(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動免疫装置において反応容器の検体および試薬等のキャリーオーバは分析データの変化が発生する要因となる。既知の特許文献1は、反応槽に洗浄液を吐出し、超音波で洗浄液を攪拌して反応槽の洗浄を行うことで、より洗浄効果の高い手法および攪拌棒によるキャリーオーバを無くすことを目指す。本構成では、洗浄液の吐出液量について、ポンプによる洗浄液の吐出を手動によってバルブ調整を行い、反応容器に対して一定量の液量となるように適正化する。しかし、手動によって調整作業が煩雑となることや、洗浄液量を一定量使用するため、洗浄液の低減を行うことが出来ない。
【0006】
これら反応容器の洗浄作業を安定的に行うために、吐出量の調整および吐出量を監視する機能を常時実施することで、洗浄液の吐出量を検出し、日々の使い勝手および検査品質の向上を図ることが望まれている。また、吐出量を監視することで洗浄予定の反応容器に対して適正な液量を吐出し、洗浄液の低減を図ることも望まれている。
【0007】
また、既知の特許文献2においては、反応容器に洗浄液を吐出する際の流路内の洗浄液の圧力変化(圧力変動)、もしくは流速変化を検出測定する液流検出部を用いて正常に動作しかつ適正な液量の洗浄液が吐出されているか否かを検知したのち、反応容器に対して液面検知センサで洗浄液介在の有無を感知する。しかし、検知に使用する機構を多く用いる必要が出てくるため、コストメリットを考慮した装置構成が望まれている。
【0008】
また、既知の特許文献3においては、洗浄プールにおける洗浄液の吐出部位のすべてに水量センサを設置することで、それぞれの洗浄液量の制御を行う。しかしながら、水量センサが既知のユニットでありかつそれらの設置数が膨大になるため、コストメリットを考慮した装置構成が望まれる。また、特許文献3における洗浄対象はプローブおよび攪拌子に限定されている。
【0009】
また、既知の特許文献4においては、反応容器に洗浄液をノズルから吐出し、吐出した液量をノズルと同じ機構部に設置した二つの液面センサにて感知する。本構造では機構部が洗浄液の吐出用ノズルと二つの液面センサで構成する必要が有り、機構部の構造体が多くなることや、液面センサを固定位置で使用するため、洗浄液の吐出量を制御することが出来ない。したがって、使用液量の低減には繋がらないため、製造コストメリットや装置のランニングコスト低減を考慮した装置構成が望まれる。
【0010】
本発明の目的は、洗浄液量を必要量のみ安定的に吐出することができ、かつ、装置のコストを低減することができる自動分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、洗浄液の吐出後に洗浄の妥当性を確認するために液量検知機構によりプローブ周辺の静電容量の変動を感知することにより、上記課題が解決できることを見出した。
【0012】
上記課題を解決する為に、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例をあげるならば、反応容器に対して洗浄液を吐出するプローブを備える洗浄機構と、前記プローブの周辺における静電容量を検知する液量検知機構と、前記プローブの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記静電容量の変動を検知することにより、前記洗浄液が適正な液量吐出したかを判定する、自動分析装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、洗浄液量を必要量のみ安定的に吐出することができ、かつ、装置のコストを低減することができる。
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明における臨床検査用の自動分析装置の実施例の全体構成図である。
【
図2】本実施例における各制御対象の接続について、詳細な構成を示した図である。
【
図3A】本実施例におけるプローブの制御の第一の状況を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出動作前位置を示す図である。
【
図3B】本実施例の液量検知における第一の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出高さ位置移動を示す図である。
【
図3C】本実施例の液量検知における第一の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出開始を示す図である。
【
図3D】本実施例の液量検知における第一の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出中を示す図である。
【
図3E】本実施例の液量検知における第一の例を説明する図であり、プローブの洗浄液量規定高さ検知を示す図である。
【
図3F】本実施例の液量検知における第一の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出動作後位置を示す図である。
【
図3G】本実施例の液量検知における第一の例を説明する図であり、プローブの液量確認動作前位置を示す図である。
【
図3H】本実施例の液量検知における第一の例を説明する図であり、プローブの液量確認検知時位置を示す図である。
【
図3I】本実施例の液量検知における第一の例を説明する図であり、プローブの液量確認後位置を示す図である。
【
図4】本実施例の液量検知機構に関して、
図3A〜
図3Iにおける静電容量値の詳細な変化を示したグラフである。
【
図5A】本実施例の液量検知における第二の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出動作前位置を示す図である。
【
図5B】本実施例の液量検知における第二の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出高さ位置移動を示す図である。
【
図5C】本実施例の液量検知における第二の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出開始を示す図である。
【
図5D】本実施例の液量検知における第二の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出中を示す図である。
【
図5E】本実施例の液量検知における第二の例を説明する図であり、プローブの洗浄液量規定高さ検知を示す図である。
【
図5F】本実施例の液量検知における第二の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出動作後位置を示す図である。
【
図5G】本実施例の液量検知における第二の例を説明する図であり、プローブの液量確認動作前位置を示す図である。
【
図5H】本実施例の液量検知における第二の例を説明する図であり、プローブの液量確認検知時位置を示す図である。
【
図5I】本実施例の液量検知における第二の例を説明する図であり、プローブの液量確認後位置を示す図である。
【
図6】本実施例の液量検知機構に関して、
図5A〜
図5Iにおける静電容量値の詳細な変化を示したグラフである。
【
図7A】本実施例の液量検知における第三の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出動作前位置を示す図である。
【
図7B】本実施例の液量検知における第三の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出高さ位置移動を示す図である。
【
図7C】本実施例の液量検知における第三の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出開始を示す図である。
【
図7D】本実施例の液量検知における第三の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出中を示す図である。
【
図7E】本実施例の液量検知における第三の例を説明する図であり、プローブの洗浄液量規定高さ検知を示す図である。
【
図7F】本実施例の液量検知における第三の例を説明する図であり、プローブの洗浄液吐出動作後位置を示す図である。
【
図7G】本実施例の液量検知における第三の例を説明する図であり、プローブの液量確認動作前位置を示す図である。
【
図7H】本実施例の液量検知における第三の例を説明する図であり、プローブの液量確認検知時位置を示す図である。
【
図7I】本実施例の液量検知における第三の例を説明する図であり、プローブの液量確認後位置を示す図である。
【
図8】本実施例の液量検知機構に関して、
図7A〜
図7Iにおける静電容量値の詳細な変化を示したグラフである。
【
図9】本実施例における液量検知の判定フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0016】
本発明は、反応容器内へ吐出する洗浄液の液量の調整、洗浄時における洗浄液吐出量の常時監視、および、洗浄液の泡検知による状態の管理を可能にする自動分析装置に関する。
【0017】
図1は、本発明における生化学自動分析装置の実施例の全体構成図である。分析部101は、受電するための主スイッチであるメインSW102と、使用時に装置を活動状態にするためのスイッチである操作SW103と、制御部104と、機構駆動部105と、操作SW103の状態に関わらず常時分析用の試薬を保冷しておくための試薬保冷部106とによって構成される。
【0018】
制御部104は、制御用電源107と、CPU108と、メモリ109と、記憶媒体110と、機構駆動部105を制御するための入出力であるI/O111と、アナログ信号をデジタルに変換して測定データを取り込むためのADC112と、操作部113と通信を行うためのインターフェース部であるI/F114とによって構成される。操作部113は、例えば、キーボード、マウスなどの入力装置及びディスプレイなどの出力装置を備えるものであり、生化学自動分析装置のオペレータが操作する端末などである。
【0019】
機構駆動部105は、機構用電源115と、駆動回路116と、検体容器117内の検体を反応容器118に分注する検体分注機構119と、反応容器118に試薬を注入する試薬分注機構120と、反応容器118内の混合液を攪拌する攪拌機構121と、反応容器118内の混合液の吸光度を測定する多波長光度計122と、使用し終わった反応容器118を洗浄する洗浄機構123と、反応を安定させるために反応系を一定温度に保つ反応槽124と、反応槽124の温度制御を行う反応槽温度制御部125などから構成されている。
【0020】
分析部101では、機構用電源115と駆動回路116が、制御部104のI/O111からの信号によって制御されて各機構を駆動し、反応容器118内で検体と試薬を混合する。そして、この混合液を多波長光度計122とADC112を用いて各分析項目に応じた波長で吸光度測定して検体を分析する。試薬保冷部106は、試薬を低温保存して分析動作を安定させる一方、装置の電源が遮断されて分析動作を行っていない間に試薬の保冷庫として機能する。このため、試薬保冷部106は、制御部104や機構駆動部105の電源を遮断した状態でも通電される。
【0021】
図2は、液量検知の制御および管理対象となる洗浄機構123と制御部104との接続について詳細な構成を示す。洗浄機構123は、洗浄液を吐出するプローブ201を備える。プローブ201には、流路204が接続されており、流路204にはポンプ205及び電磁弁206が設けられている。ポンプ205及び電磁弁206は制御回路207によって制御され、流路204を通って洗浄液がプローブ201へ送られる。この構成により、プローブ201で反応容器118内への洗浄液の吐出を行うことができる。なお、制御回路207は、制御部104のCPU108によって制御される。
【0022】
また、プローブ201には、駆動回路116が接続されている。CPU108は、I/O111を介して駆動回路116に対してプローブ201の上下動作の制御を実行することができる。また、プローブ201には、プローブ201の周辺における静電容量値を測定するための液量検知機構202が接続されている。液量検知機構202は、液量検知ADC203を介してCPU108に接続されている。CPU108は、液量検知ADC203を介して液量検知機構202から取得されるプローブ201の周辺における静電容量値を計算し、洗浄前に適切な洗浄液量を吐出できたかの判定、及び、洗浄後に適切な洗浄液量を吐出していたかの判定を行うことができる。
【0023】
次に、洗浄機構123の制御について説明する。まず、洗浄機構123のプローブ201を通常待機位置から液量適正位置へ動作させる。CPU108は、洗浄目的の反応容器118で事前に実施されていた分析対象である、検体および試薬の総量から、洗浄液の必要吐出量を算出する。例えば、検体の量および試薬の量などの情報と、反応容器118のサイズなどの情報は、あらかじめ制御部104の記憶媒体110などに記録されている。したがって、CPU108は、これらの情報に基づいて、検体および試薬の総量から洗浄液の必要吐出量を算出する。CPU108は、必要吐出量を算出すると、その必要吐出量に基づいて洗浄機構123のプローブ201の洗浄液吐出高さ位置を算出する。ここで、洗浄液吐出高さ位置は、必要吐出量から算出された洗浄液の液面高さであり、プローブ201の先端の移動先の位置を示す。このように、本実施例では、制御部104において自動で適正液量及び洗浄液吐出高さ位置を算出することができる。次に、CPU108は、I/O111に対して、プローブ201の洗浄液吐出高さ位置までの下降を命令する。駆動回路116は、I/O111からの入力を受けて、プローブ201の洗浄液吐出高さ位置までの下降を実施する。
【0024】
プローブ201が洗浄液吐出高さ位置まで移動した後、CPU108は、制御回路207を介して、ポンプ205及び電磁弁206を制御し、洗浄液の吐出を開始する。液量検知機構202は、プローブ201の周辺の静電容量値を測定している。以下で詳細に説明するが、反応容器118内の洗浄液面が上昇すると、静電容量値が変動し、特に、適正液量となった時点で大幅に変動する。CPU108は、液量検知機構202及び液量検知ADC203を介して取得した静電容量値を感知し続けて、静電容量値が大幅に変動した時点で制御回路207に洗浄液の吐出の停止を命令する。制御回路207は、ポンプ205及び電磁弁206を制御し、洗浄液の吐出を停止する。
【0025】
次に、洗浄液の吐出停止後に、CPU108は、I/O111に対して、プローブ201の洗浄液吐出高さ位置から通常待機位置への移動を命令する。駆動回路116は、I/O111からの入力を受けて、プローブ201の通常待機位置までの上昇を実施する。その後、所定の時間の間、プローブ201は、通常待機位置において待機する。所定の時間待機した後、CPU108は、再度、I/O111に対して、プローブ201の洗浄液吐出高さ位置までの下降を命令する。駆動回路116は、I/O111からの入力を受けて、プローブ201の洗浄液吐出高さ位置までの下降を実施する。CPU108は、液量検知機構202及び液量検知ADC203を介して取得した静電容量値を感知し続けて、静電容量値が大幅に変動した時点を検知する。ここで大幅に変動した時点の静電容量値が、洗浄液を吐出したときの静電容量値のピークと同じか、又はピークに対して所定の許容範囲内にある場合、CPU108は、適切な洗浄液量を吐出したと判定する。このように、適切な洗浄液量を吐出した確認を行うことで洗浄作業が実施されていることを確認する。
【0026】
図3A〜
図3Iは、本実施例の液量検知における第一の例を説明する図である。まず、プローブ201は、洗浄液吐出動作前位置(通常待機位置)にある(
図3A)。その後、プローブ201は、通常待機位置から洗浄液吐出高さ位置まで下降する(
図3B)。その後、プローブ201は、洗浄液の吐出を開始する(
図3C)。その後、プローブ201は、洗浄液の吐出を続けて(
図3D)、洗浄液がプローブ201の先端(すなわち、洗浄液吐出高さ位置)まで到達する(
図3E)。洗浄液が洗浄液吐出高さ位置まで到達すると、プローブ201は、洗浄液の吐出を停止する。次に、プローブ201は、洗浄液吐出高さ位置から通常待機位置まで上昇する(
図3F)。その後、プローブ201は、所定時間だけ通常待機位置で待機する(
図3G)。次に、プローブ201は、通常待機位置から洗浄液吐出高さ位置(
図3Bの位置)まで下降する(
図3H)。その後、プローブ201は、洗浄液吐出高さ位置から通常待機位置まで上昇する(
図3I)。なお、液量検知機構202は、
図3A〜
図3Iの間、プローブ201を介して静電容量値を測定する。
【0027】
図4は、本実施例の液量検知機構202に関して、
図3A〜
図3Iにおける静電容量値の詳細な変化を示したグラフである。
図4の(1)〜(9)は、それぞれ
図3A〜
図3Iに対応する。
図4に示すように、プローブ201が、通常待機位置(1)から洗浄液吐出高さ位置(2)まで移動したとき、静電容量にほとんど変化はない。その後、洗浄液の吐出(3)を開始すると、洗浄液吐出により反応容器118内の液面が上昇し、静電容量が緩やかに変動する(4)。洗浄液の吐出量がプローブ201の先端(洗浄液吐出高さ位置)に達すると静電容量が大幅に変動する(5)ため、洗浄液の吐出を停止する。この際、CPU108は、液量検知機構202及び液量検知ADC203を介して取得した静電容量値を感知し続けて、静電容量の大幅な変動(ピーク)を判定する。一例として、CPU108は、静電容量値が所定のしきい値を超えたときに、静電容量値のピークに到達したと判定し、制御回路207に洗浄液の吐出の停止を命令してもよい。
【0028】
洗浄液の吐出の停止後に、プローブ201は、通常待機位置まで上昇し(6)、洗浄液の吐出作業を完了する。この際、静電容量は通常待機位置での値まで下降する。その後、所定の時間待機した後に、適切な洗浄液量を吐出していたかを確認するために、プローブ201は、通常待機位置(7)から液量確認検知時位置(すなわち、洗浄液吐出高さ位置)まで下降する(8)。CPU108は、プローブ201が液量確認検知時位置(8)まで移動したときの静電容量の変動を判定する。一例として、CPU108は、液量確認検知時位置(8)まで移動したときの静電容量値の変動(ピーク)が(5)のピークと同じ、又は、(5)のピークに対して所定の許容範囲内にあるとき、適切な洗浄液量を吐出したと判定する。
図3Hの例では、洗浄液の高さが、
図3Bの洗浄液吐出高さ位置とほぼ一致している。したがって、液量確認検知時位置(8)まで移動したときの静電容量値の変動(ピーク)が(5)のピークとほぼ同じであるため、適切な洗浄液量を吐出したと判定される。最後に、プローブ201は、液量確認検知時位置(8)から通常待機位置(9)まで上昇する。
【0030】
図6に示すように、プローブ201が、通常待機位置(1)から洗浄液吐出高さ位置(2)まで移動したとき、静電容量にほとんど変化はない。その後、洗浄液の吐出(3)を開始すると、洗浄液吐出により反応容器118内の液面が上昇し、静電容量が緩やかに変動する(4)。なお、この例では、
図5Dに示すように、洗浄液の吐出中に洗浄液面に泡が付着した状態となる。その後、洗浄液の吐出量がプローブ201の先端(洗浄液吐出高さ位置)に達すると静電容量が大幅に変動する(5)ため、洗浄液の吐出を停止する。なお、CPU108は、液量検知機構202及び液量検知ADC203を介して取得した静電容量値を感知し続けて、静電容量の大幅な変動(ピーク)を判定する。
【0031】
洗浄液の吐出の停止後に、プローブ201は、通常待機位置まで上昇し(6)、洗浄液の吐出作業を完了する。その後、所定の時間待機した後に、適切な洗浄液量を吐出していたかを確認するために、プローブ201は、通常待機位置(7)から液量確認検知時位置(すなわち、洗浄液吐出高さ位置)まで下降する(8)。このとき、
図5Hに示すように、プローブ201が
図5Bの洗浄液吐出高さ位置に到達する前に、プローブ201が洗浄液面上の泡に接触する。したがって、
図6に示すように、プローブ201が
図5Bの洗浄液吐出高さ位置まで到達する前に、静電容量値の変動(ピーク)が出現する。この場合、CPU108は、適切な洗浄液量を吐出していない可能性があると判定する。この判定は、例えば、プローブ201が
図5Bの洗浄液吐出高さ位置まで到達する前に静電容量値が(5)のピークに到達したことを検知することにより行うことができる。別の例として、あらかじめ登録されている理想的な変動(
図6の点線)と比較して静電容量値の上昇の傾斜が急であることを判定することにより、洗浄液の吐出異常を判定してもよい。
【0032】
なお、プローブ201が
図5Bの洗浄液吐出高さ位置に到達する前に、静電容量の変動(ピーク)が検出された場合、プローブ201は下降動作を停止し、その後、通常待機位置(9)まで上昇する。そして、洗浄適正位置に到達する前に静電容量が大幅に変動したため、オペレータに対して洗浄作業が正常に行われなかった可能性があることを出力装置(ディスプレイなど)を介して通知する。
【0034】
図8に示すように、プローブ201が、通常待機位置(1)から洗浄液吐出高さ位置(2)まで移動したとき、静電容量にほとんど変化はない。その後、洗浄液の吐出(3)を開始すると、洗浄液吐出により反応容器118内の液面が上昇し、静電容量が緩やかに変動する(4)。なお、この例では、
図7Dに示すように、洗浄液の吐出中に洗浄液内に泡を包含した状態となる。
【0035】
その後、洗浄液の吐出量がプローブ201の先端(洗浄液吐出高さ位置)に達すると静電容量が大幅に変動する(5)ため、洗浄液の吐出を停止する。なお、CPU108は、液量検知機構202及び液量検知ADC203を介して取得した静電容量値を感知し続けて、静電容量の大幅な変動(ピーク)を判定する。
【0036】
洗浄液の吐出の停止後に、プローブ201は、通常待機位置まで上昇し(6)、洗浄液の吐出作業を完了する。その後、プローブ201は、所定時間待機する。このとき、
図7Gに示すように、洗浄液内の泡がなくなり、洗浄液面が下降する。所定の時間待機した後に、適切な洗浄液量を吐出していたかを確認するために、プローブ201は、通常待機位置(7)から液量確認検知時位置まで下降する(8)。このとき、
図7Hに示すように、プローブ201は、洗浄液面まで到達しない。したがって、
図8に示すように、プローブ201が洗浄液吐出高さ位置まで到達したときに、静電容量値の変動(ピーク)が出現しない。この場合、CPU108は、適切な洗浄液量を吐出していない可能性があると判定する。この判定は、プローブ201が洗浄液吐出高さ位置に到達したときに、静電容量値が所定のしきい値に到達していないことを検知することにより行うことができる。
【0037】
最後に、プローブ201は、液量確認検知時位置(8)から通常待機位置(9)まで上昇する。そして、洗浄適正位置に到達したときに静電容量が大幅に変動していないため、オペレータに対して洗浄作業が正常に行われなかった可能性があることを出力装置(ディスプレイなど)を介して通知する。
【0038】
図9は、本実施例における液量検知の判定フローを示した図である。反応容器118の洗浄を開始した後、CPU108は、使用容器の試薬量およびサンプル量から反応容器118に使用された液高さを計算し、洗浄液の必要吐出量を算出する。CPU108は、必要吐出量から洗浄液の液面高さ(洗浄液吐出高さ位置)を計算する(901)。次に、CPU108は、駆動回路116を介してプローブ201を洗浄液吐出高さ位置まで移動させる(902)。
【0039】
CPU108は、制御回路207を介して、洗浄液の吐出の開始を命令し、液量検知機構202から取得した静電容量値から液量検知1を行う(903)。液量検知1において、CPU108は、静電容量値が一定時間内に変動するか(例えば、静電容量値が所定のしきい値以上になるか)を検知する。ここで、静電容量値が一定時間内に変動しない場合、オペレータに対して洗浄液量不足の可能性を出力装置(ディスプレイなど)を介して通知する(904)。例えば、一定時間内に静電容量値の変動が検知されない場合、ポンプ205や電磁弁206に不具合があると考えられる。一方、ステップ903において、静電容量値が一定時間内に変動する場合、上述したように、静電容量値のピークを判定し、洗浄液の吐出を停止し、プローブ201が通常待機位置に上昇する。その後、処理はステップ905へ進む。
【0040】
プローブ201が上昇後に一定時間待機し、CPU108は、再度プローブ201を洗浄液吐出高さ位置まで移動させて、液量検知2を行う(905)。ステップ905において、洗浄液の吐出の際の液量検知1における静電容量の変動(第1の静電容量の変動)と、プローブ201を再度洗浄液吐出高さ位置まで移動させた際の液量検知2における静電容量の変動(第2の静電容量の変動)とを比較することにより、洗浄液が適正な液量吐出したかを判定する。CPU108は、液量検知1における静電容量の変動のピークと液量検知2における静電容量の変動のピークとが等しい場合、洗浄液が適正な液量吐出したと判定し、ステップ907に進む。そして、CPU108は、洗浄液が適正な液量吐出したことを出力装置に表示させる(907)。なお、別の例として、液量検知1における静電容量の変動のピークと液量検知2における静電容量の変動のピークとの差が所定の許容範囲内にある場合、洗浄液が適正な液量吐出したと判定してもよい。
【0041】
また、ステップ905において、CPU108は、液量検知2における静電容量の変動のピークが液量検知1における静電容量の変動のピークよりも小さい場合、洗浄異常と判定し、ステップ906へ進む。そして、CPU108は、洗浄液を吐出した反応容器118の液内に泡を含んでいた可能性があることを出力装置に表示させることにより、オペレータに通知する(906)。
【0042】
また、ステップ905において、CPU108は、液量検知2における静電容量の変動のピークの際のプローブ201の高さが、液量検知1における静電容量の変動のピークの際のプローブ201の高さよりも高い位置にある場合、すなわち、プローブ201が洗浄液吐出高さ位置に到着する前に液量検知1における静電容量の変動のピークと同じ値となった場合、洗浄異常と判定し、ステップ908へ進む。そして、CPU108は、洗浄液を吐出した反応容器118の液表面に泡が存在する可能性があることを出力装置に表示させることにより、オペレータに通知する(908)。液量検知2の処理後に洗浄動作を行う。なお、上述の場合、液量検知2の動作(905)は、洗浄液の吐出後であればタイミングについて可変としてもよい。
【0043】
従来のシステムでは、反応容器の洗浄のために吐出する洗浄液について、ポンプ機構部のバルブを調節することで洗浄液の吐出量が適正となる状態となるかを確認しながら、手作業による調整を行うため煩雑となる課題が有る。また、洗浄液を反応容器の容量を元に常に最大量使用するため、洗浄液を消費する量を低減できない課題があった。
本実施例によれば、自動分析装置の反応容器118に吐出される洗浄液量を毎回確認しながら洗浄作業を実施することで洗浄作業が確実に行われているかどうかをシステム的に監視できる。これにより、洗浄作業による分析データの安定性を保持することを可能とする。
【0044】
また、本実施例によれば、反応容器118に対して洗浄機構123のプローブ201から洗浄液を吐出する際に液量検知機構202により、プローブ201の周辺の静電容量の変動を感知して、適正な液面高さとなるように吐出量を管理することが可能になる。さらに、洗浄液の吐出後に洗浄の妥当性を確認するため、反応容器118内の洗浄液の液面検知時における洗浄機構123のプローブ201の移動量から反応容器118内の洗浄液高さを換算することで、反応容器118内の検体および試薬を混合した場合の液高さと比較して適正な洗浄作業を行えるかの判定を可能にする。また、洗浄液の吐出を必要最小限とすることから、使用する洗浄液量の低減を可能にする。
【0045】
また、本実施例によれば、洗浄機構123から反応容器118に吐出される洗浄液量を感知して、適正量での洗浄液吐出が行えたかを判定できる。したがって、調整作業が不要となることや、洗浄液量を必要量のみ吐出するため、安定的に洗浄液を吐出することができる。これによって、オペレータは分析後の反応容器118を洗浄する作業について、安定性のある洗浄作業を行うとともに、洗浄不足の要因となる液量不足をシステム検知の結果として装置からの警告を元に確認することができる。よって、分析業務に対する品質確保の向上および再分析を分析データの妥当性を判断した上で実施できることによる迅速性にも寄与することができる。さらに、安定的に必要な洗浄液を吐出するため、洗浄液の使用量を低減することでき、装置のランニングコスト低減に寄与することができる。また、洗浄液の吐出を実際の液面高さ検知から監視するため、洗浄液の溢れを防止するためのオーバフローの機構を削除して機構構造の簡素化(製造コストメリット)に寄与することができる。
【0046】
本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることがあり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0047】
上述の実施例では、洗浄機構123のプローブ201を用いて静電容量の変動を検知することにより、洗浄液が適正な液量吐出したかを判定しているが、別のプローブで静電容量の変動を検知してもよい。この場合、プローブ201で洗浄液を吐出した後に、反応容器118を第2のプローブの位置まで移動させ、第2のプローブの周辺における静電容量を検知する液量検知機構によって静電容量の変動を検知する。制御部104は、プローブ201における静電容量の変動と、第2のプローブにおける静電容量の変動とを比較して、上記の判定を行えばよい。
【0048】
また、上記制御部104で行われる処理等は、それらの一部や全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記制御部104で行われる処理等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0049】
また、上述の実施例において制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。