(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電性炭素質材料が、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、または前記物質のうちの少なくとも2種の混合物から選択される、請求項7に記載の電極。
ニッケル、マンガンおよびコバルトの水酸化物、炭酸塩、オキシ水酸化物または塩基性炭酸塩を、フッ化物および少なくとも1種のリチウム塩の存在下でか焼することを含み、選択されるフッ化物がフッ化アンモニウムまたは二フッ化水素アンモニウムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態では、本発明の粒子が、少なくとも2つの、一般式(I)の混合酸化物を含む。本発明のもう一つの実施形態では、本発明の粒子が、ちょうど1つの一般式(I)の混合酸化物を含む。
【0012】
本発明の一実施形態では、本発明の粒子が、一般式(I)の混合酸化物の他には、さらなるMn含有、Co含有またはNi含有酸化物化合物を、何も含まない。本発明のもう一つの実施形態では、本発明の粒子が、一般式(I)の化合物に基づいて、例えば5〜22モル%の範囲のLi
2MnO
3を含みうる。
【0013】
本発明の一実施形態では、0.02〜0.15の範囲にある、一般式(I)の混合酸化物中の遷移金属の和に対するフッ化物のモル比を、本発明の粒子が有する。
【0014】
本発明の一実施形態では、本発明の材料が本質的に層構造を有する。すなわち本発明の材料が層状酸化物である。各結晶格子の構造は自体公知の方法、例えばX線回折または電子回折などによって、特にX線粉末回折法によって、決定することができる。
【0015】
本発明の一実施形態では、本発明の粒子が、例えばDIN ISO 9277:2003−05に従って、例えば窒素吸着による決定で、0.1〜5m
2/gの範囲のBET表面積を有しうる。
【0016】
本発明の一実施形態では、本発明の材料に、化合物(I)全体に基づいて合計2重量%まで、好ましくは合計1重量%までの、Na、K、Rb、Cs、アルカリ土類金属、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Ag、Zn、B、Al、Zr、Mo、W、Nb、Si、GaおよびGeのカチオンから選択される金属イオンをドープしてもよい。本発明の好ましい一実施形態では、本発明の材料に他の金属イオンがドープされない。
【0017】
「ドーピング」とは、本発明の材料の製造の過程で、1つ以上のステップにおいて、Na、K、Rb、Cs、アルカリ土類金属、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Ag、Zn、B、Al、Zr、Mo、W、Nb、Si、GaおよびGeのカチオンから選択される1種以上のカチオンを有する少なくとも1種の化合物を加えることを意味すると理解されるものとする。出発材料のわずかな汚染物によって導入される不純物、例えば、本発明の材料に基づいて0.1〜100ppmの範囲のナトリウムイオンは、本発明においてはドーピングと言わないものとする。
【0018】
本発明の一実施形態では、本発明の粒子が、最大1重量%までの硫酸塩または炭酸塩を含む。本発明のもう一つの実施形態では、本発明の材料が、検出可能な比率の硫酸塩および/または炭酸塩を一切、有さない。
【0019】
本発明の一実施形態では、一般式(I)の化合物が、結晶性粉末の形態にある。
【0020】
本発明の一実施形態では、本発明の粒子が本質的に球状である。本発明の一実施形態では、本発明の粒子が、一次粒子の本質的に球状の二次凝集体である。二次凝集体の粒径(D50)は1〜30μmの範囲、好ましくは2〜25μmの範囲、より好ましくは4〜20μmの範囲にありうる。本発明において粒径(D50)とは、例えば光散乱法によって、または電子顕微鏡像の評価によって決定することができる平均粒径(重量平均)を指す。
【0021】
「本質的に球状」とは、本発明の粒子が厳密に球状であることを意味するか、さもなければ丸い形状を有し、その場合は最大点での直径と最小点での直径との相違が10%を上回らないことを意味すると、理解されるものとする。
【0022】
本発明の粒子は1種以上のフッ化物で完全にまたは部分的に被覆されているが、これは、本発明の粒子が1種以上のフッ化物によるコーティングを有することを意味する。コーティングは、本発明の粒子の一部であるとみなされるものとする。
【0023】
本発明の一実施形態では、本発明の粒子の外表面の少なくとも5%がフッ化物で覆われる。これは平均値を意味する。好ましい実施形態では、本発明の粒子の外表面の10〜90%がフッ化物で覆われる。被覆率は、例えば光電子分光法(XPS)または電子顕微鏡法(SEM、TEM)によって決定することができる。
【0024】
本発明の粒子を被覆しているフッ化物は、結晶型であっても、アモルファス型であってもよい。
【0025】
本発明の一実施形態では、フッ化物が、LiF、NiF
2、CoF
2、MnF
2、ならびに場合によってはMn、NiおよびCoから選択される少なくとも2つの金属の混合フッ化物、ならびにNi、MnおよびCoから選択される1種以上の金属のオキシフッ化物から選択される。LiF、NiF
2、CoF
2およびMnF
2から選択されるフッ化物は好ましい。
【0026】
本発明の一実施形態では、本発明の粒子が、フッ化物の混合物で、例えばLiF、NiF
2、CoF
2、MnF
2、ならびにNi、MnおよびCoから選択される1種以上の金属のオキシフッ化物から選択される2つ以上のフッ化物で、完全にまたは部分的に被覆される。
【0027】
本発明の一実施形態では、フッ化物が、単結晶、またはアモルファス層もしくは結晶層の形態で、本発明の粒子の外表面上に配置される。
【0028】
本発明の一実施形態では、フッ化物が、本発明の粒子の外表面上にあるが、細孔内にはない。本発明のもう一つの実施形態では、フッ化物が外表面上だけでなく、本発明の粒子の細孔内にも、とりわけ一次粒子の凝集の結果として生じる細孔内にもある。
【0029】
本発明の粒子を利用すれば、良好な性質を有する電気化学セルを製造することが可能である。より具体的には、一般式(I)の化合物を使って製造された電気化学セルは、3.0Vと4.6Vの間で元素リチウムに対してサイクルした場合に高い放電容量を有し、問題の電気化学セルは、サイクルの過程において、電位の低下を(仮にあったとしても)ごくわずかしか示さないことが観察される。元素リチウムに対して3.0Vと4.6Vの間および25mA/g本発明材料の電流量でのサイクルの過程において、平均放電電位は、3.5Vを上回るはずである。
【0030】
本発明はさらに、本発明の粒子を含む電極を提供する。
【0031】
本発明においては、本発明の粒子を材料(A)と呼ぶ場合もある。
【0032】
本発明の一実施形態では、本発明の粒子が、本発明の電極において、導電性炭素質材料との複合材料として使用される。例えば本発明の粒子を導電性炭素質材料で処理(例えば被覆)することができる。そのような複合材料もまた、本発明の主題の一部を形成する。
【0033】
導電性炭素質材料は、例えばグラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、または前述の物質のうちの少なくとも2つの混合物から選択することができる。本発明においては、導電性炭素質材料をカーボン(B)と略称する場合もある。
【0034】
本発明の一実施形態では、導電性炭素質材料がカーボンブラックである。カーボンブラックは、例えば、ランプブラック、ファーネスブラック、フレームブラック(flame black)、サーマルブラック、アセチレンブラックおよび工業用ブラック(industrial black)から選択することができる。カーボンブラックは、不純物、例えば炭化水素、とりわけ芳香族炭化水素、または酸素含有化合物もしくは酸素含有基、例えばOH基を含みうる。加えて、カーボンブラックには、硫黄含有不純物または鉄含有不純物も考えられる。
【0035】
一変形実施形態では、導電性炭素質材料が部分酸化カーボンブラックである。
【0036】
本発明の一実施形態では、導電性炭素質材料がカーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブ(CNTと略記)、例えば単層カーボンナノチューブ(SW CNT)、また好ましくは多層カーボンナノチューブ(MW CNT)は、自体公知である。その製造方法といくつかの性質は、例えばA.Jessらにより、Chemie Ingenieur Technik 2006,78,94−100に記載されている。
【0037】
本発明の一実施形態では、カーボンナノチューブが、0.4〜50nm、好ましくは1〜25nmの範囲の直径を有する。
【0038】
本発明の一実施形態では、カーボンナノチューブが、10nm〜1mm、好ましくは100nm〜500nmの範囲の長さを有する。
【0039】
カーボンナノチューブは自体公知の方法で調製することができる。例えば、揮発性炭素化合物、例えばメタンもしくは一酸化炭素、アセチレンもしくはエチレン、または揮発性炭素化合物の混合物、例えば合成ガスを、1種以上の還元剤、例えば水素および/またはさらにもう一つの気体、例えば窒素の存在下で分解することができる。もう一つの適切な気体混合物は、一酸化炭素とエチレンの混合物である。分解に適した温度は、例えば400〜1000℃、好ましくは500〜800℃の範囲にある。分解に適した圧力条件は、例えば、標準圧力から100バールまで、好ましくは10バールまでの範囲にある。
【0040】
単層または多層カーボンナノチューブは、例えば、アーク放電(light arc)時の、具体的には分解触媒の存在下または非存在下における、炭素化合物の分解によって得ることができる。
【0041】
一実施形態では、一つまたは複数の揮発性炭素含有化合物の分解が、分解触媒、例えばFe、Co、または好ましくはNiの存在下で行われる。
【0042】
本発明においてグラフェンとは、単層グラファイトとの構造類似性を有する、ほぼ理想的にまたは理想的に二次元の炭素六方晶を意味すると理解される。
【0043】
本発明の一実施形態では、本発明の電極において、導電性炭素質材料に対する本発明の粒子の重量比が、200:1〜5:1、好ましくは100:1〜10:1の範囲にある。
【0044】
本発明のさらにもう一つの態様は、本発明の粒子、少なくとも1種の導電性炭素質材料および少なくとも1種のバインダーを含む電極、とりわけカソードである。本発明の粒子、少なくとも1種の導電性炭素質材料および少なくとも1種のバインダーは、組み合わされて電極材料を形成し、これもまた、本発明の主題の一部を形成する。
【0045】
本発明の粒子および導電性炭素質材料は上述のとおりである。
【0046】
適切なバインダーは、好ましくは有機(コ)ポリマーから選択される。適切な(コ)ポリマー、すなわちホモポリマーまたはコポリマーは、例えばアニオン、カチオンまたはフリーラジカル(共)重合によって得ることができる(コ)ポリマー、特にポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ならびにエチレン、プロピレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンから選択される少なくとも2つのコモノマーのコポリマーから選択することができる。ポリプロピレンも適切である。また、ポリイソプレンおよびポリアクリレートも適切である。ポリアクリロニトリルは特に好ましい。
【0047】
本発明においてポリアクリロニトリルは、ポリアクリロニトリルホモポリマーを意味するだけでなく、アクリロニトリルと1,3−ブタジエンまたはスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。ポリアクリロニトリルホモポリマーは好ましい。
【0048】
本発明においてポリエチレンは、ホモポリエチレンを意味するだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたエチレンと、最大50モル%の少なくとも1種のさらなるコモノマー、例えばプロピレン、ブチレン(1−ブテン)、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ペンテン、そしてまたイソブテンなどのα−オレフィン、ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、そしてまた(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸のC
1−C
10−アルキルエステル、特にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、そしてまたマレイン酸、無水マレイン酸および無水イタコン酸とを含む、エチレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリエチレンはHDPEまたはLDPEであることができる。
【0049】
本発明においてポリプロピレンは、ホモポリプロピレンを意味するだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたプロピレンと、最大50モル%の少なくとも1種のさらなるコモノマー、例えばエチレンならびにブチレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンおよび1−ペンテンなどのα−オレフィンとを含む、プロピレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリプロピレンは好ましくはアイソタクティックまたは本質的にアイソタクティックなポリプロピレンである。
【0050】
本発明において、ポリスチレンは、スチレンのホモポリマーを意味するだけでなく、アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC
1−C
10−アルキルエステル、ジビニルベンゼン、特に1,3−ジビニルベンゼン、1,2−ジフェニルエチレンおよびα−メチルスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。
【0051】
もう一つの好ましいバインダーはポリブタジエンである。
【0052】
他の適切なバインダーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリイミドおよびポリビニルアルコールから選択される。
【0053】
本発明の一実施形態では、バインダーが、50,000g/モルから1,000,000g/モルまで、好ましくは500,000g/モルまでの範囲の平均分子量M
wを有する(コ)ポリマーから選択される。
【0054】
バインダーは架橋(コ)ポリマーであっても、無架橋(コ)ポリマーであってもよい。
【0055】
本発明の特に好ましい実施形態では、バインダーが、ハロゲン化(コ)ポリマーから、特にフッ素化(コ)ポリマーから選択される。ハロゲン化またはフッ素化(コ)ポリマーとは、1分子につき少なくとも1つのハロゲン原子または少なくとも1つのフッ素原子を有する、好ましくは1分子につき少なくとも2つのハロゲン原子または少なくとも2つのフッ素原子を有する、少なくとも1種の(共)重合された(コ)モノマーを含む(コ)ポリマーを意味すると理解される。
【0056】
例として、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフッ化物(PVdF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP)、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレンコポリマー、パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレンコポリマーおよびエチレン−クロロフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。
【0057】
適切なバインダーは、とりわけポリビニルアルコールおよびハロゲン化(コ)ポリマー、例えばポリ塩化ビニルまたはポリ塩化ビニリデン、特にフッ化(コ)ポリマー、例えばポリフッ化ビニル、特にポリフッ化ビニリデンおよびポリテトラフルオロエチレンである。
【0058】
一実施形態では、本発明の電極において、導電性炭素質材料が、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンまたは前述の物質のうちの少なくとも2つの混合物から選択される。
【0059】
本発明の一実施形態では、本発明の電極材料が、
(A)60〜98重量%、好ましくは70〜96重量%の範囲の本発明の粒子、
(B)1〜25重量%、好ましくは2〜20重量%の範囲の導電性炭素質材料、
(C)1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%の範囲のバインダー
を含む。
【0060】
本発明の電極のジオメトリは広い範囲から選択することができる。本発明の電極は、例えば10μm〜250μm、好ましくは20〜130μmの範囲の厚さを有する薄層状に構成させることが好ましい。
【0061】
本発明の一実施形態では、本発明の電極が、ホイル、例えば金属ホイル、特にアルミニウムホイル、または無処理であってもよいしシリコーン処理されていてもよいポリマーフィルム、例えばポリエステルフィルムを含む。
【0062】
本発明はさらに、電気化学セルにおける本発明の電極材料または本発明の電極の使用を提供する。本発明はさらに、本発明の電極材料または本発明の電極を使用する電気化学セルの製造方法を提供する。本発明はさらに、少なくとも1つの本発明の電極材料または少なくとも1つの本発明の電極を含む電気化学セルを提供する。
【0063】
定義上、本発明の電気化学セルにおける本発明の電極はカソードとして機能する。本発明の電気化学セルは、本発明においてアノードと定義される対電極を含み、この対電極は、例えば炭素アノード、とりわけグラファイトアノード、リチウムアノード、シリコンアノードまたはチタン酸リチウムアノードなどであることができる。
【0064】
本発明の電気化学セルは、例えば電池または蓄電池であることができる。
【0065】
本発明の電気化学セルは、アノードおよび本発明の電極に加えて、さらなる構成要素、例えば導電性塩、非水溶媒、セパレータ、出力導体、例えば金属製または合金製のもの、ならびにケーブル接続部および筐体を含みうる。
【0066】
本発明の一実施形態では、本発明の電気セルが、室温で液状であっても固形であってもよい少なくとも1種の非水溶媒、好ましくはポリマー、環状または非環状エーテル、環状および非環状アセタール、ならびに環状または非環状有機カーボネートから選択されるものを含む。
【0067】
適切なポリマーの例は、とりわけポリアルキレングリコール、好ましくはポリ−C
1−C
4−アルキレングリコール、特にポリエチレングリコールである。これらのポリエチレングリコールは、最大20モル%の1種以上のC
1−C
4−アルキレングリコールを、共重合された形態で含みうる。ポリアルキレングリコールは、好ましくは、メチルまたはエチルで両端がキャップされたポリアルキレングリコールである。
【0068】
適切なポリアルキレングリコール、特に適切なポリエチレングリコールの分子量M
wは、少なくとも400g/モルでありうる。
【0069】
適切なポリアルキレングリコール、特に適切なポリエチレングリコールの分子量M
wは、5,000,000g/モルまで、好ましくは2,000,000g/モルまででありうる。
【0070】
適切な非環状エーテルの例は、例えばジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンであり、1,2−ジメトキシエタンは好ましい。
【0071】
適切な環状エーテルの例はテトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンである。
【0072】
適切な非環状アセタールの例は、例えばジメトキシメタン、ジエトキシメタン、1,1−ジメトキシエタンおよび1,1−ジエトキシエタンである。
【0073】
適切な環状アセタールの例は、1,3−ジオキサン、特に1,3−ジオキソランである。
【0074】
適切な非環状有機カーボネートの例は、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸ジエチルである。
【0075】
適切な環状有機カーボネートの例は、一般式(II)および(III)
【化1】
[式中、R
1、R
2およびR
3は同じであっても異なってもよく、水素およびC
1−C
4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル(この場合、R
2とR
3が両方ともtert−ブチルであることはないことが好ましい)から選択される]
の化合物である。
【0076】
特に好ましい実施形態では、R
1がメチルであり、かつR
2とR
3がそれぞれ水素であるか、R
1、R
2およびR
3がそれぞれ水素である。
【0077】
もう一つの好ましい環状有機カーボネートは炭酸ビニレン、式(IV)である。
【0079】
溶媒は、好ましくは、無水状態と呼ばれる状態で、すなわち、例えばカール・フィッシャー滴定によって決定することができる1ppm〜30ppmの範囲の水分量で、使用される。ppmは重量ppmを指す。
【0080】
本発明の電気化学セルは1種以上の導電性塩をさらに含む。適切な導電性塩はとりわけリチウム塩である。適切なリチウム塩の例は、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiC(C
nF
2n+1SO
2)
3、リチウムイミド、例えばLiN(C
nF
2n+1SO
2)
2[式中、nは1〜20の範囲の整数である]、LiN(SO
2F)
2、Li
2SiF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、および一般式(C
nF
2n+1SO
2)
mXLi[式中、mは次に定義するとおりである:
Xが酸素および硫黄から選択される場合、m=1、
Xが窒素およびリンから選択される場合、m=2、および
Xが炭素およびケイ素から選択される場合、m=3]
の塩である。
【0081】
好ましい導電性塩は、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4から選択され、LiPF
6およびLiN(CF
3SO
2)
2は特に好ましい。
【0082】
本発明の一実施形態では、本発明の電気化学セルが、電極を物理的に分離する1つ以上のセパレータを含む。適切なセパレータは、金属リチウムに対する反応性がないポリマーフィルム、特に多孔性ポリマーフィルムである。セパレータに特に適した材料は、ポリオレフィン、特にフィルム状の多孔性ポリエチレン、およびフィルム状の多孔性ポリプロピレンである。
【0083】
ポリオレフィン製、特にポリエチレン製またはポリプロピレン製のセパレータは、35〜45%の範囲の空隙率を有しうる。適切な細孔径は例えば30〜500nmの範囲にある。
【0084】
本発明のもう一つの実施形態では、セパレータを、無機粒子が充填されたPET不織布から選択することができる。そのようなセパレータは40〜55%の範囲の空隙率を有しうる。適切な細孔径は例えば80〜750nmの範囲にある。
【0085】
本発明のもう一つの実施形態では、ガラス繊維紙製のセパレータが選択される。
【0086】
本発明の電気化学セルは、筐体をさらに含み、この筐体は、例えば立方体または円柱状など、所望する任意の形状を有しうる。一変形実施形態では、使用される筐体が、袋状に仕上げられた金属ホイルである。
【0087】
本発明の電気化学セルは高い電位を与え、高いエネルギー密度および良好な安定性が顕著である。より具体的には、本発明の電気化学セルは、元素リチウムに対して4.3V以上でサイクルした場合に、高い放電容量を有し、本発明の電気化学セルは、サイクルの過程において、電位の低下を(仮にあったとしても)ごくわずかしか示さないことが観察される。2.5Vと4.55Vの間および95mA/g本発明材料の電流量でのサイクルの過程において、平均放電電位は3.5Vを上回るはずである。
【0088】
本発明の電気化学セルは、例えば直列接続または並列接続で、互いに組み合わせることができる。直列接続は好ましい。
【0089】
本発明はさらに、デバイス、特にモバイルデバイスにおける本発明の電気化学セルの使用を提供する。モバイルデバイスの例は、自走車、例えば自動車、二輪車、航空機、またはウォータービークル、例えばボートまたは船である。モバイルデバイスの他の例には、携帯するもの、例えばコンピュータ、特にラップトップ型機器、電話機、または電動工具、例えば建築用のもの、特にドリル、電池式ドリルまたは電池式鋲打機がある。
【0090】
ユニットにおける本発明の電気化学セルの使用により、とりわけ高い体積エネルギー密度という利点が得られる。
【0091】
本発明はさらに、電極の製造方法であって、
(A)一般式(I)
Li
1+aNi
bCo
cMn
dO
z (I)
[式中、変数はそれぞれ次のとおりに定義される:
bは0.25〜0.45、好ましくは0.37〜0.42の範囲の数字である;
cは0.15〜0.25、好ましくは0.17〜0.22の範囲の数字である;
d=1−b−c;
(1+a)は1.05〜1.20、好ましくは1.10〜1.15の範囲にある;
1.8+a≦z≦2.2+a]
の混合酸化物を含み、1種以上のフッ化物で完全にまたは好ましくは部分的に被覆されている粒子、および
(B)少なくとも1種の導電性炭素質材料、および
(C)少なくとも1種のバインダー
を、1つ以上のステップで互いに混合すること、および場合によっては、それらを
(D)少なくとも1種の金属ホイルまたはポリマーフィルム
に塗布すること
を含む方法を提供する。
【0092】
本発明の粒子、導電性炭素質材料またはカーボン(B)およびバインダー(C)は、上に定義したとおりである。
【0093】
混合は1つ以上のステップで実施することができる。
【0094】
本発明の方法の一変形実施形態では、本発明の粒子、カーボン(B)およびバインダー(C)が、例えばミル、特にボールミルにおいて、1ステップで混合される。次に、こうして得ることができる混合物を担体、例えば金属ホイルまたはポリマーフィルム(D)に、薄層状に塗布する。電気化学セルへの組込み前または組込み時に、担体を取り除くことができる。別の変形実施形態では、担体が保持される。
【0095】
本発明の方法のもう一つの変形実施形態では、本発明の粒子、カーボン(B)およびバインダー(C)が、例えばミル、特にボールミルにおいて、複数のステップで混合される。例えば、まず、本発明の粒子とカーボン(B)を互いに混合することが可能である。次にバインダー(C)との混合を行う。次いで、こうして得ることができる混合物を担体、例えば金属ホイルまたはポリマーフィルム(D)に、薄層状に塗布する。電気化学セルへの組込み前または組込み時に、担体を取り除くことができる。別の変形実施形態では、担体が取り除かれない。
【0096】
本発明の方法の一変形実施形態では、本発明の粒子、カーボン(B)およびバインダー(C)が、水または有機溶媒(例えばN−メチルピロリドンまたはアセトン)中で混合される。こうして得ることができる懸濁液を担体、例えば金属ホイルまたはポリマーフィルム(D)に、薄層状に塗布した後、熱処理によって溶媒を除去する。電気化学セルへの組込み前または組込み時に、担体を取り除くことができる。別の変形実施形態では、担体が取り除かれない。
【0097】
本発明において、薄層は、例えば2μmから250μmまでの範囲の厚さを有しうる。
【0098】
機械的安定性を改良するために、電極は、熱的に、または好ましくは機械的に処理、例えば圧搾またはカレンダー加工することができる。
【0099】
本発明の方法は、本発明の電極材料およびそこから得ることができる電極の製造に極めて適している。
【0100】
本発明はさらに、少なくとも1つの一般式(I)
Li
1+aNi
bCo
cMn
dO
z (I)
[式中、変数はそれぞれ次のとおりに定義される:
bは0.25〜0.45、好ましくは0.37〜0.42の範囲の数字である;
cは0.15〜0.25、好ましくは0.17〜0.22の範囲の数字である;
d=1−b−c;
(1+a)は1.05〜1.20、好ましくは1.10〜1.15の範囲にある;
1.8+a≦z≦2.2+a]
の混合酸化物を含み、1種以上のフッ化物で完全にまたは部分的に被覆されている粒子と、
少なくとも1種の導電性炭素質材料(カーボン(B)という)
とを含む、複合材料を提供する。
【0101】
本発明の複合材料では、本発明の粒子が、カーボン(B)で処理(例えば被覆)されている。
【0102】
本発明の一実施形態では、本発明の複合材料において、本発明の粒子とカーボン(B)とが、98:1〜12:5、好ましくは48:1〜7:2の範囲の重量比で存在する。
【0103】
本発明の複合材料は、本発明の電極材料の製造に、とりわけ適切している。その製造方法は上述のとおりであり、やはり本発明の主題の一部を形成する。
【0104】
本発明はさらに、本発明の粒子の製造方法を提供し、これを本発明の合成方法ともいう。本発明の合成方法は、ニッケル、マンガンおよびコバルトの水酸化物、炭酸塩、オキシ水酸化物または塩基性炭酸塩を、フッ化物および少なくとも1種のリチウム塩の存在下でか焼することによって行うことができる。
【0105】
具体的には、手順は、遷移金属Ni、CoおよびMnを所望の比で含み、場合によってはドーパントを含む前駆体を、まず製造すること、次に上述のようにか焼することでありうる。好ましい変形実施形態では、手順が、塩基性であってもよい混合炭酸塩または混合オキシ水酸化物の沈殿によって、前駆体を製造することである。第2ステップでは、リチウム化合物との、好ましくは少なくとも1種のリチウム塩との、例えば水酸化リチウムとの、またはより好ましくはLi
2CO
3との、そして少なくとも1種のフッ化物との混合が、まず実施される。次に、か焼が、好ましくは875〜950℃で3〜12時間、例えば気流下で行われる。
【0106】
本合成方法の一実施形態では、か焼が875〜950℃の範囲の最高温度で実施される。
【0107】
本発明の一実施形態では、選択されるフッ化物が、フッ化アンモニウムもしくは二フッ化水素アンモニウム、またはフッ化アンモニウムと二フッ化水素アンモニウムの混合物である。
【実施例】
【0109】
一般的備考:パーセントで表される数字は、別段の言明がある場合を除き、重量パーセントである。溶解した塩の量の記載は、溶液のkg数に基づく。
【0110】
I.出発材料の調製
I.1−炭酸リチウム
市販のLi
2CO
3をその使用前に105℃で16時間にわたって乾燥してから、50μmを上回る直径を有する粒子を、ふるい分けによって取り除いた。
【0111】
I.2−水酸化物(前駆体)の調製
NiSO
4、CoSO
4およびMnSO
4の溶液を、アンモニアおよびNaOHの水溶液と、激しく撹拌しながら、連続反応器における滞留時間が3〜18時間になるような供給速度で、55℃で混ぜることにより、Ni
0.4Co
0.2Mn
0.4(OH)
2を加えた。Ni
0.4Co
0.2Mn
0.4(OH)
2の球状粒子が析出した。形成した混合金属酸化物/水酸化物をろ別した。
【0112】
II.本発明の材料および比較用材料の調製
II.1−比較用材料C−M.1の調製
NCM−424、Li/金属=1.13
Ni
0.4Co
0.2Mn
0.4(OH)
2を、105℃で16時間にわたり、空気下で乾燥した。
【0113】
まず、めのう乳鉢に6.34gのLi
2CO
3(I.1によるもの)を投入し、それを、13.85gの乾燥Ni
0.4Co
0.2Mn
0.4(OH)
2と20分間にわたって混和した。その後、こうして得ることができる混合物を、次の温度プロファイルを実行することで、マッフル炉中、空気下でか焼した:
最初に、温度を、いずれの場合も、3℃/分ずつ室温から350℃まで上昇させた。加熱を350℃で4時間にわたって実施した。次に、675℃まで昇温し、この過程では、いずれの場合も、3℃/分ずつ温度を上昇させた。加熱を675℃で4時間にわたって実施した。次に、900℃まで昇温し、この過程では、いずれの場合も、3℃/分ずつ温度を上昇させた。か焼は900℃で6時間にわたって実施した。加熱およびか焼の全体にわたって、マッフル炉に空気を通した(100リットル/時間)。
【0114】
か焼の終了後に冷却を行った(冷却速度:0.5K/分)。これにより、比較用材料C−M.1が得られ、それを、後に使用するまで、窒素下に貯蔵した。
【0115】
II.2−本発明の材料M.2の調製
NCM−424、Li/金属=1.13、0.02モルのF
まず、めのう乳鉢に6.34gのLi
2CO
3(I.1によるもの)を投入し、それを、13.85gの乾燥Ni
0.4Co
0.2Mn
0.4(OH)
2と10分間にわたって混和した。その後、0.13gのNH
4Fを加え、その混合物を再び10分間にわたって混合した。その後、こうして得ることができる混合物を、次の温度プロファイルを実行することで、マッフル炉中、空気下でか焼した:
最初に、温度を、いずれの場合も、3℃/分ずつ室温から350℃まで上昇させた。加熱を350℃で4時間にわたって実施した。次に、675℃まで昇温し、この過程では、いずれの場合も、3℃/分ずつ温度を上昇させた。加熱を675℃で4時間にわたって実施した。次に、900℃まで昇温し、この過程では、いずれの場合も、3℃/分ずつ温度を上昇させた。か焼は900℃で6時間にわたって実施した。加熱およびか焼の全体にわたって、マッフル炉に空気を通した(100リットル/時間)。
【0116】
か焼の終了後に冷却を行った(冷却速度:0.5K/分)。これにより、本発明の材料M.2が得られ、それを、後に使用するまで、窒素下に貯蔵した。
【0117】
II.3−本発明の材料M.3の調製
NCM−424、Li/金属=1.13、0.1モルのF
まず、めのう乳鉢に6.34gのLi
2CO
3(I.1によるもの)を投入し、それを、13.85gの乾燥Ni
0.4Co
0.2Mn
0.4(OH)
2と10分間にわたって混和した。その後、0.57gのNH
4Fを加え、その混合物を再び10分間にわたって混合した。その後、こうして得ることができる混合物を、次の温度プロファイルを実行することで、マッフル炉中、空気下でか焼した:
最初に、温度を、いずれの場合も、3℃/分ずつ室温から350℃まで上昇させた。加熱を350℃で4時間にわたって実施した。次に、675℃まで昇温し、この過程では、いずれの場合も、3℃/分ずつ温度を上昇させた。加熱を675℃で4時間にわたって実施した。次に、900℃まで昇温し、この過程では、いずれの場合も、3℃/分ずつ温度を上昇させた。か焼は900℃で6時間にわたって実施した。加熱およびか焼の全体にわたって、マッフル炉に空気を通した(100リットル/時間)。
【0118】
か焼の終了後に冷却を行った(冷却速度:0.5K/分)。これにより、本発明の材料M.3が得られ、それを、後に使用するまで、窒素下に貯蔵した。
【0119】
II.4−本発明の材料M.4の調製
NCM−424、Li/金属=1.13、0.2モルのF
まず、めのう乳鉢に6.34gのLi
2CO
3(I.1によるもの)を投入し、それを、13.85gの乾燥Ni
0.4Co
0.2Mn
0.4(OH)
2と10分間にわたって混和した。その後、1.14gのNH
4Fを加え、その混合物を再び10分間にわたって混合した。その後、こうして得ることができる混合物を、次の温度プロファイルを実行することで、マッフル炉中、空気下でか焼した:
最初に、温度を、いずれの場合も、3℃/分ずつ室温から350℃まで上昇させた。加熱を350℃で4時間にわたって実施した。次に、675℃まで昇温し、この過程では、いずれの場合も、3℃/分ずつ温度を上昇させた。加熱を675℃で4時間にわたって実施した。次に、900℃まで昇温し、この過程では、いずれの場合も、3℃/分ずつ温度を上昇させた。か焼は900℃で6時間にわたって実施した。加熱およびか焼の全体にわたって、マッフル炉に空気を通した(100リットル/時間)。
【0120】
か焼の終了後に冷却を行った(冷却速度:0.5K/分)。これにより、本発明の材料M.4が得られ、それを、後に使用するまで、窒素下に貯蔵した。
【0121】
II.5−本発明の材料M.5の調製
NCM−424、Li/金属=1.2、0.1モルのF
まず、めのう乳鉢に6.74gのLi
2CO
3(I.1によるもの)を投入し、それを、13.85gの乾燥Ni
0.4Co
0.2Mn
0.4(OH)
2と10分間にわたって混和した。その後、0.57gのNH
4Fを加え、その混合物を再び10分間にわたって混合した。その後、こうして得ることができる混合物を、次の温度プロファイルを実行することで、マッフル炉中、空気下でか焼した:
最初に、温度を、いずれの場合も、3℃/分ずつ室温から350℃まで上昇させた。加熱を350℃で4時間にわたって実施した。次に、675℃まで昇温し、この過程では、いずれの場合も、3℃/分ずつ温度を上昇させた。加熱を675℃で4時間にわたって実施した。次に、900℃まで昇温し、この過程では、いずれの場合も、3℃/分ずつ温度を上昇させた。か焼は900℃で6時間にわたって実施した。加熱およびか焼の全体にわたって、マッフル炉に空気を通した(100リットル/時間)。
【0122】
か焼の終了後に冷却を行った(冷却速度:0.5K/分)。これにより、本発明の材料M.5が得られ、それを、後に使用するまで、窒素下に貯蔵した。
【0123】
III.電気化学的分析
III.1−本発明のハーフセルによる分析
カソード(Kat−hz−2)を製造するために、次に挙げるものをねじぶた式容器中で互いに混合した:
88%M.2、
6%ポリ二フッ化ビニリデン(「PVdF」)、Arkema GroupからKynar Flex(登録商標)2801として市販されているもの、
3%カーボンブラック、BET表面積62m
2/g、Timcalから「Super P Li」として市販されているもの、
3%グラファイト、TimcalからKS6として市販されているもの。
【0124】
撹拌しながら十分量のN−メチルピロリドン(NMP)を加え、その混合物を、粘稠でダマのないペーストが得られるまで、ウルトラタラックスで撹拌した。
【0125】
次に、こうして得られたペーストを、厚さ20μmのアルミニウムホイルにナイフコーティングし、真空乾燥棚中、120℃で16時間乾燥した。乾燥後の塗布量は1.1mg/cm
2だった。次に、円形ディスク状の切片を打ち抜いた(面積:3cm
2)。これにより、本発明のカソード(Kat−hz−2)が得られた。
【0126】
アノード(An−hz−1):リチウムディスク(面積:3cm
2)を打ち抜いた。これにより、アノード(An−hz−1)が得られた。
【0127】
使用した試験セルは
図1の装置である。セルの組み立てでは、
図1の概略図に従って、下から上向きに組み立てた。
図1では、アノード側が上部にあり、カソード側が底部にある。
【0128】
図1の符号は、
1、1’−ボルト
2、2’−ナット
3、3’−シールリング−それぞれ2つ。それぞれ2つ目のいくらか小さい方のシールリングは、ここには図示されていない。
4−らせんばね
5−ステンレス鋼製の出力導体
6−筐体
を意味する。
【0129】
カソード(Kat−hz−2)をカソード側のボルト1’に適用した。次に、ガラス繊維から構成されるセパレータ(セパレータの厚さ:0.5mm)をカソード(Kat−hz−2)上に置いた。電解質をセパレータにたらした。アノード(An−hz−1)を濡れたセパレータ上に置いた。使用した出力導体5は、アノードに直接適用したステンレス鋼板である。次に、シール3および3’を加えて、試験セルのパーツを螺合した。らせんばね4として構成された鋼ばねを使用することと、アノードボルト1によるねじ込み接続が生じる圧力とによって、電気的接触が確保された。
【0130】
本発明の材料M.3〜M.5または比較用材料C−M.1に基づく本発明のセルを同様に作製した。
【0131】
使用した電解質は、炭酸エチルメチル/炭酸ジエチル(体積比1:1)中のLiPF
6の1M溶液である。
【0132】
これによって本発明の電気化学セルが得られ、それを25℃で(具体的にはセルの電位範囲:3.0V〜4.3Vまたは3.0V〜4.6Vで)試験した。
【0133】
次のサイクルプログラムを実行した:
充電0.1C、放電0.1C−2回
充電0.2C、放電0.2C−5回
充電0.2C、放電0.4C−1回
充電0.2C、放電0.8C−1回
充電0.2C、放電1.6C−1回
充電0.2C、放電3.2C−1回
充電0.2C、放電6.4C−1回
充電0.1C、放電0.1C−2回(または1回)
充電0.2C、放電0.2C−5回
充電0.2C、放電1C−1回
充電0.4C、放電1C−1回
充電1C、放電1C−53回
充電0.2C、放電0.2C−3回
充電1C、放電1C−53回
充電0.2C、放電0.2C−3回。
【0134】
急速放電時のハーフセルにおける容量損失は極めて小さかった。
【0135】
III.2−本発明のフルセルによる分析
フルセルの製造:
カソード(Kat−vz−2)を製造するために、次に挙げるものをねじぶた式容器中で互いに混合した:
85.2%M.2
8.3%ポリ二フッ化ビニリデン(「PVdF」)、Arkema GroupからKynar Flex(登録商標)2801として市販されているもの、
3.2%カーボンブラック、BET表面積62m
2/g、Timcalから「Super P Li」として市販されているもの、
3.3%グラファイト、TimcalからKS6として市販されているもの。
【0136】
撹拌しながら十分量のN−メチルピロリドン(NMP)を加え、その混合物を、粘稠でダマのないペーストが得られるまで、ウルトラタラックスで撹拌した。
【0137】
次に、こうして得られたペーストを、厚さ20μmのアルミニウムホイルにナイフコーティングし、真空乾燥棚中、120℃で16時間乾燥した。乾燥後の塗布量は1.1mg/cm
2だった。次に、円形ディスク状の切片を打ち抜いた(面積:1.13cm
2)。これにより、本発明のカソード(Kat−vz−2)が得られた。
【0138】
電気化学試験は「スウェージロック(Swagelok)」セルで行った。使用した電解質は、炭酸エチルメチル/炭酸ジエチル(体積比1:1)中のLiPF
6の1M溶液である。セパレータ:ガラス繊維。アノード:グラファイト。温度:25℃。セルの電位範囲:2.50V〜4.525V。サイクルプログラム:0.1C(第1および第2サイクル)、0.5C(第3サイクルから)。1C=190mA/g。
【0139】
結果:
表1によるフルセルの容量損失は次のように算出した:70サイクル後と2サイクル後の平均容量の差を、70サイクル後の平均容量で割り、100を掛けることによって、容量損失(「劣化」)を得る。
【0140】
【表1】