【文献】
BOYER, J. et al.,Tetrahedron,1983年,Vol. 39, No. 1,pp. 117-122
【文献】
LEE, K. et al.,Synthesis,1991年,pp. 213-214
【文献】
HUET, F. et al.,Tetrahedron Letters,1981年,Vol. 22, No. 37,pp. 3585-3588
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一般式(III)で示されるホスホネートの基R8およびR9は、互いに独立してそれぞれ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたはイソプロポキシ基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の意味において、用語「香料」とは、一般式(I)で示されるプロ・フレグランスを合成するための一般式(II)で示されるケトンを意味するのではなく、光照射時にプロ・フレグランスから放出される化合物を意味する。これにより、本発明の方法は、放出される香料が出発化合物として使用されているWO 2011/101179 A1に記載の方法と区別される。
【0015】
本発明の好ましい態様では、一般式(II)で示されるケトンは、少なくとも1つの半環状または環外二重結合を有する。
【0016】
これまで、一般式(I)で示されるプロ・フレグランスに、少なくとも1つの環状二重結合および少なくとも1つの半環状または環外二重結合を有する香料を選択的に貯蔵することは不可能であった。そのようなプロ・フレグランスの、先行技術から知られている製造方法のヒドロホウ素化は、好ましくは、立体障害が最も小さい二重結合において起こるからである。一方、本発明の方法により、放出される香料の半環状または環外二重結合の数にかかわらず、一般式(I)で示される所望のプロ・フレグランスを選択的に製造することができる。
【0017】
本発明の更に好ましい態様では、一般式(I)で示されるケトンの架橋部−CH−R7−Q−R6−は炭化水素である。
【0018】
一般式(II)で示される上記ケトンに関する香料(ここで、一般式(II)で示されるケトンのカルボニル基はメチレンまたはメチン基である)は、その高蒸気圧を特徴としており、しばしば低い官能化度を有するので通常のキャリヤー媒体と化学結合することは困難である。本発明の方法の結果として、今日では、長期にわたって目的に応じて、そのような香料を放出する利用可能なプロ・フレグランスを製造することができる。
【0019】
本発明の特に好ましい態様では、一般式(II)で示されるケトンはジヒドロカルボンである。
【0020】
本発明の方法では、光照射時にリモネンを放出する一般式(I)で示されるプロ・フレグランスがジヒドロカルボンから得られる。リモネンは、洗剤および洗浄剤の分野で最も重要な香料の1つである。リモネンの香りはしばしば、消費者にとって清潔/清浄と同義である爽やかさと関連付けられる。
【0021】
本発明の更に好ましい態様では、一般式(III)で示されるホスホネートの基R8およびR9は、互いに独立してそれぞれ、メトキシ、エトキシ、ブトキシまたはイソプロポキシ基である。
【0022】
これらの基R8およびR9を有するホスホネートは、ホスホネートの良好な溶解性と安定性との良好な妥協点、低い立体要求および良好な反応性をもたらす。
【0023】
本発明の更に好ましい態様では、基R1〜R5は、互いに独立してそれぞれ、水素、メチル基またはメトキシ基を示し、メトキシ基が特に好ましい。
【0024】
これらの基R1〜R5を有するニトリルは、商業的に入手可能であるか、または容易に合成することができ、プロ・フレグランスの吸収スペクトルに有利に影響を及ぼす。基R1〜R5を適当に選択することにより、好ましくは日光、または市販発光素子を照射した際の貯蔵香料の放出速度を上昇または低下させることができる。
【0025】
本発明の別の好ましい態様では、水素化剤はアルカリ金属水素化ホウ素塩からなる群から選択され、水素化ホウ素ナトリウムが特に好ましい。
【0026】
アルカリ金属水素化ホウ素塩、特に水素化ホウ素ナトリウムは、固体であるために容易に取扱うことができ、α,β−不飽和ケトン(V)の半環状二重結合を選択的に水素化する。
【0027】
本発明の別の対象は、
a)一般式(III)で示されるホスホネートの存在下でジヒドロカルボンと一般式(IV)で示されるベンゾニトリルとを反応させ、次いで、
b)工程a)で得たα,β−不飽和ケトンを選択的に水素化して、一般式(VI)で示されるケトンを生成する
ことによって製造される、一般式(VI):
【化6】
[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、互いに独立してそれぞれ、水素、−NO
2、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルコキシ基、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルキル基、C
1〜15のシクロアルキル、アシル、アリールまたはヘテロアリール基、−OH、−NH
2、ハロゲン、−NH−アルキル、−N(アルキル)
2または−N
+(アルキル)
3を示すか、或いはR1およびR2、またはR2およびR3は、架橋している置換または非置換のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリールまたは複素環式基を示す。]
で示されるケトンである。
【0028】
一般式(VI)で示されるケトンは、貯蔵香料(リモネン)が多くの香料組成物の最も重要な基剤成分の1つなので、香料に関連する観点から特に関心が持たれている。遊離リモネンは、炭素および水素からもっぱらなり、揮発性であり、環状二重結合に加えて環外二重結合も有している。そのため、一般式(VI)で示されるケトンとして、WO 2011/101179 A1の方法を用いてリモネンを意図的に貯蔵することはこれまで不可能であった。
【0029】
本発明の別の対象は、一般式(I):
【化7】
[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、互いに独立してそれぞれ、水素、−NO
2、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルコキシ基、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルキル基、C
1〜15のシクロアルキル、アシル、アリールまたはヘテロアリール基、−OH、−NH
2、ハロゲン、−NH−アルキル、−N(アルキル)
2または−N
+(アルキル)
3を示すか、或いはR1およびR2、またはR2およびR3は、架橋している置換または非置換のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリールまたは複素環式基を示し、
R6およびR7は、互いに独立して、第二級、第三級または第四級炭素原子を示し、
Qは、R6およびR7を架橋しているC
1〜10置換または非置換基を示す。]
で示されるケトンを含んでなる製品であって、前記ケトンは、
a)一般式(II):
【化8】
[式中、基R6、R7およびQは、一般式(I)と同一である。]
で示されるケトンを、
一般式(III):
【化9】
[式中、R8およびR9は、互いに独立してそれぞれ、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルコキシ基である。]
で示されるホスホネートの存在下で、
一般式(IV):
【化10】
[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、一般式(I)と同一である。]
で示されるベンゾニトリルと反応させ、次いで、
b)工程a)で得た一般式(V):
【化11】
[式中、基R1〜R7およびQは、一般式(I)と同一である。]
で示されるα,β−不飽和ケトンを選択的に水素化して、一般式(I)で示されるケトンを生成する
ことを特徴とする方法によって製造される、製品である。
【0030】
一般式(I)で示されるケトンを含んでなる製品は、プロ・フレグランスに貯蔵されている香料が、好ましくは日光、または市販発光素子の照射まで放出されないので、長期貯蔵時間後であっても快い芳香印象を提供する。従って、香料の尚早な揮発は防止される。
【0031】
本発明の好ましい態様では、製品は、洗剤または洗浄剤、化粧品、接着剤または印刷用インクである。
【0032】
本発明の更に好ましい態様では、製品において使用される一般式(I)で示されるケトンは、一般式(VI)で示されるケトンである。
【0033】
消費者は明らかに、特に洗剤または洗浄剤において、爽やかな芳香印象を望む。一般式(VI)で示されるケトンはリモネン貯蔵化合物であり、消費者はリモネンの香りを爽やかさと関連付けるので、このケトンを含有する洗剤または洗浄剤は特に有利である。
【0034】
本発明の更に好ましい態様では、剤は、剤全体に基づいて、0.0001〜10重量%、有利には0.0005〜5重量%、より有利には0.001〜3重量%、特に0.005〜2重量%の量で、一般式(I)で示されるケトンを含んでなる。
【0035】
一般式(I)で示されるケトンは、それに対応する香料よりかなり低い蒸気圧を有するので、長期にわたる芳香効果を達成するために、香料自体より少量のプロ・フレグランスを使用すればよく、これは、生態学的および経済的観点から有利である。
【0036】
本発明の別の対象は、洗剤または洗浄剤、化粧品、接着剤或いは印刷用インクの芳香印象を持続させるための、洗剤または洗浄剤、化粧品、接着剤或いは印刷用インクにおける、本発明の方法によって製造され、一般式(I):
【化12】
[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、互いに独立してそれぞれ、水素、−NO
2、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルコキシ基、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルキル基、C
1〜15のシクロアルキル、アシル、アリールまたはヘテロアリール基、−OH、−NH
2、ハロゲン、−NH−アルキル、−N(アルキル)
2または−N
+(アルキル)
3を示すか、或いはR1およびR2、またはR2およびR3は、架橋している置換または非置換のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリールまたは複素環式基を示し、
R6およびR7は、互いに独立して、第二級、第三級または第四級炭素原子を示し、
Qは、R6およびR7を架橋しているC
1〜10置換または非置換基を示す。]
で示されるケトンの使用である。
【0037】
本発明の別の対象は、洗剤または洗浄剤、化粧品、接着剤或いは印刷用インクで処理された表面において芳香印象を持続させるための、本発明の方法によって製造され、一般式(I):
【化13】
[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、互いに独立してそれぞれ、水素、−NO
2、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルコキシ基、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルキル基、C
1〜15のシクロアルキル、アシル、アリールまたはヘテロアリール基、−OH、−NH
2、ハロゲン、−NH−アルキル、−N(アルキル)
2または−N
+(アルキル)
3を示すか、或いはR1およびR2、またはR2およびR3は、架橋している置換または非置換のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリールまたは複素環式基を示し、
R6およびR7は、互いに独立して、第二級、第三級または第四級炭素原子を示し、
Qは、R6およびR7を架橋しているC
1〜10置換または非置換基を示す。]
で示されるケトンの使用である。
【0038】
本発明は、とりわけ実施例に基づいて、後に、より詳細に説明される。
【0039】
本発明の一般式(I)で示されるケトンの製造方法は、二段階法に関する。まず、一般式(III)で示されるホスホネートの存在下、一般式(II)で示されるケトンを、一般式(IV)で示されるベンゾニトリルと反応させ、次いで、得られた一般式(V)で示されるα,β−不飽和ケトンを選択的に水素化して、一般式(I)で示されるケトンを生成する。
【0040】
一般式(II)で示されるケトンと、一般式(III)で示されるホスホネートおよび一般式(IV)で示されるニトリルとの反応は、好ましくは、溶媒中で行う。適当な溶媒は、極性非プロトン性溶媒であり、その例は、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、エチレングリコールジメチルエーテル(DM)またはそれらの混合物である。特にTHF、ジエチルエーテルおよびDMEが、本発明の意味において特に好ましい溶媒である。
【0041】
反応は、好ましくは塩基の存在下で行う。使用される塩基は、当業者に知られており、一般式(III)で示されるホスホネートを脱プロトン化できる塩基であってよい。好ましくは、強塩基が使用され、その例は、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属ビス(トリメチルシリル)アミド、アルカリ金属アルコラートまたはn−ブチルリチウムであるが、塩基はここに挙げた例に限定されない。本発明の意味において特に好ましいものは、n−ブチルリチウムである。
【0042】
反応温度は、好ましくは−100℃〜100℃であり、個々の反応体の反応性に応じて調節する。例えば、反応溶液の温度は、初期に−78℃であり、反応中に、例えば室温(20〜25℃)に徐々に上昇させてよい。
【0043】
一般式(IV)で示されるニトリルは、基R1、R2、R3、R4およびR5が、互いに独立してそれぞれ、水素、−NO
2、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルコキシ基、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルキル基、C
1〜15のシクロアルキル、アシル、アリールまたはヘテロアリール基、−OH、−NH
2、ハロゲン、−NH−アルキル、−N(アルキル)
2または−N
+(アルキル)
3であるか、或いはR1およびR2、またはR2およびR3が、架橋している置換または非置換のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリールまたは複素環式基を示す場合に好ましい。
【0044】
本発明の更に好ましい態様では、5つのアリール置換基R1、R2、R3、R4およびR5のうち4つが水素を示す。好ましくは、R1、R2、R4およびR5が水素を示し、パラ位の置換基R3がハロゲン原子、特に−F、−Cl、−Brまたは−I、NO
2、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルコキシ基、或いは直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルキル基を示す。本発明の最も好ましい態様では、R3は、−Cl、−Br、NO
2、或いはC
1〜4のアルキル基またはアルコキシ基を示す。直鎖または分岐、置換または非置換のアルキル基は、好ましくはメチルまたはエチル基であり、および/または直鎖または分岐、置換または非置換のアルコキシ基は、好ましくはメトキシ、エトキシ、イソプロポキシまたはtert−ブトキシであり、メトキシ基が最も好ましい。
【0045】
パラ位での置換R3は、芳香環の電子構造がここで最も効果的に変性され得、それによって、一般式(I)で示されるケトンの吸収最大値がある波長に容易に適合され得るので、特に好ましい。
【0046】
R1、R2、R3、R4およびR5が水素を示す、一般式(I)で示されるケトンも同様に好ましい。
【0047】
一般式(IV)で示されるニトリルは、一般式(III)で示されるホスホネートに関して、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:2〜2:1、特に好ましくは1:1.5〜1.5:1の比で使用される。
【0048】
一般式(II)で示されるケトンは、基R6およびR7が、互いに独立して、第二級、第三級または第四級炭素原子を示し、QがR6およびR7を架橋しているC1〜10置換または非置換基を示す場合に好ましい。
【0049】
本発明の更に好ましい態様では、式(II)中のR6およびR7は、互いに独立して、第二級または第三級炭素原子を示す。本発明の最も好ましい態様では、2つの基R6およびR7の1つは第二級炭素原子を示し、もう1つの基R6またはR7は第三級炭素原子を示す。
【0050】
本発明の更に好ましい態様では、QはR6およびR7を架橋している置換または非置換基を示し、R6およびR7を架橋しているQ部は、四員環、五員環、六員環、七員環または八員環が存在するように選択される。Qは、五員環または六員環が存在するように、R6およびR7を架橋しているQ部が選択される場合に特に好ましい。
【0051】
本発明の更に好ましい態様では、一般式(II)で示されるケトンは、少なくとも1つの半環状または環外二重結合を有する。二重結合間の十分な選択性を達成することがしばしば不可能であるか、または半環状または環外二重結合により香料が選択的に貯蔵されるので、少なくとも1つの環状二重結合を有する香料の、この環状二重結合による貯蔵(ここで、香料は、少なくとも1つの更なる半環状または環外二重結合を有する)は特定の課題を提起する。これらの望ましくない異性体は、多成分香油混合物の芳香印象が明らかに変化し得るようには、日光または市販発光素子の照射時に全く分解しないか、または少なくとも十分な速度では分解しない。一方、更なる半環状または環外二重結合の数および化学的性質にもかかわらず、本発明の方法によって、少なくとも1つの環状二重結合を有する香料を、その環状二重結合により選択的に貯蔵することが可能となる。
【0052】
一般式(II)で示されるケトンの架橋部−CH−R7−Q−R6−は、先に記載したように、好ましくは炭化水素である。
【0053】
本発明の最も好ましい態様では、一般式(II)で示されるケトンはジヒドロカルボンである。
【0054】
一般式(II)で示されるケトンは、一般式(III)で示されるホスホネートに関して、好ましくは1:20〜20:1、より好ましくは1:10〜10:1、特に好ましくは1:5〜5:1、最も好ましくは1:2〜2:1の比で使用される。
【0055】
得られた一般式(V)で示されるα,β−不飽和ケトンは、好ましくは、当業者に知られている蒸留、結晶化および/またはクロマトグラフ分離法によって精製する。
【0056】
一般式(V)で示されるα,β−不飽和ケトンは、好ましくは、触媒およびアルカリ金属水素化ホウ素塩の存在下で水素化され、一般式(I)で示されるケトンが選択的に生成される。触媒は好ましくは、先行技術から十分知られているような、活性炭に吸着されたパラジウムである。水素化ホウ素ナトリウムが、特に好ましいアルカリ金属水素化ホウ素塩である。
【0057】
水素化は、好ましくは溶媒中で行う。適当な溶媒は、例えば、アルコール、水、カルボン酸エステル、ハロゲンアルカン、芳香族溶媒およびそれらの混合物からなる群から選択することができ、トルエンが、本発明の意味において特に好ましい溶媒である。
【0058】
一般式(V)で示されるα,β−不飽和ケトンの水素化は、好ましくは、室温(20〜25℃)および標準圧(0.9〜1.1bar)で行う。しかしながら場合により、より低い温度またはより高い温度および/または特により高い圧力で、水素化を行うことが好ましい。
【0059】
本発明の別の対象は、
a)一般式(III)で示されるホスホネートの存在下、ジヒドロカルボンを一般式(IV)で示されるベンゾニトリルと反応させ、次いで
b)工程a)で得たα,β−不飽和ケトンを選択的に水素化して一般式(VI)で示されるケトンを生成する
ことによって得られる一般式(VI)で示されるケトンである。
【0060】
これまで、一般式(VI)で示されるケトンを選択的に製造することは不可能であった。しかしながら、そのようなケトンは、貯蔵香料がリモネンであるので、香料に関連する観点から特に関心が持たれている。リモネンは、多成分香油混合物のための最も重要な基剤成分の1つであり、清潔と関連付けられる爽やかな芳香印象を消費者にもたらす。
【0061】
本発明の別の対象は、
一般式(I):
【化14】
[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、互いに独立してそれぞれ、水素、−NO
2、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルコキシ基、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルキル基、C
1〜15のシクロアルキル、アシル、アリールまたはヘテロアリール基、−OH、−NH
2、ハロゲン、−NH−アルキル、−N(アルキル)
2または−N
+(アルキル)
3を示すか、或いはR1およびR2、またはR2およびR3は、架橋している置換または非置換のシクロアルキル、シクロアルケニル、アリールまたは複素環式基を示し、
R6およびR7は、互いに独立して、第二級、第三級または第四級炭素原子を示し、
Qは、R6およびR7を架橋しているC
1〜10置換または非置換基を示す。]
で示される少なくとも1つの化合物を含んでなる製品であって、前記化合物は、
a)一般式(II):
【化15】
[式中、基R6、R7およびQは、一般式(I)と同一である。]
で示されるケトンを、
一般式(III):
【化16】
[式中、R8およびR9は、互いに独立してそれぞれ、直鎖または分岐、置換または非置換のC
1〜15アルコキシ基である。]
で示されるホスホネートの存在下で、
一般式(IV):
【化17】
[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、一般式(I)と同一である。]
で示されるベンゾニトリルと反応させ、次いで、
b)工程a)で得た一般式(V):
【化18】
[式中、基R1〜R7およびQは、一般式(I)と同一である。]
で示されるα,β−不飽和ケトンを選択的に水素化して、一般式(I)で示されるケトンを生成する
ことを特徴とする方法によって製造される、製品である。
【0062】
本発明の好ましい態様では、製品は洗剤または洗浄剤、化粧品、接着剤または印刷用インクであり、洗剤または洗浄剤および化粧品が特に好ましい。
【0063】
本発明の好ましい態様では、そのような製品は、製品全体に基づいて、0.0001〜10重量%、有利には0.0005〜5重量%、より有利には0.001〜3重量%、特に0.005〜2重量%の量で、一般式(I)で示されるケトンを含有する。
【0064】
本発明の好ましい態様では、洗剤または洗浄剤、化粧品、接着剤または印刷用インクのような、一般式(I)で示されるケトンを含有する製品は、少なくとも1つの更なる香料を含有する。好ましく使用される香料または香油は特に限定されない。例えば、各種のエステル、エーテル、アルデヒド(芳香性アルデヒド)、ケトン(芳香性ケトン)、アルコール、炭化水素、酸、炭酸エステル、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、飽和および/または不飽和炭化水素およびそれらの混合物の合成または天然香料組成物を、香料として好ましく使用することができる。
【0065】
快い香りの知覚をもたらすために典型的に使用される通常の芳香性アルデヒドまたは芳香性ケトンの全てを、芳香性アルデヒドまたは芳香性ケトンとして使用することができる。当業者には一般に、適当な芳香性アルデヒドおよび芳香性ケトンはよく知られている。芳香性ケトンは、望ましい香りまたは爽やかさの知覚を付与できるケトンの全てを包含し得る。異なったケトンの混合物を使用することもできる。使用してよいケトンは、例えば、α−ダマスコン、δ−ダマスコン、イソダマスコン、カルボン、γ−メチルイオノン、イソEスーパー、2,4,4,7−テトラメチル−オクト−6−エン−3−オン、ベンジルアセトン、β−ダマスコン、ダマセノン、メチルジヒドロジャスモネート、メチルセドリロン、へジオンおよびそれらの混合物である。適当な芳香性アルデヒドは、芳香性ケトンに対応する、所望の香りまたは爽やかさの知覚を付与する任意のアルデヒドであり得る。それらは、個々のアルデヒドまたはアルデヒド混合物であってよい。適当なアルデヒドは、例えば、メロナール、トリプラール、リグストラール、アドキサール、リリアールなどである。芳香性アルデヒドおよび芳香性ケトンは、脂肪族、脂環式、芳香族のエチレン性不飽和構造、またはこれらの構造の組み合わせを有してよい。更に、別のヘテロ原子または多環式構造が存在してよい。構造は、ヒドロキシルまたはアミノ基のような適当な置換基を有してよい。例えば、エステル型の適当な香料は、酢酸ベンジル、フェノキシエチルイソブチレート、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテートなどである。炭化水素型の香料化合物は、例えばリモネンおよびピネンのようなテルペンである。エーテル型の適当な香料は、例えばベンジルエチルエーテルおよびアンブロキサンである。適当な芳香性アルコールは、例えば、10−ウンデセン−1−オール、2,6−ジメチルヘプタン−2−オール、2−メチルブタノール、2−メチルペンタノール、2−フェノキシエタノール、2−フェニルプロパノールなどである。香料または香油は、植物源から得られるもののような天然香料混合物であってもよい。香料または香油は、アンゼリカ油、アニス油、アルニカ花油などのような精油であってもよい。洗剤または洗浄剤、化粧品、接着剤または印刷用インクのような製品中の、少なくとも1つの更なる香料の総量は、製品全体に基づいて、好ましくは0.001〜5重量%、有利には0.01〜4重量%、より有利には0.1〜3重量%、最も好ましくは0.5〜2重量%である。好ましくは、様々な上記香料種から選択される異なった香料の混合物を使用する。そのような混合物は一緒に、魅力的な芳香ノートをもたらす。
【0066】
本発明の好ましい態様では、洗剤または洗浄剤、化粧品、接着剤または印刷用インクのような製品は、少なくとも1つの界面活性剤を含有する。界面活性剤は、好ましくは、アニオン性、カチオン性、非イオン性、双性イオン性、両性の界面活性剤およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0067】
好ましい製品は固体または液体であってよく、液体の製品、特に洗剤または洗浄剤或いは更なる洗濯物ケア製品が好ましい。特に製品が洗剤または洗浄剤である場合は、製品が、アニオン性、非イオン性、双性イオン性および両性の界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含有することが好ましい。特に製品が柔軟洗浄剤(2−イン−1)である場合は、製品が、柔軟成分、およびアニオン性、非イオン性、双性イオン性および両性の界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含有することが好ましい。更なる洗濯物ケア製品は、しみまたはひどい汚れが付いた場合に、洗濯前に洗濯物を目的に応じて前処理するために使用される。更なる洗濯物ケア製品は、下洗い用洗剤、つけおき洗剤またはカラーランリムーバー、およびしみ抜き剤を包含する。
【0068】
特に、製品が布地柔軟剤であるならば、製品が柔軟成分を含有することが好ましい。布地柔軟剤は、通常の布地洗浄法の最後の工程(濯ぎサイクル)で布地ともっぱら接触し、従って、可能な限り多量の香料が布地に付着し、後続工程で香料が除去されるリスクを伴わないならば、製品として好ましい。柔軟成分が、少なくとも1つのアルキル鎖がエステルまたはアミド基により中断されているアルキル化第四級アンモニウム化合物であることが最も好ましい。例えば、柔軟成分は、第四級アンモニウム化合物、例えば、モノアルキル(アルケニル)トリメチルアンモニウム化合物、ジアルキル(アルケニル)ジメチルアンモニウム化合物、脂肪酸とアルカノールアミンとのモノ−、ジ−またはトリエステルを包含する。使用してよい更なる柔軟成分は、四級化タンパク質水解物またはプロトン化アミンである。更に、カチオン性ポリマーもまた、適当な柔軟成分である。ポリ四級化ポリマー(例えば、BASF社製Luviquat(登録商標)Care)およびキチン系カチオン性バイオポリマーおよびその誘導体、例えばChitosan(登録商標)(製造業者:Cognis)の商品名で市販されているポリマーを使用することもできる。別の適当な柔軟成分は、プロトン化または四級化ポリアミンを含む。特に好ましい柔軟成分は、少なくとも1つのアルキル鎖がエステル基および/またはアミド基により中断されているアルキル化第四級アンモニウム化合物である。N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N(ジタルグアシルエチル)アンモニウムメトスルフェートまたはビス−(パルミトイルオキシエチル)ヒドロキシエチルメチルアンモニウムメトスルフェートが最も好ましい。
【0069】
製品、特に布地柔軟剤としての製品は、非イオン性柔軟成分、例えば、特に、ポリオキシアルキレングリセロールアルカノエート、ポリブチレン、長鎖脂肪酸、エトキシル化脂肪酸エタノールアミド、アルキルポリグルコシド、特にソルビタンモノ−、ジ−およびトリエステル、並びにポリカルボン酸の脂肪酸エステルを含有してもよい。柔軟成分は、有利には、製品としての布地柔軟剤中に、0.1〜80重量%、通常は1〜40重量%、好ましくは2〜20重量%、特に3〜15重量%の量で存在し、少なくとも1つの香料または異なった香料の混合物は、有利には、0.1〜20重量%、好ましくは1〜13重量%、特に2〜8重量%の量で存在し、これらの量はそれぞれ、製品の総量に基づく。
【0070】
製品は、場合により、更なる成分として1つ以上の非イオン性界面活性剤を含有してよい。洗剤に通常使用されている非イオン性界面活性剤を使用することができる。
【0071】
また、製品、特に洗剤または洗浄剤としての製品は、当業者に知られている更なる有利な成分を更に含有することが好ましい。例えば、製品、特に洗剤または洗浄剤は、界面活性剤および/または柔軟化化合物に加えて、製品の適用関連特性および/または審美性を更に改善する更なる成分を含有してよい。本発明の範囲では、好ましい製品は、ビルダー、漂白剤、漂白活性剤、酵素、電解質、非水性溶媒、pH調整剤、プロ・フレグランス、蛍光剤、染料、ヒドロトピック(hydrotopic)、抑泡剤、シリコーン油、再沈着防止剤、蛍光増白剤、グレーイング阻害剤、収縮阻害剤、しわ防止剤、色移り阻害剤、抗菌活性剤、殺菌剤、殺真菌剤、酸化防止剤、防腐剤、防蝕剤、帯電防止剤、苦味剤、アイロン助剤、防虫剤および含浸剤、膨潤剤および防滑剤、中性充填剤塩および紫外線吸収剤からなる群から選択される1つ以上の物質を更に含有する。特に、シリケート、ケイ酸アルミニウム、例えば、特に、ゼオライト、カーボネート、有機ジ−およびポリカルボン酸の塩、並びにこれらの物質の混合物を、製品中に存在してよいビルダーとして挙げることができる。
【0072】
製品は、例えば硬質表面を洗浄するための、洗浄剤として使用することができる。製品は、例えば手でまたは自動食器洗浄機で食器を洗うために使用される、食器洗浄剤であってよい。製品は、硬質表面、例えば、家具表面、タイル、壁および床仕上げ材を洗浄するために使用される、通常の工業用または家庭用洗浄剤であってもよい。食器に加えて、可能な硬質表面は、家庭および工業における、特にガラス、セラミック、プラスチック、木材または金属で作られた、残りの硬質表面の全てであってもよい。他の製品の全てと同様に、これらは固体または液体組成物であり得る。固体組成物は、粉末、顆粒、押出品、ペレット、タブレット、或いは加圧および/または溶融成形体として存在してよい。液体組成物は、溶液、エマルション、分散体、懸濁液、マイクロエマルション、ゲルまたはペーストであってよい。
【0073】
固体の製品、つまり洗剤または洗浄剤の製造は、困難ではなく、基本的に既知の方法で、例えば噴霧乾燥または造粒により、行うことができる。その際、必要に応じて、任意の過酸化化合物および任意の漂白触媒を後に添加してよい。特に650g/L〜950g/Lの範囲の増大した嵩密度を有する製品を製造するためには、押出工程を含む方法が好ましい。液体製品の製造もまた、困難ではなく、同様に既知の方法で行うことができる。プロ・フレグランスの配合は、特に、他の香料と一緒に行うことができる。
【0074】
本発明の別の対象は、洗剤または洗浄剤、化粧品、接着剤または印刷用インクの芳香印象を持続させるための、洗剤または洗浄剤、化粧品、接着剤または印刷用インクにおける、本発明の方法によって製造され、一般式(I)で示されるケトンの使用である。上記製品において、一般式(I)で示されるケトンを使用することにより、長期にわたって、上記製品の他の成分の存在し得る不快臭が効果的にマスクされる。
【0075】
本発明の更に別の対象は、洗剤または洗浄剤、化粧品、接着剤または印刷用インクで処理された表面の芳香印象を持続させるための、本発明の方法によって製造され、一般式(I)で示されるケトンの使用である。一般式(I)で示されるケトンは、ケトンで処理された硬質または軟質表面で長時間の芳香印象を生じ、消費者はこれを、快い爽やかなものとして感じ、特に洗剤または洗浄剤において清潔および清浄と関連付ける。
【実施例】
【0076】
実施例
ジエチルメチルホスホネートの製造
【化19】
17.4mL(100mmol、1eq)の亜リン酸トリエチルおよび11.3mL(180mmol、1.8eq)のヨードメタンをマイクロ波バイアルに導入し、密閉した。5分以内に混合物を50Wの電力で120℃に加熱し、この温度を更に5分間維持した。次いで、発現した過剰ヨードメタンおよびヨードエタンを高真空下40℃で除去し、14.9g(98%)のジエチルメチルホスホネートを得た。
【0077】
M (C
5H
13O
3P) = 152.13 g/mol
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz): δ[ppm] = 3.65-3.53 (m, CH
2由来4×H), 0.97 (d, J = 17.5 Hz, P上CH
3由来3×H), 0.83 (t, J = 7.2 Hz, Et由来3×H)。
13C-NMR (CDCl
3, 125 MHz): δ[ppm] = 60.3 (2×CH
2), 15.4 (2×CH
3), 10.1 (1×CH
3)。
31P-NMR (CDCl
3, 200 MHz): δ[ppm] = 31.2 (1×P)。
MS (EtOAc, El): m/z [%] = 152 [M
+] (4%), 137 (9%), 125 (86%), 123 (13%), 109 (9%), 108 (24%), 107 (24%), 97 (100%), 93 (6%), 91 (6%), 81 (18%), 80 (35%), 79 (89%), 65 (14%)。
【0078】
1−ベンゾイルメチレンメンテンの製造
【化20】
3.9mL(26.3mmol、1eq)のジエチルメチルホスホネートを、130mLのTHFに溶解し、溶液を−78℃に冷却し、20.0mL(31.6mmol、1.2eq)のn−BuLi(c=1.6mol/L)を滴加し、混合物を9分間撹拌した。次いで、3.0mL(28.9mmol、1.1eq)のベンゾニトリルを滴加し、混合物を90分以内に−15℃にして融解させた。続いて、2.2mL(13.2mmol、0.5eq)のジヒドロカルボンを滴加し、混合物を−15℃で更に30分間撹拌し、室温で一晩撹拌した。最後に、10mLの硫酸(c=2.5mol/L)を添加し、更に60分間撹拌し、30mLの水を添加し、相を分離させ、50mLのジエチルエーテルを用いて水相を2回抽出し、50mLの飽和塩化ナトリウム溶液を用いて、統合した有機相を洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。溶媒を真空下で除去し、ジアステレオマーの混合物として粗生成物を得た。
【0079】
M (C
18H
22O) = 254.37 g/mol
MS (EtOAc, El): m/z [%] = 254 [M
+] (57%), 211 (47%), 197 (9%), 178 (10%), 165 (11%), 149 (12%), 134 (11%), 128 (11%), 119 (25%), 115 (17%), 107 (20%), 106 (16%), 105 (100%), 94 (13%), 93 (18%), 91 (32%), 79 (16%), 78 (17%), 77 (45%), 51 (10%)。
【0080】
3−フェナシルメンテンの製造
【化21】
1.0g(3.9mmol、1eq)の1−ベンゾイルメチレンメンテンを15mLのトルエンに溶解し、0.5mL(7.9mmol、2eq)の酢酸および106mg(98.3μmol、0.025eq)のPd/C(10%)を添加し、最後に、0.6g(15.7mmol、4eq)の水素化ホウ素ナトリウムを添加した。混合物を1時間撹拌し、次いで、過剰水素化ホウ素ナトリウムを、塩酸(c=0.1mol/L)で不活性化し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、触媒を目の細かいフィルターで濾去し、相を分離し、50mLのジエチルエーテルで水相を2回抽出し、統合した有機相を50mLの水で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。溶媒を真空下で除去し、3−フェナシルメンテンの粗生成物756mgを得た。
【0081】
M (C
18H
24O) = 256.38 g/mol
MS (EtOAc, El): m/z [%] = 256 [M'] (8%), 238 (12%), 213 (10%), 207 (13%), 181 (10%), 170 (13%), 145 (12%), 136 (34%), 128 (11%), 121 (55%), 120 (85%), 119 (24%), 107 (22%), 105 (100%), 95 (15%), 94 (37%), 93 (42%), 92 (16%), 91 (35%), 81 (18%), 79 (30%), 78 (25%), 77 (70%), 67 (22%), 51 (16%)。
【0082】
3−フェナシルメンテンへの光照射
【化22】
110mgの3−フェナシルメンテンを、10mLのメタノール(c=4×10
−2mol/L)に溶解し、λ
最大=300nmで18時間光を照射した。ガスクロマトグラフィーによって、反応を追跡した。18時間後、3−フェニルメンテンは実質的に分解され、NMRによって新規な信号が検出された。これは、リモネンおよびアセトフェノンに帰属していた。