レンズ44eは、瞳面35側を向く第9光学面A9、および物体面41側を向く第10光学面A10を有する。レンズ44eは、いわゆる両凸レンズのような形状である。レンズ44eは、第9光学面A9が瞳面35に向って凸であるとともに、第10光学面A10が物体面41に向って凸である。
【0063】
上述のレンズ群33は、一例であり、レンズ群33を構成するレンズの枚数とレンズ形状の一方または双方は、適宜変更できる。また、レンズ群33は、ガラス平板などの屈折力を有さない光学部材を含んでいてもよい。
また、図4のレンズ群は、反射部材を含まない屈折系の光学系であるが、反射部材およびレンズを含む反射屈折系の光学系でもよいし、反射部材を含みレンズを含まない反射系の光学系でもよい。レンズ群34は、レンズ群33と違う構成でもよい。例えば、レンズ群34の焦点距離f2がレンズ群33の焦点距離f1と異なっていてもよい(図3参照)。
【0064】
ところで、図2に示した照明系IUは、照明光L1を射出する方向(出射軸IUa)が第1投影光学系PL1の光軸40と実質的に同軸になるように配置されている。照明系IUは、照明領域IRの接平面IRaに対して非垂直な方向から照明領域IRを照明する。
換言すると、照明領域IRの接平面IRaに垂直な方向は、回転ドラムDMの回転中心軸AX1に垂直な平面(XZ平面)において回転中心軸AX1を通る方向(回転ドラムDMの径方向)である。照明系IUは、回転中心軸AX1とずれた位置から照明光L1を照明領域IRに照射する。
【0065】
図2において、近接位置CPを通る円筒面DMaの径方向(中心面13)と照明系IUの出射軸との交点46は、近接位置CPを起点として回転中心軸AX1よりも離れた位置に配置される。例えば、第1投影光学系PL1のレンズ群33とレンズ群34とがいずれも等倍の光学系である場合に、近接位置CPから交点46までの距離は、近接位置CPから回転中心軸AX1までの距離の約2倍に設定される。
【0066】
以上のような構成の露光装置EXにおいて、第1投影光学系PL1は、中間像IMの接平面IMaとマスクパターンM上の照明領域IRの接平面IRaとをシャインプルーフの条件を満たして共役関係にする。そのため、露光装置EXは、照明領域IRが中心面13からずれた位置に設定されている場合であっても、照明領域IRにおけるマスクパターンMの像を精度よく基板Pに投影露光することができる。
また、第2投影光学系PL2は、中間像IMの接平面IMaと基板P上の投影領域PRの接平面PRaとをシャインプルーフの条件を満たして共役関係にする。そのため、露光装置EXは、照明領域IRにおけるマスクパターンMの像を精度よく基板Pに投影露光することができる。
このように、露光装置EXは、照明領域IRを中心面13からずれた位置に配置できるので、照明系IUおよび投影系PLの配置の自由度が高くなり、例えばマルチレンズ型の露光装置などに適用しつつ露光精度を確保することができる。
【0067】
また、露光装置EXにおいて、フィールドレンズ24は、第1投影光学系PL1からの照明光L1を偏向して第2投影光学系PL2に向かわせるので、投影領域PRの周辺が中央よりも暗くなることなどが抑制される。
【0068】
また、第1投影光学系PL1は、レンズ群33とレンズ群34の構成が同様であるので、例えば設計コスト、装置の製造コストを下げることなどができる。また、第2投影光学系PL2は、第1投影光学系PL1と構成が同様であるので、設計コスト、露光装置EXの製造コストを下げることなどができる。
【0069】
なお、照明系IUの少なくとも一部は、回転ドラムDMの外側に配置されていてもよい。例えば、照明系IUは、光源20が回転ドラムDMの外部に配置されており、光源20からの光を照明光学系21へ光ファイバー等で導光(伝送)する構成でもよい。
【0070】
なお、本実施形態においては、照明領域IRなどの湾曲面に対応する平面(以下、近似平面という)として接平面を用いて、シャインプルーフの条件を説明したが、近似平面は、湾曲面を平面で近似したときの誤差によるデフォーカスが焦点深度以下となるように、適宜選択できる。
例えば、投影系PLは、照明領域IRの中心での接平面IRaに平行であって、照明領域IR上の任意の点を通る平面を上記の近似平面に用いて、シャインプルーフの条件を満たすように構成されていてもよい。また、例えば、投影系PLは、照明領域IR上の任意の点を通る平面であって、その傾きが照明領域IRの周方向のそれぞれの端での接平面の傾き間に収まる平面を上記の近似平面に用いて、シャインプルーフの条件を満たすように構成されていてもよい。
このような近似平面の定義は、中間結像面23、投影領域IRなどの湾曲面にも適用できるし、以下の実施形態においても適用できる。
【0071】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態において、上記の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略することがある。
【0072】
図6および図7は、本実施形態による露光装置EXを示す斜視図である。図7は、図6と異なる視点から見た図である。この露光装置EXは、いわゆるマルチレンズ方式の露光装置であって、走査方向(X軸方向)に垂直な非走査方向(Y軸方向)に配列された複数の投影モジュールPMを備える。露光装置EXは、複数の投影モジュールPMのそれぞれによって露光される基板P上の領域(露光領域)をY軸方向に継ぎ合わせることで、投影モジュールPMの数が1つである場合よりも広い露光領域を露光できる。
【0073】
図6に示す複数の投影モジュールPMは、Y軸方向から見た投影モジュールPMの位置が、Y軸方向に並ぶ順に交互にずれるように配置されている。例えば、複数の投影モジュールPMのうち、Y軸方向の一方から他方に向かう並び順が奇数番目である第1投影モジュールPMaは、中心面13に対して−X側に配置されている。複数の投影モジュールPMのうち、Y軸方向の一方から他方に向かう並び順が偶数番目である第2投影モジュールPMbは、中心面13に対して+X側に配置されている。
【0074】
図7に示す複数の投影モジュールPMは、走査によって第1投影モジュールPMaの投影領域PR1を通る基板P上の領域のY軸方向の端部と、走査によって第2投影モジュールPMbの投影領域PR2を通る基板P上の領域のY軸方向の端部とが重なるように、Y軸方向の位置がずれるように配置されている。本実施形態では、複数の投影モジュールPMは、走査方向(X軸方向)から見て非走査方向(Y軸方向)に所定のピッチで並ぶように、配置されている。なお、図2に示した照明系IUは、例えば、投影モジュールPMごとに設けられる。
【0075】
図6のフィールドレンズ24は、第1投影モジュールPMaの中間結像面23cと第2投影モジュールPMbの中間結像面23dとにわたって、一体的に設けられている。本実施形態では、第1投影モジュールPMaが被走査方向(Y軸方向)に複数配置されており、フィールドレンズ24は、複数の第1投影モジュールPMaの中間結像面23cにわたって、一体的に設けられている。フィールドレンズ24は、複数の第2投影モジュールPMbについても同様に中間結像面23dにわたって、一体的に設けられている。
【0076】
ところで、図2および図3を参照して説明したように、第1投影光学系PL1の光軸40が中心面13に対して傾く角度は、θ×f2/(f1+f2)であり、回転ドラムDMの回転中心軸AX1から第1投影光学系PL1の視野中心を見る角度θに比例している。
ここで、回転ドラムDMの半径をRとすると、フィールドレンズ24の焦点距離は、R×(f1+f2)/(2×f1)となり、第1投影光学系PL1の視野(照明領域IR)の位置によらない。そのため、フィールドレンズ24は、例えばY軸方向における焦点距離の分布が一様なシリンドリカルレンズによって構成できる。
【0077】
図8は、フィールドレンズ24の一例を示す分解斜視図である。図8のフィールドレンズ24は、中間像IM(図2参照)の接平面IMaに関して照明領域IRと同じ側に配置された光学部材47(第1光学部材)と、中間像IMの接平面IMaに関して照明領域IRと反対側に配置された光学部材48(第2光学部材)と、光学部材47と光学部材48とに挟まれた絞り部49と、を備える。
【0078】
光学部材47は、平凸状のシリンドリカルレンズであって、第1投影光学系PL1を向く面47aと、面47aの反対を向く面47bとを有する。面47aは、フィールドレンズ24の焦点距離がR×(f1+f2)/(2×f1)になるように湾曲している。面47bは、実質的に平面状である。
フィールドレンズ24の焦点距離は、レンズ群33の焦点距離f1とレンズ群34の焦点距離f2が同じである場合に、回転ドラムDMの半径(R)と実質的に同じになる。したがって、例えば、回転ドラムDMの半径(R)を約250mmとすると、フィールドレンズ24の曲率半径は、例えば約339mmになる。
【0079】
本実施形態では、第1投影光学系PL1と第2投影光学系PL2とで構成が同様であることに応じて、光学部材48は、光学部材47と実質的に同じ形状を有する。光学部材48は、第2投影光学系PL2を向く面48aと、面48aの反対を向く面48bとを有する。光学部材47と光学部材48は、平面状の面47bと面48bとが接合されることで、一体化されている。
【0080】
絞り部49は、いわゆる視野絞りであり、投影領域PRの形状を規定する。絞り部49は、例えば、フィールドレンズ24の厚み方向(Z軸方向)の実質的に中央に配置される。絞り部49は、例えば、光学部材47の面47bと光学部材48の面48bの一方または双方にクロムなどで形成された遮光膜(遮光部材)で構成される。
【0081】
絞り部49は、第1投影光学系PL1からの露光光L2の少なくとも一部が通過する開口50を有する。開口50は、投影モジュールPMごとに設けられており、各投影モジュールPMにおいて中間像IMが形成される位置またはその近傍に配置されている。
開口50は、第1投影モジュールPMaに対応する開口50aと第2投影モジュールPMbに対応する開口50bとでX軸方向の位置がずれるように、配置されている。本実施形態では、投影モジュールPMがY軸方向に一定のピッチで並んでいることに対応して、開口50は、Y軸方向に一定のピッチdyで並んでいる。
【0082】
第1投影モジュールPMa(図6および図7参照)に対応する開口50aと、第2投影モジュールPMbに対応する開口50bは、走査方向(X軸方向)から見て非走査方向(Y軸方向)の端部が互いに重なるように配置されている。図8の開口50aと開口50bは、それぞれ台形状であって、互いに平行な1対の対辺(上底、下底)が走査方向と実質的に垂直である。
開口50aと開口50bは、走査方向から見たときに、上底と下底のうち短い方の辺が開口50aと開口50bとで重ならないように配置され、台形の斜辺(脚)が開口50aと開口50bとで重なるように配置されている。
【0083】
図9は、絞り部49の例を示す平面図である。ここでは、説明の便宜上、露光装置EXの解像度が4μmから5μm程度であるものとする。照明系IUからの照明光L1として、例えばi線(波長が約365nm)の光を用いる場合、投影系PLの開口数は、例えば約0.06程度に設定され、この開口数での焦点深度は100μm程度になる。この焦点深度の半分(約50μm)を物体面の位置の許容誤差とし、回転ドラムの半径(R)を約250mmとすると、投影系PLの視野の大きさは、走査方向の寸法が約10mm程度になる。
このような条件で、各投影モジュールPMは、例えば、レンズの最大径が約22mm程度、全長が約180mm程度、視野の直径νφが約14.2mm程度になる。
【0084】
図9の例において、絞り部49の開口50は、各投影モジュールPMの視野と実質的に同じ形状であり、非走査方向(Y軸方向)に頂点を持つ六角形に設定されている。開口50は、非走査方向に平行な1対の辺を有する矩形部50cと、矩形部50cのY軸方向の両端に隣接する三角形部50dとを含む。矩形部50cは、例えば、走査方向(X軸方向)の寸法u1が約10mm程度、非走査方向の寸法u2が約10mm程度に設定される。三角形部50dは、例えば、非走査方向の寸法u3が2mm程度に設定される。
【0085】
絞り部49において、開口50(例えば開口50b)の三角形部50dは、投影モジュールの投影領域PRを通る領域をY軸方向に継ぐための部分(画面継ぎ部)として機能する。例えば、基板Pを走査方向(X軸方向)に移動させると、開口50bの三角形部50dに対応する投影領域PRを通った基板P上の領域は、走査方向から見て開口50bの隣に配置されている開口50aの三角形部50dに対応する基板P上の領域を通ることになる。
【0086】
このようにして、基板Pのうち、三角形部50dに対応する投影領域PRを通る領域と矩形部50cに対応する投影領域PRを通る領域とで、露光光L2の光量を揃えることができる。換言すると、開口50は、基板Pに入射する露光光L2の光量をY軸方向で揃えることができるように、配置されている。なお、上述したような開口50の形状および寸法は、一例であり、適宜変更できることは言うまでもない。
【0087】
以上のような構成の露光装置EXは、複数の投影モジュールPMが非走査方向に配列されているので、非走査方向における処理範囲を広げることができ、例えば大型のデバイス用の大判の基板、多面取り用の大判の基板などに露光することができる。また、露光装置EXは、第1投影モジュールPMと第2投影モジュールPMとで構成が同様であるので、例えば設計コスト、装置の製造コストを下げることなどができる。
なお、投影モジュールPMの数は、適宜選択でき、第1実施形態のように1つでもよいし、第2実施形態のように2以上であってもよい。
【0088】
また、露光装置EXにおいて、フィールドレンズ24は、第1投影モジュールPMaと第2投影モジュールPMbとで共通化されているので部品の数を減らすことができ、例えば位置合わせのコストを減らすことなどができる。
また、フィールドレンズ24は、複数の第1投影モジュールPMaで共通化され、複数の第2投影モジュールPMbで共通化されているので、部品の数を減らすことができ、例えば位置合わせのコストを減らすことなどができる。
【0089】
なお、上述の実施形態において、第1投影光学系PL1は、等倍系の光学系であるが、拡大系の光学系と縮小系の光学系のいずれでもよい。
また、第2投影光学系PL2は、拡大系の光学系と縮小系の光学系のいずれでもよく、第1投影光学系PL1と倍率が異なっていてもよい。例えば、第1投影光学系PL1が拡大系の光学系であって、第2投影光学系PL2が縮小系の光学系であってもよく、この場合に、拡大された中間像IMの位置に視野絞りを設けることで、投影領域PRの範囲を精度よく規定することができる。
また、投影系PLは、等倍系の光学系、拡大系の光学系、縮小系の光学系のいずれでもよい。
【0090】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態において、上記の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略することがある。図10は、本実施形態による露光装置EXを概略して示す図であり、第2投影光学系PL2などの図示が省略されている。図10の露光装置EXは、照明系IUの構成が上述の実施形態と異なる。
【0091】
照明系IUは、光源からの照明光を照明光学系21に導く(伝送する)ための導光ロッド51を備える。図10の導光ロッド51は、回転ドラムDMの回転中心軸AX1と実質的に平行(ここでは、実質的に同軸)な円柱状の部材である。導光ロッド51は、その内面で光が反射するように形成される。導光ロッド51は、光を内面反射によって回転中心軸AX1と実質的に平行な方向に導光する。
【0092】
導光ロッド51は、光源から光が入射する入射部(図示略)と、導光ロッド51の内部を伝播した光を、回転中心軸AX1と交差(直交)する方向に取出すための射出部52とを有する。本実施形態では、図6の露光装置EXのように複数の投影モジュールPMが設けられており、射出部52は、投影モジュールPMごとに設けられている。射出部52は、例えば切欠部52aを設けることで、導光ロッド51の内面反射の条件を部分的に崩すことで実現できる。
【0093】
切欠部52aは、導光ロッド51の中心線回りの周方向において局所的に設けられている。切欠部52aの内面で反射した光は、導光ロッド51の中心線に関して切欠部52aと反対側の内面で反射条件が崩れることで、切欠部52aと反対側の内面を通って導光ロッド51の外部に取出される。切欠部52aは、導光ロッド51の中心線と平行な方向において、各投影モジュールPMの位置に応じて局所的に設けられている。
【0094】
図10の導光ロッド51は、回転ドラムDMの回転中心軸AX1と実質的に同軸に配置されている。照明光L1は、導光ロッド51から回転ドラムDMの径方向に出射する。照明光学系21は、導光ロッド51から出射した照明光L1を偏向し、また照明領域IRに対する入射側でテレセントリックにする。
【0095】
図11A、11Bは、照明系IUの構成の一例を示す図である。図11Aは走査方向(X軸方向)から見た正面図である。図11Bは非走査方向(Y軸方向)から見た側面図である。図12は、照明系IUの諸元の一例を示す表2である。
【0096】
図11A、11Bの照明光学系21は、導光ロッド51からの照明光L1を偏向するシリンドリカルレンズ143(偏向部材)、およびシリンドリカルレンズ143からの照明光L1を照明領域IRの入射側でテレセントリックにするコンデンサレンズ144を備える。
【0097】
シリンドリカルレンズ143は、照明領域IRに入射する際の照明光L1の主光線の向きが投影系PL(第1投影光学系PL1)の光軸40と実質的に平行になるように、照明光L1を回転中心軸AX1に実質的に垂直な面内で偏向する。シリンドリカルレンズ143は、例えば、走査方向に垂直な面(図11AのYZ面)に沿って伝播する光を実質的に集光しないで、非走査方向に垂直な面(図11BのXZ面)に沿って伝播する光を集光するように、構成される。
シリンドリカルレンズ143の焦点距離fiは、導光ロッド51の中心線からシリンドリカルレンズ143までの距離をb(図10参照)とすると、下記の式(1)で表される。
fi=b(f2×R+f1×b)/(f2×R) ・・・式(1)
【0098】
本実施形態では、露光装置EXに複数の投影モジュールPMが設けられており、シリンドリカルレンズ143は、複数の投影モジュールPMで共通化できるように、非走査方向における基板Pの寸法(幅)をカバーするだけの長さを有する。換言すると、シリンドリカルレンズ143は、複数の投影モジュールPMからの照明光L1を一括して偏向するように、複数の投影モジュールPMによる複数の視野が非走査方向に分布する範囲の全域にわたって、設けられている。
【0099】
図11A、11Bのコンデンサレンズ144は、レンズ53a、レンズ53b、およびレンズ53cを含む。コンデンサレンズ144の各レンズの例については、図12の表2に示す。
【0100】
以下、表2において面番号がnである光学面を、第n光学面Anで表すこととする。第11光学面A11および第12光学面A12はレンズ53aの表面である。第13光学面A13および第14光学面A14はレンズ53bの表面である。第15光学面A15および第16光学面A16はレンズ53cの表面である。
表2に、各光学面の曲率半径および寸法を、走査方向と非走査方向のそれぞれについて記載する。表2の「中心間距離」は、光学面の中心から次の光学面の中心までの距離を示す。例えば面番号11に対応する「中心間距離」は、第11光学面A11の中心から第12光学面A12の中心までの距離を示し、レンズ53aの中心の厚みに相当する。
なお、面番号16に対応する「中心間距離」は、第16光学面A16の中心から照明領域IR(マスクパターンM)の中心までの距離を示す。
【0101】
コンデンサレンズ144は、照明光L1が照明領域IR(マスクパターンM)をテレセントリックに照明するように、構成されている。ここで、コンデンサレンズ144およびシリンドリカルレンズ143と光学的に等価な等価レンズを想定する。この等価レンズの前側焦点位置は、導光ロッド51の内部に形成される光源像54(図10参照)と実質的に同じ位置に設定される。この等価レンズの後側焦点位置は、照明領域IRと実質的に同じ位置に設定される。
なお、光源像54は、例えば、導光ロッド51の中心線上あるいはその近傍に形成される。
【0102】
シリンドリカルレンズ143は、非走査方向(Y軸方向)の屈折力を実質的に有していないので、コンデンサレンズ144は、例えば、第1投影系光学系PL1の光軸40および非走査方向(Y軸方向)を含む面内での焦点距離が、回転ドラムDMの半径Rの約半分(R/2)に設定される。コンデンサレンズ144は、走査方向のシリンドリカルレンズ143の屈折力を加味して、非走査方向に垂直な面内の焦点距離が、R×(1+f2/f1)/4と異なる値に設定される。
【0103】
図11A、11Bのコンデンサレンズ144において、レンズ53a〜レンズ53cは、コンデンサレンズ144のレンズ枚数を減らすことができるように、図12の表2に示すような、走査方向と非走査方向とで曲率が異なるトーリック面で構成されている。コンデンサレンズ144において、レンズ53aおよびレンズ53bからなるレンズ群は正の屈折力を有し、レンズ53cからなるレンズ群は負の屈折力を有している。
【0104】
上記の照明系IUにおいて、例えば、回転ドラムDMの半径Rが250mmであって、光源像54からシリンドリカルレンズ143までの距離b(図10参照)が約80mmの位置にシリンドリカルレンズ143が配置されているとすると、シリンドリカルレンズ143の焦点距離は、上記の式(1)から約105.6mmになる。このようなシリンドリカルレンズ143により、導光ロッド51からの照明光L1(ビーム)は、走査方向において約4.125倍に広げられる。
このような条件下で、表2の例に対応するコンデンサレンズ144は、例えば、シリンドリカルレンズ143から約9mmの位置に配置される。レンズ53aおよびレンズ53bからなるレンズ群は、収差補正のため複数のレンズで構成され、その合成焦点距離は、例えば走査方向で約197.41mm、非走査方向で約130.77mmである。そして、コンデンサレンズ144とシリンドリカルレンズ143を合成したときの走査方向(XZ面)における焦点距離は、例えば47.86mmとなる。
なお、上述したようなコンデンサレンズ144の形状および寸法は、一例であり、適宜変更できることは言うまでもない。
【0105】
ところで、シリンドリカルレンズ143が照明光L1を広げる倍率は、走査方向と非走査方向とで異なっており、シリンドリカルレンズ143に入射する際の照明光L1の広がりが等方的であると、照明領域IRに入射する際の照明光L1の広がりが異方性を有することがある。
本実施形態では、照明領域IRに入射する際の照明光L1の広がりが等方的になるように、導光ロッド51の切欠部52a(図10)は、例えば楕円状に形成され、走査方向に対応する方向の寸法(Y軸周りの周長)と、非走査方向に対応する方向の寸法(Y軸方向の幅)とが異なっている。
【0106】
以上のような構成の露光装置EXは、光源からの照明光L1を導光ロッド51によって照明光学系21に導くので、例えば、光源の配置あるいは光源に電力を供給するための電力線の配置の自由度が高くなる。そのため、露光装置EXは、例えば複数の投影モジュールPMを備える場合などに照明系IUを回転ドラムDMの内側に収容しやすくなる。
【0107】
なお、図6などに示した露光装置EXは、第1投影光学系PL1からの露光光L2をフィールドレンズ24で偏向して第2投影光学系PL2に向かわせる構成であるが、フィールドレンズ24の代わりにプリズムなどで露光光L2を偏向してもよい。
【0108】
なお、導光ロッド51の入射部は、適宜選択される位置に設けられ、回転ドラムDMの内部と外部のいずれに配置されていてもよい。例えば、光源が回転ドラムDMの外部に配置されているとともに、導光ロッド51が回転ドラムDMの外部と内部とにわたって設けられており、導光ロッド51の入射部は、光源から光が入射するように回転ドラムDMの外部に設けられていてもよい。
また、光源が回転ドラムDMの内部に配置されており、導光ロッド51の入射部は、回転ドラムDMの内部に設けられていてもよい。
【0109】
また、導光ロッド51の入射部の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。例えば、光源がY軸方向の一端部のみに設けられており、この一端部に導光ロッド51の入射部が設けられていてもよい。
また、光源がY軸方向の両端部に設けられており、両端部のそれぞれに導光ロッド51の入射部が設けられていてもよい。
【0110】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態において、上記の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略することがある。図13は本実施形態による露光装置EXを概略して示す図である。図14は、投影領域PRの配置例を示す平面図である。
【0111】
図7の露光装置EXでは、複数の投影モジュールPMが2列に配列されていたが、投影モジュールPMの列の数は2列より多くてもよい。図13の露光装置EXにおいて、投影モジュールPMは、非走査方向(Y軸方向)から見て走査方向の4箇所に配置されている。これら投影モジュールPMは、第1投影光学系PL1の光軸40が互いに異なる方向に設定されているとともに、第2投影光学系PL2の光軸45が互いに異なる方向に設定されている。
【0112】
図13のフィールドレンズ24は、複数の投影モジュールPMのそれぞれが中間像を形成する位置にまたがるように設けられている。フィールドレンズ24は、各第1投影光学系PL1からの露光光L2を第2投影光学系PL2に向かわせるように偏向する。
【0113】
複数の投影モジュールPMの位置が走査方向(X軸方向)においてずれていることに対応して、各投影モジュールPMによる投影領域PRの位置(図14参照)は、走査方向において複数の投影モジュールPMでずれている。走査方向の位置が互いに異なる投影モジュールPMは、非走査方向の位置もずれるように配置されており、投影領域PRの位置が非走査方向においてもずれている。
【0114】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態において、上記の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略することがある。図15は、本実施形態による露光装置EXを概略して示す図である。
【0115】
図15の露光装置EXは、非走査方向(Y軸方向)から見て走査方向(X軸方向)に複数の投影モジュールPMが並んでおり、複数の投影モジュールPMの光路にまたがってレンズアレイが配置されている。例えば、レンズアレイ55は、第1投影モジュールPMaの光路と第2投影モジュールPMbの光路とにわたって配置されている。レンズアレイ55には、第1投影モジュールPMaのレンズ要素56aと第2投影モジュールPMbのレンズ要素56bとが配列されている。
本実施形態では、非走査方向から見て4箇所に投影モジュールPMが配置されており、フィールドレンズ24は、4箇所の投影モジュールPMにわたって設けられている。
【0116】
レンズアレイ55は、例えば石英などの板にエッチングなどを利用して複数のレンズ要素を形成することで実現できる。レンズアレイ55のレンズ要素は、投影モジュールPMの位置に応じて、曲率(焦点距離)や光軸の傾斜が異なる。光軸の傾斜は、各レンズ要素の上側と下側とで曲率中心の位置をずらすことで実現できる。曲率(焦点距離)は、エッチング深さの制御で実現できる。
【0117】
本実施形態では、非走査方向(Y軸方向)から見て走査方向(X軸方向)に並ぶ投影モジュールPMのレンズ要素が配列されたレンズアレイ55を説明したが、走査方向から見て非走査方向に並ぶ投影モジュールPMのレンズ要素が配列されたレンズアレイ55を用いることもできる。
例えば、図15の第1投影モジュールPMaは、Y軸方向に複数配列されており、レンズアレイ55は、複数の第1投影モジュールPMの光路にまたがって設けられており、複数の第1投影モジュールPMのレンズ要素が配列されていてもよい。
【0118】
なお、図15には、投影モジュールPMのレンズ要素がそれぞれレンズアレイ55に設けられている例を示しているが、投影モジュールPMのレンズ要素のうちレンズアレイ55に設けられるレンズ要素の数は、1つでもよい。すなわち、投影モジュールPMは、レンズアレイ55に設けられているレンズ要素と、レンズアレイ55に設けられていないレンズ要素とを含んでいてもよい。
また、投影モジュールPMに、レンズ以外の開口絞りなどの光学部材を設ける場合に、この光学部材を複数の投影モジュールPMの光路にわたって配置することで、複数の投影モジュールPMで共通化してもよい。
【0119】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態について説明する。本実施形態において、上記の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略することがある。図16は、本実施形態による露光装置EXを概略して示す図である。
【0120】
図2などで説明した露光装置EXは、透過型のマスクパターンMを用いて露光するが、図16の露光装置EXは、回転ドラムDMの外部に配置された照明系IUで反射型のマスクパターンMを照明し、マスクパターンMで反射回折した光束(露光光L2)で露光する。
【0121】
図16の照明系IUは、光源装置57および光分離部58を備える。光源装置57は、例えば、図2に示した光源20および照明光学系21を備え、照明光L1を射出する。光分離部58は、偏光ビームスプリッタプリズム(以下、PBSプリズム59という)、およびPBSプリズム59と回転ドラムDM(照明領域IR)との間の光路に配置された1/4波長板60を含む。
【0122】
光源装置57は、PBSプリズム59の偏光分離膜(PBS膜59a)に対するS偏光を照明光L1として射出する。光源装置57から出射した照明光L1は、PBSプリズム59の偏光分離膜で反射して進行方向が折れ曲がり、1/4波長板60を通って実質的に円偏向になって照明領域IRに入射する。
照明光L1によって照明されているマスクパターンMで発生した反射光束(露光光L2)は、1/4波長板60を通ることでPBS膜59aに対するP偏向になり、PBS膜59aを通って投影系PLに入射する。投影系PLは、上述した実施形態と同様に、第1投影光学系PL1が中間像IMを形成し、第2投影光学系PL2が中間像IMを基板Pに投影する。
PBSプリズム59および光源装置57は、例えば、マスクパターンMで反射回折した露光光L2の進行方向が第1投影光学系PL1の光軸40と実質的に平行(同軸)になるように、配置されている。
【0123】
[第7実施形態]
次に、第7実施形態について説明する。本実施形態において、上記の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略することがある。図17は、本実施形態による露光装置EXを概略して示す図である。
【0124】
図2などで説明した露光装置EXは、湾曲した投影領域PRに投影露光するが、図17の露光装置EXは、平面状の投影領域PRに投影露光する。図17において、基板Pは、搬送ローラ61aと搬送ローラ61bとに掛け渡されて支持されている。投影領域PRは、搬送ローラ61aと搬送ローラ61bとの間で平面的に搬送される基板P上に設定されている。
本実施形態では、基板Pのうち投影領域PRを通る部分を支持する支持部材62が設けられている。支持部材62は、例えばガスを吹出す吹出口と、吹出口からのガスを吸引する吸引口とが配列されたエアパッド面62aを有する。支持部材62は、投影領域PRにおいて基板Pを平面状に保つように、エアパッド面62aで基板Pを非接触に支持する。
【0125】
なお、図17においては、基板Pが搬送ローラ61bと搬送ローラ61cとに掛け渡されており、基板Pは、中心面13に関して対称的に搬送される。露光装置EXは、搬送ローラ61bと搬送ローラ61cとの間の搬送経路に、投影系PL(投影モジュールPM)を追加することで、マルチレンズ方式の露光装置にすることもできる。
また、搬送ローラ61bと搬送ローラ61cとの間の搬送経路は、中心面13に関して、搬送ローラ61aと搬送ローラ61bとの間の搬送経路と非対称でもよい。この場合には、追加する投影モジュールPMの光軸の傾き、X軸方向の位置などは、投影領域PRの傾きに応じて適宜設定できる。
【0126】
このように、露光装置EXは、平面状に支持された基板Pを露光する構成でもよい。
また、上述の実施形態において、マスクパターンMが円筒面状に湾曲した状態で保持されて露光処理が行われる構成を説明したが、マスクパターンMが平面状に保持されており、基板Pが円筒面状に湾曲した状態で支持されて露光処理される構成でもよい。この構成において、第2投影光学系PL2は、中間像IMの接平面IMaと投影領域PRの接平面PRaとをシャインプルーフの条件を満たして共役関係にすることで、第1投影光学系PL1が形成した中間像を精度よく投影することができる。
【0127】
[デバイス製造方法]
次に、デバイス製造方法について説明する。図18は、本実施形態のデバイス製造方法を示すフローチャートである。
【0128】
図18に示すデバイス製造方法では、まず、例えば液晶表示パネル、有機EL表示パネルなどのデバイスの機能・性能設計を行う(ステップ201)。次いで、デバイスの設計に基づいて、マスクパターンMを製作する(ステップ202)。また、デバイスの基材である透明フィルムやシート、あるいは極薄の金属箔などの基板を、購入や製造などによって準備しておく(ステップ203)。
【0129】
次いで、準備した基板をロール式、パッチ式の製造ラインに投入し、その基板上にデバイスを構成する電極や配線、絶縁膜、半導体膜などのTFTバックプレーン層や、画素部となる有機EL発光層を形成する(ステップ204)。ステップ204には、典型的には、基板上の膜の上にレジストパターンを形成する工程と、このレジストパターンをマスクにして上記膜をエッチングする工程とが含まれる。
レジストパターンの形成には、レジスト膜を基板表面に一様に形成する工程、上記の各実施形態に従って、マスクパターンMを経由してパターン化された露光光L2で基板のレジスト膜を露光する工程、その露光によってマスクパターンの潜像が形成されたレジスト膜を現像する工程、が実施される。
【0130】
印刷技術などを併用したフレキシブル・デバイス製造の場合は、基板表面に機能性感光層(感光性シランカップリング材など)を塗布式により形成する工程、上記の各実施形態に従って、マスクパターンMを経由してパターン化された露光光L2を機能性感光層に照射し、機能性感光層にパターン形状に応じて親水化した部分と撥水化した部分を形成する工程、機能性感光層の親水性の高い部分にメッキ下地液などを塗工し、無電解メッキにより金属性のパターンを析出形成する工程、などが実施される。
【0131】
次いで、製造するデバイスに応じて、例えば、基板をダイシング、あるいはカットすることや、別工程で製造された他の基板、例えば封止機能を持ったシート状のカラーフィルターや薄いガラス基板などを貼り合せる工程が実施され、デバイスを組み立てる(ステップ205)。次いで、デバイスに検査などの後処理を行う(ステップ206)。以上のようにして、デバイスを製造することができる。
【0132】
なお、本発明の技術範囲は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態で説明した要素の1つ以上は、省略されることがある。また、上記の実施形態で説明した要素は、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0133】
M・・・マスクパターン、P・・・基板、23・・・中間結像面、23a・・・接平面、24・・・フィールドレンズ、47、48・・・光学部材、49・・・絞り部、55・・・レンズアレイ、56a、56b・・・レンズ要素、DM・・・回転ドラム(マスク保持部材)、DP・・・回転ドラム(基板支持部材)、DPa・・・外周面(支持面)、EX・・・露光装置、IM・・・中間像、IMa・・・接平面、IR・・・照明領域、IRa・・・接平面、IU・・・照明系、L1・・・照明光、L2・・・露光光、PL1・・・第1投影光学系(中間像形成光学系)、PL2・・・第2投影光学系(投影光学系)、PM・・・投影モジュール、PR・・・投影領域、PRa・・・接平面、U3・・・処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18