特許第6332559号(P6332559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332559
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】車載表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20180521BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G09F9/00 304Z
   G09F9/00 350A
   G02F1/1333
   G09F9/00 313
   G09F9/00 362
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-521955(P2017-521955)
(86)(22)【出願日】2016年5月31日
(86)【国際出願番号】JP2016066076
(87)【国際公開番号】WO2016194916
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2018年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-114616(P2015-114616)
(32)【優先日】2015年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100121393
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 匡平
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 保真
(72)【発明者】
【氏名】深澤 寧司
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小西 正哲
【審査官】 小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−178640(JP,A)
【文献】 特開2014−001124(JP,A)
【文献】 特開2013−018355(JP,A)
【文献】 特表2011−510903(JP,A)
【文献】 特開平09−073072(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/158839(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/179882(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/148990(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/042062(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00−46
G02F 1/13−1/1335
1/13363−1/141
B60K 35/00−37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装部材に配置される車載表示装置であって、
表示パネルと、
前記表示パネルをカバーするカバーガラスと、
前記表示パネルを収納する筐体と、
前記筐体を位置保持する保持部と、を備え、
前記カバーガラスが、板厚が0.5〜2.5mm、圧縮応力層の厚さが10μm以上、圧縮応力層の表面圧縮応力が650MPa以上である強化ガラスであり、
前記カバーガラスの板厚(単位:mm)をx、前記保持部のエネルギー吸収率(単位:%)をyとしたときに、下記式(1)を満たす、車載表示装置。
y≧−37.1×ln(x)+53.7・・・(1)
【請求項2】
前記保持部が、
前記筐体の裏面側に配置される衝撃吸収性を有する衝撃吸収部と、
前記筐体を位置固定する固定部と、
を備える、請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項3】
前記カバーガラスが、ソーダライムガラスまたはアルミノシリケートガラスである請求項1または2に記載の車載表示装置。
【請求項4】
前記カバーガラスは、モル%表示で、SiOを50〜80%、Alを1〜20%、NaOを6〜20%、KOを0〜11%、MgOを0〜15%、CaOを0〜6%およびZrOを0〜5%含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項5】
前記衝撃吸収部は、クッション材、ハニカム機構、回転機構または摺動機構である請求項2〜4のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項6】
前記固定部の材料が、金属である請求項2〜5のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項7】
前記固定部の断面が、L字状またはL字波型状である請求項2〜6のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項8】
前記固定部と前記筐体とは、ボルトによって接合されている請求項2〜7のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項9】
前記カバーガラスの周縁部には、遮光部が形成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項10】
前記表示パネルと前記カバーガラスとは、粘着層を介して貼合されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項11】
前記粘着層の厚さは、5〜400μmである請求項10に記載の車載表示装置。
【請求項12】
前記粘着層の貯蔵せん断弾性率は、5kPa〜5MPaである請求項10または11に記載の車載表示装置。
【請求項13】
前記カバーガラスは、前記筐体の筐体枠の上面と両面テープを介して貼合されている請求項1〜12のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項14】
前記表示パネルが、液晶パネル、有機ELパネル、PDPまたは電子インク型パネルである請求項1〜13のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項15】
埋め込みタイプまたはスタンディングタイプである請求項1〜14のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項16】
前記遮光部が枠状である請求項9に記載の車載表示装置。
【請求項17】
前記表示パネルと前記筐体の底板との間にバックライトユニットを備える請求項1〜16のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項18】
請求項1〜17に記載の車載表示装置を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶パネル等を有する表示装置の表示パネルを保護するために、表示パネルの表示面(表示領域)を覆う透明な保護部材が用いられている。このように表示装置を保護するための保護部材として、例えば、特許文献1には、表面に粘着層が形成された粘着層付き透明面材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/148990号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車等の車両には、カーナビゲーション装置などの車載表示装置が搭載されている。
車載表示装置のタイプとしては、例えば、ダッシュボードの外部に立設されたスタンディングタイプ、ダッシュボードに埋め込まれた埋め込みタイプ等が挙げられる。
このような車載表示装置においても、表示パネル保護の観点からフィルム等の透明な保護部材が使用されているが、近年では質感の観点から、フィルムではなくガラスの保護部材(カバーガラス)の使用が望まれている。さらに、ガラスのなかでも、合わせガラスは厚くなりがちでデザイン上の問題が生じやすく、また、コストも高いことから、強化ガラスの使用が求められている。
【0005】
車載表示装置用カバーガラスには、安全性の観点から、車両の衝突事故が発生したときに乗員の頭部等がぶつかっても割れないほどの優れた耐衝撃性が要求される。衝突事故による衝撃は、例えば液晶テレビ等の据置型表示装置において想定されている衝撃よりもエネルギーが格段に大きいため、カバーガラスに高い衝撃耐性が求められる。
【0006】
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、カバーガラスの耐衝撃性に優れた車載表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の強化ガラスであるカバーガラスの板厚と、筐体を位置保持する保持部のエネルギー吸収率とが特定の条件を満足する場合に、カバーガラスの耐衝撃性が優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の一態様に係る車載表示装置は、車両の内装部材に配置される車載表示装置であって、表示パネルと、上記表示パネルをカバーするカバーガラスと、上記表示パネルを収納する筐体と、上記筐体を位置保持する保持部と、を備え、上記カバーガラスが、板厚が0.5〜2.5mm、圧縮応力層の厚さが10μm以上、圧縮応力層の表面圧縮応力が650MPa以上である強化ガラスであり、上記カバーガラスの板厚(単位:mm)をx、上記保持部のエネルギー吸収率(単位:%)をyとしたときに、下記式(1)を満たす、車載表示装置である。
y≧−37.1×ln(x)+53.7・・・(1)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カバーガラスの耐衝撃性に優れた車載表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、粘着層付きカバーガラスを示す模式的断面図である。
図2図2は、車載表示装置を示す模式的断面図である。
図3図3は、車載表示装置の変形例を示す模式的断面図である。
図4図4は、試験体を示す斜視図である。
図5図5は、図4のA−A線断面図である。
図6図6は、試験体を示す平面図である。
図7図7は、固定部の変形例を示す斜視図である。
図8図8は、試験体の変形例を示す平面図である。
図9図9は、シミュレーションの結果の一例を示すグラフである。
図10図10は、引張試験の試験片を示す平面図である。
図11図11は、ひずみエネルギー密度Uを表す図である。
図12図12は、耐衝撃性の評価結果をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0011】
以下では、まず、本実施形態の車載表示装置に用いる粘着層付きカバーガラスについて説明した後、本実施形態の車載表示装置を説明する。
なお、本実施形態では、車載表示装置を製造する方法として、粘着層付きカバーガラスを製造して、それを表示パネルに貼合する形態を一例として示すが、車載表示装置の製造方法はそれに限らない。例えば、OCA(Optically Clear Adhesive)フィルム等を介して、カバーガラスと表示パネルとを貼合してもよい。
【0012】
[粘着層付きカバーガラス]
図1は、粘着層付きカバーガラスを示す模式的断面図である。図1に示す粘着層付きカバーガラス10は、透明なカバーガラス12と、粘着層14と、保護フィルム16と、遮光部20とを有する。
カバーガラス12の第1主面12c上に粘着層14が設けられる。カバーガラス12において粘着層14が設けられる領域を配置領域12aと呼ぶ。
カバーガラス12および粘着層14の形状は、例えば長方形状であり、外形は粘着層14の方が小さい。粘着層14は、カバーガラス12に対して、例えば中心を一致させて配置される。カバーガラス12の第1主面12cにおいて、配置領域12aの周縁の周縁部12bには、遮光部20が枠状に形成されている。
遮光部20は、後述する表示パネルの配線部材等をカバーガラス12の第2主面12d側から視認できないように隠蔽するものである。もっとも、表示パネルの配線部材等が表示パネルを観察する側からは視認できない構造である場合等においては、遮光部20を設けなくてもよい。
粘着層14の第1主面14aには、カバーガラス12の全面を覆う保護フィルム16が剥離可能に設けられている。粘着層付きカバーガラス10を車載表示装置に貼合するときには、保護フィルム16が剥離される。保護フィルム16としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の比較的柔軟なフィルムが用いられる。
【0013】
〔カバーガラス〕
カバーガラス12としては、化学強化ガラス、物理強化ガラス等の強化ガラスが用いられ、なかでも、強度、デザイン性、コスト等の観点から、化学強化ガラスが好ましい。
なお、カバーガラス12のガラス種としては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス(SiO−Al−NaO系ガラス)等が挙げられるが、なかでも、強度の観点からは、アルミノシリケートガラスが好ましい。
強化ガラスであるカバーガラス12の表面には、圧縮応力層が形成される。圧縮応力層の厚さは10μm以上であり、好ましくは15μm以上、より好ましくは25μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。
また、強化ガラスであるカバーガラス12の圧縮応力層における表面圧縮応力は、650MPa以上であり、750MPa以上であることが好ましい。
【0014】
このようなカバーガラス12としては、例えば、アルミノシリケートガラスに強化処理を施した強化ガラス(例えば「ドラゴントレイル(登録商標)」)が好適に挙げられる。
なお、カバーガラス12を構成するガラス材料としては、例えば、モル%表示で、SiOを50〜80%、Alを1〜20%、NaOを6〜20%、KOを0〜11%、MgOを0〜15%、CaOを0〜6%およびZrOを0〜5%含有するガラス材料が挙げられる。
【0015】
ガラスに化学強化処理を施して強化ガラス(化学強化ガラス)を得る方法は、典型的には、ガラスをKNO溶融塩に浸漬し、イオン交換処理した後、室温付近まで冷却する方法が挙げられる。KNO溶融塩の温度や浸漬時間などの処理条件は、表面圧縮応力及び圧縮応力層の厚さが所望の値となるように設定すればよい。
【0016】
カバーガラス12の板厚は、0.5〜2.5mmである。板厚が0.5mm未満であると、カバーガラス12自体の強度が不十分となり耐衝撃性が低下するおそれがある。一方、板厚が2.5mm超であると、厚くなりすぎてしまい、設計上の観点から車載表示装置用途には不向きとなる。
カバーガラスの板厚は、0.7〜2.0mmが好ましく、1.3〜2.0mmがより好ましい。
【0017】
カバーガラス12の外形の形状および大きさは、車載表示装置の外形に合わせて適宜決定される。車載表示装置は、外形が、長方形等の矩形であることが一般的であるため、その場合、カバーガラス12の外形は矩形である。車載表示装置の外形によっては、表示パネルの表示面の全面を覆う、外形形状に曲線を含む形状のカバーガラス12も使用できる。
なお、カバーガラス12の大きさの一例としては、例えば、矩形の場合、長手方向:100〜800mm、短手方向:40〜300mmが挙げられる。
【0018】
〔粘着層〕
粘着層14はカバーガラス12と同じく透明であり、カバーガラス12と粘着層14との屈折率差は小さいことが好ましい。
粘着層14としては、例えば、液状の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる透明樹脂からなる層が挙げられる。硬化性樹脂組成物としては、例えば、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物などが挙げられ、なかでも、硬化性化合物および光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物が好ましい。硬化性樹脂組成物としては、例えば、国際公開第2011/148990号に記載の層状部形成用光硬化性樹脂組成物が好適に挙げられる。
なお、粘着層14は、先述したようにOCAフィルム(OCAテープ)であってもよい。この場合、カバーガラス12上にOCAフィルムを貼合する。
【0019】
このような粘着層14の厚さは、例えば、5〜400μmであり、50〜200μmが好ましい。また、粘着層14の貯蔵せん断弾性率は、例えば、5kPa〜5MPaであり、1MPa〜5MPaが好ましい。
【0020】
〔粘着層付きカバーガラスの製造方法〕
粘着層付きカバーガラス10の製造方法について説明する。以下では、液状の樹脂組成物をカバーガラス12上に塗布し、それを硬化する場合の形態について説明する。
まず、カバーガラス12の周縁部12bに、遮光部20を枠状に形成する。そして、カバーガラス12の第1主面12c全面に遮光部20を覆って、硬化性樹脂組成物を、例えば、ダイコータ、ロールコータ等の方法を用いて塗布し、硬化性樹脂組成物膜(図示せず)を形成する。硬化性樹脂組成物膜は、後述するように切断されて粘着層14になる。
【0021】
次に、硬化性樹脂組成物膜の表面に、フィルム材(図示せず)を貼り付ける。フィルム材は後述するように切断されて、保護フィルム16となる。フィルム材を硬化性樹脂組成物膜の表面に貼り付けた後、光硬化処理または熱硬化処理によって硬化性樹脂組成物膜を硬化させることで、硬化性樹脂組成物膜がフィルム材で保護された積層体が得られる。
次に、得られた積層体において、粘着層14の側面14bとなる位置を切断線に設定し、レーザー光線を用いて、切断線で積層体を切断する。これにより、粘着層14の第1主面14aに保護フィルム16が設けられた粘着層付きカバーガラス10が得られる。
なお、予め硬化した粘着層14のフィルムをカバーガラス12上に貼合する場合や、樹脂組成物を精度良く塗布できる場合は切断工程を省略してもよい。
また、先述したように、粘着層14としてOCAフィルム(OCAテープ)をカバーガラス12上に貼合してもよく、この場合にも、切断工程を省略できる。
【0022】
[車載表示装置]
次に、本実施形態の車載表示装置100を説明する。
図2は、車載表示装置を示す模式的断面図である。本実施形態の車載表示装置100は、いわゆる埋め込みタイプの車載表示装置であり、ダッシュボード等の内装部材401に設けられた凹部411に埋め込まれて使用される。もっとも、車載表示装置としては、これに限定されず、例えば、スタンディングタイプの車載表示装置であってもよい。
【0023】
車載表示装置100は、各部を収納する筐体106を有する。筐体106の底板である筐体底板107上には、バックライトユニット102が載置され、バックライトユニット102上に、表示パネルとしての液晶パネル104が載置されている。このようにして、バックライトユニット102および液晶パネル104が筐体106に収納されている。筐体106には開口部108が形成されており、開口部108側に液晶パネル104が配置される。液晶パネル104における開口部108に対応する領域を、表示面104aとする。
【0024】
バックライトユニット102および液晶パネル104の構成は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。また、筐体106(筐体底板107を含む)の材質等についても、同様に、特に限定されるものではない。
【0025】
図2に示すように、筐体106の開口部108において、液晶パネル104の表示面104aから筐体106の端面106aまで段差がある。
粘着層付きカバーガラス10は、保護フィルム16を剥離した後、筐体106の開口部108を埋めるようにして、粘着層14を液晶パネル104の表示面104aに貼合する。これにより、車載表示装置100の表示面104aから筐体106の端面106aに至るまでカバーガラス12で覆われる。このようにして、カバーガラス12が、車載表示装置100の表示面104aの保護部材として機能する。
【0026】
車載表示装置100の筐体106は、内装部材401の凹部411に収納されている。
このとき、凹部411の底面411a上には、衝撃吸収性を有する衝撃吸収部としての直方体状のクッション材321が配置されている。すなわち、クッション材321は、筐体106の裏面側(開口部108とは反対側)に配置されている。このクッション材321によって、筐体106は、凹部411内で、所定の高さに位置付けられる。クッション材321としては、市販品を用いることができ、その具体例としては、ケー・シー・シー商会社製「CF45」が挙げられる。
なお、本実施形態では、筐体106の裏面側に配置される衝撃吸収部として、クッション材321を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、クッション材321以外の衝撃吸収性を有する部材;ハニカム機構、回転機構、摺動機構などの衝撃吸収性を有する機構;等であってもよい。
【0027】
また、筐体106は、凹部411内で、固定部301およびボルト311によって位置固定されている。固定部301は、一例として図2に示すように、断面L字状の板状部材であるが、これに限定されるものではなく、例えば後述する図7に示す変形例等であってもよい。
【0028】
なお、例えば図2等においては筐体106の長辺2辺を固定部301で保持する態様を示しているが、これに限定されず、例えば筐体106の1辺,3辺または4辺を固定部301で保持してもよく、更に、筐体106の別の位置を保持してもよい。
図3は、車載表示装置の変形例を示す模式的断面図である。図1および図2に基づいて説明した部分と同じ部分については同じ符号で示し説明も省略する。図3に示す車載表示装置100bは、筐体106の1辺のみを固定部301で保持した「片持ちタイプ」の車載表示装置であり、これをスタンディングタイプの車載表示装置とみなすこともできる。
【0029】
固定部301の材料は、例えば鉄(鋼を含む)、アルミニウム等の金属である。ボルト311によって固定部301と筐体106とが接合され、同様に、ボルト311によって固定部301と凹部411の底面411aとが接合される。こうして、筐体106は、凹部411内で位置固定される。
【0030】
したがって、クッション材321と固定部301(およびボルト311)とは、筐体106を凹部411内で位置保持する保持部として機能する。
【0031】
なお、筐体106には、固定部301による固定のための部位が設けられていてもよく、例えば、図2に示すように、筐体底板107に、カバーガラス12側とは反対側に向けて突出した部材である筐体突出部111が設けられていてもよい。この場合、図2に示すように、ボルト311によって固定部301と筐体突出部111とが接合される。
筐体突出部111は、矩形である筐体底板107の四辺の縁に設けられていてもよいし、向かい合う一対の二辺の縁のみに設けられていてもよい。筐体突出部111は、基本的には、筐体底板107と一体の部材であることが好ましい。筐体突出部111は、一例として、図2に示すように、板状の部材であるが、固定部301およびボルト311によって接合されることができれば、その形状は特に限定されるものではない。
【0032】
内装部材401に埋め込まれた車載表示装置100の周囲には、図2に示すように、凹部411の一部を覆うようにして、カバー402が設けられていてもよい。
【0033】
このような車載表示装置100のカバーガラス12に対しては、車両の衝突事故時に乗員の頭部等がぶつかることにより、内装部材401の凹部411の中に押し込む方向の外力が加わる。この外力によって、筐体106を位置保持する固定部301およびクッション材321は変形する。すなわち、衝突時の運動エネルギーの少なくとも一部が、保持部(固定部301、クッション材321)のひずみエネルギーに変換される(後出の図9に示すグラフを参照)。つまり、衝突時の運動エネルギーの一部が、保持部に吸収される。
【0034】
ここで、衝突時のエネルギーがどれくらい保持部に吸収されたかを「エネルギー吸収率(単位:%)」と呼ぶ。エネルギー吸収率は、後出の[実施例]に示すように、所定のシミュレーションにより算出できる。本発明者らは、保持部のエネルギー吸収率が特定の条件を満たす場合に、車載表示装置100のカバーガラス12が、車両の衝突事故時に乗員の頭部等がぶつかっても割れないほどの優れた耐衝撃性を示すことを見出した。また、このエネルギー吸収率は、カバーガラス12の板厚に依存することも見出した。
【0035】
すなわち、本発明者らは、カバーガラスの板厚(単位:mm)をx、保持部のエネルギー吸収率(単位:%)をyとしたときに、下記式(1)を満たすときに、カバーガラスの耐衝撃性が優れることを見出した。
y≧−37.1×ln(x)+53.7・・・(1)
【0036】
式(1)を満たすときにカバーガラスの耐衝撃性が優れることは、後出の[実施例]で示されている。すなわち、後出の[実施例]においては、式(1)を満たさない場合(比較例)はカバーガラスが割れるのに対して、式(1)を満たす場合(実施例)にはカバーガラスが割れないことが示されている。
【0037】
車載表示装置100において、式(1)を満たす限り保持部の態様は特に限定されるものではなく、式(1)を満たす範囲内で、保持部は適宜選択される。
例えば、保持部が、固定部301とクッション材321等の衝撃吸収部とからなる場合、カバーガラス12の板厚に応じて、式(1)を満たす範囲内で、例えば、固定部301の形状、材質、板厚等を変更したり、衝撃吸収部であるクッション材321の材質を変更したり、衝撃吸収部としてクッション材321以外の部材または機構を選択したりする。
【0038】
なお、以上の説明では、表示パネルとして液晶パネルを有する車載表示装置を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、例えば、有機ELパネル、PDP、電子インク型パネル等を有するものであってもよい。また、タッチパネル等を有していてもよい。
このような車載表示装置としては、例えば、車両のダッシュボードに埋め込まれた埋め込みタイプのカーナビゲーション装置などが挙げられ、さらに、カーナビゲーション装置以外の装置(例えば、インストルメントパネル)であってもよい。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例等により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0040】
〈カバーガラスの準備〉
カバーガラス12として、アルミノシリケートガラスに強化処理を施した強化ガラス(旭硝子社製商品名「ドラゴントレイル」、圧縮応力層の厚さ:38μm、圧縮応力層における表面圧縮応力:774MPa)を準備した。
【0041】
〈粘着層付きカバーガラスの作製〉
カバーガラス12の第1主面12cに、粘着層14として、OCA(日栄化工社製「MHM−FWD」、厚さ:150μm)を積層し、粘着層付きカバーガラス10を作製した。
【0042】
〈試験体の作製〉
剛体模型を衝突させる試験(「ヘッドインパクト試験」ともいう)を行なうため、粘着層付きカバーガラス10を用いて、埋め込みタイプの車載表示装置の試験体200を作製した。図4図6に基づいて試験体200を説明する。図4図6においては、図1および図2の車載表示装置100と同一の(または対応する)部分は同じ符号を用い、説明を省略する。
【0043】
図4は、試験体を示す斜視図である。図5は、図4のA−A線断面図である。図6は、試験体を示す平面図である。
【0044】
図4および図5に示すように、試験体200は、筐体底板107を有し、筐体底板107の周縁部上には、内部にリブが付いた筐体枠109が4つ配置されている。筐体底板107と4つの筐体枠109とによって、中央領域に矩形の凹部を有する筐体106が形成され、この筐体106に、バックライトユニット102と液晶パネル104とが配置されている。
【0045】
図5に示すように、バックライトユニット102の上面側の端部は、断面L字状のL字部材208により覆われている。L字部材208の上面と液晶パネル104の下面側の端部とは、両面テープ207によって接着されている。このため、液晶パネル104とバックライトユニット102との間には、L字部材208および両面テープ207の厚さ分だけ、エアギャップ(1.5mm)が存在している。液晶パネル104の上面位置は、周囲に配置された筐体枠109の上面位置よりも低くなっており、凹部が形成されている。この凹部を埋めるようにして、粘着層付きカバーガラス10の粘着層14が、液晶パネル104の上面に貼合されている。なお、カバーガラス12の下面と筐体枠109の上面とは、両面テープ115で貼合されている。カバーガラス12の端面の外側であってかつ筐体枠109の上面には、筐体端枠110が配置されている。なお、筐体端枠110も、両面テープ115によって筐体枠109に貼合されている。
【0046】
図4および図5に示すように、筐体底板107の4辺には、筐体底板107に連続して、板状の筐体突出部111が設けられている。筐体底板107と4つの筐体突出部111とによって、筐体底板107の裏面側(バックライトユニット102側とは反対側)には、凹部が形成されている。この凹部内には、クッション材321の一部が入り込んでいる。クッション材321は、平板である支持板215上に配置されており、クッション材321によって、筐体106が支持されている。なお、クッション材321としては、基本的には、ケー・シー・シー商会社製「CF45」(厚さ:25.4mm)を「2枚」重ねたものを用いたが、いくつかの例では、この枚数を「1枚」または「3枚」とした。筐体106がクッション材321に支持された状態において、向かい合う一対の筐体突出部111には、固定部301の一端側がボルト311によって接合されている。固定部301の他端側は、ボルト311によって、支持板215に接合されている。こうして、筐体突出部111を含む筐体106は、固定部301によって位置固定される。
【0047】
断面L字状の板状部材である固定部301(下記表1では「L字」と表記)について、クッション材321が「2枚」の例では、図4中にL1〜L4で示すサイズは、L1:20mm、L2:50mm、L3:100mm、L4:20mmとし、クッション材321が「1枚」の例(例25)では、L2の長さを短くした。
【0048】
なお、一部の例では、固定部301に代えて、図7に示す波型に屈曲した固定部301b(下記表1では「L字波型」と表記)を用いた。
図7は、固定部の変形例を示す模式的断面図である。図7に変形例として示す固定部301bは、板状部材を切り欠いたU字形状の部材である。固定部301bを断面視(側面視)すると、L字状ではなく、長手部分の途中が突出するように(波型に)屈曲している。
このとき、クッション材321が「2枚」の例では、図7中にL2〜L9で示すサイズは、L2:50mm、L3:80mm、L4:20mm、L5:40mm、L6:14mm、L7:18mm、L8:18mm、L9:10mmとし、クッション材が「3枚」の例では、固定部301bを引き延ばし、L2の長さを長くした。
【0049】
図6中にH1〜H3およびW1〜W3で示すサイズは、H1:120mm、H2:150mm、H3:250mm、W1:173mm、W2:250mm、W3:350mm、とした。
カバーガラス12の板厚は、0.56mm、0.7mm、1.1mm、1.3mmおよび2.0mmの5種とした。
【0050】
なお、一部の例では、試験体200ではなく、図8に示すような「片持ちタイプ」の試験体200bを使用した。
図8は、試験体の変形例を示す平面図である。図4図6に基づいて説明した部分と同じ部分については同じ符号で示し説明も省略する。図8に示す試験体200bでは、車載表示装置100b(図3参照)と同様に、筐体106の1辺(後述する衝突位置P側の1辺)のみを固定部301(または固定部301b)で保持している。このような「片持ちタイプ」の試験体200bを使用した例については、下記表1中、固定部に関する「L字」または「L字波型」の表記の後に「st」という文字を表記する。
【0051】
また、その他の各部は以下のようにした。
・液晶パネル104…ソーダライムガラス(板厚1.1mm、サイズ:173mm×120mm)の両面に偏光板(材質:TAC)を貼合した代替品を用いた。
・バックライトユニット102…板状体102a(材質:PC、板厚:4mm、サイズ:117mm×170mm)の底面および4つの側面を凹状体102b(材質:アルミニウム、板厚:1mm)で覆った代替品を用いた。
・両面テープ207…材質:PET、テープ幅:5mm、テープ厚:0.5mm
・L字部材208…材質:PVC、板厚:1mm、L字1辺の長さ:5mm
・筐体枠109…材質:ABS、板厚:2mm
・筐体端枠110…材質:ABS、板厚:2.5mm、板幅:5mm
・両面テープ115…材質:PET、テープ厚:0.5mm
・固定部301…別途記載
・ボルト311…材質:鉄
・クッション材321…ケー・シー・シー商会社製「CF45」(厚さ:25.4mm)を1枚、2枚または3枚重ねたもの
・支持板215…材質:鉄、板厚:9mm
・筐体底板107および筐体突出部111…材質:鉄、板厚:1.15mm
【0052】
〈耐衝撃性の評価(ヘッドインパクト試験)〉
このような試験体200において、各例ごとに、カバーガラス12の板厚と固定部301の材質、形状および板厚とを、下記表1に示すように変化させて、ヘッドインパクト試験を行ない、カバーガラス12の耐衝撃性を評価した。
【0053】
試験体200の支持板215を水平面に設置し、カバーガラス12の第2主面12dの衝突位置P(図6参照)に、図示しない球状の剛体模型(材質:鉄、直径:165mm、質量:19.6kg)を、衝突時のエネルギーが152.4Jになるように、衝突速度3.944m/sで793mmの高さから落下させて衝突させた。
【0054】
試験方法は、国土交通省が示す「道路運送車両の保安基準」の「第20条 乗車装置」の「別紙28 インストルメントパネルの衝撃吸収の技術基準」(以下、単に「基準」という)を参照した。この「基準」では、球状の剛体模型(材質:鉄、直径:165mm、質量:6.8kg)を、衝突速度6.7m/sで射出して衝突させ、衝突時のエネルギーが152.4Jになるようにしている。
すなわち、試験体200を用いたヘッドインパクト試験では、衝突時のエネルギーが「基準」と同等になるようにした。
なお、剛体模型の減速度に関しては、3ms(ミリ秒)以上連続して784m/s2(80G)を超えないことが規定されているが、今回行なった試験においては、全てこの規定を満たしていたことを確認している。
【0055】
剛体模型を衝突させるカバーガラス12上の衝突位置P(図6参照)について、ヘッドインパクト試験では、カバーガラス12の中央部付近に衝突させたときよりも、カバーガラス12や液晶パネル104の端部付近に衝突させたときの方が、カバーガラス12が割れやすいことが従前の試験結果から分かっている。そこで、衝突位置Pは、試験体200を上面から見て、液晶パネル104における中心位置よりも一方の固定部301側に寄せた位置、より詳細には、カバーガラス12の長辺中央部であって、かつ、液晶パネル104の端から10mm内側の位置とした。
【0056】
各例ごとに、試験体200を作製してヘッドインパクト試験を行なった。試験の結果、カバーガラス12が割れなかった場合には「○」を、カバーガラス12が割れた場合には「×」を、下記表1に記載した。「○」であれば、衝突事故時に乗員の頭部等がぶつかっても割れないような優れた耐衝撃性を示すものとして評価できる。
【0057】
〈エネルギー吸収率の算出(シミュレーション)〉
上記ヘッドインパクト試験を試験体200に対して行なった際の保持部(固定部301およびクッション材321)のエネルギー吸収率をシミュレーションによって算出した。
【0058】
図9は、シミュレーションの結果の一例を示すグラフである。図9では、横軸に時間(単位:ミリ秒)を、縦軸にエネルギー(単位:J)を示している。実線のグラフは剛体模型の運動エネルギーを、破線のグラフは試験体200全体のひずみエネルギーを、点線のグラフは保持部のひずみエネルギーを示している。
図9に示すように、剛体模型を試験体200に衝突させて剛体模型が持つ運動エネルギー(実線のグラフ)がゼロになった時(つまり、剛体模型が最下点となり速度が0(ゼロ)になった時)に、ほぼ同じ時点で、試験体200のひずみエネルギー(破線のグラフ)が最大値の152.4Jに到達している。このことから、衝突時には、剛体模型の運動エネルギーがほぼ全て、試験体200においてひずみエネルギーに変換されたことが分かる。
そして、保持部のエネルギー(点線のグラフ)についても、試験体200のエネルギー(破線のグラフ)と同様の挙動を示しており、剛体模型のエネルギー(実線のグラフ)がゼロになった時に、最大値に到達している。
このような図9から、剛体模型の衝突時の運動エネルギーの少なくとも一部が、保持部(固定部301、クッション材321)のひずみエネルギーに変換されたことが分かる。
【0059】
図9のようなグラフから、剛体模型の衝突時における、保持部のひずみエネルギー(グラフの最大値)の試験体200のひずみエネルギー(グラフの最大値(=152.4J))に対する割合を求め、これを、保持部のエネルギー吸収率(単位:%)とした。
例えば、衝突時における保持部のひずみエネルギーが「105J」であった場合は、エネルギー吸収率は、(105/152.4)×100=69[%]となる。
【0060】
シミュレーションに際しては、各部材の塑性変形による衝撃吸収も考慮する必要があるため、具体的には、市販の解析プログラムであるPAM−CRASH(日本ESI社製)を使用して、動的陽解法FEM(Finite Element Method(有限要素法))による衝撃解析(弾塑性変形解析)を行なった。
解析に際しては、カバーガラス12の長辺中央部に衝突させているため、計算時間短縮の観点から、1/2左右対称モデルを作成し、計算を行なった。また、試験体200の各部について、サイズのほか、密度ならびにヤング率およびポアソン比などの弾性率などの物性値をコンピュータに入力した。各部に用いた材質の物性値は、以下のとおりである。
【0061】
・鉄(SS400)…ヤング率:206GPa、ポアソン比:0.30、密度:7.86×10-6kg/mm3
・アルミニウム…ヤング率:68.6GPa、ポアソン比:0.34、密度:2.71×10-6kg/mm3
・ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合体)…ヤング率:2.2GPa、ポアソン比:0.37、密度:1.05×10-6kg/mm3
・PC(ポリカーボネート)…ヤング率:2.2GPa、ポアソン比:0.38、密度:1.20×10-6kg/mm3
・PVC(ポリ塩化ビニル)…ヤング率:3.2GPa、ポアソン比:0.38、密度:1.4×10-6kg/mm3
・アルミノシリケートガラスに強化処理を施した強化ガラス(ドラゴントレイル)…ヤング率:74GPa、ポアソン比:0.23、密度:2.48×10-6kg/mm3
・MHM−FWD…ヤング率:10kPa、ポアソン比:0.30、密度:6.0×10-7kg/mm3
・TAC(トリアセチルセルロース)…ヤング率:4GPa、ポアソン比:0.30、密度:1.3×10-6kg/mm3
・ソーダライムガラス…ヤング率:73GPa、ポアソン比:0.23、密度:2.5×10-6kg/mm3
・PET(ポリエチレンテレフタレート)…ヤング率:5GPa、ポアソン比:0.25、密度:1.34×10-6kg/mm3
【0062】
もっとも、試験体200の各部は、外力によって弾性変形し、この外力が一定の大きさ以上になると塑性変形する(ただし、剛体模型については、変形しない剛体設定とした)。このため、使用割合が高い主要部材の材料(鉄、アルミニウム、ABS、PCおよびPVCの5つ)については、弾性変形域での弾性率(ヤング率およびポアソン比)と、塑性変形域での応力ひずみ線図(SSカーブ)とを、物性値として入力した。より詳細には、応力ひずみ線図については、弾塑性変形解析を行なう上で必須である、ひずみ速度依存性を考慮した応力ひずみ線図を物性値として入力した。
【0063】
各材料の応力ひずみ線図(真応力真ひずみ線図)は、まず、5種(0.01s-1、1s-1、100s-1、500s-1、1000s-1)のひずみ速度で、後述する条件の引張試験を行ない、公称応力公称ひずみ線図のデータを得た後、これを、真応力真ひずみ線図のデータに変換することにより得た。
なお、実際の解析では、各ひずみ速度毎の応力ひずみ線図を入力データとし、各曲線間のデータについては、補間して計算を実行している。
【0064】
(ひずみ速度依存性を考慮した応力ひずみ線図)
引張試験のため、各材料ともに図10に示す試験片(厚さ:2.0mm)を作製した。
なお、図10に示す試験片の厚さ以外のサイズは、鉄およびアルミニウムについては、S1:17mm、S2:11mm、S3:8mm、S4:16mm、S5:8.5mm、S6:4mm、S7:5mmとし、図10中に符号Rで示すコーナー部の丸みは、半径1.5mmとした。
一方、ABS、PCおよびPVCについては、S1:17mm、S2:9.2mm、S3:8mm、S4:16mm、S5:8.5mm、S6:2mm、S7:5mmとし、図10中に符号Rで示すコーナー部の丸みは、半径0.6mmとした。
なお、ひずみ速度については、仮に、初期平行部長さ(図10中、符号S3で表す)が25mmである試験片を用いて、クロスヘッド速度をヘッドインパクト衝突速度(6700mm/s)として試験を行った場合には、その初期ひずみ速度(単位:s-1)は、6700/25=268s-1となる。
このため、ひずみ速度を100s-1、500s-1もしくは1000s-1としてホプキンソンプレッシャーバーを用いて、または、ひずみ速度を0.01s-1もしくは1s-1として検出ブロック式材料試験機を用いて、引張試験を行なった。
【0065】
クッション材321のひずみ速度依存性を考慮した応力ひずみ線図のデータは、以下の手順で求めた。
まず、クッション材321を所定の形状(厚さ:25mm、サイズ:100mm×500mm)に切り取り、これを、直径200mmの金属製円盤どうしで挟み込み、10kNロードセル(オートグラフ)を用いて、上から5mm/分、0.1m/分、1m/分の速度で荷重をかけ、その際の荷重および変位量から、圧縮でのひずみ速度依存性を考慮した(低速での)応力ひずみ線図を作成した。
次に、より高速での応力ひずみ線図も得た。具体的には、まず、上述したヘッドインパクト試験と同様にしてクッション材に対して落下高さを変えて剛体模型を落下させ、クッション材の沈み込み量を高速度カメラでの撮影により測定した。このとき、ひずみ速度がより高速の10s-1、100s-1、200s-1における沈み込み量も測定した。そして、低速での沈み込み量と応力ひずみ線図とを参考にして、高速での沈み込み量から、高速での応力ひずみ線図を作成した。
なお、実際の解析では、各ひずみ速度毎の応力ひずみ線図を入力データとし、各曲線間のデータについては、補間して計算を実行している。
【0066】
(ひずみエネルギーの計算式について)
一般的に、ひずみエネルギーの計算は、以下のような理論式により算出される。上述した市販のプログラムを用いた解析においても、各部材に関して入力された応力ひずみ線図から、以下の式によって計算機で計算を行なっている。なお、本衝撃解析では、部材の破断までは考慮していない。
【0067】
一般骨組構造部材内の1点において、部材軸方向の垂直応力σと直ひずみεとの間、または、せん断応力τとせん断ひずみγとの間には、図11のグラフに示すような関係が存在すると考えられる。
まず、ひずみエネルギーUおよびひずみエネルギー密度U*は、次のようになる。
dεおよびdγのひずみ増分の間に単位体積当たりに蓄えられるひずみエネルギー、すなわち、ひずみエネルギー密度の増分dU*は、下記式(2)で与えられる(図11参照)。
【0068】
【数1】
【0069】
したがって、ひずみが0からある値εおよびγに達するまでに蓄えられるひずみエネルギー密度U*は、下記式(3)で表される(図11参照)。
【0070】
【数2】
【0071】
また、構造物または構造部分に蓄えられるひずみエネルギーUは、下記式(4)で表される。
【0072】
【数3】
【0073】
なお、図11における補充ひずみエネルギー密度U*cの説明は省略する。
【0074】
【表1】
【0075】
なお、表1中の「固定部」の「材質」として記載した「SS」は鉄(SS400)を意味し、「AL」はアルミニウムを意味する。
【0076】
表1の結果を図12のグラフにプロットした。図12では、縦軸にエネルギー吸収率y(単位:%)を、横軸にカバーガラス12の板厚x(単位:mm)をとり、耐衝撃性の結果(「○」または「×」)をプロットに反映させた。図12中の曲線は、y=−37.1×ln(x)+53.7を示している。
図12に示すグラフから明らかなように、式(1)を満たさない場合(比較例)はカバーガラスが割れるのに対して、式(1)を満たす場合(実施例)にはカバーガラスが割れないことが分かった。
【0077】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2015年6月5日付けで出願された日本特許出願(特願2015−114616)に基づいており、その全体が引用により援用される。
【符号の説明】
【0078】
10 粘着層付きカバーガラス
12 カバーガラス
12a 配置領域
12b 周縁部
12c カバーガラスの第1主面
12d カバーガラスの第2主面
14 粘着層
14a 粘着層の第1主面
14b 粘着層の側面
16 保護フィルム
16a 保護フィルムの第1主面
20 遮光部
100 車載表示装置
100b 車載表示装置の変形例
102 バックライトユニット
104 液晶パネル(表示パネル)
104a 表示面
106 筐体
106a 筐体の端面
107 筐体底板
108 開口部
109 筐体枠
110 筐体端枠
111 筐体突出部
115 両面テープ
200 試験体
200b 試験体の変形例
207 両面テープ
208 L字部材
215 支持板
301 固定部(保持部)
301b 固定部の変形例
311 ボルト
321 クッション材(衝撃吸収部、保持部)
401 内装部材
402 内装部材のカバー
411 凹部
411a 凹部の底面
P 衝突位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12