(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ペプスタチンおよび/または、その生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物、およびさらなる賦形剤および/またはアジュバントを含む、関節内投与のための医薬製剤。
ペプスタチンおよび/またはその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物が、固体、液体または半液体の賦形剤またはアジュバンドおよび、任意に、さらなる医薬活性化合物とともに、好適な剤形にされることを特徴とする、請求項1または2に記載の関節内投与のための医薬製剤の調製のための方法。
関節症、外傷性軟骨損傷、関節炎、疼痛、異痛症または痛覚過敏からなる群から選択される生理学的および/または病態生理学的な状態の処置および/または予防における、関節内投与のための請求項1または2に記載の医薬製剤。
関節症、外傷性軟骨損傷、関節炎、疼痛、異痛症および痛覚過敏からなる群から選択される生理学的および/または病態生理学的な状態の処置および/または予防における関節内投与のための医薬製剤の調製における、ペプスタチンおよび/またはその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物の使用。
ペプスタチンおよび/またはその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物が、以下のとおり:
a)毎週から毎年、
b)隔週から半年ごと、または
c)毎月から3カ月ごとに、
関節内に投与される、請求項7または8に記載の使用。
【背景技術】
【0002】
関節症は、世界中で最も広まっている関節疾患であり、関節症の放射線医学的徴候は、65歳を超える年齢の大部分で見出される医療制度においては、このように著しく重要であるにもかかわらず、関節症の原因は今日まで不明のままであり、有効な予防策はさらには遠い目標のままである。関節の隙間の減少(関節軟骨の破壊を原因とする)は、軟骨下骨および骨棘の形成における変化とともに、該疾患の放射線医学的な特徴である。しかしながら、患者においては、疼痛(荷重依存的かつ夜間の安静時痛)とそれに続く機能障害が表面化される。それはまた、対応する二次疾患とともに患者を社会的に孤立させるものでもある。
【0003】
関節症という用語は、ドイツにおける非公式な定義によると、その年齢に対する通常の程度を超えた「関節の摩耗」を意味する。原因は、過剰な負荷(例えば体重増加)、関節の位置異常などの先天性または外傷性の原因、または骨粗鬆症などの骨疾患による骨の変形であるとみなされる。関節症は、同様に、別の疾患、例えば、関節の炎症(関節炎)(二次性関節症)の結果として生じ得るか、または過荷重誘発性浸出(二次性炎症反応)(活性化関節症)を付随し得る。英米の専門家の文献は、関節面の破壊が、おそらく主に荷重の影響に起因し得る、骨関節炎[OA]と炎症性成分に起因する関節の変形が表面化する、リウマチ性関節炎[RA]とを区別する。
【0004】
原則として、関節症は、その原因により区別される。アルカプトン尿症性関節症は、既存のアルカプトン尿症の場合の関節におけるホモゲンチジン酸沈着の増加に基づいている。血友病性関節症の場合には、定期的な関節内の出血は、血友病(血友病性関節)の場合に発生する。関節症は、健康な軟骨上の尿酸結晶(尿酸)の機械的な影響によって引き起こされる(W. Pschyrembel et al.: Klinisches Woerterbuch mit klinischen Syndromen and einem Anhang Nomina Anatomica [Clinical Dictionary with Clinical Syndromes and a Nomina Anatomica Annex]. Verlag Walter de Gruyter & Co, 253rd Edition, 1977)。
【0005】
関節炎の古典的な原因は、関節の形成異常である。臀部の例を使用すると、生理的臀部体位の場合において、最も大きな機械的な負荷を有する領域が異形成臀部の場合よりも有意に大きな面積を表すことが明らかとなっている。しかしながら、関節に作用する力により引き起こされる負荷は、関節形状とは実質的に無関係である。それらは本質的に、主要な負荷領域(単数または複数)にわたって分配される。したがって、相対的に小さな領域の場合において、より大きな領域の場合におけるよりも、より大きな圧力が生じるであろう。したがって、関節軟骨に対する生体力学的圧力は、異形成臀部の場合において、生理的臀部体位の場合よりも大きい。この法則は、一般に、理想的な解剖学的形状とは異なる支持関節における関節症変化の発生が増加したことが原因とされている。
【0006】
傷害の結果が早期の摩耗の原因となる場合、用語、外傷後関節症が使用される。議論されている二次性関節症のさらなる原因は、機械的、炎症性、代謝性、化学的(キノロン)、栄養的、ホルモン性、神経学的および遺伝的な理由である。しかしながら、ほとんどの場合において与えられる診断は、原因疾患が見かけ上存在しないことを医師が意味する、特発性関節症である(H. I. Roach and S. Tilley, Bone and Osteoarthritis F. Bronner and M. C. Farach-Carson (Edi-tors), Verlag Springer, Volume 4, 2007)。
【0007】
関節症の医学的原因は、例えば、ジャイレースインヒビターのタイプの抗生物質(シプロフロキサシン、レボフロキサシンなどのフルオロキノロン)であり得る。これらの医薬は不十分な血管新生組織(硝子関節軟骨、腱組織)におけるマグネシウムイオンの錯化をもたらし、このことは不可逆的な損傷が結合組織に発生したという結果を有する。この損傷は、一般に子供および少年の成長期に、より顕著である。腱障害および関節障害は、このクラスの医薬の知られている副作用である。独立した薬理学者およびリウマチ専門医からの情報によると、成人では、これらの抗生物質は、硝子関節軟骨の生理学的な分解の加速をもたらす(M. Menschik et al., Anti-microb. Agents Chemother. 41, 1997, pp. 2562-2565; M. Egerbacher et al., Arch. Toxicol. 73, 2000, pp. 557-563; H. Chang et al., Scand. J. Infect. Dis. 28, 1996, pp. 641-643; A. Chaslerie et al., Therapie 47, 1992, p. 80)。フェンプロクモンでの拡張処置はまた、関節内部構造の負荷の場合には、骨密度を減少させることによって関節症を助長し得る。
【0008】
年齢のほかに、知られている変形性関節症に対する危険因子は、機械的な過荷重、(微小)外傷、保持機構の欠如によって引き起こされる関節の不安定化、および遺伝的因子である。しかしながら、発生、可能なインターベンションのいずれもが十分に説明されていない(H. I. Roach and S. Tilley, Bone and Osteoarthritis F. Bronner and M. C. Farach-Carson (Editors), Verlag Springer, Volume 4, 2007)。
【0009】
関節症によって影響を受ける関節において、一酸化窒素の含有量が倍に増加する。適度な機械的な刺激は、プラスの効果を有する傾向がある一方で、軟骨組織の強い機械的な刺激に起因して同様の状況が観察された(P. Das et al., Journal of Orthopaedic Research 15, 1997, pp. 87-93. A. J. Farrell et al. Annals of the Rheumatic Diseases 51, 1992, pp. 1219-1222; B. Fermor et al., Journal of Orthopaedic Research 19, 2001, pp. 729-737)。機械的な力の作用は、このように因果的に変形性関節症の進行に関与している(X. Liu et al., Biorheology 43, 2006, pp. 183-190)。
【0010】
原則的に、関節症の治療は、2つの目的を追求する。第一に、通常の荷重の下の痛みからの解放、および第二に、関節における機械的な制限または変化の防止である。これらの目的は、疾患の進行を止められ得ないため、純粋に対症治療アプローチとしての疼痛処置によって長期的に達成され得ない。後者を達成する場合、軟骨破壊を停止しなければならない。成人患者における関節軟骨は再生され得ないため、関節軟骨に点圧力の増加をもたらす関節形成異常または位置異常などの病原因子の除去は、さらに極めて重要である。
【0011】
最終的に、医薬を補助的に用いて軟骨組織における変性プロセスを防止または停止することが試みられている。
【0012】
関節軟骨の機能的な状態、ひいては、その負荷抵抗性のための必須因子は、主にコラーゲン、プロテオグリカンおよび水からなる、細胞外マトリックスである。細胞外マトリックスの分解に関与する酵素は、特に、メタロプロテアーゼ、アグリカナーゼおよびカテプシン酵素を含む。しかしながら、さらなる酵素はまた、原理的に、軟骨マトリックス、例えば、プラスミン、カリクレイン、好中球エラスターゼ、トリプターゼおよびキマーゼを分解させ得る。
【0013】
カテプシンは、リソソームプロテアーゼのパパインスーパーファミリーに属する。カテプシンは正常なタンパク質分解および標的タンパク質および組織の変換、およびタンパク質分解カスケードおよびプロ酵素の活性化の開始に関与する。さらに、それらは、MHCクラスIIの発現に関与している(Baldwin (1993) Proc. Natl. Acad. Sci., 90: 6796-6800; Mixuochi (1994) Immunol. Lett., 43: 189-193)。しかしながら、異常なカテプシンの発現は、重度の疾患をもたらし得る。したがって、増加カテプシンの発現は、癌細胞において、例えば、乳癌、肺癌、前立腺癌、グリア芽腫、頭頸部癌において検出され、カテプシンは、乳癌、肺癌、頭頸部癌における、および脳腫瘍における治療の成功が不十分なことと関連していることが示された(Kos et al. (1998) Oncol. Rep., 5: 1349-1361; Yan et al. (1998) Biol. Chem., 379: 113-123; Mort et al. ; (1997) Int. J. Bio¬chem. Cell Biol., 29: 715-720; Friedrick et al. (1999) Eur. J Cancer, 35: 138-144)。さらに、異常なカテプシンの発現は、例えば、リウマチ性関節炎および変形性関節症などの炎症性および非炎症性疾患の発症において、明らかに関与している(Keyszer (1995) Arthritis Rheum., 38: 976-984)。
【0014】
カテプシン活性の分子メカニズムは十分に説明されていない。一方では、例えば、誘発されたカテプシンの発現が、アポトーシスに対して血清を取り込まれたB細胞を保護し、およびカテプシンBのアンチセンスオリゴヌクレオチドによる細胞の処置は、アポトーシスを誘発することが見出された(Shibata et al. (1998) Biochem. Biophys. Res. Commun., 251: 199-20; Isahara et at. (1999) Neuroscience, 91: 233-249)。これらの報告は、カテプシンの抗アポトーシスの役割を示唆している。しかしながら、それらは、アポトーシスメディエーターとしてカテプシンを記述している過去の報告とは完全に対照的である(Roberts et al (1997) Gastroenterology, 113: 1714-1726; Jones et al. (1998) Am. J. Physiol., 275: G723-730)。
【0015】
カテプシンは、リボソーム上の不活性な酵素前駆体として合成され、リソソーム系に移される。N末端プロペプチドのタンパク質分解切断の後、リソソームの酸性環境におけるカテプシン濃度は、1mMまで増加し、カテプシンSはリソソームによって細胞外培地に放出される。
【0016】
カテプシンの場合、分化は、システインカテプシンB、C、H、F、K、L、O、S、VおよびW、アスパルチルカテプシンDおよびEおよびセリンカテプシンGの間で行われる。
【0017】
臨床開発中のカテプシンインヒビターの例は、関節症の処置のためのカテプシンKインヒビター、および関節炎、神経因性疼痛および乾癬の処置のためのカテプシンSインヒビターである。
【0018】
カテプシンDのほかに、アスパルチルプロテアーゼはまた、HIVアスパルチルプロテアーゼ(HIV−1プロテアーゼ)、レニン、ペプシンAおよびC、BACE(Asp2、メマプシン)、プラスメプシンおよびアスパルチルヘモグロビンS(Takahashi, T. et al., Ed. Aspartic Proteinases Structure, Function, Biology and Biomedical Implica-tions (Plenum Press, New York, 1995), Adams, J. et al., Ann. Rep. Med. Chem. 31, 279-288, 1996; Edmunds J. et al., Ann. Rep. Med. Chem. 31, 51-60, 1996; Miller, D. K. et al., Ann. Rep. Med. Chem 31, 249-268, 1996)を含む。カテプシンDは、通常、細胞内または貪食タンパク質の分解に関与し、したがって、タンパク異化において (Kay, et al., Intracellular Protein Catabolism (eds. Katunuma, et al., 155-162, 1989) 、および抗原プロセシングにおいて(Guagliardi, et al., Nature, 343, 133-139, 1990; Van Noort, et al., J. Biol. Chem., 264, 14159-14164, 1989)、タンパク質の代謝に重要な役割を果たしている(Helseth, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 3302-3306, 1984)。
【0019】
カテプシンDレベルの増加は、多くの疾患と関連する。したがって、カテプシンDレベルの増加は乳癌における予後不良および細胞浸潤の増加および転移のリスクの増加、および治療後のより短い無再発生存期間および全体的に低い生存率と相関する(Westley B. R. et al., Eur. J. Cancer 32, 15-24, 1996; Rochefort, H., Semin. Cancer Biol. 1:153, 1990; Tandon, A. K. et al., N. Engl. J. Med. 322, 297, 1990)。乳癌におけるカテプシンDの分泌速度は、遺伝子の過剰発現によって、およびタンパク質の修飾プロセシングによって促進される。カテプシンDおよび他のプロテアーゼ、例えば、増殖する腫瘍のすぐ近くで作られた、コラゲナーゼ、などのレベルの増加は、腫瘍の周囲の領域に細胞外マトリックスを分解する可能性があり、ひいては、リンパ循環系を介して新たな組織への腫瘍細胞の剥離および浸潤を促進する(Liotta L. A., Scientific American Feb:54, 1992; Liotta L. A. and Stetler-Stevenson W. G., Cancer Biol. 1:99, 1990; Liaudet E., Cell Growth Differ. 6:1045-1052, 1995; Ross J. S., Am. J. Clin. Pathol. 104:36-41, 1995; Dickinson A. J., J. Urol. 154:237-241, 1995)。
【0020】
カテプシンDは、脳の変性的変化、例えばアルツハイマー病とさらに関連する。したがって、カテプシンDは、アミロイドβ前駆体タンパク質またはトランスフェクトされた細胞のアミロイドタンパク質の発現を増加させる突然変異体前駆体の切断と関連する(Cataldo, A. M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 87:3861, 1990;Ladror, U. S. et al., J. Biol. Chem. 269:18422, 1994、Evin G., Biochemistry 34:14185-14192, 1995)。アミロイドβ前駆体タンパク質のタンパク質分解によって生成したアミロイドβタンパク質の結果、脳中のプラークの生成がもたらされ、アルツハイマー病の発生の原因であると見られる。増加したカテプシンDレベルがまた、アルツハイマー病患者の脳脊髄液において見出され、カテプシンDの突然変異体アミロイドβ前駆体タンパク質と比較して高いタンパク質分解活性が、見出された(Schwager, A. L., et al. J. Neurochem. 64:443, 1995)。さらに、カテプシンD活性の有意な増加は、ハンチントン病患者からの生検において測定される(Mantle D., J. Neurol. Sci. 131:65-70, 1995)。
【0021】
カテプシンDは、関節症の発生において様々なレベルで必須の役割を果たすと考えられる。したがって、カテプシンDの増加したmRNAレベルは、健常イヌと比較して、自発的な関節症を有するイヌにおける股関節頭部の関節軟骨において測定される(Clements D. N. et al., Arthritis Res. Ther.. 2006; 8(6):R158;Ritchlin C. et al., Scand. J. Immunnol. 40:292-298, 1994)。Devauchelle V. et al. (Genes Immun. 2004, 5(8):597-608)はまた、リウマチ性関節炎と比較して、関節症の場合におけるヒト患者中でのカテプシンDの様々な発現割合を示す(Keyszer G. M., Arthritis Rheum. 38:976-984, 1995も参照)。カテプシンDはまた、ムコリピドーシスにおいて役割を果たすと見られる(Kopitz J., Biochem. J. 295, 2:577-580, 1993)。
【0022】
リソソームのエンドペプチターゼカテプシンDは、軟骨細胞において最も広範なプロテイナーゼである(Ruiz-Romero C. et al., Proteomics. 2005, 5(12):3048-59)。さらに、カテプシンDのタンパク質分解活性は、変形性関節症患者から培養した滑膜において検出され(Bo G. P. et al., Clin. Rheumatol. 2009, 28(2):191-9)、増加したタンパク質分解活性はまた、リウマチ性関節炎を有する患者の滑膜切除組織中で見出される(Taubert H. et al., Autoimmunity. 2002, 35(3):221-4)。したがって、Lorenz et al. (Proteomics. 2003, 3(6):991-1002)はまた、リソソームの、および分泌されたアスパルチルプロテアーゼカテプシンDが、カテプシンBおよびLとは対照的に関節炎および関節症に関して未だ詳細に研究されていないことを明記しているが、しかしながら、Lorenz et al.は、リウマチ性関節炎を有する患者と比較して高いタンパク質レベルのカテプシンDを、関節症を有する患者の滑膜組織中に見出した。
【0023】
同様に、Gedikoglu et al. (Ann. Rheum. Dis. 1986, 45(4): 289-92)は、滑膜組織において、および、Byliss and Ali (Biochem. J. 1978, 171(1): 149-54)は、関節症患者の軟骨において、カテプシンDのタンパク質分解活性の増加を検出した。
【0024】
関節症の場合には、pHの局所的な減少は軟骨の領域において発生した。pHのこの減少は、軟骨における異化プロセスを理解するために極めて重要である。
【0025】
関節症の場合には、直接の相関関係は、関節組織における低pHと疾患の重症度および進行の間に見出された。5.5のpHで、軟骨の自己消化が発生する。これは、(例えば、マウス、ウシまたはヒトからの)外植片培養においてペプスタチンまたはリトナビルによって、ほぼ完全に阻害され得る。これは、ペプスタチンは、1つの例外、−BACE1−を除いてアスパルチルプロテアーゼを阻害し、わずかに、これら2つのアスパルチルプロテアーゼが、これまでに軟骨組織において同定されているため関節症におけるカテプシンDの必須の役割、または重要な役割を示唆している。それゆえ、Bo G. P. et al. (Clin. Rheumatol. 2009, 28(2): 191-9)はまた、関節の病理学的変化におけるカテプシンDの重要な役割を記述する。
【0026】
最もよく知られているアスパルチルプロテアーゼインヒビターは、ペプスタチン、最初はストレプトミセス培養物から単離されたペプチドである。ペプスタチンは、ペプシン、カテプシンおよびレニンに対して有効である。多くのアスパルチルプロテアーゼインヒビターが、したがってペプスタチンの構造の例に関してモデル化された(U.S. Pat. No. 4,746,648; Umezawa, H., et al., J. Antibiot (Tokyo) 23: 259-62, 1970; Morishima, H., et al., J. Antibiot. (Tokyo) 23: 263-5, 1970; Lin, T. and Wil¬liams, H. R., J. Biol. Chem. 254: 11875-83, 1979; Jupp, R. A., et al., Bio¬chem. J. 265: 871-8, 1990; Agarwal, N. S. and Rich, D. H., J. Med. Chem. 29: 2519-24, 1986; Baldwin, E. T., et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 90: 6796-800, 1993; Francis, S. E. et al., EMBO J 13: 306-17, 1994)。
【0027】
アスパルチルプロテアーゼおよびカテプシンDは、しばしば、神経変性疾患、認知障害、認知症、アルツハイマー病、癌、マラリア、HIV感染および心臓血管系の疾患の処置のための活性化合物の標的タンパク質として記述され、および例えば、WO 2009013293、EP 1987834、EP 1872780、EP 1867329、EP 1745778、EP 1745777、EP 1745776、WO 1999002153、WO 1999055687、US 6150416、WO 2003106405、WO 2005087751、WO 2005087215、WO 2005016876、US 2006281729、WO 2008119772、WO 2006074950、WO 2007077004、WO 2005049585、US 6251928およびUS 6150416などにおいて、アスパルチルプロテアーゼまたはカテプシンDのインヒビターはこれらの疾患の処置のために開示されている。
【0028】
知られているカテプシンDインヒビターならびに2種のモデル化合物であるペプスタチンおよびリトナビルは、カテプシンD活性を有効に阻害するが、それらは、しかしながら、他のアスパルチルプロテアーゼについての完全に低い選択性を有する。血圧ならびに体液および電解質バランスの調節におけるレニン−アンジオテンシン系(RAS)の役割(Oparil, S. et al., N. Engl. J. Med. 1974; 291:381-401/446-57)、ならびに、心血管系の疾患におけるレニンおよびペプシンインヒビターの有効性は十分に知られており、したがって、特にこれらの低選択性カテプシンDインヒビターの経口的な、または全身的な投与に関する多数の副作用が予想され得、全身合併症もまた、局所的適用に関して化合物の拡散により予想され得る。
【0029】
さらに、特にペプチド化合物は、一般に血漿、滑液および他のコンパートメントの流体で低い安定性を有し、それらは、非常に速やかな代謝分解を受け、血液中、関節包内および他のコンパートメントでの滞留時間が短いことが予想され得ることを意味する。
【0030】
したがって、M. F. et al. (J. Pharm. Sciences, Vol. 81, No. 8, 731-735, 1992)は、リウマチ性関節炎を有する患者のプールされたヒト血清中、および、プールされた滑液中でのペプチド化合物の安定性を検討した。(731ページ、右側の列、最後から二番目の段落を参照)。表1および表2において、Powell et al.は、試験をした、10〜25の長さのアミノ酸を有する修飾および非修飾ペプチドの大部分が、試験をした、ヒト血漿(HS)、滑液(SF)、ウシ胎児血清(FCS)またはマウス肝臓ホモジネート(MLH)の培地において、一時間未満の半減期を有することを開示した(735ページ、右側の列、最後の段落を参照)。関節炎を有する患者のプールされたヒト血清、およびプールされた滑液中のペプチド化合物の安定性は、基本的には同様に低い(733ページを参照)。
【0031】
血漿中のペプチド化合物の低い安定性および短い滞留時間を背景として、および上記に記載されていると予想される副作用により、ペプチドカテプシンDインヒビターの経口投与または全身投与は、関節症の処置のために考慮されない。
【0032】
ペプチド化合物の関節内投与はまた、滑液において予想される短い半減期により、しかし、特に、関節カプセル内において予想される短い滞留時間により(滑膜および分解を介した拡散)、および血漿中での拡散に起因して予想される全身性の副作用により、一般に、当業者によって不適切と判断される。
【0033】
特に、Powell et al. (1992)によると、数時間というペプチド化合物の短い半減期は、頻繁に関節内注射が必要であることを意味する。しかしながら、関節の隙間への注射は痛みおよび患者に対する感染症の有意なリスクと関連し、したがって、かかる注射は、2〜4週間の間隔より頻繁に実施すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、滑液中のペプスタチンの安定性データである。
【
図2】
図2は、薬物動態 -関節内投与後の血漿および関節におけるペプスタチンの滞留時間を示すグラフである。
【
図3】
図3は、薬物動態−静脈内および経口投与後の血漿におけるペプスタチンの滞留時間を示す表である。
【
図4】
図4は、関節症におけるインビボでの有意な有効性を示す結果である。
【
図5a】
図5aは、インビトロ:ウシ滑液におけるマイクロダイアリシスの結果である。
【
図5b】
図5bは、インビトロ:膝関節(モルモット)におけるマイクロダイアリシスの結果である。
【
図5c】
図5cは、陽性溶出液サンプルの数である。
【0041】
本発明はまた、さらなる賦形剤および/またはアジュバントを含む、このタイプの発明に記載の医薬製剤に関する。
さらに、本発明は、少なくとも1つのさらなる医薬活性化合物を含む、本発明に記載の上記医薬製剤にも関する。
【0042】
本発明はまた、ペプスタチンと同様の特性、すなわち、ナノモル範囲でのカテプシンD阻害、滑液中での高い安定性および関節包において長い滞留時間を有するペプチドカテプシンDインヒビターを含む関節内投与のための医薬製剤に関する。
【0043】
本発明はまた、光学的に活性な形態(立体異性体)、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマーおよび水和物およびペプスタチンの溶媒和物の使用に関するようにペプスタチンは、たくさんのキラル中心を含有する。
【0044】
薬学的または生理学的に許容し得る誘導体は、例えば、ペプスタチンの塩、および、また、いわゆるプロドラッグ化合物を意味すると解釈される。プロドラッグ化合物は、例えば、アルキル基またはアシル基(下記のアミノおよびヒドロキシル保護基も参照)、糖またはオリゴペプチドによって修飾され、生体内で急速に切断または遊離されて、有効なペプスタチン分子を形成するペプスタチン誘導体を意味すると解釈される。これらはまた、例えば、Int. J. Pharm. 115 (1995), 61-67に記載されるとおり、ペプスタチンの生分解性ポリマー誘導体を含む。
【0045】
ペプスタチンは、その最終的な非塩形態で使用され得る。一方、本発明はまた、当該分野で知られている手順により様々な有機および無機塩基から誘導され得る、その薬学的に許容し得る塩の形態におけるペプスタチンの使用を包含する。ペプスタチンの薬学的に許容し得る塩の形態は、大部分が従来の方法によって調製される。ペプスタチンは、カルボキシル基を含有するため、その好適な塩の1つは、対応する塩基付加塩を得るために好適な塩基とペプスタチン反応させることによって形成され得る。かかる塩基は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを含む、アルカリ金属水酸化物;水酸化バリウムおよび水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;アルカリ金属アルコキシド、例えば、カリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド;および、ピペリジン、ジエタノールアミンおよびN−メチルグルタミンなどの様々な有機塩基である。ペプスタチンのアルミニウム塩は、同様に含まれる。
【0046】
さらに、ペプスタチンの塩基性塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛塩を含むが、これは限定を表すことを意図するものではない。
【0047】
上記の塩のうち、好ましいのは、アンモニウム;アルカリ金属塩、ナトリウムおよびカリウム、およびアルカリ土類金属塩、カルシウムおよびマグネシウムである。薬学的に許容し得る有機非毒性塩基から誘導されるペプスタチンの塩は、天然に生じる置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂、例えば、これは以下に限定することを表すことを意図するものではないが、アルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N エチルモルホリン、N エチルピペリジン、グルタミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラジン、イソプロピルアミン、リドカイン、リジン、メグルミン、N−メチル−D−グルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(トロメタミン)をも含めた、第一、第二および第三級アミン、置換アミンの塩を含む。
【0048】
言及したように、ペプスタチンの薬学的に許容し得る塩基付加塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミンなどの金属またはアミンで形成される。好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムである。好ましい有機アミンは、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−D−グルカミンおよびプロカインである。
【0049】
ペプスタチンの塩基付加塩は、従来の方法で塩の生成を引き起こす、十分な量の所望の塩基と接触させ、遊離酸形態をもたらすことによって調製される。遊離酸は、従来の方法で、塩形態を酸と接触させて、遊離酸を単離することによって再生され得る。遊離酸形態は、極性溶媒中の溶解度などのその特定の物理的特性に関して、対応する塩形態とある特定の点において異なる;しかしながら、本発明の目的のために、塩は他の方法でそれらのそれぞれの遊離酸形態に対応する。
【0050】
上述での観点から、本関連において「薬学的に許容し得る塩」は、特に、この塩形態が、活性化合物の遊離形または過去に使用された活性化合物の他の塩形態と比較して、活性化合物に改善された薬物動態学的特性を付与する場合、その塩の1つの形態でペプスタチンを包含する活性化合物を意味するものと解釈されることが理解できる。活性化合物の薬学的に許容し得る塩形態はまた、過去に有していなかった所望の薬物動態学的特性を有する、この活性化合物を初めて提供することができ、さらには体内でのその治療有効性に関して、この活性化合物の薬力学にプラスの影響を与えることができる。
【0051】
ペプスタチンの溶媒和物は、それらの相互の引力により形成されるペプスタチン不活性溶媒分子の付加を意味するものと解釈される。溶媒和物は、例えば、一水和物または二水和物などの水和物、または、アルコラート、すなわち、例えば、メタノールまたはエタノールなどのアルコールとの添加化合物である。
【0052】
ペプスタチンは、選択的にアスパルチルプロテアーゼ、特にカテプシンDを阻害するので、耐容性良好で、有益な薬理学的特性を有することが見出された。
【0053】
それゆえ、本発明は、さらに、カテプシンDによって、および/またはカテプシンD促進シグナル伝達によって引き起こされ、促進および/または伝播される疾患の処置および/または予防のための関節内投与のための医薬の調製のためのペプスタチンの使用に関する。
【0054】
したがって、本発明はまた、特に、生理学的なおよび/または病態生理学的な状態の処置および/または予防に使用するための、ペプスタチンおよび/またはその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物を包含する、関節内投与のための医薬に関する。
【0055】
特に好ましいのは、特に、カテプシンDに関連する生理学的および/または病態生理学的条件である。
【0056】
生理学的なおよび/または病態生理学的な状態は、例えば、疾患または病気および特有の疾患における医学的障害、訴え、症状または合併症などの、医学的に関連する生理学的および/または病態生理学的な状態を意味するものと解釈される。
【0057】
本発明は、さらに、関節症、外傷性軟骨損傷および関節炎、特にリウマチ性関節炎からなる群から選択される生理学的なおよび/または病態生理学的な状態の処置および/または予防に使用するための、ペプスタチンおよび/またはその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物を包含する、関節内投与のための医薬に関する。特に好ましいのは、関節症の処置および/または予防に使用することが好ましい。
【0058】
痛みは、急性事象として警告およびコントロールシグナルの特徴を有するが、慢性疼痛としては、これを欠如し、この場合(慢性疼痛症候群として)、今日では、独立した症候群としてみなされ、扱われるべき複雑な知覚である。痛覚過敏は、痛みに対する過剰な感受性および通常は痛みを伴う刺激に対する反応に対して医学で使用される用語である。痛みを引き起こし得る刺激は、例えば、圧力、熱、寒さまたは炎症である。痛覚過敏は、知覚過敏の一形態であり、刺激に対する過剰な感受性の総称である。異痛症は、通常は痛みを引き起こさない刺激によって誘発される痛みの感覚に対して医学で使用される用語である。
【0059】
本発明は、さらに、ペプスタチンおよび/またはその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物を包含する、生理学的なおよび/または病態生理学的な状態の処置および/または予防に使用するための、疼痛、異痛症および痛覚過敏からなる群から選択される関節内投与のための医薬に関する。
【0060】
したがって、本発明は、特に好ましくは、関節症、外傷性軟骨損傷、関節炎、疼痛、異痛症および痛覚過敏からなる群から選択される生理学的なおよび/または病態生理学的な状態の処置および/または予防において使用するための、特に好ましくは、関節症の処置および/または予防において使用するための、ペプスタチンおよび/またはその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物を包含する、関節内投与のための医薬に関する。
【0061】
上記に開示の医薬は、上記の生理学的および/または病態生理学的な状態の処置および/または予防のための関節内投与のための医薬の調製のためのペプスタチンに対応する使用を含むことが意図されている。
【0062】
さらには、上記の開示された医薬は、ペプスタチンが、このような処置を必要とする患者に関節内に投与される、上記の生理学的および/または病態生理学的な状態の処置および/または予防のための関節内投与のために対応する方法を含むことが意図されている。
【0063】
したがって、本発明は、好ましくは、関節症、外傷性軟骨損傷、関節炎、疼痛、異痛症または痛覚過敏からなる群から選択される生理学的なおよび/または病態生理学的な状態の処置および/または予防における関節内投与のための本発明による医薬製剤の使用に関する。
【0064】
本発明は、本明細書では、特に好ましくは、関節症の処置および/または予防における関節内投与のための本発明による医薬製剤の使用に関する。
【0065】
したがって、本発明はまた、好ましくは、関節症、外傷性軟骨損傷、関節炎、疼痛、異痛症および痛覚過敏からなる群から選択される生理学的なおよび/または病態生理学的な状態の処置および/または予防において関節内投与のための、ペプスタチンおよび/またはその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物の使用に関する。
【0066】
本発明は、ここで、特に好ましくは、関節症の処置および/または予防における関節内投与のための、ペプスタチンおよび/またはその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物の使用に関する。
【0067】
本発明はまた、ペプスタチンと同様の特性、すなわちナノモル範囲でのカテプシンD阻害、滑液における高い安定性および関節包における長い滞留時間を有する、関節症、外傷性軟骨損傷、関節炎、疼痛、異痛症および痛覚過敏からなる群から選択される生理学的なおよび/または病態生理学的な状態の処置および/または予防における、特に好ましくは、関節症の処置および/または予防における、関節内投与のための、ペプチド性カテプシンDインヒビターの使用に関する。
【0068】
ペプスタチンは、例に記載のとおり、酵素アッセイおよび動物実験で容易に証明し得る有利な生物学的活性を提示する。かかる酵素ベースのアッセイにおいて、ペプスタチンは、通常、好適な範囲での、好ましくは、マイクロモル範囲での、特に好ましくは、ナノモル範囲でのIC
50値によって記録される、阻害効果を提示し、生じさせる。
【0069】
ペプスタチンは、ヒトまたは動物に、特に、サル、ウマ、イヌ、ネコ、ラットまたはマウス、などの哺乳動物において、投与され得、ヒトまたは動物の身体の治療的処置において、および上記の疾患の闘病において、使用され得る。それはさらに、診断剤として、または試薬として使用され得る。
【0070】
ペプスタチンは、非化学的方法によって、特に関節内投与のための医薬製剤の調製のために使用され得る。この場合、それは、少なくとも1種の固体、液体および/または半液体の賦形剤および/またはアジュバントと共に、および、任意に、1または2以上のさらなる活性化合物(単数または複数)と組み合わせて、好適な剤形にされる。
【0071】
それゆえ、本発明は、さらにまた、特に、ペプスタチンおよび/またはその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物を包含し、さらに賦形剤および/またはアジュバントを包含する、関節内投与のための医薬製剤に関し、および、少なくとも1つのさらなる医薬活性化合物を包含する、関節内投与のための医薬製剤に関する。
【0072】
特に、本発明はまた、ペプスタチンおよび/またはその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物が、固体、液体または半液体の賦形剤および/またはアジュバントおよび、任意に、さらなる医薬活性化合物とともに好適な剤形にされることを特徴とする、関節内投与のための医薬製剤の調製のための方法に関する。
【0073】
本発明の医薬製剤は、ヒトまたは獣医学における医薬として使用され得る。患者またはホストは、任意の哺乳動物種、例えば、霊長類種、特にヒト;マウス、ラットおよびハムスターを含むげっ歯類;ウサギ;ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属し得る。動物モデルは、ヒトの疾患の処置のためのモデルを提供する実験的検討の対象である。
【0074】
好適な担体物質は、関節内投与にとって好適であり、本発明による化合物とともに反応しない、有機または無機物質である。当業者は、その専門知識により、どのアジュバントが、所望の医薬処方物に好適であるかに精通している。溶剤、例えば、水、生理食塩水、または、例えば、エタノール、プロパノールまたはグリセロールなどのアルコール、グルコースまたはマンニトール溶液などの糖溶液、または前記溶媒の混合物、および他の活性化合物担体の他に、浸透圧、酸化防止剤、分散剤、消泡剤、緩衝物質、防腐剤または可溶化剤に影響を与えるために、安定剤および/または湿潤剤、乳化剤、塩を使用することもまた、可能である。所望であれば、本発明による調製物または医薬は、上記医学的適応の予防および/または処置に有効である、1または2以上のさらなる活性化合物、例えば、1または2以上のビタミンまたは活性化合物を包含してもよい。
【0075】
所望であれば、本発明の製剤または医薬は、1または2以上のさらなる活性化合物および/または、1または2以上の作用増強剤(アジュバント)を包含してもよい。
【0076】
用語「医薬処方物」および「医薬製剤」は、本発明の目的のための同義語として使用されている。
【0077】
ここで使用されるように、「薬学的に許容」は、医薬、沈殿試薬、賦形剤、アジュバント、安定化剤、溶媒、および、望ましくない生理学的な副作用なしに、それから得られる医薬製剤の哺乳動物への投与を容易にする他の薬剤に関する。
【0078】
非経口投与のための医薬製剤の場合、等張性、体水分正常状態および処方物(低毒性)、採用されるアジュバントおよび一次包装の安全性および忍容性のための要件がある。驚くべきことに、ペプスタチンは、好ましくは、直接使用が可能であり、および、例えば、高濃度の有機溶媒または他の毒物学的に許容できないアジュバントなどの、毒物学的に許容できない物質の除去のためのさらなる精製工程が、医薬処方物で使用する前に不要であるという利点を有する。
【0079】
本発明はまた、特に好ましくは、析出させた非結晶で、析出させた結晶で、または溶解または懸濁した形でのペプスタチン、および、任意に、賦形剤および/またはアジュバントおよび/または、さらなる薬学的に活性な化合物を含む、関節内投与のための医薬製剤に関する。
【0080】
ペプスタチンは、好ましくは、ペプスタチンの不利な望ましくない凝集体を生じることなく、高濃度処方物の調製を可能にする。したがって、高活性化合物含量を有する、すぐに使用できる溶液は、ペプスタチンを補助的に用いて、水性溶媒とともに、または水性媒体中で調製され得る。
【0081】
ペプスタチンおよび/または生理学的に許容し得る塩および溶媒和物はまた、凍結乾燥され、得られた凍結乾燥物は、例えば、関節内投与のための注射調製物の調製のために使用され得る。
【0082】
関節内投与のための水性製剤は、水溶液中でペプスタチンを溶解または懸濁し、任意に、アジュバントを加えることにより調製され得る。そのため、定義された濃度で前記のさらなるアジュバントを包含する原液の定義された量を、定義された濃度のペプスタチンを有する溶液または懸濁液に有利に加え、その混合物を、任意に、予め計算された濃度に水で希釈する。代替的に、アジュバントは、固形で加えられ得る。それぞれの場合において必要とされる原液および/または水の量は、その後、得られた水溶液または懸濁液に加えられ得る。ペプスタチンはまた、すべてのさらなるアジュバントを包含する溶液中で、有利に直接溶解され、または懸濁され得る。
【0083】
pH4〜10を有する、好ましくは、pH5〜9、および250〜350mOsmol/kgの重量オスモル濃度を有する、溶液または懸濁液を含有するペプスタチンは有利に調製され得る。したがって、医薬製剤は、直接痛みなしで、実質的に関節内に投与され得る。さらに、関節内投与のための調製物に加えてもよい、ひいては、比較的多量の活性化合物の投与を可能にするさらなる活性化合物、例えば、グルコース溶液、等張食塩水またはリンガー溶液などの注射溶液もまた包含してもよい。
【0084】
ペプスタチンは、生理学的に十分に忍容性があり、調製が容易で、正確に分配され得、好ましくは、保存および輸送を通して、および複数の凍結および融解プロセスの間、アッセイ、分解生成物および凝集物に対して安定的である。好ましくは、冷蔵庫の温度(2〜8℃)および室温(23〜27℃)で、60%の相対大気湿度(RH)で、少なくとも3ヶ月から2年の期間にわたって、安定した方法で保存され得る。
【0085】
例えば、ペプスタチンは、乾燥によって安定に保存され、必要に応じて溶解または懸濁することにより、すぐに使用できる医薬製剤に変形され得る。可能な乾燥方法は、例えば、これらの例に限定されないが、窒素ガス乾燥、真空オーブン乾燥、凍結乾燥、有機溶媒での洗浄およびその後の空気乾燥、液体床乾燥、流動床乾燥、噴霧乾燥、ローラー乾燥、層乾燥、室温での空気乾燥およびさらなる方法である。
【0086】
「有効量」という用語は、組織、系、動物またはヒトにおいて、例えば研究者または医師によって求められているかまたは所望されている生物学的または薬学的応答を生じさせる、医薬の、または薬学的に活性な化合物の量を意味する。
【0087】
さらに、「治療的有効量」という用語は、この量を施与されていない対応する対象と比較して、以下の結果:疾患、症候群、状態、愁訴、障害もしくは副作用の改善された処置、治癒、防止もしくは解消、あるいはまた疾患、状態もしくは障害の進行の低減を有する量、を意味する。用語「治療的有効量」はまた、正常な生理学的機能を増加させるのに有効である量を網羅する。
【0088】
関節内投与のための本発明による調製物または医薬の使用について、ペプスタチンおよび/または生理学的に許容し得る塩および溶媒和物は、一般に知られている市販で入手可能の調製物と同様に使用される。投与量は、ここで、患者の年齢、性別、体重および健康状態および体質、および患者の疾患の重症度およびその他の個別要因に依存する。
【0089】
関節内投与のための本発明による医薬製剤は、好ましくは、毎週から毎年、特に好ましくは、隔週から半年ごと、特に大変好ましくは、毎月から四半期ごとに、関節内投与される。
【0090】
それゆえ、本発明は、さらに、本発明の医薬製剤が以下のとおり:
a)毎週から毎年、
b)隔週から半年ごとまたは
c)毎月から四半期ごとに、
関節内に投与される、本発明の医薬製剤の本発明の使用にも関する。
【0091】
したがって、本発明はまた、関節症、外傷性軟骨損傷、関節炎、疼痛、異痛症および痛覚過敏からなる群から選択される生理学的なおよび/または病態生理学的状態の処置および/または予防における、特に好ましくは、ペプスタチンおよび/またはのその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物が以下のとおり:
a)毎週から毎年、
b)隔週から半年ごとまたは
c)毎月から四半期ごとに、
関節内に投与される、関節症の処置および/または予防における、関節内投与のための、ペプスタチンおよび/またはその生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体のうちの1つ、またはあらゆる比率でのそれらの混合物の使用に関する。
【0092】
しかしながら、患者のための個々の用量および投与間隔はまた、例えば、使用される特定の化合物の有効性、年齢、体重、健康状態、性別、栄養の一般的な状態、投与の時間および方法、排泄率、他の医薬との併用および特有の疾患の重症度および持続期間などの多くの個々の要因に依存する。
【0093】
生体内での医薬活性化合物の摂取の尺度は、その生物学的利用能である。医薬活性化合物は、注射液の形態で生体内に関節に送達された場合、その絶対的な生物学的利用能、すなわち、変化していない形で関節の隙間に達する薬剤の割合は、100%である。薬物動態についての、すなわち生物学的利用能についてのデータは、J. Shaffer et al. (J. Pharm. Sciences, 88 (1999), 313-318)の方法と同様に得られ得る。
【0094】
さらに、このタイプの医薬は、一般に薬学分野で知られている方法によって調製され得る。
【0095】
医薬は、関節内経路による投与に適合され得る。このタイプの薬剤は、薬学分野で知られているすべての方法によって、例えば、賦形剤(複数可)または補助剤(複数可)と活性化合物を組み合わせることによって調製され得る。
【0096】
関節内投与は、本発明による化合物が、関節軟骨の近くの滑液に直接投与され、そこから軟骨組織へ拡散することが可能であるという利点を有する。本発明による医薬製剤は、このようにして、関節の隙間に直接注入され、ひいては、意図したとおりに作用部位で直接作用を発揮する。本発明の化合物はまた、遅く、持続性のある、および/またはコントロールされた活性化合物の放出を有する、関節内投与のための医薬の調製に適している。ひいては、ペプスタチンは、遅延放出処方物の調製に適しており、このことは、投与が比較的大きな時間間隔でのみ必要であるので、患者にとって有利である。
【0097】
関節内投与に適合した医薬は、処方物が処置されるべき受容者の滑液と等張にされることによって、抗酸化剤、緩衝剤、静菌および溶質を包含する水性および非水性滅菌注射溶液;ならびに懸濁媒体および増粘剤を包含し得る、水性および非水性滅菌懸濁液を含む。処方物は、使用直前に必要な無菌の担体液体、例えば、注射用の水を加えさえすればよいように、単回用量または複数回用量容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルで送達され得、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。処方にしたがって調製される注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。
【0098】
ペプスタチンはまた、例えば、小型単層小胞、大型単層小胞および多層小胞などのリポソーム送達系の形態で投与され得る。リポソームは、例えば、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成され得る。
【0099】
ペプスタチンはまた、標的医薬賦形剤として、可溶性ポリマーに結合され得る。かかるポリマーは、パルミトイル基によって置換された、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはポリエチレンオキシドポリリジンを含んでもよい。さらに、ペプスタチンは、医薬、例えば、ポリ乳酸、ポリ−イプシロン−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリレート、ポリ−乳酸−コ−グリコール酸、デキストランとメタクリレートの間のコンジュゲート、ポリホスホエステル、様々な多糖およびポリ−アミンおよびポリ−ε−カプロラクトン、アルブミン、キトサン、コラーゲンまたは修飾ゼラチンおよびヒドロゲルの架橋された、または両親媒性ブロックコポリマーなどのポリマー、の徐放を達成するのに適している生分解性ポリマーのクラスに結合され得る。
【0100】
本発明の医薬はまた、特に上記の成分の他に、医薬処方物の特定のタイプに関して、当該分野において他の通常の薬剤を包含してもよいことは言うまでもない。
【0101】
さらに、本発明の医薬は、特定の既知の治療において相加または相乗効果を提供するために使用され得、および/または特定の知られている治療の有効性を回復するために使用され得る。
【0102】
ペプスタチンの他に、本発明の医薬製剤はまた、さらなる医薬活性化合物、例えば関節症の処置に使用するため、他のカテプシンDインヒビター、NSAIDS、Cox−2インヒビター、グルココルチコイド、ヒアルロン酸、アザチオプリン、メトトレキサート、例えば、抗ICAM−1抗体および/またはFGF−18などの抗CAM抗体、を包含してもよい。上述の他の疾患の処置のために、本発明による医薬製剤はまた、ペプスタチンの他に、それらの処置における当業者に知られている、さらなる医薬活性化合物を包含してもよい。
【0103】
さらなる態様がなくても、それは、当業者は最も広い範囲で、上記の説明を利用することができるであろうことが想定される。したがって、好ましい態様は、単に、一切いかなる方法でも限定するものではない記述的開示としてみなされるべきである。
【0104】
以下の例は、このように本発明を限定することなく説明することを意図する。特に明記しない限り、パーセントデータは重量パーセントで表す。すべての温度は摂氏で示される。「従来の後処理」:必要があれば、水を加え、必要があれば、pHを2と10の間の値に調整し、最終生成物の構成に応じて、混合物を酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出し、相を分離し、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、生成物をシリカゲル上で、および/または結晶化によりクロマトグラフィーにより精製する。シリカゲル上のRf値;質量分析:EI(電子衝撃イオン化):M+、FAB(高速原子衝撃):(M+H)+、THF(テトラヒドロフラン)、NMP(Nメチルピロリドン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、EA(酢酸エチル)をMeOH(メタノール)、TLC(薄層クロマトグラフィー)
【0105】
ペプスタチンは合成され、特徴付けられている。しかしながら、ペプスタチンの調製および特徴付けは、当業者のための他の方法によって実施され得る。
【0106】
例1:ペプスタチン−ペプチドカテプシンDインヒビター
【表1】
および、それらの生理学的に許容し得る塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、またはあらゆる比率でのそれらの混合物。
【0107】
加えて、ペプスタチンは、レニン(IC
50>10,000nM)を超えてのカテプシンDに対する高い選択性、優れた軟骨の浸透および測定可能な毒性および遺伝毒性がないことによって区別される。
【0108】
例2:カテプシンDインヒビターを同定するためのインビトロ蛍光アッセイ
カテプシンD活性のモジュレーターを同定するために、Greiner 384−ウェルnbマイクロタイタープレートにおいて、同じ分子上のDpn(2,4−ジニトロフェニル)基からのエネルギー移動によってクエンチされる、蛍光基(MCA=(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル)を有する合成ペプチドを用いて、連続的な酵素試験を実施した。カテプシンDによるペプチド基質の切断は、蛍光強度の増加を生じさせる。基質の有効性を決定するために、基質の存在下における蛍光強度の時間依存性の増加と、基質の非存在下における蛍光の時間依存性の増加とを比較した。
【0109】
使用される参照基質は、ペプスタチンA(Sigma-Aldrich)であった。使用された基質は、MCA−GKPILFFRLK(Dnp)d−R−NH2(Enzo Life Sciences、Loer-rach)であった。採用する酵素は、1.4nMの最終濃度でヒト肝臓(Sigma-Aldrich)から単離されたカテプシンDであった。試験は、100mM酢酸ナトリウム緩衝液、1.25%(v/v)のDMSO、0.25%(w/v)のChaps、pH5.5、において実施した。各基質溶液2μlを、連続的に希釈した基質濃度で、それぞれの場合のカテプシンD溶液4μlに加え、10分間室温でインキュベートした。反応は、基質溶液(最終濃度5μM)2μLを加えることによって開始した。起点蛍光測定(励起波長340nm/発光波長450nm)でのEnvision multi-labelリーダー(Perkin Elmer)を使用して実施した後、反応は、室温で60分間インキュベートされた。その後、反応時間の間における、切断ペプチド断片の量は、450nm(励起波長340nm)での蛍光強度の増加を決定することで測定した。
【0110】
結果:ペプスタチンは、ナノモル範囲でカテプシンDを阻害する(表1参照)。
【0111】
例3:軟骨外植片アッセイ
軟骨分解の潜在的なカテプシンDインヒビターの効果を検討するために、ウシ外植片に基づくpH誘発モデルを使用した。外植片が培養されている培地のpHは、本明細書において、関節炎の膝の病態生理学的pHに一致する。このpHは5.5である。その後、このエキソビボモデルでは、軟骨分解プロセスを阻止することに関する作用について、潜在的なカテプシンDインヒビターを検討する。軟骨が破壊された場合、グリコサミノグリカン(GAG)は、細胞培養液の上清中に放出される。放出されたGAGの量を、DMMB(青色塩酸ジメチルメチレン)を活用して定量的に決定する。硫酸化GAGを、ジメチルメチレンブルー塩酸塩を使用して検出する場合、633nmでの吸収の減少を利用する。それは非常に低いGAG濃度を使用することもまた可能であるので、染料/GAG複合体は、GAGとのDMMBの延長インキュベーション後でさえ析出せず、このことは、時には他の測定の方法においてわずか短時間の後に起こる。また、濃度を決定するために、検量線を、コンドロイチン硫酸を使用して記録する。GAG値を、IC
50値、すなわち基質がその作用の50%を提示する濃度を計算するために使用することができる。
【0112】
溶液:
インキュベーション培地、pH7.4:
FBSなしのDMEMに、1%のペニシリン/ストレプトマイシンおよび30μg/mlのアスコルビン酸を添加、培地は保存しない。
【0113】
インキュベーション培地、pH5.5:
FBSなしのDMEMに、pHは、MESを加えることによって調整し、pHメーターを使用してモニターし、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび30μg/mlのアスコルビン酸を添加。
【0114】
GAG測定のための溶液:
DMMBの発色溶液(V=500ml):
DMMP(ジメチルメチレンブルー)8mgを2.5mlのエタノール+1gのギ酸ナトリウム+1mlのギ酸に溶解させ、再蒸留水で500mlに満たす。
【0115】
インキュベーション培地:FBS(FBSなしの培地)
コンドロイチン硫酸溶液(標準曲線)
以下の濃度の標準溶液の調製:50μg/ml;25μg/ml;12.5μg/ml;6.25μg/ml;3.125μg/ml;1.56μg/ml;0.78μg/mlおよび培地のブランクコントロール。標準溶液の調製は、実験でもまた実施した培地で実施する。
【0116】
1.)
手順:ウシ外植片のpH誘発性軟骨分解
ウシの外植片を最初に調製する。軟骨分解の誘導は、96マルチウェルプレート中で実施する。1つの外植片は、ウェルごとに培養する。それぞれの場合において、200μlのFBSなしのDMEM(インキュベーション培地 pH5.5)+30μg/mlのアスコルビン酸を加える。ネガティブコントロールとして、外植片を(n=4)pH7.4中でインキュベートする(FBSなし)。このコントロールは、データの計算に含まれないが、その代わり、pHの変化は、GAGの放出に所望の効果を有することを保証する。この時点で、試験されるべき基質を加える。外植片のプレインキュベーションは実施しない。外植片を、37℃、7.5%CO
2で、インキュベーターにおいて3日間、対応する基質と培養する。
【0117】
2.)インキュベーション手順
GAG(グリコサミノグリカン)の遊離について、カテプシンDインヒビターの効果を検討するために、基質を、所望の濃度で採用して、3日間培養した。最初の実験において、試験されるべき化合物を、1μMおよび1%の濃度のDMSOで試験する。GAGの遊離に>50%の効果を持つ基質(これはAssay Explorerにおいてコントロールの<50%に対応する)は、次の実験において、100nMおよび1%のDMSOで試験する。これらの条件下(これはAssay Explorerでコントロールの<50%に対応する)でのGAGの放出について、>50%の効果を有する基質を、濃度/作用関係で試験する。化合物を、本明細書では、以下の濃度で検討する:30μM、10μM、3μM、1μM、0.3μM、0.1μM、0.03μM、0.01μM。
【0118】
使用されるポジティブコントロールは、0.01μMの濃度を有するペプスタチンAである。アッセイウィンドウ(assay window)をコントロールによって定義され(pH5.5)、0%の効果として定義され、およびコントロールpH5.5+0.01μM ペプスタチンA、100%の効果として定義される。3日間のインキュベーションの後、細胞培養上清を回収し、−20℃で保存するか、または直接測定する。放出されたGAGの量は、測光法で測定される。
【0119】
ポジティブコントロール(pH5.5+0.01μM ペプスタチンA)およびネガティブコントロール(pH5.5)に基づく%における、それぞれの基質の効果(1値)は、1μMおよび100nMの濃度について報告されている。値は、4つの反復の平均を表す。濃度/作用関係の決定で、IC
50値は、データベース(Assay Explorer)に報告される。
【0120】
4.)測定
細胞培養上清(200μl)を直接測定するかまたは、−20℃で保存する。GAGの濃度(上清中のGAG/mlの)の正確な決定を確実にするために、測定値を、標準曲線の線形領域において配置しなければならない。これを確実にするために、様々な希釈物を規定通りに(1/5、1/10、1/20、1/40)に導入する。希釈物を、培地を用いて調製し、384マルチウェルプレート(15μL)に自動的に(Hamilton)を導入した。DMMB溶液60μlを、同様に自動的に(またはマルチチャンネルピペットを使用して)加える。急速な呈色反応が発生し、その後、プレートリーダー(例えば、Envision)を使用して633nmで測定する。サンプルの量に応じて、少なくとも1つの二重決定(double determination)を実施する。
【0121】
データをCSVまたはXLSファイルとしてMTPリーダーで提供し、このフォーマット(xlsファイル)に基づいて生データとして保存するか、または特定の化合物のパーセント効果の算出に使用する。
【0122】
5.)品質コントロール
pH誘導される軟骨分解を誘導するためのコントロールとして、4つの植片を、pH7.4でインキュベートする。これは、軟骨の生理学的pHに対応し、したがって、ここでは、GAGの放出についての効果は予想されない。これらのGAG値(上清のμg/ml)は、常にこのようにpH5.5でインキュベーションのためのGAG値よりも有意に低い。両方の実験を確認するために機能するが、アッセイウィンドウの定義のためにも重要である、さらなるコントロールは、ペプスタチンコントロール(pH5.5+0.01μmペプスタチンA)である。この基質は、非特異的にほとんどのプロテアーゼの活性をブロックし、ひいては、化合物の最大可能効果を決定する。
【0123】
6.)結果
ペプスタチンはGAGアッセイにおけるナノモル範囲でのIC
50値を提示する(表1参照)。
(1)Klompmakers, A. & Hendriks, T. (1986) Anal. Biochem. 153, 80-84,
Spectrophotometric Detection of Sulfated Glycosaminoglycans.
(2)Groves, P.J. et al. (1997) Anal. Biochem. 245, 247-248
Polyvinyl alcohol-stabilised binding of sulfated GAGs to dimethylmethylene blue.
【0124】
例4:動物における抗痛覚過敏作用の検討
炎症反応を誘導するために、カラギーナン溶液(CAR、1%、50μl)を、ラットの膝関節の片側に関節内注射した。非注入側をコントロールの目的のために使用した。群ごとに6匹の動物を使用した。閾値は、マイクロメータねじ(膝関節の内側−外側)によって決定し、熱痛覚過敏を足の裏で、Hargreaves法(Hargreaves et al.1988)による指向性の赤外線光源によって決定した。炎症部位(膝関節)は、測定部位(足の裏)と異なるので、二次熱痛覚過敏という用語は、そのメカニズムが、有効な鎮痛薬の発見にとって重要であるから、本明細書で使用する。
【0125】
熱痛覚過敏(Hargreaves試験)の実験の説明:実験動物を、石英シート上に、プラスチックチャンバーに配置した。試験の前、実験動物に、最初に約5〜15分の時間を与え、それ自体を環境に慣れさせる。実験動物が、もはや習熟段階後(探索段階の終了)に頻繁に移動しなくなったらすぐに、焦点がガラス底部の平面内にある赤外光源を、刺激されるように、後肢の直接下に配置する。そして実験の実行は、ボタンを押すことによって開始する:赤外光は、後足の皮膚温度の上昇をもたらす。
【0126】
実験は、実験動物が(疼痛閾値の発現が達成されたものとして)後足を上げるか、または予め指定された最大温度に到達したとき、赤外線光源の自動的なスイッチオフによる、いずれかによって終了する。実験動物が、静止し座る限りは、足によって反射された光を記録する。足の引っ込め(withdraw)がこの反射を中断し、その後、赤外光源がスイッチオフされ、スイッチオンからスイッチオフまでの時間を記録する。計器は、赤外光源が10秒間で約45℃まで皮膚温度を増加させるような方法で検量する(Hargreaves et al. 1988)。この目的のためにUgo Basileによって作られた計器を試験のために使用する。
【0127】
CARは、Sigma-Aldrichから購入した。本発明の特定のカテプシンDインヒビターの投与は、CARの30分前に関節内で、実施した。トリアムシノロン(TAC)を10μg/関節をポジティブコントロールとして使用し、溶媒(ビヒクル)をネガティブコントロールとして使用した。痛覚過敏は、炎症を起こす足と炎症を起こさない足との間の引っ込み時間の差として引用する。
【0128】
結果:TACは、CAR誘発性腫脹を軽減することが可能であったが、ペプスタチンは可能ではなかった。対照的に、ペプスタチンは、熱痛覚過敏の程度を用量に応じて減少させることができた。
評価:ペプスタチンが、抗痛覚過敏作用を発揮することが示された。ペプスタチンが炎症性腫脹および、したがって、痛覚過敏のトリガーに影響がないことを提示するので、これを前提とすることができる。したがって、ペプスタチンがヒトにおける疼痛低下作用を呈することを、推測することができる。
【0129】
例5:ウシ滑液におけるペプスタチンの安定性
1.)ウシ滑液の抽出
ウシ移植片の調製において(拡散チャンバーまたは他のアッセイのために)、牛の蹄(中手関節)または牛の膝のいずれかを使用する。滑液は、両方の関節から得ることができる。この目的を達成するために、10mlのシリンジおよびカニューレを使用して、開いた関節から滑液を注意深く除去し、調製した2mlのエッペンドルフ容器に移した。エッペンドルフ容器を、動物に応じて標識する(牛パスポートが入手可能である)。ここで、関節を調製する間に、血液が関節の隙間に入らないことを確実にしなければならない。このような場合は、滑液が赤みを帯びた色になり、結果として、廃棄しなければならない。滑液は基本的に高粘性で、透明から黄色っぽい色である。滑液の巨視的分析とともに除去を記載する。
【0130】
2.)SF中の物質の安定性試験のためのバッチ
個々の化合物の安定性を確認するために、4つの異なるウシ滑液のプールを混合する。そのため、SFごとに約1mlを使用する。混合物は、任意の吸収の影響を最小にするために5mLのガラス容器中で直接調製する。SFは完全に、しかし、慎重に混合する。気泡または泡は形成されないはずである。そのため、渦流ユニットは、最低速度で使用する。試験されるべき化合物は、1μmの初期濃度(それ以外が要求されない限り)で試験する。物質を加えた後、バッチを完全に、注意深く再度混合する。視覚的なモニタリングのために、すべてのSFバッチが撮影され、写真は、対応する実験のためにeLabBioファイルにファイルする。バッチを48h、37℃、および7.5%CO
2で、インキュベーターにおいてインキュベートする。
【0131】
3.)サンプリング
サンプリングは、事前に決められた時間の後に実施する(そうでない場合は、要求されない限り、以下を参照)。SFの4×200μlを各時点で混合物から除去し、0.5ml「低結合」エッペンドルフ容器に直接移される。「低結合」エッペンドルフ容器は、容器のプラスチックとの物質の相互作用を最小化するために使用される。それぞれの場合において、後でSFの1+1混合物が形成するよう、アセトニトリル200μlを予めエッペンドルフ容器に導入しておく。これは、その後の分析を簡素化するが、タンパク質の沈殿は、SFを加えた直後に発生してもよい。これは、記録上で注意すべきである。物質を加えた直後に、0hのサンプルを取り出す。これは、安定性の計算における100%の値に対応する。理想的には、採用される濃度は、ここで取得されるべきである。サンプルは−20℃で凍結され得る。
・0h
・6h
・24h
・48h
【0132】
使用されるネガティブコントロールは、基質のないSFである。使用されるポジティブコントロールは、基質1μMを有するSFである。これは、0h値、ひいては、100%の安定性に対応する。
【0133】
サンプルは−20℃で「低結合」エッペンドルフ容器に保存する。サンプルは、その後、定量的に測定する。対応する基質の検出は、質量分析によって実施する。
【0134】
4.)データプロセシング
測定された濃度(ng/ml)を、グラフ(Graph Pad Prism(登録商標))で時間に対してプロットする。基質の比率安定性がここで決定される。使用される100%の値は、SFにおいて、0hの時間で初期値である。データは、各実験番号の下で、eLabBioにおいて保存し、MSRのデータベース(対応するインキュベーション時間後のパーセント安定性)において報告する。
【0135】
5.)結果
ペプスタチンは、滑液中に少なくとも2週間にわたって安定したままである(
図1参照)。
【0136】
例6:関節内注射後の薬物動態学的データ
本試験(KK−Rat−12−003)のために、14匹の雄のリスターフーデッドラットを使用した。すべてのラットは、時間「0」で、両方の膝関節へ単回の関節内注射を受けた。注射液は、均一に懸濁した化合物(懸濁液=PBS中の0.25%Tween20との0.5%Methocel K4M中の化合物)の約700μgのうちの30μlからなる。懸濁液は、25Gのカニューレを介して投与した。例えば、体重、膝腫脹または苦痛を楽にした体位などの生存中のパラメーターのいずれかの変化に関して、特殊性は認められなかった。表2に示す各時点で、動物を屠殺して、膝関節を調製し(皮膚および筋肉組織の除去)、さらなるプロセシングのために凍結した。
【0137】
冷凍した関節を短時間で解凍し、可能な限り骨ハサミを使用して、粉砕し、その後、80%エタノールの4倍の容積を加えた。その後、混合物をUltra-turraxを使用して均質化し、抽出物を室温で20分間振とうさせ、その後、少なくとも30分間、−20℃で保存した。次いで、混合物を、5分間13,000rpmで遠心分離した。上清の10μlのアリコートを内部標準溶液で、1:5000に希釈し、PCRプレートに移して、分析した。
【0138】
内部標準溶液20μlの血漿を20μlに加え、メタノール100μlを加え、混合物を5分間振とうさせた。抽出物を、少なくとも30分間、−20℃で保存し、その後、5分間13,000rpmで遠心分離した。上清80μlをPCRプレートに移し、分析した。
【0139】
すべてのサンプルをUPLC−MS/MSシステム補助的に用いて分析した。ペプスタチンの検出限界は、血漿中で0.1ng/mLおよび組織内で8μg/gであった。
【表2】
【0140】
懸濁液を関節内投与した後、ペプスタチンは、ラットの膝関節において、約106hの平均滞留時間およびわずかな滑膜からの徐放による非常に低い全身曝露および血液中の非常に高いクリアランスを提示する。ペプスタチンは、血漿における、いわゆるフリップフロップ動態、すなわち、末端血漿の半減期は、懸濁液からのペプスタチンの除去によってではなく、その代わり、滑膜を介した放出および拡散によって決定されることを提示する。しかしながら、ペプスタチンは、28日目まで投与した後、非常に低濃度で血漿において検出可能であった(
図2を参照)。
【0141】
例7:静脈内(i.v.)および経口(p.o.)投与後の薬物動態学的データ
ペプスタチンの薬物動態パラメーターは、最大で4つの物質のカクテルにおける試験物質の投与後、Wistarラット(体重約250g)で決定した。ペプスタチンは(投与のタイプごとにn=3)雄ラットに尾静脈へのi.v.ボーラス注射によって、またはステンレス鋼カニューレによる強制経口を介してのいずれかで投与した。試験物質をDMSO/PEG中に200/水(2/60/38 v/v)の0.8mg/mlの最終濃度で溶解し、0.2mg/kgの用量を静脈内で、0.5mg/kgの用量を経口で投与した。軽いイソフルラン麻酔で舌下静脈を介して投与した後の以下の時間で血液サンプル(200μl)を採取した:iv:0.1、0.5、1、2、4、6および24h;po:0.25、0.5、1、2、4、6および24h。
【0142】
血液サンプルを、リチウムヘパリンを含有する遠心チューブにおいて回収し、3分間、4℃で、約10,000gで遠心分離した。そこから得られた血漿は、直ちに−20℃で凍結させ、分析まで保存した。血漿中濃度は、標準的なLC−MS/MS法によって決定した。薬物動態パラメーターは、(CLP、Vss、T1/2、F)は、NCA分析を介して決定した。
【0143】
静脈内投与後、ペプスタチンは、非常に高いクリアランス(>100%の肝臓血流)、平均分布容積、および、その結果として、非常に短い血漿半減期(約0.14h)を提示する。経口投与した後、すべての血漿濃度は、検出限界以下であった(
図3参照)。
【0144】
例8:関節症におけるペプスタチンの有効性(インビボ)−ACLT tMxモデル
ラットを実験動物として選択した。剃毛および消毒の後、手術領域は、内側の皮膚を約1cmの長さでのカットによって開く。膝関節包を調製し、内側膝蓋骨靱帯を露出させる。関節包を開いて、内側傍膝蓋骨(parapatellar)靭帯および膝蓋骨の横変位のカット後は、前十字靱帯を、平滑末端を有する湾曲したナイフを使用してカットする(ACLT=前十字靭帯離断)。その後、所位置に半月板を保持する前部および後部靭帯を調製し、カットして、半月板は、除去されたtMx(内側半月板切除)である。形成していてもよい任意の血液凝固を除去するために、膝蓋骨を再配置した後、接合部を最終的に滅菌食塩溶液ですすぐ。
【0145】
膝蓋骨を再配置し、内側膝蓋靱帯を、カプセルのシールで連続縫合によって再固定する。筋肉を同様に縫合する。その後、皮膚をシングルステッチによって閉じる。手術時間は約10分である。術後の試験期間は6週間であった。
【0146】
関節内注射のために、動物を、イソフルラン1.5〜2%の用量で麻酔する。注射前に、ブプレノルフィンを皮下注射する。注射領域をやさしく剃毛し、消毒する。膝関節を、わずかに曲がった位置にさせ、試験されるべき物質またはビヒクルを関節に注射する。
【0147】
本試験のため、30μlで1mgのペプスタチンを採用した。ネガティブコントロールとして、1つの試験群にビヒクルのみを注射した。ポジティブコントロールとして、ラットの手術していない後肢を、それぞれの場合において使用した。
【0148】
組織学的プロセシング
採取した組織サンプルを、少なくとも72時間、パラホルムアルデヒド(4%)で固定し、次いで、24時間水道水を流しながらすすぐ。サンプルを、その後、4週間にわたって、Osteosoftによって脱灰する。次に、組織をパラフィンで浸潤させ、7μmの厚さの組織切片を調製した。評価のため、切片をSafraninO Fast Greenで染色した。
【0149】
評価
露光ゾーンの領域における2つの切片を各動物から選択し、評価システムを使用して経験豊富な2名によって評価した。評価システムは、V.B. Kraus et al (Osteoarthritis & Cartilage, 18, S3, 2010)による研究に基づいている。
【0150】
結果
ペプスタチンはまた、関節症におけるインビボでの有意な有効性を提示する(
図4参照)
【0151】
例9:マイクロダイアリシス(microdialysis)
作用部位における遊離医薬レベルは、薬剤の作用に決定的である。関節内注射の場合には、滑液における空間分布は、この点で非常に興味深い。
【0152】
滑液は、ペプチドの分析的決定のための複雑なマトリックスを表す一方で、他方では、遊離、すなわち、非タンパク質結合医薬画分のみ、作用に関連するため、マイクロダイアリシス法を用いた。マイクロダイアリシスから得られた溶出液は、滑液の複雑なマトリックスから遊離医薬レベルの分析を可能にする。その理由は、通過することができる特定のサイズまでの分子隔膜(マイクロダイアリシス膜)のみを採用しているためである。この「細孔径」は、溶出液の流量および材料の交換のための駆動力としての滑液中に存在する医薬の遊離濃度に加えて、溶出液中の薬剤の濃度を決定する。
【0153】
これらの検討のために、CMA製のクプロファン膜を装着した6kDaの孔径を有するマイクロダイアリシスプローブ(参照番号000082;CMA7;マイクロダイアリシスサンプル1mm3/pkg)を使用した。溶出液流速は0.5μL/分であった。
【0154】
まず、ウシ滑液中の放出動態を検討し、トリアムシノロン(Triam Injekt(登録商標)20mg)−関節内注射のために承認された医薬と比較した。ペプスタチン結晶を溶解していない滑液に直接加えたのに対し、ここで、予め溶解した結晶懸濁液で、トリアムシノロンを採用した。滑液1mlごとに3mgの医薬を、ガラス容器において採用し、このことは膝関節への関節内注射後の濃度条件にほぼ対応する。および、驚いたことに、トリアムシノロンとは対照的に、非常に高いレベルの未結合のペプスタチンを測定した。おおよその一定のレベルはまた、滑液におけるペプスタチンの高い安定性での速い溶解速度を示唆する(
図5aを参照)。
【0155】
滑液中のペプスタチンを高い溶解性により、モルモット(Dunkin Hartley)についての関節マイクロダイアリシスの結果は驚くべきものである。14日までペプスタチン[1mg/関節を、懸濁液として50μlで投与]を関節内注射した後、関節において、および、検討した実質的にすべての溶出液において、ペプスタチンを有意なレベルで検出可能である(
図5bおよび5cを参照)。