(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0005】
適当な触媒を用いる酸化的脱水素化によるα,β-不飽和カルボニル化合物の調製は、当業者に知られており、広く文献に記載されている。
【0006】
したがって、DE-B-2020865には、α,β-不飽和カルボニル化合物を調製するための方法が記載されている。この方法においては、記載によれば、合金及び金属化合物、特に遷移元素の一部の金属酸化物は、脱水素化触媒として使用することができる。さらに、この文献は、それらの触媒は、純粋な形態又は混合触媒の形態で、担体物質を用いて又は用いずに使用することができると述べられている。酸化亜鉛、酸化カドミウム及び酸化マンガン及び金属Cu、Ag及び/又はZnを含む混合触媒も特に適当であると言及されている。この触媒の製造に関するそれ以上の情報は、この文献には見出されない。
【0007】
EP-A881206には、シェル&チューブ型反応器における不飽和脂肪族アルデヒドの連続した工業的調製方法が記載されている。この方法のために好ましい触媒は、担体の量に基づいて0.1から20重量%の平滑な耐擦過性のシェルの形態の金属銀の層でコーティングされた不活性担体材料の球を含む銀担持触媒であると述べられている。さらに、コーティングされた触媒球の最大直径の反応管の内径に対する特定の比が、好ましくは守られるべきである。
【0008】
DE-A2715209には、3-アルキルブテン-1-アールを調製するための方法が開示されている。この方法においては、合計で5から35mmの層厚さで、銀及び/又は銅の結晶の2以上の層を有する触媒が使用される。貴金属の複数の層を有する触媒の製造は、比較的複雑である。
【0009】
EP-A357292には、エチレンオキシドを調製するための方法が開示されている。この方法で使用される触媒は、BET法により決定される特定の特別の表面積を有する多孔質の耐熱性担体に銀が適用された銀触媒である。この文献中の情報によれば、銀は、液体媒体、例えば水中の銀又は酸化銀の懸濁液として、又は担体に銀化合物の溶液を含浸させることにより担体に適用することができる。この銀化合物は、それに続いて、熱処理により元素状銀に還元される。この文献は、エチレン性不飽和カルボニル化合物を調製するための、このようにして製造された銀を含有する担持触媒の可能な使用について指針を与えない。
【0010】
EP-A619142には、エチレンをエチレンオキシドに酸化するための銀触媒が開示されており、その触媒は、銀塩の水性(コロイド状)溶液による含浸と、続く焼成により得られる。
【0011】
さらに、ドイツ特許出願DE102008014910には、貴金属の錯体化された難溶性化合物を懸濁液又は溶液から担体に適用し、それに続いて熱処理することにより得られる貴金属含有触媒が開示されている。
【0012】
GB941349から、アルミノシリケートとのイオン交換反応を実施して、イオンの主要部分を触媒的に活性な金属イオンにより置き換えて、その後これらを還元することが知られる。
【0013】
Wangらの「A Facile, Water-Based Synthesis of Highly Branched Nanostructures of Silver」, Langmuir 2008, 24, 12042-12046から、アスコルビン酸及び硝酸銀の両方を同時に含有する水溶液から銀の高度に分岐したナノ構造を室温で調製することが知られている。しかしながら、そのような構造がキャリヤー/担体物質の存在下で形成され得ることは開示されておらず、触媒としての実際の使用の如何なる開示もない。
【0014】
WO2011/000668A1から、
a)促進剤として作用する添加剤と場合により混合された、コロイド溶液の形態のコロイド状貴金属を担体材料に適用すること、
b1)生じた生成物を150から350℃で乾燥すること、又は
b2)生じた生成物を150から350℃で乾燥して、それに続いて350から550℃で焼成すること
により得ることができる、エポキシ化又は酸化的脱水素化のための貴金属含有担持触媒、それを製造するための方法、その使用、及び担持触媒を製造するためのコロイド状貴金属の使用も知られている。
【0015】
本出願で挙げた全ての文献は、引用によりそれらの全体を本開示中に組み込む。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明では、全ての量は、断りのない限り重量による。
【0023】
本発明では、用語「室温」は23℃の温度を指す。示された温度は、断りのない限り摂氏度(℃)である。
【0024】
断りのない限り、記載される反応又は方法ステップは、大気圧で実施される。
【0025】
用語「熱処理」は、本発明においては、
i)焼成又は(即ち、本発明の調製のステップc))、
ii)乾燥及び焼成(即ち、本発明の調製のステップb)及びc))。
を指す。
【0026】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項及び以下の記載及び実施例で見出すことができる。
【0027】
本発明は、
I-a1)促進剤として作用する添加剤と場合により混合された貴金属化合物を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、及び
I-a2)還元剤を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
ここで、I-a1)とI-a2)を交互に10から25回繰り返す、
b)場合によりその後に、生じた生成物を100から350℃で2から180分間乾燥するステップ、並びに
c)それに続いて、350から550℃で15分から3時間焼成するステップ
を含むか又はそれらからなる、担持触媒を調製するための特定の方法に基づく。
【0028】
本発明による第1の代替的方法は、以下のステップ:
II-a)促進剤として作用する添加剤と場合により混合された貴金属化合物を担体材料に適用すると同時に還元剤を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
ここで、ステップII-a)を10から25回繰り返す、
において上の方法と異なるが、その他は同じである。
【0029】
本発明による第2の代替的方法は、以下のステップ:
III-a1)促進剤として作用する添加剤と場合により混合された全所望量の貴金属化合物を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、又は
III-a2)全所望量の還元剤を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、及び
III-a3)それぞれの他の化合物を適用するステップ
において上の方法と異なるが、その他は同じである。
【0030】
ステップa1)とa2)が一緒になって適用サイクルを形成する。
【0031】
本発明によれば、適用サイクルはa1)又はa2)のいずれかで開始することができる;即ち、担体材料に適用されるべき第1の材料は、還元剤又は貴金属化合物のいずれかであり得ることが理解されるべきである。
【0032】
a2)で出発する実施形態が好ましい。
【0033】
本発明の関係で見出される特定の調製から、本発明の方法、本発明の触媒及び本発明の使用が生ずる。
【0034】
本発明による使用においては、本発明の方法により得ることができる貴金属含有担持触媒が使用される、即ち、本発明に従って、基質(単数又は複数)がエポキシ化又は酸化的脱水素化のための条件下で、上記のステップa)ないしc)により調製された触媒と接触させられる、基質のエポキシ化又は酸化的脱水素化、特に酸化的脱水素化のための方法が請求される。
【0035】
本発明においては、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、W、Ir又はOsの塩又はそれらの混合物を貴金属化合物として使用することが好ましい。
【0036】
Au及びAgの塩又はそれらの混合物を貴金属化合物として使用することが特に好ましい。
【0038】
本発明の関係における貴金属化合物は、イオン性化合物、即ち塩であり、溶媒中に導入され、貴金属化合物を溶媒に加えて次に攪拌することによりそれらが触媒担体に適用される。これは、好ましくは室温及び大気圧で実施することができるが、しかしながら、温度及び圧力をそれぞれの必要性に適合させることが同様に可能である。
【0039】
本発明の1つの変形において、有機溶媒、特にC
1-C
6-アルカノール、硫化ジメチル、硫化ジメチル、N-メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、ベンゼン、トルエンを使用することができる。
【0040】
さらなる変形において、水混和性の溶媒、特に好ましくは、アセトン、C
1-C
6-アルカノール、硫化ジメチル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N-メチルホルムアミドなどの水混和性の溶媒を、水との混合物で溶媒として使用することが可能である。
【0041】
本発明では、水が貴金属の溶媒として使用されるのが最も好ましい。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、貴金属化合物は、水溶性の塩から選択されて、それらの水溶液の形態で使用される。
【0043】
特に好ましい1つの貴金属化合物は硝酸銀であり、それは水溶液として本発明の調製において使用される。
【0044】
貴金属塩は、好ましくは、それらが担体材料に適用される溶液中に、全溶液に基づいて貴金属として計算された比率で、5から35重量%の範囲、好ましくは10から30重量%の範囲、及び特に好ましくは15から25重量%の範囲で存在する。
【0045】
さらに、促進剤として適当な添加剤を、貴金属化合物のこの溶液に添加することができる。単に例として、ここで、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属(例えばLi、Rb、Cs、Ca、Mg、V、Co、Ni、Ir又はRe)を挙げることができ、それらは、例えば、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物)、カルボン酸塩若しくは硝酸塩として又はその他にも硫酸塩、亜硫酸塩若しくは硫化物などのイオウ含有アニオンの形態で使用することができる。リン酸塩、シアン化物及び水酸化物及び炭酸塩又はそれらの混合物も同様に適当である。最終的に、ヘテロ多価酸のアニオン、特に周期表の6族及び7族の遷移元素群のヘテロ多価酸(表記法はIUPACの1985年の提案による)を使用することも可能である。上記の促進剤は、貴金属化合物の溶液とは別々に導入することもできる。そのような促進剤が担持触媒系で使用される方法自体は当業者に知られており、文献に記載されているので、ここでさらなる詳細は不要である。
【0046】
本発明においては、担体に適用される貴金属化合物のイオンを還元することができる任意の還元剤を使用することができる。
【0047】
本発明による好ましい還元剤は、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
さらなる他の好ましい実施形態において、本発明による還元剤は、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、尿素、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
還元剤は、溶液の形態で担体材料に適用される。
【0050】
使用される特定の還元剤によっては、溶液は1種以上の有機溶媒に基づくか又は水性である(必要であれば有機共溶媒との共用で)ことができる。
【0051】
使用可能な有機溶媒として上で言及したものを使用してもよい。
【0052】
本発明による最も好ましい還元剤は、アスコルビン酸であり、それは好ましくは水溶液の形態で適用される。
【0053】
適当な担体材料は、それ自体当業者に知られており、一部のものは、例えば、CeramTec、Saint-Gobain Norproから市販され、文献にも記載されているもので、それらについて本明細書ではさらに詳細に参照する。
【0054】
好ましい担体材料は、ステアタイト、酸化アルミニウム又はアルミノシリケートである。
【0055】
特に適当な担体は球形で存在するものであり、その球形の担体粒子は0.5から3mmの範囲の平均粒径を有する。
【0056】
本発明によれば、MBAを形成するMBEの反応のためには、球形の担体材料を使用することが好ましく、球形の担体粒子は0.5から2.5mmの範囲の平均粒径を有し、一方で、エポキシ化、特にエチレンのエポキシ化のためには、担体材料は、好ましくは中空リングの形状を有する。5-10×5-10×2-5mm、特に6×6×3又は8×8×3mm(中空リングの外径×長さ×孔径)の幾何学的形状が好ましい。
【0057】
それにもかかわらず、担体の正確なサイズは、本発明にとって重大なことではない。
【0058】
本発明の好ましい実施形態において、MBAを形成するMBEの反応のための担体材料は、非常に低い空孔率を有し、且つ1m
2/gを超えない、好ましくは0.5m
2/gを超えないBET表面積を有し、特に好ましい実施形態においてはステアタイトを含む。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、エポキシ化、特にエチレンのエポキシ化のための担体材料は、非常に低い空孔率を有し、且つ10m
2/g未満、好ましくは3m
2/g未満及び特に好ましくは1m
2/g未満のBET表面積を有し、特に好ましい実施形態においては、Al
2O
3を含む。
【0060】
本発明に従って使用することができる担体のBET表面積は、0.01mm
2/gまで、又は0.001m
2/gまで非常に低くすることができる。
【0061】
幾つかの場合に、ハイドロタルサイトが適当であることが見出されている。
【0062】
ハイドロタルサイトは、化学式[M(II)
xM(III)
1-x(OH)
2]
(1-x)+[A
1-x/n]
(1-x)-*mH
2Oを有する薄板状材料であると一般的に理解されている。本明細書においては、M(II)は2価金属であり、M(III)は3価金属であり、Aは格子に組み込まれたアニオンであり、nはアニオンの価数であり、mは組み込まれた水分子の数であり、及びxはM(II)/[M(II)+M(III)]のモル比である。xが0.2から0.33の範囲であることは普通であり、それはM(III)のM(II)に対する2から4の範囲のモル比に相当する。2価金属として、本明細書においては、例としてMg、Fe、Ni、Co、Zn及びMnを挙げることができ、3価金属としては、Al、Ga、In、Co及びMnを挙げることができる。異なったモル比で複数の2価又は3価金属が同時に存在することが可能であれば、適当なハイドロタルサイトの構造的多様性は増大する。
【0063】
ハイドロタルサイト群の鉱物として、本明細書においては、純粋に例として、マナセイト、ピロアウライト、シェーグレナイト、スティッチタイト、バルベルトナイト、デサウテルサイト、メイクスネライト又はタコバイトを挙げることができ、それらは文献に記載されており、それらの組成は当業者に知られている。好ましいハイドロタルサイトは、Mg
6Al
2(CO
3)(OH)
16*4H
2Oの組成を有する。
【0064】
さらに好ましい担体材料はα-酸化アルミニウムである。
【0065】
特に好ましい担体材料はステアタイトという、主成分に石鹸石(Mg(Si
4O
10)(OH)
2)、天然ケイ酸マグネシウムを含む天然原料に基づくセラミック材料である。クレイ及び長石又は炭酸バリウムの添加も含むことができる。
【0066】
本発明による貴金属含有触媒の製造は、以下のステップ:
I-a1)促進剤として作用する添加剤と場合により混合された貴金属化合物を担体材料に適用して、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
及び
I-a2)還元剤を担体材料に適用して、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
ここで、I-a1)とI-a2)を交互に10から25回繰り返す、
b)場合によりその後に、生じた生成物を100から350℃で2から180分間乾燥するステップ、並びに
c)それに続いて、350から550℃で15分から3時間焼成するステップ
を含むか又はそれらからなる。
【0067】
本発明による第1の代替的製造は、以下のステップ:
II-a)促進剤として作用する添加剤と場合により混合された貴金属化合物を担体材料に適用すると同時に還元剤を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
ここで、ステップII-a)を10から25回繰り返す、
において上の方法と異なるが、その他は同じである。
【0068】
本発明による第2の代替的製造は、以下のステップ:
III-a1)促進剤として作用する添加剤と場合により混合された全所望量の貴金属化合物を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、又は
III-a2)全所望量の還元剤を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、及び
III-a3)それぞれの他の化合物を適用するステップ
において上の方法と異なるが、その他は同じである。
【0069】
ステップb)及びc)は、本発明では「熱処理」という総称により記載することもある。
【0070】
ステップb)とc)の間に、挿入時間を入れることができる。しかしながら、挿入時間の長さは重大なことではなくて、単に各場合の実情により決定される。それは好ましくは1から300分の範囲である。
【0071】
本発明の変形において、生成物は、任意の所望の期間後に(数ヶ月後でさえ)乾燥及び焼成後にのみ貯蔵することが可能であり、触媒性能がそれにより損なわれることはない。
【0072】
本発明の1つの変形において、ステップb)とc)を互いに連続的に重ならせることも可能である。
これは好ましい実施形態である。
【0073】
本発明の変形において、調製は、これら以外に如何なるステップも含まず、言及したものからなる。
【0074】
この調製方法は、本発明の貴金属含有触媒及び貴金属含有触媒の本発明による使用の両方、並びに言うまでもなく、本発明の方法に関する。
【0075】
所望の数の適用サイクル(ステップa1)及びa2))の後、ステップb)において、貴金属化合物と還元剤の担体材料への交互の適用により調製された材料を場合により乾燥する。
【0076】
適用サイクルの数は、触媒の所望の特性に依存する。通常1から200回、好ましくは3から150回及び特に5から100回の適用サイクルが行われる。本発明の1変形において、10から25サイクルを使用することができる。これらの数は、しかしながら、具体的な必要に合わせることができる。
【0077】
ステップb)における乾燥は、好ましくは、2から180分、好ましくは5から30分及び特に好ましくは10から20分の範囲の時間で実施される。
【0078】
ステップc)における焼成は、好ましくは、15分から3時間、好ましくは30分から2時間及び特に好ましくは40から90分の範囲の時間で実施される。
【0079】
ステップb)における乾燥は、好ましくは、従来の補助的条件下、即ち大気圧で(又は装置に基づく低いゲージ圧力-装置中へのガスの導入が小さい背圧をもたらして、装置内に圧力を生じさせる)窒素、希ガス又は空気の雰囲気下、好ましくは空気雰囲気下に、100から350℃、好ましくは120から300℃及び特に好ましくは200から285℃の温度で実施される。
【0080】
ステップc)における焼成は、好ましくは、従来の条件下、即ち大気圧で(又は装置に基づく低いゲージ圧力-装置中へのガスの導入が小さい背圧をもたらして、装置内に圧力を生じさせる)窒素、希ガス又は空気の雰囲気下、好ましくは空気雰囲気下に、350から550℃、好ましくは400から500℃及び特に好ましくは425から475℃の温度で実施される。
【0081】
還元剤及び熱処理の使用の結果として、貴金属のコーティングそれ自体は、細孔内部の表面を含む担体材料の表面に貴金属化合物から形成され、この貴金属コーティングが、次に担体付き触媒の活性種を表す。
【0082】
熱処理後に測定される触媒に基づく(即ち担体に貴金属を加えた)重量%で貴金属含有率は、一般的に、0.5から40重量%、好ましくは0.8から30重量%及び特に好ましくは1.3から20重量%の範囲である。
【0083】
特に好ましい触媒の1変形は、触媒に基づく貴金属含有率が1.2から2重量%の間、特に14から1.8重量%の間であるものである。これらの触媒は、MBEからMBAを調製するのに特に適する。
【0084】
幾つかの場合に、異なった担体が貴金属の異なった含有率を有することが有利であることが見出された。
【0085】
触媒が酸化的脱水素化のために、特にMBEからMBAを調製するために使用されるべきものである場合、本発明によれば、貴金属含有率は、触媒に基づいて0.5から6.0重量%、特に0.8から3重量%の範囲であることが好ましい。
【0086】
触媒がエポキシ化のために、特にエチレンからエチレンオキシドを調製するために使用されるべきものである場合、本発明によれば、貴金属含有率は、触媒に基づいて5から40重量%、特に10から30重量%の範囲であることが好ましい。
【0087】
特に、1m
2/g未満のBET表面積を有するステアタイトが担体材料として使用される場合、触媒に基づく貴金属含有率は、好ましくは0.5から2.5重量%の範囲、特に好ましくは0.8から2.2重量%の範囲及び特に1.7から2.2重量%の範囲である。
【0088】
特に、10m
2/g未満のBET表面積を有するα-酸化アルミニウムが担体材料として使用される場合、触媒に基づく貴金属含有率は、好ましくは5から40重量%の範囲、特に好ましくは10から30重量%の範囲及び特に13から20重量%の範囲である。
【0089】
当業者は、当技術分野の知識に基づいて、溶液の貴金属含有率、適用サイクルの数及び担体のサイズ及び性質などの簡単な目安により貴金属の正確な含有率を変化させて、それらをそれぞれの役割に合わせることができる。
【0090】
例えば、多孔質担体の場合に、担体材料の細孔中への水吸収は、役割を演じることができ、含浸溶液は担体に合わせて作ることができるが、一方、非多孔質担体の場合に、貴金属含有率は、とりわけ、含浸溶液の濃度及び粘度により制御することができる。
【0091】
本発明によれば、上記の手順により得ることができる貴金属含有担持触媒は、3-メチルブタ-3-エン-1-オールから3-メチルブタ-2-エン-1-アールを調製するために特に有利に使用することができる。生成物は慣用名プレナール(MBA)としても知られ、出発原料は慣用名イソプレノール(MBE)として知られる。
【0092】
この特に好ましい使用において、反応は、例えばEPA881206A1に記載されているように、好ましくはシェル&チューブ反応器中で実施される。反応器の幾何学的形状のさらなる詳細について、ここで、EPA881206A1、2頁、37から45行及び5頁、40から43行、及びEPA244632A2、
図1から3を明確に参照することができる。
【0093】
上記のようにして得ることができる貴金属含有担持触媒の本発明による使用により、イソプレノールからプレナールを、良好な収率及び良好な選択性で緩和な温度条件下に得ることが可能になる。上記のようにして得ることができる貴金属含有担持触媒によるイソプレノールの反応により、3-メチルブタ-3-エン-1-アール(IMBA)及び3-メチルブタ-2-エン-1-アール(MBA)から構成される反応混合物が形成される。
【0094】
反応混合物の後処理で、所望の反応生成物は、蒸溜により第1段階における未反応の出発原料から分離される。この蒸溜を経済的に有利な方法で実施することができるためには、70%の3-メチルブタ-3-エン-1-アールと30%の3-メチルブタ-2-エン-1-アールを含む共沸混合物を使用することが有利である。
【0095】
上記のようにして得ることができる貴金属含有担持触媒の本発明による使用により、プレナールを、イソプレノールから低温で良好な収率及び良好な選択性で調製することが可能になる。
【0096】
本発明の範囲で、例えば、MBEがMBAを320から400℃、好ましくは340から385℃の温度で形成する反応において、例えば、45%を超える、特に47%以上の収率、及び85%を超える、特に90%以上の選択性を達成することが可能である。
【0097】
さらなる変形において、上の手順により得ることができる貴金属含有担持触媒は、エチレンからエチレンオキシドを調製するために、本発明に従って使用することができる。
【0098】
言うまでもなく、本発明の触媒は、言及したもの以外の反応、特に一般的な酸化のためにも使用することができる。
【0099】
したがって、本発明は、酸化反応のための本発明の触媒の一般的な使用も含む。
【0100】
したがって、本発明の利点は、触媒の製造を非常に簡単に且つ上手に制御する(変化させる)ことができることである。さらなる利点は、非常に良好な収率及び選択性が、本発明の触媒により達成されることである。
【0101】
本発明のさらなる利点は、ガスの量が10%又はさらに20%大きく増加するときでさえ、性能の悪化を示さずに一定の選択性及び転化率を与える触媒が得られることである。
【0102】
本発明のそれほど好ましくないが可能な変形において、エポキシ化と酸化的脱水素化を同時に実施することができる。
【0103】
シングルパスで実施される方法においても、再利用様式で実施される方法においても、いずれも本発明の触媒を使用することは言うまでもなく可能である。
【0104】
本発明の種々の実施形態、例えば種々の従属請求項の実施形態は、任意の仕方で互いに組み合わせることができる。
【0105】
ここで、本発明を、以下の実施例を参照して例示することにするが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0106】
[実施例1]
触媒調製
50gのステアタイト球(平均粒子サイズ1.8-2.2mm)を、Erweka AR401の駆動モータ及び小さい顆粒化ドラム(直径d=15cm)を有するコーティングデバイス中に挿入し、毎分約125回転で回転させた。
【0107】
次に、一吹き分のアスコルビン酸溶液(Flukaから入手した、99.5%;60gを200mlの水に溶解した(=300g/l))を、Desagaからのハンドディスペンサーを使用してステアタイト球に適用した。
【0108】
球を乾燥するために、熱風ドライヤーセットの空気流を全開で顆粒化ドラムに向けた。
【0109】
生成物がこれ以上粘着性にならなくなるまで30秒間乾燥した後、一吹き分の硝酸銀溶液(AgNO
3はRiedel de Haenから入手した、99.8-100.5%;15ml水中に27.8g溶解した)を、さらなる他のハンドディスペンサーを使用して球に適用して約30秒間乾燥した。
【0110】
アスコルビン酸溶液及び硝酸銀溶液の適用を、交互に18回行った。
【0111】
10回適用した後、顆粒化ドラムの回転速度を毎分175回転に設定した。
【0112】
生じた球は、均等に暗灰色から黒色に着色した。
【0113】
合計で、3.56gの硝酸銀溶液(=2.31gのAgNO
3)及び1.71gのアスコルビン酸の溶液を使用した。
【0114】
次に、球を乾燥オーブン中120℃で2時間乾燥して水を除去し、その後均一にコーティングされた暗灰色の球を得た。
【0115】
最後に、温度を毎分約1.4ケルビンの速度で450℃に上昇させ、その温度で1時間環境空気条件下に保ち、焼成を実施した。
【0116】
淡く着色した球の形態にある50.85gの生成物を得た(適用された質量0.85g=1.67%)
触媒の元素分析は、全触媒に基づいて1.7重量%の銀を示した。
【0117】
[実施例2]
実施例1で調製された触媒を用いるプレナールの調製
実施例1により製造された10mlの希釈されていない触媒の床を、石英ガラスの反応器中に導入した。次に、MBE転化率が55%となるように温度を設定して(355℃以上の電気ストーブを使用した)、薄膜蒸発器により110g/hのMBE及び50l/hの空気を蒸発させることにより、反応(3-メチルブタ-3-エン-1-オールから3-メチルブタ-2-エン-1-アールの調製)を実施した。
【0118】
55%の転化率で、87モル%の選択性に達し(MBA+iMBA)、5.5%はブテンであった。
【0119】
[実施例3]
触媒調製
50gのステアタイト球(平均粒子サイズ1.8-2.2mm)をErweka AR401の駆動モータ及び小さい顆粒化ドラム(直径d=15cm)を備えたコーティングデバイス中に挿入して毎分約125回転で回転させた。
【0120】
次に一吹き分のアスコルビン酸溶液(Flukaから入手した。99.5%;200mlの水中に60gを溶解した(=300g/l))及び一吹き分の硝酸銀溶液(Riedel de Haenから入手したAgNO
3、99.8-100.5%;15mlの水中に27.8gを溶解した)をDesagaからのハンドディスペンサーを用いてステアタイト球に同時に適用した。
【0121】
球を乾燥するために、熱空気ドライヤーセットの空気流を中程度の強度で顆粒化ドラムに吹きつけて、生成物を約2分間乾燥した。
【0122】
アスコルビン酸溶液と硝酸銀溶液の同時適用を21回行った。
【0123】
これらを5回適用した後、顆粒化ドラムの回転速度を毎分175回転に設定した。
【0124】
生じた球は均一に着色した暗灰色ないし黒色であった。
【0125】
合計で、3.62gの硝酸銀溶液(=2.35gのAgNO
3)及び1.91gのアスコルビン酸溶液を使用した。
【0126】
次に、球を乾燥オーブン中120℃で2時間乾燥して水を除去し、その後51.30gの均一にコーティングされた暗灰色球を得た(適用された質量1.30g=2.53%)。
【0127】
最後に、温度を毎分約1.4ケルビンの速度で450℃に上昇させ、その温度で1時間環境空気条件下に保ち、焼成を実施した。
【0128】
淡く着色した球の形態にある50.83gの生成物を得た(適用された質量0.83g=1.63%)
触媒の元素分析は、全触媒に基づいて1.7重量%の銀を示した。
【0129】
[実施例4]
実施例3で調製された触媒を用いるプレナールの調製
例2の手順を例3の触媒で行った。
【0130】
55%のMBA転化率で(360℃を使用した)、85モル%の選択性に達した。
【0131】
結果
実施例1により調製された触媒は、得られる収率が45%にすぎない従来の触媒、及びWO2011/000668A1に記載された、同条件で85%にすぎない選択性を示した触媒に大きく優る。
【0132】
実施例3により調製された触媒も、従来の触媒に大きく優り、また、WO2011/000668A1に記載された触媒と少なくとも同等である。
(付記)
(付記1)
I-a1) 促進剤として作用する添加剤と場合により混合された貴金属化合物を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、及び
I-a2) 還元剤を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
ここで、ステップI-a1)及びI-a2)を交互に10から25回繰り返す、
又は
II-a) 促進剤として作用する添加剤と場合により混合された貴金属化合物と還元剤とを担体材料に同時に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
ここで、ステップII-a)を10から25回繰り返す、
又は
III-a1) 促進剤として作用する添加剤と場合により混合された貴金属化合物の全所望量を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
若しくは
III-a2) 還元剤の全所望量を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、及び
III-a3) それぞれの他の化合物を適用するステップ、
b) 場合によりその後に、生じた生成物を100から350℃で2から180分間乾燥するステップ、並びに
c) それに続いて、350から550℃で15分から3時間焼成するステップ
により調製された、エポキシ化又は酸化的脱水素化のための貴金属含有担持触媒の使用。
(付記2)
酸化的脱水素化のための、付記1に記載の使用。
(付記3)
オレフィン性不飽和アルコールから酸化的脱水素化によりオレフィン性不飽和カルボニル化合物を調製するための、付記1に記載の使用。
(付記4)
Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、W、Osの塩及びそれらの混合物からなる群から選択される貴金属化合物が貴金属化合物として使用される、付記1から3のいずれかに記載の使用。
(付記5)
還元剤が、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、尿素、及びそれらの混合物からなる群から選択される、付記1から4のいずれかに記載の使用。
(付記6)
還元剤がアスコルビン酸であり、好ましくは水溶液の形態である、付記1から5のいずれかに記載の使用。
(付記7)
3-メチルブタ-2-エン-1-アール及び3-メチルブタ-3-エン-1-アールが3-メチルブタ-3-エン-1-オールから調製される、付記1から6のいずれかに記載の使用。
(付記8)
エポキシ化又は酸化的脱水素化のための貴金属含有担持触媒を製造するための方法であって、
I-a1) 促進剤として作用する添加剤と場合により混合された貴金属化合物を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、及び
I-a2) 還元剤を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
ここで、ステップI-a1)及びI-a2)を交互に10から25回繰り返す、
又は
II-a) 促進剤として作用する添加剤と場合により混合された貴金属化合物と還元剤とを担体材料に同時に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
ここで、ステップII-a)を10から25回繰り返す、
又は
III-a1) 促進剤として作用する添加剤と場合により混合された貴金属化合物の全所望量を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
若しくは
III-a2) 還元剤の全所望量を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、及び
III-a3) それぞれの他の化合物を適用するステップ、
b) 場合によりその後に、生じた生成物を100から350℃で2から180分間乾燥するステップ、並びに
c) それに続いて、350から550℃で15分から3時間焼成するステップ
を含む方法。
(付記9)
オレフィン性不飽和アルコールの酸化的脱水素化のための貴金属含有担持触媒が製造される、付記8に記載の方法。
(付記10)
Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、W、Osの塩及びそれらの混合物からなる群から選択される貴金属化合物が貴金属化合物として使用される、付記8又は9のいずれかに記載の方法。
(付記11)
塩基性又は酸性の担体材料が担体材料として使用される、付記8から10のいずれかに記載の方法。
(付記12)
ステアタイト、酸化アルミニウム、アルミノシリケート及びそれらの混合物からなる群から選択される担体材料が、担体材料として使用される、付記11に記載の方法。
(付記13)
還元剤がヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸、尿素、及びそれらの混合物からなる群から選択される、付記8から12のいずれかに記載の方法。
(付記14)
貴金属含有担持触媒であって、
I-a1) 促進剤として作用する添加剤と場合により混合された、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、W、Osの塩及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される貴金属化合物を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、及び
I-a2) ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ホルムアルデヒド、尿素、アスコルビン酸、及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される還元剤を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
ここで、ステップI-a1)及びI-a2)を交互に10から25回繰り返す、
又は
II-a) 促進剤として作用する添加剤と場合により混合された、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、W、Osの塩及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される貴金属化合物と、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ホルムアルデヒド、尿素、アスコルビン酸及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される還元剤とを担体材料に同時に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
ここで、ステップII-a)を10から25回繰り返す、
又は
III-a1) 促進剤として作用する添加剤と場合により混合された、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、W、Osの塩及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される貴金属化合物の全所望量を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、
若しくは
III-a2) ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ホルムアルデヒド、尿素、アスコルビン酸、及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される還元剤の全所望量を担体材料に適用し、次に60から200℃で10から180秒間乾燥するステップ、及び
III-a3) それぞれの他の化合物を適用するステップ、
b) 場合によりその後に、生じた生成物を100から350℃で2から180分間乾燥するステップ、並びに
c) それに続いて、350から550℃で15分から3時間焼成するステップ
により調製される触媒。
(付記15)
ステアタイト、酸化アルミニウム、アルミノシリケート及びそれらの混合物からなる群から選択される担体材料が、担体材料として使用される、付記14に記載の触媒。