(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明を実施するための形態(本実施形態)を説明する。なお、以下の説明では、正極活物質の一例として「リン酸鉄リチウム」を用いているが、本実施形態において使用可能な正極活物質はリン酸鉄リチウムに限定されるものではなく、例えばリン酸マンガンリチウムやコバルト酸リチウム等の任意の正極活物質以外にチタン酸リチウム等の負極活物質にも適用可能である。
【0012】
図1は、本実施形態のリチウム二次電池の特性評価装置5を示すブロック図である。特性評価装置5は、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムを用いたリチウム二次電池の特性を評価する装置である。具体的には、特性評価装置5は、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムについての物性を評価することで、それを用いたリチウム二次電池の充放電特性がどのようになるのかを評価するものである。
【0013】
特性評価装置5は、炭素材料除去部1(炭素材料除去装置)と、BET比表面積測定部2(BET比表面積測定装置)と、特性決定部3(特性決定装置)と、BET比表面積データベース4とを備えている。また、特性評価装置5には、評価結果が表示される表示部(図示しない、例えばディスプレイ)が備えられている。リチウム二次電池において、正極活物質としてリン酸鉄リチウムを用いる場合には、リン酸鉄リチウムの導電性の低さを補う観点から、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムが用いられることが通常である。そのため、特性評価装置5においてリチウム二次電池の特性を評価する際には、まず、炭素材料除去部1によって、リン酸鉄リチウムに被覆された炭素が除去される。
【0014】
炭素材料除去部1は、例えば、酸素を含む雰囲気(例えば大気)で焼成可能な焼成装置等である。焼成は、例えば400℃〜700℃程度で3時間〜24時間程度、行うことができる。また、炭素材料除去部1は、例えばミル等の、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムに機械的衝撃を与えることで、表面の炭素材料を剥がれ落とすような装置であってもよい。
【0015】
BET比表面積測定部2は、炭素材料除去部1によって炭素材料が除去されたリン酸鉄リチウムのBET比表面積を測定するものである。詳細は後記するが、本実施形態では、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムのBET比表面積ではなく、被覆された炭素材料を除去した後のBET比表面積に基づいて、リチウム二次電池の充放電特性が評価されている。このようにすることで、そのリン酸鉄リチウムを用いたリチウム二次電池の充放電特性を従来よりも十分正確に予測することができる。
【0016】
BET比表面積測定部2は、例えば、任意のBET比表面積測定装置を適用することができる。即ち、例えばJIS Z 8830:2013(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)等に基づいたBET比表面積を測定可能な装置が使用可能である。
【0017】
特性決定部3は、BET比表面積測定部2によって測定されたBET比表面積に基づいて、炭素材料を除去する前のリン酸鉄リチウム(即ち、炭素被覆されたリン酸鉄リチウム)を用いたリチウム二次電池の充放電特性を決定(予測)するものである。特性決定部3が充放電特性を評価する際、特性決定部3は、BET比表面積データベース4を参照するようになっている。
【0018】
BET比表面積データベース4には、炭素被覆されていないリン酸鉄リチウムのBET比表面積と、そのリン鉄リチウムを用いたリチウム二次電池の充放電特性(例えば放電容量等)との対応関係が記録されている。この対応関係は、例えば、数式や表、グラフ等であり、予備試験等により決定することができる。よって、特性決定部3は、BET比表面積測定部2により測定されたリン酸鉄リチウムのBET比表面積に対応する、リチウム二次電池の充放電特性をBET比表面積データベース4から読み出すことになる。なお、後記する実施例では、BET比表面積データベース4には、この対応関係として
図4(a)の破線で示す近似式が記録されている。
【0019】
そして、読みだされた充放電特性は例えば図示しない表示部等に表示され、使用者が充放電特性を評価することができるようになっている。
【0020】
なお、特性決定部3及びBET比表面積データベース4は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、HDD(Hard Disk Drive)とを備えて構成されている。そして、ROMやHDDに記録されたプログラム(後記する
図3に示すフローチャートを実行するプログラム)がCPUによって実行されることで、特性決定部3が具現化されることになる。
【0021】
ここで、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムのBET比表面積ではなく、被覆されている炭素材料を除去した後のリン酸鉄リチウムのBET比表面積に基づいてリチウム二次電池の充放電特性を評価する理由を、
図2を参照しながら説明する。
【0022】
図2は、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムの形状とそれを構成するリン酸鉄リチウムのみの形状とを模式的に示す図であり、(a)はその全体のBET比表面積が中程度の形状の例、(b)はその全体のBET比表面積が小程度の形状の例、(c)はその全体のBET比表面積が大程度の形状の例である。まず、リン酸鉄リチウムにおいて、非水電解液に含まれるリチウムイオンと接触可能な面積が大きいほど、リチウム二次電池の充放電特性(例えば放電容量)が良好になる。従って、リン酸鉄リチウムのBET比表面積が大きいほど、良好な充放電特性が示されることになる。
【0023】
しかし、
図2に示すように、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムのBET比表面積と、それを構成するリン酸鉄リチウムのBET比表面積との間には、相関関係が無いことがある。例えば
図2(a)に示す炭素被覆されたリン酸鉄リチウム100AのBET比表面積と、炭素材料11Aを除去後のリン酸鉄リチウム10AのBET比表面積とは、同じような傾向を示している(いずれも中程度)。
【0024】
しかし、
図2(b)に示す炭素被覆されたリン酸鉄リチウム100BのBET比表面積と、それを構成するリン酸鉄リチウム10BのBET比表面積とは、相反する関係にある。この場合、リン酸鉄リチウム10BのBET比表面積が大きいため、本来ならば良好な充放電特性が示される。しかし、充放電特性に寄与しない炭素材料11BのBET比表面積が小さい。そのため、炭素被覆されたリン酸鉄リチウム100BのBET比表面積を単に測定すると、炭素材料11BのBET比表面積が測定されることになるため、測定値は小さくなる。その結果、炭素被覆されたリン酸鉄リチウム100BのBET比表面積に基づいて評価していた従来の評価方法によれば、良好ではない充放電特性が奏される、との評価がされることになる。
【0025】
また、例えば
図2(c)では、炭素材料11CのBET比表面積が大きい。そのため、リン酸鉄リチウム100CのBET比表面積を単に測定すると、炭素材料11CのBET比表面積が測定されることになるため、測定値は大きくなる。その結果、従来の評価方法によれば、良好な充放電特性になる、と評価の評価がされることになる。しかし、炭素材料を除去した後のリン酸鉄リチウム10CのBET比表面積は小さいため、実際には、充放電特性は良好ではないものとなる。
【0026】
また、
図2では、説明の簡略化のために、炭素材料(炭素材料11A等、以下同じ)は、リン酸鉄リチウム(リン酸鉄リチウム10A等、以下同じ)の表面の全てを覆うようにしている。しかし、現実には、リン酸鉄リチウムの表面には、炭素材料で覆われていない部分も存在し得る。そのため、単に、炭素被覆されたリン酸鉄リチウム(炭素被覆されたリン酸鉄リチウム100A等、以下同じ)のBET比表面積を測定すると、炭素材料のBET比表面積とリン酸鉄リチウムのBET比表面積との双方に基づく値になることがある。
【0027】
リン酸鉄リチウムが完全に炭素被覆されているか、又は、完全では無ければどの程度の表面が炭素被覆されているのかは、リン酸鉄リチウムによって異なる。そのため、単に、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムについてBET比表面積を測定しても、リン酸鉄リチウムのBET比表面積を正確に測定できないことがある。
【0028】
そこで、本実施形態では、炭素被覆されたリン酸鉄リチウム(100A,100B,100C)のBET比表面積ではなく、炭素材料(11A,11B,11C)を除去した後のリン酸鉄リチウム(10A,10B,10C)に基づいて、リチウム二次電池の充放電特性を評価している。特に、炭素被覆される前のリン酸鉄リチウムのBET比表面積ではなく、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムから炭素材料を除去した後のリン酸鉄リチウムについてのBET比表面積を測定することで、より正確な充放電特性の評価が可能になる。即ち、炭素被覆するために通常は焼成が行われるが、この焼成によって、リン酸鉄リチウムが結晶成長して、BET比表面積が変化することがある。しかし、本実施形態では、当該焼成後のリン酸鉄リチウムのBET比表面積を測定するため、正確な評価が可能になる。
【0029】
図3は、本実施形態のリチウム二次電池の特性評価装置5(
図1参照)により行われる特性評価方法を示すフローチャートである。
図3を参照しながら、
図1に示した特性評価装置5の作用を説明する。なお、
図3に示すフローチャートでは、説明の簡略化のために、炭素材料の除去は、酸素を含む雰囲気下での焼成により行っているが、炭素材料を除去する方法はこれに限定されるものではない。
【0030】
特性評価装置5にセットされた試料(炭素被覆されたリン酸鉄リチウム)は、炭素材料除去部1によって大気中(酸素を含む雰囲気下)で焼成され、表面の炭素材料が除去される(ステップS101、炭素材料除去ステップ)。炭素材料は、大気中の酸素と反応して二酸化炭素に変化し、特性評価装置5の外部に排出される。このときの焼成条件は、炭素材料を酸化させて除去できれば特に制限されないが、例えば、前記のように400℃〜700℃程度で3時間〜24時間程度とすることができる。
【0031】
炭素材料が除去されて剥き出しになったリン酸鉄リチウムは、十分に放熱された後、BET比表面積測定部2により、そのBET比表面積が測定される(ステップS102、BET比表面積測定ステップ)。BET比表面積は、例えば前記の測定方法に基づいた測定装置を用いて測定することができる。そして、特性決定部3は、測定されたBET比表面積に対応する放電容量(充放電特性)をBET比表面積データベース4から読み出す(ステップS103、特性決定ステップ)。これにより、特性評価装置5にセットされた試料(炭素被覆されたリン酸鉄リチウム)を用いたリチウム二次電池の放電容量(充放電特性)が決定されたことになる。
【0032】
そして、最後に、特性決定部5は、詠み出された放電容量を表示部に表示する(ステップS104)。これにより、使用者は、その試料を用いてリチウム二次時電池を用いた場合の当該リチウム二次電池の放電容量を予測することができる。
【実施例】
【0033】
次に、炭素被覆された状態のリン酸鉄リチウムを実際に用いてリチウム二次電池を作製し、BET比表面積と放電容量との関係を検討した。
【0034】
<リチウム二次電池の作製>
〔製造例1〕
炭酸リチウム(Li
2CO
3)と、シュウ酸鉄二水和物(FeC
2O
4・2H
2O)と、リン酸二水素アンモニウム(NH
4H
2PO
4)とを混合した。次いで、その混合物について405℃で一次焼成を行い、炭素被覆されていないリン酸鉄リチウムを得た。焼成時間は4時間とした。
【0035】
得られたリン酸鉄リチウム300gに対し、水溶性炭素を加えずに、水中でビーズミルを用いて2時間粉砕処理を行った。次いで、120℃で一晩真空乾燥を行うことで乾燥物を得た。そして、得られた乾燥物に対して石炭ピッチ(JFEケミカル社製MCP110C)を3.5質量%となるように添加した混合物について、720℃で4時間加熱することで二次焼成を行った。二次焼成後、冷却し、解砕及び分級(ふるいにより直径45μm以上のものを除外)することにより、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムが得られた。炭素被覆されたリン酸鉄リチウムについて、BELSORP−mini(日本ベル社製)を用いてBET比表面積を測定したところ、6.01m
2/gであった。
【0036】
得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムについて、500℃で6時間、大気中で焼成を行うことで、表面の炭素材料を除去した。そして、炭素材料を除去して剥き出しになったリン酸鉄リチウムのBET比表面積を測定したところ、0.05m
2/gであった。
【0037】
また、解砕及び分級後の前記焼成物(炭素被覆されたリン酸鉄リチウム)と、アセチレンブラック(デンカブラック(登録商標)、電気化学工業社製、75%プレス品)と、ポリフッ化ビニリデン(クレハバッテリーマテリアルズジャパン社製、#9100)と、ポリフッ化ビニリデン(クレハバッテリーマテリアルズジャパン社製、#7200)とを、91:4:2.5:2.5(質量比)の割合で混合した。次いで、得られた混合物をN−メチルピロリドン中で撹拌及び混合することで、正極合剤スラリー(正極材料)を得た。
【0038】
そして、得られた正極合剤スラリーをアルミニウム板に塗布した後に乾燥させて、正極を作製した。作製した正極と、負極として金属リチウムと、非水電解液とを用いてリチウム二次電池を作製した。この非水電解液は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:7の割合(体積比)で混合した溶媒に、1MになるようにLiPF
6を混合して得た溶液である。作製したリチウム二次電池について、0.1Cで定電流充電を4.3Vまで行った後、2.0Vまで1Cで定電流放電を行い、放電容量を測定した。その結果、放電容量は、37mAh/gであった。
【0039】
〔製造例2〕
製造例1と同様にして一次焼成を行い、炭素被覆されていないリン酸鉄リチウムを得た。得られたリン酸鉄リチウムの200gとポリビニルアルコール粉末の6.6g(クラレ社製、PVA−205)とを混合して、720℃まで昇温し、720℃で6時間保持した(二次焼成)。そして、二次焼成後の焼成物について、製造例1と同様にすることで、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムが得られた。得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムについて、製造例1と同様にしてBET比表面積を測定したところ、9.54m
2/gであった。
【0040】
そして、得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムについて、製造例1と同様にして表面の炭素材料を除去した。そして、炭素材料を除去して剥き出しになったリン酸鉄リチウムのBET比表面積を測定したところ、1.64m
2/gであった。
【0041】
また、得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムを用いて製造例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、製造例1と同様にして放電容量を測定したところ、放電容量は113mAh/gであった。
【0042】
〔製造例3〕
二次焼成の際、「ポリビニルアルコール粉末の6.6g(クラレ社製、PVA−205)」に代えて「ポリビニルアルコール10質量%溶液の66g(株式会社クラレ社製、RS−2117)」を用いたこと以外は製造例2と同様にして、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムを作製した。得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムについて、製造例1と同様にしてBET比表面積を測定したところ、12.9m
2/gであった。
【0043】
そして、得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムについて、製造例1と同様にして表面の炭素材料を除去した。そして、炭素材料を除去して剥き出しになったリン酸鉄リチウムのBET比表面積を測定したところ、2.03m
2/gであった。
【0044】
また、得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムを用いて製造例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、製造例1と同様にして放電容量を測定したところ、放電容量は125mAh/gであった。
【0045】
〔製造例4〕
二次焼成の際、「ポリビニルアルコール粉末の6.6g(クラレ社製、PVA−205)」に代えて「ポリビニルアルコール10質量%溶液の34g(クラレ社製、PVA−205)とクエン酸(キシダ化学社製)50%質量%溶液の26.8gとの混合物」を用いたこと以外は製造例2と同様にして、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムを作製した。得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムについて、製造例2と同様にしてBET比表面積を測定したところ、8.76m
2/gであった。
【0046】
そして、得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムについて、製造例1と同様にして表面の炭素材料を除去した。そして、炭素材料を除去して剥き出しになったリン酸鉄リチウムのBET比表面積を測定したところ、4.34m
2/gであった。
【0047】
また、得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムを用いて製造例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、製造例1と同様にして放電容量を測定したところ、放電容量は137mAh/gであった。
【0048】
〔製造例5〕
水酸化リチウム(LiOH・H
2O)と、シュウ酸鉄二水和物(FeC
2O
4・2H
2O)と、リン酸二水素アンモニウム(NH
4H
2PO
4)とをイソプロピルアルコール中で、平均粒径D
50が2.5μm以下を目安に微粉砕混合後、405℃で一次焼成を行うことで、炭素被覆されていないリン酸鉄リチウムを作製した。焼成時間は4時間とした。
【0049】
一次焼成後、リン酸鉄リチウム80kgに対して、炭素原料としてクレオソート油(JFEケミカル社製、HOB)を3.2kg混合した。そして、混合物を680℃まで昇温し、680℃で3時間加熱することで二次焼成を行った。
【0050】
二次焼成後、製造例1と同様にして、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムを得た。得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムについて、製造例1と同様にしてBET比表面積を測定したところ、15.44m
2/gであった。
【0051】
そして、得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムについて、製造例1と同様にして表面の炭素材料を除去した。そして、炭素材料を除去して剥き出しになったリン酸鉄リチウムのBET比表面積を測定したところ、10.82m
2/gであった。
【0052】
また、得られた炭素被覆されたリン酸鉄リチウムを用いて製造例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、製造例1と同様にして放電容量を測定したところ、放電容量は149mAh/gであった。
【0053】
<特性評価方法の検討>
図4(a)は、炭素除去後のリン酸鉄リチウムについてのBET比表面積と放電容量との関係をプロットしたグラフであり、
図4(b)は、炭素除去前のリン酸鉄リチウムについてのBET比表面積と放電容量との関係をプロットしたグラフである。
図4(a)及び
図4(b)の双方において、製造例1〜5のそれぞれで用いたリン酸鉄リチウムのBET比表面積をプロットしている。
【0054】
図4(a)に示すように、炭素材料を除去した後のリン酸鉄リチウムのBET比表面積と、その炭素被覆されたリン酸鉄リチウムを用いたリチウム二次電池の放電容量との間には、グラフ中破線で示すような相関がみられた。具体的には、BET比表面積がある程度小さいときには放電容量は急激に増加し、BET比表面積がある程度大きくなると放電容量の増加が緩やかになった。
【0055】
また、炭素材料によるリン酸鉄リチウムを被覆する方法は製造例1〜5で様々であるが、どのような方法で被覆しても、破線で示す曲線近傍に各製造例がプロットされた。従って、炭素除去後のリン酸鉄リチウムのBET比表面積に基づいて放電容量を評価すれば、精度よく放電容量を予測できることがわかった。なお、
図4(a)に示す破線(近似式)等が、BET比表面積データベース4に記録されることになる。
【0056】
一方で、
図4(b)に示すように、炭素材料を除去する前のリン酸鉄リチウムについてBET比表面積と放電容量との関係をプロットしても、相関はみられなかった。従って、リチウム二次電池の放電容量を向上させるため、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムのBET比表面積を増加させることも考えられるが、この方法では、放電容量は必ずしも増加しないことになる。
【0057】
即ち、
図2を参照しながら説明したように、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムのBET比表面積が大きくても、充放電に寄与するリン酸鉄リチウム(炭素除去された後のリン酸鉄リチウム)のBET比表面積は大きくないことがある。そこで、本実施形態のように、炭素被覆されたリン酸鉄リチウムから炭素材料を除去し、炭素除去された後のリン酸鉄リチウムのBET比表面積に基づいて充放電特性を評価することで、従来よりも精度よく確実に予測できる。