(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6334014
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】乾燥卵白の製造方法及び乾燥卵白
(51)【国際特許分類】
A23L 15/00 20160101AFI20180521BHJP
【FI】
A23L15/00 B
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-6780(P2017-6780)
(22)【出願日】2017年1月18日
【審査請求日】2017年12月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】江崎 智弘
(72)【発明者】
【氏名】笹川 伸之
(72)【発明者】
【氏名】児玉 里紗
(72)【発明者】
【氏名】半田 明弘
【審査官】
中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−205984(JP,A)
【文献】
特開2001−095473(JP,A)
【文献】
特開昭61−152264(JP,A)
【文献】
特開平01−071456(JP,A)
【文献】
半田 明弘,卵白タンパク質の凝集による機能改変,生物工学会誌,2015年,第93巻,第279頁−第281頁
【文献】
Akio Kato, et al.,Structural and Gelling Properties of Dry-Heating Egg White Proteins,J. Agric. Food Chem.,1990年,Vol.38,p.32-37
【文献】
YIN LIANG HSIEH, et al.,Failure Deformation and Stress Relaxation of Heated Egg White Gels,JOURNAL OF FOOD SCIENCE,1993年,Vol.58,p.113-115
【文献】
A.Niciforovic, et al.,Detection of irradiated food by the changes in protein molecular mass distribution,Radiation Physics and Chemistry,1999年,Vol.55,p.731-735
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
A23L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質の割合に対し、
35%以上である乾燥卵白。
【請求項2】
請求項1記載の乾燥卵白であって、
下記測定方法でのゲル強度が625g以上である、
乾燥卵白。
ゲル強度の測定方法:乾燥卵白1部を2質量%食塩水7部に溶解し、これを折径60mmのポリエチレン製のケーシングに満中充填・密封し、80℃の湯中にて40分間加熱して凝固させ、冷却後、得られた凝固卵白を高さ3cmの円柱の形状に切断後、切断面に対し、テクスチャーアナライザー(直径8mmの球形プランジャー、プランジャー下降スピード1mm/秒)で品温20℃の破断応力(ゲル強度)を測定する。
【請求項3】
請求項1又は2記載の乾燥卵白であって、
前記乾燥卵白が脱塩乾燥卵白である
乾燥卵白。
【請求項4】
分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、
35%未満の熱蔵済原料乾燥卵白を、
分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、
35%以上となるように80℃以上100℃以下で熱蔵する熱蔵工程を含む
乾燥卵白の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の乾燥卵白の製造方法であって、
前記熱蔵工程が5日以上熱蔵する熱蔵工程である
乾燥卵白の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載の乾燥卵白の製造方法であって、
前記熱蔵済原料乾燥卵白が60℃以上80℃以下で熱蔵した熱蔵済原料乾燥卵白であり、
前記熱蔵工程が熱蔵済原料乾燥卵白の熱蔵温度より5℃以上高い、
乾燥卵白の製造方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載の乾燥卵白の製造方法であって、
前記熱蔵済原料乾燥卵白が5日以上熱蔵した熱蔵済原料乾燥卵白である
乾燥卵白の製造方法。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれかに記載の乾燥卵白の製造方法であって、
前記熱蔵済原料乾燥卵白が脱塩した熱蔵済原料乾燥卵白である
乾燥卵白の製造方法。
【請求項9】
液卵白を乾燥する乾燥工程、
前記乾燥工程後に、
分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、
35%未満となるように熱蔵する第一熱蔵工程、
前記第一熱蔵工程後に、
分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、
35%以上となるように熱蔵する第二熱蔵工程を含む
乾燥卵白の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の乾燥卵白の製造方法であって、
前記第一熱蔵工程が60℃以上80℃以下で5日以上熱蔵する工程であり、
前記第二熱蔵工程が80℃以上100℃以下で5日以上熱蔵する工程であり、
前記第二熱蔵工程の熱蔵温度が第一熱蔵工程中の熱蔵温度より5℃以上高い、
乾燥卵白の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10記載の乾燥卵白の製造方法であって、
前記乾燥工程前に、
液卵白を脱塩する脱塩工程を含む、
乾燥卵白の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至3のいずれかに記載の乾燥卵白と、
分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、
35%未満の乾燥卵白を混合し、
乾燥卵白のゲル強度を400g以上800g以下に調整する乾燥卵白の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便に、かつ安定的にゲル強度の強い乾燥卵白を得ることができる乾燥卵白の製造方法及び乾燥卵白を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来より乾燥卵白は、卵白液をスプレードライやフリーズドライなどの種々の方法で乾燥して得られるものであり、各種食品の原料として広く使用されている。
例えば、乾燥卵白は、これを水に溶解して加熱するとゲル化する性質を有するため、ハム、ソーセージ等の畜肉加工品や蒲鉾等の水練製品のゲル強化材として使用されている。
そして、このゲル強化材としての作用は、乾燥卵白のゲル強度が強ければ強い程、著しい傾向にある。
そのため、特開平9−205984号公報公報にみられるように、乾燥卵白を加湿熱蔵したり、また、特開昭61−152264号公報にみられるように、卵白液にビタミンCを添加混合し、この混合物を乾燥後熱蔵して、ゲル強度の強い乾燥卵白を提供することが提案されている。
【0003】
ところで、畜肉加工品業界や練製品業界では、製品の品質向上やコストダウンをはかるために、原料として用いる乾燥卵白には600gよりさらにゲル強度が強く、また添加物等を用いないもの、ゲル強度等の品質が一定のものが望まれているが、未だそのような乾燥卵白は開発されていないのが現状である。
【0004】
特開平9−205984号公報では、乾燥卵白を加湿熱蔵する方法が、また、特開昭61−152264号公報では、卵白液にビタミンCを添加混合し、この混合物を乾燥後熱蔵して、ゲル強度の強い乾燥卵白を提供する方法が提案されている。
しかし、上記従来法によって得られる乾燥卵白は、確かにゲル強度は強化されているものの、ゲル強度はせいぜい400〜600gが限度であるか、添加物による処理等をすることが必要であり、600g以上のゲル強度の乾燥卵白を添加物による処理をすることなしに得ることができなかった。
また一般的に流通している乾燥卵白のゲル強度は400〜600gのものが多いが、同じ製品であってもゲル強度等の品質に大きくバラツキがあった。
【0005】
また、ある程度の熱蔵温度、熱蔵時間をかけ、乾燥卵白中の卵白タンパク質の可溶性凝集物の含有量を増やすことで、ゲル強度の強い乾燥卵白を作ることができることが知られているが、単純に乾燥卵白の熱蔵温度を高くしたり、熱蔵時間を長くしても、卵白が過変性し、可溶性凝集物が不溶化(いわゆる煮え現象)してしまうため、十分にゲル強度を高めた乾燥卵白を得ることはできなかった。
【0006】
本発明は、このような要望を満たすためになされたものであり、乾燥卵白が不溶化することなく、また乾燥卵白に特殊な添加物等を使うことなく、乾燥卵白に敢えて複数回の熱蔵処理や追加の熱蔵処理を行うことにより、特定範囲の分子量を一定量以上含有する乾燥卵白を製造することができ、これにより、簡便に、かつ安定的にゲル強度の強い乾燥卵白を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−205984号公報
【特許文献2】特開昭61−152264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、簡便に、かつ安定的にゲル強度の強い乾燥卵白を得ることができる乾燥卵白の製造方法及び乾燥卵白を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の分子量の乾燥卵白を特定量以上含むよう特定の熱蔵を行うことで、簡便に、かつ安定的にゲル強度の強い乾燥卵白を得ることができる乾燥卵白の製造方法及び乾燥卵白を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質の割合に対し、
35%以上である乾燥卵白、
(2)(1)記載の乾燥卵白であって、
下記測定方法でのゲル強度が625g以上である、
乾燥卵白、
ゲル強度の測定方法:乾燥卵白1部を2質量%食塩水7部に溶解し、これを折径60mmのポリエチレン製のケーシングに満中充填・密封し、80℃の湯中にて40分間加熱して凝固させ、冷却後、得られた凝固卵白を高さ3cmの円柱の形状に切断後、切断面に対し、テクスチャーアナライザー(直径8mmの球形プランジャー、プランジャー下降スピード1mm/秒)で品温20℃の破断応力(ゲル強度)を測定する。
(3)(1)又は(2)記載の乾燥卵白であって、
前記乾燥卵白が脱塩乾燥卵白である
乾燥卵白、
(4)分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、
35%未満の熱蔵済原料乾燥卵白を、
分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、
35%以上となるように80℃以上100℃以下で熱蔵する熱蔵工程を含む
乾燥卵白の製造方法、
(5)(4)記載の乾燥卵白の製造方法であって、
前記熱蔵工程が5日以上熱蔵する熱蔵工程である
乾燥卵白の製造方法、
(6)(4)又は(5)記載の乾燥卵白の製造方法であって、
前記熱蔵済原料乾燥卵白が60℃以上80℃以下で熱蔵した熱蔵済原料乾燥卵白であり、
前記熱蔵工程が熱蔵済原料乾燥卵白の熱蔵温度より5℃以上高い、
乾燥卵白の製造方法、
(7)(4)乃至(6)のいずれかに記載の乾燥卵白の製造方法であって、
前記熱蔵済原料乾燥卵白が5日以上熱蔵した熱蔵済原料乾燥卵白である
乾燥卵白の製造方法、
(8)(4)乃至(7)のいずれかに記載の乾燥卵白の製造方法であって、
前記熱蔵済原料乾燥卵白が脱塩した熱蔵済原料乾燥卵白である
乾燥卵白の製造方法、
(9)液卵白を乾燥する乾燥工程、
前記乾燥工程後に、
分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、
35%未満となるように熱蔵する第一熱蔵工程、
前記第一熱蔵工程後に、
分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、
35%以上となるように熱蔵する第二熱蔵工程を含む
乾燥卵白の製造方法、
(10)(9)記載の乾燥卵白の製造方法であって、
前記第一熱蔵工程が60℃以上80℃以下で5日以上熱蔵する工程であり、
前記第二熱蔵工程が80℃以上100℃以下で5日以上熱蔵する工程であり、
前記第二熱蔵工程の熱蔵温度が第一熱蔵工程中の熱蔵温度より5℃以上高い、
乾燥卵白の製造方法、
(11)(9)又は(10)記載の乾燥卵白の製造方法であって、
前記乾燥工程前に、
液卵白を脱塩する脱塩工程を含む、
乾燥卵白の製造方法、
(12)(1)乃至(3)のいずれかに記載の乾燥卵白と、
分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、
35%未満の乾燥卵白を混合し、
乾燥卵白のゲル強度を400g以上800g以下に調整する乾燥卵白の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡便に、かつ安定的にゲル強度の強い乾燥卵白を得ることができる乾燥卵白の製造方法及び乾燥卵白を提供することができることから乾燥卵白の更なる需要の拡大が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
【0013】
<本発明の特徴>
本発明は、乾燥卵白において、特定の分子量の乾燥卵白を特定量以上含むことを特徴としており、これにより、簡便に、かつ安定的にゲル強度の強い乾燥卵白を得ることができる。
【0014】
<本発明の乾燥卵白>
本発明の乾燥卵白は、液卵白を噴霧乾燥、パンドライ、凍結乾燥、真空乾燥等の種々の方法で乾燥して得られた卵白のうち、分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%以上であれば特に限定しないが、ゲル強度の強い乾燥卵白を得ることができることから、40%以上がよく、45%以上がよく、特に50%以上がよい。
本発明の乾燥卵白の分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、前記範囲より低いと、ゲル強度の強い乾燥卵白を得ることができない。
また、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対する、分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合の上限量は特に限定しないが、乾燥卵の分子量に応じた効果が期待し難く経済的でないことから、80%以下であるとよく、さらに70%以下であるとよく、特に60%以下であるとよい。
【0015】
<脱塩乾燥卵白>
本発明の乾燥卵白は、脱塩処理を行うことにより、脱塩乾燥卵白とすることができる。
脱塩処理の方法としては、特に制限は無く、常法により、例えば、電気透析法、限外濾過法、逆浸透法、イオン交換樹脂を用いる方法、セルロース膜などの半透膜を用いた透析法等によって行うことができるが、安定的にゲル強度の強い乾燥卵白を得られやすいことから、限外濾過法、逆浸透法を用いればよく、特に限外濾過法を用いると良い。
【0016】
<乾燥卵白のゲル強度>
本発明において、乾燥卵白のゲル強度とは、後述の測定方法で得られた凝固卵白の破断応力の値である。
本発明の乾燥卵白のゲル強度は、強いゲルが得られるため、625g以上であるとよく、さらに650g以上であるとよく、さらに700g以上であるとよく、さらに725g以上であるとよく、さらに750g以上であるとよく、特に800g以上であるとよい。
【0017】
<ゲル強度の測定方法>
乾燥卵白1部を2質量%食塩水7部に溶解し、これを折径60mmのポリエチレン製のケーシングに満中充填・密封し、80℃の湯中にて40分間加熱して凝固させ、冷却後、得られた凝固卵白を高さ3cmの円柱の形状に切断後、切断面に対し、テクスチャーアナライザー(直径8mmの球形プランジャー、プランジャー下降スピード1mm/秒)で品温20℃の破断応力(ゲル強度)を測定する。
【0018】
以下、本発明の製造方法を記載する。
【0019】
<熱蔵済原料乾燥卵白>
本発明の乾燥卵白に用いる熱蔵済原料乾燥卵白は、分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%未満の熱蔵された乾燥卵白であれば特に限定せず、市販の乾燥卵白を用いてもよいが、ゲル強度の強い乾燥卵白を短い熱蔵時間で調製できることから、分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、15%以上がよく、20%以上がよく、25%以上がよく、特に30%以上がよい。
なお、本発明の乾燥卵白に用いる熱蔵済原料乾燥卵白の製造方法は、常法でよいが、例えば液卵白を噴霧乾燥し、熱蔵する方法等が挙げられる。
ゲル強度の強い乾燥卵白を短い熱蔵時間で調製できることから、熱蔵済原料乾燥卵白製造時の熱蔵温度は60℃以上80℃以下であるとよく、65℃以上80℃以下であるとよく、特に70℃以上80℃以下であるとよい。
また、ゲル強度の強い乾燥卵白を安定的に調製できることから、熱蔵済原料乾燥卵白製造時の熱蔵期間は5日以上であるとよい。また熱蔵済原料乾燥卵白製造時の熱蔵期間の上限値は特に限定しないが、熱蔵期間が長いと熱蔵済原料乾燥卵白が過度に変性し、ゲル強度の強い乾燥卵白を安定的に調製し難くなることから、熱蔵済原料乾燥卵白製造時の熱蔵期間の上限値は、60日以下がよく、45日以下がよく、特に30日以下がよい。
さらに、本発明の乾燥卵白に用いる熱蔵済原料乾燥卵白は、ゲル強度の強い乾燥卵白を安定的に調製できることから、脱塩しているとよい。
【0020】
<熱蔵済原料乾燥卵白を用いた本発明の乾燥卵白の製造方法>
本発明の乾燥卵白は、上述の熱蔵済原料乾燥卵白を用い、製造することができる。具体的には、分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%未満の熱蔵済原料乾燥卵白を、分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%以上となるように80℃以上100℃以下で熱蔵する熱蔵工程を含むことにより製造することができる。
しかし、熱蔵工程時の熱蔵温度が高いと熱蔵済原料乾燥卵白が過度に変性し、ゲル強度の強い乾燥卵白を安定的に調製し難くなることから、熱蔵工程時の熱蔵温度は80℃以上95℃以下がよく、特に80℃以上90℃以下がよい。
さらに、ゲル強度の強い乾燥卵白を短い熱蔵時間で調製できることから、熱蔵工程時の熱蔵温度は、上述の熱蔵済原料乾燥卵白製造時の熱蔵温度より、5℃以上高いとよく、10℃以上高いとさらによい。
また、ゲル強度の強い乾燥卵白を安定的に調製できることから、熱蔵工程時の熱蔵期間は5日以上であるとよい。熱蔵工程時の熱蔵期間の上限値は特に限定しないが、熱蔵期間が長いと熱蔵済原料乾燥卵白が過度に変性し、ゲル強度の強い乾燥卵白を安定的に調製し難くなることから、熱蔵工程時の熱蔵期間の上限値は、60日以下がよく、45日以下がよく、特に30日以下がよい。
【0021】
<液卵白を用いた本発明の乾燥卵白の製造方法>
また、本発明の乾燥卵白は、上述の熱蔵済原料乾燥卵白を用いる方法の他に、液卵白を用いて製造することもできる。
具体的には、液卵白を乾燥する乾燥工程、前記乾燥工程後に、分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%未満となるように熱蔵する第一熱蔵工程、前記第一熱蔵工程後に、分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%以上となるように熱蔵する第二熱蔵工程を含む乾燥卵白の製造方法により、本発明の乾燥卵白を得ることができる。
【0022】
<本発明の乾燥卵白の原料に用いる液卵白>
本発明の乾燥卵白の原料に用いる液卵白は割卵して得た生卵白の他、これを殺菌処理、濃縮処理、脱糖処理、脱塩処理、酵素処理、乾燥処理した後に水戻ししたもの等のいずれの処理を行ったものでもよい。中でも加熱処理中に卵タンパク質中のアミノ基と反応してメイラード反応を起こし、褐変、不快臭の発生等の品質の低下を防止することができる点で、脱糖処理を行った液卵白を用いるのが好ましい。
また、安定的にゲル強度の強い乾燥卵白を得られやすいことから、脱塩処理を行った液卵白を用いるのが好ましい。
脱塩処理の方法としては、特に制限は無く、常法により、例えば、電気透析法、限外濾過法、逆浸透法、イオン交換樹脂を用いる方法、セルロース膜などの半透膜を用いた透析法等によって行うことができるが、安定的にゲル強度の強い乾燥卵白を得られやすいことから、限外濾過法、逆浸透法を用いればよく、特に限外濾過法を用いると良い。
【0023】
<乾燥工程>
乾燥工程の方法は、特に制限はなく、例えば、噴霧乾燥(スプレードライ)、パンドライ、凍結乾燥、真空乾燥等の種々の方法により常法に準じて、液卵白を水分含量が4〜12%程度となるまで乾燥処理すればよい。
乾燥卵白の水分含量は、赤外線水分計((株)ケツト科学研究所、FD−600)によって測定することができる。
【0024】
<第一熱蔵工程>
本発明の第一熱蔵工程は、常法に準じて、液卵白を乾燥後に分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%未満となるように熱蔵すれば、特に制限はない。
第一熱蔵工程の熱蔵条件が前記範囲外であると、簡便に、かつ安定的にゲル強度の強い乾燥卵白が得られない。
また、後の第二熱蔵工程後にゲル強度の強い乾燥卵を得られやすいことから、第一熱蔵工程時の熱蔵温度は60以上80℃以下がよく、65℃以上80℃以下がよく、65℃以上75℃以下がよい。
さらに、ゲル強度の強い乾燥卵白を安定的に調製できることから、第一熱蔵工程時の熱蔵期間は5日以上であるとよく、10日以上であるとよい。
熱蔵工程時の熱蔵期間の上限値は特に限定しないが、熱蔵期間が長いと液卵白が過度に変性し、後の第二熱蔵工程後にゲル強度の強い乾燥卵白を安定的に調製し難くなることから、第一熱蔵工程時の熱蔵期間の上限値は、60日以下がよく、45日以下がよく、特に30日以下がよい。
【0025】
<第二熱蔵工程>
本発明の第二熱蔵工程は、常法に準じて、分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%以上となるように熱蔵すれば、特に制限はない。
第二熱蔵工程の熱蔵条件が前記範囲外であると、簡便に、かつ安定的にゲル強度の強い乾燥卵白が得られない。
また、熱蔵工程時の熱蔵温度が高いと熱蔵済原料乾燥卵白が過度に変性し、ゲル強度の強い乾燥卵白を安定的に調製し難くなることから、第二熱蔵工程後にゲル強度の強い乾燥卵を得られやすいことから、第二熱蔵工程時の熱蔵温度は、前記第一熱蔵工程中の熱蔵温度より5℃以上高い温度であり、80以上100℃以下がよく、80℃以上95℃以下がよく、80℃以上90℃以下がよい。
さらに、ゲル強度の強い乾燥卵白を安定的に調製できることから、第二熱蔵工程時の熱蔵期間は5日以上であるとよく、10日以上であるとよい。
第二熱蔵工程時の熱蔵期間の上限値は特に限定しないが、熱蔵期間が長いと第一熱蔵工程後の乾燥卵白が過度に変性し、第二熱蔵工程後にゲル強度の強い乾燥卵白を安定的に調製し難くなることから、第二熱蔵工程時の熱蔵期間の上限値は、60日以下がよく、45日以下がよく、特に30日以下がよい。
【0026】
<その他の熱蔵工程>
本発明の乾燥卵白は、上述の熱蔵工程に加え、さらに追加で熱蔵することもできる。
【0027】
<脱塩工程>
脱塩工程とは、液卵白の溶液中でイオンとして解離する無機塩類を除去する工程のことをいい、前記無機塩類としては、例えばナトリウムイオン、カルシウムイオンなどの陽イオン、塩素イオンなどの陰イオンが挙げられる。
本発明の脱塩工程は、前記乾燥工程前に行えば、特に制限は無く、常法に準じて行えばよく、例えば、電気透析法、限外濾過法、逆浸透法、イオン交換樹脂を用いる方法、セルロース膜などの半透膜を用いた透析法等によって行うことができる。中でも、安定的にゲル強度の強い乾燥卵白を得られやすいことから、限外濾過法、逆浸透法を用いればよく、特に限外濾過法を用いると良い。
【0028】
<ゲル強度を調整した乾燥卵白の製造方法>
本発明の乾燥卵白と、分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%未満の乾燥卵白を混合することで、乾燥卵白のゲル強度を400g以上800g以下に調整した乾燥卵白を調製することができ、本発明の効果を得られやすいことから、乾燥卵白のゲル強度は500g以上800g以下がよく、さらに550g以上800g以下がよく、特に600g以上800g以下がよい。
また、本発明の乾燥卵白を市販の乾燥卵白等と混合することにより、乾燥卵白を調製してもよい。
【0029】
<卵白タンパク質の分子量の割合測定方法>
本発明の卵白タンパク質の割合は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いて測定した値である。
ここで、卵白タンパク質の割合は、以下の方法で測定することができる。
【0030】
乾燥卵白1gに蒸留水99gを加えスターラーで溶解し、1%の水溶液を調製した。得られたサンプルにSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法用のサンプルバッファーを加えて希釈し、タンパク質濃度が0.1mg/mLになるよう調整後、沸騰水浴上で5分間加熱して電気泳動用サンプルとする。
【0031】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動は、市販のポリアクリルアミドゲルである4〜20%SDS−PAG mini(テフコ株式会社)と専用泳動槽(テフコ株式会社、STC−808)を使用して、20mAの定電流条件で行う。
また、泳動時間は適宜調整すればよいが、バンドの判別がしやすいため80〜100分がよい。
電気泳動用サンプルは、それぞれ10μLをポリアクリルアミドゲルに供する。
なお、分子量測定用の標準タンパク質(分子量マーカー)は、分子量マーカーII(テフコ株式会社)を使用する。
【0032】
サンプルバッファー中の標識色素であるブロモフェノールブルーがゲルの下端から約5mmのところまで到達したところで泳動を終了し、ゲルを泳動槽から取り出し、クマシーブリリアントブルーG−250溶液で、室温で30分間染色する。ゲルは脱色液(10%メタノール、7.5%酢酸溶液)で背景が透明になるまで脱色し、電気泳動のバンドパターンを検出する。
続いて、脱色後のゲルを撮影し、デンシトメーター(ハードウェア:ULTRA CAM((株)東京インスツルメンツ製)、ソフトウェア:Total Lab. Quant(Total Lab. 社製))を用いて、電気泳動のバンドパターンを検出し、バンドの定量を行う。
【0033】
各バンドのピクセル強度分布を積分することにより各バンドのピーク面積を得る。デジタルゲルイメージャーを用いることにより、ゲルのバンドをデジタルカメラで撮影して得られた画像を解析して、バンドの濃淡を数値化することにより、バンドの位置(Pixel Position)に対するピクセル強度(Pixel Intensity)を得ることができる。
【0034】
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質の割合に対する、分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合を求める。
なお、分子量20100と分子量97400は分子量マーカーの値であり、数値の精確性の担保を目的とし、高分子の卵白タンパク質を排除するため、分子量340000超を解析に含めず、卵白タンパク質の解析の上限値を本試験では分子量340000として解析する。
なお、分子量340000は分子量マーカーの値にないため、その他の分子量マーカーより得られた式を用いて、分子量340000となる点を算出し、これを用いた。
【0035】
以上のように、分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質の割合に対し、35%以上となるように処理した乾燥卵白は、ゲル強度の強い乾燥卵白となる。
また分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質の割合に対し、35%未満となる場合は、熱蔵工程が1回である場合や、熱蔵工程が複数回であっても、熱蔵条件が前述の範囲を満たさない場合、また熱蔵温度が高い又は熱蔵時間が長く、乾燥卵白が過変性、凝集し、煮えが起こる場合等が挙げられる。
【0036】
以下、本発明の乾燥卵白について、実施例及び比較例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0037】
[実施例1]
<乾燥卵白の製造>
機械的に殻付き卵を割卵し、液卵白を分離し、常法によりろ過と均質化を行い、液卵白を得た。得られた液卵白4500gを限外ろ過後、パン用酵母9gを添加し、35℃で4時間脱糖処理を行った。脱糖処理後、塩酸を添加してスプレードライ後のpHが7になるよう調整した。
次に、スプレードライで乾燥後、74℃で28日間の第一熱蔵工程を行った。
さらに84℃で28日間の第二熱蔵工程を行い、実施例1の乾燥卵白を調製した。
なお、第一熱蔵工程後の乾燥卵白に含まれる分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合は全卵白タンパク質に対し31%であった。
また、実施例1に含まれる分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合は全卵白タンパク質に対し55%であった。
【0038】
<ゲル強度の測定>
実施例1の乾燥卵白1部を2質量%食塩水7部に溶解し、これを折径60mmのポリエチレン製のケーシングに満中充填・密封し、80℃の湯中にて40分間加熱して凝固させ、冷却後、得られた凝固卵白を高さ3cmの円柱の形状に切断後、切断面に対し、テクスチャーアナライザー(直径8mmの球形プランジャー、プランジャー下降スピード1mm/秒)で品温20℃の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は807gであった。
また、実施例1の方法と同様にして、第一熱蔵工程後の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は577gであった。
【0039】
[実施例2]
実施例1において、第二熱蔵工程の日数を21日間にし、塩酸に代え、クエン酸を用いてスプレードライ後のpHが7になるよう調整し、限外ろ過を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、実施例2の乾燥卵白を調製した。
なお、第一熱蔵工程後の乾燥卵白に含まれる分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合は全卵白タンパク質に対し35%未満であった。
また、実施例2に含まれる分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合は全卵白タンパク質に対し43%であった。
【0040】
実施例1の方法と同様にして、実施例2の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は687gであった。
また、実施例1の方法と同様にして、第一熱蔵工程後の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は515gであった。
【0041】
[実施例3]
実施例1において、第一熱蔵工程の日数を6日間にし、第二熱蔵工程の日数を21日間にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の乾燥卵白を調製した。
なお、第一熱蔵工程後の乾燥卵白に含まれる分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合は全卵白タンパク質に対し35%未満であった。
また、実施例3に含まれる分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合は全卵白タンパク質に対し35%以上であった。
【0042】
実施例1の方法と同様で、実施例4の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は695gであった。
また、実施例1の方法と同様にして、第一熱蔵工程後の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は232gであった。
【0043】
[実施例4]
75℃で21日間熱蔵された市販の乾燥卵白を熱蔵済原料乾燥卵白として、この熱蔵済原料乾燥卵白を84℃で14日間熱蔵し、実施例4の乾燥卵白を調製した。
なお、熱蔵済原料乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、32%であった。
また、実施例4の乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、42%であった。
【0044】
実施例1の方法と同様で、実施例4の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は742gであった。
また、実施例1の方法と同様にして、熱蔵済原料乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は571gであった。
【0045】
[実施例5]
実施例4で用いた市販の乾燥卵白を熱蔵済原料乾燥卵白として、この熱蔵済原料乾燥卵白を94℃で7日間熱蔵し、実施例5の乾燥卵白を調製した。
なお、熱蔵済原料乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、32%であった。
また、実施例5の乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%以上であった。
【0046】
実施例1の方法と同様で、実施例5の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は747gであった。
また、実施例1の方法と同様にして、熱蔵済原料乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は571gであった。
【0047】
[実施例6]
66℃で14日間熱蔵された市販の乾燥卵白を熱蔵済原料乾燥卵白として、この熱蔵済原料乾燥卵白を84℃で7日間熱蔵し、実施例6の乾燥卵白を調製した。
なお、熱蔵済原料乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%未満であった。
また、実施例6の乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%以上であった。
【0048】
実施例1の方法と同様で、実施例6の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は651gであった。
また、実施例1の方法と同様にして、熱蔵済原料乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は559gであった。
【0049】
[実施例7]
63℃で8日間熱蔵された市販の乾燥卵白を熱蔵済原料乾燥卵白として、この熱蔵済原料乾燥卵白を84℃で28日間熱蔵し、実施例7の乾燥卵白を調製した。
なお、熱蔵済原料乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、20%であった。
また、実施例7の乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、38%であった。
【0050】
実施例1の方法と同様で、実施例7の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は627gであった。
また、実施例1の方法と同様にして、熱蔵済原料乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は401gであった。
【0051】
[比較例1]
実施例7において、熱蔵済原料乾燥卵白を94℃で21日間熱蔵した以外は実施例7と同様にして、比較例1の乾燥卵白を調製した。
なお、熱蔵済原料乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、20%であった。
また、比較例1の乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%未満であった。
【0052】
実施例1の方法と同様で、実施例7の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところ乾燥卵白が過度に熱変性し、煮えが起きたため、水に溶かしたとき不溶解物が発生し、ゲル強度を測定することができなかった。
【0053】
[比較例2]
82℃で14日間熱蔵された市販の乾燥卵白を熱蔵済原料乾燥卵白として、この熱蔵済原料乾燥卵白を84℃で21日間熱蔵し、比較例2の乾燥卵白を調製した。
なお、熱蔵済原料乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%未満であった。
また、比較例2の乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、35%未満であった。
【0054】
実施例1の方法と同様で、比較例2の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は594gであった。
【0055】
[実施例8]
実施例6の乾燥卵白と、実施例7で用いた市販の乾燥卵白とを等量ずつ混合し、実施例8の乾燥卵白を調製した。
【0056】
実施例1の方法と同様で、実施例8の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は508gであった。
【0057】
[実施例9]
実施例3の乾燥卵白と、実施例7で用いた市販の乾燥卵白とを等量ずつ混合し、実施例9の乾燥卵白を調製した。
【0058】
実施例1の方法と同様で、実施例9の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は560gであった。
【0059】
[実施例10]
実施例6の乾燥卵白と、実施例7で用いた市販の乾燥卵白とは別の市販の乾燥卵白を等量ずつ混合し、実施例10の乾燥卵白を調製した。
なお、市販の乾燥卵白は分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質に対し、31%であった。
【0060】
実施例1の方法と同様で、実施例10の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は606gであった。
また、実施例1の方法と同様にして、熱蔵済原料乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は573gであった。
【0061】
[実施例11]
実施例2の乾燥卵白と、実施例4の乾燥卵白を等量ずつ混合し、実施例11の乾燥卵白を調製した。
【0062】
実施例1の方法と同様で、実施例11の乾燥卵白の破断応力(ゲル強度)を測定したところゲル強度は712gであった。
【要約】
【課題】本発明は、簡便に、かつ安定的にゲル強度の強い乾燥卵白を得ることができる乾燥卵白の製造方法及び乾燥卵白を提供する。
【解決手段】
分子量97400以上340000以下の卵白タンパク質の割合が、
分子量20100以上340000以下の卵白タンパク質の割合に対し、
35%以上である乾燥卵白。
【選択図】なし