【実施例】
【0031】
本発明を以下の実施例、比較例および試験例により具体的に説明する。
(使用材料)
以下の表1に示す各材料を用いて、各コンクリート調製した。
なお、表1中に、各種ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュ、膨張材、粗骨材、細骨材および混和剤の品質及び特徴も示す。
表1中、骨材の粗粒率は、骨材のふるい分け試験により、公称寸法が0.15、0.3、0.6、1.2、2.5、5、10、20、40および80mmの各ふるいに留まる累計残留百分率(%)の総和を求め、これを100で除した値を示す。
また、実積率とは、JIS A 0203「コンクリート用語」に規定されているように、容器に満たした骨材の絶対容積の、その容器の容積に対する百分率を示す。
細骨材の表乾密度および吸水率はJIS A 1109の規定、また粗骨材の表乾密度および吸水率はJIS A 1110の規定により得られた値を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
(コンクリートの調製1)
上記表1に示す各材料を用い、表3に示す配合割合で、各材料を混合して、コンクリートを調製した。
なお、水/結合材(W/B:水に対する、ポルトランドセメント及び高炉スラグ及びフライアッシュの質量比)を55%し、得られる各コンクリートの目標スランプ値は12±2.5cm(JIS A 1101)であって、目標空気量が4.5±1.5容量%(JIS A 1128)となるように、各材料の配合量を決定した。
なお、膨張材は結合材(B)に含まない。
また、コンクリート中に膨張材を含む場合には、低熱ポルトランドセメントでは単位膨張材量を12.5kg/m
3とし、それ以外のポルトランドセメントでは、単位膨張材量を15kg/m
3とした。
この単位膨張材量は、膨張材を用いたコンクリート(水/結合材比40質量%)の一軸拘束試験(JIS A 6202:1997「コンクリート用膨張材」附属書2のB法)によって測定された乾燥期間91日(材齢98日)の乾燥収縮ひずみ値が、膨張材を用いない場合より150±50×10
−6より小さく、かつ単位膨張材量がすくなくなるように定めたものである。
【0034】
上記一軸拘束試験(JIS A 6202 附属書2のB法)では、膨張材を用いたコンクリートと膨張材を用いていないコンクリートの両方とも温度20±2℃で打設後、1日静置して材齢1日で脱型し、その後6日間温度20±2℃の水中養生を行い、引き続き20±2℃、湿度60±5%で静置し、材齢98日までひずみを測定して、材齢98日おいて膨張材を用いたコンクリートと膨張材を用いていないコンクリートのひずみとその差を示したものが表2である。表2より、環境負荷低減コンクリートの結合材に普通ポルトランドセメントまたは早強ポルトランドセメントを用いる場合に15kg/m
3、低熱ポルトランドセメントを用いる場合に12.5kg/m
3と定めた。なお、結合材に低熱ポルトランドセメントを用いた場合には、10kg/m
3の使用量でも上記の条件を満足したが、ひずみのばらつきも考慮して12.5kg/m
3と定めた。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
(試験例)
(試験例1)強度試験
標準養生では、上記「コンクリートの調製1」で調製した各コンクリートを温度20±2℃で打設後、1日静置して材齢1日で脱型し、その後温度20±2℃の水中養生を行い、材齢56日の圧縮強度をJIS A 1108により測定した。
また、簡易断熱養生では、厚さ200mmの発泡スチロールで囲まれた空間内にJIS A 5308附属書Eに規定されるブリキ製の軽量型枠に上記「コンクリートの調製1」で調製した各コンクリートを打ち込んだ供試体を16本設置し、供試体間の空間を発泡ビーズで埋め、材齢14日までは発泡スチロール内で封かん養生し、その後温度20±2℃の恒温室で封かん養生した。その後、材齢56日の圧縮強度をJIS A 1108により測定した。
標準養生および簡易断熱養生における材齢56日の圧縮強度を表5に示す。
【0038】
(試験例2)ひび割れ抵抗性試験A(ひび割れ発生日数測定試験)
上記「コンクリートの調製1」で調製した各コンクリートを用いて、各コンクリート試験体を製造して、ひび割れ抵抗性試験Aを実施した。
ひび割れ抵抗性試験Aは、
図1に示す装置を用いて実施した。
【0039】
具体的には、ネジ切りしたΦ32mmの鋼材の中央300mmの区間に、該鋼材の周囲にテフロン(登録商標)シートを巻きつけてコンクリートが付着することを防止し、該鋼材の両面(対抗する両側)、具体的には該区間のねじ山をやすり等で平滑にし、その直径方向の対辺の鋼材軸方向において2箇所ひずみゲージを設置し、そのひずみゲージがコンクリート試験体の上下面になるように位置を固定し、前記鋼材の周囲に、「コンクリートの調製1」で製造した各コンクリートを温度20±2℃で打設した。材齢1日まで静置して型枠を取り外し、軸方向に配置されたD32鉄筋の拘束のみが作用する様に、材齢7日まで封かん状態とした。
その後脱型して、100×100×1100mmの各コンクリート試験体を得た。
【0040】
上記コンクリート試験体を、温度20±2℃、相対湿度60±5%の環境下で静置し、各コンクリート試験体にひび割れが発生するまで、鋼材のひずみを測定した。
ひび割れが発生した日をひび割れ発生日数として、その結果を表5に示す。
【0041】
(試験例3)ひび割れ抵抗性試験B(断熱温度上昇試験)
上記「コンクリートの調製1」で調製した各コンクリートを用いて、各コンクリート試験体を製造して、断熱温度上昇試験を実施した。
断熱温度上昇試験は、
図2に示す装置を用いて、「コンクリート断熱温度上昇試験装置に関する試験方法」(鈴木康範・原田修輔・前川宏一・辻幸和:土木学会論文集,No.402,V−10,pp.81−86,1988.4)に記載されている断熱温度上昇試験を実施して測定した。具体的には、内径300mm,内高300mmの隔壁構造の循環経路を有する熱媒ジャケットを、断熱材を設けずコンクリート供試体に密着させ、コンクリート供試体の中心温度に熱媒ジャケット内の水の温度を追随させて、コンクリート供試体を断熱状態に保って、断熱温度上昇量(Q
∞(℃))測定した。
その結果を表5に示す。
【0042】
(試験例4)耐久性能試験(中性化試験)
上記「コンクリートの調製1」で調製した各コンクリートを用いて、各コンクリート試験体を製造して、JIS A 1153:2012の「コンクリートの促進中性化試験方法」における中性化速度係数(mm/√週)求めた。その結果を表5に示す。
【0043】
(試験例5)耐久性能試験(塩分浸透抵抗性試験)
上記「コンクリートの調製1」で調製した各コンクリートを用いて、各コンクリート試験体を製造し、土木学会制定「電気泳動によるコンクリートの実効拡散係数試験方法」(JSCE−G 571:2010)における実効拡散係数(cm
2/年)を求めた。その結果を表5に示す。
【0044】
(試験例6)耐久性能試験(凍結融解抵抗性試験)
上記「コンクリートの調製1」で調製した各コンクリートを用いて、各コンクリート試験体を製造し、JIS A 1148:2010の「コンクリートの凍結融解試験方法」における相対動弾性係数(%)を求めた。その結果を表5に示す。
【0045】
(試験例7)環境負荷低減性試験(二酸化炭素排出量)
下記表4に示す、コンクリート各材料の製造時における二酸化炭素(CO
2)排出量の原単位(kg−CO
2/t)および表3に示すコンクリート配合の単位量に基づき、各コンクリートを製造する際に排出される二酸化炭素排出量を求めた。その結果を表5に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
但し、上記表4中、AE剤は極めて少量であるので、AE減水剤と同じ値とした。
【0048】
また、表4中、バージン材とは、使用する材料のうち産業廃棄物・副産物を除いた材料のことを意味し、環境負荷低減性能に示すバージン材投入量算定において、普通ポルトランドセメント中に含まれる産業廃棄物・副産物の使用量をセメント1トン(t)当り0.189トン(t)と仮定したため(公益社団法人土木学会:環境調和型コンクリート材料学の創造に関する研究委員会成果報告書,コンクリート技術シリーズ 96,pp.10−18,2011)、バージン材投入率は0.811なる。普通ポルトランドセメント以外の他のポルトランドセメントは産業廃棄物・副産物を使用していないので、バージン材投入率は1である。
なお、フライアッシュおよび高炉スラグは全量が産業副産物であり、バージン材投入率は0であり、その他の材料のバージン材投入率は1である。
これらのバージン材投入率に表3に示すコンクリートの単位量を乗じることによって、バージン材投入量を求めた。各コンクリート中のバージン材投入量も下記表5に示す。
【0049】
【表5】
【0050】
上記各試験により得られた結果に基づき、以下の評価を行った。
(評価1)強度発現性
表5中の材齢56日の各強度に関して、普通ポルトランドセメント(N−0−0−0)の40質量%を高炉スラグで置換した結合材(N−40−0−0)を市販の高炉セメントB種相当)を用いて製造したコンクリート(N−40−0−0)の強度値を基準値とした、表5の各コンクリートの強度比である標準養生強度発現性指標値を表6に示す。
【0051】
表5中の材齢56日の普通ポルトランドセメント(N−0−0−0)の40質量%を高炉スラグで置換した結合材(N−40−0−0)を(市販の高炉セメントB種相当)を用いて製造したコンクリート(N−40−0−0)の簡易断熱値を基準値とした、表5の各コンクリートの簡易断熱養生の圧縮強度の比である簡易断熱養生強度発現性指標値を表6に示す。
各コンクリートについて得られた材齢56日の標準養生強度発現性指標値と簡易断熱養生強度発現性指標値との平均値を強度発現性能評価値として表6に示す。
【0052】
【表6】
【0053】
(評価2)環境負荷低減性能
表5中の普通ポルトランドセメント(N−0−0−0)の40質量%を高炉スラグで置換した結合材(N−40−0−0)を市販の高炉セメントB種相当)を用いて製造したコンクリート(N−40−0−0)の二酸化炭素排出量を基準値とした、表5の各コンクリートの二酸化炭素排出量の比の値を求め、その逆数を二酸化炭素排出負荷指標値として評価し、それぞれ表7に示す。
【0054】
また、同様に、前記各コンクリートの資源消費負荷は、表5中の普通ポルトランドセメント(N−0−0−0)の40質量%を高炉スラグで置換した結合材(N−40−0−0)を市販の高炉セメントB種相当)を用いて製造したコンクリート(N−40−0−0)のバージン材投入量を基準値とした、表5の各コンクリートのバージン材投入量の比の値を求め、その逆数をバージン材投入指標値として評価し、それぞれ表7に示す。
各コンクリートについて得られた二酸化炭素排出負荷指標値とバージン材投入指標値との平均値を環境負荷低減性能評価値として表7に示す。
【0055】
【表7】
【0056】
(評価3)ひび割れ抵抗性
表5中の普通ポルトランドセメント(N−0−0−0)の40質量%を高炉スラグで置換した結合材(N−40−0−0)を市販の高炉セメントB種相当)を用いて製造したコンクリート(N−40−0−0)の断熱温度上昇量を基準値とした、表5の各コンクリートの断熱温度上昇量の比の値を求め、その逆数を温度ひび割れ抵抗性指標値として評価し、それぞれ表8に示す。
【0057】
また、同様に、前記各コンクリートの乾燥収縮ひび割れ抵抗性指標は、表5中の普通ポルトランドセメント(N−0−0−0)の40質量%を高炉スラグで置換した結合材(N−40−0−0)を市販の高炉セメントB種相当)を用いて製造したコンクリート(N−40−0−0)のひび割れ発生日数を基準値とした、表5の各コンクリートのひび割れ発生日数の比の値として評価し、それぞれ表8に示す。
各コンクリートについて得られた温度ひび割れ抵抗性指標値と乾燥収縮ひび割れ抵抗性指標値との平均値をひび割れ抵抗性能評価値として表8に示す。
【0058】
【表8】
【0059】
(評価4)耐久性能
表5中の普通ポルトランドセメント(N−0−0−0)の40質量%を高炉スラグで置換した結合材(N−40−0−0)を市販の高炉セメントB種相当)を用いて製造したコンクリート(N−40−0−0)の中性化速度係数値を基準値とした、表5の各コンクリートの中性化速度係数値の比の値を求め、その逆数を中性化抵抗性指標値として評価し、それぞれ表9に示す。
【0060】
また、表5中の普通ポルトランドセメント(N−0−0−0)の40質量%を高炉スラグで置換した結合材(N−40−0−0)を市販の高炉セメントB種相当)を用いて製造したコンクリート(N−40−0−0)の塩分浸透抵抗性値を基準値とした、表5の各コンクリートの塩分浸透抵抗性値の比の値を求め、その逆数を塩分浸透抵抗性指標値として評価し、それぞれ表9に示す。
【0061】
また、表5中の普通ポルトランドセメント(N−0−0−0)の40質量%を高炉スラグで置換した結合材(N−40−0−0)を市販の高炉セメントB種相当)を用いて製造したコンクリート(N−40−0−0)の相対動弾性係数値を基準値とした、表5の各コンクリートの相対動弾性係数値の比の値を求め、その比を凍結融解抵抗性指標値として評価し、それぞれ表9に示す。
各コンクリートについて得られた中性化抵抗性指標値、塩分浸透抵抗性指標値および凍結融解抵抗性指標値との平均値を耐久性能評価値として表9に示す。
【0062】
【表9】
【0063】
(評価5)総合評価
環境負荷低減コンクリートの各種性能評価値を平均して得られた総合性能指標評価値を表10に示す。
【0064】
【表10】
【0065】
上記表10より、普通ポルトランドセメントを高炉スラグとフライアッシュとでそれぞれ20質量%置換した結合材、また上記結合材に膨張材を15kg/m
3添加した環境負荷低減コンクリート、および早強ポルトランドセメントを高炉スラグとフライアッシュをそれぞれ20質量%置換した結合材に膨張材を15kg/m
3添加した環境負荷低減コンクリートが、基準となる高炉セメントB種コンクリート(市販の高炉セメントB種相当)(N−40−0−0)より環境負荷低減を含む性能において優れていると定量的に明らかにすることができることがわかった。