特許第6333090号(P6333090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6333090-分割型導波管の防水構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333090
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】分割型導波管の防水構造
(51)【国際特許分類】
   H01P 3/12 20060101AFI20180521BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   H01P3/12
   H01P11/00 101
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-135727(P2014-135727)
(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公開番号】特開2016-15565(P2016-15565A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098372
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 保人
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 隆
【審査官】 米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−015501(JP,A)
【文献】 特開平04−151903(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0214751(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0144392(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/12
H01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波管を分割してなる複数の分割体と、
この複数の分割体のそれぞれの衝合面に導波路に沿って設けられた第1の溝と、
上記各分割体の端部の導波路開口の外周に設けられ、上記第1の溝と連通する第2の溝と、
上記第1の溝及び第2の溝のそれぞれに嵌合する防水用パッキンと、を備え、
上記第2の溝の幅を上記第1の溝の幅よりも大きくしてなる分割型導波管の防水構造。
【請求項2】
上記第1の溝の防水用パッキンと上記第2の溝の防水用パッキンを一体に成形したことを特徴とする請求項1記載の分割型導波管の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分割型導波管の防水構造、特に連結部の防水において高い信頼性が得られる構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高周波のモード変換や周波数変換のための回路として、内部に特殊な構造体を採用した導波管があり、これは例えば連続状若しくは階段状の突起又は薄板状の構造体を導波管の内部に形成することから、導波管を分割した分割型導波管が採用される。
【0003】
即ち、上記の特殊な構造体の中には、導波管の中に外部から挿入し、固定できるものも存在するが、組立における寸法誤差が周波数特性上容認できないような場合は、導波管を2つに分割し、これら分割体(分割片)の両方又は一方の導波管内壁部分に直接精密加工を施した後、両分割体を衝合し固定する方式が採用される。この固定は、溶接やボルトとナットの螺合等で行われる。
【0004】
このような分割型導波管の一例として、コルゲート導波管型ポラライザがあり、これは、下記特許文献1のように、コルゲートと呼ばれる連続した複数の矩形状突起を導波管の管軸方向にわたって設けるものである。このような連続した複数の突起は、導波路の中に配置され、ダイカスト等で導波管内に一体的に作ることは不可能であるため、分割型導波管とされることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−006237号公報
【特許文献2】WO2008/108388 A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、分割型導波管は、分割体の衝合部及び分割型導波管の他の部材への接続部が溶接、ボルト・ナット等で固定されるが、その固定の際には、衝合部及び接続部の防水を図ることが必要となり、この防水においては、防水効果の高い構造にすることが望ましい。
【0007】
即ち、分割型導波管の組立てにおいて両分割体を溶接して固定する場合は、その溶接後に突起形状を再加工等により変更したり微調整したりすることが困難であり、再加工や調整のためのカットアンドトライが一切できないことは望ましくない。そのため、分割型導波管の連結を解除し易い固定方法、例えばボルトとナットの螺合で固定し、再加工や調整が容易となるようにすることが好ましく、このような固定方法では、防水効果の高い構造とすることが必要となる。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、衝合部及び接続部において高い防水効果が得られる分割型導波管の防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の分割型導波管の防水構造は、導波管を分割してなる複数の分割体と、この複数の分割体のそれぞれの衝合面に導波路に沿って設けられた第1の溝と、上記各分割体の端部の導波路開口の外周に設けられ、上記第1の溝と連通する第2の溝と、上記第1の溝及び第2の溝のそれぞれに嵌合する防水用パッキンと、を備え、上記第2の溝の幅を上記第1の溝の幅よりも大きくしてなることを特徴とする。
請求項2の発明は、上記第1の溝の防水用パッキンと上記第2の溝の防水用パッキンを一体に成形したことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、第1の溝と第2の溝に取り付けられたパッキンによって防水を図ることができ、また第2の溝に配置されたパッキン(例えばOリング)は、この第2の溝と連通する第1の溝も押えることになるが、この第1の溝の幅が第2の溝の幅より小さいので、Oリングの変形により第1の溝にもしっかりと密着することになり、防水性の高い状態が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分割型導波管の防水構造によれば、第1と第2の両方の溝に配置されたパッキンにより、また第2の溝と第1の溝の連通部でもパッキンが確実に密着することにより、分割体の衝合部及び分割型導波管の接続部において高い防水効果が得られる。これにより、分割体の組立て・解除が簡単になる固定方法を採用して、導波管内部のコルゲート等の構造物の再加工や調整が容易になるという効果が得られる。
また、上述の第1の溝の防水用パッキンと第2の溝の防水用パッキンを一体にすることにより、別体とする場合に比べて防水効果を高くすることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る分割型導波管及びその防水構造を示す斜視図である。
図2】実施例の防水用パッキンの構成を示す斜視図である。
図3】実施例の分割型導波管をフランジ側から見たもので、図(A)は全体図、図(B)は溝部分の拡大図、図(C)は幅を同一とした溝部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、実施例の分割型導波管とその防水構造が示され、図2に、防水用パッキンが示されており、実施例はコルゲート型ポラライザである。図1において、分割型導波管は、円形導波管であり、円周方向で2つになるように分割された分割体(片)1,2からなり、この分割体1の内部の導波路上部壁と、分割体2の内部の導波路下部壁に、コルゲート3が形成される。
【0014】
上記の分割体1,2を連結するための導波路左右の衝合面に、導波路に沿って矩形(円形でもよい)の第1の溝4a,4bが形成される。また、この分割体1,2の両端には、継手としてのフランジ5が設けられ、このフランジ5の導波路開口の外側の面に環状の第2の溝6a,6bが形成される。そして、上記第1の溝4a,4bに、径方向断面が矩形(円形でもよい)となるパッキン7が挿入され、上記第2の溝6a,6bに、径方向断面が円形となるOリング8が挿入される。
【0015】
実施例では、図2に示されるように、上記パッキン7とOリング8が連結される状態で一体に成形される。なお、上記第2の溝6a,6bは、径方向の断面が半円状であり、分割導波管が接続される他の部材のフランジに形成された半円状の溝等が第2の溝6a,6bに対向することで、Oリング8を押圧するように構成される。
【0016】
図3に、第1の溝と第2の溝の関係が示されており、分割体1と2を連結したとき、第1の溝4a,4bによって第1の溝4が形成され、第2の溝6a,6bによって環状の第2の溝6が形成されるが、実施例では、第2の溝6の幅dを第1の溝4の幅dよりも大きくする(d<d)。
【0017】
このような実施例によれば、分割体1,2の衝合面に形成された第1の溝4a,4bにパッキン7を嵌め込み、またフランジ5に形成された第2の溝6a,6bにOリング8を嵌め込みながら、ボルトとナット等の結合により、分割体1,2が連結され、またフランジ5を他の部材のフランジ等の接続部にボルトとナット等で結合することにより、導波管が回路内に接続・配置される。
【0018】
上記のパッキン7は、第1の溝4(4a,4b)に挟まれ、上記Oリング8は、第2の溝6(6a,6b)と他の部材の溝等に挟まれて圧縮されるが、これらパッキン7とOリング8は、圧縮により変形し最適なつぶし率が得られるようなサイズとされる。特に、Oリング8は、装着の便宜を考慮すれば、やや小さめの径とし、引っ張る力を加えて溝に嵌め込む程度がよい。
【0019】
そして、実施例によれば、図2(A),(B)に示されるように、第2の溝6の幅dが第1の溝4の幅dよりも大きくなっているため、連結時のフランジ面からの圧縮力によりOリング8の潰し率を全周にわたり均一に保つことができる。即ち、第2の溝6の中に小さ目の第1の溝4の孔が開いた構造となるため、圧縮応力が不均一になることなく、第1の溝4への密着度が高くなり、フランジ連結部での防水性能、信頼性を良好にすることができる。
【0020】
これに対し、例えば図2(C)に示されるように、第1の溝4の幅dを第2の溝6の幅dと同じ(d=d)にした場合を考えると、この場合は、第1の溝4でのOリング8の潰し率(変形)が小さくなり、圧縮応力も不均一となり、密着度が低くなる。
【0021】
更に、実施例では、パッキン7とOリング8が一体となっているので、第1の溝4と第2の溝6との連通部においてパッキン7とOリング8の間に隙間ができず、溝に対するパッキン7とOリング8の密着度が高くなることで、防水が良好に行われる。
【0022】
実施例では、コルゲート型ポラライザに適用したものを示したが、その他の構造の分割型導波管に適用することが可能である。
また、2つに分割した例を示したが、3つ等に分割する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0023】
1,2…分割体、 4,4a,4b…第1の溝、
5…フランジ、 6,6a,6b…第2の溝、
7…パッキン、 8…Oリング。
図1
図2
図3