(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る基板ホルダを備えためっき装置の全体配置図である。
図1に示すように、このめっき装置25は、半導体ウェハ等の基板を収納したカセット26を搭載する2台のカセットテーブル27と、基板のオリフラ(オリエンテーションフラット)やノッチなどの位置を所定の方向に合わせるアライナ28と、載置された基板ホルダ50に対して基板の着脱を行う基板着脱部30と、めっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させるスピンドライヤ29とを備える。これらのユニットの略中央には、これらのユニット間で基板を搬送する、例えば搬送用ロボットである基板搬送装置31が配置されている。
【0022】
基板着脱部30は、レール32に沿って水平方向にスライド可能な平板状の載置プレート33を備えている。基板搬送装置31は、水平状態で載置プレート33に載置された2個の基板ホルダ50のうち、一方の基板ホルダ50と基板の受渡しを行う。その後、基板搬送装置31は、載置プレート33を水平方向にスライドさせて、他方の基板ホルダ50と基板の受渡しを行う。
【0023】
また、めっき装置25には、基板ホルダ50の保管及び仮置きを行うストッカ34と、基板を純水に浸漬させるためのプリウェット槽35と、基板の表面に形成したシード層表面の酸化膜をエッチング除去するプリソーク槽36と、基板の表面を純水で水洗する第1の水洗槽37aと、洗浄後の基板の水切りを行うブロー槽38と、第2の水洗槽37bと
、めっき部39とが配置されている。
【0024】
めっき部39は、オーバーフロー槽40と、この内部に収納された複数の銅めっきユニット41を備えている。各銅めっきユニット41は、基板を保持した基板ホルダ50を内部に収納して、銅めっき等のめっき処理を行う。なお、この例では、銅めっきについて説明するが、ニッケル、はんだ、銀、金等のめっきにおいても同様のめっき装置25を用いることができる。
【0025】
さらに、めっき装置25には、基板ホルダ50を基板とともに搬送する基板ホルダ搬送装置42が備えられている。基板ホルダ搬送装置42は、例えばリニアモータ方式であり、基板着脱部30及び上記各槽の側方に位置する。基板ホルダ搬送装置42は、基板着脱部30とストッカ34との間で基板を搬送する第1のトランスポータ43と、ストッカ34、プリウェット槽35、プリソーク槽36、水洗槽37a,37b、ブロー槽38及びめっき部39との間で基板を搬送する第2のトランスポータ44と、を有している。なお、基板ホルダ搬送装置42は、第2のトランスポータ44を備えることなく、第1のトランスポータ43のみを備えるようにしてもよい。
【0026】
また、この基板ホルダ搬送装置42のオーバーフロー槽40の側方には、各銅めっきユニット41の内部に位置しめっき液を攪拌するパドル(図示せず)を駆動するパドル駆動装置46が配置されている。
【0027】
<基板ホルダ>
図2は
図1に示しためっき装置25で使用される本実施形態に係る基板ホルダ50の概略正面図であり、
図3は
図2に示す基板ホルダのXX断面における断面図である。基板ホルダ50は、
図2に示すように、例えば塩化ビニル製で矩形平板状の第1保持部材54と、この第1保持部材54にヒンジ56を介して開閉自在に取付けられた第2保持部材60(基板保持部)とを有する。基板ホルダ50の第1保持部材54の略中央部には、基板を載置して保持するための保持面57(基板保持面)が設けられている。第2保持部材60は、保持面57に載置された基板を露出させるための開口部63を形成する縁63aを有する。
【0028】
基板ホルダ50の第1保持部材54の上端部には、基板ホルダ50を搬送したり吊下げ支持したりする際の支持部となる一対の略T字状のハンド52が連結されている。
図1に示したストッカ34内において、ストッカ34の周壁上面にハンド52を引っ掛けることで、基板ホルダ50が垂直に吊下げ支持される。また、この吊下げ支持された基板ホルダ50のハンド52を基板ホルダ搬送装置42の第1のトランスポータ43又は第2のトランスポータ44で把持して基板ホルダ50が搬送される。なお、プリウェット槽35、プリソーク槽36、水洗槽37a,37b、ブロー槽38及びめっき部39内においても、基板ホルダ50は、ハンド52を介してそれらの槽の周壁に吊下げ支持される。
【0029】
第2保持部材60は、ヒンジ56に固定された基部58と、基部58に固定されたリング状のシールホルダ62とを備えている。基板を保持するときは、まず、第2保持部材60を開いた状態で、第1保持部材54の保持面57に基板を載置し、ヒンジ56を介して第2保持部材60を閉じる。続いて、図示しないリング状の押え部を時計回りに回転させて、押え部を図示しないクランパ等と係合させて、第2保持部材60を第1保持部材54に対して締付けてロックする。第1保持部材54と第2保持部材60とがロックされると、第2保持部材60は、保持面57に載置された基板の外周を保持面57に押圧し、基板を保持する。
【0030】
基板の保持を解除するときは、第1保持部材54と第2保持部材60とがロックされた
状態において、図示しないリング状の押え部を反時計回りに回転させる。これにより、図示しない押え部と図示しないクランパとの係合を解除し、基板の保持が解除される。
【0031】
また、
図2に示すように、基板ホルダ50は、第2保持部材60のシールホルダ62上に、開口部63の径方向内側に突出し、保持面57に載置された基板の一部を遮蔽する遮蔽プレート65(遮蔽部)を有する。遮蔽プレート65は略矩形状の板であり、例えば塩化ビニル、樹脂、VITON(登録商標)等の合成樹脂から構成される。なお、遮蔽プレート65の材料としては、合成樹脂に限らず、他の誘電体を用いることもできる。
【0032】
図3に示すように、保持面57上には基板Wが載置される。基板Wの上面はシールホルダ62が保持するシール68により押圧される。これにより、基板Wが基板ホルダ50に保持される。シール68の内周面と基板Wの外縁(端部)との距離は、例えば1〜3mmである。基板ホルダ50は、基板Wの表面に形成される導電膜に給電するための給電端子69を有する。給電端子69は、シール68によりシールされた空間内で、基板Wの外周部に接触して基板Wに給電する。
【0033】
図2及び
図3に示すように、シールホルダ62は、その上面に開口部63の縁63aに沿って形成される環状の溝66を有する。溝66は、基板Wの同心円となるようにシールホルダ62上に位置する。遮蔽プレート65は、溝66に係合する突起部67(係合部)を有する。突起部67が溝66に係合することで、遮蔽プレート65はシールホルダ62上の任意の位置に固定される。また、遮蔽プレート65は、突起部67が溝66に沿って摺動することにより、開口部63の縁63aに沿って移動可能に構成される。したがって、遮蔽プレート65は、基板Wの同心円上を移動可能に構成される。なお、
図2に示される基板ホルダ50には一つの遮蔽プレート65が設けられているが、これに限らず二以上の遮蔽プレート65が基板ホルダ50に設けられていてもよい。
【0034】
遮蔽プレート65が開口部63の径方向内側に突出し、保持面57に載置された基板Wの一部を遮蔽することにより、電解めっきにおいて基板Wに加わる電場の一部を遮蔽する。これにより、遮蔽プレート65に覆われている基板Wの部分は、他の部分に比べて形成されるめっき膜厚が薄くなる。なお、遮蔽プレート65は、シールホルダ62の内周面から0.5mm以上10mm以下の範囲で開口部63の径方向内側に突出するように構成されることが好ましい。
【0035】
次に、本実施形態に係る基板ホルダ50に設けられる遮蔽プレート65の他の形態の例を説明する。
図4ないし
図6は、遮蔽プレート65の他の形態例を示す断面図である。
図4に示す遮蔽プレート65は、シールホルダ62の開口部63の保持面57側に突出する突出部65aを有する。突出部65aは、遮蔽プレート65の端部に設けられた板状体である。突出部65aの外周面(シールホルダ62及びシール68の内周面に対向する面)は、シールホルダ62及びシール68の内周面の形状に一致するように湾曲して形成される。突出部65aは、保持面57に載置された基板Wと遮蔽プレート65との距離(間隔)を小さくするので、遮蔽プレート65により覆われている基板Wの部分に形成されるめっき膜の厚さをより低減させることができる。
【0036】
図5に示す遮蔽プレート65は、
図4に示す遮蔽プレート65と同様に、シールホルダ62の開口部63の保持面57側に突出する突出部65aを有する。
図5に示す遮蔽プレート65の突出部65aは、開口部63の径方向内側の面に、保持面57に向かって厚さが小さくなるテーパ面65bを有する。このように突出部65aがテーパ面65bを有することにより、突出部65aとシールホルダ62及びシール68との境界部分に気泡が残留することを抑制することができる。また、この境界部分にめっき液が残留することも抑制することができるので、基板ホルダ50の洗浄が容易になる。
【0037】
図6に示す遮蔽プレート65は、
図4及び
図5に示す遮蔽プレート65と同様に、シールホルダ62の開口部63の保持面57側に突出する突出部65aを有する。
図6に示す遮蔽プレート65の突出部65aは、開口部63の径方向内側の面に、保持面57に向かって厚さが小さくなる湾曲テーパ面65cを有する。このように突出部65aが湾曲テーパ面65cを有することにより、突出部65aとシールホルダ62及びシール68との境界部分に気泡が残留することを抑制することができる。また、この境界部分にめっき液が残留することも抑制することができるので、基板ホルダ50の洗浄が容易になる。
【0038】
次に、遮蔽プレート65を開口部63に沿って移動させる装置及び方法について説明する。
図7は、基板ホルダ着脱装置の概略側面図である。基板ホルダ着脱装置300(遮蔽部移動機構)は、
図1に示した基板着脱部30に設けられる装置であって、主に
図2に示した基板ホルダ50の第2保持部材60を第1保持部材54にロックさせて、基板ホルダ50に基板を保持させるための装置である。
【0039】
基板ホルダ着脱装置300は、軸方向に移動可能であり且つ回転可能に構成された軸302と、軸302に固定される円盤304と、円盤304の下面に固定された円盤304よりも大径の円盤306と、を有する。円盤304の下面には、基板ホルダ50の図示しないリング状の押え部を回転させるための複数(図では2つ)のホルダロックピン310a,310bが設けられる。
【0040】
円盤304には、
図2ないし
図6に示した遮蔽プレート65を開口部63の縁63aに沿って移動させるための遮蔽プレート回転ピン314と、遮蔽プレート回転ピン314を伸縮させるためのエアシリンダ312が設けられる。遮蔽プレート回転ピン314は、円盤304の上面側から下面側に向かって円盤304を貫通して延在する。遮蔽プレート65を移動させるとき、エアシリンダ312は、
図7に示すように、遮蔽プレート回転ピン314を円盤304の下面から下方に突出させる。一方で、ホルダロックピン310a,310bが基板ホルダ50をロックさせるときは、遮蔽プレート回転ピン314がロック作業に干渉しないように、エアシリンダ312は、遮蔽プレート回転ピン314をシリンダ内部に収納する。
【0041】
図2に示した基板ホルダ50に基板Wを保持させるときは、まず、基板ホルダ着脱装置300の下方に基板ホルダ50を配置し、基板Wを保持面57に載置する。続いて、第2保持部材60の開口部63から保持面57に載置された基板Wを露出させつつ、第2保持部材60のシール68(
図4等参照)で基板Wの外周を押圧する。基板ホルダ着脱装置300は、軸302を下方に駆動させて、例えば、基板ホルダ50の図示しないリング状の押え部の上面に形成された凹部等にホルダロックピン310a,310bを挿入させる。この状態で、基板ホルダ着脱装置300の軸302が回転することにより、図示しない押え部を図示しないクランパ等と係合させて第2保持部材60を第1保持部材54に対して締め付けてロックする。なお、このとき遮蔽プレート回転ピン314は、エアシリンダ312のシリンダ内部に収納されている。
【0042】
図2ないし
図6に示した遮蔽プレート65を基板ホルダ50の開口部63に沿って移動させるときは、まず、基板ホルダ着脱装置300の下方に基板ホルダ50を配置し、エアシリンダ312が遮蔽プレート回転ピン314を円盤306の下面から下方に突出させる。続いて、基板ホルダ着脱装置300は、軸302を下方に駆動させて、例えば、遮蔽プレート65の上面に形成された図示しない凹部等に遮蔽プレート回転ピン314を挿入させる。この状態で、基板ホルダ着脱装置300の軸302が回転することにより、遮蔽プレート65が開口部63の縁63aに沿って移動し、所望の位置まで遮蔽プレート65を移動させることができる。
【0043】
なお、
図7に示した基板ホルダ着脱装置300は、一つの遮蔽プレート回転ピン314を有するように構成されているが、
図2に示した基板ホルダ50が複数の遮蔽プレート65を有する場合は、基板ホルダ着脱装置300は、遮蔽プレート65と同数の遮蔽プレート回転ピン314を有するように構成されていてもよい。
【0044】
次に、本実施形態に係る基板ホルダ50に設けられる遮蔽プレート65のさらに他の形態の例を説明する。
図8は、遮蔽プレート65のさらに他の形態例を示す断面図であり、
図9は
図8の遮蔽プレート65の平面図である。
図2ないし
図6に示した遮蔽プレート65が、シールホルダ62の開口部63の縁63aに沿って周方向にのみ移動可能に構成されているのに対して、
図8及び
図9に示す遮蔽プレート65は、シールホルダ62の開口部63の径方向にも移動可能に構成される。
【0045】
図8に示すように、この遮蔽プレート65は、開口部63の径方向内側に突出し、保持面57の一部を覆う(遮蔽する)板状体である。
図9に示すように、遮蔽プレート65は、一つ以上の(
図2は二つの)長穴65dを有し、この長穴65dは、その長手方向が開口部63の径方向と一致するように形成される。
【0046】
図8に示すように、断面L字状の周方向移動部材70が、シールホルダ62に取り付けられる。周方向移動部材70の上面には、遮蔽プレート65が長穴65dを通じてビス等の固定手段75により固定される。遮蔽プレート65は、固定手段75を緩めることにより、長穴65dに沿って開口部63の径方向に移動することができる。遮蔽プレート65は、シールホルダ62の内周面から0.5mm以上10mm以下の範囲で開口部63の径方向内側に突出するように周方向移動部材70に固定されることが好ましい。
【0047】
周方向移動部材70は、シールホルダ62の上面に形成された環状の溝66に係合する突起部70a(係合部)を有する。また、この例では、シールホルダ62は、その外周面に沿って設けられた溝71を有し、周方向移動部材70は、溝71に先端がねじ込まれるイモネジ等の固定手段72によりシールホルダ62に固定される。周方向移動部材70は、固定手段72を緩めた状態で突起部70aが溝66に沿って摺動することにより、開口部63の縁63aに沿って移動可能に構成される。したがって、遮蔽プレート65は、周方向移動部材70とともに開口部63の縁63aに沿って移動可能に構成される。また、周方向移動部材70は、所定の位置に配置された後、固定手段72を締めることにより、所定の位置に固定される。従って、遮蔽プレート65は、周方向移動部材70とともに開口部63の径方向に移動可能であり且つ開口部63の縁63aに沿って移動可能な遮蔽部材を構成する。なお、遮蔽プレート65は、
図4ないし
図6に示した突出部65aをその先端に有してもよい。
【0048】
以上で説明したように、本実施形態における基板ホルダ50は、開口部63の縁63aに沿って移動可能に構成される遮蔽プレート65を有するので、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分(例えばレジストにパターンが形成されていない部分に隣接するダイ)の近傍に遮蔽プレート65を位置させることができる。これにより、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分のめっき膜の厚さを抑制し、ひいては基板Wの膜厚の面内均一性を向上させることができる。なお、本実施形態では、処理される基板W毎に、適切な位置に遮蔽プレート65を手動で、又は基板ホルダ着脱装置300で移動することができる。一方で、遮蔽プレート65の周方向位置を予めめっき装置25の図示しない制御装置に登録しておくことで、基板W上の遮蔽すべき位置をアライナ28で読み取り、遮蔽プレート65の位置に基板W上の遮蔽すべき位置を合わせて基板ホルダ50に基板Wを載置することもできる。
【0049】
また、本実施形態における基板ホルダ50では、遮蔽プレート65が開口部63の径方向に移動可能に構成されるので、遮蔽プレート65が保持面57に載置された基板Wを覆う(遮蔽する)面積を調節することができる。このため、電解めっきにおける基板Wに加わる電場の遮蔽量を調節することができるので、基板W上のめっき膜厚を薄くさせる領域を調節することができ、基板Wの種類に応じて適切にめっき膜厚の調節をすることができる。
【0050】
<中間マスク>
次に、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分のめっき膜の厚さを抑制し得る中間マスクを備えためっき槽について説明する。
図10は
図1に示した銅めっきユニット41の概略側断面図であり、
図11は
図10に示す中間マスクの概略正面図である。
【0051】
図10に示すように、銅めっきユニット41は、基板Wを保持する基板ホルダ50とアノード82aを保持するアノードホルダ82を収容するように構成されためっき槽80と、基板Wとアノード82aに電圧を印加するめっき電源84と、基板Wとアノード82aとの間に配置された中間マスク85と、基板Wと中間マスク85の間に配置され、めっき液を撹拌するためのパドル83と、を有する。
【0052】
中間マスク85は、板状の部材であり、アノード82aから基板Wへの電場を通過させる開口87を形成する縁部86を有する。言い換えれば、縁部86は、アノード82aから基板Wへの電場の一部を遮蔽する。
図11に示すように、縁部86は、全体として略環状に形成される。縁部86は、周方向に分割されて構成され、一以上の縁部86a(第1の縁部;図では6つ)と一以上の縁部86b(第2の縁部;図では2つ)とを有する。縁部86bの内周から開口87の中心Oまでの距離R2は、縁部86aの内周から開口87の中心Oまでの距離R1よりも小さい。これにより、縁部86bが遮蔽するアノード82aから基板Wへの電場は、縁部86aが遮蔽するアノード82aから基板Wへの電場よりも大きくなる。なお、縁部86bは、縁部86aよりも、開口87の径方向内側に1mm以上10m以下の長さで突出するように形成される。
【0053】
アノード82aから基板Wへの電場の一部は、開口87の中心までの距離が比較的小さい縁部86bにより遮蔽されるので、縁部86bにより遮蔽されている基板W上の一部に形成されるめっき膜厚は、他の部分に比べて薄くなる。したがって、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分に加わる電場の一部を縁部86bが遮蔽するように中間マスク85に縁部86bを設けることで、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分のめっき膜の厚さを抑制し、ひいては基板Wの膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0054】
次に、本発明に係る他の形態の中間マスク85について説明する。
図12は、他の形態の中間マスク85の概略正面図であり、
図13は
図12に示した中間マスク85のYY断面における縁部の概略断面図の一例であり、
図14は
図12に示した中間マスク85のYY断面における縁部の概略断面図の別の例である。
【0055】
図12に示すように、この中間マスク85の開口87を形成する縁部86は、周方向に分割されて構成され、一以上の縁部86a(第1の縁部;図では6つ)と一以上の縁部86c(第2の縁部;図では2つ)とを有する。
図12に示す中間マスク85の縁部86aの内周から開口87の中心Oまでの距離は、縁部86cの内周から開口87の中心Oまでの距離と同一である。一方で、
図13に示すように、縁部86cの厚さは、縁部86aの厚さよりも、例えば1mm以上5mm以下の範囲で厚くなるように形成される。言い換えれば、この中間マスク85が
図10に示しためっき槽80内に配置された状態において、縁部86cから基板Wまでの距離は、縁部86aから基板Wまでの距離よりも小さくなる。これにより、基板Wと縁部86cとの距離(間隔)が、基板Wと縁部86aとの距離よ
りも小さくなるので、縁部86cにより遮蔽される基板Wの部分に形成される膜厚は、他の部分に比べて薄くなる。したがって、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分に加わる電場の一部を縁部86cが遮蔽するように、中間マスク85に縁部86cを設けることで、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分のめっき膜の厚さを抑制し、ひいては基板Wの膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0056】
なお、
図13に示した中間マスク85の縁部86cの厚さは全体として一様であるが、
図14に示すように、中間マスク85の縁部86cの断面形状が中央部に向かって山形になるように、縁部86cを構成してもよい。また、
図12に示した中間マスク85では、縁部86aの内周から開口87の中心Oまでの距離は、縁部86cの内周から開口87の中心Oまでの距離と同一であるが、
図11に示した中間マスク85と同様に、縁部86aの内周から開口87の中心Oまでの距離が、縁部86cの内周から開口87の中心Oまでの距離と異なるように構成することもできる。
【0057】
図15はさらに他の形態の中間マスク85の概略正面図であり、
図16は
図15に示した中間マスクのZZ断面における縁部の概略断面図である。
図15に示すように、この中間マスク85の開口87を形成する縁部86は、周方向に分割され、複数の縁部86dから構成される。複数の縁部86dは、開口87の径方向に移動可能に構成される。また、複数の縁部86dは、この中間マスク85が
図10に示しためっき槽80内に配置された状態において、基板Wに対して移動可能に構成される。
【0058】
中間マスク85は、さらに、縁部86の径方向外側にそれぞれの縁部86dに対応するエアバッグ91(駆動機構)を備える。エアバッグ91は、エアコントローラ90により膨張及び収縮可能に構成される。エアコントローラ90によりエアバッグ91内部が加圧されると、エアバッグ91は、膨張して縁部86dと接触し、縁部86dを開口87の径方向内側に移動させる。エアコントローラ90がエアバッグ91内部の圧力を大気圧に戻すと、エアバッグ91はエアバッグ91の弾性力およびめっき液の水圧により収縮する。これと同時に、縁部86dは図示しないバネ等の付勢手段により元の位置に移動される。即ち、エアバッグ91は、縁部86dの内側部86eの位置を開口87の径方向に移動させることができる。縁部86dは、開口87の径方向内側に向かって、例えば1mm以上10m以下の範囲でエアバッグ91により移動される。これにより、開口87の径方向内側に移動された縁部86dは、
図10に示したアノード82aから基板Wへの電場を他の縁部86d(第1の縁部)よりも遮蔽する第2の縁部を構成する。なお、縁部86dとエアバック91を部分的に結合させて、エアバッグ91の膨張収縮により縁部86dを直接的に移動させてもよい。
【0059】
図16に示すように、中間マスク85は、中間マスク85の裏面側(
図10で示した中間マスク85においてアノード82a側)に、それぞれの縁部86dに対応するエアバッグ92(駆動機構)を備える。エアバッグ92は、
図15に示したエアコントローラ90により膨張及び収縮可能に構成される。エアコントローラ90によりエアバッグ92内部が加圧されると、エアバッグ92は、膨張して縁部86dと接触し、縁部86dを開口87の前面側(
図10で示した中間マスク85において基板W側)に移動させる。エアコントローラ90がエアバッグ92内部の圧力を大気圧に戻すと、エアバッグ92はエアバッグ92の弾性力およびめっき液の水圧により収縮する。これと同時に、縁部86dは図示しないバネ等の付勢手段により中間マスク85の元の位置に移動される。エアバッグ92により
図10に示した基板Wに対して移動された縁部86dは、アノード82aから基板Wへの電場を他の縁部86d(第1の縁部)よりも遮蔽する第2の縁部を構成する。
【0060】
以上で説明したように、
図15及び
図16に示した中間マスク85は、縁部86が分割されて構成され、分割されたそれぞれの縁部86dがエアバッグ91により開口87の径
方向に移動可能に構成される。したがって、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分(例えばレジストにパターンが形成されていない部分に隣接するダイ)に対応する縁部86dを径方向内側に移動させることができる。これにより基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分が縁部86dにより部分的に覆われるので、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分のめっき膜の厚さを抑制し、ひいては基板Wの膜厚の面内均一性を向上させることができる。また、この中間マスク85によれば、縁部86dが基板Wを覆う(遮蔽する)面積(基板Wと重なる面積)を調節することができる。このため、電解めっきにおける基板Wに加わる電場の遮蔽量を調節することができるので、基板W上のめっき膜厚を薄くする領域を調節することができ、基板Wの種類に応じて適切にめっき膜厚の調節をすることができる。
【0061】
また、
図15及び
図16に示した中間マスク85は、縁部86が分割されて構成され、分割されたそれぞれの縁部86dがエアバッグ92により、
図10に示した基板Wに対して移動可能に構成される。したがって、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分(例えばレジストにパターンが形成されていない部分に隣接するダイ)に対応する縁部86dを基板Wに近い側に移動させることができる。これにより基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分と縁部86dとの距離が小さくなるので、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分の膜厚を他の部分に比べて薄くすることができ、ひいては基板Wの膜厚の面内均一性を向上させることができる。また、この中間マスク85によれば、それぞれの縁部86dと基板Wとの距離(間隔)を独立して調節することができるので、電解めっきにおける基板Wのそれぞれの縁部86dに対応する部分に加わる電場量を調節することができ、基板Wの種類に応じて適切にめっき膜厚の調節をすることができる。
【0062】
なお、
図15及び
図16においては、縁部86dを移動させる駆動機構としてエアバッグ91及びエアバッグ92が用いられているが、これに限らず、例えばアクチュエータ等の駆動機構が使用されてもよい。
【0063】
また、
図11ないし
図16に示したそれぞれの中間マスク85は縁部86が8つに分割されて構成されているが、これに限らず、4以上24以下に分割されていればよい。分割数が4未満であると遮蔽領域の選択性が悪化し、分割数が25以上だと分割された縁部86一つあたりの影響力が小さくなりすぎて、調整が煩雑になるからである。
【0064】
図17は、さらに他の形態の中間マスクの概略正面図であり、
図18は、
図17の中間マスクの縁部の拡大断面図である。
図17に示す中間マスク85は、
図15に示す中間マスク85と異なり、複数の縁部86d自体がエアバッグから構成される。縁部86dは、エアコントローラ90(駆動機構)により膨張及び収縮可能に構成される。縁部86dの外側部86fは中間マスク85に固定される。これにより、エアコントローラ90により縁部86d内部が加圧されると、縁部86dの内側部86eが開口87の径方向内側に移動する。エアコントローラ90が縁部86d内部の圧力を大気圧に戻すと、縁部86dは縁部86dの弾性力およびめっき液の水圧により収縮する。縁部86dの内側部86eは、開口87の径方向内側に向かって、例えば1mm以上10m以下の範囲で移動可能に構成される。これにより、開口87の径方向内側に移動された縁部86dの内側部86eは、
図10に示したアノード82aから基板Wへの電場を他の縁部86d(第1の縁部)よりも遮蔽する第2の縁部を構成する。
【0065】
図18に示すように、縁部86dは、縁部86d同士が隣接する面に折り返し部86gを有する。縁部86dの内部が加圧されることで折り返し部86gが展開して、縁部86dの内側部86eが開口87の径方向内側に向かって移動する。また、縁部86dの内部が大気圧に戻ると、再び折り返し部86gが折り返されて、縁部86dの内側部86eが径方向外側に向かって移動する。
【0066】
図17及び
図18に示した中間マスク85は、
図15に示した中間マスク85と同様の効果を奏する。なお、
図17及び
図18に示した中間マスク85は、
図16に示したエアバッグ92を備えていてもよい。これにより、縁部86dは開口87の前面側(
図10で示した中間マスク85において基板W側)にも移動することができる。
【0067】
次に、
図10に示しためっきユニット41で基板にめっきする方法について説明する。まず、
図10に示したように、めっき槽80にアノード82aと基板Wを収納する。このとき、アノード82aと基板Wとは、それぞれの面が互いに対向するように配置される。続いて、中間マスク85をアノード82aと基板Wとの間に配置する。即ち、中間マスク85の縁部86b(
図11参照)、縁部86c(
図12参照)又は、縁部86d(
図13参照)により、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分(例えばレジストにパターンが形成されていない部分に隣接するダイ)を遮蔽する。
【0068】
図11に示した形態の中間マスク85を用いる場合は、縁部86bが基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分(例えばレジストにパターンが形成されていない部分に隣接するダイ)に対応するように、中間マスク85が配置される。具体的には、アノード82a側から基板Wを見たときに、縁部86bが基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分に重なるように、中間マスク85が配置される。これにより、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分が、中間マスク85の縁部86bにより遮蔽される。
【0069】
また、
図12に示した形態の中間マスク85を用いる場合は、縁部86cが基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分(例えばレジストにパターンが形成されていない部分に隣接するダイ)に対応するように、中間マスク85が配置される。具体的には、アノード82a側から基板Wを見たときに、縁部86cが基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分に重なるように、中間マスク85が配置される。これにより、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分に印加される電場の一部が、中間マスク85の縁部86cにより遮蔽される。
【0070】
さらに、
図15に示した形態の中間マスク85を用いる場合は、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分(例えばレジストにパターンが形成されていない部分に隣接するダイ)に対応する縁部86dを、エアバッグ91により開口87の径方向内側に移動させ、且つ/又はエアバッグ92により基板Wに近い側に移動させる。これにより、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分に印加される電場の一部が、エアバッグ91及び/又はエアバッグ92により移動された中間マスク85の縁部86dにより遮蔽される。
【0071】
続いて、めっき電源84が、アノード82aと基板Wとの間に電場を印加する。このとき、
図11ないし
図13に示したいずれかの中間マスク85の縁部86aが電場を遮断するとともに、
図11に示した縁部86b、
図12に示した縁部86c、又は
図13に示した縁部86dが縁部86aよりも電場を遮断する。これにより、基板W上のめっき膜厚を薄くしたい部分の膜厚を他の部分に比べて薄くすることができ、ひいては基板Wの膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【実施例1】
【0072】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
図19は実施例1に用いられる基板の概略平面図である。実施例1においては、シリコンウェハからなる基板W上に厚さ100μmのレジスト膜を形成し、このレジスト膜にフォトリソグラフィ法によって径100μmの複数のレジスト開口部95を形成した。この基板Wのノッチ96の周辺にはレジスト開口パターンが形成されていない部分97を設けた。この基板Wを、
図2等に示した遮蔽プレート65を有する基板ホルダ50に設置した。このときの遮蔽プレート65の先端は、開口部63の径方向内側にシールホルダ62の内周面から2mm突出するように構成した
。遮蔽プレート65をシールホルダ62上で移動させて、ノッチ96の周辺のレジスト開口パターンが形成されていない部分97と一致するようにして、シールホルダ62に固定した。この基板Wを、縁部が分割されていない従来の中間マスクが設置されているめっき槽に収容し、レジスト開口部のめっき高さが50μmになるように電気めっきを行った。この電気めっきされた基板Wのダイ内のバンプ高さを、
図19の矢印98に示すようにノッチ96から反ノッチ方向(ノッチ96から基板Wの中心に向かう方向)に向かって基板Wの逆の端部まで測定した。
【0073】
比較例1として、遮蔽プレート65が設けられていない基板ホルダを使用したこと以外は実施例1と同じ条件で、基板Wに電気めっきを行った。同様に、基板Wのダイ内のバンプ高さを、
図19の矢印98に示すようにノッチ96から反ノッチ方向に向かって基板Wの逆の端部まで測定した。
【0074】
図20は実施例1の測定結果を示すグラフであり、
図21は比較例1の測定結果を示すグラフである。
図20及び
図21のグラフにおいては、横軸は基板中央からの距離(mm)を示し、縦軸はめっき高さ(μm)を示す。
図21に示すように、比較例1の測定結果では、基板Wのレジスト開口パターンが形成されていない部分97のめっき高さが他の部分に比べて高くなっている。これに対して、
図20に示すように、実施例1では、遮蔽プレート65がレジスト開口パターンが形成されていない部分97を遮蔽することにより、レジスト開口パターンが形成されていない部分97のめっき高さを抑制することができ、全体的にめっき高さが均一になるように成膜されていることが分かる。
【実施例2】
【0075】
図22は実施例2に用いられる基板の概略平面図である。実施例2においては、シリコンウェハからなる基板W上に厚さ100μmのレジスト膜を形成し、このレジスト膜にフォトリソグラフィ法によって径100μmの複数のレジスト開口部95を形成した。図示のように、基板Wは、ノッチ96の位置を0°としたときの90°及び−90°の位置にレジスト開口パターンを形成しない部分97を有する。この基板Wを、遮蔽プレート65を備えていない従来の基板ホルダに設置した。この基板Wを処理するめっき槽には、
図11に示した縁部86が縁部86a及び縁部86bに分割された中間マスク85を収容した。この中間マスク85の縁部86bは、縁部86aよりも開口87の径方向内側に4mm突出するように構成し、基板Wのレジスト開口パターンを形成していない部分97と対面するように配置した。このめっき槽において、基板Wのレジスト開口部のめっき高さが50μmになるように電気めっきを行った。この電気めっきされた基板Wのダイ内のバンプ高さを、
図22の矢印98に示すように、一方のレジスト開口パターンを形成しない部分97から他方のレジスト開口パターンを形成しない部分97まで測定した。
【0076】
比較例2として、
図11に示した中間マスク85に代えて、縁部が分割されていない従来の中間マスクを使用したこと以外は実施例2と同じ条件で、基板Wに電気めっきを行った。同様に、基板Wのダイ内のバンプ高さを、
図22の矢印98に示すように、一方のレジスト開口パターンを形成しない部分97から他方のレジスト開口パターンを形成しない部分97まで測定した。
【0077】
図23は実施例2の測定結果を示すグラフであり、
図24は比較例2の測定結果を示すグラフである。
図23及び
図24のグラフにおいては、横軸は基板中央からの距離(mm)を示し、縦軸はめっき高さ(μm)を示す。
図24に示すように、比較例2の測定結果では、基板Wのレジスト開口パターンが形成されていない部分97のめっき高さが他の部分に比べて高くなっている。これに対して、
図23に示すように、実施例2では、中間マスク85の縁部86bがレジスト開口パターンが形成されていない部分97を遮蔽することにより、レジスト開口パターンが形成されていない部分97のめっき高さを抑制するこ
とができ、全体的にめっき高さが均一になるように成膜されていることが分かる。
【0078】
表1は、実施例1、実施例2、比較例1、及び比較例2で基板Wに形成されたバンプ高さの均一性を示す。なお、バンプ高さの均一性とは、(形成されたバンプの最大高さ−形成されたバンプの最小高さ)/(バンプ高さの平均値×2)×100により得られる値である。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、遮蔽プレート65を有する基板ホルダ50を使用した実施例1では、レジスト開口パターンを形成しない部分97に近接したバンプの高さが抑制されているので、良好な均一性が得られている。一方、遮蔽プレート65を有していない従来の基板ホルダを使用した比較例1では、レジスト開口パターンを形成しない部分97に近接したバンプ高さが高くなり、均一性が悪い。
【0081】
また、分割された縁部86を有する中間マスク85を使用した実施例2では、レジスト開口パターンを形成しない部分97に近接したバンプ高さが抑制されているので、良好な均一性が得られている。一方、縁部が分割されていない従来の中間マスクを使用した比較例2では、レジスト開口パターンを形成しない部分97に近接したバンプ高さが高くなり、均一性が悪い。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。