【課題を解決するための手段】
【0012】
上記及び他の目的は、「技術分野」で述べた型の方法によって実現される。前記試料内の所与の点p
iで検討すると、当該方法は:
− 第1探索期間中、第1ビーム設定B
1を利用して第1点拡がり関数F
1を点p
iへ照射する段階であって、前記ビーム設定は前記測定パラメータとは異なる段階;
− 少なくとも第2探索期間中、第2ビーム設定B
2を利用して第2点拡がり関数F
2を点p
iへ照射する段階であって、
・F
2は、p
iが存在する共通の重なり領域内O
iでF
1と部分的に重なり、
・F
1とF
2は、O
iの外部に各対応する非重なり領域F
1’とF
2’を有する、段階;
− 前記コンピュータ処理装置内で信号源分離アルゴリズムを用いることで、前記非重なり領域F
1’とF
2’とは別個に考慮される前記重なり領域内O
i内で画像再構成を実行する段階、を有する。
【0013】
本発明の要点は、数学的考察の観点から説明できる(以降の実施例を参照のこと)が、単純化された物理的考察に基づいて説明することもできる。基本的には、本願発明の方法は、重なり領域O
i内に位置する前記試料の点p
iが、(前記ビームと前記試料との間での物理的相互作用を記述する役割を果たす)PSFの関数形f
PSFの(少なくとも)2つの異なる領域/部分/態様に支配されることを保証している。このようにして、本発明の方法は、たとえば以下のように点(及び領域O
iの残り)を「探索」する。
− 前記第1探索期間中のf
PSFの「深い領域」及び前記第2探索期間中のf
PSFの「浅い領域」、又は、
− 前記第1探索期間中のf
PSFの「左側部分」及び前記第2探索期間中のf
PSFの「右側部分」等
従って、立体視がモノビジョンよりも正確に対象物の位置を示すことを可能にする、又は、多数の点からの範囲の決定がただの1点からの範囲の決定よりも対象物の位置を正確に特定する(三角測量を行う)ことを可能にするのと同様に、本発明のデコンボリューション処理は、前記重なり領域O
iがf
PSFのこれらの(少なくとも)2つの異なる領域/部分によって探索されたことを利用する。あるいはその代わりに、以下の方法のうちの1つ以上で本発明を検討することによって本発明を把握することもできる。
− 前記重なり領域O
iは、定義により、前記重なり領域O
iに寄与する個々の点拡がり関数よりも小さいので、本発明の方法は、たとえば上述した「生の」従来技術に係る方法よりも微細な空間分解能を供する。よって本発明は、高分解イメージング結果を生成するものとみなすことができる。
− 本発明は、共通しない成分から孤立した重なり点拡がり関数の共通する成分に集中することで、前記空間分解処理から「死んだ木(dead wood)」を切断する。
− 重なり領域O
iは複数の探索期間中に検査されるので、信号対雑音比は必然的に改善される。
− f
PSFの各異なる領域/部分によるO
iの各探索は、O
iを表す複数の連立方程式からなる組のさらなる式を設定する手段とみなすことができる。より多くの連立方程式が得られれば、解の空間はより精緻になる。
本発明で用いられるのに適した信号源分離(SS)法の例にはたとえば以下が含まれる。
− 多変量信号を加法的な成分に分離することを可能にする独立成分分析(ICA)
− 主成分分析(PCA)
− 非負行列因子分解(NNMF)等
これらは特に具体的な状況での応用に役立つ。係る方法についての一般的な情報は、たとえば以下のWikipediaのリンクと特許文献1,2と非特許文献2乃至5を参照のこと。
http://en.wikipedia.org/wiki/Independent_component_analysis
この記載及び以降のさらなる説明では、以下のことに留意して欲しい。
(a) 上述の第1探索期間と第2探索期間は、望ましい場合には、点p
iでのさらなる探索によって補われて良い。それにより部分的に重なる点拡がり関数の一般的な組F={F
1、F
2、F
3...F
i...}が蓄積される。
(b) 所与の点p
iでの本発明の処理は、前記走査経路(の下)に沿った(連続する)複数の点からなる全体の列p={p
i}で繰り返されて良い。よって前記重なり領域O
iは、たとえば前記試料内の特定の(表面下の)層/体積のような、より大きな領域O={O
i}に実効的に「併合」する(たとえば
図1Bと
図2Bを参照のこと)。上で説明したように、「標準的な」空間分解はO
iの外部で実現されて良い。しかし本発明は、O内部での空間分解能の改良を可能にする。
(c) 前項に関しては、たとえば以下のことを行う自由度を有する。
(I) 点p
iで完全な組Fを利用し、その後p中の各後続の点でこの処理を繰り返す(「p中の各段階前の完全なF」)、又は、
(II) p内の各点で点拡がり関数F
iを利用し、その後F内の各後続の点拡がり関数についてこの処理を繰り返す(「F中の各段階前の完全なp」)
(d) 点p
iでの様々な探索期間は原則として、順次又は同時に実行されて良い。
− 前者の場合(順次探索)では、点p
iには、最初にビーム設定B
1を有する第1ビームが照射され、その後ビーム設定B
2を有する第2ビームが照射され、といったようなことが行われる。
− 後者の場合(同時探索)では、複数のビームが、(共存する)相互に異なる、ある範囲のビーム設定で点p
iへ同時に照射されるのに用いられる。
当業者はこれらの点をすぐに理解する。
【0014】
本発明は事実、特許文献1乃至8で説明した発明とは根本的に異なることに留意して欲しい。特許文献1乃至8では、測定パラメータPは、試料内部の一連の(連続する)深さ層から(コンボリューションされた)イメージング情報を得る手段として変化する。つまりパラメータPの調節は、試料内のより深くを探索する手段とみなされる。他方本発明では、パラメータPの変化は実効的に、試料内部の所与の位置で探索ビームの跡よりも小さな面積内で高分解の画像再構成を実行することを可能にするように、前記位置での「高次」(重なり)点拡がり関数部分(O
i)のサイズ/形状を調節する手段である。前記探索ビームの横方向走査運動は、前記位置を層(表面であっても表面下であっても良い)へ拡張するのに利用され得る。しかし最も基本的な形態では、本発明は本質的に、前記試料の様々な深さ全体にわたる塊/体積のイメージングを行わない(とはいえ係る深さ分解情報は、(積層された)層毎に本発明の拡張型を利用することによって究極的には得ることができる)。
【0015】
本発明の特別な実施例では、以下の具体的態様が適用される。
− 前記表面は、直交座標形XYZのXY平面に対して平行に延びるように定義される。
− 前記ビーム設定は、前記試料への前記ビームの入射点のZ座標位置となるように選ばれる。
− 前記第1探索期間と前記第2探索期間との間で、物理的スライシング処理は、初期表面S
1から厚さLの材料層を除去することで新たな表面S
2を露出させるのに用いられる。
− 点拡がり関数F
2とF
1は、前記Z方向に互いにLだけ変位する。
【0016】
この実施例の機構は以下のように説明することができる(
図1A参照のこと)。
− 前記試料中のp
iはS1の下でZ方向の距離L+zの位置にあるとする。ここでzは正の増分である。
− 前記第1探索期間中、前記入射放射線ビームB
1は、S
1に衝突し、かつ、S
1から前記試料へ下方に入り込むように延びる点拡がり関数F
1を生成する。続いて点p
iは、Z方向の距離L+zに位置してこの点拡がり関数F
1に入り込む。
− ここで物理的スライシング処理(たとえばイオンミリング、ミクロトーム切断、エッチング等)は、古い表面S
1から厚さLの層を除去することで新たな表面S
2を露出させるのに用いられる。
− 前記第2探索期間中、前記入射放射線ビームB
2は、S
2に衝突し、かつ、S
2から前記試料へ下方に入り込むように延びる点拡がり関数F
2を生成する。続いて点p
iは、Z方向の距離zに位置してこの点拡がり関数F
2に入り込む。点拡がり関数F
1とF
2は部分的重なり領域O
iを示す。ビームB
1とビームB
2は、Z方向に対して平行に延びる共通の伝播軸b
12を有する。
− 点拡がり関数F
1とF
2は(略)同一の関数形f
PSFを有して良い(たとえば、前記ビームの衝突点で狭い首部を有する状態で始まり、前記試料へ入り込むにつれて拡がり(横方向への拡がり)、その後徐々に消えるように再度先細る楕円様形状)。しかしp
iを含む前記重なり領域O
iは、各々の異なるZ領域に支配される。この事実により、領域O
i内部での検出器信号のデコンボリューションを実行するのにSSアルゴリズム(たとえばICA)を用いることが可能になる。その結果(従来技術と比較して)空間分解能が改善される。
− 上の(b)で説明したように、この効果は、点p
iが位置する前記領域O
iだけに限定される必要はない。その代わりに、横方向走査が前記第1探索期間及び前記第2探索期間中に実行される場合、領域Oiは、単なる1つの成分であるS2の下の位置で併合された領域(たとえば層/体積)Oとなる。そのため本発明は空間分解能の改善を実現し得る。この点についてはたとえば
図1Bを参照して欲しい。
− 望ましい場合には、上述の処理の組はさらなる反復において繰り返されて良い。前記試料へ徐々に深く進行することで、改善された空間分解能を得ることのできる表面下領域/層Oからなる積層体が生成される。係るシナリオはたとえば
図1Cに表されている。
− 当業者は、本発明の状況では、ある探索期間と別な探索期間との間で不可逆的な破壊的段階(層の除去)が存在するため、上述の方法(I)は使用できないが、その代わりに方法(II)が使用可能であることを理解する。この文脈では、以下のことに留意して欲しい。
・測定パラメータ
1Pを変化させ、かつ、その検出器出力を記録することによって、(p内の各点p
iでの)点拡がり関数F
1について全体の測定組
1Mを得ることができる。
・同様に、測定パラメータ
2Pを変化させ、かつ、その検出器出力を記録することによって、(p内の各点p
iでの)点拡がり関数F
2について全体の測定組
2Mを得ることができる。
2Pと
1Pとは同一であっても良いし、又は、互いに異なっても良い。
・これらの測定組
1M、
2Mの各々は、前記試料(の一部)の空間分解画像の生成をそれぞれ別個で可能となる。しかし本発明の知見を利用することで、上述の重なり領域Oについて、より高分解の画像を得ることができる。上述した従来技術に係る方法(i)−(iv)は、物理的スライシングと断層撮像の併用について論じているが、これは前記断層撮像の前記試料内への到達可能な範囲を増大させるだけで、Z方向での重なる点拡がり関数の利用、又は、関心対象である(複数の)重なり領域/層内での空間分解能の改善を実現するためのSSアルゴリズムの適用については教示していないことに留意して欲しい。
【0017】
本発明の代替実施例では、以下の具体的態様が適用される。
− 前記ビーム設定は、(最も一般的に3次元で考慮すると)前記表面Sに対する前記ビームの角度となるように選ばれる。
− 前記第1探索期間と前記第2探索期間との間で、前記ビームの角度が調節される。
− 点拡がり関数F
2とF
1とは互いに角度をなす。
【0018】
この実施例の機構はたとえば、以下のように説明することができる(
図2A参照)。
− 前記表面Sに対する傾斜角T(傾斜/勾配)を定義する。
− 前記第1探索期間中、前記入射放射線ビームB
1は、傾斜角T
1でSに衝突し、かつ、伝播軸b
1に沿って前記試料内へ入り込むように延び、かつ、表面下の点p
iと交差する点拡がり関数F
1を生成する。T1≠90°の場合、係る衝突/拡張は斜めになる(そうでなければ垂直となる)。
− 前記第2探索期間中、前記入射放射線ビームB
2は、傾斜角T
2でSに衝突し、かつ、異なる傾斜の伝播軸b
2に沿って前記試料内へ入り込むように延び、かつ、表面下の点p
iと交差する点拡がり関数F
2を生成する。
− T
2≠T
1なので、点p
iは、伝播軸b
1、b
2に沿って測定される点拡がり関数F
1とF
2の異なる領域/態様を受ける。この事実によって、領域O
i内部での検出器信号のデコンボリューションを実行するのにSSアルゴリズム(たとえばICA)を用いることが可能となる。その結果(従来技術と比較して)空間分解能が改善される。
− 上の(b)で説明したように、この効果は、点p
iが位置する前記領域O
iだけに限定される必要はない。その代わりに、横方向走査が前記第1探索期間及び前記第2探索期間中に実行される場合、領域Oiは、単なる1つの成分であるS2の下の位置で併合された領域(たとえば層/体積)Oとなる。そのため本発明は空間分解能の改善を実現し得る。この点についてはたとえば
図2Bを参照して欲しい。(Z軸を含む)垂直面内での傾斜/勾配を測定する傾斜角Tに加えて、水平面内での軌道角を測定する方位角Aを定義することも可能であることに留意して欲しい。
図2Aに図示された状況では、ビームB1とB2は各異なる方位角(それぞれA1とA2)を有する。特にビームB1とB2はまさに、それぞれ180°の方位角差をなして互いに対向する。しかしこれは必須ではなく、ビームB1とB2は同一の方位角をなして点piに有効に接近しても良い。しかもビームB
1とB
2は、傾斜角は同一だが方位角が異なった状態で点p
iに接近しても良い。これらの点についても以降の実施例1で説明する。
【0019】
たとえば所謂「ミクロ回転」のような既知であって非常に異なる方法による前段落の「可変ビーム角」実施例との混同に注意して欲しい。ミクロ回転の方法は、所謂共焦点イメージング−これは本来直線である−の角度版とみなし得る。共焦点イメージングでは、焦点面は、試料を介して(増分)ステップで直線状に変位する。他方ミクロ回転では、試料は焦点面を介して角度をなすように回転する。いずれの場合でも、前記試料の拡張された体積を介して(直線的又は角度をなすように)前記焦点面を「掃引」することを意図している。対照的に、前段落の本発明の実施例では、ビーム傾斜の目的は、高分解画像の再構成が行われる閉じ込められた領域を画定するために、各異なる点拡がり関数間での(調節可能なサイズ/形状/位置の)局在化した重なり領域を生成することである。
【0020】
本発明のさらなる実施例では、以下の具体的態様が適用される。
− 前記ビーム設定は、前記ビーム中の粒子の種類となるように選ばれる。
− 点拡がり関数F
2とF
1は、サイズ及び形状のうちの少なくとも1つに関して互いに異なる。
【0021】
この実施例の機構は以下のように説明することができる(
図3A参照)。
− この実施例で用いられている「種類」は特性−たとえば荷電粒子であるか否か、電荷の符号、相対的に重いのか軽いのか、相対的に長波長なのか短波長なのか等−を指称するものとする。この文脈では、たとえば電子、陽子、相対的に軽いイオン(たとえばHeイオン)、相対的に重いイオン(たとえばGaイオン)、光子、軟X線、又は硬X線等の粒子は、それぞれ異なる粒子の種類であるとみなされる。
− そのような異なる種類の粒子は一般的に、所与の試料とそれぞれ異なる相互作用を示す。そのような場合、前記異なる種類の粒子に係る点拡がり関数の形状及び/又はサイズが異なっている。
− 前記第1探索期間中、前記入射放射線ビームB
1は第1種類の粒子を含む。このビームB
1がSに衝突するとき、このビームB
1はたとえば、相対的に深いレベルまで前記試料内に入り込むように延びるが相対的に横方向拡がりの小さな点拡がり関数F
1を生成する。
この点拡がり関数F
1は点p
iと相互作用する。
− 前記第2探索期間中、前記入射放射線ビームB
2は第2種類の粒子を含む。このビームB
2がSに衝突するとき、このビームB
2はたとえば、相対的に浅いレベルまで前記試料内に入り込むように延びるが前記ビームB
1の場合よりも相対的に横方向拡がりの大きな点拡がり関数F
2を生成する。この点拡がり関数F2もまた点piと相互作用する。
− 点拡がり関数F
2とF
1はサイズ及び/又は形状が異なるので、点p
iは、各々の各異なる領域/部分/態様を感じる。この事実により、領域Oi内部での検出器信号のデコンボリューションの実行にSSアルゴリズムを用いることが可能になる。その結果、(従来技術と比較して)この領域内での空間分解能が改善される。
− 繰り返しになるが、上の(b)で説明したように、この効果は、点p
iが位置する前記領域O
iだけに限定される必要はない。その代わりに、横方向走査が前記第1探索期間及び前記第2探索期間中に実行される場合、領域O
iは、単なる1つの成分であるS
2の下の位置で併合された領域(たとえば層/体積)Oとなる。そのため本発明は空間分解能の改善を実現し得る。この点についてはたとえば
図3Bを参照して欲しい。
【0022】
望ましい場合には、上述の実施例の様々な結合/ハイブリッドが利用されて良い。これらはすべて本発明の技術的範囲内に属する。たとえば以下のようなものが考えられる。
−
図2Bに図示された状況が実行された後、物理的スライシング処理が、前記試料から厚さLの材料層を除去することで、新たな表面を露出させる(
図1A参照のこと)のに用いられて良い。続いて
図2Bに示された状況はこの新たに露出した表面上で繰り返されて良い。同様のことは、たとえば
図3Bに示された状況に適用される。
−
図1Aと
図3Aのビームは、望ましい場合には、前記試料へ法線入射ではなく斜め入射されて良い。等