(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334406
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】コールドヘッド、超電導磁石、検査装置、およびクライオポンプ
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20180521BHJP
F25B 9/14 20060101ALI20180521BHJP
H01F 6/04 20060101ALI20180521BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20180521BHJP
A61B 5/05 20060101ALI20180521BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
F25B9/00 D
F25B9/00 H
F25B9/14 510B
H01F6/04
A61B5/05 331
A61B5/05ZAA
G01N24/00 600D
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-543147(P2014-543147)
(86)(22)【出願日】2013年10月22日
(86)【国際出願番号】JP2013006243
(87)【国際公開番号】WO2014064923
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-232936(P2012-232936)
(32)【優先日】2012年10月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】布施 圭一
【審査官】
庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/024757(WO,A1)
【文献】
特開2011−027272(JP,A)
【文献】
特開平09−269156(JP,A)
【文献】
特開2008−096040(JP,A)
【文献】
特開2002−286311(JP,A)
【文献】
特開2006−090648(JP,A)
【文献】
特開平08−145485(JP,A)
【文献】
特開平03−208378(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0247143(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00,9/14
H01F 6/04
A61B 5/05
G01N 24/00,24/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄冷材粒子群と、前記蓄冷材粒子群を区分けする金属メッシュ材とを備えるステージを具備するコールドヘッドであって、
前記金属メッシュ材は、メッシュ状に編み込まれ、線径が20μm以上90μm以下である金属線を有し、
前記金属メッシュ材は、長辺の長さが前記蓄冷材粒子群の平均粒径の1/10以上1/3以下である四角形状のメッシュ穴を有する、コールドヘッド。
【請求項2】
前記金属メッシュ材は、銅メッシュ材である、請求項1に記載のコールドヘッド。
【請求項3】
前記ステージは、複数の前記金属メッシュ材の積層を備え、
前記複数の金属メッシュ材は積層されている、請求項1または請求項2に記載のコールドヘッド。
【請求項4】
前記複数の金属メッシュ材における前記メッシュ穴の一辺の長さが異なる、請求項3に記載のコールドヘッド。
【請求項5】
前記複数の金属メッシュ材は、前記メッシュ穴の位置が一致しないように積層されている、請求項3に記載のコールドヘッド。
【請求項6】
前記ステージは、前記金属メッシュ材により区分けされ、異なる種類の前記蓄冷材粒子群がそれぞれ充填された複数の蓄冷材充填層を有する、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のコールドヘッド。
【請求項7】
前記蓄冷材粒子群は、鉛蓄冷材粒子群、ホルミウム銅蓄冷材粒子群、エルビウムニッケル蓄冷材粒子群、エルビウムコバルト蓄冷材粒子群、ガドリニウム酸硫化物蓄冷材粒子群、およびガドリニウムアルミニウム酸化物粒子群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のコールドヘッド。
【請求項8】
前記ステージは、前記金属メッシュ材で区分けされた3つ以上の領域を有する、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のコールドヘッド。
【請求項9】
蓄冷材を備える第1のステージと、
前記ステージで構成された第2のステージと、を具備する、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のコールドヘッド。
【請求項10】
前記蓄冷材粒子群を構成する蓄冷材粒子のそれぞれの投影像の周囲長をLとし、前記投影像の実面積をAとしたとき、L2/4πAで表される形状因子Rが1.5を超える前記蓄冷材粒子の比率は、5%以下である、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のコールドヘッド。
【請求項11】
前記蓄冷材粒子群の平均粒径は、200μm以上300μm以下であり、
前記蓄冷材粒子群を構成する蓄冷材粒子のうち、粒径が150μm以上350μm以下の範囲の前記蓄冷材粒子の個数割合は、95%以上である、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のコールドヘッド。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のコールドヘッドを具備する、超電導磁石。
【請求項13】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のコールドヘッドを具備する、検査装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のコールドヘッドを具備する、クライオポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドヘッド、超電導磁石、検査装置、およびクライオポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超電導技術の発展は著しく、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置や核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)装置などの様々な検査装置が用いられている。超電導技術を用いるためには、10K以下、さらには4K以下の極低温を実現することが必要である。このような極低温を実現するために、コールドヘッドと呼ばれる冷凍機が用いられている。
【0003】
コールドヘッドとしては、ギフォード・マクマホン方式(GM方式)や、スターリング方式、パルス方式といった様々な方式がある。いずれの方式であったとしても、極低温を得るためには、ステージと呼ばれる蓄冷容器に蓄冷材を充填する。
【0004】
コールドヘッドの設計によって、ステージが1ステージの場合や、2ステージなど複数に分かれる場合がある。このステージに、ヘリウムガスを通し、蓄冷材の体積比熱を利用して極低温を得ている。
【0005】
4K以下の極低温を得るためのコールドヘッドの一例は、2ステージ(2段蓄冷器)に、鉛蓄冷材、HoCu
2蓄冷材、GOS蓄冷材(ガドリニウム酸硫化物蓄冷材)の3層構造を有する。
【0006】
上記コールドヘッドは、ヘリウムガスなどの冷媒ガスを断熱膨張させることにより極低温を得ることができる。このように、極低温を得るためのコールドヘッドでは、ステージに複数種の蓄冷材が層状に充填されている。
【0007】
複数種の蓄冷材を用いる場合、個々の比熱ピーク温度が異なることから、蓄冷材を混合して用いることができない。そのため、複数種の蓄冷材を用いる場合は、その層間を金属メッシュ材により区分けする。
【0008】
蓄冷材としては、例えば粒径が0.01mm以上3mm以下の粒子が90%以上であり、かつアスペクト比5以下の粒子が90%以上である、粒径の揃った蓄冷材粒子群が用いられる。
【0009】
金属メッシュ材で複数種の蓄冷材粒子群を区分けする際、蓄冷材粒子が金属メッシュ材のメッシュ穴に詰まってしまう問題が発生していた。蓄冷材粒子がメッシュ穴に詰まってしまうと、冷媒ガスの通気性が低下する。
【0010】
蓄冷材粒子による蓄冷では、蓄冷材粒子の体積比熱による断熱膨張を利用することから、できるだけ多くの蓄冷材粒子をステージ内に充填することが好ましい。そのため、蓄冷材粒子群は、金属メッシュ材に密着するように充填される。その上で冷媒ガスの通気性を確保しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−090854号公報
【特許文献2】特許第2609747号公報
【特許文献3】特許第3769024号公報
【発明の概要】
【0012】
本発明の一態様では、コールドヘッドのステージに対する蓄冷材粒子の充填率を高めつつ、冷媒ガスの通気性の低下を抑制することを課題の一つとする。
【0013】
実施形態のコールドヘッドは、蓄冷材粒子群と、前記蓄冷材粒子群を区分けする金属メッシュ材とを備えるステージを具備する。
金属メッシュ材は、メッシュ状に編み込まれ、線径が20μm以上90μm以下である金属線を有する。金属メッシュ材は、四角形状のメッシュ穴を有する。メッシュ穴の長辺の長さは、蓄冷材粒子群の平均粒径の1/10以上
1/3以下である。
【0014】
実施形態の超電導磁石、検査装置、クライオポンプは、コールドヘッドを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態のコールドヘッドの第2のステージの構造例を示す図。
【
図2】実施形態のコールドヘッドの第2のステージの構造例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態のコールドヘッドは、第1のステージおよび第2のステージを有する。コールドヘッドの方式としては、GM方式、スターリング方式、またはパルス方式といった様々な方式を適用することができる。いずれの場合も10K以下、さらには5K以下の極低温を得るためには、第1のステージおよび第2のステージに蓄冷材が充填される。第1のステージの蓄冷材としては、例えば銅メッシュ材を用いることができる。
【0017】
第2のステージの構造例について
図1および
図2を参照して説明する。
図1および
図2は、コールドヘッドの第2のステージの構造例を示す図である。
【0018】
図1に示す第2のステージは、二層式のステージであり、蓄冷材粒子群1と、蓄冷材粒子群2と、蓄冷容器3と、金属メッシュ材4と、を有する。
図2に示す第2のステージは、三層式のステージであり、蓄冷材粒子群1と、蓄冷材粒子群2と、蓄冷容器3と、金属メッシュ材4と、蓄冷材粒子群5と、を有する。
図1および
図2に示すように、第2のステージは、金属メッシュ材4により区分けされ複数の蓄冷材粒子群がそれぞれ充填された、2以上さらには3以上の複数の蓄冷材充填層を有する。
【0019】
図1に示す第2のステージは、金属メッシュ材4を挟んで蓄冷材粒子群1と蓄冷材粒子群2が充填される。これにより、蓄冷材粒子群1が充填された第1の蓄冷材充填層と蓄冷材粒子群2が充填された第2の蓄冷材充填層の2層に区分けされている。
【0020】
図2に示す第2のステージには、金属メッシュ材4を挟んで蓄冷材粒子群1と蓄冷材粒子群2と蓄冷材粒子群5が充填される。これにより、第2のステージは、蓄冷材粒子群1が充填された第1の蓄冷材充填層と、蓄冷材粒子群2が充填された第2の蓄冷材充填層と、蓄冷材粒子群5が充填された第3の蓄冷材充填層の3層に区分けされている。このように、第2のステージを、金属メッシュ材4で区分けされた2つ以上または3つ以上の領域を有する構造にしてもよい。なお、
図1および
図2では、第2のステージを2層または3層に区分けする構造を例示したが、これに限定されず、4層以上に区分けしてもよい。
【0021】
金属メッシュ材4は、蓄冷材粒子群1、蓄冷材粒子群2、蓄冷材粒子群5を区分けする。金属メッシュ材4は、例えば蓄冷材粒子群1、蓄冷材粒子群2、蓄冷材粒子群5の少なくとも一つに接していてもよい。
【0022】
金属メッシュ材4の構造例について
図3を参照して説明する。
図3は、金属メッシュ材4の構造例を示す図である。
図3に示す金属メッシュ材4は、メッシュ穴6と、金属線7と、を有する。
【0023】
メッシュ穴6の形状は、四角形状であることが好ましい。ここで、四角形状とは、例えば正方形または長方形である。メッシュ穴6の形状を四角形状とすることにより、蓄冷材粒子群を充填してもメッシュ穴6に隙間を作ることができる。これにより、蓄冷材粒子群がメッシュ穴6に詰まってしまうことが抑制されるため、冷媒ガスの通気性の低下を抑制することができる。なお、
図3に示すように、金属メッシュ材4は、通常、円形である。よって、端部のメッシュ穴6は、四角形状でなくてもよい。
【0024】
メッシュ穴6の形状が四角形状の場合、メッシュ穴6の長辺の長さが金属メッシュ材4により区分けされる蓄冷材粒子群の平均粒径の1/2以下であることが好ましい。例えば、
図3に示すメッシュ穴6の横幅T1、メッシュ穴6の縦幅T2のうち、長い方が上記長辺となる。
【0025】
メッシュ穴6の長辺の長さが金属メッシュ材4により区分けされる蓄冷材粒子群の平均粒径の1/2を超えると、蓄冷材粒子がメッシュ穴6を通り抜けやすくなるため、異なる種類の蓄冷材粒子群が混ざってしまい、冷凍能力が低下するおそれがある。蓄冷材粒子群を充填してもメッシュ穴6に適度な隙間を形成するには、四角形状のメッシュ穴6の長辺の長さが金属メッシュ材4により区分けされる蓄冷材粒子群の平均粒径の1/2以下、さらには1/3以下であることが好ましい。長辺の長さが短すぎると蓄冷材粒子によりメッシュ穴6が完全に塞がってしまう場合がある。長辺の長さは、金属メッシュ材4により区分けされる蓄冷材粒子群の平均粒径の1/10以上であることが好ましい。
【0026】
金属線7は、例えばメッシュ状に編み込まれた構造を有する。このとき、金属線7に囲まれた領域がメッシュ穴6となる。なお、金属メッシュ材4は、必ずしも編み込まれた構造に限定されない。
【0027】
金属線7の線径は、20μm以上90μm以下であることが好ましい。線径が20μm未満では、金属メッシュ材4の強度の低下や、金属メッシュ材4の製造が困難になるためにコストアップの要因となる。また、線径が90μmを超えると冷媒ガスの通気性が低下する。そのため、金属線7の線径は、20μm以上90μm以下、さらには40μm以上60μm以下であることが好ましい。
【0028】
図4は、金属メッシュ材4の断面の一例を示す。
図4に示すように、金属メッシュ材4を、金属線7Aに対して金属線7Bが上下交互に編み込まれた構造にすることにより、メッシュ穴6の形状を、凹凸がある立体形状にすることができる。立体形状にすることにより、例えば蓄冷材粒子群と金属メッシュ材4の接触面を立体的にすることができる。蓄冷材粒子によるメッシュ穴6の閉塞が効果的に抑制されるため、冷媒ガスの通気性の低下を抑制することができる。
【0029】
図5は、金属メッシュ材4の断面の他の例を示す。
図5に示すように、金属線7Aおよび金属線7Bの形状を平板状にしてもよい。平板状の場合、幅の厚い方を線径とする。平板状であっても、金属線7の線径は、20μm以上90μm以下であることが好ましい。
【0030】
金属メッシュ材4は、例えば銅メッシュ材であることが好ましい。銅メッシュ材は、前述のように第1のステージの蓄冷材としても用いられ、第2のステージに設けたとしても冷凍能力への影響を抑制することができる。また、ばね性も高いことから蓄冷材粒子の充填密度を高めるために応力を付与したとしても破損しにくい。また、コールドヘッドの動作時の振動や冷媒ガスの通気時の振動を緩和することができる。その結果、コールドヘッドを長時間稼働させた際に蓄冷材の破損を抑制することができる。
【0031】
さらに、第2のステージは、複数の金属メッシュ材4を備えることが好ましい。このとき、複数の金属メッシュ材4は積層されている。2以上の金属メッシュ材4の積層を用いることにより、ばね性をさらに高めることができる。これにより、蓄冷材粒子群を充填する際の応力が大きくなり、充填密度を高くする工程を短縮することができる。なお、金属メッシュ材4の数が多すぎると、ステージ内の蓄冷材粒子群を充填するスペースが狭くなるため、金属メッシュ材4の数は、5以下であることが好ましい。
【0032】
2以上の金属メッシュ材4の積層を用いることにより、コールドヘッドを長時間稼働させた際に蓄冷材の破損をさらに抑制することができる。その結果、例えば25000時間以上、さらには35000時間以上連続稼働したとしても冷凍能力を維持することができる。
【0033】
複数の金属メッシュ材4は、メッシュ穴の位置が一致しないように(ずれるように)積層されることが好ましい。
図6は、複数の金属メッシュ材の構造例を示す図である。
図6に示す金属メッシュ材4−2は、金属メッシュ材4−1に積層されている。このとき、金属メッシュ材4−2のメッシュ穴は、金属メッシュ材4−1の金属線に重畳している。前述のように、金属メッシュ材を立体的に編み込んだ形状とすることにより、蓄冷材粒子による金属メッシュ材のメッシュ穴の閉塞を抑制しつつ、冷媒ガスの通気性の低下を抑制することができる。
【0034】
複数の金属メッシュ材4の積層において、メッシュ穴の位置をずらすためには、メッシュ穴形状の異なる複数の金属メッシュ材を用いることが有効である。例えば、複数の金属メッシュ材4の積層において、メッシュ穴の一辺の長さが金属メッシュ材4間で異なることが好ましい。これにより、コールドヘッドを連続稼働した場合に、稼働時の振動やガス圧により蓄冷材が破壊されたとしても金属メッシュ材の目詰まりが抑制される。その結果、冷凍能力を長時間維持することができる。以上が金属メッシュ材4の構造例の説明である。
【0035】
図1および
図2に示す蓄冷材粒子群(蓄冷材粒子群1、蓄冷材粒子群2、蓄冷材粒子群5)は、互いに異なる種類であってもよい。
【0036】
第2のステージ中の金属メッシュ材で区分けされた各蓄冷材充填層に充填される蓄冷材粒子群は、鉛蓄冷材粒子群、ホルミウム銅蓄冷材粒子群、エルビウムニッケル蓄冷材粒子群、エルビウムコバルト蓄冷材粒子群、ガドリニウム酸硫化物蓄冷材粒子群、およびガドリニウムアルミニウム酸化物蓄冷材粒子群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。複数種の蓄冷材粒子群を用いる場合、比熱ピーク温度が同じまたは順に低い組合せを選択することが好ましい。
【0037】
例えば、複数種の蓄冷材粒子群の1つを、ホルミウム銅蓄冷材粒子群またはエルビウムニッケル蓄冷材粒子群とすることができる。ホルミウム銅蓄冷材粒子群またはエルビウムニッケル蓄冷材粒子群として、例えば特許第3769024号公報(特許文献3)に示されるように、形状因子Rや強度が優れたものが開発されている。
【0038】
ホルミウム銅蓄冷材粒子は、例えばHoCu
2またはHoCuであることが好ましい。エルビウムニッケル蓄冷材粒子は、例えばErNiまたはEr
3Niであることが好ましい。
【0039】
蓄冷材粒子群の平均粒径は、200μm以上300μm以下であることが好ましい。平均粒径を200μm以上300μm以下にすることにより、機械的強度が高い蓄冷材粒子を調製し易くなる。また、第2のステージ内に充填する際にも、充填密度を高めつつ、冷媒ガスの通気性を維持するための隙間を形成することができる。
【0040】
蓄冷材粒子群において、粒径が150μm以上350μm以下の範囲である蓄冷材粒子の個数割合は、95%以上であることが好ましい。粒径が150μm未満の蓄冷材粒子が多いと金属メッシュ材4のメッシュ穴6が塞がる原因となる。また、粒径が350μmを超える蓄冷材粒子が多いと、蓄冷材の充填密度が低くなり冷凍能力が低下する。そのため、粒径が150μm以上350μm以下の範囲である蓄冷材粒子の個数割合は、例えば95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは100%である。
【0041】
蓄冷材粒子群を構成する蓄冷材粒子の形状は、充填密度を高くするために球体もしくは球体に近似した形状であることが好ましい。
【0042】
蓄冷材粒子群を構成する蓄冷材粒子の投影像の周囲長をLとし、該投影像の実面積をAとしたとき、L
2/4πAで表される形状因子Rが1.5を超える該蓄冷材粒子の比率は、5%以下であることが好ましい。L
2/4πAで表される形状因子Rが1.5以下であるこということは、蓄冷材粒子の球状度が高く、表面が滑らかであることを意味している。見掛け上、球体であったとしても表面に微小な凹凸が多数存在すると形状因子Rは1.5を超える場合がある。
【0043】
金属メッシュ材4と蓄冷材粒子群の間に不要な隙間が生じないように充填するには、例えば蓄冷容器に小さな振動を与え、蓄冷材粒子同士の隙間が小さくなるように蓄冷材粒子を充填し、その後、応力を付与しながら金属メッシュ材4を押しつけて固定することが好ましい。このように、蓄冷材粒子群を効率的に充填するためには、振動や応力を付与することが有効である。
【0044】
蓄冷材粒子に振動や応力を付与する場合、蓄冷材粒子の機械的強度が高いことが求められる。蓄冷材粒子の機械的強度を向上させる手段の一つとして、形状因子Rを1.5以下にすることが挙げられる。表面の微細な凹凸をなくすことにより、機械的強度を向上させることができる。形状因子Rが1.5を超える蓄冷材粒子の比率は、5%以下、さらには2%以下、さらには0%であることが好ましい。また、蓄冷材粒子の形状因子Rは、1.2以下であることが好ましい。
【0045】
蓄冷材粒子の形状因子Rを低くすることにより、蓄冷材粒子の機械的強度が高くなり、金属メッシュ材4との間に不要な隙間が生じないように、蓄冷材粒子を充填することができるため、冷凍能力を向上させることができる。
【0046】
複数種の蓄冷材粒子群を用いる場合、少なくとも1つの蓄冷材粒子群において、形状因子Rが1.5以下である比率が5%以下であることが好ましい。特に、第2のステージ内で下側に配置される蓄冷材粒子群が上記比率を満足することが好ましい。これは第2のステージ内に蓄冷材粒子群を充填する際に、下側に配置される蓄冷材粒子群から充填され、下側に配置される蓄冷材粒子群の方が上側に配置される蓄冷材粒子群よりも振動や応力を受けるためである。なお、複数種の蓄冷材粒子群を用いる場合、全ての蓄冷材粒子群において、形状因子Rが1.5以下である比率が5%以下であることがより好ましい。
【0047】
蓄冷材粒子群において、前述の粒径の制御と形状因子Rの制御とをそれぞれ単独で行ってもよいが、両方を組み合わせることが好ましい。
【0048】
本実施形態のコールドヘッドでは、金属メッシュ材のメッシュ穴の形状が調整されている。これにより、蓄冷材粒子群によりメッシュ穴が塞がることを抑制することができるため、冷媒ガスの通気性の低下が抑制される。このため、コールドヘッドのステージに、複数種の蓄冷材粒子群を充填して冷凍能力を向上させることができる。従って、本実施形態のコールドヘッドを具備する超電導磁石、検査装置、クライオポンプなどの各種装置の信頼性が向上する。
【0049】
検査装置としては、MRI装置やNMR装置などが挙げられる。例えば、MRI装置は磁気を利用して人体を縦横に撮影できる医療機器である。現在MRI装置は、X線CT(Computed Tomography:CT)装置と同等以上の鮮明な画像が得られるようになり、血管撮影や脳内の動脈瘤や脳腫瘍の有無などの撮影に使われている。
【0050】
MRI装置での撮影は、定期健診に限らず、当然ながら緊急の診察で行われる場合もある。このため、常にMRI装置を稼働させ、いつでも撮影することができるようにする必要がある。常にMRI装置を稼働させるには、極低温を得るための超電導磁石、さらに超電導磁石を具備するコールドヘッドを稼働状態とすることが必要である。本実施形態のコールドヘッドでは、蓄冷材粒子の充填密度を向上させ、その上で冷媒ガスの通気性の低下が抑制されている。これにより、蓄冷材粒子の持つ冷凍能力を長期にわたり維持することができる。従って、コールドヘッドさらにはコールドヘッドを具備する超電導磁石、検査装置、クライオポンプなどの各種装置の長期信頼性を得ることができる。
【実施例】
【0051】
(実施例1ないし実施例10、比較例1)
蓄冷材粒子群として表1に示す蓄冷材粒子を具備する試料を用意した。なお、表1において、Pb粒子は鉛蓄冷材粒子を表す。HoCu
2粒子はホルミウム銅蓄冷材粒子を表す。Er
3Ni粒子はエルビウムニッケル蓄冷材粒子を表す。GOS粒子はガドリニウム酸硫化物蓄冷材粒子を表す。GAP粒子はガドリニウムアルミニウム酸化物蓄冷材粒子を表す。HoCu粒子はホルミウム銅蓄冷材粒子を表す。Er
3Co粒子はエルビウムコバルト蓄冷材粒子を表す。また、形状因子Rや粒径の制御は形状分級により行った。
【0052】
【表1】
【0053】
次に、金属メッシュ材として表2に示す銅メッシュ材試料を用意した。なお、編み込み構造「あり」は、銅線を編み込んで形成した金属メッシュ材試料を示し、編み込み構造「なし」は、銅金属板をエッチングして形成した金属メッシュ材試料を示す。
【0054】
【表2】
【0055】
次に、蓄冷材粒子群試料(試料1ないし試料9)および金属メッシュ材試料(試料Aないし試料E)を表3に示すように組み合わせてコールドヘッドの第2のステージ内を2層構造または3層構造とした。このとき、できるだけ充填率が高くなるように振動を加えながら蓄冷材粒子群を充填した。各蓄冷材粒子群の間には、金属メッシュ材試料を3つずつ積層して配置した。
【0056】
各実施例および比較例に対し、冷媒ガスの通気性を調べた。冷媒ガスの通気性の調査では、比較例1の通気量を100としたとき、通気量が120以上141未満のコールドヘッドを三角印で示し、141以上のコールドヘッドを丸印で示した。その結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例1ないし実施例10に係るコールドヘッドでは、冷媒ガスの通気性が高いことがわかった。特に、実施例2ないし実施例4、実施例6ないし実施例8では、冷媒ガスの通気性が高かった。上記に示すように、蓄冷材粒子の形状、金属メッシュ材のメッシュ穴の形状を最適化することにより冷媒ガスの通気性の低下が抑制される。このため、蓄冷材の性能を生かし、コールドヘッドの冷凍能力を向上させることができる。
【0059】
(実施例11ないし実施例13)
実施例3と同じ蓄冷材粒子の組合せ(試料1、試料3、試料6)を用意した。次に、金属メッシュ材として試料Bないし試料Dの3種類を用意し、表4のように積層させて実施例11ないし実施例13に係るコールドヘッドを作製した。
【0060】
実施例3および実施例11ないし実施例13に係るコールドヘッドに対し、連続稼働後の冷凍能力の維持率を調べた。冷凍能力の維持率は初期値の冷凍能力(W)を100としたときの、20000時間後、30000時間後、40000時間後の冷凍能力(W)を比で示した。なお、各実施例のコールドヘッドとしては、いずれもGM方式コールドヘッドであり、4.2Kのときの冷凍能力が0.5Wであるものを用いた。
【0061】
【表4】
【0062】
表4から分かるとおり、実施例11ないし実施例13に係るコールドヘッドでは、20000時間後、30000時間後、40000時間後でも冷凍能力の維持率が高かった。このことは、振動により蓄冷材が破壊されても金属メッシュ材の目詰まりが発生し難いことを示している。
【0063】
実施例11ないし実施例13のように、メッシュ穴のサイズが異なる金属メッシュ材を積層させたものにおいて、冷凍能力の維持率が高かった。このことは、立体的に編み込まれた金属メッシュ材において、重なり合う金属メッシュ材のメッシュ穴の位置がずれていることにより、金属メッシュ材の目詰まりが抑制されることを示している。
【0064】
さらに、パルス方式コールドヘッド(4.2Kでの冷凍能力が0.5W)に用いた場合における連続稼働後の冷凍能力の維持率を調べた。その結果を表5に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
表5からパルス式コールドヘッドを用いた場合についても優れた特性が得られることが分かった。このことは、振動により蓄冷材が破壊されても金属メッシュ材の目詰まりが発生し難いことを示している。なお、GM方式とパルス方式とを比較したとき、パルス方式の方がGM方式よりも振動が少ないため、冷凍能力の低下率は低かった。
【0067】
なお、上記実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1…蓄冷材粒子群、2…蓄冷材粒子群、3…蓄冷容器、4…金属メッシュ材、4−1…金属メッシュ材、4−2…金属メッシュ材、5…蓄冷材粒子群、6…メッシュ穴、7…金属線、7A…金属線、7B…金属線。