特許第6333732号(P6333732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333732
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】気体浄化フィルターユニット
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/10 20060101AFI20180521BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20180521BHJP
   B01D 63/14 20060101ALI20180521BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20180521BHJP
   B01D 71/36 20060101ALI20180521BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20180521BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20180521BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C01B13/10 Z
   B01D53/04 110
   B01D63/14
   B01D71/32
   B01D71/36
   B01J20/10 D
   B01J20/18 B
   B01J20/28 Z
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-552031(P2014-552031)
(86)(22)【出願日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】JP2013082961
(87)【国際公開番号】WO2014092046
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-273367(P2012-273367)
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野崎 文雄
(72)【発明者】
【氏名】島田 豊
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/069774(WO,A1)
【文献】 特開2009−286683(JP,A)
【文献】 特開平03−016638(JP,A)
【文献】 特開平11−335102(JP,A)
【文献】 特開平09−142809(JP,A)
【文献】 特開2009−066027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/00 − 13/36
B01D 53/04
B01D 63/14
B01D 71/32
B01D 71/36
B01J 20/10
B01J 20/18
B01J 20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンガスに含まれる不純物を除去する気体浄化フィルターユニットであって、
前記不純物から、気体成分を除去する第一除去部と、該第一除去部の後段に配置され、前記気体成分が除去された不純物から、固体微粒子を除去する第二除去部とを備えたことを特徴とする気体浄化フィルターユニット。
【請求項2】
前記第一除去部は、前記気体成分を吸着する吸着材を備えることを特徴とする請求項1に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項3】
前記吸着材は、シリカゲルであることを特徴とする請求項2に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項4】
前記シリカゲルは多数の細孔を有し、それぞれの細孔の口径は10nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項5】
前記シリカゲルは、直径が0.5mm以上、3mm以下の球状を成すことを特徴とする請求項3または4に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項6】
前記吸着材は、シリカ、およびアルミナを含むことを特徴とする請求項2に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項7】
前記吸着材は、アルミナに対するシリカの比率が10以上の高シリカゼオライトからなることを特徴とする請求項6に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項8】
前記第二除去部は、前記固体微粒子を漉し取る部位を備えることを特徴とする請求項1に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項9】
前記第二除去部は、オゾン耐蝕性の樹脂ケースと、該樹脂ケース内に収容された前記部位とから構成されてなることを特徴とする請求項8に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項10】
前記部位はシート状を成す濾材であり、前記樹脂ケース内において折り畳まれて収容されていることを特徴とする請求項9に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項11】
前記濾材は、公称孔径が0.2μm以上、0.5μm以下の範囲であることを特徴とする請求項10に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項12】
前記樹脂ケース、および前記濾材は、フッ素系樹脂からなることを特徴とする請求項10に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項13】
前記フッ素系樹脂は、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂のうち、少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項12に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項14】
前記第一除去部は、吸着材を収容する外装体と、該外装体の一部に形成され、前記第二除去部を構成する樹脂ケースを着脱可能に収容する収容部とを備えていることを特徴とする請求項10に記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項15】
前記収容部は、ステンレスからなる網部材を備えていることを特徴とする請求項14記載の気体浄化フィルターユニット。
【請求項16】
前記第一除去部と前記第二除去部とは、互いに隣接状態に連続配置された一体構造を成すことを特徴とする請求項1から15いずれか1項記載の気体浄化フィルターユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体浄化フィルターユニットに関し、詳しくは、オゾンガス中に含まれる気体成分や固体微粒子などの不純物を取り除く技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、高い酸化能力に着目して、オゾン(O)が用いられている。オゾンは気体状態で使用する場合もあるが、水に溶かしてオゾン水として使用する場合もある。気体状態のオゾンを用いる場合としては、例えば、一連のフォトリソグラフィー工程において、エッチング処理後のレジスト除去に使用される。レジスト除去には、酸素プラズマを用いる処理手段がこれまで用いられてきたが、酸素プラズマを使用する場合には、例えば半導体ウエハのゲート酸化膜の耐性を劣化させる等の種々の障害が発生することが知られている。
【0003】
そこで、こうしたダメージを発生させないダメージレスのレジスト除去方法として、オゾンをレジスト表面に吹き付けて、レジストを酸化分解する方法が提案されている。さらに、分解効率を向上させるために、水分の存在下、オゾンを吹き付ける方法も提案されている。例えば、特許文献1には、フォトリソグラフィー工程におけるレジスト除去処理から洗浄・乾燥迄の一連の処理を単一装置で行うに際して、水蒸気供給手段により供給された水蒸気によりレジスト表面に薄い純水の液膜を形成し、かかる液膜に、オゾン供給手段により供給されたオゾンを溶解させることで、レジストをカルボン酸、二酸化炭素、水等に分解する技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、オゾン水を用いて基盤を洗浄する構成が開示されている。かかる構成では、オゾン発生器から発生させたオゾンと、オゾンを溶解させる水とを、気体のみを通し液体の透過を阻止する非多孔性オゾンガス透過高分子膜で隔てて隣接させることにより、オゾンを直接水に接触させる場合とは異なり、オゾンを加圧状態で、非多孔性オゾンガス透過高分子膜を透過させて、オゾン発生に由来する金属粉等が水に溶解しないクリーンで高濃度のオゾン水の生成を行うことが提案されている。
【0005】
しかしながら、オゾンを半導体装置の製造工程に適用する際の課題として、オゾンに含まれる不純物による汚染、特に金属汚染の懸念があった。汚染源となる金属は、電極間に無声放電を行わせることでオゾンを生成するに際して発生する電極由来の金属、あるいは、オゾンの供給路として使用される金属配管とオゾンの反応生成物、また、オゾン生成時に副生した窒素酸化物との反応生成物などが挙げられる。
【0006】
こうした金属不純物は、電気的性質、例えば、電気伝導率、抵抗、誘電率など、デバイスの性能にとって大きな影響を与える。金属不純物は、一般に、デバイス材料よりも導電性が大きいので、低濃度の金属不純物による汚染であっても、フェルミ準位においてまたは個々の電荷キャリアとして、これらの性質に深い影響を及ぼす。多くの半導体材料の電気的性質に及ぼす金属濃度の影響は、多くの文献において知られている。
【0007】
半導体装置の製造工程等に用いるオゾンから不純物を取り除く方法として、オゾン発生源からフィルターユニットを介在させて半導体の製造工程にオゾンを供給する方法が知られている。従来のフィルターユニットとして、例えば、不純物を吸着する気融着材を用い、気体状の不純物を除去するものが知られている。また、シート状の濾材などを用いて、固体微粒子状の不純物を漉し取るものも知られている。一方、オゾン発生器の無声放電を行うための電極構造や電極材料を改善して、金属不純物の少ないオゾンを発生させることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−176833号公報
【特許文献1】特開2002−057136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来知られているオゾンから不純物を除去するフィルターユニットとしては、主に気体状の不純物を除去することを目的としたものか、あるいは、固体微粒子状の不純物を除去することを目的としたものしか知られておらず、オゾンに含まれる気体状の不純物と固体微粒子状の不純物の両方を効率よく除去するフィルターユニットが望まれていた。
【0010】
また、オゾン発生器の電極構造や電極材料を改善するだけでは、発生させたオゾンに含まれる金属不純物の量を、半導体装置の製造工程を汚染することのないレベルにまで低減することは困難であった。
【0011】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、オゾンに含まれる気体状の不純物と固体微粒子状の不純物の両方を効率よく除去可能であり、半導体装置の製造工程を汚染することのないオゾンを供給可能にする気体浄化フィルターユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は、次のような気体浄化フィルターユニットを提供した。
すなわち、本発明の気体浄化フィルターユニットは、オゾンガスに含まれる不純物を除去する気体浄化フィルターユニットであって、
前記不純物から、気体成分を除去する第一除去部と、該第一除去部の後段に配置され、前記気体成分が除去された不純物から、固体微粒子を除去する第二除去部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
前記第一除去部は、前記気体成分を吸着する吸着材を備えることを特徴とする。
【0014】
前記吸着材は、シリカゲルであることを特徴とする。
【0015】
前記シリカゲルは多数の細孔を有し、それぞれの細孔の口径は10nm以下であることを特徴とする。
【0016】
前記シリカゲルは、直径が0.5mm以上、3mm以下の球状を成すことを特徴とする。
【0017】
前記吸着材は、シリカ、およびアルミナを含むことを特徴とする。
【0018】
前記吸着材は、アルミナに対するシリカの比率が10以上の高シリカゼオライトからなることを特徴とする。
【0019】
前記第二除去部は、前記固体微粒子を漉し取る部位を備えることを特徴とする。
【0020】
前記第二除去部は、オゾン耐蝕性の樹脂ケースと、該樹脂ケース内に収容された前記部位とから構成されてなることを特徴とする。
【0021】
前記部位はシート状を成す濾材であり、前記樹脂ケース内において折り畳まれて収容されていることを特徴とする。
【0022】
前記濾材は、公称孔径が0.2μm以上、0.5μm以下の範囲であることを特徴とする。
【0023】
前記樹脂ケース、および前記濾材は、フッ素系樹脂からなることを特徴とする。
【0024】
前記フッ素系樹脂は、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂のうち、少なくとも1種以上を含むことを特徴とする。
【0025】
前記第一除去部は、前記吸着材を収容する外装体と、該外装体の一部に形成され、前記第二除去部を構成する樹脂ケースを着脱可能に収容する収容部とを備えていることを特徴とする。
【0026】
前記収容部は、ステンレスからなる網部材を備えていることを特徴とする。
また、前記第一除去部と前記第二除去部とは、互いに隣接状態に連続配置された一体構造を成すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の気体浄化フィルターユニットによれば、オゾン発生装置によって発生させたオゾンに含まれる不純物のうち、気体成分の不純物を除去する第一除去部と、この第一除去部の後段に配置され、気体成分が除去された不純物から、更に固体微粒子の不純物を除去する第二除去部とから気体浄化フィルターユニットを構成することによって、オゾン発生器から発生させたオゾンに含まれる気体状の不純物と、固体微粒子状の不純物の両方を、効率よく除去することが可能になる。
【0028】
このような構成の気体浄化フィルターユニットを、例えばオゾン発生器と、半導体装置の製造工程との間にインラインフィルターとして挿入すれば、半導体装置の製造におけるオゾン処理工程に対して、金属不純物の極めて少ない高純度なオゾンを供給することが可能になり、半導体装置が重金属等に汚染される懸念を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る気体浄化フィルターユニットを示す断面図である。
図2A】本発明の実施形態に係る気体浄化フィルターユニットにおける、第一除去部から第二除去部を外した状態を示す断面図である。
図2B】本発明の実施形態に係る気体浄化フィルターユニットにおける、第二除去部の概略断面図である。
図3】第二除去部に好適に用いられる濾材の構造を示す要部破断斜視図である。
図4】濾材の収容状態を示す要部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明に係る気体浄化フィルターユニットの一実施形態について説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0031】
図1は、本実施形態における気体浄化フィルターユニットを示す断面図である。
気体浄化フィルターユニット10は、例えば、半導体装置の製造工程に用いるオゾン(オゾンガス)を浄化するものであり、オゾンの発生装置と、半導体装置の製造工程との間でオゾンを供給する配管の途上に挿入されるインラインフィルターとして用いることができる。
【0032】
気体浄化フィルターユニット10は、オゾン発生装置によって発生させたオゾンに含まれる不純物のうち、気体成分の不純物を除去する第一除去部11と、この第一除去部11の後段に配置され、気体成分が除去された不純物から、更に固体微粒子の不純物を除去する第二除去部12とを備えている。こうした気体浄化フィルターユニット10の流入端10aから不純物を含むオゾンを流入させ、第一除去部11および第二除去部12を透過させることにより、流出端10bから不純物が除去されたオゾンが排出される(図1中の点線矢印参照)。
【0033】
第一除去部11は、一端側が、オゾン発生装置で発生させた不純物を含むオゾンを気体01は、外形が略円筒形の外装体21を備えている。外装体21は、オゾンの酸化力に対して耐久性があり、かつ、剛性に富んだ素材、例えば、ステンレスによって形成されている。外装体21の一端側は、オゾン発生装置に繋がる配管を接続するために、所定の口径となるように狭められた接続部22が形成されている。
【0034】
第一除去部11の他端側には、第二除去部12を着脱可能に収容する収容部23が形成されている。こうした収容部23には、外形形状が略円筒形を成す第二除去部12を受け入れ可能なように、円筒状の空間が形成されている。そして、この収容部23には、オゾンに対して耐久性のあるステンレスからなる網部材24を備えている。網部材24は、第一除去部11を透過したオゾンを、後段側の第二除去部12に流入可能にする。
【0035】
第一除去部11を構成する外装体21の内部には、オゾン発生装置によって発生させたオゾンに含まれる不純物のうち、気体成分の不純物を物理吸着、または化学吸着して除去する吸着材25が充填されている。外装体21の一端側は、こうした吸着材25を容易に入れ替えられるように、開閉可能な構造であることが好ましい。
【0036】
吸着材25は、オゾンガスから金属化合物を除去する精製材料(purification material)が用いられる。不純物を含むオゾンを吸着材25と接触させることにより、気体成分の不純物が低い水準まで低減される。不純物を含むオゾンが第一除去部11を透過することにより、オゾン中の気体成分の全金属汚染は、100体積ppt未満、好ましくは10体積ppt未満、より好ましくは1体積ppt未満に低減される。
【0037】
吸着材25として用いられる精製材料は、例えば、オゾン分解触媒作用を持つ遷移金属元素を含まない高表面積無機酸化物である。いくつかの精製材料は、本発明の方法の金属除去を引き起こすことが分かっている。吸着材25として用いられる精製材料の一例として、約4以上のSi/Al比を有する高シリカゼオライトを含む高表面積無機化合物が挙げられる。好ましくは、SiO/Al比が10以上の高シリカゼオライトが良い。また、重金属の含有が極めて少ないか、あるいは含まないことも重要である。
【0038】
吸着材25として用いられる精製材料は、好ましくは約20m/gを超える、およびより好ましくは約100m/gを超える表面積を有するが、より大きな表面積でも許容しうる。材料の表面積は、内側および外側両方の表面積を考慮にいれなければならない。精製材料の表面積は、業界標準により、通常はBrunauer−Emmett−Teller法(BET法)を使用して、測定することができる。
【0039】
簡単には、BET法は、固体の外部表面および接触可能な内部細孔表面を、吸着質の完全な単分子層で覆うのに必要とされる吸着質または吸着ガス(例えば、窒素、クリプトン)の量を測定する。この単分子層の容量を、BET式を用いて吸着等温線から計算することができ、次いで、表面積を、吸着質分子の寸法を用いて単分子層の容量から計算することができる。
【0040】
吸着材25として用いられる精製材料において使用される金属酸化物の種類には、これらに限らないが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩酸化物(時にはゼオライトと呼ばれる。)、酸化チタンが含まれる。
【0041】
好ましい実施形態として、精製材料は、オゾンによる化学的および物理的劣化に対して耐久性のある外装体21の中に、配設される。例えば、0.2raなどの最小限度の表面粗さを有する、316Lステンレスなどの高純度ステンレス鋼は、特に好ましい外装体21の容器である。腐食性、酸化性、または他の状態の反応性ガスが使用される、ある実施形態においては、容器は、操業条件下で安定な材料から選択される。
【0042】
吸着材25として用いられる精製材料として、上述したシリカゼオライト以外に、シリカゲルが好ましく挙げられる。
シリカゲル(silica gel)は、メタケイ酸ナトリウム(NaSiO)の水溶液から得られる酸成分を加水分解し、これによって得られるケイ酸ゲルを脱水、乾燥したものである。
【0043】
第一除去部11の外装体21に充填されるシリカゲルとしては、例えば、直径が0.5mm以上、3mm以下の球形に形成されたものが挙げられる。また、シリカゲルは多数の細孔を有し、それぞれの細孔の口径は10nm以下のものを用いることが、吸着力の面から好ましい。
【0044】
シリカゲルは、周知のとおり水分を吸収する性質があるが、シリカゲルの水分の含有量が増加すると金属化合物の除去能力が低下する懸念がある。これは、金属化合物を吸着するシリカゲルの細孔に、水分が先に吸着されてしまうためである。このため、吸着材25として用いるシリカゲルは、予め適切な水分量以下となるよう制御することが好ましい。
【0045】
吸着材25としてシリカゲルを用いる場合、高レベルオゾンに対する金属化合物の除去を効率的に行うことができる。上述したシリカゼオライトでは、数10g/m以上の高レベルオゾンを透過させた際に、オゾンの分解が促進され、分解熱による発熱によって、吸着した金属化合物を再放出してしまう可能性もある。しかし、吸着材25としてシリカゲルを用いることによって、オゾンの分解が抑制され、数g/m以下の低レベルオゾンから、数10g/m以上の高レベルオゾンまで、金属化合物を確実に吸着することが可能になる。
【0046】
外装体21として、テフロン(登録商標)ベースの、または裏打ちされた材料を使用することは、いくつかの実施形態において好ましく利用される。通常は、外装体21として、さまざまな普通のガス流れのフローラインに関して、約1〜300標準リットルのガス/分(slm)の範囲のガス流量および24箇月の範囲の所望の平均寿命を取り扱うことになる。オゾンの温度は、−80℃から+100℃の範囲に適応できることが好ましい。流入端10aにおける外装体21への最大入口圧力は、普通、約0psigから3000psig(20700kPa)の範囲である。例えば、約3〜12インチ(6〜25cm)の範囲の直径と4〜24インチ(8〜60cm)の長さを有するシリンダ状の外装体21が好ましい。金属汚染物質を100ppt未満の水準にまで除去するために、吸着材25内でオゾンが十分な滞留時間を持つことが必要であるので、外装体21の寸法は、オゾンの流量および体積、浄化材料の活性、および除去されるべき不純物の量に依存することになる。
【0047】
図2Aは、気体浄化フィルターユニットを構成する第一除去部から第二除去部を外した状態を示す断面図であり、図2Bは、図2AにおけるA−A線での第二除去部の断面を示す概略図である。
第一除去部11の後段側、即ち第一除去部11の収容部23に対して着脱自在に収容される第二除去部12は、オゾン耐蝕性を有する略円筒形の樹脂ケース31と、この樹脂ケース31内に収容され、オゾンに含まれる不純物のうち、固体微粒子を漉し取る濾材(部位)32とから構成されている。
【0048】
濾材(部位)32は、例えば、シート状のフィルター材を菊型、プリーツ状に折り畳んで露出表面積を増加させて、樹脂ケース31の内部に収容したものであればよい。また、樹脂ケース31は、酸化力の強いオゾンに対する耐蝕性に富んだ材料、例えば、フッ素系樹脂から構成される。フッ素系樹脂として特に好ましくは、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)が好ましく挙げられる。
【0049】
このような第二除去部12は、一端側、即ち第一除去部11の収容部23に形成された網部材24に対面する部分が、第一除去部11によって気体成分の不純物を除去した後のオゾンが流入する流入側とされる。また、他端側が、第二除去部12によって固体微粒子が漉し取られた後の高純度のオゾンガスを、半導体装置の製造工程などに向けて流出させる流出端10bを構成している。
【0050】
不純物のうち、固体微粒子を漉し取る濾材32としては、例えば、織布、不織布、成形体、及び網体を、挙げることができる。織布フィルターは、繊維体を織って形成してもよく、又は、繊維体を撚り合わせて撚糸を作製し、その撚糸を織って形成してもよい。さらに、半導体装置の製造工程に影響を与える重金属を吸着する粒子を撚糸に織り込んだものも好ましい。
不織布フィルターとしては、例えば数mmから数cmの長さに切断された繊維体を、公知の方法によって絡み合わせることにより形成できる。複数種類の繊維体を絡み合わせて形成してもよい。成形体フィルターとしては、例えば数mmから数cmの長さに切断された繊維体を、公知の成形方法によって任意の形態に成形することにより得られる。網状フィルターとしては、繊維体を網状に編むことにより形成できる。なお、これら繊維体に半導体装置の製造工程に影響を与える重金属を吸着する粒子を付着させることも好ましい。
【0051】
これら濾材32として用いる材料における繊維の開いている部分の間の大きさが捕捉性能に影響を及ぼすが、この性能いわゆる公称孔径は、例えば、0.2μm以上0.5μm以下の範囲が好ましい。濾材32の公称孔径が0.2μm未満であると、濾材32の流入側と流出側との間で差圧が大きくなり過ぎ、オゾンが分解される懸念がある。一方、濾材32の公称孔径が0.5μmよりも大きいと、半導体装置の製造工程に影響を与える重金属の粒子を漉し取る確率に影響を与える虞がある。
【0052】
以下に、濾材32として好適に用いることができる多孔質PTFE膜(濾過膜)の製造方法の一例を示す。図3に示すように、疎水性多孔質PTFE膜40の両縁部40bに、熱可塑性フッ素系樹脂製の無孔のエッジフィルム51を、200℃以上に加熱された熱ロールなどで熱圧着したのち、それぞれ供給液及び濾液のための流体通路となる熱可塑性フッ素系樹脂よりなる支持ネット52と53の間に挟持させる。支持ネットは、非常に柔軟で腰折れしやすい多孔質PTFE膜を支持する役目もする。
【0053】
なお、ここに熱可塑性フッ素系樹脂とは、加熱により溶融する四フッ化エチレン−パーフルオルアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン−パーフルオルアルキルビニルエーテル共重合体−六フッ化プロピレン共重合体(EPE)より選択した熱可塑性フッ素系樹脂などである。疎水性多孔質膜としてPTFEを使用しフッ素系樹脂部材と熱溶着する場合にはエッジフィルムとして熱可塑性フッ素系樹脂を使用することが必要である。疎水性多孔質樹脂膜としてPTFE以外の膜を使用する場合にはエッジフィルムは使用しなくても良い。こうした工程によって、第二除去部12に適用可能な濾材32が得られる。
【0054】
図3に示すような構造を有する積層体からなる濾材32を交互に反対方向に折ってプリーツ状にし、両側縁を重畳し熱融着してエンドレスにし、本実施形態に用いることができる。例えば、図4に示すように、この濾材32を多孔61を有する熱可塑性フッ素系樹脂製である多孔内側コア62及び多孔63を有する多孔外側スリーブ64の間に挿入し、エッジフィルム及び支持ネットの上下縁端部を熱可塑性フッ素系樹脂製のエンドキャップ65で封止して、フィルタエレメント(第二除去部)66を得ることができる。
【0055】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の気体浄化フィルターユニット10によれば、オゾン発生装置によって発生させたオゾンに含まれる不純物のうち、気体成分の不純物を除去する第一除去部11と、この第一除去部11の後段に配置され、気体成分が除去された不純物から、更に固体微粒子の不純物を除去する第二除去部12とから気体浄化フィルターユニット10を構成することによって、オゾン発生器から発生させたオゾンに含まれる気体状の不純物と、固体微粒子状の不純物の両方を、効率よく除去することが可能になる。
【0056】
このような構成の気体浄化フィルターユニット10を、例えばオゾン発生器と、半導体装置の製造工程との間にインラインフィルターとして挿入すれば、半導体装置の製造におけるオゾン処理工程に対して、金属不純物の極めて少ない高純度なオゾンを供給することが可能になり、半導体装置が重金属等に汚染される懸念を低減することが可能になる。
【実施例】
【0057】
本発明の効果を検証するために、本発明の気体浄化フィルターユニットによる金属成分の吸着能力を測定した。
検証にあたっては、高レベルオゾン発生装置に、ステンレス鋼の配管を介してフィルターユニットを接続し、該フィルターユニットからの流出ガス中に含まれる金属成分を測定する装置構成とした。
本発明例として、図1に示す第一除去部11および第二除去部12を備えた気体浄化フィルターユニット10を用い、第一除去部11には、吸着材25としてシリカゲルを充填した。シリカゲルは、直径が1〜3mmの球形であり、細孔径が1〜10nmのものを用い、予め加熱乾燥させた。
一方、比較例としては、こうした気体浄化フィルターユニット10のうち、第一除去部11を取り除いた第二除去部12だけの構成とした。
導入したガスは、数10g/m以上の高レベルオゾンガスであり、配管としてステンレス鋼を用いた。こうしたステンレス鋼の配管には、汚染源となる金属成分として、Fe、Cr,Mnが含まれている。
【0058】
金属成分の濃度測定方法は、原子吸光分析法を用いた。本発明例および比較例のそれぞれの流出ガスを純水中に放出させてバブリングし、得られた試料溶液を比較することによって、本発明例および比較例のそれぞれの流出ガス中に含まれる金属成分(Fe、Cr,Mn)をそれぞれ測定した。
こうした検証結果を表1に示す。なお、表中のガス供給側の濃度は、オゾン発生装置によって生成されたオゾンガスの供給側における金属濃度、すなわちステンレス鋼の配管を通過する前のオゾンガス中の金属濃度を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
こうした検証結果によれば、第一除去部11としてシリカゲルを吸着材として用いた気体浄化フィルターユニットを経たオゾンガス中の金属成分の濃度は、第一除去部11を有しない第二除去部12だけの比較例と比べて、Crが99%以上、Mnが95%以上除去されている。CrやMnを高精度に除去可能な本発明の気体浄化フィルターユニットを用いれば、オゾンを半導体装置の製造工程に適用しても、金属汚染を確実に防止することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0061】
10…気体浄化フィルターユニット、11…第一除去部、12…第二除去部、23…収容部、25…吸着材、31…樹脂ケース、32…濾材。
図1
図2A
図2B
図3
図4