特許第6332645号(P6332645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6332645ビスフェノールアルデヒドを用いたノボラック樹脂含有レジスト下層膜形成組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332645
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ビスフェノールアルデヒドを用いたノボラック樹脂含有レジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20180521BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20180521BHJP
   C08G 14/073 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G03F7/11 503
   G03F7/26 511
   H01L21/30 574
   H01L21/30 573
   C08G14/073
【請求項の数】12
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-517050(P2015-517050)
(86)(22)【出願日】2014年5月8日
(86)【国際出願番号】JP2014062352
(87)【国際公開番号】WO2014185335
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-101345(P2013-101345)
(32)【優先日】2013年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】西巻 裕和
(72)【発明者】
【氏名】坂本 力丸
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−145897(JP,A)
【文献】 特開平07−268049(JP,A)
【文献】 特開2012−098431(JP,A)
【文献】 特開平05−125149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族環を含む有機化合物Aと、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族炭素環基を少なくとも2つ有し、そして該芳香族炭素環基が3級炭素原子を介して結合した構造を有するアルデヒドBとの反応により得られる樹脂を含み、そして
該芳香族環を含む有機化合物Aが芳香族アミンである、レジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族炭素環基を少なくとも2つ有し、そして該芳香族炭素環基が3級炭素原子を介して結合した構造を有するアルデヒドBが下記式(1):
【化1】

(式(1)中、Xは単結合、炭素原子数1乃至10のアルキレン基、又は炭素原子数6乃至40のアリーレン基を表し、Ar及びArはそれぞれ炭素原子数6乃至40のアリール基を示す。R及びRはそれぞれ炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、炭素原子数6乃至40のアリール基、上記Ar基、上記Ar基、シアノ基、ニトロ基、−Y−Z基、ハロゲン原子、又はそれらの組みあわせを示す。Yは酸素原子、硫黄原子、又はカルボニル基を示し、Zは炭素原子数6乃至40のアリール基を示す。m及びmはそれぞれ1乃至(3+2n)の整数を示す。m及びmはそれぞれ0乃至(2+2n)の整数を示す。(m+m)及び(m+m)は1乃至(3+2n)の整数を示す。ただしnはAr及びArで示されるアリール基のベンゼン環の縮合数を示す。)で表される化合物である請求項1に記載のレジスト下層膜形
成組成物。
【請求項3】
得られる樹脂が式(2):
【化2】

(式(2)中、Aは芳香族環を含む有機化合物Aに由来する基を示し、Xは単結合、炭素原子数1乃至10のアルキレン基、又は炭素原子数6乃至40のアリーレン基を表し、Ar及びArはそれぞれ炭素原子数6乃至40のアリール基を示す。R及びRはそれぞれ炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、炭素原子数6乃至40のアリール基、上記Ar基、上記Ar基、シアノ基、ニトロ基、−Y−Z基、ハロゲン原子、又はそれらの組みあわせを示す。Yは酸素原子、硫黄原子、又はカルボニル基を示し、Zは炭素原子数6乃至40のアリール基を示す。m及びmはそれぞれ1乃至(3+2n)の整数を示す。m及びmはそれぞれ0乃至(2+2n)の整数を示す。(m+m)及び(m+m)は1乃至(3+2n)の整数を示す。ただしnはAr及びArで示されるアリール基のベンゼン環の縮合数を示す。)で表される単位構造を有する樹脂である請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
芳香族アミンが、アニリン、ナフチルアミン、フェニルナフチルアミン、又はカルバゾールである請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
更に溶剤を含む請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
更に酸及び/又は酸発生剤を含む請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
更に架橋剤を含む請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成することによって得られるレジスト下層膜。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成してレジスト下層膜を形成する工程を含む半導体の製造に用いられるレジストパターンの形成方法。
【請求項10】
半導体基板上に請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物によりレジスト下層膜を形成する工程、その上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンにより該レジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜によ
り半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項11】
半導体基板に請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物によりレジスト下層膜を形成する工程、その上にハードマスクを形成する工程、更にその上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンによりハードマスクをエッチングする工程、パターン化されたハードマスクにより該レジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項12】
ハードマスクが無機物の蒸着によるものである請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板加工時に有効なリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、並びに該レジスト下層膜形成組成物を用いるレジストパターン形成法、及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体デバイスの製造において、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。前記微細加工はシリコンウェハー等の被加工基板上にフォトレジスト組成物の薄膜を形成し、その上に半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜としてシリコンウェハー等の被加工基板をエッチング処理する加工法である。ところが、近年、半導体デバイスの高集積度化が進み、使用される活性光線もKrFエキシマレーザ(248nm)からArFエキシマレーザ(193nm)へと短波長化されてきている。これに伴い、活性光線の基板からの乱反射や定在波の影響が大きな問題となり、フォトレジストと被加工基板の間に反射防止膜(BottomAnti−ReflectiveCoating、BARC)を設ける方法が広く適用されるようになってきた。また、更なる微細加工を目的として、活性光線に極端紫外線(EUV、13.5nm)や電子線(EB)を用いたリソグラフィー技術の開発も行われている。EUVリソグラフィーやEBリソグラフィーでは一般的に基板からの乱反射や定在波が発生しないために特定の反射防止膜を必要としないが、レジストパターンの解像性や密着性の改善を目的とした補助膜として、レジスト下層膜は広く検討され始めている。
【0003】
一方、レジストパターンの微細化が進行するにしたがい、レジストの薄膜化が必要不可欠となっている。これは、微細化による解像度の低下や形成されるレジストパターンが倒壊しやすくなるためである。そのため、基板加工に必要なレジストパターン膜厚を維持することが難しくなり、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間に作成されるレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせる必要が生じた。このようなレジスト膜厚の薄膜化を目的に、レジスト下層膜を少なくとも2層形成し、該レジスト下層膜をエッチングマスクとして使用するリソグラフィープロセスが用いられている。そのような薄膜レジストでは、レジストパターンをエッチングプロセスでその下層膜に転写し、その下層膜をマスクとして基板加工を行うプロセスやレジストパターンをエッチングプロセスでその下層膜に転写し、さらに下層膜に転写されたパターンを異なるエッチングガスを用いてその下層膜に転写するという行程を繰り返し、最終的に基板加工を行うプロセスが用いられる。リソグラフィープロセス用のレジスト下層膜としては、ドライエッチング工程におけるエッチングガス(例えばフルオロカーボン)に対して高い耐エッチング性を有することなどが求められる。
【0004】
上記レジスト下層膜用のポリマーとして例えば以下のものが例示されている。
ポリビニルカルバゾールを用いたレジスト下層膜形成組成物が例示されている(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3を参照)。
フルオレンフェノールノボラック樹脂を用いたレジスト下層膜形成組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
フルオレンナフトールノボラック樹脂を用いたレジスト下層膜形成組成物が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
フルオレンフェノールとアリールアルキレンを繰り返し単位とする樹脂を含むレジスト下層膜形成組成物が開示されている(例えば、特許文献6、特許文献7参照)。
カルバゾールノボラックを用いたレジスト下層膜形成組成物が開示されている(例えば、特許文献8参照)。
多核フェノールノボラックを用いたレジスト下層膜形成組成物が開示されている(例えば、特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−293850号
【特許文献2】特開平1−154050号
【特許文献3】特開平2−22657号
【特許文献4】特開2005−128509
【特許文献5】特開2007−199653
【特許文献6】特開2007−178974
【特許文献7】米国特許第7378217号
【特許文献8】国際公開パンフレットWO2010/147155
【特許文献9】特開2006−259249
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、レジストパターンの微細化に伴い、エッチングマスクとなるレジスト下層膜では、それをマスクとして下地基板を加工するドライエッチング工程において、ウイグリング(wiggling)と呼ばれるレジスト下層膜の不規則なパターンの曲がりが発生することで、所望のパターンを下地基板に転写することが困難となる問題が生じている。したがって、エッチングマスクとなるレジスト下層膜では、微細パターンにおいてもパターン曲がりの発生を抑制できるような高いパターン曲がり耐性を有するレジスト下層膜が必要とされている。
【0007】
また、前記レジスト下層膜形成組成物はレジスト組成物と同様にスピンコーターを用いて成膜することが生産性、経済性の観点からも望ましい。しかし、このような塗布型レジスト下層膜形成組成物では、良好な塗布性を達成するために、レジスト下層膜形成組成物の主要成分であるポリマー樹脂、架橋剤、架橋触媒等を適当な溶剤に溶解させる必要が生じる。このような溶剤としては、レジスト形成組成物に用いられるプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、シクロヘキサノン等が代表的な溶剤として挙げられ、レジスト下層膜形成組成物はこれら溶剤に対して良好な溶解性を有する必要がある。
【0008】
さらに、前記レジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を成膜する焼成工程においては、前記ポリマー樹脂や架橋剤、架橋触媒等の低分子化合物に由来する昇華成分(昇華物)が発生することが新たな問題となっている。このような昇華物は、半導体デバイス製造工程において、成膜装置内に付着、蓄積されることによって装置内を汚染し、それがウェハー上に異物として付着することで欠陥(ディフェクト)等の発生要因となることが懸念される。したがって、焼成工程においてレジスト下層膜から発生する昇華物を抑制するようなレジスト下層膜組成物が求められている。
【0009】
本発明は、このような課題解決に基づいてなされたものであり、従来の高いドライエッチング耐性を有するレジスト下層膜で発生する下地基板加工時のパターン曲がりを抑制し、さらには良好な塗布成膜性を発現するためのレジスト溶剤への高い溶解性と成膜時に発生する昇華物を低減することが可能なレジスト下層膜形成組成物、並びに該レジスト下層膜形成組成物を用いたレジストパターン形成法、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は第1観点として、芳香族環を含む有機化合物Aと、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族炭素環基を少なくとも2つ有し、そして該芳香族炭素環基が3級炭素原子を介して結合した構造を有するアルデヒドBとの反応により得られる樹脂を含むレジスト下層膜形成組成物、
第2観点として、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族炭素環基を少なくとも2つ有し、そして該芳香族炭素環基が3級炭素原子を介して結合した構造を有するアルデヒドBが下記式(1):
【化1】








(式(1)中、Xは単結合、炭素原子数1乃至10のアルキレン基、又は炭素原子数6乃至40のアリーレン基を表し、Ar及びArはそれぞれ炭素原子数6乃至40のアリール基を示す。R及びRはそれぞれ炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、炭素原子数6乃至40のアリール基、上記Ar基、上記Ar基、シアノ基、ニトロ基、−Y−Z基、ハロゲン原子、又はそれらの組みあわせを示す。Yは酸素原子、硫黄原子、又はカルボニル基を示し、Zは炭素原子数6乃至40のアリール基を示す。m及びmはそれぞれ1乃至(3+2n)の整数を示す。m及びmはそれぞれ0乃至(2+2n)の整数を示す。(m+m)及び(m+m)は1乃至(3+2n)の整数を示す。ただしnはAr及びArで示されるアリール基のベンゼン環の縮合数を示す。)で表される化合物である第1観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第3観点として、得られる樹脂が式(2):
【化2】








(式(2)中、Aは芳香族環を含む有機化合物Aに由来する基を示し、Xは単結合、炭素原子数1乃至10のアルキレン基、又は炭素原子数6乃至40のアリーレン基を表し、Ar及びArはそれぞれ炭素原子数6乃至40のアリール基を示す。R及びRはそれぞれ炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、炭素原子数6乃至40のアリール基、上記Ar基、上記Ar基、シアノ基、ニトロ基、−Y−Z基、ハロゲン原子、又はそれらの組みあわせを示す。Yは酸素原子、硫黄原子、又はカルボニル基を示し、Zは炭素原子数6乃至40のアリール基を示す。m及びmはそれぞれ1乃至(3+2n)の整数を示す。m及びmはそれぞれ0乃至(2+2n)の整数を示す。(m+m)及び(m+m)は1乃至(3+2n)の整数を示す。ただしnはAr及びArで示されるアリール基のベンゼン環の縮合数を示す。)で表される単位構造を有する樹脂である第1観点又は第2観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第4観点として、芳香族環を含む有機化合物Aが芳香族アミンである第1観点乃至第3観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物、
第5観点として、芳香族アミンが、アニリン、ナフチルアミン、フェニルナフチルアミン、又はカルバゾールである第4観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第6観点として、芳香族環を含む有機化合物Aがフェノール性ヒドロキシ基含有化合物である第1観点乃至第3観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物、
第7観点として、フェノール性ヒドロキシ基含有化合物がフェノール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシナフタレン、又はトリヒドロキシナフタレンである第6観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第8観点として、更に溶剤を含む第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物、
第9観点として、更に酸及び/又は酸発生剤を含む第1観点乃至第8観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物、
第10観点として、更に架橋剤を含む第1観点乃至第9観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物、
第11観点として、第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成することによって得られるレジスト下層膜、
第12観点として、第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成してレジスト下層膜を形成する工程を含む半導体の製造に用いられるレジストパターンの形成方法、
第13観点として、半導体基板上に第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物によりレジスト下層膜を形成する工程、その上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンにより該レジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法、
第14観点として、半導体基板に第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物によりレジスト下層膜を形成する工程、その上にハードマスクを形成する工程、更にその上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンによりハードマスクをエッチングする工程、パターン化されたハードマスクにより該レジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法、及び
第15観点として、ハードマスクが無機物の蒸着によるものである第14観点に記載の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、前記レジスト膜厚の薄膜化を目的としたレジスト下層膜を少なくとも2層形成し、該レジスト下層膜をエッチングマスクとして使用するリソグラフィープロセスに対して有効であり、フルオロカーボンのようなエッチングガスに対して高いドライエッチング耐性を持つだけでなく、本発明のレジスト下層膜を用いて基板を加工する際、加工基板(例えば、基板上の熱酸化ケイ素膜、窒化珪素膜、ポリシリコン膜等)に対して十分にエッチング耐性を有するものである。
特に、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、レジスト溶剤への溶解性が高く、スピンコート性に優れた塗布型組成物である。そして、本発明のレジスト下層膜形成組成物から得られたレジスト下層膜は、被膜して焼成後、それらレジスト溶剤に再溶解することはない。さらには、レジスト下層膜形成組成物を焼成して成膜する工程において、ポリマー樹脂や架橋剤、架橋触媒等の低分子化合物に由来する昇華成分(昇華物)の発生を低減することができる。また、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、下地基板を加工するドライエッチング工程において、レジスト下層膜のウイグリング(不規則なパターンの曲がり)の発生を抑制することができる。これにより、半導体製造のリソグラフィープロセスにおけるレジストパターン形成を容易に、精度良く行うことができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は芳香族環を含む有機化合物Aと、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族炭素環基を少なくとも2つ有し、そして該芳香族炭素環基が3級炭素原子を介して結合した構造を有するアルデヒドBとの反応により得られる樹脂を含むレジスト下層膜形成組成物である。
【0013】
本発明において上記のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は上記樹脂と溶剤を含む。そして、必要に応じて架橋剤、酸、酸発生剤、界面活性剤等を含むことができる。この組成物の固形分は0.1乃至70質量%、または0.1乃至60質量%である。固形分はレジスト下層膜形成組成物から溶剤を除いた全成分の含有割合である。固形分中に上記ポリマーを1乃至100質量%、または1乃至99.9質量%、または50乃至99.9質量%、または50乃至95質量%、または50乃至90質量%の割合で含有することができる。
【0014】
本発明に用いられるポリマーは、重量平均分子量が600乃至1000000、又は600乃至200000である。
【0015】
フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族炭素環基を少なくとも2つ有し、そして該芳香族炭素環基が3級炭素原子を介して結合した構造を有するアルデヒドBは式(1)の構造を有するアルデヒドを例示することができる。
式(1)中で、Xは単結合、炭素原子数1乃至10のアルキレン基、又は炭素原子数6乃至40のアリーレン基を表し、Ar及びArはそれぞれ炭素原子数6乃至40のアリール基を示す。R及びRはそれぞれ炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、炭素原子数6乃至40のアリール基、上記Ar基、上記Ar基、シアノ基、ニトロ基、−Y−Z基、ハロゲン原子、又はそれらの組みあわせを示す。Yは酸素原子、硫黄原子、又はカルボニル基を示し、Zは炭素原子数6乃至40のアリール基を示す。m及びmはそれぞれ1乃至(3+2n)の整数を示す。m及びmはそれぞれ0乃至(2+2n)の整数を示す。(m+m)及び(m+m)は1乃至(3+2n)の整数を示す。ただしnはAr及びArで示されるアリール基のベンゼン環の縮合数を示す。
【0016】
上記アルキル基としては炭素原子数1乃至10のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、1−メチル−シクロプロピル基、2−メチル−シクロプロピル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、シクロペンチル基、1−メチル−シクロブチル基、2−メチル−シクロブチル基、3−メチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロプロピル基、2,3−ジメチル−シクロプロピル基、1−エチル−シクロプロピル基、2−エチル−シクロプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピル基、シクロヘキシル基、1−メチル−シクロペンチル基、2−メチル−シクロペンチル基、3−メチル−シクロペンチル基、1−エチル−シクロブチル基、2−エチル−シクロブチル基、3−エチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロブチル基、1,3−ジメチル−シクロブチル基、2,2−ジメチル−シクロブチル基、2,3−ジメチル−シクロブチル基、2,4−ジメチル−シクロブチル基、3,3−ジメチル−シクロブチル基、1−n−プロピル−シクロプロピル基、2−n−プロピル−シクロプロピル基、1−i−プロピル−シクロプロピル基、2−i−プロピル−シクロプロピル基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル基及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピル基等が挙げられる。
【0017】
上記アリール基としては、炭素原子数6乃至40のアリール基であり、例えばフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、o−クロルフェニル基、m−クロルフェニル基、p−クロルフェニル基、o−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−シアノフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基及び9−フェナントリル基が挙げられる。
【0018】
上記アルケニル基としては炭素原子数2乃至10のアルケニル基であり、例えばエテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチル−1−エテニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルエテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−n−プロピルエテニル基、1−メチル−1−ブテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、2−エチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基、1−i−プロピルエテニル基、1,2−ジメチル−1−プロペニル基、1,2−ジメチル−2−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−メチル−1−ペンテニル基、1−メチル−2−ペンテニル基、1−メチル−3−ペンテニル基、1−メチル−4−ペンテニル基、1−n−ブチルエテニル基、2−メチル−1−ペンテニル基、2−メチル−2−ペンテニル基、2−メチル−3−ペンテニル基、2−メチル−4−ペンテニル基、2−n−プロピル−2−プロペニル基、3−メチル−1−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、3−メチル−3−ペンテニル基、3−メチル−4−ペンテニル基、3−エチル−3−ブテニル基、4−メチル−1−ペンテニル基、4−メチル−2−ペンテニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、4−メチル−4−ペンテニル基、1,1−ジメチル−2−ブテニル基、1,1−ジメチル−3−ブテニル基、1,2−ジメチル−1−ブテニル基、1,2−ジメチル−2−ブテニル基、1,2−ジメチル−3−ブテニル基、1−メチル−2−エチル−2−プロペニル基、1−s−ブチルエテニル基、1,3−ジメチル−1−ブテニル基、1,3−ジメチル−2−ブテニル基、1,3−ジメチル−3−ブテニル基、1−i−ブチルエテニル基、2,2−ジメチル−3−ブテニル基、2,3−ジメチル−1−ブテニル基、2,3−ジメチル−2−ブテニル基、2,3−ジメチル−3−ブテニル基、2−i−プロピル−2−プロペニル基、3,3−ジメチル−1−ブテニル基、1−エチル−1−ブテニル基、1−エチル−2−ブテニル基、1−エチル−3−ブテニル基、1−n−プロピル−1−プロペニル基、1−n−プロピル−2−プロペニル基、2−エチル−1−ブテニル基、2−エチル−2−ブテニル基、2−エチル−3−ブテニル基、1,1,2−トリメチル−2−プロペニル基、1−t−ブチルエテニル基、1−メチル−1−エチル−2−プロペニル基、1−エチル−2−メチル−1−プロペニル基、1−エチル−2−メチル−2−プロペニル基、1−i−プロピル−1−プロペニル基、1−i−プロピル−2−プロペニル基、1−メチル−2−シクロペンテニル基、1−メチル−3−シクロペンテニル基、2−メチル−1−シクロペンテニル基、2−メチル−2−シクロペンテニル基、2−メチル−3−シクロペンテニル基、2−メチル−4−シクロペンテニル基、2−メチル−5−シクロペンテニル基、2−メチレン−シクロペンチル基、3−メチル−1−シクロペンテニル基、3−メチル−2−シクロペンテニル基、3−メチル−3−シクロペンテニル基、3−メチル−4−シクロペンテニル基、3−メチル−5−シクロペンテニル基、3−メチレン−シクロペンチル基、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基及び3−シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0019】
アルキレン基としては上記アルキル基から誘導される2価の有機基を例示することができる。アリーレン基としては上記アリール基から誘導される2価の有機基を例示することができる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0020】
式(1)の構造を有するアルデヒドは例えば以下に例示することができる。
【化3】








【化4】







【0021】
芳香族環を含む有機化合物Aとしては芳香族アミン、及びフェノール性ヒドロキシ基含有化合物を例示することができる。
【0022】
芳香族アミンとしては炭素原子数6乃至40のアミンが好ましく、例えばアニリン、ナフチルアミン、フェニルナフチルアミン、及びカルバゾールが例示される。フェニルナフチルアミン、及びカルバゾールは好適に用いることができる。
【0023】
フェノール性ヒドロキシ基含有化合物としては炭素原子数6乃至40のものが挙げられ、例えばフェノール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシナフタレン、又はトリヒドロキシナフタレンが例示される。フェノールは好適に用いることができる。
【0024】
芳香族環を含む有機化合物Aと、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族炭素環基を少なくとも2つ有し、そして該芳香族炭素環基が3級炭素原子を介して結合した構造を有するアルデヒドBとの反応により得られる樹脂は、式(2)の構造を有するノボラック樹脂を挙げることができる。
式(2)において、Aは芳香族環を含む有機化合物Aに由来する基を示し、Xは単結合、炭素原子数1乃至10のアルキレン基、又は炭素原子数6乃至40のアリーレン基を表し、Ar及びArはそれぞれ炭素原子数6乃至40のアリール基を示す。R及びRはそれぞれ炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、炭素原子数6乃至40のアリール基、上記Ar基、上記Ar基、シアノ基、ニトロ基、−Y−Z基、ハロゲン原子、又はそれらの組みあわせを示す。Yは酸素原子、硫黄原子、又はカルボニル基を示し、Zは炭素原子数6乃至40のアリール基を示す。m及びmはそれぞれ1乃至(3+2n)の整数を示す。m及びmはそれぞれ0乃至(2+2n)の整数を示す。(m+m)及び(m+m)は1乃至(3+2n)の整数を示す。ただしnはAr及びArで示されるアリール基のベンゼン環の縮合数を示す。これらの基として、上述の例示を挙げることができる。
【0025】
芳香族環を含む有機化合物Aと、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族炭素環基を少なくとも2つ有し、そして該芳香族炭素環基が3級炭素原子を介して結合した構造を有するアルデヒドBとの反応は、上記Aと上記Bを1:0.5乃至1.5、又は1:1のモル比で反応させることが好ましい。
【0026】
上記縮合反応で用いられる酸触媒としては、例えば硫酸、リン酸、過塩素酸等の鉱酸類、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸一水和物、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、蟻酸、シュウ酸等のカルボン酸類が使用される。酸触媒の使用量は、使用する酸類の種類によって種々選択される。通常、芳香族環を含む有機化合物Aの100質量部に対して、0.001乃至10000質量部、好ましくは、0.01乃至1000質量部、より好ましくは0.1乃至100質量部である。
【0027】
上記の縮合反応は無溶剤でも行われるが、通常溶剤を用いて行われる。溶剤としては反応を阻害しないものであれば全て使用することができる。例えば1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。また、使用する酸触媒が例えば蟻酸のような液状のものであるならば溶剤としての役割を兼ねさせることもできる。
【0028】
縮合時の反応温度は通常40℃乃至200℃である。反応時間は反応温度によって種々選択されるが、通常30分乃至50時間程度である。
以上のようにして得られる重合体の重量平均分子量Mwは、通常500乃至1000000、又は600乃至200000である。
【0029】
芳香族環を含む有機化合物Aと、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族炭素環基を少なくとも2つ有し、そして該芳香族炭素環基が3級炭素原子を介して結合した構造を有するアルデヒドBとの反応により得られる樹脂は以下に例示することができる。
【化5】







【化6】






【0030】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は架橋剤成分を含むことができる。その架橋剤としては、メラミン系、置換尿素系、またはそれらのポリマー系等が挙げられる。好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤であり、メトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、またはメトキシメチル化チオ尿素等の化合物である。また、これらの化合物の縮合体も使用することができる。
また、上記架橋剤としては耐熱性の高い架橋剤を用いることができる。耐熱性の高い架橋剤としては分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する化合物を好ましく用いることができる。
【0031】
この化合物は下記式(3)の部分構造を有する化合物や、下記式(4)の繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
【化7】







上記R15、R16、R17、及びR18は水素原子又は炭素数1乃至10のアルキル基であり、これらのアルキル基は上述の例示を用いることができる。また、上記式(3)、式(4)中、n15は1乃至5の整数、n16は1乃至5の整数、(n15+n16)は2乃至6の整数を示し、n17は1乃至3の整数、n18は1乃至3の整数、(n17+n18)は2乃至4の整数を示す。
【0032】
式(3)の部分構造を有する化合物、式(4)の繰り返し単位を有するポリマー及び、オリゴマーは以下に例示される。
【化8】







【化9】






【0033】
上記化合物は旭有機材工業(株)、本州化学工業(株)の製品として入手することができる。例えば上記架橋剤の中で式(3−24)の化合物は旭有機材工業(株)、商品名TM−BIP−Aとして入手することができる。
架橋剤の添加量は、使用する塗布溶剤、使用する下地基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状などにより変動するが、全固形分に対して0.001乃至80質量%、好ましくは0.01乃至50質量%、さらに好ましくは0.05乃至40質量%である。これら架橋剤は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、本発明の上記のポリマー中に架橋性置換基が存在する場合は、それらの架橋性置換基と架橋反応を起こすことができる。
【0034】
本発明では上記架橋反応を促進するための触媒として、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸、サリチル酸、5−スルホサリチル酸、4−フェノールスルホン酸、カンファースルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等の酸性化合物及び/又は2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、その他有機スルホン酸アルキルエステル等の熱酸発生剤を配合する事が出来る。配合量は全固形分に対して、0.0001乃至20質量%、好ましくは0.0005乃至10質量%、さらに好ましくは0.01乃至3質量%である。
【0035】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、リソグラフィー工程で上層に被覆されるフォトレジストとの酸性度を一致させる為に、光酸発生剤を添加する事が出来る。好ましい光酸発生剤としては、例えば、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のオニウム塩系光酸発生剤類、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン含有化合物系光酸発生剤類、ベンゾイントシレート、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート等のスルホン酸系光酸発生剤類等が挙げられる。上記光酸発生剤は全固形分に対して、0.2乃至10質量%、好ましくは0.4乃至5質量%である。
【0036】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜材料には、上記以外に必要に応じて更なる吸光剤、レオロジー調整剤、接着補助剤、界面活性剤などを添加することができる。
【0037】
更なる吸光剤としては例えば、「工業用色素の技術と市場」(CMC出版)や「染料便覧」(有機合成化学協会編)に記載の市販の吸光剤、例えば、C.I.DisperseYellow1,3,4,5,7,8,13,23,31,49,50,51,54,60,64,66,68,79,82,88,90,93,102,114及び124;C.I.DisperseOrange1,5,13,25,29,30,31,44,57,72及び73;C.I.DisperseRed1,5,7,13,17,19,43,50,54,58,65,72,73,88,117,137,143,199及び210;C.I.DisperseViolet43;C.I.DisperseBlue96;C.I.FluorescentBrighteningAgent112,135及び163;C.I.SolventOrange2及び45;C.I.SolventRed1,3,8,23,24,25,27及び49;C.I.PigmentGreen10;C.I.PigmentBrown2等を好適に用いることができる。上記吸光剤は通常、リソグラフィー用レジスト下層膜材料の全固形分に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下の割合で配合される。
【0038】
レオロジー調整剤は、主にレジスト下層膜形成組成物の流動性を向上させ、特にベーキング工程において、レジスト下層膜の膜厚均一性の向上やホール内部へのレジスト下層膜形成組成物の充填性を高める目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、リソグラフィー用レジスト下層膜材料の全固形分に対して通常30質量%未満の割合で配合される。
【0039】
接着補助剤は、主に基板あるいはレジストとレジスト下層膜形成組成物の密着性を向上させ、特に現像においてレジストが剥離しないようにするための目的で添加される。具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’ービス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、γークロロプロピルトリメトキシシラン、γーアミノプロピルトリエトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2ーメルカプトベンズイミダゾール、2ーメルカプトベンゾチアゾール、2ーメルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物や、1,1ージメチルウレア、1,3ージメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。これらの接着補助剤は、リソグラフィー用レジスト下層膜材料の全固形分に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合で配合される。
【0040】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜材料には、ピンホールやストレーション等の発生がなく、表面むらに対する塗布性をさらに向上させるために、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトツプEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製、商品名)、メガファックF171、F173、R−30(大日本インキ(株)製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製、商品名)、アサヒガードAG710、サーフロンSー382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製、商品名)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜材料の全固形分に対して通常2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0041】
本発明で、上記のポリマー及び架橋剤成分、架橋触媒等を溶解させる溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2ーヒドロキシプロピオン酸エチル、2ーヒドロキシー2ーメチルプロピオン酸エチル、エトシキ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2ーヒドロキシー3ーメチルブタン酸メチル、3ーメトキシプロピオン酸メチル、3ーメトキシプロピオン酸エチル、3ーエトキシプロピオン酸エチル、3ーエトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で、または2種以上の組合せで使用される。
【0042】
さらに、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の高沸点溶剤を混合して使用することができる。これらの溶剤の中でプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノン等がレベリング性の向上に対して好ましい。
【0043】
本発明に用いられるレジストとはフォトレジストや電子線レジストである。
本発明におけるリソグラフィー用レジスト下層膜の上部に塗布されるフォトレジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用でき、ノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、骨格にSi原子を有するフォトレジスト等があり、例えば、ロームアンドハース社製、商品名APEX−Eが挙げられる。
【0044】
また本発明におけるリソグラフィー用レジスト下層膜の上部に塗布される電子線レジストとしては、例えば主鎖にSi−Si結合を含み末端に芳香族環を含んだ樹脂と電子線の照射により酸を発生する酸発生剤から成る組成物、又はヒドロキシ基がN−カルボキシアミンを含む有機基で置換されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)と電子線の照射により酸を発生する酸発生剤から成る組成物等が挙げられる。後者の電子線レジスト組成物では、電子線照射によって酸発生剤から生じた酸がポリマー側鎖のN−カルボキシアミノキシ基と反応し、ポリマー側鎖がヒドロキシ基に分解しアルカリ可溶性を示しアルカリ現像液に溶解し、レジストパターンを形成するものである。この電子線の照射により酸を発生する酸発生剤は1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2,2−トリクロロエタン、1,1−ビス[p−メトキシフェニル]−2,2,2−トリクロロエタン、1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2−ジクロロエタン、2−クロロ−6−(トリクロロメチル)ピリジン等のハロゲン化有機化合物、トリフェニルスルフォニウム塩、ジフェニルヨウドニウム塩等のオニウム塩、ニトロベンジルトシレート、ジニトロベンジルトシレート等のスルホン酸エステルが挙げられる。
【0045】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜材料を使用して形成したレジスト下層膜を有するレジストの現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジーn−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。
【0046】
次に本発明のレジストパターン形成法について説明すると、精密集積回路素子の製造に使用される基板(例えばシリコン/二酸化シリコン被覆、ガラス基板、ITO基板などの透明基板)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法によりレジスト下層膜形成組成物を塗布後、ベークして硬化させ塗布型下層膜を作成する。ここで、レジスト下層膜の膜厚としては0.01乃至3.0μmが好ましい。また塗布後ベーキングする条件としては80乃至400℃で0.5乃至120分間である。その後レジスト下層膜上に直接、または必要に応じて1層乃至数層の塗膜材料を塗布型下層膜上に成膜した後、レジストを塗布し、所定のマスクを通して光又は電子線の照射を行い、現像、リンス、乾燥することにより良好なレジストパターンを得ることができる。必要に応じて光又は電子線の照射後加熱(PEB:PostExposureBake)を行うこともできる。そして、レジストが前記工程により現像除去された部分のレジスト下層膜をドライエッチングにより除去し、所望のパターンを基板上に形成することができる。
【0047】
上記フォトレジストでの露光光は、近紫外線、遠紫外線、又は極端紫外線(例えば、EUV、波長13.5nm)等の化学線であり、例えば248nm(KrFレーザー光)、193nm(ArFレーザー光)、157nm(Fレーザー光)等の波長の光が用いられる。光照射には、光酸発生剤から酸を発生させることができる方法であれば、特に制限なく使用することができ、露光量1乃至2000mJ/cm、または10乃至1500mJ/cm、または50乃至1000mJ/cmによる。
【0048】
また電子線レジストの電子線照射は、例えば電子線照射装置を用い照射することができる。
【0049】
本発明では、半導体基板にレジスト下層膜形成組成物により該レジスト下層膜を形成する工程、その上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンにより該レジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を経て半導体装置を製造することができる。
【0050】
今後、レジストパターンの微細化が進行すると、解像度の問題やレジストパターンが現像後に倒れるという問題が生じ、レジストの薄膜化が望まれてくる。そのため、基板加工に充分なレジストパターン膜厚を得ることが難しく、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間に作成されるレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきた。このようなプロセス用のレジスト下層膜として従来の高エッチレート性レジスト下層膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜や半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜が要求されるようになってきている。また、このようなレジスト下層膜には反射防止能を付与することも可能であり、従来の反射防止膜の機能を併せ持つことができる。
【0051】
一方、微細なレジストパターンを得るために、レジスト下層膜ドライエッチング時にレジストパターンとレジスト下層膜をレジスト現像時のパターン幅より細くするプロセスも使用され始めている。このようなプロセス用のレジスト下層膜として従来の高エッチレート性反射防止膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つレジスト下層膜が要求されるようになってきている。また、このようなレジスト下層膜には反射防止能を付与することも可能であり、従来の反射防止膜の機能を併せ持つことができる。
【0052】
本発明では基板上に本発明のレジスト下層膜を成膜した後、レジスト下層膜上に直接、または必要に応じて1層乃至数層の塗膜材料をレジスト下層膜上に成膜した後、レジストを塗布することができる。これによりレジストのパターン幅が狭くなり、パターン倒れを防ぐ為にレジストを薄く被覆した場合でも、適切なエッチングガスを選択することにより基板の加工が可能になる。
【0053】
即ち、半導体基板にレジスト下層膜形成組成物によりレジスト下層膜を形成する工程、その上にケイ素成分等を含有する塗膜材料によるハードマスク又は蒸着によるハードマスク(例えば、窒化酸化ケイ素)を形成する工程、更にその上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンによりハードマスクをハロゲン系ガスでエッチングする工程、パターン化されたハードマスクにより該レジスト下層膜を酸素系ガス又は水素系ガスでエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜によりハロゲン系ガスで半導体基板を加工する工程を経て半導体装置を製造することができる。
【0054】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、反射防止膜としての効果を考慮した場合、光吸収部位が骨格に取りこまれているため、加熱乾燥時にフォトレジスト中への拡散物がなく、また、光吸収部位は十分に大きな吸光性能を有しているため反射光防止効果が高い。
【0055】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物では、熱安定性が高く、焼成時の分解物による上層膜への汚染が防げ、また、焼成工程の温度マージンに余裕を持たせることができるものである。
【0056】
さらに、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜材料は、プロセス条件によっては、光の反射を防止する機能と、更には基板とフォトレジストとの相互作用の防止或いはフォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の基板への悪作用を防ぐ機能とを有する膜としての使用が可能である。
【実施例】
【0057】
<合成例1>
テレフタルアルデヒド30.00g、p−クレゾール80.54g、p−トルエンスルホン酸一水和物8.08gにキシレン150gを加え、40℃で39時間撹拌した。反応液を冷却後、析出した結晶を濾過し、この結晶をトルエンで洗浄した。得られた結晶を2−ブタノンで抽出し、純水で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、有機層を溶媒留去し、残渣にヘキサンを加えて撹拌した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶を50℃にて減圧乾燥することにより、ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−4−ホルミルトルエン(式(1−1)の化合物)60.07g(収率81%)を得た。
【0058】
<合成例2>
テレフタルアルデヒド25.00g、4−メチルカテコール46.28g、p−トルエンスルホン酸一水和物4.61gにキシレン100gを加え、40℃で60時間撹拌した。反応液を冷却後、析出した結晶を濾過し、この結晶をトルエンで洗浄した。得られた結晶を2−ブタノンで抽出し、純水で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、有機層を溶媒留去し、残渣にヘキサンを加えて撹拌した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶を50℃にて減圧乾燥することにより、ビス(2,3−ジヒドロキシ−5−メチルフェニル)−4−ホルミルトルエン(式(1−2)の化合物)55.29g(収率81%)を得た。
【0059】
<合成例3>
テレフタルアルデヒド13.50g、2,4−ジメチルフェノール24.59g、p−トルエンスルホン酸一水和物2.49gにキシレン100gを加え、40℃で66時間撹拌した。反応液を冷却後、析出した結晶を濾過し、この結晶をトルエンで洗浄した。得られた結晶を2−ブタノンで抽出し、純水で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、有機層を溶媒留去し、残渣にヘキサンを加えて撹拌した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶を50℃にて減圧乾燥することにより、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ホルミルトルエン(式(1−3)の化合物)23.93g(収率66%)を得た。
【0060】
<合成例4>
テレフタルアルデヒド40.00g、2,5−ジメチルフェノール72.86g、p−トルエンスルホン酸一水和物8.51gにキシレン300gを加え、40℃で24時間撹拌した。反応液を冷却後、析出した結晶を濾過し、この結晶をトルエンで洗浄した。得られた結晶を2−ブタノンで抽出し、純水で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、有機層を溶媒留去し、残渣にヘキサンを加えて撹拌した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶を50℃にて減圧乾燥することにより、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ホルミルトルエン(式(1−4)の化合物)94.33g(収率88%)を得た。
【0061】
<合成例5>
テレフタルアルデヒド13.50g、2,6−ジメチルフェノール24.59g、p−トルエンスルホン酸一水和物2.49gにキシレン100gを加え、40℃で66時間撹拌した。反応液を冷却後、析出した結晶を濾過し、この結晶をトルエンで洗浄した。得られた結晶を2−ブタノンで抽出し、純水で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、有機層を溶媒留去し、残渣にヘキサンを加えて撹拌した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶を50℃にて減圧乾燥することにより、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ホルミルトルエン(式(1−5)の化合物)32.13g(収率89%)を得た。
【0062】
<合成例6>
テレフタルアルデヒド30.00g、4−tert−ブチルフェノール67.20g、p−トルエンスルホン酸一水和物6.38gにキシレン180gを加え、40℃で14時間撹拌した。反応液を冷却後、析出した結晶を濾過し、この結晶をトルエンで洗浄した。得られた結晶を2−ブタノンで抽出し、純水で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、有機層を溶媒留去し、残渣にヘキサンを加えて撹拌した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶を50℃にて減圧乾燥することにより、ビス(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−4−ホルミルトルエン(式(1−6)の化合物)29.72g(収率32%)を得た。
【0063】
<合成例7>
テレフタルアルデヒド20.00g、4−フェニルフェノール50.76g、メタンスルホン酸2.87gにジクロロメタン700gを加え、還流下、45時間撹拌した。反応液を冷却後、析出した結晶を濾過し、この結晶をトルエンで洗浄した。得られた結晶を2−ブタノンで抽出し、純水で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、有機層を溶媒留去し、残渣にヘキサンを加えて撹拌した。析出した結晶を濾過し、この結晶をジエチルエーテルで洗浄した後、50℃にて減圧乾燥することにより、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)−4−ホルミルトルエン(式(1−7)の化合物)20.25g(収率30%)を得た。
【0064】
<合成例8>
テレフタルアルデヒド18.00g、4−ベンジルフェノール49.45g、p−トルエンスルホン酸一水和物3.83gにキシレン100gを加え、40℃で36時間撹拌した。反応液を冷却後、析出した結晶を濾過し、この結晶をトルエンで洗浄した。得られた結晶を2−ブタノンで抽出し、純水で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、有機層を溶媒留去し、残渣にヘキサンを加えて撹拌した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶を50℃にて減圧乾燥することにより、ビス(2−ヒドロキシ−5−ベンジルフェニル)−4−ホルミルトルエン(式(1−8)の化合物)30.43g(収率47%)を得た。
【0065】
<合成例9>
テレフタルアルデヒド18.00g、4−フェノキシフェノール49.98g、p−トルエンスルホン酸一水和物3.83gにキシレン100gを加え、40℃で84時間撹拌した。反応液を冷却後、析出した結晶を濾過し、この結晶をトルエンで洗浄した。得られた結晶を2−ブタノンで抽出し、純水で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、有機層を溶媒留去し、残渣にヘキサンを加えて撹拌した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶を50℃にて減圧乾燥することにより、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェノキシフェニル)−4−ホルミルトルエン(式(1−9)の化合物)34.09g(収率52%)を得た。
【0066】
<合成例10>
39%グリオキザール水溶液40.00g、2,5−ジメチルフェノール65.67g、p−トルエンスルホン酸一水和物7.67gに4−メチル−2−ペンタノン150gを加え、60℃で23時間撹拌した。反応液を4−メチル−2−ペンタノンで抽出し、純水で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、有機層を溶媒留去し、残渣にトルエンを加えて撹拌した。析出した結晶を濾過し、この結晶をヘキサンで洗浄した後、得られた結晶を50℃にて減圧乾燥することにより、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ホルミルメタン(式(1−10)の化合物)19.61g(収率26%)を得た。
【0067】
<合成例11>
フェニル−1−ナフチルアミン5.50g、合成例1で得られたビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−4−ホルミルトルエン8.34g、メタンスルホン酸0.24gにプロピレングリコールモノメチルエーテル32.85gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で5時間撹拌した。反応液をメタノール/水(60質量%/40質量%)の混合溶媒中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂12.87gを得た(式(2−1)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は5900であった。
【0068】
<合成例12>
フェニル−1−ナフチルアミン5.50g、合成例2で得られたビス(2,3−ジヒドロキシ−5−メチルフェニル)−4−ホルミルトルエン9.14g、メタンスルホン酸0.24gにプロピレングリコールモノメチルエーテル34.72gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で7時間撹拌した。反応液をメタノール/水(20質量%/80質量%)の混合溶媒中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂12.77gを得た(式(2−2)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は4100であった。
【0069】
<合成例13>
フェニル−1−ナフチルアミン5.50g、合成例3で得られたビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ホルミルトルエン9.04g、メタンスルホン酸0.24gにプロピレングリコールモノメチルエーテル34.49gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で6時間撹拌した。反応液をメタノール/水(70質量%/30質量%)の混合溶媒中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂13.27gを得た(式(2−3)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は5900であった。
【0070】
<合成例14>
フェニル−1−ナフチルアミン6.00g、合成例4で得られたビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ホルミルトルエン9.86g、メタンスルホン酸0.26gにプロピレングリコールモノメチルエーテル37.64gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で4時間撹拌した。反応液をメタノール/水(60質量%/40質量%)の混合溶媒中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂14.46gを得た(式(2−4)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は5200であった。
【0071】
<合成例15>
フェニル−1−ナフチルアミン5.50g、合成例5で得られたビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ホルミルトルエン9.04g、メタンスルホン酸0.24gにプロピレングリコールモノメチルエーテル34.49gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で7時間撹拌した。反応液をメタノール/水(60質量%/40質量%)の混合溶媒中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂12.63gを得た(式(2−5)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は4700であった。
【0072】
<合成例16>
フェニル−1−ナフチルアミン5.00g、合成例6で得られたビス(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−4−ホルミルトルエン9.50g、メタンスルホン酸0.24gにプロピレングリコールモノメチルエーテル34.34gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で3時間撹拌した。反応液をメタノール/水(70質量%/30質量%)の混合溶媒中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂13.30gを得た(式(2−6)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は6200であった。
【0073】
<合成例17>
フェニル−1−ナフチルアミン4.50g、合成例7で得られたビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)−4−ホルミルトルエン9.37g、メタンスルホン酸0.20gにプロピレングリコールモノメチルエーテル32.82gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で5時間撹拌した。反応液をメタノール/水(70質量%/30質量%)の混合溶媒中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂12.02gを得た(式(2−7)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は5100であった。
【0074】
<合成例18>
フェニル−1−ナフチルアミン4.50g、合成例8で得られたビス(2−ヒドロキシ−5−ベンジルフェニル)−4−ホルミルトルエン9.94g、メタンスルホン酸0.20gにプロピレングリコールモノメチルエーテル34.16gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で3時間撹拌した。反応液をメタノール/水(80質量%/20質量%)の混合溶媒中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂13.07gを得た(式(2−8)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は5800であった。
【0075】
<合成例19>
フェニル−1−ナフチルアミン3.21g、合成例9で得られたビス(2−ヒドロキシ−5−フェノキシフェニル)−4−ホルミルトルエン7.16g、メタンスルホン酸0.14gにプロピレングリコールモノメチルエーテル24.53gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で30分間撹拌した。反応液をメタノール/水(80質量%/20質量%)の混合溶媒中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂8.18gを得た(式(2−9)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は5700であった。
【0076】
<合成例20>
フェニル−1−ナフチルアミン6.00g、合成例10で得られたビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ホルミルメタン7.78g、メタンスルホン酸0.26gにプロピレングリコールモノメチルエーテル32.77gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で22時間撹拌した。反応液をメタノール/水(20質量%/80質量%)の混合溶媒中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂11.78gを得た(式(2−10)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は800であった。
【0077】
<合成例21>
カルバゾール5.50g、合成例1で得られたビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−4−ホルミルトルエン9.77g、メタンスルホン酸0.28gにプロピレングリコールモノメチルエーテル36.28gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で5時間撹拌した。反応液をメタノール/水(60質量%/40質量%)の混合溶媒中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂12.17gを得た(式(2−11)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は3400であった。
【0078】
<合成例22>
1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(製品名:TEP−DF、旭有機材工業(株)製)7.00g、合成例1で得られたビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−4−ホルミルトルエン5.84g、メタンスルホン酸0.17gにプロピレングリコールモノメチルエーテル19.51gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で4時間撹拌した。反応液にテトラヒドロフラン10.84gを加えて希釈した後、この希釈溶液をメタノール/水(30質量%/70質量%)の混合溶媒中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂11.90gを得た(式(2−12)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は5100であった。
【0079】
<合成例23>
フェニル−1−ナフチルアミン14.04g、1−ナフトアルデヒド10.00g、メタンスルホン酸1.23gにトルエン37.91gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で7時間撹拌した。反応液にテトラヒドロフラン25.27gを加えて希釈した後、この希釈溶液をメタノール中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂22.31gを得た(式(5−1)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は3400であった。
【化10】






【0080】
<合成例24>
フェニル−1−ナフチルアミン9.52g、1−ピレンカルボキシアルデヒド10.00g、メタンスルホン酸0.83gに1,4−ジオキサン15.27g、トルエン15.27gを加え、窒素雰囲気下、還流状態で19時間撹拌した。反応液にテトラヒドロフラン16.96gを加えて希釈した後、この希釈溶液をメタノール中に滴下し、生成したノボラック樹脂を再沈殿させた。得られた樹脂を濾過、洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂16.97gを得た(式(5−2)の樹脂を含む)。尚、GPCより標準ポリスチレン換算で測定されるこのノボラック樹脂の重量平均分子量は1500であった。
【化11】






【0081】
<実施例1>
合成例11で得たノボラック樹脂2.43g、3,3’,5,5’−テトラキス(メトキシメチル)−4,4’−ジヒドロキシビフェニル(製品名:TMOM−BP、本州化学工業(株)製)0.49g、ピリジニウム−p−トルエンスルホナート0.07g、界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R−30、フッ素系界面活性剤)0.01gをプロピレングリコールモノメチルエーテル18.90g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.10gに溶解させ、リソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0082】
<実施例2>
合成例11で得られたノボラック樹脂を、合成例12で得られたノボラック樹脂に変えた以外は実施例1と同様に行った。
<実施例3>
合成例11で得られたノボラック樹脂を、合成例13で得られたノボラック樹脂に変えた以外は実施例1と同様に行った。
<実施例4>
合成例11で得られたノボラック樹脂を、合成例14で得られたノボラック樹脂に変えた以外は実施例1と同様に行った。
<実施例5>
合成例11で得られたノボラック樹脂を、合成例15で得られたノボラック樹脂に変えた以外は実施例1と同様に行った。
<実施例6>
合成例11で得られたノボラック樹脂を、合成例16で得られたノボラック樹脂に変えた以外は実施例1と同様に行った。
【0083】
<実施例7>
合成例11で得られたノボラック樹脂を、合成例17で得られたノボラック樹脂に変えた以外は実施例1と同様に行った。
<実施例8>
合成例11で得られたノボラック樹脂を、合成例18で得られたノボラック樹脂に変えた以外は実施例1と同様に行った。
<実施例9>
合成例11で得られたノボラック樹脂を、合成例19で得られたノボラック樹脂に変えた以外は実施例1と同様に行った。
<実施例10>
合成例11で得られたノボラック樹脂を、合成例20で得られたノボラック樹脂に変えた以外は実施例1と同様に行った。
<実施例11>
合成例11で得られたノボラック樹脂を、合成例21で得られたノボラック樹脂に変えた以外は実施例1と同様に行った。
<実施例12>
合成例11で得られたノボラック樹脂を、合成例22で得られたノボラック樹脂に変えた以外は実施例1と同様に行った。
【0084】
<比較例1>
合成例23で得たノボラック樹脂2.43g、3,3’,5,5’−テトラキス(メトキシメチル)−4,4’−ジヒドロキシビフェニル(製品名:TMOM−BP、本州化学工業(株)製)0.49g、ピリジニウム−p−トルエンスルホナート0.07g、界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R−30、フッ素系界面活性剤)0.01gをプロピレングリコールモノメチルエーテル2.70g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.10g、シクロヘキサノン16.20gに溶解させ、リソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物を調製した。
<比較例2>
合成例23で得られたノボラック樹脂を、合成例24で得られたノボラック樹脂に変えた以外は比較例1と同様に行った。
【0085】
(溶解性試験)
実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2で調製した各レジスト下層膜形成組成物に用いられる成分(樹脂)を、代表的なレジスト溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、シクロヘキサノン(CYH)に1質量部(レジスト下層膜形成組成物の固形分)/10質量部(レジスト溶剤)の割合となるように混合し、混合液中からノボラック樹脂に由来するレジスト下層膜形成組成物の成分の析出が確認できるか否かを観察した。析出が観察されなかった場合は、レジスト下層膜形成組成物の成分の溶解性を「良好」とし、析出によって沈殿物の生成や混合液に濁りが観察された場合は、レジスト下層膜形成組成物の成分の溶解性を「不良」とした。このレジスト下層膜形成組成物の成分の溶解性試験の結果を表1に示す。
【表1】






【0086】
表1の結果より、実施例1乃至12のレジスト下層膜形成組成物は、比較例1及び比較例2よりも代表的なレジスト溶剤への溶解性が高いことが確認された。
なお、上記結果は実施例1乃至実施例12、比較例1乃至比較例2に用いられている成分(樹脂)が、レジスト下層膜形成組成物として基板に被覆し乾燥する前の成分の溶剤への溶解性を示す試験結果であって、当該レジスト下層膜形成組成物を基板に被覆し乾燥後は、レジスト溶剤への再溶解性はない。
【0087】
(昇華物測定試験)
昇華物量の測定は国際公開第2007/111147号パンフレットに記載されている昇華物量測定装置を用いて実施した。まず、直径4インチのシリコンウェハーに実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2で調製したレジスト下層膜形成組成物をスピンコーターにて、膜厚90nmとなるように塗布した。レジスト下層膜が塗布されたウェハーをホットプレートが一体化した前記昇華物量測定装置にセットし、240℃で60秒間ベークした際に発生する昇華物をQCM(Quartz Crystal Microbalance)センサー、すなわち電極が形成された水晶振動子に捕集した。QCMセンサーは、水晶振動子の表面(電極:AlSi)に昇華物が付着するとその質量に応じて水晶振動子の周波数が変化する(下がる)性質を利用して、微量の質量変化を測定することが可能である。得られた周波数変化は測定に使用した水晶振動子の固有値から質量単位(グラム)に換算し、レジスト下層膜が塗布されたウェハー1枚当たりの昇華物量を定量した。当該装置から定量した実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2の昇華物量を比較例1の昇華物量で除した昇華物量比(比較例1の昇華物量を1と規格化した際の相対比)を表2に示す。
【表2】






【0088】
表2の結果より、実施例1乃至実施例12のレジスト下層膜形成組成物から発生する昇華物量は、比較例1及び比較例2のレジスト下層膜形成組成物から発生する昇華物量よりも少ない。すなわち、実施例1乃至実施例12のレジスト下層膜形成組成物は比較例1及び比較例2のレジスト下層膜形成組成物と比較して、発生する昇華物量を効果的に抑制することができる。
【0089】
(パターンの曲がり耐性試験)
まず、直径8インチの膜厚300nmの酸化ケイ素被膜付きシリコンウエハー上に実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2で調製した各レジスト下層膜形成組成物をスピンコーターにて塗布し、ホットプレート上で400℃2分間焼成して、膜厚200nmとなるようにレジスト下層膜を形成した。次に、レジスト下層膜上にシリコンハードマスク形成組成物(ポリオルガノシロキサンを有機溶剤に溶解した組成物)を塗布し、240℃で1分間焼成して膜厚45nmのシリコンハードマスク層を形成した。さらに、ArFエキシマレーザー用のレジスト溶液を塗布し、100℃で1分間焼成して膜厚120nmのレジスト層を形成した。マスクを用いてArFエキシマレーザー(波長193nm)で露光し、露光後、105℃で1分間焼成して加熱(PEB)を行った後、アルカリ現像してレジストパターンを得た。その後、フッ素系ガス(成分はCF)でドライエッチングを行い、レジストパターンをハードマスクに転写した。さらに、酸素系ガス(成分はO/CO)でドライエッチングを行い、形成されたハードマスクのパターンを本レジスト下層膜に転写した。その後、フッ素系ガス(成分はC/C/O/Ar)でドライエッチングを行い、本レジスト下層膜のパターンを酸化ケイ素被膜に転写した。尚、レジストパターン及び段階的に転写されたパターン形状は測長走査型電子顕微鏡にて観察した。このような段階的なエッチング工程におけるレジストパターンの転写では、酸化ケイ素被膜加工時にパターン幅が縮小するにしたがいウイグリング(wiggling)と呼ばれる不規則なパターンの曲がりが発生し、忠実なパターン転写に基づく基板加工が困難となる。そこで、このような酸化ケイ素被膜のパターン曲がりの発生を電子顕微鏡にて観察することにより、実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2におけるレジスト下層膜形成組成物のパターン曲がり耐性を評価した。すなわち、パターンの曲がりが発生し始める直前のレジストパターン形成後のパターン幅(加工限界線幅)を測定することで、パターンの曲がり耐性を評価することができる。表3にレジストパターン形成語の加工限界線幅の測定値を示す。尚、この加工限界線幅が小さい程、レジスト下層膜形成組成物はパターンの曲がりを効果的に抑制することができるため、微細な基板加工が可能となる。
【表3】






【0090】
表3の結果より、実施例1乃至12のレジスト下層膜形成組成物は、比較例1及び比較例2よりもパターンの曲がりが発生する加工限界線幅が小さいため、より微細な基板加工が可能となる。すなわち、実施例1乃至実施例12のレジスト下層膜形成組成物は、高いパターンの曲がり耐性を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
上述したとおり、本発明の多層膜によるリソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜材料は、高いドライエッチング耐性と反射防止膜機能を有するだけでなく、レジスト溶剤への溶解性が高いためにスピンコート性に優れ、レジスト下層膜形成組成物の焼成工程において発生する昇華成分が少なく、ドライエッチング工程によるレジスト下層膜のウイグリング(不規則なパターンの曲がり)の発生を抑制することでより微細な基板加工が達成される。