特許第6334414号(P6334414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6334414容器入りの乳含有飲料の製造方法並びに製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334414
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】容器入りの乳含有飲料の製造方法並びに製造システム
(51)【国際特許分類】
   A23C 3/023 20060101AFI20180521BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A23C3/023
   A23L2/38 P
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-554636(P2014-554636)
(86)(22)【出願日】2014年1月6日
(86)【国際出願番号】JP2014050010
(87)【国際公開番号】WO2014104415
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年11月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-288295(P2012-288295)
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】福田 宗綱
(72)【発明者】
【氏名】松原 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 梓
(72)【発明者】
【氏名】市村 武文
(72)【発明者】
【氏名】東 俊二
(72)【発明者】
【氏名】赤松 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】長田 尭
(72)【発明者】
【氏名】小川 一平
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−507385(JP,A)
【文献】 特開2001−078665(JP,A)
【文献】 特開平10−295341(JP,A)
【文献】 特開2004−017993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 3/023
A23L 2/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を除去して、溶存酸素濃度が3.0〜5.0ppmに低下した乳含有液状物を得る脱酸素処理工程と、
上記脱酸素処理工程で処理した後の乳含有液状物を、紙基材層及びナイロン樹脂層を含む積層シートによって形成された容器に収容し、容器入りの乳含有飲料を得る容器収容工程、
を含む容器入りの乳含有飲料の製造方法であって、
上記容器収容工程において、上記容器を構成するナイロン樹脂層が、ナイロンMXD6を含むことを特徴とする容器入りの乳含有飲料の製造方法。
【請求項2】
上記脱酸素処理工程が、上記乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を、不活性ガスで置換する方法、及び/又は、上記乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を、脱気によって除去する方法、によって行われる請求項1に記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
【請求項3】
上記容器収容工程において、上記容器に収容する前の乳含有液状物の溶存酸素濃度が、6ppm以下である請求項1又は2に記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
【請求項4】
上記脱酸素処理工程の前、後、及び、同時の中から選ばれる一つ以上において、上記乳含有液状物を加熱して殺菌する殺菌工程を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
【請求項5】
上記容器収容工程の前に、上記乳含有液状物をサージタンクに貯液する貯液工程を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
【請求項6】
上記貯液工程において、上記乳含有液状物の溶存酸素濃度の増大の幅が、貯液の前と後との差として、1ppm以下になるように、上記サージタンク内の乳含有液状物の撹拌を調整する請求項に記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
【請求項7】
上記容器収容工程において、上記容器が、ゲーブルトップ型の紙容器である請求項1〜のいずれか1項に記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入りの乳含有飲料の製造方法並びに製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牛乳等の乳含有液状物の溶存酸素濃度を低下させて、乳含有液状物の風味の経時的な劣化を抑制することが知られている。
例えば、乳、又は乳を含有する未加熱液を、加熱処理する前に窒素ガス等の不活性ガスで置換して液中溶存酸素を5ppm以下に低下せしめた状態で加熱処理すること、を特徴とする加熱によるジメチルジサルファイドの発生を減少させた生乳又は未加熱液に近似した風味を有する飲料を製造する方法が知られている(特許文献1)。
また、原料乳を加熱殺菌処理する工程と、加熱殺菌された牛乳類を、不活性ガスで置換された無菌タンク内に貯留する工程と、前記無菌タンク内に貯留された牛乳類を包装容器に充填する工程を有することを特徴とする牛乳類の製造方法が知られている(特許文献2)。
【0003】
一方、酸素ガスによる液体飲食物の変質を抑制するために、酸素ガス等の透過を阻止するバリア性に優れた紙容器を用いて、液体飲食物を保存することが知られている。
例えば、紙基材層の外側にポリ乳酸樹脂層が積層され、紙基材層の内側に、ポリ乳酸樹脂層、接着層、バリア層、接着層及びポリ乳酸樹脂層からなるバリア性シーラントが積層された複合材料であって、バリア層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体、6−ナイロン、6−66共重合ナイロン又はMXD−6メタキシリレンジアミンの何れか一種からなり、バリア層の両側の接着層は酸変性樹脂からなる複合材からなるバリア性を有する紙容器が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3083798号公報
【特許文献2】特許第3490428号公報
【特許文献3】特開2010−69766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、従来、牛乳等の乳含有液状物(乳含有飲料)の溶存酸素濃度を低下させて、乳含有液状物の風味の経時的な劣化を抑制することが知られている。
しかし、製造時に溶存酸素濃度を低下させた牛乳であっても、容器に収容した後の保存期間が長いと、牛乳の溶存酸素濃度が経時的に増大し、風味の劣化や汚染菌の増殖が懸念されるという問題があった。
本発明は、容器に収容した後の牛乳等の乳含有飲料の風味の劣化や汚染菌の増殖を長期間に亘って抑制することのできる容器入りの乳含有飲料の製造方法並びに製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を除去して、溶存酸素濃度が低下した乳含有液状物を得た後、この乳含有液状物を、紙基材層及びナイロン樹脂層を含む積層シートによって形成された容器に収容すれば、容器に収容した後の乳含有飲料の風味の劣化や汚染菌の増殖を長期間に亘って抑制することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[9]を提供するものである。
[1] 乳含有液状物(例えば、未加熱の生乳)に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を除去して、溶存酸素濃度が低下した乳含有液状物を得る脱酸素処理工程と、上記脱酸素処理工程で処理した後の乳含有液状物を、紙基材層及びナイロン樹脂層を含む積層シートによって形成された容器に収容し、容器入りの乳含有液状飲料を得る容器収容工程、を含むことを特徴とする容器入りの乳含有飲料の製造方法。
[2] 上記脱酸素処理工程が、上記乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を、不活性ガス(例えば、窒素ガス)で置換する方法、及び/又は、上記乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を、脱気(例えば、減圧もしくは真空や、酸素除去剤の添加や、中空糸膜等の酸素除去膜や、加熱など)によって除去する方法によって行われる上記[1]に記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
[3] 上記容器収容工程において、上記容器に収容する前の乳含有液状物の溶存酸素濃度が、8ppm以下である上記[1]又は[2]に記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
[4] 上記容器収容工程において、上記容器を構成するナイロン樹脂層が、ナイロンMXD6、ナイロン6、ナイロン6,6及びナイロン4,6からなる群より選ばれる一種以上を含む上記[1]〜[3]のいずれかに記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
[5] 上記脱酸素処理工程の前、後、及び、同時の中から選ばれる一つ以上において、上記乳含有液状物を加熱して殺菌する殺菌工程を含む上記[1]〜[4]のいずれかに記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
[6] 上記容器収容工程の前に、上記乳含有液状物をサージタンクに貯液する貯液工程を含む上記[1]〜[5]のいずれかに記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
[7] 上記貯液工程において、上記乳含有液状物の溶存酸素濃度の増大の幅が、貯液の前と後との差として、3ppm以下になるように、上記サージタンク内の乳含有液状物の撹拌を調整する上記[6]に記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
[8] 上記容器収容工程において、上記容器が、ゲーブルトップ型の紙容器である上記[1]〜[7]のいずれかに記載の容器入りの乳含有飲料の製造方法。
[9] 乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を除去して、溶存酸素濃度が低下した乳含有液状物を得るための脱酸素処理手段と、上記脱酸素処理手段で処理した後の乳含有液状物を、紙基材層及びナイロン樹脂層を含む積層シートによって形成されている容器に収容し、容器入りの乳含有飲料を得るための容器収容手段、を含むことを特徴とする容器入りの乳含有飲料の製造システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器に収容した後の乳含有飲料(乳含有液状物)の風味の劣化や汚染菌の増殖を長期間に亘って抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の容器入りの乳含有飲料の製造方法の一例は、(A)未加熱の乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を除去して、溶存酸素濃度が低下した乳含有液状物を得る脱酸素処理工程と、(B)工程(A)で得られた乳含有液状物を加熱して殺菌する殺菌工程と、(C)工程(B)で得られた乳含有液状物をサージタンクに貯液する貯液工程と、(D)工程(C)における貯液後の乳含有液状物を、紙基材層及びナイロン樹脂層を含む積層シートによって形成された容器に収容し、容器入りの乳含有飲料を得る容器収容工程、を含む。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0010】
[工程(A):脱酸素処理工程]
工程(A)は、未加熱の乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を除去して、溶存酸素濃度が低下した乳含有液状物を得る脱酸素処理工程である。
乳含有液状物の例としては、生乳、及び、生乳や生乳の加工物を含む各種飲料(例えば、濃縮乳、脱脂乳、部分脱脂乳、脱脂濃縮乳、部分脱脂濃縮乳、クリーム、ホエイ、パーミエイト、還元乳、還元濃縮乳、還元脱脂乳、還元部分脱脂乳、還元クリーム、還元ホエイ、還元パーミエイト、加工乳、乳飲料、発酵乳飲料、乳清飲料、乳酸菌飲料、乳を含む清涼飲料等)の原料として用いられる液状物等が挙げられる。
また、乳含有液状物とは、乳が一部でも含有されている液状物であれば該当するため、乳に由来する原料以外の原料の添加は、任意である。
さらに、「乳含有液状物」の語における「液状物」とは、液分の中に、全てもしくは一部の固形分が溶解、懸濁もしくは分散されている、一般的な液状物に限られず、液分の中に、沈澱成分(例えば、ミネラル類、茶葉類、コーヒー類、乳糖、不溶性食物繊維等の不溶性成分や、果肉、砂嚢、クラッシュゼリー等の固形分)を含有するものも含まれる。
【0011】
生乳の例としては、牛乳、羊乳、めん羊乳、水牛乳、山羊乳、鯨乳等の哺乳類由来の乳(獣乳)、大豆乳等の植物乳、水と油と乳化剤などで乳化された人工乳等が挙げられる。
工程(A)(脱酸素処理工程)における乳含有液状物の液温の下限値は、当該液状物が凍結し、固化することで流動性が無くならなければ特に制限はなく、例えば好ましくは−10℃、より好ましくは−5℃、さらに好ましくは0℃、さらに好ましくは1℃である。該値が−10℃より小さいと、乳含有液状物が凍結し、当該乳含有液状物が固化するおそれがある。
工程(A)(脱酸素処理工程)における乳含有液状物の液温の上限値は、当該液状物の脂肪の過度な劣化、タンパク質の過剰な変性、糖質の過度な褐変化(メイラード反応)が発生しなければ特に制限はなく、好ましくは60℃、より好ましくは50℃、さらに好ましくは40℃である。該値が60℃を超えると、脂肪の過度な劣化、タンパク質の過剰な変性、糖質の過度な褐変化(メイラード反応)が進行しやすくなるおそれがある。
【0012】
すなわち、工程(A)(脱酸素処理工程)における乳含有液状物の液温は、好ましくは−10℃〜60℃、より好ましくは−5℃〜60℃、さらに好ましくは0℃〜60℃、さらに好ましくは1℃〜60℃、さらに好ましくは1℃〜50℃、さらに好ましくは1℃〜40℃、さらに好ましくは1℃〜30℃、さらに好ましくは1℃〜20℃、さらに好ましくは1℃〜15℃、さらに好ましくは1℃〜12℃、さらに好ましくは1℃〜10℃、さらに好ましくは1℃〜8℃、さらに好ましくは1℃〜7℃、さらに好ましくは1℃〜6℃、さらに好ましくは1℃〜5℃、さらに好ましくは2℃〜5℃、さらに好ましくは2℃〜4℃である。
【0013】
工程(A)(脱酸素処理工程)は、例えば、(a)乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を、不活性ガスで置換する方法、(b)乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を、脱気(例えば、減圧もしくは真空の雰囲気下に置くことや、酸素除去剤の添加や、中空糸膜等の酸素除去膜を通すことや、加熱など)によって除去する方法、の中から選ばれる1つ以上の方法によって行うことができる。
工程(A)(脱酸素処理工程)は、上述の(a)及び/又は(b)の方法を同時にまたは前後に組み合わせて行うこともできる。
【0014】
乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を不活性ガスで置換する方法の例としては、不活性ガスを乳含有液状物中に吹き込む方法が挙げられる。この場合、不活性ガスの吹き込み時の乳含有液状物の液温は、不活性ガスの置換による気泡の発生を抑制すれば特に制限はなく、例えば60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下、さらに好ましくは25℃以下、さらに好ましくは20℃以下、さらに好ましくは15℃以下、さらに好ましくは12℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。
不活性ガスの例としては、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。中でも、窒素ガスは、安全で低コストであり、入手が容易である点で、好ましい。
【0015】
乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を、減圧によって除去する方法の例としては、乳含有液状物を、好ましくは1〜50kPa、より好ましくは3〜40kPa、さらに好ましくは5〜30kPa、特に好ましくは5〜25kPaの圧力下(減圧下)に置く方法が挙げられる。この場合、乳含有液状物の液温は、減圧による気泡の発生を抑制すれば特に制限はなく、例えば60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下、さらに好ましくは25℃以下、さらに好ましくは20℃以下、さらに好ましくは15℃以下、さらに好ましくは12℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。
【0016】
工程(A)による処理後の乳含有液状物の溶存酸素濃度は、工程(D)(容器収容工程)で得られる容器入りの乳含有飲料の溶存酸素濃度を小さくする観点から、好ましくは8ppm以下、より好ましくは7ppm以下、さらに好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、さらに好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下である。
本発明において、工程(A)の前に工程(B)を行うこともできる。この場合、工程(A)の処理対象物は、未加熱の乳含有液状物ではなく、加熱殺菌後の乳含有液状物である。また、本発明において、工程(A)と同時に工程(B)を行うこともできる。さらに、本発明において、工程(B)の中間で工程(A)を組み込むこともできる。この場合、工程(A)の処理対象物は、未加熱の乳含有液状物ではなく、加熱殺菌中の乳含有液状物である。
工程(A)(脱酸素処理工程)は、予め調合した乳含有液状物を一括して行うこともでき、乳含有液状物の原料となる液状物(例えば、脱脂乳とクリーム等)のそれぞれに対して脱酸素処理(工程(A))を行い、その後に混合することもできる。
【0017】
[工程(B):殺菌工程]
工程(B)は、工程(A)で得られた乳含有液状物を加熱して殺菌する工程である。
加熱殺菌の方法は、特に限定されないが、低温長時間殺菌法(LTLT法)、高温短時間殺菌法(HTST法)、超高温殺菌法(UHT法)、通電加熱殺菌法(ジュール加熱殺菌法)、高流高電解殺菌法等が挙げられる。例えば、110〜150℃で1〜5秒間、70〜75℃で15秒間、62〜65℃で30分間等の、乳の一般的な公知の加熱殺菌の条件で加熱殺菌を行うことができる。
工程(B)における乳含有液状物の溶存酸素濃度の増大は、ほとんど生じない。
本発明において、工程(B)は、工程(A)の前と後の両方で行うこともできる。すなわち、工程(B)の中間で工程(A)を組み込むこともできる。この場合、工程(A)の処理対象物は、未加熱の乳含有液状物ではなく、加熱殺菌中の乳含有液状物である。
【0018】
また、本発明において、工程(B)は、工程(A)の前のみで行うこともできる。この場合、工程(B)の処理対象物は、溶存酸素濃度が低下した乳含有液状物ではなく、工程(A)を経ていない通常の大きさの溶存酸素濃度を有する乳含有液状物である。
さらに、本発明において、工程(B)と同時に、工程(A)を行うこともできる。例えば、工程(B)の途中で常に脱酸素処理をし続ける工程を例示することができる。
なお、工程(B)は、必要に応じて本発明の製造方法に含めることのできる任意の工程であり、必須の工程ではない。例えば、予め、ろ過滅菌、紫外線照射等の加熱しない殺菌、及び/又は滅菌工程を経て得られる乳含有液状物を対象とする場合、改めて工程(B)で加熱殺菌をする必要はない。
【0019】
[工程(C):貯液工程]
工程(C)は、工程(B)で得られた乳含有液状物をサージタンクに貯液する工程である。なお、工程(C)は、必要に応じて本発明の製造方法に含めることのできる任意の工程であり、必須の工程ではない。
サージタンクは、工程(D)(容器収容工程)において乳含有液状物を容器に収容する前に、乳含有液状物を一時的に貯液するためのタンクである。
サージタンクは、乳含有液状物を流入させるための流入口と、乳含有液状物を排出させるための排出口とを有するタンク本体、タンク本体の中に貯液される乳含有液状物の液温を調節するためのジャケット、及び、タンク本体の中に貯液される乳含有液状物を撹拌するための撹拌装置(攪拌羽根等)を備えている。なお、撹拌装置(攪拌羽根等)は、乳含有液状物の成分組成、及び/又は液温を均一にするためのものである。
【0020】
サージタンクは、(i)貯液の開始時に、タンク本体に一定の量の乳含有液状物が収容されるまで、乳含有液状物の流入のみを行い、次いで、タンク本体に収容された乳含有液状物の排出のみを行い、タンク本体の中の乳含有液状物の残存量が一定以下またはゼロになったら、上記と同様に乳含有液状物の流入のみを行い、以下、上記と同様の排出及び流入の操作を繰り返す方法(バッチ式の方法)、(ii)貯液の開始時に、タンク本体に一定の量の乳含有液状物が収容されるまで、乳含有液状物の流入のみを行い、次いで、タンク本体の中の乳含有液状物の量を一定に保ちつつ、タンク本体への乳含有液状物の流入及び排出を同時に行う方法(連続式の方法)、等が挙げられる。
【0021】
サージタンクの撹拌羽根の運転は、貯液中の乳含有液状物の溶存酸素濃度の増大の幅が、貯液の前と後との差として、例えば8ppm以下、好ましくは7ppm以下、より好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、さらに好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは0.5ppm以下になるように、調整される。
また、前記の工程(A)及び工程(B)で得られた乳含有液状物をサージタンク内にてさらに脱酸素をすることもできる。この場合、サージタンクの撹拌羽根の運転は、貯液中の乳含有液状物の溶存酸素濃度の増大の幅が、貯液の前と後との差として、例えば0ppm以上、好ましくは−1ppm以上(換言すると、溶存酸素濃度の減少の幅として、1ppm以上)、より好ましくは−2ppm以上、さらに好ましくは−3ppm以上、さらに好ましくは−4ppm以上、さらに好ましくは−5ppm以上、さらに好ましくは−6ppm以上、さらに好ましくは−7ppm以上、さらに好ましくは−8ppm以上になるように、調整される。
ここで、貯液の前と後との差とは、サージタンクから排出された直後の乳含有液状物の溶存酸素濃度の値から、サージタンクに流入する直前の乳含有液状物の溶存酸素濃度の値を差し引いた値をいう。
【0022】
工程(C)における溶存酸素濃度の増大もしくは減少の幅を上記の好ましい範囲内に収めた場合、工程(D)(容器収容工程)で得られる容器入りの乳含有飲料の溶存酸素濃度を所望の値以下に低下させることが容易となる。
溶存酸素濃度の増大もしくは減少の幅をこのように小さくするための撹拌羽根の運転方法としては、例えば、上記(i)、(ii)のいずれにおいても、貯液の開始時に、タンク本体に一定の量の乳含有液状物が収容されるまでの間、撹拌羽根の運転を行わず、その後、乳含有液状物の液面が渦巻いたりあるいは大きく波打つことのないように、乳含有液状物の液面から隔てた地点で、撹拌羽根を緩やかに回転させる方法等が挙げられる。
なお、このような撹拌羽根の運転方法を採用することによって、サージタンク内の空間に窒素ガス等の不活性ガスを供給しなくても、サージタンク内の空間を満たす空気(酸素含有ガス)の存在下で、乳含有液状物の溶存酸素濃度の増大もしくは減少の幅を上記の好ましい範囲内に収めることができる。
サージタンク内の空間及び/又はサージタンク内の乳含有液状物の内部に不活性ガスを投入する方法、サージタンク内の乳含有液状物をサージタンク内で脱気する方法等、サージタンク、若しくはその前後に脱酸素を目的とする装置及び/又は工程を入れることで、乳含有液状物の溶存酸素濃度の増大もしくは減少の幅を上記の好ましい範囲内に確実に収めることができることは言うまでもない。
【0023】
[工程(D):容器収容工程]
工程(D)は、工程(C)における貯液後の乳含有液状物を、紙基材層及びナイロン樹脂層を含む積層シートによって形成された容器に収容し、容器入りの乳含有液状物(乳含有飲料)を得る工程である。
積層シートは、例えば、容器の外側から内側に向かって、ポリエチレン層、紙基材層、ナイロン樹脂層、接着剤層、ポリエチレン層の順に積層してなるものである。このうち、ナイロン樹脂層は、酸素ガスの通過を阻止する性能が高く、容器入りの乳含有飲料の、酸素ガスによる風味の劣化等を効果的に抑制することができる。
ナイロン樹脂層を形成するための樹脂としては、ナイロンMXD6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6等の各種のナイロン(ポリアミド樹脂)が挙げられる。
本発明において、ナイロン樹脂層は、上記の各種のナイロンの中の1種類(例えば、ナイロンMXD6)からなる単層として形成してもよいし、あるいは、上記の各種のナイロンの中の1種類(例えば、ナイロンMXD6)からなる層と、他の種類(例えば、ナイロン6)からなる層との積層体として形成してもよい。また、3層以上の積層体(例えば、ナイロン6の層と、ナイロンMXD6の層と、ナイロン6の層との積層体)として形成してもよい。
なお、工程(D)で使用する容器は、当該紙基材層及びナイロン樹脂層を含む積層シートによって形成された容器に限定されることなく、当該紙基材のみで形成された容器よりも酸素バリア性のあるものであれば、容器の材質に制限されないことは言うまでもない。
【0024】
各種のナイロンの中でも、ナイロンMXD6は、乳含有液状物の溶存酸素濃度の低下との組み合わせによる相乗効果によって、乳含有液状物(乳含有飲料)の風味の劣化や汚染菌の増殖を長期間に亘って特に著しく抑制しうる点で、本発明において好ましく用いられる。
ナイロンMXD6は、メタキシリレンジアミン(MXDA)とアジピン酸の重縮合反応によって得られるポリアミド樹脂であり、次の化学式を有する。
H[−NHCH2−C64−CH2−NHCO−(CH24−CO−]nOH
なお、この式中の「−C64−」(ベンゼン環)の2つの結合部位は、メタ位に位置している。また、式中のnは、整数である。
積層シート中のナイロン樹脂層は、例えば、ナイロンMXD6からなる層を含むことが好ましい。この場合、ナイロンMXD6からなる層の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上である。該厚さの上限は、特に限定されないが、コスト等の観点から、好ましくは50μmである。
【0025】
工程(D)において乳含有液状物を収容するための容器の例としては、ゲーブルトップ型の紙容器等が挙げられる。
中でも、ゲーブルトップ型の紙容器は、1リットル程度の乳含有液状物(乳含有飲料)を収容するのに一般的であり、しかも、乳含有液状物の液量に対する気体の空間の割合が小さく、乳含有液状物の風味の劣化や汚染菌の増殖を抑制する効果が高まる点で、本発明において好ましく用いられる。ただし、ゲーブルトップ型の紙容器以外の容器であっても、ゲーブルトップ型の紙容器と同等程度以下の空間の割合を有するものは、本発明と同等の効果が得られるので、本発明で用いることができる。
容器に収容する前の乳含有液状物の溶存酸素濃度は、好ましくは8ppm以下、より好ましくは7ppm以下、さらに好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、さらに好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下、さらに好ましくは1.5ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下である。
容器に収容した後の乳含有液状物(乳含有飲料)の溶存酸素濃度は、収容した時点から6日後の値として、好ましくは8ppm以下、より好ましくは7ppm以下、さらに好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは5.5ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは4.5ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、さらに好ましくは3.5ppm以下、さらに好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下である。なお、これらの値は、10℃以下(例えば、5℃)の冷蔵保存時の値である。
【0026】
本発明の容器入りの乳含有飲料の製造システムの一例は、(a)乳含有液状物に含まれている溶存酸素の少なくとも一部を除去して、溶存酸素濃度が低下した乳含有液状物を得るための脱酸素処理手段(例えば、不活性ガスを乳含有液状物中に吹き込む手段や、乳含有液状物を減圧条件下に置くための手段)と、(b)脱酸素処理手段(a)で処理した後の乳含有液状物を加熱して殺菌するための殺菌手段(加熱手段)と、(c)殺菌手段(b)で処理した後の乳含有液状物を貯液するための貯液手段(サージタンク)と、(d)貯液手段(c)で貯液した後の乳含有液状物を、紙基材層及びナイロン樹脂層を含む積層シートによって形成された容器に収容(充填)し、容器入りの乳含有飲料を得るための容器収容手段(例えば、充填機)を含む。なお、これらの手段の全てもしくは一部に脱酸素手段を追加するなどの、各種手段の追加は、任意である。
【実施例】
【0027】
参考例1
牛の未加熱の生乳(溶存酸素濃度:12ppm)をタンクに収容した後、10℃以下(液温:5℃)で生乳中に窒素ガスを吹き込んで、生乳の溶存酸素濃度を1.5ppmに低下させた。
次に、この生乳を130℃で2秒間加熱殺菌した。
得られた殺菌済みの牛乳を、サージタンクに導き、上述の(ii)の方法で連続的にサージタンクへの牛乳の流入及び排出を行った。この際、サージタンクへの牛乳の流入の開始時に、タンク本体の中に牛乳が一定の量だけ収容されるまでの間、サージタンクの撹拌羽根を回転させなかった。また、サージタンクへの牛乳の流入及び排出を同時に行っている間、タンク内の牛乳の液面が渦巻いたり、大きく波立つことのないように、タンク本体の下部で、サージタンクの撹拌羽根を緩やかに回転させた。
【0028】
サージタンクから排出させた牛乳は、ゲーブルトップ型の紙容器(容量:1リットル)に充填した。この際、紙容器への充填前の牛乳の溶存酸素濃度は、1.5ppmであった。また、紙容器を形成する積層シートは、紙容器の外側から内側に向かって、ポリエチレン層、紙基材層、ナイロンMXD6からなるナイロン樹脂層(厚さ:10μm)、接着剤層、ポリエチレン層の順に積層してなるものであった。
得られた容器入りの牛乳を6日間、5℃の温度下で冷蔵保存した後、容器内の牛乳の溶存酸素濃度を測定したところ、3.3ppmであった。また、この冷蔵保存後の牛乳を官能評価したところ、新鮮なミルクの風味と、後味のスッキリ感が強く感じられた。
【0029】
[実施例
窒素ガスの吹き込みによる生乳の溶存酸素濃度の低下の到達値を1.5ppmから3.0ppmに変更した以外は参考例1と同様にして実験した。
その結果、紙容器への充填前の牛乳の溶存酸素濃度は、2.7ppmであった。また、6日間の冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度は、3.6ppmであった。また、この冷蔵保存後の牛乳を官能評価したところ、新鮮なミルクの風味と、後味のスッキリ感が強く感じられた。
[実施例
窒素ガスの吹き込みによる生乳の溶存酸素濃度の低下の到達値を1.5ppmから5.0ppmに変更した以外は参考例1と同様にして実験した。
その結果、紙容器への充填前の牛乳の溶存酸素濃度は、4.9ppmであった。また、6日間の冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度は、5.1ppmであった。また、この冷蔵保存後の牛乳を官能評価したところ、新鮮なミルクの風味と、後味のスッキリ感が強く感じられた。
【0030】
参考例2
窒素ガスの吹き込みによる生乳の溶存酸素濃度の低下の到達値を1.5ppmから3.0ppmに変更し、紙容器を形成する積層シートのナイロン樹脂層の材料をナイロンMXD6からナイロン6に変更し、冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度の測定時を6日間保存後の時点から7日間保存後の時点に変更した以外は参考例1と同様にして実験した。
その結果、紙容器への充填前の牛乳の溶存酸素濃度は、2.8ppmであった。また、7日間の冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度は、4.9ppmであった。また、この冷蔵保存後の牛乳を官能評価したところ、新鮮なミルクの風味と、後味のスッキリ感が強く感じられた。
参考例3
紙容器を形成する積層シートのナイロン樹脂層の材料をナイロンMXD6からナイロン6に変更し、冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度の測定時を6日間保存後の時点から7日間保存後及び14日間保存後の各時点に変更した以外は参考例1と同様にして実験した。
その結果、紙容器への充填前の牛乳の溶存酸素濃度は、1.5ppmであった。また、7日間及び14日間の冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度は、各々、6.5ppm、6.4ppmであった。また、14日間の冷蔵保存後の牛乳を官能評価したところ、後味のスッキリ感が強く感じられた。
【0031】
[比較例1]
ナイロンMXD6からなるナイロン樹脂層(厚さ:10μm)を、ポリエチレン層(厚さ:10μm)に変更した以外は参考例1と同様にして実験した。
その結果、6日間の冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度は、8.2ppmであった。また、この冷蔵保存後の牛乳を官能評価したところ、新鮮なミルクの風味と、後味のスッキリ感については、参考例1に比べて弱く感じられた他、卵のようなにおい(硫黄臭)が感じられた。
[比較例2]
ナイロンMXD6からなるナイロン樹脂層(厚さ:10μm)を、ポリエチレン層(厚さ:10μm)に変更した以外は実施例と同様にして実験した。
その結果、6日間の冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度は、8.2ppmであった。また、この冷蔵保存後の牛乳を官能評価したところ、新鮮なミルクの風味と、後味のスッキリ感については、実施例に比べて弱く感じられた他、卵のようなにおい(硫黄臭)が感じられた。
【0032】
[比較例3]
ナイロンMXD6からなるナイロン樹脂層(厚さ:10μm)を、ポリエチレン層(厚さ:10μm)に変更した以外は実施例と同様にして実験した。
その結果、6日間の冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度は、8.4ppmであった。また、この冷蔵保存後の牛乳を官能評価したところ、新鮮なミルクの風味と、後味のスッキリ感については、実施例に比べて弱く感じられた他、卵のようなにおい(硫黄臭)が感じられた。
[比較例4]
ナイロン6からなるナイロン樹脂層(厚さ:10μm)を、ポリエチレン層(厚さ:10μm)に変更した以外は参考例2と同様にして実験した。
その結果、7日間の冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度は、9.3ppmであった。また、この冷蔵保存後の牛乳を官能評価したところ、新鮮なミルクの風味と、後味のスッキリ感については、参考例2に比べて弱く感じられた他、卵のようなにおい(硫黄臭)が感じられた。
【0033】
[比較例5]
ナイロン6からなるナイロン樹脂層(厚さ:10μm)を、ポリエチレン層(厚さ:10μm)に変更した以外は参考例3と同様にして実験した。
その結果、7日間及び14日間の冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度は、各々、9.8ppm、10.0ppmであった。また、この冷蔵保存後の牛乳を官能評価したところ、後味のスッキリ感が、参考例3に比べて弱く感じられた。
【0034】
[シュードモナス菌の接種試験]
特許第3091752号公報に記載されている方法と同様にして、牛の未加熱の生乳(溶存酸素濃度:12ppm)の溶存酸素を窒素ガスと置換して、生乳の溶存酸素濃度を低下させた後、連続的に、この生乳を130℃で2秒間加熱殺菌した。得られた殺菌済みの牛乳を、サージタンクに導き、上述の(ii)の方法で連続的にサージタンクへの牛乳の流入及び排出を行った。この際、サージタンクへの牛乳の流入の開始時に、タンク本体の中に牛乳が一定の量だけ収容されるまでの間、サージタンクの撹拌羽根を回転させなかった。また、サージタンクへの牛乳の流入及び排出を同時に行っている間、タンク内の牛乳の液面が渦巻いたり、大きく波立つことのないように、タンク本体の下部で、サージタンクの撹拌羽根を緩やかに回転させた。
【0035】
サージタンクから排出させた牛乳は、ゲーブルトップ型の紙容器(容量:1リットル)に充填した。この際、紙容器への充填前の牛乳の溶存酸素濃度は、2.0ppmであった。また、紙容器を形成する積層シートとしては、紙容器の外側から内側に向かって、ポリエチレン層、紙基材層、ナイロンMXD6からなるナイロン樹脂層(厚さ:10μm)、接着剤層、ポリエチレン層の順に積層してなるもの(発明品)、および、ナイロン樹脂層(厚さ:10μm)をポリエチレン層(厚さ:10μm)に変更した以外はこの発明品と同様に構成してなるもの(比較品)の2種類を用いた。得られた容器入りの牛乳(発明品及び比較品)を各々、1日間、10℃以下で輸送した後、それぞれを開封することなく、無菌的に、シュードモナス菌の入った菌液をシリンジで注入し、注入口を無菌的に目張りすることで、牛乳にシュードモナス菌をそれぞれ1.0×10cfu/mlとなるように接種し、6日間、10℃の温度下で冷蔵保存した。なお、シュードモナス菌を接種する直前の溶存酸素濃度は、比較品で7.0ppm、発明品で6.6ppmであった。この溶存酸素濃度の上昇は、ヘッドスペース中の酸素が輸送によって牛乳中に溶解したことによるものと考えられた。
【0036】
10℃で6日間保存した後のシュードモナス菌の生菌数を調べたところ、比較品では、2.6×10cfu/mlであったのに対し、発明品(ナイロンMXD6)では、3.9×10cfu/mlであり、汚染菌の増殖が抑えられていることが確認できた。
さらに、ナイロンMXD6をナイロン6に変更した以外は上述の発明品(ナイロンMXD6)の場合と同様にして実験した結果、この参考品(ナイロン6)では、10℃で6日間保存した後の生菌数は5.8×10cfu/mlであり、上述の比較品に比べて、汚染菌の増殖が抑えられていることが確認できた。
【0037】
以上の結果から、比較例1〜3では、窒素ガスの吹き込み後の生乳の溶存酸素濃度が1.5ppm、3.0ppm、5.0ppmのいずれであっても、6日間の冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度が同程度(8.2〜8.4ppm)で高いのに対し、参考例1及び実施例1〜では、6日間の冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度が、3.3〜5.1ppmと低いことがわかる。
特に、窒素ガスの吹き込み後の生乳の溶存酸素濃度が、1.5〜3.0ppmである参考例1及び実施例では、6日間の冷蔵保存後の牛乳の溶存酸素濃度が、3.3〜3.6ppmであり、4ppmを下回る非常に優れた結果を得ていることがわかる。
また、参考例2及び比較例4、及び、参考例3及び比較例5の結果から、ナイロンの種類を変更しても、本発明の効果が得られることがわかる。
さらに、風味の点では、参考例1、実施例1〜2及び参考例2〜3は比較例1〜5に比べて良好な結果を得ていること、及び、汚染菌の増殖試験では、本発明品は比較品に比べて良好な結果を得ていることがわかる。