特許第6332721号(P6332721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6332721
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】活性エステル樹脂とその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/02 20060101AFI20180521BHJP
   C08G 63/133 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20180521BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C08G59/02
   C08G63/133
   H01L23/30 R
   H05K1/03 610L
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-564144(P2017-564144)
(86)(22)【出願日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】JP2017022998
【審査請求日】2017年12月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-134227(P2016-134227)
(32)【優先日】2016年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-140421(P2016-140421)
(32)【優先日】2016年7月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰
(72)【発明者】
【氏名】矢本 和久
(72)【発明者】
【氏名】河崎 顕人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 竜也
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/165317(WO,A1)
【文献】 特開昭61−243822(JP,A)
【文献】 特開2001−254000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/02
C08G 63/133
H01L 23/29
H01L 23/31
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基含有化合物(A)、芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(b)がメチレン基で結節された分子構造を有するフェノール樹脂(B)、及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(C)を必須の反応原料とし、前記フェノール性水酸基含有化合物(A)が有する水酸基のモル数(AOH)と前記フェノール樹脂(B)が有する水酸基のモル数(BOH)との割合[(AOH)/(BOH)]が10/90〜75/25となる割合であることを特徴とする活性エステル樹脂。
【請求項2】
前記フェノール樹脂(B)が、前記芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(b)とホルムアルデヒドとの重縮合物である請求項1記載の活性エステル樹脂。
【請求項3】
前記芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(b)が有する炭化水素基が、炭素原子数1〜12の脂肪族炭化水素基又はアリール基である請求項1記載の活性エステル樹脂。
【請求項4】
前記芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(b)が、フェノール性水酸基のパラ位に炭化水素基を有するものである請求項1記載の活性エステル樹脂。
【請求項5】
前記フェノール性水酸基含有化合物(A)と前記芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(b)とが同一化合物である請求項1記載の活性エステル樹脂。
【請求項6】
前記フェノール性水酸基含有化合物(A)と、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(C)とのエステル化合物(AC)を含有する請求項1記載の活性エステル樹脂。
【請求項7】
前記エステル化合物(AC)の含有量が0.5〜30%の範囲である請求項記載の活性エステル樹脂。
【請求項8】
請求項1〜の何れか一つに記載の活性エステル樹脂と、硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項10】
請求項記載の硬化性樹脂組成物を用いたプリント配線基板。
【請求項11】
請求項記載の硬化性樹脂組成物を用いた半導体封止材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物における耐熱性や耐吸湿性が高く、誘電特性にも優れる活性エステル樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板及び半導体封止材料に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や多層プリント基板等に用いられる絶縁材料の技術分野では、各種電子部材の薄型化や信号の高速化及び高周波数化に伴い、これらの市場動向に合わせた新たな樹脂材料の開発が求められている。樹脂材料に求められる性能としては、耐熱性や耐吸湿性等の基本的な性能はもちろんのこと、信号の高速や高周波数化が進む中、発熱等によるエネルギー損失を低減させるために、硬化物における誘電率と誘電正接との両値が低いことも重要な性能の一つである。
【0003】
硬化物における誘電率と誘電正接とが比較的低い樹脂材料として、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂とα−ナフトールとをフタル酸クロライドでエステル化して得られる活性エステル樹脂をエポキシ樹脂の硬化剤として用いる技術が知られている(下記特許文献1参照)。特許文献1記載の活性エステル樹脂は、フェノールノボラック樹脂のような従来型の硬化剤を用いた場合と比較すると、硬化物における誘電率や誘電正接が低い特徴を有するが、昨今の市場要求を満たすものではなかった。また、硬化物のガラス転移温度で評価される耐熱性についても、更なる向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−169021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物における耐熱性や耐吸湿性が高く、誘電特性にも優れる活性エステル樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板及び半導体封止材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(b)がメチレン基で結節された分子構造を有するフェノール樹脂を必須の反応原料とする活性エステル樹脂は、硬化物における耐熱性や耐吸湿性が高く、誘電特性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、フェノール性水酸基含有化合物(A)、芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(b)がメチレン基で結節された分子構造を有するフェノール樹脂(B)、及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(C)を必須の反応原料とすることを特徴とする活性エステル樹脂に関する。
【0008】
本発明は更に、前記活性エステル樹脂と、硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物の硬化物に関する。
【0010】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物を用いてなるプリント配線基板に関する。
【0011】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物を用いてなる半導体封止材料に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化物における耐熱性や耐吸湿性が高く、誘電特性にも優れる活性エステル樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板及び半導体封止材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1で得られた活性エステル樹脂(1)のGPCチャート図である。
図2図2は、実施例2で得られた活性エステル樹脂(2)のGPCチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性エステル樹脂はフェノール性水酸基含有化合物(A)、芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(b)がメチレン基で結節された分子構造を有するフェノール樹脂(B)、及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(C)を必須の反応原料とすることを特徴とする。
【0015】
前記フェノール性水酸基含有化合物(A)は、芳香環上に水酸基を有する芳香族化合物であれば何れの化合物でもよく、その他の具体構造は特に限定されない。本発明では、フェノール性水酸基含有化合物(A)は一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。前記フェノール性水酸基含有化合物(A)は、具体的には、フェノール、ナフトール、アントラセノール、これらの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物が挙げられる。芳香核上の置換基は、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0016】
これらの中でも、硬化物における耐熱性や吸湿性が高く、誘電特性にも優れる活性エステル樹脂となることから、芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(a)が好ましい。また、芳香環上の炭化水素基の数は1又は2であることが好ましい。前記フェノール化合物(a)が芳香環上に有する炭化水素基は、前記脂肪族炭化水素基や、前記アリール基、前記アラルキル基等が挙げられるが、中でも、硬化物における耐熱性や吸湿性が高く、誘電特性にも優れる活性エステル樹脂となることから、脂肪族炭化水素基又はアリール基であることが好ましく、その炭素原子数は1〜12の範囲であることが好ましい。更に、前記脂肪族炭化水素基は分岐構造を有することがより好ましく、この場合、炭素原子数は3〜12の範囲であることが好ましい。分岐構造を有する脂肪族炭化水素基の具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ターシャリーペンチル基、ターシャリーオクチル基等が挙げられる。
【0017】
前記フェノール樹脂(B)について、芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(b)が有する炭化水素基は、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。中でも、硬化物における耐熱性や耐吸湿性が高く、誘電特性にも優れる活性エステル樹脂となることから、前記炭化水素基は脂肪族炭化水素基又はアリール基であることが好ましく、その炭素原子数は1〜12の範囲であることが好ましい。また、芳香環上の炭化水素基の数は1又は2であることが好ましい。更に、前記脂肪族炭化水素基は分岐構造を有することがより好ましく、この場合、炭素原子数は3〜12の範囲であることが好ましい。分岐構造を有する脂肪族炭化水素基の具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ターシャリーペンチル基、ターシャリーオクチル基等が挙げられる。
【0018】
前記芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(b)がメチレン基で結節された分子構造を有するフェノール樹脂(B)の具体例としては、例えば、前記芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(b)とホルムアルデヒドとの重縮合物が挙げられる。
【0019】
前記フェノール化合物(b)とホルムアルデヒドとの重縮合物は、例えば、通常のフェノールノボラック樹脂の製造と同様の方法にて製造することができる。具体的には、前記フェノール化合物(b)とホルムアルデヒドとを、酸触媒の存在下、100〜200℃の温度条件下で反応させる方法が挙げられる。反応終了後は所望に応じて、過剰量の前記フェノール化合物(b)を留去するなどしても良い。また、反応混合中の未反応フェノール化合物をそのままフェノール性水酸基含有化合物(A)として用いても良い。
【0020】
前記方法で用いるホルムアルデヒドは、ホルマリン溶液として用いても、パラホルムアルデヒドとして用いてもよい。前記フェノール化合物(b)と前記アルデヒドとの反応割合は、反応を制御しやすいことから、フェノール化合物(b)1モルに対しホルムアルデヒドが0.01〜0.9モルの範囲となる割合であることが好ましい。
【0021】
前記酸触媒は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これら酸触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。
【0022】
前記フェノール化合物(b)とホルムアルデヒドとの反応は、必要に応じて有機溶剤中で行っても良い。ここで用いる有機溶剤は、前記温度条件下で使用可能な有機溶剤であれば特に限定されるものではなく、具体的には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これら有機溶剤を用いる場合には反応原料の総質量に対し10〜500質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0023】
前記フェノール化合物(b)とホルムアルデヒドとの反応では、得られるノボラック型樹脂の着色を抑制する目的で、各種の酸化防止剤や還元剤を用いても良い。前記酸化防止剤は、例えば、2,6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール化合物、2価の硫黄化合物、3価のリン原子を含む亜リン酸エステル化合物等が挙げられる。前記還元剤は、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイト、これらの塩や亜鉛等が挙げられる。
【0024】
反応終了後は、反応混合物を中和処理或いは水洗した後、未反応の反応原料や副生成物等を留去するなどして、目的のフェノール樹脂(B)を得ることができる。
【0025】
前記フェノール樹脂(B)の水酸基当量は、溶剤溶解性が高く、様々な用途に利用しやすい活性エステル樹脂となることから、110〜250g/当量の範囲であることが好ましい。また、前記フェノール樹脂(B)の軟化点は、40〜130℃の範囲であることが好ましい。
【0026】
前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(C)は、前記フェノール性水酸基含有化合物(A)及び前記フェノール樹脂(B)が有するフェノール性水酸基と反応してエステル結合を形成し得る芳香族化合物であれば、具体構造は特に限定されず、何れの化合物であっても良い。具体例としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸、トリメリット酸等のベンゼントリカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、これらの酸ハロゲン化物、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した化合物等が挙げられる。酸ハロゲン化物は、例えば、酸塩化物、酸臭化物、酸フッ化物、酸ヨウ化物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、反応活性が高く硬化性に優れる活性エステル樹脂となることから、イソフタル酸やテレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物が好ましい。
【0027】
前記フェノール性水酸基含有化合物(A)、前記フェノール樹脂(B)、及び前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(C)の反応は、例えば、アルカリ触媒の存在下、40〜65℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により行うことができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。また、反応終了後は所望に応じて、水洗や再沈殿等により反応生成物を精製しても良い。
【0028】
前記アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、3.0〜30%程度の水溶液として用いても良い。中でも、触媒能の高い水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
【0029】
前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。
【0030】
前記フェノール性水酸基含有化合物(A)、前記フェノール樹脂(B)、及び前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(C)の反応割合は、所望の分子設計に応じて適宜変更することができる。中でも、溶剤溶解性が高く、様々な用途に利用しやすい活性エステル樹脂となることから、前記フェノール性水酸基含有化合物(A)が有する水酸基のモル数(AOH)と前記フェノール樹脂(B)が有する水酸基のモル数(BOH)との割合[(AOH)/(BOH)]が10/90〜75/25となる割合であることが好ましく、20/80〜50/50となる割合であることがより好ましい。また、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(C)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記フェノール性水酸基含有化合物(A)が有する水酸基のモル数と前記フェノール樹脂(B)が有する水酸基のモル数との合計が0.9〜1.1モルとなる割合であることが好ましい。
【0031】
本発明の活性エステル樹脂は、前記フェノール性水酸基含有化合物(A)と、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(C)とのエステル化合物(AC)を含有していても良い。前記エステル化合物(AC)は、例えば、前記フェノール性水酸基含有化合物(A)、前記フェノール樹脂(B)、及び前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(C)の反応割合を調製することにより、活性エステル樹脂の一成分として製造することができる。
【0032】
前記エステル化合物(AC)の具体構造の一例として、例えば、前記フェノール性水酸基含有化合物(A)として芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(a)を用い、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(C)としてベンゼンジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物を用いた場合の構造例を下記構造式(1)に示す。なお、下記構造式(1)は前記エステル化合物(AC)の具体構造の一例に過ぎず、その他の分子構造を有するジエステル化合物を排除するものではない。
【0033】
【化1】
(式中Rはそれぞれ独立して炭化水素基を表し、ベンゼン環上のどの炭素原子に結合していても良く、nは0又は1〜5の整数である。)
【0034】
活性エステル樹脂が前記エステル化合物(AC)を含有する場合、その含有量は活性エステル樹脂の40%未満であることが好ましく、0.5〜30%の範囲であることがより好ましい。
【0035】
活性エステル樹脂中の前記エステル化合物(AC)の含有量は、下記条件で測定されるGPCチャート図の面積比から算出される値である。
【0036】
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0037】
本発明の活性エステル樹脂の官能基当量は、硬化収縮率が低く、かつ、硬化性にも優れる活性エステル樹脂となることから、150〜350g/当量の範囲であることが好ましい。なお、本発明において活性エステル樹脂中の官能基とは、活性エステル樹脂中のエステル結合部位とフェノール性水酸基とのことを言う。また、活性エステル樹脂の官能基当量は、反応原料の仕込み量から算出される値である。
【0038】
本発明の活性エステル樹脂の軟化点は、JIS K7234に基づいて測定される値で85〜160℃の範囲であることが好ましく、100〜150℃の範囲であることがより好ましい。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前述の活性エステル樹脂と硬化剤とを含有する。前記硬化剤は本発明の活性エステル樹脂と反応し得る化合物であれば良く、特に限定なく様々な化合物が利用できる。硬化剤の一例としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0040】
前記エポキシ樹脂は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0041】
前記硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合、本発明の活性エステル樹脂以外に、その他のエポキシ樹脂用硬化剤を併用してもよい。ここで用いるその他のエポキシ樹脂用硬化剤は、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン化合物;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、テトラフェノールエタン型樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等のフェノール樹脂等が挙げられる。
【0042】
本発明の活性エステル樹脂、エポキシ樹脂、及びその他のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基の合計1モルに対して、前記活性エステル樹脂及びその他のエポキシ樹脂用硬化剤中の官能基の合計が0.7〜1.5モルとなる割合であることが好ましい。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物は、この他、シアン酸エステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレートに代表されるアリル基含有樹脂、ポリリン酸エステルやリン酸エステル−カーボネート共重合体等を含有しても良い。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物は必要に応じて硬化促進剤、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0045】
前記硬化促進剤は、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。中でも、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)、イミダゾール化合物では2−エチル−4−メチルイミダゾール、ピリジン化合物では4−ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0046】
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性樹脂組成物中0.1〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0047】
前記無機質充填材は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を半導体封止材料用途に用いる場合などに配合される。前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部中、0.5〜95質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0048】
この他、本発明の硬化性樹脂組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0049】
以上詳述した通り、本発明の活性エステル樹脂は、硬化物における耐熱性や耐吸湿性が高く、誘電特性にも優れる特徴を有する。この他、汎用有機溶剤への溶解性や、エポキシ樹脂との硬化性等、樹脂材料に求められる一般的な要求性能も十分に高いものであり、プリント配線基板や半導体封止材料、レジスト材料等の電子材料用途の他、塗料や接着剤、成型品等の用途にも広く利用することができる。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物をプリント配線基板用途やビルドアップ接着フィルム用途に用いる場合、一般には有機溶剤を配合して希釈して用いることが好ましい。前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶剤の種類や配合量は硬化性樹脂組成物の使用環境に応じて適宜調整できるが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、不揮発分が40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。ビルドアップ接着フィルム用途では、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、不揮発分が30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0051】
また、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてプリント配線基板を製造する方法は、例えば、硬化性組成物を補強基材に含浸し硬化させてプリプレグを得、これと銅箔とを重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。前記補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。硬化性樹脂組成物の含浸量は特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。
【0052】
本発明の硬化性樹脂組成物を半導体封止材料用途に用いる場合、一般には無機質充填材を配合することが好ましい。本発明の活性エステル樹脂と硬化剤、無機質充填剤、及びその他の任意成分を含有する半導体封止材料は、例えば、押出機、ニーダー、ロール等を用いて配合物を混合して調製することができる。得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50〜200℃の温度条件下で2〜10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【実施例】
【0053】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。実施例中の「部」及び「%」の記載は、特に断わりのない限り質量基準である。なお、本実施例におけるGPC測定条件は以下の通りである。
【0054】
◆GPCの測定条件
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0055】
実施例1 活性エステル樹脂(1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、パラターシャリブチルフェノール234.3質量部、トルエン52.8部、37質量%ホルマリン水溶液52.8質量部、49%水酸化ナトリウム4.8質量部を仕込み、室温から75℃まで攪拌しながら75℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌して反応させた。反応終了後、第1リン酸ソーダ7.1質量部を添加して中和し、トルエン363.2質量部加え、水121.1質量部で3回洗浄した。加熱減圧条件下で乾燥させ、未反応のパラターシャリブチルフェノールとフェノール樹脂(B−1)とを含む混合物(1)234.8質量部を得た。混合物(1)の水酸基当量は155g/当量であった。
【0056】
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、イソフタル酸クロリド141.4質量部、トルエン1000質量部を仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで先で得た混合物(1)217.0質量部を仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.4質量部を溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液280質量部を3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水307.3質量部を加えて約15分間撹拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、加熱減圧条件下で乾燥させ、活性エステル樹脂(1)298.1質量部を得た。活性エステル樹脂(1)の官能基当量は220g/当量、JIS K7234に基づいて測定した軟化点は132℃であった。また、GPCチャート図から算出される活性エステル樹脂(1)中のビス(パラターシャリーブチルフェニル)イソフタレートの含有量は10.1%であった。
【0057】
実施例2 活性エステル樹脂(2)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、パラターシャリーオクチルフェノール321.9質量部、トルエン52.8質量部、37質量%ホルマリン水溶液52.8質量部、49%水酸化ナトリウム6.6質量部を仕込み、室温から75℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌して反応させた。反応終了後、第1リン酸ソーダ9.7質量部を添加して中和し、トルエン494.6質量部加え、水164.9質量部で3回洗浄した。加熱減圧条件下で乾燥させ、未反応のパラターシャリオクチルフェノールとフェノール樹脂(B−2)とを含む混合物(2)319.8質量部得た。混合物(2)の水酸基当量は211g/当量であった。
【0058】
実施例1において混合物(1)217.0質量部の代わりに混合物(2)295.4質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、活性エステル樹脂(2)374.8質量部を得た。活性エステル樹脂(2)の官能基当量は276g/当量、JIS K7234に基づいて測定した軟化点は101℃であった。また、GPCチャート図から算出される活性エステル樹脂(2)中のビス(パラターシャリーオクチルフェニル)イソフタレートの含有量は14.8%であった。
【0059】
比較製造例1 活性エステル樹脂(1’)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ジシクロペンタジエンとフェノールとの付加反応物(水酸基当量165g/当量、軟化点85℃)165質量部、1−ナフトール72質量部、及びトルエン630質量部を仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、イソフタル酸クロライド152質量部を仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液210gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間撹拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、加熱減圧条件下でトルエン等を留去し、活性エステル樹脂(1’)を得た。活性エステル樹脂(1’)の官能基当量は223g/当量、JIS K7234に基づいて測定した軟化点は150℃であった。
【0060】
実施例3、4及び比較例1
活性エステル樹脂、エポキシ樹脂(*)、ジメチルアミノピリジンを下記表1に示す割合で配合し、メチルエチルケトンで不揮発分を58質量%に調整して、硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物について、下記要領で各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
エポキシ樹脂(*):ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON HP−7200H」、エポキシ当量277g/当量)
【0061】
積層板の作成
下記条件で積層板を作成した。
基材:日東紡績株式会社製ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
プライ数:6
プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、40kg/cmで1.5時間
成型後板厚:0.8mm
【0062】
ガラス転移温度の測定
先で得た積層板を幅5mm、長さ54mmのサイズに切り出し、これを試験片として、粘弾性測定装置(レオメトリック社製「固体粘弾性測定装置RSAII」)を用い、レクタンギュラーテンション法、周波数1Hz、昇温速度3℃/分の測定条件で、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
【0063】
誘電率及び誘電正接の測定
加熱真空乾燥後、23℃、湿度50%の室内に24時間保管した積層板について、JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」を用い、1GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
【0064】
耐吸湿性の評価
先で得た積層板を幅25mm、長さ75mmのサイズに切り出し、これを試験片として、
85℃/85%RHの雰囲気下に168時間放置し、吸湿試験を行った。試験前後の試験片の質量を測定し、その重量変化率を吸湿率として評価した。
【0065】
【表1】
【要約】
硬化物における耐熱性や耐吸湿性が高く、誘電特性にも優れる活性エステル樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板及び半導体封止材料を提供すること。フェノール性水酸基含有化合物(A)、芳香環上に一つ乃至複数の炭化水素基を有するフェノール化合物(b)がメチレン基で結節された分子構造を有するフェノール樹脂(B)、及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(C)を必須の反応原料とすることを特徴とする活性エステル樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板及び半導体封止材料。
図1
図2