【実施例】
【0043】
以下に、実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
なお、実施例で用いられる略号は以下のとおりである。
EBBiB:Ethylene bis(2-bromoisobutyrate)(式(6)の化合物)
4SPA:(3-Acryloxypropyl)tris(trimethylsiloxy)silane(式(4)、R
3=-C
3H
6-Si(OSi(CH
3)
3)
3、R
4=Hの化合物)
6Az10Ac:10-(4-(4-hexylphenylazo)phenoxy)decyl acrylate(式(2)中、R
1の式(3)におけるm=6、n=10、R
2=Hの化合物)
Bpy6:4,4'-dinonyl-2,2'-bipyridyl(以下に示す式(11)の化合物)
ConvNMR:NMRから見積もったモノマー転換率
MwNMR:Conv.NMRから計算したポリマーの分子量
EHA:2-ethylhexyl acrylate(式(4)、R
3=-3-C
8H
17(すなわちl=2)、R
4=Hの化合物)
Me6TREN:tris[2-(dimethylamino)ethyl]amine(以下に示す式(12)の化合物)
【化15】
【化16】
【0045】
(実施例1)ABA型トリブロックポリマー[poly(6Az10Ac)-b-poly(4SPA)-b-poly(6Az10Ac)]の合成
(1a)Poly(4SPA)-1の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、EBBiBを25mg(0.069mmol)、CuBrを9.6mg(0.069mmol)、bpy9を54.6mg(0.138mmol)、Cuを4.2mg(0.069mmol)加えた。窒素雰囲気にした無菌パックの中でこれにテトラヒドロフラン(THF)を0.67ml加えて、全体が均一な溶液になるまで撹拌し、その後4SPAを0.62ml(1.38mmol)加えて密閉し、55℃のオイルバスで6時間撹拌しながら加熱した。その後冷蔵庫で15分間冷却し、CuBr2を加えて軽く混ぜた後、中性アルミナ粉のカラムに通した。それをメタノールで再沈殿・遠心分離して精製した。収量は413mg、ConvNMR=93%、MwNMR=7588gmol
-1であった。
【0046】
(1b)[poly(6Az10Ac)-b-poly(4SPA)-b-poly(6Az10Ac)]-1の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、Poly(4SPA)-1を250mg(0.033mmol)、CuBrを19mg(0.13mmol)、bpy9を108mg(0.26mmol)、Cuを16.8mg(0.26mmol)、6Az10Acを305mg(0.66mmol)加えた。Ar雰囲気にした無菌パックの中でこれにTHFを0.66ml加えて、全体が均一な溶液になるまでお湯で加温しながら撹拌して密閉し、55℃のオイルバスで24時間撹拌しながら加熱した。反応後、中性アルミナ粉のカラムに通した後、シリカカラムで精製した。収量は250mg、ConvNMR=68%、MwNMR=13880gmol
-1であった。
【0047】
(2a)Poly(4SPA)-2の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、EBBiBを18mg(0.05mmol)、CuBrを7.2mg(0.05mmol)、bpy9を41mg(0.10mmol)、Cuを3.2mg(0.05mmol)加えた。窒素雰囲気にした無菌パックの中でこれにTHFを0.3ml加えて、全体が均一な溶液になるまで撹拌し、その後4SPAを0.28ml(0.61mmol)加えて密閉し、55℃のオイルバスで6時間撹拌しながら加熱した。その後冷蔵庫で15分間冷却し、CuBr2を加えて軽く混ぜた後、中性アルミナ粉のカラムに通した。それをメタノールで再沈殿・遠心分離して精製した。収量は64mg、ConvNMR=100%、MwNMR=4896gmol
-1であった。
【0048】
(2b)[poly(6Az10Ac)-b-poly(4SPA)-b-poly(6Az10Ac)]-2の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、Poly(4SPA)-2を64mg(0.013mmol)、CuBrを7.5mg(0.052mmol)、bpy9を43mg(0.10mmol)、Cuを6.7mg(0.10mmol)、6Az10Acを121mg(0.26mmol)加えた。そこにAr雰囲気にした無菌パックの中でTHFを0.26ml加えて、全体が均一な溶液になるまでお湯で加温しながら撹拌して密閉し、55℃のオイルバスで24時間撹拌しながら加熱した。反応後、中性アルミナ粉のカラムに通した後、シリカカラムで精製した。収量は32mg、ConvNMR=60%、MwNMR=10448gmol
-1であった。
【0049】
(3a)Poly(4SPA)-3の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、EBBiBを6.3mg(0.017mmol)、CuBrを2.4mg(0.017mmol)、bpy9を14mg(0.034mmol)、Cuを1.1mg(0.017mmol)加えた。窒素雰囲気にした無菌パックの中でこれにTHFを0.3ml加えて、全体が均一な溶液になるまで撹拌し、その後4SPAを0.28ml(0.61mmol)加えて密閉し、55℃のオイルバスで6時間撹拌しながら加熱した。その後冷蔵庫で15分間冷却し、CuBr2を加えて軽く混ぜた後、中性アルミナ粉のカラムに通した。それをメタノールで再沈殿・遠心分離して精製した。収量は111mg、ConvNMR=100%、MwNMR=14280gmol
-1であった。
【0050】
(3b)[poly(6Az10Ac)-b-poly(4SPA)-b-poly(6Az10Ac)]-3の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、Poly(4SPA)-3を111mg(0.0078mmol)、CuBrを7.5mg(0.031mmol)、bpy9を25mg(0.062mmol)、Cuを4.0mg(0.062mmol)、6Az10Acを72mg(0.15mmol)加えた。Ar雰囲気にした無菌パックの中でこれにTHFを0.15ml加えて、全体が均一な溶液になるまでお湯で加温しながら撹拌して密閉し、55℃のオイルバスで24時間撹拌しながら加熱した。反応後、中性アルミナ粉のカラムに通した後、シリカカラムで精製した。収量は43mg、ConvNMR=86%、MwNMR=22237gmol
-1であった。
【0051】
(4a)Poly(4SPA)-4の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、EBBiBを4.9mg(0.013mmol)、CuBrを1.9mg(0.013mmol)、bpy9を11mg(0.026mmol)、Cuを0.83mg(0.013mmol)加えた。窒素雰囲気にした無菌パックの中でこれにTHFを0.3ml加えて、全体が均一な溶液になるまで撹拌し、その後4SPAを0.28ml(0.61mmol)加えて密閉し、55℃のオイルバスで6時間撹拌しながら加熱した。その後冷蔵庫で15分間冷却し、CuBr2を加えて軽く混ぜた後、中性アルミナ粉のカラムに通した。それをメタノールで再沈殿・遠心分離して精製した。収量は154mg、ConvNMR=100%、MwNMR=18360gmol
-1であった。
【0052】
(4b)[poly(6Az10Ac)-b-poly(4SPA)-b-poly(6Az10Ac)]-4の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、Poly(4SPA)-4を154mg(0.0084mmol)、CuBrを4.8mg(0.034mmol)、bpy9を27mg(0.068mmol)、Cuを4.3mg(0.068mmol)、6Az10Acを77mg(0.17mmol)加えた。Ar雰囲気にした無菌パックの中でこれにTHFを0.17ml加えて、全体が均一な溶液になるまでお湯で加温しながら撹拌して密閉し、55℃のオイルバスで24時間撹拌しながら加熱した。反応後、中性アルミナ粉のカラムに通した後、シリカカラムで精製した。収量は37mg、ConvNMR=56%、MwNMR=23541gmol
-1であった。
【0053】
(実施例2)ABA型トリブロックポリマー[poly(6Az10Ac)-b-poly(EHA)-b-poly(6Az10Ac)]の合成
(1a)Poly(EHA)-1の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、EBBiBを11.6mg(0.032mmol)、CuBrを4.6mg(0.032mmol)、bpy9を26.1mg(0.064mmol)、Cuを2.0mg(0.032mmol)加えた。窒素雰囲気にした無菌パックの中でこれにTHFを0.67ml加えて、全体が均一な溶液になるまで撹拌し、その後EHAを0.30ml(1.44mmol)加えて密閉し、55℃のオイルバスで8時間撹拌しながら加熱した。その後冷蔵庫で15分間冷却し、CuBr2を加えて軽く混ぜた後、中性アルミナ粉のカラムに通した。それをメタノールで再沈殿・遠心分離して精製した。収量は162mg、ConvNMR=71%、MwNMR=5878gmol
-1であった。
【0054】
(1b)[poly(6Az10Ac)-b-poly(EHA)-b-poly(6Az10Ac)]-1の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、poly(EHA)-1を162mg(0.028mmol)、CuBrを15.8mg(0.11mmol)、bpy9を89.8mg(0.22mmol)、Cuを14.0mg(0.22mmol)、6Az10Acを255mg(0.55mmol)加えた。Ar雰囲気にした無菌パックの中でこれにTHFを0.55ml加えて、全体が均一な溶液になるまでお湯で加温しながら撹拌して密閉し、55℃のオイルバスで24時間撹拌しながら加熱した。反応後、中性アルミナ粉のカラムに通した後、シリカカラムで精製した。収量は60mg、ConvNMR=68%、MwNMR=12170gmol
-1であった。
【0055】
(2a)Poly(EHA)-2の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、EBBiBを5.8mg(0.016mmol)、CuBr2を2.2mg(0.0099mmol)、Me6TRENを2.7ul(0.0099mmol)、アスコルビン酸を16.9mg(0.20mmol)加えた。Ar雰囲気にした無菌パックの中でこれにトルエンを0.29ml加えて、全体が均一な溶液になるまで撹拌し、その後EHAを0.30ml(0.14mmol)加えて密閉し、55℃のオイルバスで4時間撹拌しながら加熱した。その後冷蔵庫で15分間冷却した後、中性アルミナ粉のカラムに通した。それをメタノールで再沈殿・遠心分離して精製した。収量は131mg、ConvNMR=94%、MwNMR=15566gmol
-1であった。
【0056】
(2b)[poly(6Az10Ac)-b-poly(EHA)-b-poly(6Az10Ac)]-2の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、Poly(EHA)-2を131mg(0.0084mmol)、CuBr2を1.87mg(0.0084mmol)、Me6TRENを2.4ul(0.0084mmol)、アスコルビン酸を14.8mg(0.084mmol)、6Az10Acを136mg(0.29mmol)加えた。Ar雰囲気にした無菌パックの中でこれにトルエンを0.20ml加えて、全体が均一な溶液になるまでお湯で加温しながら撹拌して密閉し、55℃のオイルバスで24時間撹拌しながら加熱した。反応後、中性アルミナ粉のカラムに通した後、メタノール:アセトン=1:2の混合溶媒で再沈殿、遠心分離によって精製した。収量は100mg、ConvNMR=47%、MwNMR=23166gmol
-1であった。
【0057】
(実施例3)Poly[(6Az10Ac)-b-(4SPA)-b-(6Az10Ac)]-1の紫外線照射による液化試験(1)
Poly[(6Az10Ac)-b-(4SPA)-b-(6Az10Ac)]-1を極微量、スライドガラス基板(松波白切放 No.1)上にとり、LED光源(浜松フォトニクスLC-L1V3)を用いて、中心波長365nm(半値幅13nm)の紫外線を室温(約25℃)下で照射した。0.5分間(3J/cm
2)照射したところ、粉末は水飴状の粘性液体に変化した。これは、従来の糖アルコールエステル材料(特許文献2)の液化の2倍の速さに相当する。
【0058】
(実施例4)Poly[(6Az10Ac)-b-(4SPA)-b-(6Az10Ac)]-1の紫外線照射による液化試験(2)
光未照射のPoly[(6Az10Ac)-b-(4SPA)-b-(6Az10Ac)]-1を約1mgとり、加熱しながら、2枚のガラス基板に融解した状態で挟み込み、面積15mm×15mmに広げた。これを冷却することで、ガラス基板が接着された。これにLED光源(浜松浜松フォトニクスLC-L1V3)を用いて、中心波長365nmの紫外線を室温(約25℃)下で0.5分間照射(3J/cm
2)し、液化したところ、ガラス2枚を指でずらすことができた。
【0059】
(実施例5)Poly[(6Az10Ac)-b-(4SPA)-b-(6Az10Ac)]-1の可視光照射による接着試験
紫外光照射により液化したサンプルを挟んだ上記ガラス基板2枚にLED光源(Luxeon cyan 5w LXHL-LE5C)を用いて中心波長510nmの可視光を3分間照射(6J/cm
2)したところ、接着面は透明なままだったが、基板2枚を指でずらそうとしてもずれなかった。このガラス基板2枚をそれぞれ逆方向にひっぱったところ、剥離することはなかった。
【0060】
(実施例6)本発明の他のトリブロックポリマーについての液化及び接着試験
実施例1及び2で得られた、Poly[(6Az10Ac)-b-(4SPA)-b-(6Az10Ac)]-1 以外のトリブロックポリマー[poly(6Az10Ac)-b-poly(4SPA)-b-poly(6Az10Ac)]-2〜4、[poly(6Az10Ac)-b-poly(EHA)-b-poly(6Az10Ac)]-1〜2についても、実施例3〜5と同様の結果が得られた。
【0061】
(比較例1)AB型ジブロックポリマー: EBiB-PEHA-b-P6Az10Ac-Brの合成
(a)EBiB-PEHA-Brの重合
耐圧管に撹拌子を入れ、Ethyl 2-bromoisobutyrate(EBiB)を4.0ul(0.027mmol)、CuBr2を1.8mg(0.0081mmol)、Me6TRENを2.2ul(0.0081mmol)、アスコルビン酸を29mg(0.16mmol)加えた。Ar雰囲気にした無菌パックの中でこれにトルエンを0.48ml加えて、全体が均一な溶液になるまで撹拌し、その後EHAを0.50ml(2.4mmol)加え密閉し、55℃のオイルバスで5時間撹拌しながら加熱した。その後冷蔵庫で15分間冷却し中性アルミナ粉のカラムに通した。それをメタノールで再沈殿・遠心分離して精製した。収量は200mg、ConvNMR=96%、MwNMR=15897gmol
-1であった。
【0062】
(b)ジブロックポリマーPoly[(6Az10Ac)-b-(EHA)]の重合
耐圧管に撹拌子を入れ、EBiB-PEHA-Brを200mg(0.013mmol)、CuBr2を2.8mg(0.013mmol)、Me6TRENを3.5ul(0.013mmol)、アスコルビン酸を22mg(0.13mmol)、6Az10Acを0.12g(2.5mmol)加えた。Ar雰囲気にした無菌パックの中でこれにトルエンを0.17ml加えて、全体が均一な溶液になるまでお湯で加温しながら撹拌して密閉し、55℃のオイルバスで24時間撹拌しながら加熱した。反応後、再沈殿(メタノール:アセトン=1:2)・遠心分離して精製した。収量は130mg、ConvNMR=61%、MwNMR=21541gmol
-1であった。
【0063】
(比較例2)ランダムコポリマー: Poly(EHA-co-6Az10Ac)の合成
耐圧管に撹拌子を入れ、アゾビスイソブチロニトリルを6.6mg(0.040mmol)、6Az10Acを185mg(0.40mmol)加えた。Ar雰囲気にした無菌パックの中でこれにトルエンを0.50ml加えて、全体が均一な溶液になるまで撹拌し、その後EHAを0.33ml(1.6mmol)加え密閉し、80℃のオイルバスで1時間撹拌しながら加熱した。それをメタノールで再沈殿・遠心分離して液状の高分子180mgを得た。ConvNMR(EHA)=52%、ConvNMR(6Az10Ac)=60%、MwGPC=53790gmol
-1、MWD=2.22であった。
【0064】
(実施例7)本発明のトリブロックポリマー及び比較例1のジブロックポリマーの溶融接着、紫外光照射による液化、及び、可視光照射による接着試験
1.5cm×5cm×3mmのガラス基板2枚を1.5cm幅重ね合わせ、その間に合成した高分子(10mg弱)を溶融させて挟み込み、室温に戻して接着した試料、これに365nmの紫外光(浜松フォトニクスLC-L1V3)を2〜3分照射した試料、および、これにさらに510nmの可視光(Luxeon cyan 5w LXHL-LE5C)を10〜15分照射した試料について、サンプル数5本で引っ張り試験を行い、引っ張り剪断接着強度を求め、5本の平均を接着強度とした(
図2)。まとめた結果を表1に示す。
【表1】
【0065】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。