特許第6333710号(P6333710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333710有機ケイ素化合物の製造方法及び触媒組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333710
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】有機ケイ素化合物の製造方法及び触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/08 20060101AFI20180521BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20180521BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20180521BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180521BHJP
【FI】
   C07F7/08 B
   B01J31/22 Z
   C07F7/08 C
   C07F7/18 B
   C07F7/18 C
   C07F7/18 S
   !C07B61/00 300
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-249742(P2014-249742)
(22)【出願日】2014年12月10日
(65)【公開番号】特開2016-14005(P2016-14005A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年6月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-121387(P2014-121387)
(32)【優先日】2014年6月12日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183601
【弁理士】
【氏名又は名称】石丸 竜平
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】田中 真司
(72)【発明者】
【氏名】ベヌー,スリニバス
(72)【発明者】
【氏名】島田 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−081322(JP,A)
【文献】 特開平02−290886(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/043785(WO,A1)
【文献】 MARCINIEC, Bogdan et al.,Catalysis of hydrosilylation XXIII,Journal of Organometallic Chemistry,1993年,454,45-50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/08
B01J 31/22
C07F 7/18
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケン類及び/又はアルキン類とヒドロシラン類とを反応させる反応工程を含む有機ケイ素化合物の製造方法であって、
前記反応工程が、下記式(A)で表されるニッケル錯体化合物、及び下記式(B)で表されるボラン化合物又は水素化トリエチルホウ素ナトリウム(NaBEtH)、水素化トリエチルホウ素リチウム(LiBEtH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、及び水素化カリウム(KH)からなる群より選択される少なくとも1種のヒドリド還元剤の存在下で行われることを特徴とする、有機ケイ素化合物の製造方法。
【化1】
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜15の炭化水素基を表す。)
【化2】
(式(B)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
下記式(I)、(I’)、(II−1)、(II−2)、(II’−1)、又は(II’−2)で表される化合物を製造する方法である、請求項1に記載の有機ケイ素化合物の
製造方法。
【化3】
(式(I)、(I’)、(II−1)、(II−2)、(II’−1)、及び(II’−2)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シロキシ基、ケイ素数1〜50のポリシロキシ基、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R〜Rの2以上が炭化水素基である場合、2以上の炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
【請求項3】
下記式(A)で表されるニッケル錯体化合物、及び下記式(B)で表されるボラン化合物又は水素化トリエチルホウ素ナトリウム(NaBEtH)、水素化トリエチルホウ素リチウム(LiBEtH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、及び水素化カリウム(KH)からなる群より選択される少なくとも1種のヒドリド還元剤を含有するアルケン類及び/又はアルキン類のヒドロシリル化反応用の触媒組成物。
【化4】
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の炭化水素基を表す。)
【化5】
(式(B)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ケイ素化合物の製造方法及び触媒組成物に関し、より詳しくは二配座のアルカンジオナート配位子を有するニッケル錯体化合物とボラン化合物又はヒドリド還元剤とを用いた有機ケイ素化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルケン類やアルキン類等の不飽和炭化水素化合物にヒドロシラン類を付加させるヒドロシリル化反応は、炭素−ケイ素結合を形成することができる有用な反応の1つであり、幅広い分野に利用されている。このようなヒドロシリル化反応では、従来、Karstedt触媒やSpeier触媒等の白金錯体が主に用いられてきたが、近年、ニッケル等の遷移金属をヒドロシリル化反応に利用する方法が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1及び2には、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属錯体を触媒として利用したヒドロシリル化反応が提案されており、特許文献1には三座ピリジンジイミンを、特許文献2にはターピリジンを配位子とする錯体が記載されている。また、非特許文献1には、ニッケル(II)アセチルアセトナート(Ni(acac))を触媒として、非特許文献2〜4には、下記式に示される種々のニッケル錯体を触媒として利用したヒドロシリル化反応が記載されている。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012−532884号公報
【特許文献2】特表2012−532885号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】B. Marciniec, H. Maciejewski, J. Organomet. Chem. Soc. 1993,454, 45.
【非特許文献2】Y. Kiso, M. Kumada, K. Maeda, K. Sumitani, K. Tamao, J. Organomet. Chem. Soc. 1973, 50, 311.
【非特許文献3】H. Maciejewski, B. Marciniec, I. Kownacki, J. Organomet. Chem. Soc. 2000, 597, 175.
【非特許文献4】Lipschutz, M. I.; Tilley, T. D. Chem. Commun. 2012, 48, 7146-7148.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のようにアルケン類やアルキン類のヒドロシリル化反応は、炭素−ケイ素結合を形成することができる有用な反応であり、かかる反応をより収率良く、より安価に実施する
ことができれば、有機ケイ素化合物を利用した材料等のコスト低減に繋がる優れた技術になり得る。
本発明は、アルケン類やアルキン類のヒドロシリル化反応において触媒として働く化合物を見出し、有機ケイ素化合物の新たな製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アルケン類やアルキン類のヒドロシリル化反応において、二配座のアルカンジオナート配位子を有するニッケル錯体化合物とボラン化合物又はヒドリド還元剤とを用いることにより、反応が効率良く進行することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> アルケン類及び/又はアルキン類とヒドロシラン類とを反応させる反応工程を含む有機ケイ素化合物の製造方法であって、
前記反応工程が、下記式(A)で表されるニッケル錯体化合物、及び下記式(B)で表されるボラン化合物又はヒドリド還元剤の存在下で行われることを特徴とする、有機ケイ素化合物の製造方法。
【化2】
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の炭化水素基を表す。)
【化3】
(式(B)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
<2> 下記式(I)、(I’)、(II−1)、(II−2)、(II’−1)、又は(II’−2)で表される化合物を製造する方法である、<1>に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
【化4】
(式(I)、(I’)、(II−1)、(II−2)、(II’−1)、及び(II’−2)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シロキシ基、ケイ素数1〜50のポリシロキシ基、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R〜Rの2以上が炭化水素基である場合、2以上の炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
<3> 前記ヒドリド還元剤が、水素化トリエチルホウ素ナトリウム(NaBEtH)、水素化トリエチルホウ素リチウム(LiBEtH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(NaB(OAc)H)、水素化ナトリウム(NaH)、水素化カリウム(KH)、及び水素化ジイソブチルアルミニウム(Al(i−Bu)H)からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>又は<2>に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
<4> 下記式(A)で表されるニッケル錯体化合物、及び下記式(B)で表されるボラン化合物又はヒドリド還元剤を含有するアルケン類及び/又はアルキン類のヒドロシリル化反応用の触媒組成物。
【化5】
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の炭化水素基を表す。)
【化6】
(式(B)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有機ケイ素化合物を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の有機ケイ素化合物の製造方法及び触媒組成物の詳細を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0011】
<有機ケイ素化合物の製造方法>
本発明の一態様である有機ケイ素化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、アルケン類及び/又はアルキン類とヒドロシラン類とを反応させる反応工程(以下、「反応工程」と略す場合がある。)を含む有機ケイ素化合物の製造方法であり、反応工程が、下記式(A)で表されるニッケル錯体化合物、及び下記式(B)で表されるボラン化合物又はヒドリド還元剤の存在下で行われることを特徴とする。
【化7】
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の炭化水素基を表す。)
【化8】
(式(B)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
本発明者らは、有機ケイ素化合物の新たな製造方法を求めて鋭意検討を重ねた結果、アルケン類やアルキン類のヒドロシリル化反応において、二配座のアルカンジオナート配位子を有するニッケル錯体化合物とボラン化合物又はヒドリド還元剤とを用いることにより、反応が効率良く進行することを見出したのである。かかる反応のメカニズムは、十分に明らかとなっていないが、ニッケル錯体化合物が触媒として、ボラン化合物やヒドリド還元剤が助触媒として働いているものと考えられる。また、これらの化合物は、空気中で比較的安定であるため、取り扱いが容易で、操作等が簡便になる利点もある。さらに、比較的穏和な条件でヒドロシリル化反応を進めることもできるため、工業的に非常に適した製
造方法となるのである。
なお、「アルケン類」とは炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有する有機化合物を、「アルキン類」とは炭素−炭素三重結合を少なくとも1つ有する有機化合物を、「ヒドロシラン類」とはケイ素−水素結合(Si−H)を少なくとも1つ有する化合物を、「有機ケイ素化合物」とは炭素−ケイ素結合(C−Si)を少なくとも1つ有する有機化合物を、「アルケン類及び/又はアルキン類とヒドロシラン類」との反応とはアルケン類及び/又はアルキン類のヒドロシリル化反応を意味するものとする。従って、「アルケン類及び/又はアルキン類」と「ヒドロシラン類」の反応として、例えば下記の反応式で示されるような反応が挙げられる(「アルケン類」が「1−オクテン」であり、「ヒドロシラン類」がトリエチルシランである。)。
【化9】
また、「反応工程が、下記式(A)で表されるニッケル錯体化合物、及び下記式(B)で表されるボラン化合物又はヒドリド還元剤の存在下で行われる」とは、これらの化合物が反応系中に存在する状態でヒドロシリル化反応を進めることを意味し、例えば反応中や反応後にこれらの化合物の組成が変化してもよいことを意味する。
さらに、「ヒドリド還元剤」とは、水素アニオンを供給する公知の還元剤を意味するものとする。
【0012】
(式(A)で表されるニッケル錯体化合物)
反応工程は、下記式(A)で表されるニッケル錯体化合物の存在下で行われる工程であるが、式(A)に該当するものであれば、ニッケル錯体化合物の具体的種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【化10】
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の炭化水素基を表す。)
はそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の炭化水素基を表しているが、「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」とは、アミノ基(−NH)、ヒドロキシル基(−OH)、メルカプト基(−SH)、フルオロ基(−F)等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はハロゲン原子を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)等の窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を含む連結基を炭素骨格の内部に含んでいてもよいことを意味する。従って、「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」炭化水素基には、例えば−CH−CH−OHのようにヒドロキシル基を含んでいる炭素数2の炭化水素基、及び−CH−O−CHのようにエーテル基を炭素骨格の内部に含んでいる炭素数2の炭化水素基等が含まれる。
の炭素数は、好ましくは13以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
また、Rは直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素−炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよい(分岐構造、環状構造、及び炭素−炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種の原子を有していてもよい。)。
具体的なRとしては、メチル基(−CH)、エチル基(−C)、n−プロピル基(−CHCHCH)、イソプロピル基(−CH(CH)CH)、n−ブチル基(−CHCHCHCH)、t−ブチル基(−C(CH)、トリフルオ
ロメチル基(−CF)等が挙げられる。
【0013】
式(A)で表されるニッケル錯体化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。なお、これらの化合物は、市販されているものがあり、それを適宜採用することができる。
【化11】
【0014】
反応工程における式(A)で表されるニッケル錯体化合物の配合量(存在量)は、目的に応じて適宜変更することができるが、アルケン類及び/又はアルキン類の配合量(存在量)に対して、通常0.1mol%以上、好ましくは0.5mol%以上、より好ましくは1mol%以上であり、通常10mol%以下、好ましくは5mol%以下、より好ましくは3mol%以下である。上記範囲内であると、有機ケイ素化合物をより収率良く製造することができる。
【0015】
(式(B)で表されるボラン化合物)
反応工程は、下記式(B)で表されるボラン化合物の存在下で行われる工程であるが、式(B)に該当するものであれば、ボラン化合物の具体的種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【化12】
(式(B)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表しているが、「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」については、Rと同義である。
が炭化水素基である場合、Rの炭素数は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下である。
また、Rが炭化水素基である場合、Rは直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素−炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよい(分岐構造、環状構造、及び炭素−炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。)。
具体的なRとしては、ペンタフルオロフェニル基(−C)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、ヨード基(−I)、フッ素基(−F)、フェニル基(−C)等が挙げられる。
【0016】
式(B)で表されるボラン化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化13】
【0017】
(ヒドリド還元剤)
反応工程は、ヒドリド還元剤の存在下で行われる工程であるが、ヒドリド還元剤の具体的種類は特に限定されず、目的に応じて公知のヒドリド還元剤を適宜選択することができる。
【0018】
ヒドリド還元剤としては、水素化トリエチルホウ素ナトリウム(NaBEtH)、水素化トリエチルホウ素リチウム(LiBEtH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(NaB(OAc)H)、水素化ナトリウム(NaH)、水素化カリウム(KH)、及び水素化ジイソブチルアルミニウム(Al(i−Bu)H)等が挙げられる。
【0019】
反応工程における式(B)で表されるボラン化合物又はヒドリド還元剤の配合量(存在量)は、目的に応じて適宜変更することができるが、アルケン類及び/又はアルキン類の
配合量(存在量)に対して、通常0.1mol%以上、好ましくは0.5mol%以上、より好ましくは1mol%以上であり、通常10mol%以下、好ましくは5mol%以下、より好ましくは3mol%以下である。上記範囲内であると、有機ケイ素化合物をより収率良く製造することができる。
【0020】
反応工程における式(A)で表されるニッケル錯体化合物と式(B)で表されるボラン化合物又はヒドリド還元剤との配合比率は、目的に応じて適宜変更することができるが、式(A)で表されるニッケル錯体化合物の配合量(存在量)/式(B)で表されるボラン化合物の配合量(存在量)又はヒドリド還元剤の配合量(存在量)として、通常0.2以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.8以上であり、通常5以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。上記範囲内であると、有機ケイ素化合物をより収率良く製造することができる。
【0021】
(有機ケイ素化合物)
本発明の製造方法における有機ケイ素化合物は、前述のように炭素−ケイ素結合(C−Si)を少なくとも有する有機化合物であれば、具体的な構造は特に限定されず、幅広い有機ケイ素化合物に適用することができる。
具体的には、下記式(I)、(I’)、(II−1)、(II−2)、(II’−1)、又は(II’−2)で表される化合物が挙げられる。
【化14】
(式(I)、(I’)、(II−1)、(II−2)、(II’−1)、及び(II’−2)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シロキシ基、ケイ素数1〜50のポリシロキシ基、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R〜Rの2以上が炭化水素基である場合、2以上の炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
即ち、上記式(I)及び(I’)で表される化合物は、アルケン類とヒドロシラン類との反応によって得られる有機ケイ素化合物であり、上記式(II−1)〜(II−2)及
び(II’−1)〜(II’−2)で表される化合物は、アルキン類とヒドロシラン類との反応によって得られる有機ケイ素化合物である。また、SiR基が付加する位置は特に限定されず、さらにアルキン類とヒドロシラン類との反応によって得られる有機ケイ素化合物は、Z体、E体、Z体とE体の混合物の何れであってもよいことを意味する。
【0022】
〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表しているが、「窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」とは、クロロ基(−Cl)、フルオロ基(−F)、アミノ基(−NH)、ニトロ基(−NO)、エポキシ基、ヒドロキシル基(−OH)、カルボニル基(−C(=O)−)、tert−ブチルジメチルシリル基(−SiBuMe)、アジ基(−N)等の窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、又はハロゲン原子を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)等の窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、又はハロゲン原子を含む連結基を炭素骨格の内部又は末端に含んでいてもよいことを意味する。
〜Rが炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは19以下、より好ましくは17以下、さらに好ましくは15以下である。なお、R〜Rの2以上が炭化水素基である場合、2以上の炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよいが、例えばRとRが連結してシクロヘプタン構造、シクロヘプテン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘキセン構造等を形成していることが挙げられる。
〜Rが炭化水素基である場合の炭化水素基に含まれる官能基は、クロロ基(−Cl)、フルオロ基(−F)、アミノ基(−NH)、ニトロ基(−NO)、エポキシ基、ヒドロキシル基(−OH)、カルボニル基(−C(=O)−)、tert−ブチルジメチルシリル基(−SiBuMe)、アジ基(−N)等が挙げられる。
また、R〜Rが炭化水素基である場合、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素−炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよい(分岐構造、環状構造、及び炭素−炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。)。
具体的なR〜Rとしては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アミノメチル基、N,N−ジメチルアミノメチル基、N,N−ジエチルアミノメチル基n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、メチルプロピル基、メチルブチル基、メチルペンチル基、メチルへキシル基、メチルヘプチル基、ジメチルプロピル基、ジメチルブチル基、ジメチルペンチル基、ジメチルへキシル基、ジメチルヘプチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルへキシル基、フェニルヘプチル基等が挙げられる。
【0023】
はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シロキシ基、ケイ素数1〜50のポリシロキシ基、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表しているが、「窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」については、R〜Rと同義である。
が炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは19以下、より好ましくは17以下、さらに好ましくは15以下である。
がポリシロキシ基である場合のケイ素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは48以下、より好ましくは46以下、さらに好ましくは45以下である。
また、Rが炭化水素基である場合、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素−炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよい(分岐構造、環状構造、及び炭素−炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。)。
具体的なRとしては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、ポリメチルシロキシ基等が挙げられる。この中でも、水素原子が好ましい。
はそれぞれ独立して水素原子等を表しているが、2つのRが水素原子であることが特に好ましい。水素原子が2つ以上であると、より収率良く有機ケイ素化合物を製造することができる。
【0024】
(アルケン類・アルキン類)
本発明の製造方法に使用するアルケン類及び/又はアルキン類の種類は特に限定されず、製造目的である有機ケイ素化合物に応じて適宜選択されるべきである。
基本的に製造目的である有機ケイ素化合物と共通する構造を有するアルケン類やアルキン類を選択すべきであり、例えば式(I)、(I’)、(II−1)、(II−2)、(II’−1)、又は(II’−2)で表される化合物を製造目的とする場合、アルケン類としては下記式(i)で表される化合物が、アルキン類としては(ii)で表される化合物が挙げられる。
【化15】
(式(i)及び(ii)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R〜Rの2以上が炭化水素基である場合、2以上の炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
例えば下記式で表されるジエン類やトリエン類に対して、位置選択的にヒドロシリル化反応を進めることもできる。また、エポキシ基のような活性な官能基の存在するアルケン類に対しても選択的にヒドロシリル化反応を進めることもできる。
【化16】
具体的なアルケン類としては、1−オクテン、1−デセン、4−フェニル−1−ブテン、6,6−ジメチル−1−ヘプテン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、スチレン、シクロヘキセン、イソプレン、3−メチレン−7−メチル−1,6−オクタジエン(β−ミルセン)、2,2−ジメチル−3−(3−メチレン−4−ペンテニル)オキソラン等が挙げられる。
また、具体的なアルキン類としては、ジフェニルアセチレン、1−フェニル−1−プロピン、4−オクチン、フェニルアセチレン等が挙げられる。
【0025】
(ヒドロシラン類)
本発明の製造方法に使用するヒドロシラン類の種類は特に限定されず、製造目的である有機ケイ素化合物に応じて適宜選択されるべきである。
基本的に製造目的である有機ケイ素化合物と共通する構造を有するヒドロシラン類を選択すべきであり、例えば式(I)、(I’)、(II−1)、(II−2)、(II’−1)、又は(II’−2)で表される化合物を製造目的とする場合、ヒドロシラン類としては下記式(s)で表される化合物が挙げられる。
【化17】
(式(s)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シロキシ基、ケイ素数1〜50のポリシロキシ基、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
具体的なヒドロシラン類としては、ジエチルシラン、フェニルシラン、ジフェニルシラン、トリフェニルシラン、ジフェニルメチルシラン、メチルフェニルシラン、ジメチルフェニルシラン、トリエトキシシラン、トリエチルシラン、ジエトキシメチルシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDS)、メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン(MD’M)等が挙げられる。
【0026】
反応工程におけるアルケン類及び/又はアルキン類とヒドロシラン類の配合量(存在量)は、目的に応じて適宜変更することができるが、ヒドロシラン類の配合量(存在量)は、アルケン類及び/又はアルキン類の配合量(存在量)に対して、物質量([mol])で通常1倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、通常50倍以下、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下である。上記範囲内であると、有機ケイ素化合物をより収率良く製造することができる。
【0027】
反応工程は、溶媒を使用しても、使用しなくてもよいが、使用する場合の具体的な溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0028】
(反応条件)
反応工程における反応温度、反応時間等の条件は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
反応温度は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは80℃以下である。上記範囲内であれば、有機ケイ素化合物をより収率良く製造することができる。
反応時間は、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、より好ましくは10時間以上であり、通常60時間以下、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下である。
反応は、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
【0029】
<触媒組成物>
前述のように、式(A)で表されるニッケル錯体化合物、及び式(B)で表されるボラン化合物又はヒドリド還元剤を用いることにより、アルケン類やアルキン類のヒドロシリル化反応を効率良く進めることができるが、かかるニッケル錯体化合物とボラン化合物又
はヒドリド還元剤とを含有するアルケン類及び/又はアルキン類のヒドロシリル化反応用の触媒組成物(以下、「本発明の触媒組成物」と略す場合がある。)も本発明の一態様である。
【化18】
(式(A)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜15の炭化水素基を表す。)
【化19】
(式(B)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
本発明の触媒組成物における式(A)で表されるニッケル錯体化合物と式(B)で表されるボラン化合物又はヒドリド還元剤との含有比率は、目的に応じて適宜変更することができるが、式(A)で表されるニッケル錯体化合物の含有量/式(B)で表されるボラン化合物の含有量又はヒドリド還元剤の含有量として、通常0.2以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.8以上であり、通常5以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
本発明の触媒組成物は、式(A)で表されるニッケル錯体化合物と式(B)で表されるボラン化合物又はヒドリド還元剤以外の化合物を含有していてもよく、例えば溶媒を含有することが挙げられる。具体的な溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0031】
[ニッケル錯体化合物とボラン化合物の存在下での反応]
<実施例1〜15>
バイアルに表1に示すニッケル錯体化合物とB(Cを入れ、CHCl(1mL)を加えて溶液(黄色)を調製した。ここに、1−オクテンと表1に示すヒドロシラン類を順に加えて、室温下で反応を開始した(ヒドロシラン類を加えた後、間もなくして溶液の色は黄褐色に変化した。)。表1に示す時間経過後、反応溶液を空気にさらして反応を終了させ(溶液の色は無色に変化した。)、GC分析によって下記生成物の収率を
定量した。結果を表1に示す。
【化20】
【0032】
【表1】
【0033】
[ニッケル錯体化合物とヒドリド還元剤の存在下での反応]
以下、実施例23〜実施例26を参考例1〜参考例4と読み替えるものとする。
<実施例16〜26>
バイアルに表2に示すニッケル錯体化合物(0.005mmol)のTHF溶液(5mL)を入れ、続いてニッケル錯体化合物に対して20倍モル量の1−オクテンと表2に示すヒドロシラン類、等モル量のヒドリド還元剤を順に加えて、反応を開始した。表2に示す時間経過後、反応溶液を空気にさらして反応を終了させ(溶液の色は無色に変化した。)、GC分析によって下記生成物の収率を定量した。結果を表2に示す。
【化21】
【0034】
【表2】
【0035】
[ニッケル錯体化合物とヒドリド還元剤の存在下での反応]
<実施例27>
バイアルに下記式で表されるニッケル錯体化合物(0.005mmol)のTHF溶液(5mL)を入れ、続いてニッケル錯体化合物に対して200倍モル量のイソプレンとトリエトキシシラン(HSi(EtO))、1倍モル量の水素化トリエチルホウ素ナトリウムを順に加えて、反応を開始した。2時間経過後、反応溶液を空気にさらして反応を終了させ(溶液の色は無色に変化した。)、GC分析によって下記生成物の収率を定量した結果、65%であった。
【化22】
【0036】
<実施例28〜30>
バイアルに下記式で表されるニッケル錯体化合物(0.005mmol)のTHF溶液(5mL)を入れ、続いてニッケル錯体化合物に対して200倍モル量の3−メチレン−7−メチル−1,6−オクタジエンと表3のヒドロシラン類、1倍モル量の水素化トリエチルホウ素ナトリウムを順に加えて、反応を開始した。表3に示す時間経過後、反応溶液を空気にさらして反応を終了させ(溶液の色は無色に変化した。)、GC分析によって下記生成物の収率を定量した。結果を表3に示す。
【化23】
【0037】
【表3】
【0038】
<実施例31>
バイアルに下記式で表されるニッケル錯体化合物(0.005mmol)のTHF溶液(5mL)を入れ、続いてニッケル錯体化合物に対して200倍モル量の2,2−ジメチル−3−(3−メチレン−4−ペンテニル)オキソランとトリエトキシシラン(HSi(EtO))、1倍モル量の水素化トリエチルホウ素ナトリウムを順に加えて、反応を開始した。18時間経過後、反応溶液を空気にさらして反応を終了させ(溶液の色は無色に変化した。)、GC分析によって下記生成物の収率を定量した結果、90%であり、鎖状の生成物と分岐状の生成物の比率は19/81であった。
【化24】
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の製造方法によって得られた有機ケイ素化合物は、様々な材料の原料として使用することができる。