(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0010】
<共通する用語の説明>
本明細書で共通して用いられる用語は、特記しない限り、以下の意味である。
【0011】
Meはメチル基、Etはエチル基、Buはブチル基、i−Prはイソプロピル基、t−Buはtert−ブチル基を表す。
【0012】
水素原子は、重水素原子であっても、軽水素原子であってもよい。
【0013】
金属錯体を表す式中、中心金属との結合を表す実線は、共有結合又は配位結合を意味する。
【0014】
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が1×10
3〜1×10
8である重合体を意味する。
【0015】
高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよい。
【0016】
高分子化合物の末端基は、重合活性基がそのまま残っていると、高分子化合物を発光素子の作製に用いた場合、発光特性又は輝度寿命が低下する可能性があるので、好ましくは安定な基である。高分子化合物の末端基としては、好ましくは主鎖と共役結合している基であり、例えば、炭素−炭素結合を介して高分子化合物の主鎖と結合するアリール基又は1価の複素環基が挙げられる。
【0017】
「低分子化合物」とは、分子量分布を有さず、分子量が1×10
4以下の化合物を意味する。
【0018】
「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。
【0019】
「アルキル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば1〜50であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは4〜20である。分岐のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば3〜50であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは4〜20である。
【0020】
アルキル基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−プロピルヘプチル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルオクチル基、2−ヘキシルデシル基、ドデシル基、及び、これらの基における水素原子が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基(例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3−フェニルプロピル基、3−(4−メチルフェニル)プロピル基、3−(3,5−ジ−ヘキシルフェニル)プロピル基、6−エチルオキシヘキシル基)が挙げられる。
【0021】
「シクロアルキル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば3〜50であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは4〜20である。
【0022】
シクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基が挙げられる。
【0023】
「アリール基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば6〜60であり、好ましくは6〜20であり、より好ましくは6〜10である。
【0024】
アリール基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
【0025】
「アルコキシ基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば1〜40であり、好ましくは4〜10である。分岐のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば3〜40であり、好ましくは4〜10である。
【0026】
アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、及び、これらの基における水素原子が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
【0027】
「シクロアルコキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば3〜40であり、好ましくは4〜10である。
【0028】
シクロアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0029】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば6〜60であり、好ましくは6〜48である。
【0030】
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、1−アントラセニルオキシ基、9−アントラセニルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
【0031】
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表す。)とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。p価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団である「p価の芳香族複素環基」が好ましい。
【0032】
「芳香族複素環式化合物」は、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、カルバゾール、アザカルバゾール、ジアザカルバゾール、ジベンゾホスホール等の複素環自体が芳香族性を示す化合物、及び、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピラン等の複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環されている化合物を意味する。
【0033】
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば2〜60であり、好ましくは4〜20である。
【0034】
1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基等で置換された基が挙げられる。
【0035】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。
【0036】
「アミノ基」は、置換基を有していてもよく、置換アミノ基が好ましい。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基が好ましい。
【0037】
置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ジシクロアルキルアミノ基及びジアリールアミノ基が挙げられる。
【0038】
アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)アミノ基が挙げられる。
【0039】
「アルケニル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば2〜30であり、好ましくは3〜20である。分岐のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば3〜30であり、好ましくは4〜20である。
【0040】
「シクロアルケニル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば3〜30であり、好ましくは4〜20である。
【0041】
アルケニル基及びシクロアルケニル基は、置換基を有していてもよく、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、及び、これらの基が置換基を有する基が挙げられる。
【0042】
「アルキニル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。アルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、例えば2〜20であり、好ましくは3〜20である。分岐のアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、例えば4〜30であり、好ましくは4〜20である。
【0043】
「シクロアルキニル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、例えば4〜30であり、好ましくは4〜20である。
【0044】
アルキニル基及びシクロアルキニル基は、置換基を有していてもよく、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブテニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、及び、これらの基が置換基を有する基が挙げられる。
【0045】
「アリーレン基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団を意味する。アリーレン基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば6〜60であり、好ましくは6〜30であり、より好ましくは6〜18である。
【0046】
アリーレン基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、ナフタセンジイル基、フルオレンジイル基、ピレンジイル基、ペリレンジイル基、クリセンジイル基、及び、これらの基が置換基を有する基が挙げられ、好ましくは、式(A−1)〜式(A−20)で表される基である。アリーレン基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0050】
【化5】
[式中、R及びR
aは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表す。複数存在するR及びR
aは、各々、同一でも異なっていてもよく、R
a同士は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。]
【0051】
2価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、例えば2〜60であり、好ましくは3〜20であり、より好ましくは4〜15である。
【0052】
2価の複素環基は、置換基を有していてもよく、例えば、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、アザカルバゾール、ジアザカルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾシロール、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジン、ジヒドロアクリジン、フラン、チオフェン、アゾール、ジアゾール、トリアゾールから、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基が挙げられ、好ましくは、式(AA−1)〜式(AA−38)で表される基である。2価の複素環基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0060】
【化13】
[式中、R及びR
aは、前記と同じ意味を表す。]
【0061】
「架橋基」とは、加熱、紫外線照射、近紫外線照射、可視光照射、赤外線照射、ラジカル反応等に供することにより、新たな結合を生成することが可能な基である。
【0062】
「置換基」とは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基又はシクロアルキニル基を表す。置換基は架橋基であってもよい。
【0063】
<組成物>
[1級フッ素化アルコール]
式(1)中のnは、本実施形態の組成物の成膜性が優れるので、好ましくは3〜10の整数であり、より好ましくは4〜10の整数であり、更に好ましくは4〜8の整数であり、特に好ましくは5〜7の整数である。
【0064】
式(1)中のmは、通常、1〜21の整数であり、本実施形態の組成物の成膜性が優れるので、好ましくは1〜20の整数であり、より好ましくは4〜20の整数であり、更に好ましくは4〜16の整数である。
【0065】
n及びmは、好ましくは2n−9≦m≦2n−1を満たす整数であり、より好ましくは2n−5≦m≦2n−1を満たす整数であり、更に好ましくは2n−5≦m≦2n−2を満たす整数であり、特に好ましくはm=2n−2を満たす整数である。
【0066】
1級フッ素化アルコールは、直鎖状の構造を有していても、分岐状の構造を有していてもよい。
【0067】
式(1)で表される1級フッ素化アルコールは、式(6)で表される1級フッ素化アルコールであることが好ましい。
C
n-1H
2n-m1-1F
m1−CH
2OH (6)
[式(6)中、nは前記と同じ意味を表し、m1は1≦m1≦2n−1を満たす整数である。]
【0068】
m1は、通常、1〜19の整数であり、本実施形態の組成物の成膜性が優れるので、好ましくは4〜19の整数であり、より好ましくは4〜16の整数である。
【0069】
n及びm1は、好ましくは2n−7≦m1≦2n−1を満たす整数であり、より好ましくは2n−3≦m1≦2n−1を満たす整数であり、更に好ましくは2n−3≦m1≦2n−2を満たす整数であり、特により好ましくはm1=2n−2を満たす整数である。
【0070】
式(1)で表される1級フッ素化アルコールとしては、例えば、トリフルオロメタノール、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエタノール、1H,1H−トリフルオロエタノール、1H,1H−ペンタフルオロ−1−プロパノール、6−(パーフルオロエチル)ヘキサノール、1H,1H−ヘプタフルオロ−1−ブタノール、2−(パーフルオロブチル)エタノール、3−(パーフルオロブチル)プロパノール、6−(パーフルオロブチル)ヘキサノール、6−(パーフルオロ−1−メチルエチル)ヘキサノール、1H,1H,3H−テトラフルオロ−1−プロパノール、1H,1H,5H−オクタフルオロ−1−ペンタノール、1H,1H,7H−ドデカフルオロ−1−ヘプタノール、1H,1H,4H−ヘキサフルオロ−1−ブタノールが挙げられる。
【0071】
1級フッ素化アルコールは、市販品であっても、合成したものであってもよい。1級フッ素化アルコールの合成方法としては、例えば、特公昭62−42893号公報に記載の方法が挙げられる。1級フッ素化アルコールは、本実施形態の組成物の調製前に精留することが好ましい。
【0072】
1級フッ素化アルコールは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0073】
[2級フッ素化アルコール]
式(1’)中のn’は、本実施形態の組成物の成膜性が優れるので、好ましくは4〜10の整数であり、より好ましくは4〜8の整数であり、更に好ましくは5〜7の整数である。
【0074】
式(1’)中のm’は、通常、1〜21の整数であり、本実施形態の組成物の成膜性が優れるので、好ましくは1〜20の整数であり、より好ましくは4〜20の整数であり、更に好ましくは4〜16の整数である。
【0075】
n’及びm’は、好ましくは2n’−9≦m’≦2n’を満たす整数であり、より好ましくは2n’−9≦m’≦2n’−1を満たす整数であり、更に好ましくは2n’−5≦m’≦2n’−1を満たす整数であり、特に好ましくは2n’−5≦m’≦2n’−2を満たす整数であり、とりわけ好ましくはm’=2n’−2を満たす整数である。
【0076】
式(1’)で表される2級フッ素化アルコールは、式(7)で表される2級フッ素化アルコールであることが好ましい。
C
naH
2na-ma+1F
ma−C(H)(OH)−C
nbH
2nb-mb+1F
mb (7)
[式(7)中、
naとnbはそれぞれ独立に1〜8の整数であり、2≦na+nb≦9を満たす。
maはma≦2na+1を満たす整数であり、mbはmb≦2nb+1を満たす整数である。]
【0077】
na及びnbは、本実施形態の組成物の成膜性が優れるので、好ましくは3≦na+nb≦9を満たす整数であり、より好ましくは3≦na+nb≦7を満たす整数である。
【0078】
ma及びmbは、通常、2≦ma+mb≦20を満たす整数であり、本実施形態の組成物の成膜性が優れるので、好ましくは4≦ma+mb≦20を満たす整数であり、より好ましくは4≦ma+mb≦16を満たす整数である。
【0079】
na、nb、ma及びmbは、好ましくは2na+2nb−7≦ma+mb≦2na+2nb+2であり、より好ましくは2na+2nb−7≦ma+mb≦2na+2nb+1であり、更に好ましくは2na+2nb−3≦ma+mb≦2na+2nb+1であり、特に好ましくは2na+2nb−3≦ma+mb≦2na+2nbであり、とりわけ好ましくはma+mb=2na+2nbである。
【0080】
式(1’)で表される2級フッ素化アルコールとしては、例えば、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロ−2−ブタノール、2H−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、4,4,4−トリフルオロ−2−ブタノール、1H,3H,5H−オクタフルオロ−3−ペンタノール、1H,3H,7H−ドデカフルオロ−3−ヘプタノールが挙げられる。
【0081】
2級フッ素化アルコールは、市販品であっても、合成したものであってもよい。2級フッ素化アルコールの合成方法としては、例えば、特公昭60−54931号公報に記載の方法が挙げられる。2級フッ素化アルコールは、本実施形態の組成物の調製前に精留することが好ましい。
【0082】
2級フッ素化アルコールは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0083】
・1級フッ素化アルコールと2級フッ素化アルコールとの関係
式(1)中のn及び式(1’)中のn’は、本実施形態の組成物の成膜性が優れるので、同じ整数であることが好ましい。
式(1)中のm及び式(1’)中のm’は、本実施形態の組成物の成膜性が優れるので、同じ整数であることが好ましい。
【0084】
本実施形態の組成物における2級フッ素化アルコールの含有量は、1級フッ素化アルコールと2級フッ素化アルコールとの総含有量に対して、0.01質量%〜0.75質量%であり、本実施形態の組成物を用いて製造した発光素子の輝度寿命が優れるので、好ましくは0.01質量%〜0.45質量%であり、より好ましくは0.01質量%〜0.30質量%であり、更に好ましくは0.01質量%〜0.25質量%である。2級フッ素化アルコールの含有量が、1級フッ素化アルコールと2級フッ素化アルコールとの総含有量に対して、0.01質量%未満、又は、0.75質量%を超える場合、組成物を用いて製造した発光素子の輝度寿命が短くなる。
【0085】
式(6)及び式(7)中のn、na、nb、m1、ma及びmbは、本実施形態の組成物の成膜性が優れるので、n=na+nbを満たすことが好ましく、n=na+nb、かつ、m1=ma+mbを満たすことがより好ましく、n=na+nb+1を満たすことが更に好ましく、n=na+nb+1、かつ、m1=ma+mbを満たすことが得に好ましい。
【0086】
[電子注入性化合物又は電子輸送性化合物]
電子注入性化合物又は電子輸送性化合物は、式(2)〜式(4)のいずれかで表される基を有することが好ましく、式(2)で表される基を有することがより好ましく、−COO
-Cs
+で表される基を有することが更に好ましい。
【0087】
M
+で表されるアルカリ金属カチオンとしては、例えば、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+及びCs
+が挙げられ、K
+、Rb
+又はCs
+が好ましく、Cs
+がより好ましい。
【0088】
M
+で表されるアルカリ土類金属カチオンとしては、例えば、Be
2+、Mg
2+、Ca
2+、Sr
2+及びBa
2+が挙げられ、Mg
2+、Ca
2+、Sr
2+又はBa
2+が好ましく、Ba
2+がより好ましい。
【0089】
M
+としては、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンが好ましく、アルカリ金属カチオンがより好ましい。
【0090】
電子輸送性化合物又は電子注入性化合物は、式(5)で表される構成単位を有することが好ましい。式(5)で表される構成単位を有する化合物は、通常、高分子化合物である。
【0091】
式(5)中、niは、好ましくは1又は2である。
【0092】
式(5)中、Arで表される芳香族炭化水素基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基、2,6−ナフタレンジイル基、1,4−ナフタレンジイル基、2、7−フルオレンジイル基、3,6−フルオレンジイル基又は2,7−フェナントレンジイル基から、環を構成する原子に直接結合する水素原子ni個を除いた基が好ましく、2,7−フルオレンジイル基又は3,6−フルオレンジイル基から、環を構成する原子に直接結合する水素原子ni個を除いた基がより好ましい。
【0093】
式(5)中、Arで表される複素環基としては、2,7−カルバゾールジイル基から、環を構成する原子に直接結合する水素原子ni個を除いた基が好ましく、2,7−フルオレンジイル基又は3,6−フルオレンジイル基から、環を構成する原子に直接結合する水素原子ni個を除いた基が好ましい。
【0094】
式(5)中、Arとしては、芳香族炭化水素基が好ましい。
【0095】
Arが有していてもよいRi以外の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、カルボキシル基及び式(I−2)で表される基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0096】
−O−(C
n''H
2n''O)
nx−C
m''H
2m''+1 (I−2)
[式中、n’’、m’’及びnxは、それぞれ独立に、1〜10の整数を表す。]
【0097】
n’’は、好ましくは1〜6の整数であり、より好ましくは2又は3である。
m’’は、好ましくは1〜6の整数であり、より好ましくは1又は2である。
nxは、好ましくは1〜6の整数であり、より好ましくは2〜4の整数である。
【0098】
式(I−1)中、Rとしては、炭化水素基又は複素環基が好ましく、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基がより好ましく、芳香族炭化水素基が更に好ましい。
【0099】
Rが有していてもよい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基及び式(I−2)で表される基が挙げられ、式(I−2)で表される基が好ましい。
【0100】
式(I−1)中、Qとしては、アルキレン基、アリーレン基又は酸素原子が好ましく、アルキレン基又は酸素原子がより好ましい。
【0101】
式(I−1)中、Yは、好ましくは式(2)で表される基であり、より好ましくは−COO
-Cs
+で表される基である。
【0102】
式(I−1)で表される基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。
【0104】
【化15】
[式中、M
+は、前記と同じ意味を表す。M
+が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0105】
式(5)で表される構成単位としては、例えば、式(ET−31)〜式(ET−38)で表される構成単位が挙げられ、式(ET−31)又は式(ET−33)で表される構成単位が好ましい。
【0109】
電子輸送性化合物又は電子注入性化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
電子輸送性化合物又は電子注入性化合物は、高分子化合物であっても、低分子化合物であってもよい。
【0110】
電子輸送性化合物又は電子注入性化合物が高分子化合物である場合、該高分子化合物は、例えば、特開2009−239279号公報、特開2012−033845号公報、特開2012−216821号公報、特開2012−216822号公報、特開2012−216815号公報に記載の方法に従って合成することができる。
【0111】
電子輸送性化合物又は電子注入性化合物が低分子化合物である場合、該低分子化合物としては、式(H−1)で表される化合物が好ましい。
【0112】
【化19】
[式中、
n
H3は、0以上の整数を表す。
n
H1は、0又は1を表す。n
H1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
n
H2は、0又は1を表す。複数存在するn
H2は、同一でも異なっていてもよい。
L
H1は、アリーレン基もしくは2価の複素環基からnE3個の水素原子を除いた基、−[C(R
H11)
2]n
H11−で表される基、又は、−[P(=O)(R
H12)]n
H12−で表される基を表し、これらの基はR
E3以外の置換基を有していてもよい。L
H1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
n
H11及びn
H12は、それぞれ独立に、1〜10の整数を表す。R
H11及びR
H12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するR
H11は、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。複数存在するR
H12は、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
nE3は0以上の整数を表す。但し、L
H1が−[C(R
H11)
2]n
H11−で表される基、又は、−[P(=O)(R
H12)]n
H12−で表される基である場合、nE3は0を表す。nE3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
R
E3は、前記式(I−1)で表される基を表す。R
E3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
L
H2は、−N(−L
H21−R
H21)−で表される基を表す。L
H2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
L
H21は、単結合、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R
H21は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
Ar
H1はアリール基又は1価の複素環基からnE4個の水素原子を除いた基を表し、これらの基はR
E4以外の置換基を有していてもよい。
Ar
H2は、アリール基又は1価の複素環基からnE5個の水素原子を除いた基を表し、これらの基はR
E5以外の置換基を有していてもよい。
nE4及びnE5は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
R
E4及びR
E5は、それぞれ独立に、前述の式(I−1)で表される基を表す。複数存在するR
E4は、同一でも異なっていてもよい。複数存在するR
E5は、同一でも異なっていてもよい。]
【0113】
n
H3は、通常、0〜10の整数であり、好ましくは0〜5の整数であり、より好ましくは1〜3の整数であり、更に好ましくは1である。
【0116】
n
H11は、好ましくは1〜5の整数であり、より好ましく1〜3の整数であり、更に好ましく1である。
【0117】
n
H12は好ましくは1〜5の整数であり、より好ましく1〜3の整数であり、更に好ましく1である。
【0118】
L
H1は、電荷輸送性の観点からは、アリーレン基又は2価の複素環基からnE3個の水素原子を除いた基であることが好ましく、フッ素化アルコールに対する溶解性の観点からは、−[P(=O)(R
H12)]n
H12−で表される基であることが好ましい。
【0119】
L
H1がアリーレン基又は2価の複素環基からnE3個の水素原子を除いた基である場合、L
H1は、式(A−1)〜式(A−3)、式(A−8)〜式(A−10)、式(AA−1)〜式(AA−6)、式(AA−10)〜式(AA−21)又は式(AA−24)〜式(AA−38)で表される基からnE3個の水素原子を除いた基であることが好ましく、式(A−1)、式(A−2)、式(AA−2)、式(AA−4)又は式(AA−14)で表される基からnE3個の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
【0120】
L
H1が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基が好ましく、アルキル基、アリール基又は1価の複素環基がより好ましく、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0121】
L
H21は、単結合又はアリーレン基であることが好ましく、単結合であることがより好ましく、このアリーレン基は置換基を有していてもよい。
【0122】
L
H21で表されるアリーレン基又は2価の複素環基は、式(A−1)〜式(A−3)、式(A−8)〜式(A−10)、式(AA−1)〜式(AA−6)、式(AA−10)〜式(AA−21)又は式(AA−24)〜式(AA−38)で表される基であることが好ましく、式(A−1)、式(A−2)、式(AA−2)、式(AA−4)又は式(AA−14)で表される基であることがより好ましい。
【0123】
R
H21は、アリール基又は1価の複素環基であることが好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0124】
R
H21で表されるアリール基又は1価の複素環基は、フェニル基、スピロビフルオレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、カルバゾリル基又はアザカルバゾリル基であることが好ましく、フェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基又はアザカルバゾリル基であることがより好ましい。
【0125】
R
H21が有していてもよい置換基としては、アルキル基、シクロアルコキシ基、アルコキシ基又はシクロアルコキシ基、アルキル基又はシクロアルコキシ基が好ましく、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0126】
Ar
H1で表されるアリール基又は1価の複素環基からnE4個の水素原子を除いた基は、フェニル基、スピロビフルオレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、カルバゾリル基又はアザカルバゾリル基からnE4個の水素原子を除いた基であることが好ましく、フェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基又はアザカルバゾリル基からnE4個の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
【0127】
Ar
H2で表されるアリール基又は1価の複素環基からnE5個の水素原子を除いた基は、フェニル基、スピロビフルオレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、カルバゾリル基又はアザカルバゾリル基からnE5個の水素原子を除いた基であることが好ましく、フェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基又はアザカルバゾリル基からnE5個の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
【0128】
Ar
H1及びAr
H2が有していてもよい置換基の定義及び例は、R
H21が有していてもよい置換基の定義及び例と同様である。
【0129】
式(H−1)で表される化合物としては、例えば、式(H−101)〜式(H−124)で表される化合物が挙げられる。
【0135】
【化25】
[式中、M
+は、前記と同じ意味を表す。M
+が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0136】
本実施形態の組成物において、電子注入性化合物又は電子輸送性化合物の含有量は、組成物全体を100質量部としたとき、各々、通常、0.01〜3質量部であり、好ましくは0.05〜1質量部であり、より好ましくは0.4〜0.8質量部である。
【0137】
[その他の成分]
本実施形態の組成物は、更に、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、酸化防止剤、有機溶媒等を含有していてもよい。
【0138】
<組成物の調製方法>
本実施形態の組成物は、例えば、電子輸送性化合物又は電子注入性化合物を、2級フッ素化アルコール含有量が1級フッ素化アルコールと2級フッ素化アルコールとの総含有量に対して0.01質量%〜0.75質量%であるフッ素化アルコールの混合溶媒に溶解することで調製することができる。
【0139】
<発光素子>
本実施形態の組成物は、輝度寿命に優れる発光素子の製造に有用である。本実施形態の発光素子は、本実施形態の組成物を用いて得られる発光素子である。
【0140】
本実施形態の発光素子は、通常、陽極と、陰極と、発光層と、本実施形態の組成物を用いて形成される層とを有する。
【0141】
本実施形態の発光素子において、本実施形態の組成物を用いて形成される層は、好ましくは、電子注入層及び電子輸送層からなる群から選ばれる1種以上の層である。本実施形態の発光素子は、更に正孔輸送層、正孔注入層、保護層、バッファー層、反射層及び封止層(封止膜、封止基板等)等の他の機能を有する層を有していてもよい。
【0142】
本実施形態の発光素子において、各層の形成方法としては、低分子化合物を用いる場合、例えば、粉末からの真空蒸着法、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられ、高分子化合物を用いる場合、例えば、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。これらの中でも、各層の形成方法としては、溶液からの成膜による方法が好ましい。積層する層の順番、数及び厚さは、発光効率及び素子寿命を勘案して調整すればよい。
【0143】
溶液からの成膜方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビア印刷法、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ノズルコート法等の塗布法が挙げられる。
【0144】
本実施形態の発光素子は、例えば、基板上に各層を順次積層することにより製造することができる。
【0145】
[基板]
本実施形態の発光素子が有し得る基板は、電極及び有機層を形成する際に化学的に変化しないもの、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、金属フィルム、シリコン等の基板が好ましく、これらを積層した基板であってもよい。
【0146】
[正孔輸送層、正孔注入層]
正孔輸送層及び正孔注入層は、各々、例えば、正孔輸送性化合物及び正孔注入性化合物の1種又は2種以上を用いて形成することができ、正孔輸送性化合物及び正孔注入性化合物の1種又は2種以上を含む。
【0147】
正孔輸送層及び正孔注入層の厚さは、各々、例えば、1nm〜1μmである。
【0148】
[正孔輸送性化合物及び正孔注入性化合物]
正孔輸送性化合物及び正孔注入性化合物としては、公知のものが使用でき、例えば、
カルバゾール及びその誘導体、トリアゾール及びその誘導体、オキサゾール及びその誘導体、オキサジアゾール及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体、ピラゾリン及びその誘導体、ピラゾロン及びその誘導体、フェニレンジアミン及びその誘導体、アリールアミン及びその誘導体、スターバースト型アミン、フタロシアニン及びその誘導体、アミノ置換カルコン及びその誘導体、スチリルアントラセン及びその誘導体、フルオレノン及びその誘導体、ヒドラゾン及びその誘導体、スチルベン及びその誘導体、シラザン及びその誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン化合物、並びに、これらを含む重合体;
酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の導電性金属酸化物;
ポリアニリン、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子及びオリゴマー;
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸、ポリピロール等の有機導電性材料;
アモルファスカーボン;
テトラシアノキノジメタン及びその誘導体(例えば、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)、1,4−ナフトキノン及びその誘導体、
ジフェノキノン及びその誘導体、ポリニトロ化合物等のアクセプター性有機化合物;
オクタデシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;
芳香族アミン系高分子化合物が挙げられる。
【0149】
[発光層]
発光層は、発光材料を用いて形成することができ、発光材料を含む。発光材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。
【0150】
発光層の厚さは、例えば、5nm〜1μmである。
【0151】
低分子化合物としては、例えば、ナフタレン及びその誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、並びに、イリジウム、白金又はユーロピウムを中心金属とし、かつ、フェニルピリジン、フェニルイミダゾール、フェニルトリアゾールフェニルキノリン、フェナントロリン、アセチルアセトン、ポルフィリン等を配位子とする金属錯体等の三重項発光錯体が挙げられる。これらの低分子化合物は、架橋基を有していてもよい。
【0152】
高分子化合物としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、フルオレンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、カルバゾールジイル基、フェノキサジンジイル基、フェノチアジンジイル基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基等を含む高分子化合物、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリアリーレン及びその誘導体が挙げられる。これらの高分子化合物は、架橋基を有していてもよい。
【0153】
発光材料は、好ましくは、三重項発光錯体及び高分子化合物を含む。
【0154】
発光材料は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0155】
発光層には、発光材料と共に、ホスト材料を含んでいてもよい。ホスト材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。
【0156】
ホスト材料に用いられる低分子化合物としては、例えば、正孔輸送性化合物及び正孔注入性化合物として前述した低分子化合物、電子輸送性化合物及び電子注入性化合物として前述した低分子化合物が挙げられ、カルバゾール構造を有する化合物、トリアリールアミン構造を有する化合物、フェナントロリン構造を有する化合物、トリアリールトリアジン構造を有する化合物、アゾール構造を有する化合物、ベンゾチオフェン構造を有する化合物、ベンゾフラン構造を有する化合物、フルオレン構造を有する化合物、スピロフルオレン構造を有する化合物が好ましい。
【0157】
ホスト材料に用いられる低分子化合物としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0160】
ホスト材料に用いられる高分子化合物としては、例えば、正孔輸送性化合物及び正孔注入性化合物として前述した高分子化合物、電子輸送性化合物及び電子注入性化合物として前述した高分子化合物が挙げられる。
【0161】
[電子輸送層、電子注入層]
電子輸送層及び電子注入層は、各々、例えば、上述の電子輸送性化合物及び電子注入性化合物の1種又は2種以上を用いて形成することができ、上述の電子輸送性化合物及び電子注入性化合物の1種又は2種以上を含む。
【0162】
電子輸送層及び電子輸送層の厚さは、各々、例えば、1nm〜1μmである。
【0163】
[陽極]
陽極の材料は、例えば、導電性の金属酸化物、半透明の金属であってよく、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ;インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等の導電性化合物;銀とパラジウムと銅との複合体(APC);NESA、金、白金、銀、銅である。
【0164】
陽極の作製方法としては、公知の方法が利用でき、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、溶液からの成膜による方法(高分子バインダーとの混合溶液を用いてもよい)等が挙げられる。
【0165】
陽極の厚さは、例えば、10nm〜10μmである。
【0166】
[陰極]
陰極の材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム等の金属;それらのうち2種以上の合金;それらのうち1種以上と、銀、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1種以上との合金;並びに、グラファイト及びグラファイト層間化合物が挙げられる。
【0167】
陰極の作製方法としては、公知の方法が利用でき、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、溶液からの成膜による方法(高分子バインダーとの混合溶液を用いてもよい)が例示される。陰極が金属ナノ粒子、金属ナノワイヤー、導電性金属酸化物ナノ粒子である場合には、溶液からの成膜による方法が用いられる。
【0168】
陰極の厚さは、例えば、1〜1000nmである。
【実施例】
【0169】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0170】
実施例において、高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及びポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、移動層にテトラヒドロフランを用い、下記のサイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)の測定条件のいずれかにより求めた。
【0171】
<測定条件1>
測定する高分子化合物を約0.05質量%の濃度でテトラヒドロフランに溶解させ、SECに10μL注入した。移動相は、2.0mL/分の流量で流した。カラムとして、PLgel MIXED−B(ポリマーラボラトリーズ製)を用いた。検出器にはUV−VIS検出器(島津製作所製、商品名:SPD−10Avp)を用いた。
【0172】
<測定条件2>
測定する高分子化合物を約0.05質量%の濃度でテトラヒドロフランに溶解させ、SECに10μL注入した。移動相は、1.0mL/分の流量で流した。カラムとして、PLgel MIXED−B(ポリマーラボラトリーズ製)を用いた。検出器にはUV−VIS検出器(東ソー製、商品名:UV−8320GPC)を用いた。
【0173】
NMRは、下記の方法で測定した。
5〜10mgの測定試料を約0.5mLの重クロロホルム、重テトラヒドロフラン、重ジメチルスルホキシド、重アセトン、重N,N−ジメチルホルムアミド、重トルエン、重メタノール、重エタノール、重2−プロパノール又は重塩化メチレンに溶解させ、NMR装置(Agilent製、商品名:INOVA300又はMERCURY 400VX)を用いて測定した。
【0174】
化合物の純度の指標として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)面積百分率の値を用いた。この値は、特に断らない限り、HPLC(島津製作所製、商品名:LC−20A)でのUV=254nmにおける値とする。この際、測定する化合物を、0.01〜0.2質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン又はクロロホルムに溶解させ、濃度に応じて1〜10μLの溶液をHPLCに注入した。HPLCの移動相には、アセトニトリル/テトラヒドロフランの混合物を、比率を100/0〜0/100(容積比)で変化させながら用い、1.0mL/分の流量で流した。カラムは、Kaseisorb LC ODS 2000(東京化成工業製)又は同等の性能を有するODSカラムを用いた。検出器には、フォトダイオードアレイ検出器(島津製作所製、商品名:SPD−M20A)を用いた。
【0175】
<合成例1>単量体CM1〜CM4及び高分子化合物1の合成
単量体CM1〜CM4は、下記文献に記載された方法に従って合成し、それぞれ99.5%以上のHPLC面積百分率値を示したものを用いた。
単量体CM1〜CM3は、国際公開第2013/146806号に記載の方法に従って合成した。
単量体CM4は、国際公開第2009/157424号に記載の方法に従って合成した。
【0176】
【化28】
【0177】
【化29】
【0178】
高分子化合物1は、式(A)で表される構成単位からなる重合体であり、国際公開第2012/011418号に記載の方法に準じて合成した。ここで、高分子化合物1の前駆体は、式(B)で表される構成単位からなる重合体であった。測定条件2により測定した高分子化合物1の前駆体のMwは1.2×10
5であった。
【0179】
【化30】
【0180】
【化31】
【0181】
<合成例2>高分子化合物2の合成
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、単量体CM1(2.52g)、単量体CM2(0.47g)、単量体CM3(4.90g)、単量体CM4(0.53g)及びトルエン(158mL)を加え、95℃に加熱した。得られた反応液に、20質量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(16mL)及びジクロロビス(トリス−o−メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(4.2mg)を加え、8時間還流させた。反応後、そこへ、フェニルボロン酸(0.12g)、20質量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(16mL)及びジクロロビス(トリス−o−メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(4.2mg)を加え、15時間還流させた。反応後、そこへ、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え、85℃で2時間撹拌した。得られた反応液を冷却した後、3.6質量%塩酸水溶液で2回、2.5質量%アンモニア水溶液で2回、水で4回洗浄し、得られた溶液をメタノールに滴下したところ、沈澱が生じた。得られた沈殿物をトルエンに溶解させ、アルミナカラム、シリカゲルカラムの順番で通すことにより精製した。得られた溶液をメタノールに滴下し、撹拌した後、得られた沈殿物をろ取し、乾燥させることにより、高分子化合物2(6.02g)を得た。測定条件1により測定した高分子化合物2のMnは3.8×10
4であり、Mwは4.5×10
5であった。
【0182】
高分子化合物2は、仕込み原料の量から求めた理論値では、単量体CM1から誘導される構成単位と、単量体CM2から誘導される構成単位と、単量体CM3から誘導される構成単位と、単量体CM4から誘導される構成単位とが、40:10:47:3のモル比で構成されてなる共重合体である。
【0183】
<合成例3>燐光発光性化合物1及び2の合成
燐光発光性化合物1及び2は、下記文献に記載された方法に従って合成し、それぞれ99.5%以上のHPLC面積百分率値を示したものを用いた。
燐光発光性化合物1は、国際公開第2006/121811号に記載の方法に準じて合成した。
燐光発光性化合物2は、国際公開第2009/131255号に記載の方法に従って合成した。
【0184】
【化32】
【0185】
<実施例1>
(組成物の調製)
1H,1H,5H-オクタフルオロ-1-ペンタノール(C
5H
3F
8OH:1級フッ素化アルコールであり、以下、「OFP-1」と表記する。)と1H,3H,5H-オクタフルオロ-3-ペンタノール(C
5H
3F
8OH:2級フッ素化アルコールであり、以下、「OFP-2」と表記する。)との混合物1(2級フッ素化アルコールの含有量は0.01質量%)を調製した。調製された混合物1に、高分子化合物1を0.6質量%の濃度となるように溶解させることで、組成物1を得た。
【0186】
(発光素子の作製)
ガラス基板にスパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けることにより陽極を形成した。陽極上に、正孔注入材料(日産化学工業株式会社製、ND−3202)を、スピンコート法にて35nmの厚さで成膜し、オゾンが除去された空気環境下にて、ホットプレート上で50℃、3分間加熱し、次いで、ホットプレート上で240℃、15分間加熱することにより、正孔注入層を形成した。
【0187】
キシレンに、高分子化合物2を0.65質量%の濃度となるように溶解させた。得られたキシレン溶液を用いて、正孔注入層の上に、スピンコート法により20nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下にて、ホットプレート上で180℃、60分間加熱することにより、正孔輸送層を形成した。
【0188】
トルエンに、下記式で表される低分子化合物1(Luminescence Technology社製、LT−N4013)、燐光発光性化合物1及び燐光発光性化合物2(質量比:低分子化合物1/燐光発光性化合物1/燐光発光性化合物2=74/25/1)を2.0質量%の濃度となるように溶解させ、トルエン溶液を調製した。調製されたトルエン溶液を用いて、正孔輸送層の上に、スピンコート法により75nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下にて、ホットプレート上で130℃、10分間加熱することにより発光層を形成した。
【0189】
【化33】
【0190】
組成物1を用いて、発光層の上に、スピンコート法により40nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下にて、ホットプレート上で130℃、10分間加熱することにより電子輸送層を形成した。
【0191】
電子輸送層が形成された基板を蒸着機内に置いて、1.0×10
-4Pa以下に減圧した後、陰極として、電子輸送層の上にフッ化ナトリウムを約4nm、次いで、フッ化ナトリウム層の上にアルミニウムを約100nm蒸着した。その後、ガラス基板を用いて封止することにより、発光素子D1を作製した。
【0192】
発光素子D1について、6000cd/m
2を初期輝度として輝度3割減寿命(即ち、輝度が初期輝度の70%となるまでの寿命)を測定した。結果を表1に示す。
【0193】
<実施例2〜13及び比較例1〜15>
実施例1において、混合物1に代えて表1に示す混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、組成物を調製し、発光素子D2〜D13及びCD1〜CD15を作製し、輝度3割減寿命を測定した。表1中、「DFH-1」は、1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノール(C
7H
3F
12OH:1級フッ素化アルコール)を意味し、「DFH-2」は、1H,3H,7H-ドデカフルオロ-3-ヘプタノール(C
7H
3F
12OH:2級フッ素化アルコール)を意味し、「TFP」は1H,1H,3H−テトラフルオロ−1−プロパノール(C
3H
3F
4OH:1級フッ素化アルコール)を意味し、「HFIP」は2H−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(C
3H
1F
6OH:2級フッ素化アルコール)を意味する。結果を表1に示す。
【0194】
【表1】