特許第6334568号(P6334568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6334568分離膜の製造方法とその分離膜及びこれを用いた電池
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  • 特許6334568-分離膜の製造方法とその分離膜及びこれを用いた電池 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6334568
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】分離膜の製造方法とその分離膜及びこれを用いた電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   H01M2/16 P
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-555912(P2015-555912)
(86)(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公表番号】特表2016-507877(P2016-507877A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】KR2014000878
(87)【国際公開番号】WO2014119941
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2017年1月18日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0010817
(32)【優先日】2013年1月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】リ, サン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ケー ウック
(72)【発明者】
【氏名】リ, チョン ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, チョン スー
(72)【発明者】
【氏名】チュン, ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョー, ジェ ヒョン
【審査官】 式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−538097(JP,A)
【文献】 特表2007−513474(JP,A)
【文献】 特表2010−540692(JP,A)
【文献】 特開2012−109249(JP,A)
【文献】 特開2005−343958(JP,A)
【文献】 特開2009−132904(JP,A)
【文献】 特表2012−522669(JP,A)
【文献】 特開2008−270178(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0021719(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14− 2/18
H01M 4/00− 4/62
H01M 10/05− 10/0587
C08J 9/00− 9/42
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
B32B 1/00− 43/00
B01D 53/22
B01D 61/00− 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TMAによる分離膜の縦方向溶融収縮率(a)に対する横方向溶融収縮率(b)の比(b/a)が1.2以下であり、
前記縦方向溶融収縮率が25%以上28%以下であり、
前記横方向溶融収縮率が18%以上33%以下であり、
縦方向引張強度(x)が2004kgf/cm2以上2440kgf/cm2以下であり、
横方向引張強度(y)が1570kgf/cm2以上2200kgf/cm2以下である、ポリオレフィン系分離膜。
【請求項2】
前記縦方向引張強度(x)に対する前記横方向引張強度(y)の比(y/x)が0.7〜1である、請求項に記載のポリオレフィン系分離膜。
【請求項3】
前記分離膜の通気度が350sec/100cc以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン系分離膜。
【請求項4】
前記分離膜の突き強度が700gf以上である、請求項1からのいずれか1項に記載のポリオレフィン系分離膜。
【請求項5】
前記分離膜の105℃で1時間放置した後の熱収縮率が縦方向及び横方向にそれぞれ4%未満である、請求項1からのいずれか1項に記載のポリオレフィン系分離膜。
【請求項6】
分離膜を縦延伸及び横延伸し、
前記横延伸された分離膜から応力を除去するために横収縮させることを含み、
横延伸は、1次横延伸及び2次横延伸を含み
前記の1次横延伸された分離膜の横方向幅をLとしたとき、
前記2次横延伸は、前記分離膜の横方向幅が1.1L以上になるように横延伸し、
前記横収縮は、分離膜の横方向幅が0.9L以上1.3L未満になるように横収縮させることを含むポリオレフィン系分離膜の製造方法。
【請求項7】
縦延伸倍率(L1)に対する1次横延伸倍率(L2)の比は1.1〜1.8である、請求項に記載のポリオレフィン系分離膜の製造方法。
【請求項8】
前記縦延伸及び横延伸される分離膜は、
ポリオレフィン系樹脂及びダイリュエントを含む組成物を押出器に注入して押出し、
前記押出後に得られたゲル相をキャスティングしてシートに製造されたものである、請求項またはに記載のポリオレフィン系分離膜の製造方法。
【請求項9】
前記縦延伸及び横延伸は、分離膜を縦延伸及び1次横延伸し、延伸された分離膜からダイリュエントを抽出及び乾燥し、前記の乾燥された分離膜を2次横延伸することを含む、請求項に記載のポリオレフィン系分離膜の製造方法。
【請求項10】
前記2次横延伸は110℃〜140℃の温度で行われる、請求項からのいずれか1項に記載のポリオレフィン系分離膜の製造方法。
【請求項11】
正極、負極、分離膜及び電解質を含み、
前記分離膜は、請求項1からのいずれか1項のポリオレフィン系分離膜である電気化学電池。
【請求項12】
前記電気化学電池はリチウム二次電池である、請求項11に記載の電気化学電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学電池用分離膜を製造する方法及び前記方法で製造された分離膜に関する。また、本発明は、前記分離膜を用いた電気化学電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学電池用分離膜は、電池内で正極と負極を隔離させながらイオン伝導度を維持させ、電池の充電と放電を可能にする中間膜を意味する。
【0003】
最近、電子機器の携帯性を高めるための電気化学電池の軽量化及び小型化の趨勢と共に、電気自動車などへの使用のための高出力大容量電池を必要とする傾向がある。そこで、電池用分離膜の場合、その厚さを薄くし、重量を軽くすることが要求されると同時に、高容量電池の生産性向上のために熱及び高いテンションによる形態安定性などに優れることが要求される。また、最近は、分離膜の特性において、透過性や耐熱収縮性などのみならず、サイクル特性などのように電池の寿命に影響を及ぼす特性や、電解液注入性などの電池の生産性と関連した各特性も重要視されている。
【0004】
電池の生産性と関連した各特性のうち、電池生産において相当な時間が要される重要工程の一つが巻取工程であり、現在、生産速度の増大のために高速巻取が行われている。このような高速巻取時、分離膜が切れて工程不良をもたらすという問題を防止するために、引張強度が高い分離膜を製造しようとする研究が継続されてきた。
【0005】
このような分離膜の引張強度を増大させる方法に関する先行技術として、大韓民国登録特許第10―0943235号では、分離膜の基材フィルムを製造する際において、分子量を高く限定して調節した高密度ポリエチレン組成物を用いて分離膜を製造することによって物性が堅くなった分離膜を提供している。しかし、これは、基材フィルムの成分自体を特定の物質に限定させるという点に限界があり、多様な基材フィルムに適用できないという問題を有する。また、引張強度が増加する代わりに、分離膜の溶融収縮率も増加し、耐熱性が低下するという問題がある。
【0006】
したがって、上述した先行技術のように単純に基材フィルムの化学的組成を変化させて引張強度を向上させるのではなく、多様な種類の基材フィルムに対して適用され得るように物理的な方法によって分離膜の引張強度を高める方法の開発が必要であり、さらに、引張強度が高いと共に、溶融収縮率が低く、耐熱性にも優れた分離膜の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、分離膜の製造工程のうち分離膜延伸工程を調節することによって、分離膜の引張強度を向上させ、溶融収縮率を減少させる分離膜の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、分離膜の引張強度を高めると共に、溶融収縮率は低く維持し、巻取工程性はもちろん、熱安定性にも優れた分離膜を提供する。
【0009】
また、本発明は、引張強度が高く、溶融収縮率が低い分離膜を用いることで、安全性の高い電気化学電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、分離膜の製造工程において、分離膜の延伸工程を調節することによって、引張強度は高め、溶融収縮率は低下させた分離膜を提供する。
【0011】
具体的に、本発明の一例では、TMAによる分離膜の縦方向溶融収縮率(a)に対する横方向溶融収縮率(b)の比(b/a)が1.2以下であるポリオレフィン系分離膜を提供する。
【0012】
本発明のさらに他の一例では、分離膜を縦延伸及び横延伸し、前記の横延伸された分離膜から応力を除去して横収縮させることを含み、横延伸は、1次横延伸及び2次横延伸を含み、前記1次横延伸された分離膜の横方向幅をLとしたとき、前記2次横延伸は、前記分離膜の横方向幅が1.1L以上になるように横延伸し、前記横収縮は、分離膜の横方向幅が0.9L以上1.3L未満になるように横収縮させることを含むポリオレフィン系分離膜の製造方法を提供する。
【0013】
本発明のさらに他の一例では、正極、負極、分離膜及び電解質を含み、前記分離膜は、本発明の一様態にかかるポリオレフィン系分離膜である電気化学電池を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一例にかかる分離膜は、引張強度が高いと共に、溶融収縮率が低く、分離膜の生産時に巻取工程性に優れるという効果を示し、製造後、分離膜の利用時に熱安定性に優れるという効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかる分離膜の製造方法をしたがって概略的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明についてより詳細に説明する。本明細書に記載していない内容は、本発明の技術分野または類似分野で熟練した者であれば十分に認識して類推できるものであるので、それについての説明は省略する。
【0017】
図1を参照して本発明の一例にかかる分離膜の製造方法についてより具体的に説明する。図1は、本発明の一例にかかる分離膜の製造方法を工程順序にしたがって概略的に示した模式図である。
【0018】
図1を参照すると、本発明の一例にかかる分離膜を製造する方法は、まず、基材フィルム用組成物及びダイリュエントを押出器に注入して押出する押出工程と、前記押出後に得られたゲル相をキャスティングしてシートに製作する製膜工程と、前記製膜後、シート(分離膜)を縦方向(MD)に延伸するMD延伸工程と、前記縦方向延伸後、シートを横方向(TD)に1次延伸する1次TD延伸工程と、前記の1次横延伸されたシートからダイリュエントを抽出して乾燥する抽出及び乾燥工程と、前記の乾燥されたシートを横方向に2次延伸及び横収縮する熱固定工程と、を含んでもよい。また、熱固定を経たシートをワインディングするワインディング工程をさらに含んでもよい。本発明の一例にかかる分離膜の製造工程は、分離膜の延伸工程を調節することによって、引張強度は高め、溶融収縮率は低下させた分離膜を提供することができる。
【0019】
押出及び製膜工程
ポリオレフィン系樹脂及びダイリュエントを含む組成物を溶融・混練して押出し、冷却・固形化されたシートを形成する。ポリオレフィン系樹脂及びダイリュエントを含む組成物の溶融・混練は、当業者に知られている方法を用いて行ってもよい。
【0020】
具体的に、100℃〜250℃の温度でポリオレフィン系樹脂とダイリュエントを溶融・混練し、これを二軸押出器に注入して150℃〜250℃の温度で押出した後、20℃〜80℃のキャスティングロールを用いて冷却したり、エアナイフ(air knife)から噴射される冷たい空気で強制的に冷却することによって膜を結晶化させ、固形化されたシートを形成することができる。前記エアナイフから噴射される冷たい空気の温度は、−20℃〜80℃であってもよい。
【0021】
前記ポリオレフィン系樹脂は、超高分子量ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、高結晶性ポリプロピレン及びポリエチレン―プロピレン共重合体からなる群から選ばれた1種または2種以上を含んでもよい。前記高密度ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)は、1×10g/mol〜9×10g/molであり、例えば、3×10g/mol〜6×10g/molであってもよい。前記超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量は、9×10g/mol以上、具体的に9×10g/mol〜5×10g/molであってもよい。例えば、前記高密度ポリエチレンを単独で使用してもよく、前記超高分子量ポリエチレンを単独で使用してもよく、前記高密度ポリエチレンと前記超高分子量ポリエチレンを全て使用してもよい。より具体的には、前記高分子樹脂の重量を基準にして前記超高分子量ポリエチレンを30重量%以下で使用してもよく、例えば、粘度平均分子量が1×10g/mol〜9×10g/molである高密度ポリエチレンを70重量%以上で含み、粘度平均分子量が9×10g/mol以上の超高分子量ポリエチレンを30重量%以下で含む高分子樹脂を使用してもよい。前記高分子樹脂は、高強度分離膜を製造できるので有利である。また、前記高分子樹脂を2種以上含む場合、ヘンシェルミキサー、バンバリミキサー及びプラネタリーミキサーからなる群から選ばれた1種以上を用いて混合することが好ましい。前記ポリオレフィン系を除いた他の樹脂の非制限的な例としては、ポリアミド(Polyamide、PA)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylene terephthalate、PBT)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate、PET)、ポリクロロトリフルオロエチレン(Polychlorotrifluoroethylene、PCTFE)、ポリオキシメチレン(Polyoxymethylene、POM)、ポリビニルフルオライド(Polyvinyl fluoride、PVF)、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidene fluoride、PVdF)、ポリカーボネート(Polycarbonate、PC)、ポリアリレート(Polyarylate、PAR)、ポリスルホン(Polysulfone、PSF)、ポリエーテルイミド(Polyetherimide、PEI)などを挙げることができる。これらは、単独で使用されてもよく、2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0022】
また、本発明の一様態に使用されるポリオレフィン系樹脂及びダイリュエントを含む組成物は、無機物をさらに含んでもよい。前記無機物としては、アルミナ、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウムまたはタルクなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらは、単独で使用されてもよく、ほかの物質を含んでもよく、または、2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0023】
前記ダイリュエントは、その種類が特別に制限されなく、押出温度で前記ポリオレフィン系樹脂(またはポリオレフィン系樹脂と他の種類の樹脂との混合物)と単一相をなす任意の有機化合物であってもよい。前記ダイリュエントの非制限的な例としては、ノナン(nonan)、デカン(decane)、デカリン(decalin)、液体パラフィン(Liquid paraffin、LP)などの流動パラフィン(またはパラフィンオイル)、パラフィンワックスなどの脂肪族またはサイクリック炭化水素、ジブチルフタレート(dibutyl phthalate)、ジオクチルフタレート(dioctyl phthalate)などのフタル酸エステル、パルミチン酸(palmitic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、オレイン酸(oleic acid)、リノール酸(linoleic acid)、リノレン酸(linolenic acid)などの炭素数10個〜20個の脂肪酸類、パルミチン酸アルコール、ステアリン酸アルコール、オレイン酸アルコールなどの炭素数10個〜20個の脂肪酸アルコール類など、を挙げることができる。これらは、単独で使用されてもよく、ほかの物質を含んでもよく、または、2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0024】
前記ダイリュエントのうち流動パラフィンを使用してもよい。流動パラフィンは、人体に無害であり、沸点が高く、揮発性成分が少ないので、湿式法でダイリュエントとしての使用に適した特性を有する。前記ダイリュエントは、ポリオレフィン系樹脂及びダイリュエントを含む組成物の総重量に対して20重量%〜90重量%で含まれてもよく、具体的には30重量%〜90重量%で含まれてもよい。
【0025】
延伸工程(MD延伸及び1次TD延伸)
続いて、前記の固形化されたシートを延伸する工程を行う。本発明の一例にかかる分離膜の製造方法は、ダイリュエント抽出前に延伸工程を行うことによって、ダイリュエントによるポリオレフィンの柔軟化によって延伸作業がより容易になり、その結果、生産安定性を高めることができる。また、延伸によってシートの厚さが薄くなった結果、延伸後、抽出過程でシートからダイリュエントをより容易に除去することができる。
【0026】
具体的に、前記の固形化されたシートを縦方向(Machine Direction、MD)及び/または横方向(Transverse Direction、TD)に延伸することができ、前記縦方向及び横方向のうちいずれか一方向のみに延伸してもよく(一軸延伸)、前記縦方向及び横方向の両方向に延伸してもよい(二軸延伸)。また、前記二軸延伸を行うとき、前記の固形化されたシートを縦方向及び横方向に同時に延伸してもよく、まず、縦方向(または横方向)に延伸し、その次に横方向(または縦方向)に延伸してもよい。
【0027】
例えば、前記延伸工程は、二軸延伸法で行われてもよく、具体的に、本発明の一例によると、逐次二軸延伸法で行われてもよい。逐次二軸延伸法による場合、縦方向及び横方向への延伸倍率を調節することがより容易になり得る。前記二軸延伸することは、具体的に、前記シートを縦方向にT温度で延伸した後、横方向にT温度で延伸することを含む。前記縦方向延伸温度及び前記横方向延伸温度は、それぞれ90℃〜130℃であってもよい。例えば、横方向延伸温度Tと前記縦方向延伸温度Tは、同一であってもよく、異なってもよい。一例として、横方向延伸温度が縦方向延伸温度より高くてもよい。具体的に、縦方向延伸を90℃〜120℃で行い、横方向延伸を100℃〜130℃で行ってもよい。前記横方向延伸を前記縦方向延伸より10℃以上の高い温度で行うことが、延伸及び物性向上に効果的である。
【0028】
前記縦方向及び横方向の延伸倍率は、それぞれ独立的に4倍〜10倍であってもよい。具体的に、前記延伸倍率は、縦方向が4倍〜8倍、横方向が4倍〜8倍であってもよい。前記幅方向及び長さ方向の延伸倍率は、同一であってもよく、異なってもよい。縦方向延伸倍率Lに対する横方向延伸倍率Lの比は、1.1〜1.8、具体的に1.2〜1.7の範囲であってもよい。前記のように延伸倍率の比を調整すると、縦方向収縮率と横方向収縮率との差を減少させることができ、熱安定性を改善することができる。
【0029】
ダイリュエント抽出及び乾燥工程
続いて、ダイリュエントを抽出して乾燥することができる。具体的に、MD延伸及び1次TD延伸されたフィルムを有機溶媒に浸漬してダイリュエントを抽出した後、エアナイフ(air knife)を通じて乾燥することができる。前記有機溶媒は、メチレンクロライド、1,1,1―トリクロロエタン、フルオロカーボン系などのハロゲン化炭化水素類、n―へキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、2―ブタノンなどのケトン類であってもよいが、これに制限されることはない。ダイリュエントとして流動パラフィンを使用する場合は、メチレンクロライドを有機溶媒として使用してもよい。可塑剤を抽出する工程で使用する有機溶媒は、揮発性が高く、有毒なものがほとんどであるので、必要に応じて、有機溶媒の揮発を抑制するために水を使用してもよい。
【0030】
本発明の一例によると、前記ダイリュエントの抽出後、2次横延伸を行うことができる。2次横延伸後、乾燥されたシートの残留応力を除去し、最終シートの熱収縮率を減少させるための横収縮を行うことができ、前記2次横延伸及び横収縮する熱固定工程を通じて、分離膜の引張強度及び収縮率を調節することができる。
【0031】
以下では、2次横延伸及び横収縮を含む熱固定工程についてより具体的に説明する。
【0032】
2次横延伸及び横収縮(熱固定工程)
前記2次横延伸を行うとき、分離膜を横方向に延伸する延伸倍率は、1次横延伸された分離膜の横方向の幅をLとしたとき、前記分離膜の横方向幅が1.1L以上になるように延伸してもよく、具体的には、1.1L〜1.8L、より具体的には、1.1L〜1.5Lになるように延伸してもよい。
【0033】
また、前記2次横延伸を行うとき、前記のように横延伸した後、前記分離膜を再び横収縮させる倍率は、1次横延伸された分離膜の横方向の幅をLとしたとき、前記分離膜の横方向幅が0.9L以上1.3L未満になるように収縮させてもよく、例えば、0.9L〜1.2Lになるように収縮させてもよい。前記範囲内では、分離膜の引張強度を向上させることができ、また、分離膜の溶融収縮率を低く調節することによって分離膜の耐熱性を強化させることができる。前記2次横延伸を行うにおいて、前記横延伸及び/または横収縮は、目的とする分離膜の引張強度、溶融収縮率などによって1回以上適切な回数で繰り返して行われてもよい。
【0034】
前記2次横延伸を行うにおいて、温度条件は、適切に多様な温度範囲に調節することができ、温度条件に応じて製造される分離膜の物性が多様になり得る。2次横延伸及び/または横収縮(熱固定)を行うときの温度は、110℃〜140℃であってもよい。前記範囲では、フィルムの残留応力除去に効果的であり、物性を向上させることができる。
【0035】
本発明の他の一例では、本発明の一例よって製造された分離膜を提供する。
【0036】
本発明の一例よって製造された分離膜は、TMA(Thermomechanical Analysis)による分離膜の縦方向溶融収縮率(a)に対する横方向溶融収縮率(b)の比(b/a)が1.2以下であってもよい。また、本発明のさらに他の一例によると、前記縦方向の溶融収縮率が10%〜35%であり、具体的には15%〜30%、より具体的には20%〜30%であってもよい。また、本発明のさらに他の一例によると、前記横方向の溶融収縮率が5%〜35%であり、具体的には10%〜35%、より具体的には20%〜35%であってもよい。
【0037】
前記範囲内では、耐熱性に優れた分離膜を得ることができ、これを用いて電池を製造する場合、電池の使用によって電池が過熱されたとしても相当な温度まで分離膜が溶融されずに耐えるので、電極短絡や電池爆発現象を防止できるという利点がある。
【0038】
前記分離膜の溶融収縮率を測定する方法は、特別に制限されなく、本発明の技術分野における通常の方法であってもよい。前記分離膜の溶融収縮率を測定する方法の非制限的な例は、次の通りである:製造された分離膜を横(MD)10mm×縦(TD)80mmの矩形状に互いに異なる10箇所の地点で裁断した10個の試片を製作した後、前記各試片をTMA装備に装着し、0.005Nのロード(Load)下で常温(約20℃内外)から約200℃まで10℃/分の昇温速度で昇温しながら各試片の長さ変化を測定し、最初の長さに対する溶融収縮した長さを測定した後、その平均値を計算する方式で行ってもよい。
【0039】
本発明の一例にかかる分離膜は、縦方向の引張強度及び横方向の引張強度がそれぞれ1500kgf/cm以上であり、具体的には、MD方向に1800kgf/cm以上であってもよく、TD方向に1500kgf/cm以上であってもよい。また、前記縦方向引張強度(x)に対する横方向引張強度(y)の比(y/x)が0.7〜1であってもよい。
【0040】
分離膜の縦方向及び横方向の引張強度の差が相当な場合は、分離膜の安定性が低下するようになる。具体的に、分離膜の縦方向の引張強度と横方向の引張強度との差が大きい場合は、分離膜の溶融収縮率及び/または熱収縮率が増加するようになり、分離膜の突き強度も低下し得るので、分離膜の耐熱性のみならず、物理的強度を弱化させるという問題がある。したがって、本発明は、分離膜製造工程のうち2次横延伸工程を調節することによって、製造された分離膜が縦方向及び横方向に類似する引張強度を示し、安定性が向上した分離膜を提供しようとする。
【0041】
前記分離膜の引張強度を測定する方法は、特別に制限されなく、本発明の技術分野における通常の方法であってもよい。前記分離膜の引張強度を測定する方法の非制限的な例は、次の通りである:製造された分離膜を横(MD)10mm×縦(TD)50mmの矩形状に互いに異なる10箇所の地点で裁断した10個の試片を製作した後、前記各試片をUTM(引張試験機)に装着し、測定長さが20mmになるように把持した後、前記試片を引っ張ってMD方向及びTD方向の平均引張強度を測定する方式で行われてもよい。
【0042】
また、本発明の一例にかかる分離膜の通気度は、350sec/100cc以下であり、具体的には340sec/100cc以下であってもよい。前記範囲内では、電解液が十分に含浸し得るので、電池安定性を確保することができる。
【0043】
前記分離膜の通気度を測定する方法は特別に制限されない。前記通気度を測定する方法は、本発明の技術分野における通常の方法であってもよく、これを測定する方法の非制限的な例は、次の通りである:互いに異なる10箇所の地点で裁断した10個の試片を製作した後、通気度測定装置(旭精工社)を用いて前記各試片で直径1インチの円形面積の分離膜が100ccの空気を透過させるのにかかる平均時間をそれぞれ5回ずつ測定した後、平均値を計算することによって通気度を測定する。
【0044】
また、本発明の一例にかかる分離膜の突き強度は、700gf以上、具体的には700gf〜800gfであってもよく、例えば、700gf〜750gfであってもよい。前記分離膜の突き強度を測定する方法は特別に制限されない。
【0045】
前記突き強度を測定する方法は、本発明の技術分野における通常の方法であってもよく、前記分離膜の突き強度を測定する方法の非制限的な例は、次の通りである。製造された分離膜を横(MD)50mm×縦(TD)50mmに互いに異なる10箇所の地点で裁断した10個の試片を製作した後、GATOテックG5装備を用いて10cmの穴の上に試片を載せ、1mmの探針を押し当てながら穿孔される力を測定し、前記各試片の突き強度をそれぞれ3回ずつ測定した後、その平均値を計算する方式で測定する。
【0046】
また、本発明の一例にかかる分離膜を105℃で1時間放置した後で測定した熱収縮率は、縦方向及び横方向にそれぞれ4%未満、具体的には、縦方向(MD、Machine Direction)への熱収縮率が3%以下であってもよく、横方向(TD、Transverse Direction)の熱収縮率が2%以下であってもよい。
【0047】
前記範囲内では、分離膜の熱収縮に対する抵抗性が向上し、形態保存性及び安定性に優れた電池を提供することができる。
【0048】
前記分離膜の熱収縮率を測定する方法は、特別に制限されなく、本発明の技術分野における通常の方法であってもよい。前記分離膜の熱収縮率を測定する方法の非制限的な例は、次の通りである:製造された分離膜を横(MD)50mm×縦(TD)50mmに互いに異なる10箇所の地点で裁断した10個の試片を製作した後、前記各試片を105℃のオーブンに1時間放置した後、各試片のMD方向及びTD方向の収縮程度を測定し、減少したサイズを反映させて平均熱収縮率を計算する。
【0049】
本発明のさらに他の一例では、ポリオレフィン系フィルム;及び前記ポリオレフィン系フィルムの一面あるいは両面に形成されたコーティング層;を含むポリオレフィンコーティング分離膜が提供される。
【0050】
前記コーティング層は、コーティング剤組成物で形成されてもよく、コーティング剤組成物は、有機バインダー、無機粒子及び溶媒を含んでもよい。
【0051】
前記ポリオレフィン系フィルムは、本願に記載されたり、本願に記載された方法によって製造されたポリオレフィン系分離膜であってもよい。
【0052】
具体的に、前記有機バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidene fluoride、PVdF)ホモポリマー、ポリビニリデンフルオライド―ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(Polyvinylidene fluoride―Hexafluoropropylene copolymer、PVdF―HFP)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、及びアクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(acrylonitrilestyrene―butadiene copolymer)からなる群から選ばれた単独またはこれらの混合物を挙げてもよい。具体的に、例えば、PVdF系バインダーが使用されてもよく、PVdF系バインダーは、重量平均分子量(Mw)が500,000g/mol〜1,500,000g/molであってもよく、重量平均分子量が異なる2種以上を混合して使用してもよい。例えば、重量平均分子量が1,000,000g/mol以下である1種以上と、重量平均分子量が1,000,000g/mol以上である1種以上とを混合して使用してもよい。前記分子量範囲内のPVdF系バインダーを使用すると、コーティング層とポリオレフィン基材フィルムとの間の接着力が強化され、熱に弱いポリオレフィン基材フィルムが熱によって収縮されることを効果的に抑制することができ、また、電解質含浸性が十分に向上した分離膜を製造することができ、これを活用して電気出力が効率的に起こる電池を生産することができる。
【0053】
本発明で使用される無機粒子は、特別に制限されなく、当該技術分野における通常の無機粒子であってもよい。本発明で使用可能な無機粒子の非制限的な例としては、Al、SiO、B、Ga、TiOまたはSnOなどを挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。本発明で使用される無機粒子は、例えば、Al(アルミナ)であってもよい。
【0054】
本発明で使用される無機粒子のサイズは特別に制限されなく、平均粒径は、1nm〜2,000nm、例えば、100nm〜1,000nmであってもよい。前記サイズ範囲の無機粒子を使用する場合、コーティング液内での無機粒子の分散性及びコーティング工程性が低下することを防止することができ、コーティング層の厚さが適宜調節され、機械的物性の低下及び電気的抵抗の増加を防止することができる。また、分離膜に生成される気孔のサイズが適宜調節され、電池の充放電時に内部短絡が起こる確率を低下させ得るという利点がある。
【0055】
コーティング剤組成物の製造において、前記無機粒子は、これを適切な溶媒に分散させた無機分散液の形態で用いられてもよい。前記適切な溶媒は、特別に制限されなく、当該技術分野における通常の溶媒であってもよい。前記無機粒子を分散させる適切な溶媒としては、例えば、アセトンを使用してもよい。
【0056】
コーティング層内で、前記無機粒子は、コーティング層の全体重量を基準にして70重量%〜95重量%、具体的には75重量%〜90重量%、より具体的には80重量%〜90重量%で含まれてもよい。前記範囲内で無機粒子を含有する場合、無機粒子の放熱特性を十分に発揮することができ、これを用いて分離膜をコーティングする場合、分離膜の熱収縮を効果的に抑制することができる。
【0057】
本発明で使用可能な前記溶媒の非制限的な例としては、ジメチルホルムアミド(Dimethyl formamide)、ジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide)、ジメチルアセトアミド(Dimethyl acetamide)、ジメチルカーボネート(Dimethyl carbonate)またはN―メチルピロリドン(N―methylpyrrolydone)などを挙げることができる。コーティング剤組成物の重量を基準にして、溶媒の含量は、20重量%〜99重量%であってもよく、具体的には50重量%〜95重量%、より具体的には70重量%〜95重量%であってもよい。前記範囲の溶媒を含有する場合、コーティング剤の製造が容易になり、コーティング層の乾燥工程を円滑に行うことができる。
【0058】
本発明の他の例にかかるコーティング分離膜の製造方法は、有機バインダー、無機粒子、及び溶媒を含むコーティング剤組成物を形成し、本願に記載されたポリオレフィン基材フィルムの一面または両面に前記コーティング剤組成物でコーティング層を形成することを含む。
【0059】
本発明のさらに他の一例では、ポリオレフィン系分離膜、正極及び負極を含み、電解質で充填された電気化学電池を提供する。前記ポリオレフィン系分離膜は、上述した本発明の一例によって製造された分離膜であってもよく、上述した本発明の他の例による分離膜であってもよい。
【0060】
本発明のさらに他の一例では、正極、負極、分離膜及び電解質を含み、前記分離膜は、TMAによる分離膜の縦方向溶融収縮率(a)に対する横方向溶融収縮率(b)の比(b/a)が1.2以下であるポリオレフィン系分離膜である電気化学電池を提供する。
【0061】
前記電気化学電池は、その種類が特別に制限されなく、本発明の技術分野で知られている種類の電池であってもよい。
【0062】
本発明の前記電気化学電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池などのリチウム二次電池であってもよい。
【0063】
本発明の電気化学電池を製造する方法は、特別に制限されなく、本発明の技術分野における通常の方法であってもよい。
【0064】
前記電気化学電池を製造する方法の非制限的な例は、次の通りである:本発明の前記有機及び無機混合物コーティング層を含むポリオレフィン系分離膜を、電池の正極と負極との間に位置させた後、これに電解液を充填する方式で電池を製造してもよい。
【0065】
本発明の電気化学電池を構成する電極は、本発明の技術分野における通常の方法によって電極活物質を電極電流集電体に結着した形態で製造してもよい。
【0066】
本発明で使用される前記電極活物質のうち正極活物質は、特別に制限されなく、本発明の技術分野における通常の正極活物質であってもよい。
【0067】
前記正極活物質の非制限的な例としては、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物などを挙げることができる。
【0068】
本発明で使用される前記電極活物質のうち負極活物質は、特別に制限されなく、本発明の技術分野における通常の負極活物質であってもよい。
【0069】
前記負極活物質の非制限的な例としては、リチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性化炭素(activated carbon)、グラファイトまたはその他の炭素類などのリチウム吸着物質などを挙げることができる。
【0070】
本発明で使用される前記電極電流集電体は、特別に制限されなく、本発明の技術分野における通常の電極電流集電体であってもよい。
【0071】
前記電極電流集電体のうち正極電流集電体素材の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどを挙げることができる。
【0072】
前記電極電流集電体のうち負極電流集電体素材の非制限的な例としては、銅、金、ニッケル、銅合金またはこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどを挙げることができる。
【0073】
本発明で使用される電解液は、特別に制限されなく、本発明の技術分野における通常の電気化学電池用電解液であってもよい。
【0074】
前記電解液は、Aのような構造の塩が、溶媒(たとえば有機溶媒等)に溶解または解離されたものであってもよい。
【0075】
前記Aの非制限的な例としては、Li、NaまたはKなどのアルカリ金属の陽イオン、またはこれらの組み合わせの陽イオン等を挙げることができる。
【0076】
前記Bの例としては、PF、BF、Cl、Br、I、ClO、AsF、CHCO、CFSO、N(CFSOまたはC(CFSOなどの陰イオン、またはこれらの組み合わせからなる陰イオンを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0077】
前記有機溶媒の例としては、プロピレンカーボネート(Propylene carbonate、PC)、エチレンカーボネート(Ethylene carbonate、EC)、ジエチルカーボネート(Diethyl carbonate、DEC)、ジメチルカーボネート(Dimethyl carbonate、DMC)、ジプロピルカーボネート(Dipropyl carbonate、DPC)、ジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide、DMSO)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(dimethoxyethane)、ジエトキシエタン(diethoxyethane)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)、N―メチル―2―ピロリドン(N―methyl―2―pyrrolidone、NMP)、エチルメチルカーボネート(Ethyl methyl carbonate、EMC)またはγ―ブチロラクトン(γ―Butyrolactone、GBL)などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらは、単独で使用されてもよく、その他の成分を含んでもよく、または2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0078】
以下では、実施例、比較例及び実験例を通じて本発明をより詳細に説明する。ただし、これら実施例、比較例及び実験例は、本発明を例示的に説明するためのものに過ぎないので、本発明の範囲がこれらに限定されることはない。
【0079】
(実施例1)
重量平均分子量が600000g/molである高密度ポリエチレン(High―density polyethylene、HDPE;Mitsui chemical社製品)25.5重量%、及び重量平均分子量が2,400,000g/molである超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weight Polyethylene、UHMWPE;Mitsui chemical社製)4.5重量%を混合した混合樹脂、及び液体パラフィン(LP)(極東油化製)70重量%を二軸押出器に注入して押出した。
【0080】
前記押出後、T―ダイを通じて得られたゲル相を、冷却ロールを用いてシートに製作し、前記シートを縦(MD)延伸倍率が4.5になるように100℃で延伸した後、110℃で横(TD)延伸倍率が7になるように1次横延伸を行った。(縦延伸倍率に対する1次横延伸倍率の比が1.56である。)
【0081】
前記の1次横延伸されたポリエチレン基材フィルムをメチレンクロライド(サムスン精密化学製)で洗浄し、流動パラフィンを抽出した後、30℃で10秒間乾燥した。その後、前記の乾燥されたフィルムを横方向に延伸倍率が1.4L(L:前記1次横延伸された分離膜の横方向幅)になるように横延伸した後、これを再び横方向に延伸倍率が1.1Lになるように横収縮する熱固定を行い、温度条件は127℃であった。
【0082】
前記の熱固定されたフィルムをワインディングし、厚さが14μmであるポリオレフィン系多孔性分離膜を製造した。
【0083】
(実施例2)
前記実施例1において、前記2次横延伸工程で、乾燥されたフィルムを横方向に延伸倍率が1.4Lになるように横延伸した後、これを横方向に延伸倍率が1.2Lになるように横収縮することを除いては、前記実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。
【0084】
(実施例3)
前記実施例1において、前記2次横延伸工程で、乾燥されたフィルムを横方向に延伸倍率が1.2Lになるように横延伸した後、これを横方向に延伸倍率が1.0Lになるように横収縮することを除いては、前記実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。
【0085】
(実施例4)
前記実施例1において、前記2次横延伸工程で、乾燥されたフィルムを横方向に延伸倍率が1.1Lになるように横延伸した後、これを横方向に延伸倍率が1.0Lになるように横収縮することを除いては、前記実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。
【0086】
(実施例5)
前記実施例1において、前記2次横延伸工程で、乾燥されたフィルムを横方向に延伸倍率が1.2Lになるように横延伸した後、これを横方向に延伸倍率が1.1Lになるように横収縮することを除いては、前記実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。
【0087】
(実施例6)
前記実施例1において、前記2次横延伸工程で、乾燥されたフィルムを横方向に延伸倍率が1.1Lになるように横延伸した後、これを横方向に延伸倍率が0.9Lになるように横収縮することを除いては、前記実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。
【0088】
(比較例1)
前記実施例1において、前記2次横延伸工程で、乾燥されたフィルムを横方向に延伸倍率が1.1Lになるように横延伸を行い、別途の横収縮を行わないことを除いては、前記実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。
【0089】
前記実施例1〜6及び比較例1による分離膜の組成と、縦延伸/1次横延伸工程条件及び2次横延伸/熱固定工程条件を下記の表1にまとめて示す。
【0090】
【表1】
【0091】
(実験例1)
分離膜の通気度測定
前記実施例1〜6及び比較例1で製造された各分離膜の通気度を測定するために、次のような実験を行った。
【0092】
前記実施例及び比較例で製造された分離膜のそれぞれを直径が1インチ以上の円が入るサイズに互いに異なる10箇所の地点で裁断した10個の試片を製作した後、通気度測定装置(旭精工社製)を用いて前記各試片で空気100ccが通過する時間を測定した。前記時間をそれぞれ5回ずつ測定した後、平均値を計算することによって通気度を測定した。
【0093】
実験例2
分離膜の突き強度測定
前記実施例1〜6及び比較例1で製造された分離膜の突き強度を測定するために、次のような実験を行った。
【0094】
前記実施例及び比較例で製造された分離膜のそれぞれを横(MD)50mm×縦(TD)50mmに互いに異なる10箇所の地点で裁断した10個の試片を製作した後、GATOテックG5装備を用いて10cmの穴の上に試片を載せ、1mmの探針を押し当てながら穿孔される力を測定した。前記各試片の突き強度をそれぞれ3回ずつ測定した後、平均値を計算した。
【0095】
実験例3
分離膜の引張強度測定
前記実施例1〜6及び比較例1で製造された分離膜の引張強度を測定するために、次のような実験を行った。
【0096】
前記実施例及び比較例で製造された分離膜のそれぞれを横(MD)10mm×縦(TD)50mmの矩形状に互いに異なる10箇所の地点で裁断した10個の試片を製作した後、前記各試片をUTM(引張試験機)に装着し、測定長さが20mmになるように把持した後、前記試片を引っ張ってMD方向及びTD方向の平均引張強度を測定した。
【0097】
実験例4
分離膜の熱収縮率測定
前記実施例1〜6及び比較例1で製造された分離膜の熱収縮率を測定するために、次のような実験を行った。
【0098】
前記実施例及び比較例で製造された分離膜のそれぞれを横(MD)50mm×縦(TD)50mmに互いに異なる10箇所の地点で裁断した10個の試片を製作した。前記各試片を105℃のオーブンに1時間放置した後、各試片のMD方向及びTD方向の収縮程度を測定し、平均熱収縮率を計算した。
【0099】
実験例5
分離膜の溶融収縮率測定
前記実施例1〜6及び比較例1で製造された分離膜の溶融収縮率を測定するために、次のような実験を行った。
【0100】
前記実施例及び比較例で製造された分離膜のそれぞれを横(MD)10mm×縦(TD)80mmの矩形状に互いに異なる10箇所の地点で裁断した10個の試片を製作した後、前記各試片をTMA装備に装着し、0.005Nのロード(Load)下で常温(約20℃内外)から約200℃まで10℃/分の昇温速度で昇温しながら各試片のMD方向及びTD方向の長さ変化を測定し、最初の長さに対する溶融収縮した長さを測定した後、その平均値を計算することによって溶融収縮率を測定した。
【0101】
前記実験例1〜5による測定結果を下記の表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
前記表2を参照すると、横延伸後、横収縮させることを含んで分離膜を製造した場合(実施例1〜6)、TMAによる分離膜の縦方向溶融収縮率に対する横方向溶融収縮率の比は1.2以下であり、これによって熱安定性に優れた分離膜が製造されると同時に、分離膜の引張強度が向上することを確認した。
【0104】
その一方、横延伸後、横収縮せずに製造した比較例1の場合、横方向及び縦方向の溶融収縮率が実施例1〜6に比べて大きい値に導出され、これによって縦方向溶融収縮率に対する横方向溶融収縮率の比が1.2を超えることを確認した。
図1