(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の導電ペーストには、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が含まれる。なお、本明細書中において「(メタ)アクリル」とは「メタクリル」と「アクリル」との総称を意味し、後述する「(メタ)アクリロイル」は「メタクリロイル」と「アクリロイル」との総称を意味し、後述する「(メタ)アクリレート」は「メタクリレート」と「アクリレート」との総称を意味する。
【0014】
本発明の導電ペースト中の(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の含有量は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)および導電フィラー(C)の合計量に対して2〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が有する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)は、部分構造(1)を含む活性エネルギー線硬化性基を有する。
【0015】
部分構造(1)を含む活性エネルギー線硬化性基は、活性エネルギー線の照射によって重合し、本発明の導電ペーストを硬化する。なお、本明細書において活性エネルギー線とは、光線、電磁波、粒子線およびこれらの組み合わせを意味する。光線としては遠紫外線、紫外線(UV)、近紫外線、可視光線、赤外線などが挙げられ、電磁波としてはX線、γ線などが挙げられ、粒子線としては電子線(EB)、プロトン線(α線)、中性子線などが挙げられる。硬化速度、照射装置の入手性、価格等の観点から、これら活性エネルギー線の中でも紫外線、電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。すなわち、本発明の導電ペーストは、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を含有することにより、好適には紫外線の照射によって硬化する感光性の導電ペーストである。
部分構造(1)は、下記一般式(1)で示される。
【0016】
【化3】
(式中、R
1は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す)
【0017】
上記一般式(1)中、R
1が表す炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、n−デシル等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基などのアラルキル基が挙げられる。中でも硬化速度を高める観点から、メチル基およびエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0018】
本発明の導電ペーストの硬化速度および塗工性を高める観点から、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)中の(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が有する部分構造(1)を含む活性エネルギー線硬化性基は、下記一般式(2)で示されることが好ましい。かかる下記一般式(2)で示される活性エネルギー線硬化性基を、以下「活性エネルギー線硬化性基(2)」と称する。
【0019】
【化4】
(式中、R
1は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R
2およびR
3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を表し、XはO、S、またはN(R
6)(R
6は水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を表す)を表し、nは1〜20の整数を表す)
【0020】
一般式(2)中、R
1が表す炭素数1〜20の炭化水素基の具体例および好適例としては、上記一般式(1)のR
1と同様の炭化水素基が挙げられる。
一般式(2)中、R
2およびR
3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を表し、後述するジ(メタ)アクリレート(3)を含有する単量体を用いて、容易に直接導入できる観点から、炭素数1〜6の炭化水素基が好ましい。かかる炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基が挙げられる。中でも、硬化速度を高める観点から、R
2およびR
3はメチル基およびエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0021】
上記一般式(2)中、XはO、SまたはN(R
6)(R
6は水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を表す)を表し、重合制御のしやすさからOであるのが好ましい。XがN(R
6)である場合、R
6が表す炭素数1〜6の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基などが挙げられる。
上記一般式(2)中、nが表す1〜20の整数は、導電ペーストの塗工性と硬化速度を高める観点から2〜5であることが好ましい。
【0022】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成する全単量体単位に対する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)中の部分構造(1)の含有量は0.2〜100モル%の範囲が好ましく、10〜90モル%の範囲がより好ましく、25〜80モル%の範囲がさらに好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)は(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体を重合することにより形成される単量体単位を含む。かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステルおよび2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを使用することができる。
【0024】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成できる単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸2−(トリメチルシリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(トリメチルシリルオキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、γ−((メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等の、炭素数5以下のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルが最も好ましい。
【0025】
また、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成できる多官能(メタ)アクリル酸エステルとして、下記一般式(3)で示される2官能(メタ)アクリル酸エステル(以下、「ジ(メタ)アクリレート(3)」と称する)を用いると、後述する条件下でリビングアニオン重合することで、一方の(メタ)アクリロイルオキシ基(下記一般式(3)中「CH
2=C(R
5)C(O)O」で示される(メタ)アクリロイルオキシ基)が選択的に重合して、R
1がR
4であり、R
2がR
2'であり、R
3がR
3'であり、XがOである活性エネルギー線硬化性基(2)を有するメタクリル系重合体ブロック(a)が得られる。
【0026】
【化5】
(式中、R
2'およびR
3'はそれぞれ独立して炭素数1〜6の炭化水素基を表し、R
4およびR
5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、nは1〜20の整数を表す)
【0027】
一般式(3)中、R
2'およびR
3'が表す炭素数1〜6の炭化水素基の例としては上記一般式(2)のR
2およびR
3と同様の炭化水素基が挙げられる。
重合の選択性を高める観点から、R
4はメチル基であることが好ましい。また、ジ(メタ)アクリレート(3)の生産性の観点から、R
4およびR
5は同じであることが好ましい。以上の観点から、R
4およびR
5は共にメチル基であることが最も好ましい。
【0028】
ジ(メタ)アクリレート(3)の具体例としては、例えば1,1−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジ(メタ)アクリレート、1,1−ジメチルブタン−1,4−ジオールジ(メタ)アクリレート、1,1−ジメチルペンタン−1,5−ジオールジ(メタ)アクリレート、1,1−ジメチルヘキサン−1,6−ジオールジ(メタ)アクリレート、1,1−ジエチルプロパン−1,3−ジオールジ(メタ)アクリレート、1,1−ジエチルブタン−1,4−ジオールジ(メタ)アクリレート、1,1−ジエチルペンタン−1,5−ジオールジ(メタ)アクリレート、1,1−ジエチルヘキサン−1,6−ジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、1,1−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジメタクリレート、1,1−ジメチルブタン−1,4−ジオールジメタクリレート、1,1−ジメチルペンタン−1,5−ジオールジメタクリレート、1,1−ジメチルヘキサン−1,6−ジオールジメタクリレート、1,1−ジエチルプロパン−1,3−ジオールジメタクリレート、1,1−ジエチルブタン−1,4−ジオールジメタクリレート、1,1−ジエチルペンタン−1,5−ジオールジメタクリレート、および1,1−ジエチルヘキサン−1,6−ジオールジメタクリレートが好ましく、1,1−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジメタクリレート、1,1−ジメチルブタン−1,4−ジオールジメタクリレート、1,1−ジメチルペンタン−1,5−ジオールジメタクリレート、および1,1−ジメチルヘキサン−1,6−ジオールジメタクリレートがより好ましい。
【0029】
これら(メタ)アクリル酸エステルは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)中の(メタ)アクリル酸エステルから形成される単量体単位の含有量は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成する全単量体単位に対して90〜100モル%の範囲が好ましく、95〜100モル%の範囲がより好ましく、100モル%であってもよい。また、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)にジ(メタ)アクリレート(3)から形成される単量体単位が含まれる場合、ジ(メタ)アクリレート(3)から形成される単量体単位の含有量は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成する全単量体単位に対して0.2〜100モル%の範囲が好ましく、10〜90モル%の範囲がより好ましく、25〜80モル%の範囲がさらに好ましい。さらに、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)にメタクリル酸メチルから形成される単量体単位およびジ(メタ)アクリレート(3)から形成される単量体単位が含まれる場合、メタクリル酸メチルから形成される単量体単位の含有量とジ(メタ)アクリレート(3)から形成される単量体単位の含有量の合計は、(メタ)アクリル酸エステルから形成される全単量体単位に対して80〜100モル%の範囲が好ましく、90〜100モル%の範囲がより好ましく、95〜100モル%の範囲がさらに好ましく、100モル%であってもよい。
【0030】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)は、上記(メタ)アクリル酸エステル以外の他の単量体から形成される単量体単位を有していてもよい。該他の単量体としては、例えばα−メトキシアクリル酸メチル、α−エトキシアクリル酸メチルなどのα−アルコキシアクリル酸エステル;クロトン酸メチル、クロトン酸エチルなどのクロトン酸エステル;3−メトキシアクリル酸エステルなどの3−アルコキシアクリル酸エステル;N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド;2−フェニルアクリル酸メチル、2−フェニルアクリル酸エチル、2−ブロモアクリル酸n−ブチル、2−ブロモメチルアクリル酸メチル、2−ブロモメチルアクリル酸エチル、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、エチルイソプロペニルケトンなどが挙げられる。これら他の単量体は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)中の上記他の単量体から形成される単量体単位の含有量は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成する全単量体単位に対して10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0032】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)1個あたりの数平均分子量(Mn)は特に制限されないが、得られる導電ペーストの取り扱い性、流動性および該導電ペーストに活性エネルギー線を照射して得られる硬化物の力学特性等の観点から、500〜1,000,000の範囲が好ましく、1,000〜300,000の範囲がより好ましい。なお、本明細書中において、Mnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
【0033】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が有する(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)は、(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体を重合することにより形成される単量体単位からなり、かつ活性エネルギー線硬化性基を有さない重合体ブロックである。
【0034】
なお本明細書において、活性エネルギー線硬化性基とは、上記活性エネルギー線の照射により重合性を示す官能基を意味し、例えば(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、ビニルオキシ基、1,3−ジエニル基、スチリル基等のエチレン性二重結合(特に一般式CH
2=CR−(式中、Rはアルキル基または水素原子)で示されるエチレン性二重結合)を有する官能基;エポキシ基、オキセタニル基、チオール基、マレイミド基等が挙げられる。
【0035】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)を形成できる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸2−(トリメチルシリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(トリメチルシリルオキシ)プロピルなどのモノ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。中でも、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル等の炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシルなどの炭素数6以上のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステルは1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。
【0036】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)中の(メタ)アクリル酸エステルにより形成される単量体単位の含有量は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)を形成する全単量体単位に対して90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)は、(メタ)アクリル酸エステル以外の他の単量体から形成される単量体単位を有していてもよい。該他の単量体としては、例えばα−メトキシアクリル酸メチル、α−エトキシアクリル酸メチル等のα−アルコキシアクリル酸エステル;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸エステル;3−メトキシアクリル酸エステル等の3−アルコキシアクリル酸エステル;N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、エチルイソプロペニルケトンなどが挙げられる。これら他の単量体は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)中の上記他の単量体により形成される単量体単位の含有量は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)を形成する全単量体単位に対して10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)のMnは特に制限されないが、得られる(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の取り扱い性、流動性、力学特性等の観点から、3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、5,000〜1,000,000の範囲がより好ましい。
【0040】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)は、少なくとも1つの(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と少なくとも1つの(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)が互いに結合したブロック共重合体であり、各重合体ブロックの数および結合順序に特に制限はないが、活性エネルギー線硬化性の観点から(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の少なくとも1つの末端を形成することが好ましく、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の製造容易性の観点から、直鎖状の重合体であることがより好ましく、1つの(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と1つの(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)が結合したジブロック共重合体および1つの(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)の両端に(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)各1つがそれぞれ結合したトリブロック共重合体がさらに好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の質量と(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)の質量との比率[(メタ)アクリル系重合体ブロック(a):(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)]に特に制限はないが、85:15〜5:95であることが好ましく、80:20〜7:93であることがより好ましく、75:25〜10:90であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)との合計質量に対する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の質量割合が5%以上であると、硬化速度が高まり、85%以下であると硬化物の靭性が高くなるので好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)において、メタクリル酸エステルから形成される単量体単位の含有量は、5〜85質量%であることが好ましく、7〜80質量%であることがより好ましく、10〜75質量%であることがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)において、アクリル酸エステルから形成される単量体単位の含有量は、15〜95質量%であることが好ましく、20〜93質量%であることがより好ましく、25〜90質量%であることがさらに好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)のMnは特に制限されないが、本発明の導電ペーストの取り扱い性、流動性、力学特性等の観点から、4,000〜3,000,000であることが好ましく、7,000〜2,000,000であることがより好ましく、10,000〜1,000,000であることがさらに好ましい。
【0044】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量分布、すなわち重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は1.02〜2.00の範囲が好ましく、1.05〜1.80の範囲がより好ましく、1.10〜1.50の範囲がさらに好ましい。なお、本明細書中において、Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0045】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)における部分構造(1)の含有量は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を形成する全単量体単位に対して0.1〜20モル%の範囲であることが好ましく、2〜15モル%の範囲であることがより好ましい。
【0046】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)1分子あたりの部分構造(1)の数は、硬化速度を高める観点から、3個以上であることが好ましく、4個以上であることがより好ましく、8個以上であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明における(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法は特に限定されないが、アニオン重合法またはラジカル重合法が好ましく、重合制御の観点からリビングアニオン重合法またはリビングラジカル重合法がより好ましく、リビングアニオン重合法がさらに好ましい。
【0048】
リビングラジカル重合法としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いる重合法、コバルトポルフィリン錯体を用いる重合法、ニトロキシドを用いる重合法(国際公開第2004/014926号参照)、有機テルル化合物などの高周期ヘテロ元素化合物を用いる重合法(特許第3839829号公報参照)、可逆的付加脱離連鎖移動重合法(RAFT)(特許第3639859号公報参照)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)(特許第3040172号公報、国際公開第2004/013192号参照)などが挙げられる。これらリビングラジカル重合法の中でも、原子移動ラジカル重合法が好ましく、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、Fe、Ru、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種類を中心金属とする金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法がより好ましい。
【0049】
リビングアニオン重合法としては、有機希土類金属錯体を重合開始剤としてリビング重合する方法(特開平06−93060号公報参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩の存在下でリビングアニオン重合する方法(特表平05−507737号公報参照)、有機アルミニウム化合物の存在下で、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としリビングアニオン重合する方法(特開平11−335432号公報、国際公開2013/141105号参照)などが挙げられる。これらリビングアニオン重合法の中でも、上記一般式(1)で示される部分構造を含む(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を直接、効率よく形成できる点からは、有機アルミニウム化合物の存在下で、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としリビングアニオン重合する方法が好ましく、有機アルミニウム化合物およびルイス塩基の存在下で、有機リチウム化合物を重合開始剤としリビングアニオン重合する方法がより好ましい。
【0050】
上記有機リチウム化合物としては、例えばt−ブチルリチウム、1,1−ジメチルプロピルリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、エチルα−リチオイソブチレート、ブチルα−リチオイソブチレート、メチルα−リチオイソブチレート、イソプロピルリチウム、sec−ブチルリチウム、1−メチルブチルリチウム、2−エチルプロピルリチウム、1−メチルペンチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、α−メチルベンジルリチウム、メチルリチウム、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム等が挙げられる。中でも、入手容易性およびアニオン重合開始能の観点から、イソプロピルリチウム、sec−ブチルリチウム、1−メチルブチルリチウム、1−メチルペンチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、α−メチルベンジルリチウム等の、二級炭素原子を陰イオン中心とする化学構造を有する炭素数3〜40の有機リチウム化合物が好ましく、sec−ブチルリチウムが特に好ましい。これら有機リチウム化合物は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0051】
有機リチウム化合物の使用量は、目的とする(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)のMnに応じて、用いる単量体の使用量との比率によって決定できる。
上記有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(A−1)または(A−2)で示される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
AlR
7(R
8)(R
9) (A−1)
(式中、R
7は一価の飽和炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはN,N−二置換アミノ基を表し、R
8およびR
9はそれぞれ独立してアリールオキシ基を表すか、あるいはR
8およびR
9は互いに結合してアリーレンジオキシ基を形成している)
AlR
10(R
11)(R
12) (A−2)
(式中、R
10はアリールオキシ基を表し、R
11およびR
12はそれぞれ独立して一価の飽和炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、アルコキシ基またはN,N−二置換アミノ基を表す)
【0052】
上記一般式(A−1)および(A−2)中、R
7、R
8、R
9およびR
10がそれぞれ独立して表すアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ基、2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ基、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ基、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノキシ基、2,6−ジフェニルフェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、7−メトキシ−2−ナフトキシ基等が挙げられる。
【0053】
上記一般式(A−1)中、R
8とR
9が互いに結合して形成されるアリーレンジオキシ基としては、例えば2,2’−ビフェノール、2,2’−メチレンビスフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、(R)−(+)−1,1’−ビ−2−ナフトール、(S)−(−)−1,1’−ビ−2−ナフトール等の2個のフェノール性水酸基を有する化合物中の該2個のフェノール性水酸基の水素原子を除いた官能基が挙げられる。
【0054】
なお、上記のアリールオキシ基およびアリーレンジオキシ基において含まれる1個以上の水素原子が、置換基により置換されていてもよく、該置換基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0055】
上記一般式(A−1)および(A−2)中、R
7、R
11およびR
12がそれぞれ独立して表す一価の飽和炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられ、一価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられ、N,N−二置換アミノ基としては、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ビス(トリメチルシリル)アミノ基等が挙げられる。上述した一価の飽和炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、アルコキシ基およびN,N−二置換アミノ基において含まれる1個以上の水素原子が、置換基により置換されていてもよく、該置換基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0056】
上記有機アルミニウム化合物(A−1)としては、例えばエチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチル[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチル[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、メトキシビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシ[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシ[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシ[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、t−ブトキシビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、t−ブトキシビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、t−ブトキシ[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、トリス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、トリス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウム等が挙げられる。中でも、重合開始効率、重合末端アニオンのリビング性、入手および取り扱いの容易さ等の観点から、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム等が好ましい。
【0057】
上記有機アルミニウム化合物(A−2)としては、例えばジエチル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジエチル(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジn−オクチル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジn−オクチル(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム等が挙げられる。これら有機アルミニウム化合物は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0058】
有機アルミニウム化合物の使用量は、溶媒の種類、その他種々の重合条件等に応じて適宜好適な量を選択できるが、重合速度の観点から有機リチウム化合物1モルに対して通常、1.0〜10.0モルの範囲で用いることが好ましく、1.1〜5.0モルの範囲で用いることがより好ましく、1.2〜4.0モルの範囲で用いることがさらに好ましい。有機アルミニウム化合物の使用量が有機リチウム化合物1モルに対して10.0モルを超えると、経済性において不利となる傾向となり、1.0モルを下回ると、重合開始効率が低下する傾向となる。
【0059】
上記ルイス塩基としては、分子内にエーテル結合および/または三級アミン構造を有する化合物が挙げられる。
上記ルイス塩基として用いられる、分子内にエーテル結合を有する化合物としてはエーテルが挙げられる。上記エーテルとしては、重合開始効率の高さ、重合末端アニオンのリビング性の観点から、2個以上のエーテル結合を分子内に有する環状エーテルまたは1個以上のエーテル結合を分子内に有する非環状エーテルが好ましい。2個以上のエーテル結合を分子内に有する環状エーテルとしては、例えば12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6等のクラウンエーテルが挙げられる。1個以上のエーテル結合を分子中に有する非環状エーテルとしては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール等の非環状モノエーテル;1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジイソプロポキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ジメトキシプロパン、1,2−ジエトキシプロパン、1,2−ジイソプロポキシプロパン、1,2−ジブトキシプロパン、1,2−ジフェノキシプロパン、1,3−ジメトキシプロパン、1,3−ジエトキシプロパン、1,3−ジイソプロポキシプロパン、1,3−ジブトキシプロパン、1,3−ジフェノキシプロパン、1,4−ジメトキシブタン、1,4−ジエトキシブタン、1,4−ジイソプロポキシブタン、1,4−ジブトキシブタン、1,4−ジフェノキシブタン等の非環状ジエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジブチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリブチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリブチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラブチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラブチレングリコールジエチルエーテル等の非環状ポリエーテルが挙げられる。中でも、副反応の抑制、入手容易性等の観点から、1〜2個のエーテル結合を分子内に有する非環状エーテルが好ましく、ジエチルエーテルまたは1,2−ジメトキシエタンがより好ましい。
【0060】
上記ルイス塩基として用いられる、分子内に三級アミン構造を有する化合物としては、三級ポリアミンが挙げられる。三級ポリアミンとは、三級アミン構造を分子中に2個以上有する化合物を意味する。該三級ポリアミンとしては、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン等の鎖状ポリアミン;1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7,10,13,16−ヘキサメチル−1,4,7,10,13,16−ヘキサアザシクロオクタデカン等の非芳香族性複素環式化合物;2,2’−ビピリジル、2,2’:6’,2”−ターピリジン等の芳香族性複素環式化合物等が挙げられる。
【0061】
また、分子内に1個以上のエーテル結合と1個以上の三級アミン構造を有する化合物をルイス塩基として使用してもよい。このような化合物としては、例えばトリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン等が挙げられる。
【0062】
これらルイス塩基は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
ルイス塩基の使用量は、重合開始効率、重合末端アニオンの安定性等の観点から、有機リチウム化合物1モルに対して0.3〜5.0モルの範囲であることが好ましく、0.5〜3.0モルの範囲であることがより好ましく、1.0〜2.0モルの範囲であることがさらに好ましい。ルイス塩基の使用量が有機リチウム化合物1モルに対して、5.0モルを超えると経済性において不利となる傾向となり、0.3モルを下回ると重合開始効率が低下する傾向となる。
【0063】
また、ルイス塩基の使用量は、有機アルミニウム化合物1モルに対して、0.2〜1.2モルの範囲であることが好ましく、0.3〜1.0モルの範囲であることがより好ましい。
【0064】
上記リビングアニオン重合は、温度制御および系内を均一化して重合を円滑に進行させる観点から、有機溶媒の存在下に行うことが好ましい。有機溶媒としては、安全性、重合後の反応混合液の水洗における水との分離性、回収・再使用の容易性等の観点から、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;フタル酸ジメチル等のエステル等が好ましい。これら有機溶媒は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、有機溶媒は、重合を円滑に進行させる観点から、乾燥処理を施すとともに、不活性ガス存在下であらかじめ脱気しておくことが好ましい。
【0065】
また、上記リビングアニオン重合では、必要に応じ、反応系に他の添加剤を存在させてもよい。該他の添加剤としては、例えば塩化リチウム等の無機塩類;リチウムメトキシエトキシエトキシド、カリウムt−ブトキシド等の金属アルコキシド;テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルホスホニウムブロミド等が挙げられる。
【0066】
上記リビングアニオン重合は−30〜25℃で行うのが好ましい。−30℃よりも低いと重合速度が低下し、生産性が低下する傾向がある。一方、25℃より高いと、上記一般式(1)で示される部分構造を含む(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の重合をリビング性よく行うことが困難となる傾向となる。
【0067】
上記リビングアニオン重合は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。また、反応系が均一になるように十分な攪拌条件下にて行うことが好ましい。
【0068】
上記リビングアニオン重合において、有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物、ルイス塩基および単量体を反応系に添加する方法としては、ルイス塩基が、有機リチウム化合物との接触前に有機アルミニウム化合物と接触するように添加することが好ましい。また、有機アルミニウム化合物は、単量体より先に反応系に添加しても、同時に添加してもよい。有機アルミニウム化合物を単量体と同時に反応系に添加する場合、有機アルミニウム化合物を単量体と別途混合したのちに添加してもよい。
【0069】
上記リビングアニオン重合は、メタノール;酢酸または塩酸のメタノール溶液;酢酸、塩酸の水溶液等のプロトン性化合物などの重合停止剤を反応液に添加して停止できる。重合停止剤の使用量は、通常、用いる有機リチウム化合物1モルに対して1〜100モルの範囲が好ましい。
【0070】
リビングアニオン重合停止後の反応液から(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を分離取得する方法としては、公知の方法を採用できる。例えば、反応液を(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の貧溶媒に注いで沈殿させる方法、反応混合液から有機溶媒を留去して(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を取得する方法等が挙げられる。
【0071】
なお、分離取得した(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)中に有機リチウム化合物および有機アルミニウム化合物に由来する金属成分が残存していると、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の物性の低下、透明性不良等を生じる場合がある。よって、有機リチウム化合物および有機アルミニウム化合物に由来する金属成分をアニオン重合停止後に除去することが好ましい。該金属成分の除去方法としては、酸性水溶液を用いた洗浄処理、イオン交換樹脂、セライト、活性炭等の吸着剤を用いた吸着処理等が有効である。ここで、酸性水溶液としては、例えば、塩酸、硫酸水溶液、硝酸水溶液、酢酸水溶液、プロピオン酸水溶液、クエン酸水溶液等を使用することができる。
【0072】
上記(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の製造において部分構造(1)を含む活性エネルギー線硬化性基を導入する方法としては、上記したジ(メタ)アクリレート(3)を含有する単量体を重合して(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成する方法の他に、部分構造(1)の前駆体となる部分構造(以下、「前駆体構造」と称する)を含む重合体ブロックを形成した後に、該前駆体構造を部分構造(1)に変換する方法も挙げられる。前駆体構造を含む重合体ブロックは重合性官能基と前駆体構造を含む化合物を含有する単量体を重合することで得られる。該重合性官能基としては、スチリル基、1,3−ジエニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。前駆体構造としては、水酸基および保護基(シリルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシ基など)によって保護された水酸基、アミノ基および保護基(カルバメート基、アミド基など)によって保護されたアミノ基、チオール基および保護基(チオエーテル基、チオエステル基など)によって保護されたチオール基ならびにイソシアネート基などが挙げられる。
【0073】
前駆体構造として水酸基を含む重合体ブロックは、部分構造(1)および水酸基と反応しうる部分構造(カルボキシル基、エステル、カルボニルハライドなど)を有する化合物と反応させることで(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成できる。また、前駆体構造として保護基によって保護された水酸基を含む重合体ブロックは、該保護基を外して水酸基とした後で同様に(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成できる。
【0074】
前駆体構造としてアミノ基を含む重合体ブロックは、部分構造(1)および水酸基と反応しうる部分構造(カルボキシル基、カルボン酸無水物、エステル、カルボニルハライド、アルデヒド基、イソシアネート基など)を有する化合物と反応させることで(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成できる。また、前駆体構造として保護基によって保護されたアミノ基を含む重合体ブロックは、該保護基を外してアミノ基とした後で同様に(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成できる。
【0075】
前駆体構造としてチオール基を含む重合体ブロックは、部分構造(1)およびチオール基と反応しうる部分構造(カルボキシル基、カルボン酸無水物、エステル、カルボニルハライド、イソシアネート基、炭素−炭素二重結合など)を有する化合物と反応させることで(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成できる。また、前駆体構造として保護基によって保護されたチオール基を含む重合体ブロックは、該保護基を外してチオール基とした後で同様に(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成できる。
【0076】
前駆体構造としてイソシアネート基を含む重合体ブロックは、部分構造(1)およびイソシアネート基と反応しうる部分構造(水酸基、アミノ基など)を有する化合物と反応させることで(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成できる。
【0077】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の製造において、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を形成する方法としては、活性エネルギー線硬化性基(2)を容易に直接導入できる観点から、ジ(メタ)アクリレート(3)を含有する単量体を重合する方法、典型的にはリビングアニオン重合する方法が好ましい。
【0078】
本発明の導電ペーストには、光重合開始剤(B)が含まれる。光重合開始剤(B)としては、例えばアセトフェノン類(例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン等)、ベンゾフェノン類(例えばベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン等)、ミヒラーケトン類(例えばミヒラーケトン等)およびベンゾイン類(例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等)等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、チオキサンソン類(例えばチオキサンソン、2−クロルチオキサンソン等)等の硫黄化合物;アシルフォスフィンオキサイド類(例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等)等のリン化合物;チタノセン類(例えばビス(η
5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等)等のチタン化合物;およびアゾ化合物(例えばアゾビスイソブチルニトリル等)等のラジカル開始剤が挙げられる。これらの中でも、アセトフェノン類およびベンゾフェノン類が好ましい。これらは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0079】
光重合開始剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対し、1〜30質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対する光重合開始剤(B)の含有量を1質量部以上とすることにより、活性エネルギー線を照射した場合の硬化性が高まり、精度の高い導電パターンが形成できる。また、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対する光重合開始剤(B)の含有量を30質量部以下とすることで、活性エネルギー線を照射した場合に厚さ方向に均一な硬化物が得られ、基板との接着性が良好となる。
【0080】
また、本発明の導電ペーストには、上記光重合開始剤(B)に加えて、増感剤が含まれていてもよい。増感剤としては、例えばn−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、アリルチオ尿酸、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0081】
増感剤を本発明の導電ペーストに含有させる場合、その含有量は(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜5質量部であることがより好ましい。(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対する添加量を0.1質量部以上とすることにより活性エネルギー線を照射した場合の硬化性が高まり、精度の高い導電パターンが形成でき、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対する添加量を10質量部以下とすることにより、活性エネルギー線を照射した場合に厚さ方向に均一な導電パターンが得られ、基板との接着性が良好となる。
【0082】
本発明の導電ペーストには、導電フィラー(C)が含まれる。導電フィラー(C)は、導電性物質のみから形成されていても、ポリオレフィンなどの絶縁性物質を含有していてもよい。導電フィラー(C)が絶縁性物質を含有する場合、導電性を高める観点から、絶縁性物質の表面を導電性物質で被覆した粒子であることが好ましい。
【0083】
導電性物質としては、例えばAg、Au、Cu、Pt、Pb、Sn、Ni、Al、W、Mo、酸化ルテニウム、Cr、Ti、およびインジウムなどが挙げられる。中でも、導電性の観点からAg、CuおよびAuが好ましく、コスト、安定性の観点からAgがより好ましい。導電フィラー(C)は、これら導電性物質1種から形成されたものであってもよいし、これら導電性物質の混合物(例えば合金)から形成されたものであってもよい。これら導電フィラー(C)は、1種のみであっても、2種以上を併用してもよい。
【0084】
導電フィラー(C)の体積平均粒子径は0.1〜10μmが好ましく、0.5〜6μmがより好ましい。体積平均粒子径が0.1μm以上であると導電フィラー同士の接触確率が向上し、作製される導電パターンの比抵抗率、および断線確率を低くすることができ、且つ露光時の紫外線が膜中をスムーズに透過することができ、微細パターニングが容易となる。また体積平均粒子径が10μm以下であれば印刷後の回路パターンの表面平滑度、パターン精度、寸法精度が向上する。なお、かかる体積平均粒子径は、コールターカウンター法により求めることができる。
【0085】
導電フィラー(C)の含有量は、導電ペースト中の(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)および導電フィラー(C)の合計量に対して、70〜98質量%が好ましく、80〜95質量%がより好ましい。かかる含有量を70質量%以上とすることにより、得られる導電パターンの比抵抗率および断線確率を低くすることができる。また、98質量%以下とすることにより、活性エネルギー線を照射した場合に厚さ方向に均一な導電パターンが得られ、基板との接着性が良好となる。
【0086】
本発明の導電ペーストには、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)以外の活性エネルギー線の照射により重合性を示す反応性希釈剤が含まれていてもよい。反応性希釈剤としては、活性エネルギー線の照射によって重合性を示す化合物であれば特に制限はないが、例えばスチレン、インデン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ) アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t− ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル、4−(メタ)アクリロイルモルホリン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加体、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2,4,6−トリオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−1,3,5−トリスエタノールトリ(メタ)アクリレート、N,N’−ビス[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]−N’’−(2−ヒドロキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、およびシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体;ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂等のエポキシアクリレート系樹脂;COOH基変性エポキシアクリレート系樹脂;ポリオール(ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコールとアジピン酸のポリエステルジオール、ε−カプロラクトン変性ポリエステルジオール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端水添ポリイソプレン、水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソブチレン等)と有機イソシアネート(トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)から得られたウレタン樹脂を水酸基含有(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等}を反応させて得られたウレタンアクリレート系樹脂;上記ポリオールにエステル結合を介して(メタ)アクリル基を導入した樹脂;ポリエステルアクリレート系樹脂;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ化合物等が挙げられる。これら反応性希釈剤は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0087】
本発明の導電ペーストに反応性希釈剤を含有させる場合、その含有量は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対して、10〜1,000質量部であることが好ましく、20〜500質量部であることがより好ましい。
【0088】
本発明の導電ペーストには、溶剤が含まれていてもよい。
溶剤としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエンなどが挙げられる。溶剤は1種を単独で用いたり、2種以上を混合して用いたりすることができる。溶剤は導電ペースト作製後、粘度調整を目的に後から添加してもかまわない。
【0089】
本発明の導電ペーストに溶剤が含まれる場合、その含有量は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対して、10〜1,000質量部の範囲が好ましく、20〜500質量部の範囲がより好ましい。
【0090】
本発明の導電ペーストには、その特性を損なわない範囲で、可塑剤、レベリング剤、シランカップリング剤などの各種添加剤が含まれていてもよい。
上記可塑剤を本発明の導電ペーストに含有させる目的は、例えば本発明の導電ペーストの粘度の調整、該導電ペーストを硬化して得られる硬化物の機械的強度の調整である。上記可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル;トリメリット酸エステル;ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン等のジエン系(共)重合体;ポリブテン;ポリイソブチレン;塩素化パラフィン;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油;プロセスオイル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールとこれらポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基等に変換した誘導体等のポリエーテル;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル;等が挙げられる。なお、(共)重合体は、単独重合体と共重合体の総称である。これら可塑剤は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0091】
これら可塑剤の分子量または数平均分子量としては、400〜15,000であることが好ましく、800〜10,000であることがより好ましく、1,000〜8,000であることがより好ましい。なお、かかる可塑剤は活性エネルギー線硬化性基以外の官能基(例えば水酸基、カルボキシル基、ハロゲン基など)を有していても、有していなくてもよい。可塑剤の分子量または数平均分子量が400以上であることで、本発明の導電ペーストから得られる硬化物から可塑剤が経時的に流出せず、初期の物性を長期にわたり維持できる。また、可塑剤の分子量または数平均分子量が15,000以下であることで、本発明の導電ペーストの取り扱い性が向上する傾向がある。
【0092】
本発明の導電ペーストにおいて可塑剤を含有させる場合、その含有量は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対して5〜150質量部が好ましく、10〜120質量部がより好ましく、20〜100質量部がさらに好ましい。5質量部以上とすることで物性の調整、性状の調節等の効果が顕著となり、150質量部以下とすることで本発明の導電ペーストを硬化した硬化物は機械強度に優れる傾向がある。
【0093】
上記レベリング剤の具体例としては、特殊ビニル系重合物、特殊アクリル系重合物などが挙げられる。本発明の導電ペーストにおいてレベリング剤を含有させる場合、その含有量は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対して0.001〜2質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましい。
【0094】
上記シランカップリング剤の具体例としては、例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。本発明の導電ペーストにおいてシランカップリング剤を含有させる場合、その含有量は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0095】
本発明の導電ペーストは分散機、混練機などを用いて作製される。これらの具体例としては三本ロールミル、ボールミル、遊星式ボールミルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
次に本発明の導電ペーストを用いた導電パターンの製造方法について説明する。導電パターンを作製するためには本発明の導電ペーストを基板上に塗工した後、溶剤を含んでいる場合は溶剤を除去して塗工膜を形成する。その後、該塗工膜上にパターン形成用マスクを介して露光し、現像することで基板上に所望のパターンを形成した後、焼成して導電パターンを作製する。焼成温度は100〜300℃が好ましく、120〜180℃がより好ましい。加熱温度を100℃未満にすると、樹脂の体積収縮量を大きくすることができず、比抵抗率を小さくすることができない。一方、加熱温度が300℃を越えると、耐熱性が低い基板上に用いることはできず、耐熱性の低い材料と併用して用いることもできない。
【0097】
本発明で用いる基板は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム)、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、アラミドフィルム、エポキシ樹脂基板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板、ガラス基板、加飾層形成基板、絶縁層形成基板、シリコンウエハー、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
本発明の導電ペーストを基板に塗工する方法としては、スピナーを用いた回転塗工、スプレー塗工、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーターなどの方法がある。
【0099】
基板上に塗工した導電ペーストから溶剤を除去する方法としては、オーブン、ホットプレート、赤外線などによる加熱乾燥や、減圧乾燥などが挙げられる。加熱乾燥は50℃から180℃の範囲で1分から数時間行うのが好ましい。
【0100】
得られる塗工膜の厚さは、塗工手法、組成物の全固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、0.5〜20μmの範囲内になるように塗工される。
ついで、塗工膜上に、パターン形成用マスクを介して露光する。露光に用いられる光源としては水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いるのが好ましい。
【0101】
露光後、現像液を用いて未露光部を除去(現像)することによって、所望のパターンが得られる。現像液としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、トルエンなどの溶剤を単独、あるいは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、キシレン、水、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどと組み合わせた混合溶液が使用できる。
【0102】
現像は、基板を静置または回転させながら上記の現像液を塗工膜面にスプレーする方法、基板を現像液中に浸漬する方法、浸漬しながら超音波をかけるなどの方法等によって行うことができる。
【0103】
現像後、溶剤や水による洗浄処理を施してもよい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを溶剤や水に加えて洗浄処理をしてもよい。
【0104】
次に導電性を発現させるために、オーブン、イナートオーブン、ホットプレート、赤外線などによる加熱乾燥や真空乾燥などを用いた焼成エ程を経て導電パターンを作製できる。
【0105】
本発明の導電ペーストを用いて製造される導電パターンは、タッチパネル用周囲配線として好適に用いられる。タッチパネルの方式としては、例えば、抵抗膜式、光学式、電磁誘導式または静電容量式が挙げられるが、特に微細配線が求められる静電容量式タッチパネル用周囲配線の導電パターンの形成においても、本発明の導電ペーストは好適に用いることができる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されない。
以下の実施例および比較例において、原料は常法により乾燥精製し、窒素にて脱気したものを使用し、移送および供給は窒素雰囲気下にて行った。
【0107】
[単量体消費率]
重合後の各単量体の消費率は、重合反応液0.5mlを採取してメタノール0.5ml中に入れて混合後、該混合液からから0.1mlを採取して、重クロロホルム0.5mlに溶解させて
1H−NMR測定を行い、単量体として用いた(メタ)アクリレートの炭素−炭素二重結合に直結するプロトンに由来するピーク(化学シフト値6.08〜6.10)および溶媒として用いたトルエンの芳香環に直結するプロトンに由来するピーク(化学シフト値7.00〜7.38ppm)の積分値の比率の変化から算出した。
1H−NMR測定条件
装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置 「JNM−ECX400」
溶媒:重水素化クロロホルム
温度:25℃
【0108】
[数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)]
合成例1、2において、得られた重合体のGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)測定を行い、標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)の値を求めた。
装置:東ソー株式会社製 GPC装置「HLC−8220GPC」
分離カラム:東ソー株式会社製 「TSKgel SuperMultiporeHZ−M(カラム径=4.6mm、カラム長=15cm)」(2本を直列に繋いで使用)
溶離液:テトラヒドロフラン
溶離液流量:0.35ml/分
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)
【0109】
[開始剤効率]
合成例1、2において、実際に工程(1)で得られた重合体のMnをMn(R1)とし、開始剤効率が100%である場合の工程(1)で得られる重合体のMn(計算値)をMn(I1)とすると、工程(1)における開始剤効率(F1)は以下の式から算出される。
F1(%)=100×Mn(I1)/Mn(R1)
【0110】
[工程(1)から工程(2)にかけてのブロック効率]
実際に工程(2)で得られた重合体のMnをMn(R2)とし、ブロック効率が100%である場合の工程(2)で得られる重合体のMn(計算値)をMn(I2)とすると、工程(1)から工程(2)にかけてのブロック効率(F2)は以下の式から算出される。
F2(%)=10000・{Mn(I2)−Mn(I1)}/[F1・{Mn(R2)−Mn(R1)}]
【0111】
[合成例1]
内部を乾燥し、窒素置換した3Lのフラスコに、トルエン1.5Lを添加したのち、フラスコ内の溶液を攪拌しながら、ルイス塩基として1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン2.2ml(8.2mmol)、有機アルミニウム化合物としてイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの0.450mol/Lトルエン溶液25.1ml(11.3mmol)を順次添加したのち、−20℃に冷却した。これに有機リチウム化合物としてsec−ブチルリチウムの1.30mol/Lシクロヘキサン溶液6ml(7.8mmol)を加え、単量体として1,1−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジメタクリレート59.0ml(246mmol)とメタクリル酸メチル60.9ml(573mmol)との混合物119.9mlを一括で添加し、アニオン重合を開始した。上記混合物の添加から280分後に重合反応液は当初の黄色から無色に変わった。さらに20分撹拌後に反応液をサンプリングした。
【0112】
工程(1)における1,1−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジメタクリレートおよびメタクリル酸メチルの消費率は100%であった。また、得られた重合体のMn(Mn(R1))は15,100、Mw/Mnは1.19であった。さらに、工程(1)における開始剤効率(F1)は99%であった。
【0113】
(工程(2))
引き続き反応液を−20℃で撹拌しつつ、有機アルミニウム化合物としてイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの0.450mol/Lトルエン溶液を13.9ml(6.2mmol)加え、その1分後に単量体としてアクリル酸n−ブチル327ml(2.27mol)を4ml/分の速度で添加した。アクリル酸n−ブチルの添加終了直後に反応液をサンプリングした。
【0114】
工程(2)におけるアクリル酸n−ブチルの消費率は100%であった。また、得られた重合体のMn(Mn(R2))は54,800、Mw/Mnは1.27であった。さらに、工程(1)から工程(2)にかけてのブロック効率(F2)は95%であった。
【0115】
(工程(3))
引き続き反応液を−20℃で撹拌しつつ、単量体として1,1−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジメタクリレート55.5ml(231mmol)とメタクリル酸メチル57.3ml(539mmol)の混合物112.8mlを一括で添加したのち、2℃/分の速度で20℃に昇温した。上記混合物の添加から720分後に反応液をサンプリングした。
工程(3)における1,1−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジメタクリレートおよびメタクリル酸メチルの消費率は100%であった。
【0116】
(工程(4))
引き続き反応液を20℃で撹拌しつつ、メタノール100mlを添加することにより、アニオン重合を停止させた。得られた溶液を10Lのメタノール中に注ぎ、重合体を沈殿させ、濾過によって回収し、100℃、30Paで乾燥し、480gの(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)(以下「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A1)」と称する)を得た。
【0117】
得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A1)のMnは70,900、Mw/Mnは1.34であった。
得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A1)をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(東京化成工業(株)製)に溶解させ、51.2質量%の感光性樹脂溶液を得た。
【0118】
[合成例2]
(工程(1))
内部を乾燥し、窒素置換した3Lのフラスコに、トルエン1.5Lを添加したのち、フラスコ内の溶液を攪拌しながら、ルイス塩基として1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン4.5ml(16.4mmol)、有機アルミニウム化合物としてイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの0.450mol/Lトルエン溶液50.3ml(22.6mol)を順次添加したのち、−20℃に冷却した。これに有機リチウム化合物としてsec−ブチルリチウムの1.30mol/Lシクロヘキサン溶液12ml(15.6mmol)を加え、単量体として1,1−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジメタクリレート59.6ml(248mmol)とメタクリル酸メチル61.5ml(579mmol)の混合物121.1mlを一括で添加し、アニオン重合を開始した。上記混合物の添加から140分後に重合反応液は当初の黄色から無色に変わった。さらに20分撹拌後に反応液をサンプリングした。
【0119】
工程(1)における1,1−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジメタクリレートおよびメタクリル酸メチルの消費率は100%であった。また、工程(1)で得られた重合体のMn(Mn(R1))は7,630、Mw/Mnは1.17であった。さらに、工程(1)における開始剤効率(F1)は99%であった。
【0120】
(工程(2))
引き続き反応液を−20℃で撹拌しつつ、有機アルミニウム化合物としてイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの0.450mol/Lトルエン溶液27.7ml(12.5mmol)を加え、その1分後に単量体としてアクリル酸n−ブチル326ml(2.27mol)を4ml/分の速度で添加した。アクリル酸n−ブチルの添加終了直後に反応液をサンプリングした。
【0121】
工程(2)におけるアクリル酸n−ブチルの消費率は100%であった。また、得られた重合体のMn(Mn(R2))は27,500、Mw/Mnは1.24であった。さらに、工程(1)から工程(2)にかけてのブロック効率(F2)は95%であった。
【0122】
(工程(3))
引き続き反応液を−20℃で撹拌しつつ、単量体として1,1−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジメタクリレート55.9ml(233mmol)とメタクリル酸メチル57.7ml(543mmol)との混合物113.6mlを一括で添加したのち、2℃/分の速度で10℃に昇温した。上記混合物の添加から360分後に反応液をサンプリングした。
工程(3)における1,1−ジメチルプロパン−1,3−ジオールジメタクリレートおよびメタクリル酸メチルの消費率は100%であった。
【0123】
(工程(4))
引き続き反応液を20℃で撹拌しつつ、メタノール100mlを添加することにより、アニオン重合を停止させた。得られた溶液を10Lのメタノール中に注ぎ、重合体を沈殿させ、濾過によって回収し、100℃、30Paで乾燥し、440gの(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)(以下「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A2)」と称する)を得た。
【0124】
得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A2)のMnは35,000、Mw/Mnは1.29であった。
得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A2)をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(東京化成工業(株)製)に溶解させ、51.2質量%の感光性樹脂溶液を得た。
【0125】
[合成例3]
反応容器にビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(エポキシエステル3000A、共栄社化学(株)製)200g(420mmol)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(東京化成工業(株)製)500g、2一メチルハイドロキノン0.5g、およびジヒドロキシプロピオン酸75g(707mmol)を加え、45℃に昇温させた。この溶液にヘキサメチレンジイソシアネート84.1g(500mmol)を加え、反応温度が50℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、温度を80℃に上昇させ、6時間反応させた。この溶液にグリシジルメタクリレート165g(1.16mol)を添加後、95℃に昇温し、6時間反応させてウレタン結合を含むエポキシアクリレート(以下「エポキシアクリレート(A’1)」と称する)51.2質量%の感光性樹脂溶液を得た。
【0126】
[PETフィルムへの導電パターンの形成]
下記実施例においては、縦10mm、横100mmの長方形のPETフィルム(東洋紡製、E5000、厚さ40μm)上に、得られた導電ペーストを塗工し、100℃の乾燥オーブン内で5分間乾燥し厚さ7μmの塗工層を形成した。かかる塗工層の表面に、
図1に示す斜線部で示す透光部を有し、縦10mm、横100mmのフォトマスクを介して、露光装置PEM−6M(ユニオン光学(株)製)を用いて露光量150mJ/cm
2(波長365nm換算)で露光することで塗工層を部分的に硬化させた後、該部分的に硬化させた塗工層をトルエンに30秒間浸漬させて、未硬化部分をトルエンで除去し、次いで140℃の乾燥オーブン内で30分間加熱してさらに硬化を促進させて導電パターンを形成した。
【0127】
下記比較例においては、部分的に硬化させた塗工層を0.25%Na
2CO
3溶液に30秒間浸漬した後、未硬化部分を超純水で除去した以外は、実施例と同様にして導電パターンを形成した。
下記実施例および比較例で得られた導電パターンを備えるPETフィルム(以下「導電パターンフィルム」と称する)を以下の方法により評価した。
【0128】
[比抵抗率および屈曲性の評価]
得られた導電パターンフィルムの膜厚を、表面粗さ・輪郭形状測定機(サーフコム(登録商標)1400G、(株)東京精密製)を用いて、ランダムに3箇所の位置にて測長1mm、走査速度0.30mm/secの条件で測定し、3点の平均値として算出した。また得られた導電パターンフィルムのパターン幅(
図1中、0.40mmと記した位置に対応するパターンの長さ)を、ランダムに3箇所の位置を光学顕微鏡で観察した画像データを解析して測定し、3点の平均値として算出した。また、パターン長さ(
図1中、80mmと記した位置に対応するパターンの長さ)は定規によって測定した。
【0129】
次に、得られた導電パターンフィルムの導電パターンの端部(
図1中、XおよびYの箇所)に表面抵抗計(日置電機(株)製、RM3548)をつなぎ、表面抵抗値を測定し、以下の計算式から比抵抗率(比抵抗率1)を算出した。
比抵抗率(Ω・cm)=表面抵抗値(Ω)×膜厚(cm)×パターン幅(cm)/パターン長さ(cm)
【0130】
ついで、かかる導電パターンフィルムを、多機能版小型卓上型屈曲試験機(TCDM111LH、ユアサ工機(株)製)を用いて、揺動往復速度が120rpm、揺動角度が180°の条件で、導電パターンが内側、外側と交互になるように曲げる屈曲動作を10,000回繰り返す屈曲性試験を行った後、上記と同様に比抵抗率(比抵抗率2)を算出し、以下の計算式から比抵抗率の変化率を算出した。
比抵抗率の変化率(%)=((比抵抗率2−比抵抗率1)/比抵抗率1)×100
【0131】
また、目視により屈曲試験後の導電パターンの割れ、剥離、および断線の有無を確認した。なお、割れとは、断線には至らないが導電パターンに亀裂が入っている状態、剥離とは、導電パターンの少なくとも一部がPETフィルムから剥がれている状態、断線とは、導電パターンが複数に分裂している状態を意味する。
【0132】
(実施例1)
合成例1で得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A1)の感光性樹脂溶液を10.0gおよび光重合開始剤(B)[2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(IRGACURE(登録商標)369、チバジャパン(株)製)]1.0gをミキサー(あわとり錬太郎(登録商標)ARE−310、(株)シンキー製))で混合した。ついで、導電フィラー(C)(Ag粒子、体積平均粒子径2μm)40.9gを添加し、三本ロールミル(EXAKTM−50、EXAKT社製)を用いて混練し、51.9gの導電ペーストを得た。得られた導電ペーストの組成を表1に示す。
【0133】
得られた導電ペーストを用いて、上記方法に従い導電パターンフィルムを作製し、導電パターンの比抵抗率1を測定したところ6.4×10
-5Ω・cmであった。また屈曲性試験後の比抵抗率の変化率は3.1%で、導電パターンには割れ、剥離、および断線が生じていなかった。評価結果を表2に示す。
【0134】
(実施例2)
合成例1で得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A1)の感光性樹脂溶液の使用量を7.0gとし、光重合開始剤(B)の使用量を0.7gとした以外は実施例1と同様にして、48.6gの導電ペーストを得た。得られた導電ペーストの組成を表1に示す。
【0135】
得られた導電ペーストを用いて、上記方法に従い導電パターンフィルムを作製し、導電パターンの比抵抗率1を測定したところ5.7×10
-6Ω・cmであった。また屈曲性試験後の比抵抗率の変化率は6.5%で、導電パターンには割れ、剥離、および断線が生じていなかった。評価結果を表2に示す。
【0136】
(実施例3)
合成例1で得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A1)の感光性樹脂溶液に代えて、合成例2で得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A2)の感光性樹脂溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして、51.9gの導電ペーストを製造した。得られた導電ペーストの組成を表1に示す。
【0137】
得られた導電ペーストを用いて、上記方法に従い導電パターンフィルムを作製し、導電パターンの比抵抗率1を測定したところ6.9×10
-5Ω・cmであった。また屈曲性試験後の比抵抗率の変化率は3.3%で、導電パターンには割れ、剥離、および断線が生じていなかった。評価結果を表2に示す。
【0138】
(実施例4)
合成例1で得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A1)の感光性樹脂溶液に代えて、合成例2で得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A2)の感光性樹脂溶液を用いる以外は、実施例2と同様にして、48.6gの導電ペーストを製造した。得られた導電ペーストの組成を表1に示す。
【0139】
得られた導電ペーストを用いて、上記方法に従い導電パターンフィルムを作製し、導電パターンの比抵抗率1を測定したところ6.0×10
-6Ω・cmであった。また屈曲性試験後の比抵抗率の変化率は7.1%で、導電パターンには割れ、剥離、および断線が生じていなかった。評価結果を表2に示す。
【0140】
(比較例1)
合成例1で得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A1)の感光性樹脂溶液に代えて、合成例3で得られたエポキシアクリレート(A’1)の感光性樹脂溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして、51.9gの導電ペーストを製造した。得られた導電ペーストの組成を表1に示す。
【0141】
得られた導電ペーストを用いて、上記方法に従い導電パターンフィルムを作製し、導電パターンの比抵抗率1を測定したところ7.4×10
-5Ω・cmであった。また屈曲性試験後の比抵抗率の変化率は39%で、導電パターンには割れおよび断線は生じていなかったが、剥離が生じていた。評価結果を表2に示す。
【0142】
(比較例2)
合成例1で得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A1)の感光性樹脂溶液に代えて、合成例3で得られたエポキシアクリレート(A’1)の感光性樹脂溶液を用いる以外は、実施例2と同様にして、48.6gの導電ペーストを製造した。得られた導電ペーストの組成を表1に示す。
【0143】
得られた導電ペーストを用いて、上記方法に従い導電パターンフィルムを作製し、導電パターンの比抵抗率1を測定したところ6.9×10
-6Ω・cmであった。また屈曲性試験後の比抵抗率の変化率は88%で、導電パターンには割れ、および断線は生じていなかったが、剥離が生じていた。評価結果を表2に示す。
【0144】
実施例1〜4で得られた本発明の導電ペーストを用いた導電パターンフィルムは、屈曲性試験後の比抵抗率の変化率が小さく、かつ、導電パターンには割れ、剥離、および断線を生じなかった。このことから、本発明の導電ペーストは、導電パターンをフレキシブル基板上に形成したプリント配線板に好適である。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】