(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS C 6471の方法Aに準拠して前記極薄銅層から前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値をA’とし、標準偏差をσ’とし、Ni付着量の変動係数をX’=σ’×100/A’とすると、X’が1.0〜15.0%を満たす請求項1又は2に記載のキャリア付銅箔。
前記粗化処理層が、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層である請求項5に記載のキャリア付銅箔。
前記中間層は、キャリア上にニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及びクロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がこの順で積層されて構成されている請求項1〜8のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
前記中間層は、前記キャリア上にニッケル、ニッケル−亜鉛合金、ニッケル−リン合金、ニッケル−コバルト合金のいずれか1種の層、及び亜鉛クロメート処理層、純クロメート処理層、クロムめっき層のいずれか1種の層がこの順で積層されて構成されている請求項1〜11のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
前記中間層は、前記キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層、及び、少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層の順で積層されて構成されており、
前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2である請求項1〜13のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
前記中間層は、前記キャリア上に少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層、及び、ニッケル層またはニッケルを含む合金層の順で積層されて構成されており、
前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2である請求項1〜14のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
前記中間層は、前記キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層および、モリブデン、コバルト、モリブデンコバルト合金のいずれか1種以上を含む層の順で積層されて構成されており、
前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2であり、モリブデンが含まれる場合にはモリブデンの付着量が10〜1000μg/dm2、コバルトが含まれる場合にはコバルトの付着量が10〜1000μg/dm2である請求項1〜16のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
キャリア上に、ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層を形成した後、クロム、クロム合金またはクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層を形成し、少なくとも前記ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、または、クロム、クロム合金またはクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層のいずれかに亜鉛が含まれている中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む請求項1〜13のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法。
キャリア上に、ニッケルおよび亜鉛を含むめっき層を形成した後、クロムを含むめっき層またはクロメート処理層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む請求項1〜13のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法。
キャリア上に、ニッケルを含むめっき層を形成した後、クロムと亜鉛を含むめっき層または亜鉛クロメート処理層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む請求項1〜13のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法。
キャリア上に、ニッケルおよび亜鉛を含むめっき層を形成した後、クロムと亜鉛を含むめっき層または亜鉛クロメート処理層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む請求項1〜13のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法。
キャリア上に、ニッケルめっき層を形成した後、電解クロメートにより亜鉛クロメート処理層を形成することで中間層を形成する、又は、ニッケル−亜鉛合金めっき層を形成した後、電解クロメートにより純クロメート処理層または亜鉛クロメート処理層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む請求項1〜13のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法。
キャリア上に、ニッケルめっき層またはニッケルを含む合金めっき層を形成した後、少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む厚み25nm〜80nmの有機物層を形成する、又は、少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む厚み25nm〜80nmの有機物層を形成した後、ニッケルめっき層またはニッケルを含む合金めっき層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程を含む請求項1〜8、14〜16のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法。
キャリア上に、ニッケルめっき層またはニッケルを含む合金めっき層を形成した後、モリブデン、コバルト、モリブデンコバルト合金のいずれか1種以上を含む層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程を含む請求項1〜8、17のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
キャリア付銅箔においては、絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅箔が容易に剥離してはならず、一方、絶縁基板への積層工程後に極薄銅箔からキャリアが容易に剥離する必要がある。また、積層後に極薄銅箔からキャリアを剥離した後、極薄銅箔上にセミアディティブ法で回路を形成するため、良好なエッチング性を保持させるために有機物やエッチングされ難い金属および金属酸化物、金属水和酸化物の存在量を低減させる必要がある。
【0009】
特許文献1については、加熱プレス後の剥離性は良好であるが、極薄銅箔表面の状態に関しては言及されていない。
【0010】
また、同特許文献では、拡散防止層と剥離層の順番はどちらでも良いと記載されているが、記載の実施例は全てキャリア箔、剥離層、拡散防止層、電気銅めっきの順番であり、剥離の際に剥離層/拡散防止層界面は剥離する恐れがある。そうなると電気銅めっき(極薄銅層)の表面に拡散防止層が残り、回路を形成する際のエッチング不良に繋がる。
【0011】
特許文献2、3については、キャリア/極薄銅箔間の剥離強度等の特性を十分に検討したと考えられる記載が見られず、未だ改善の余地が残っている。
【0012】
そこで、本発明は、極薄銅箔のエッチング性が良好なキャリア付銅箔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明者は鋭意研究を重ねたところ、キャリア付銅箔を基板に所定の条件で加熱圧着し、キャリアを剥がした後、キャリアの剥離面のNi付着量及びその面内分布のバラツキを制御することで、極薄銅層について、面内バラツキが抑制された良好なエッチング性が得られることを見出した。
【0014】
本発明は上記知見を基礎として完成したものであり、一側面において、キャリアと、キャリア上に積層された中間層と、中間層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔であって、前記極薄銅層は前記キャリアより薄く、前記中間層はNiを含み、前記極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、JIS C 6471の方法Aに準拠して前記極薄銅層から前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量の平均値:Aが400μg/dm
2以下であり、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量の標準偏差をσとし、Ni付着量の変動係数をX=σ×100/Aとすると、Xが30.0%以下を満たすキャリア付銅箔である。
【0015】
本発明に係るキャリア付銅箔は一実施形態において、前記極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、JIS C 6471の方法Aに準拠して前記極薄銅層から前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量の平均値:Aが3〜300μg/dm
2である。
【0016】
本発明に係るキャリア付銅箔は別の一実施形態において、前記極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、JIS C 6471の方法Aに準拠して前記極薄銅層から前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値:Aが3〜250μg/dm
2である。
【0017】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、JIS C 6471の方法Aに準拠して前記極薄銅層から前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値:Aが3〜200μg/dm
2である。
【0018】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、JIS C 6471の方法Aに準拠して前記極薄銅層から前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値:Aが5〜100μg/dm
2である。
【0019】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、JIS C 6471の方法Aに準拠して前記極薄銅層から前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値をAとし、標準偏差をσとし、Ni付着量の変動係数をX=σ×100/Aとすると、Xが1.0〜25.0%を満たす。
【0020】
本発明は別の一側面において、キャリアと、キャリア上に積層された中間層と、中間層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔であって、前記極薄銅層は前記キャリアより薄く、前記中間層はNiを含み、前記極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、JIS C 6471の方法Aに準拠して前記極薄銅層から前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値をAとし、標準偏差をσとし、Ni付着量の変動係数をX=σ×100/Aとすると、Xが17.0%以下を満たすキャリア付銅箔である。
【0021】
本発明は更に別の一側面において、キャリアと、キャリア上に積層された中間層と、中間層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔であって、前記極薄銅層は前記キャリアより薄く、前記中間層はNiを含み、JIS C 6471の方法Aに準拠して前記極薄銅層から前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値:A’が400μg/dm
2以下であり標準偏差をσ’とし、Ni付着量の変動係数をX’=σ’×100/A’とすると、X’が20.0%以下を満たすキャリア付銅箔である。
【0022】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、JIS C 6471の方法Aに準拠して前記極薄銅層から前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値:A’が400μg/dm
2以下であり、標準偏差をσ’とし、Ni付着量の変動係数をX’=σ’×100/A’とすると、X’が20.0%以下を満たす。
【0023】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、JIS C 6471の方法Aに準拠して前記極薄銅層から前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値をA’とし、標準偏差をσ’とし、Ni付着量の変動係数をX’=σ’×100/A’とすると、X’が1.0〜15.0%を満たす。
【0024】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記中間層は、キャリア上にニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及びクロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がこの順で積層されて構成されている。
【0025】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記クロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がクロメート処理層を含む。
【0026】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記中間層は、亜鉛を含む。
【0027】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記中間層は、前記キャリア上にニッケル、ニッケル-亜鉛合金、ニッケル-リン合金、ニッケル-コバルト合金のいずれか1種の層、及び亜鉛クロメート処理層、純クロメート処理層、クロムめっき層のいずれか1種の層がこの順で積層されて構成されている。
【0028】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記中間層は、前記キャリア上に、ニッケル層またはニッケル-亜鉛合金層、及び、亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されている、又は、ニッケル-亜鉛合金層、及び、純クロメート処理層または亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されており、前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm
2、クロムの付着量が5〜100μg/dm
2、亜鉛の付着量が1〜70μg/dm
2である。
【0029】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記中間層は、前記キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層、及び、少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層の順で積層されて構成されており、前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm
2である。
【0030】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記中間層は、前記キャリア上に少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層、及び、ニッケル層またはニッケルを含む合金層の順で積層されて構成されており、前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm
2である。
【0031】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記中間層が有機物を厚みで25nm以上80nm以下含有する。
【0032】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記中間層は、前記キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層および、モリブデン、コバルト、モリブデンコバルト合金のいずれか1種以上を含む層の順で積層されて構成されており、
前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm
2であり、モリブデンが含まれる場合にはモリブデンの付着量が10〜1000μg/dm
2、コバルトが含まれる場合にはコバルトの付着量が10〜1000μg/dm
2である。
【0033】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアが電解銅箔または圧延銅箔で形成されている。
【0034】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層表面に粗化処理層を有する。
【0035】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記粗化処理層が、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層である。
【0036】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する。
【0037】
本発明に係るキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する。
【0038】
本発明は別の一側面において、キャリア上に、ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層を形成した後、クロム、クロム合金またはクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層を形成し、少なくとも前記ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、または、クロム、クロム合金またはクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層のいずれかに亜鉛が含まれている中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含むキャリア付銅箔の製造方法である。
【0039】
本発明に係るキャリア付銅箔の製造方法は一実施形態において、キャリア上に、ニッケルおよび亜鉛を含むめっき層を形成した後、クロムを含むめっき層またはクロメート処理層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む。
【0040】
本発明に係るキャリア付銅箔の製造方法は別の一実施形態において、キャリア上に、ニッケルを含むめっき層を形成した後、クロムと亜鉛を含むめっき層または亜鉛クロメート処理層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む。
【0041】
本発明に係るキャリア付銅箔の製造方法は更に別の一実施形態において、キャリア上に、ニッケルおよび亜鉛を含むめっき層を形成した後、クロムと亜鉛を含むめっき層または亜鉛クロメート処理層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む。
【0042】
本発明に係るキャリア付銅箔の製造方法は更に別の一実施形態において、キャリア上に、ニッケルめっき層を形成した後、電解クロメートにより亜鉛クロメート処理層を形成することで中間層を形成する、又は、ニッケル-亜鉛合金めっき層を形成した後、電解クロメートにより純クロメート処理層または亜鉛クロメート処理層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む。
【0043】
本発明に係るキャリア付銅箔の製造方法は更に別の一実施形態において、キャリア上に、ニッケルめっき層またはニッケルを含む合金めっき層を形成した後、少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む厚み25nm〜80nmの有機物層を形成する、又は、少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む厚み25nm〜80nmの有機物層を形成した後、ニッケルめっき層またはニッケルを含む合金めっき層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程を含む。
【0044】
本発明に係るキャリア付銅箔の製造方法は更に別の一実施形態において、キャリア上に、ニッケルめっき層またはニッケルを含む合金めっき層を形成した後、モリブデン、コバルト、モリブデンコバルト合金のいずれか1種以上を含む層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程を含む。
【0045】
本発明に係るキャリア付銅箔の製造方法は更に別の一実施形態において、前記中間層を形成する工程において、前記キャリアの搬送速度は30m/min以下である。
【0046】
本発明に係るキャリア付銅箔の製造方法は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層上に粗化処理層を形成する工程をさらに含む。
【0047】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法である。
【0048】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント回路板の製造方法である。
【0049】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を用いた銅張積層板の製造方法である。
【0050】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、極薄銅層のエッチング性が良好なキャリア付銅箔を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
<キャリア付銅箔>
本発明のキャリア付銅箔は、キャリアと、キャリア上に積層されたNiを含む中間層と、中間層上に積層された極薄銅層とを備える。キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板、プリント回路板、又は、銅張積層板等を製造することができる。
【0054】
キャリア付銅箔を熱圧着により基板に貼り合わせ、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥がした後の、極薄銅層に残存するNiの付着量が大きいと、極薄銅層のエッチング性が不良となる。このため、本発明のキャリア付銅箔は、極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、JIS C 6471に準拠して前記キャリアを剥がしたとき、極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量の平均値:Aが400μg/dm
2以下となるように制御されており、3〜300μg/dm
2となるように制御されているのがより好ましく、3〜250μg/dm
2となるように制御されているのがより好ましく、3〜200μg/dm
2となるように制御されているのがより好ましく、5〜100μg/dm
2となるように制御されているのがより好ましく、6〜80μg/dm
2となるように制御されているのがより好ましく、8〜60μg/dm
2となるように制御されているのがより好ましく、10〜50μg/dm
2となるように制御されているのがより好ましい。
【0055】
また、キャリア付銅箔を熱圧着により基板に貼り合わせ、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥がした後の、極薄銅層の剥離面のNi付着量の面内分布のバラツキが大きいと、エッチング性の面内分布のバラツキも大きくなり、極薄銅層のエッチング性が不良となる。このため、本発明のキャリア付銅箔は、極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、JIS C 6471に準拠して前記キャリアを剥がしたとき、極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値をAとし、標準偏差をσとしたときのNi付着量の変動係数:X=σ×100/Aを上記極薄銅層の中間層側表面のNi付着量の面内分布のバラツキの指標とし、これを制御することで、エッチング性の面内分布を一定の範囲内に制御し、これにより、極薄銅層のエッチング性の向上を図っている。本発明では、当該Ni付着量の変動係数:Xが30.0%以下を満たすように制御されており、Xが1.0〜25.0%を満たすように制御されているのが好ましく、1.0〜22%を満たすように制御されているのがより好ましく、1.5〜20%を満たすように制御されているのがより好ましく、2.0〜18%を満たすように制御されているのがより好ましく、17%以下を満たすように制御されているのがより好ましい。Ni付着量の変動係数:Xの制御は、中間層形成時のNiめっきの電流密度を低く保ち、搬送速度で付着量を制御することで行うことができる。また、中間層形成時のキャリアとアノードとの平行度を均一に保つことも有効である。
【0056】
また、絶縁基板との熱圧着をしないで、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥がしたときの極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を制御することも極薄銅層のエッチング性の向上に好ましい。このような観点から、本発明のキャリア付銅箔は、JIS C 6471に準拠して前記キャリアを剥がしたとき、極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値:A’が400μg/dm
2以下となるように制御されているのがより好ましく、1〜350μg/dm
2となるように制御されているのがより好ましく、2〜300μg/dm
2となるように制御されているのがより好ましく、5〜100μg/dm
2となるように制御されているのがより好ましい。
【0057】
また、絶縁基板との熱圧着をしないで、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥がしたときの極薄銅層の剥離面のNi付着量の面内分布のバラツキの抑制もエッチング性の面内分布のバラツキの抑制のために好ましい。このため、本発明のキャリア付銅箔は、極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値をA’とし、標準偏差をσ’とし、Ni付着量の変動係数をX’=σ’×100/A’とすると、X’が20.0%以下を満たすように制御されているのが好ましく、1.0〜15.0%を満たすように制御されているのがより好ましく、1.0〜14%を満たすように制御されているのがより好ましく、1.5〜13%を満たすように制御されているのがより好ましく、1.5〜12%を満たすように制御されているのがより好ましい。
【0058】
<キャリア>
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には金属箔または樹脂フィルムであり、例えば銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、鉄箔、鉄合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、絶縁樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、LCDフィルムの形態で提供される。
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供される。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としてはタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)や無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020またはJIS H3510 合金番号C1011)といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0059】
本発明に用いることのできるキャリアの厚さについても特に制限はないが、キャリアとしての役目を果たす上で適した厚さに適宜調節すればよく、例えば12μm以上とすることができる。但し、厚すぎると生産コストが高くなるので一般には35μm以下とするのが好ましい。従って、キャリアの厚みは典型的には12〜70μmであり、より典型的には18〜35μmである。
【0060】
<中間層>
キャリアの片面又は両面上にはNiを含む中間層を設ける。中間層は、キャリア上にニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及びクロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がこの順で積層されて構成されているのが好ましい。そして、ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及び/または、クロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層に亜鉛が含まれているのが好ましい。ここで、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素を含む合金のことをいう。また、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金であることが好ましい。ニッケルを含む合金は3種以上の元素からなる合金でも良い。また、クロム合金とはクロムと、コバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。クロム合金は3種以上の元素からなる合金でも良い。また、クロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層はクロメート処理層であってもよい。ここでクロメート処理層とは無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩または二クロム酸塩を含む液で処理された層のことをいう。クロメート処理層はコバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタン等の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物等どのような形態でもよい)を含んでもよい。クロメート処理層の具体例としては、純クロメート処理層や亜鉛クロメート処理層等が挙げられる。本発明においては、無水クロム酸または二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層を純クロメート処理層という。また、本発明においては無水クロム酸または二クロム酸カリウムおよび亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層を亜鉛クロメート処理層という。
また、中間層は、キャリア上にニッケル、ニッケル-亜鉛合金、ニッケル-リン合金、ニッケル-コバルト合金のいずれか1種の層、及び亜鉛クロメート処理層、純クロメート処理層、クロムめっき層のいずれか1種の層がこの順で積層されて構成されているのが好ましく、中間層は、キャリア上にニッケル層またはニッケル-亜鉛合金層、及び、亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されている、又は、ニッケル-亜鉛合金層、及び、純クロメート処理層または亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されているのが更に好ましい。ニッケルと銅との接着力はクロムと銅の接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とクロメート処理層との界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。また、中間層にクロムめっきではなくクロメート処理層を形成するのが好ましい。クロムめっきは表面に緻密なクロム酸化物層を形成するため、電気めっきで極薄銅箔を形成する際に電気抵抗が上昇し、ピンホールが発生しやすくなる。クロメート処理層を形成した表面は、クロムめっきとくらべ緻密ではないクロム酸化物層が形成されるため、極薄銅箔を電気めっきで形成する際の抵抗になりにくく、ピンホールを減少させることができる。ここで、クロメート処理層として、亜鉛クロメート処理層を形成することにより、極薄銅箔を電気めっきで形成する際の抵抗が、通常のクロメート処理層より低くなり、よりピンホールの発生を抑制することができる。
キャリアとして電解銅箔を使用する場合には、ピンホールを減少させる観点からシャイニー面に中間層を設けることが好ましい。
【0061】
中間層のうちクロメート処理層は極薄銅層の界面に薄く存在することが、絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離しない一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能であるという特性を得る上で好ましい。ニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル-亜鉛合金層)を設けずにクロメート処理層をキャリアと極薄銅層の境界に存在させた場合は、剥離性はほとんど向上しないし、クロメート処理層がなくニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル-亜鉛合金層)と極薄銅層を直接積層した場合は、ニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル-亜鉛合金層)におけるニッケル量に応じて剥離強度が強すぎたり弱すぎたりして適切な剥離強度は得られない。
【0062】
また、クロメート処理層がキャリアとニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル-亜鉛合金層)の境界に存在すると、極薄銅層の剥離時に中間層も付随して剥離されてしまう、すなわちキャリアと中間層の間で剥離が生じてしまうので好ましくない。このような状況は、キャリアとの界面にクロメート処理層を設けた場合のみならず、極薄銅層との界面にクロメート処理層を設けたとしてもクロム量が多すぎると生じ得る。これは、銅とニッケルは固溶しやすいので、これらが接触していると相互拡散によって接着力が高くなり剥離しにくくなる一方で、クロムと銅は固溶しにくく、相互拡散が生じにくいので、クロムと銅の界面では接着力が弱く、剥離しやすいことが原因と考えられる。また、中間層のニッケル量が不足している場合、キャリアと極薄銅層の間には微量のクロムしか存在しないので両者が密着して剥がれにくくなる。
【0063】
中間層のニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル-亜鉛合金層)は、例えば電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき、或いはスパッタリング、CVD及びPDVのような乾式めっきにより形成することができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。なお、キャリアが樹脂フィルムの場合には、CVD及びPDVのような乾式めっきまたは無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっきにより中間層を形成することができる。
また、クロメート処理層は、例えば電解クロメートや浸漬クロメート等で形成することができるが、クロム濃度を高くすることができ、キャリアからの極薄銅層の剥離強度が良好となるため、電解クロメートで形成するのが好ましい。
また、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm
2、クロムの付着量が5〜100μg/dm
2、亜鉛の付着量が1〜70μg/dm
2であるのが好ましい。上述のように、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後の極薄銅層の表面のNi量が制御されているが、このように剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御するためには、中間層のNi付着量を少なくするとともに、Niが極薄銅層側へ拡散するのを抑制する金属種(Cr、Zn)を中間層が含んでいることが好ましい。このような観点から、中間層のNi含有量は、100〜40000μg/dm
2であるのが好ましく、200μg/dm
2以上20000μg/dm
2以下であるのが更に好ましく、500μg/dm
2以上10000μg/dm
2以下であるのが更に好ましく、700μg/dm
2以上5000μg/dm
2以下であるのが更に好ましく、700μg/dm
2以上3000μg/dm
2以下であるのが更に好ましい。また、Crは5〜100μg/dm
2含有するのが好ましく、8μg/dm
2以上50μg/dm
2以下であるのが更に好ましく、10μg/dm
2以上40μg/dm
2以下であるのが更に好ましく、12μg/dm
2以上30μg/dm
2以下であるのが更に好ましい。Znは1〜70μg/dm
2含有するのが好ましく、3μg/dm
2以上30μg/dm
2以下であるのが更に好ましく、5μg/dm
2以上20μg/dm
2以下であるのが更に好ましい。
また、中間層形成時のキャリア搬送速度(ライン速度)を遅くし、および/またはめっき処理での電流密度を低くすると、ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及びクロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層の密度が高くなる傾向にある。ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及びクロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層の密度が高くなると、ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層のニッケルが拡散し難くなり、剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御することができる。
【0064】
本発明のキャリア付銅箔の中間層は、キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層、及び、少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層の順で積層されて構成されており、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm
2であってもよい。なお、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。ニッケルを含む合金は3種以上の元素からなる合金でもよい。ニッケルを含む合金は上述した元素以外の元素を含んでも良い。また、本発明のキャリア付銅箔の中間層は、キャリア上に少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層、及び、ニッケル層またはニッケルを含む合金層の順で積層されて構成されており、中間層におけるニッケルの付着量が5〜40000μg/dm
2であってもよい。なお、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。ニッケルを含む合金は3種以上の元素からなる合金でもよい。ニッケルを含む合金は上述した元素以外の元素を含んでも良い。上述のように、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後の極薄銅層の表面のNi量が制御されているが、このように剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御するためには、中間層のNi付着量を少なくするとともに、Niが極薄銅層側へ拡散するのを抑制する窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層を中間層が含んでいることが好ましい。このような観点から、中間層のNi含有量は、5〜40000μg/dm
2であるのが好ましく、100μg/dm
2以上10000μg/dm
2以下であるのが更に好ましく、300μg/dm
2以上5000μg/dm
2以下であるのが更に好ましく、500μg/dm
2以上3000μg/dm
2以下であるのが更に好ましい。また、当該窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物としては、BTA(ベンゾトリアゾール)、MBT(メルカプトベンゾチアゾール)等が挙げられる。
【0065】
また、中間層が含有する有機物としては、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなるものを用いることが好ましい。窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のうち、窒素含有有機化合物は、置換基を有する窒素含有有機化合物を含んでいる。具体的な窒素含有有機化合物としては、置換基を有するトリアゾール化合物である1,2,3−ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア、1H−1,2,4−トリアゾール及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール等を用いることが好ましい。
硫黄含有有機化合物には、メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、チオシアヌル酸及び2−ベンズイミダゾールチオール等を用いることが好ましい。
カルボン酸としては、特にモノカルボン酸を用いることが好ましく、中でもオレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等を用いることが好ましい。
前述の有機物は厚みで25nm以上80nm以下含有するのが好ましく、30nm以上70nm以下含有するのがより好ましい。中間層は前述の有機物を複数種類(一種以上)含んでもよい。
なお、有機物の厚みは以下のようにして測定することができる。
【0066】
<中間層の有機物厚み>
キャリア付銅箔の極薄銅層をキャリアから剥離した後に、露出した極薄銅層の中間層側の表面と、露出したキャリアの中間層側の表面をXPS測定し、デプスプロファイルを作成する。そして、極薄銅層の中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをA(nm)とし、キャリアの中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをB(nm)とし、AとBとの合計を中間層の有機物の厚み(nm)とすることができる。
XPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10
-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar
+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.8nm/min(SiO
2換算)
【0067】
中間層が含有する有機物の使用方法について、以下に、キャリア箔上への中間層の形成方法についても述べつつ説明する。キャリア上への中間層の形成は、上述した有機物を溶媒に溶解させ、その溶媒中にキャリアを浸漬させるか、中間層を形成しようとする面に対するシャワーリング、噴霧法、滴下法及び電着法等を用いて行うことができ、特に限定した手法を採用する必要性はない。このときの溶媒中の有機系剤の濃度は、上述した有機物の全てにおいて、濃度0.01g/L〜30g/L、液温20〜60℃の範囲が好ましい。有機物の濃度は、特に限定されるものではなく、本来濃度が高くとも低くとも問題のないものである。なお、有機物の濃度が高いほど、また、上述した有機物を溶解させた溶媒へのキャリアの接触時間が長いほど、中間層の有機物厚みは大きくなる傾向にある。そして、中間層の有機物厚みが厚い場合、Niの極薄銅層側への拡散を抑制するという、有機物の効果が大きくなる傾向にある。
また、中間層形成時のキャリア搬送速度(ライン速度)を遅くし、および/またはめっき処理での電流密度を低くすると、ニッケル層またはニッケルを含む合金層の密度および有機物の密度が高くなる傾向にある。ニッケル層またはニッケルを含む合金層の密度および有機物の密度が高くなると、ニッケル層またはニッケルを含む合金層のニッケルが拡散し難くなり、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥がした後のキャリアの剥離面のNi付着量を制御することができる。
また、中間層は、キャリア上に、ニッケルと、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金とがこの順で積層されて構成されていることが好ましい。ニッケルと銅との接着力は、モリブデンまたはコバルトと銅との接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金との界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。
なお、前述のニッケルはニッケルを含む合金であっても良い。ここで、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素とを含む合金のことをいう。また、ニッケルを含む合金はニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金であってもよい。また、前述のモリブデンはモリブデンを含む合金であっても良い。ここで、モリブデンを含む合金とはモリブデンと、コバルト、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素とを含む合金のことをいう。また、モリブデンを含む合金はモリブデンと、コバルト、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金であってもよい。また、前述のコバルトはコバルトを含む合金であっても良い。ここで、コバルトを含む合金とはコバルトと、モリブデン、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素とを含む合金のことをいう。また、コバルトを含む合金とはコバルトと、モリブデン、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金であってもよい。
モリブデン−コバルト合金はモリブデン、コバルト以外の元素(例えばニッケル、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素)を含んでも良い。
キャリアとして電解銅箔を使用する場合には、ピンホールを減少させる観点からシャイニー面に中間層を設けることが好ましい。
中間層のうちモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層は極薄銅層の界面に薄く存在することが、絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離しない一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能であるという特性を得る上で好ましい。ニッケル層を設けずにモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層をキャリアと極薄銅層の境界に存在させた場合は、剥離性はほとんど向上しない場合があり、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層がなくニッケル層と極薄銅層を直接積層した場合はニッケル層におけるニッケル量に応じて剥離強度が強すぎたり弱すぎたりして適切な剥離強度は得られない場合がある。
また、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層がキャリアとニッケル層の境界に存在すると、極薄銅層の剥離時に中間層も付随して剥離されてしまう場合がある、すなわちキャリアと中間層の間で剥離が生じてしまうので好ましくない場合がある。このような状況は、キャリアとの界面にモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層を設けた場合のみならず、極薄銅層との界面にモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層を設けたとしてもモリブデン量またはコバルト量が多すぎると生じ得る。これは、銅とニッケルとは固溶しやすいので、これらが接触していると相互拡散によって接着力が高くなり剥離しにくくなる一方で、モリブデンまたはコバルトと銅とは固溶しにくく、相互拡散が生じにくいので、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層と銅との界面では接着力が弱く、剥離しやすいことが原因と考えられる。また、中間層のニッケル量が不足している場合、キャリアと極薄銅層の間には微量のモリブデンまたはコバルトしか存在しないので両者が密着して剥がれにくくなる場合がある。
中間層のニッケル及びコバルトまたはモリブデン−コバルト合金は、例えば電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき、或いはスパッタリング、CVD及びPDVのような乾式めっきにより形成することができる。また、モリブデンはCVD及びPDVのような乾式めっきのみにより形成することができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。
中間層において、ニッケルの付着量は5〜40000μg/dm
2であり、モリブデンの付着量は10〜1000μg/dm
2であり、コバルトの付着量は10〜1000μg/dm
2である。上述のように、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後の極薄銅層の表面のNi量が制御されているが、このように剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御するためには、中間層のNi付着量を少なくするとともに、Niが極薄銅層側へ拡散するのを抑制する金属種(Co、Mo)を中間層が含んでいることが好ましい。このような観点から、ニッケル付着量は5〜40000μg/dm
2とすることが好ましく、100〜30000μg/dm
2とすることが好ましく、300〜15000μg/dm
2とすることがより好ましく、300〜10000μg/dm
2とすることがより好ましい。中間層にモリブデンが含まれる場合には、モリブデン付着量は10〜1000μg/dm
2とすることが好ましく、モリブデン付着量は20〜600μg/dm
2とすることが好ましく、30〜400μg/dm
2とすることがより好ましい。中間層にコバルトが含まれる場合には、コバルト付着量は10〜1000μg/dm
2とすることが好ましく、コバルト付着量は20〜600μg/dm
2とすることが好ましく、30〜400μg/dm
2とすることがより好ましい。
また、中間層にモリブデンとコバルトの両方が含まれる場合には、モリブデンとコバルトの合計の付着量は10〜1000μg/dm
2とすることが好ましく、モリブデンとコバルトの合計の付着量は20〜600μg/dm
2とすることが好ましく、30〜400μg/dm
2とすることがより好ましい。
なお、上述のように中間層は、キャリア上に、ニッケルと、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金とがこの順で積層した場合には、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層を設けるためのめっき処理での電流密度を低くし、キャリアの搬送速度(ライン速度)を遅くするとモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層の密度が高くなる傾向にある。モリブデン及び/またはコバルトを含む層の密度が高くなると、ニッケル層のニッケルが拡散し難くなり、剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御することができる。
【0068】
<ストライクめっき>
中間層の上には極薄銅層を設ける。その前に極薄銅層のピンホールを低減させるために銅−リン合金によるストライクめっきを行ってもよい。ストライクめっきにはピロリン酸銅めっき液などが挙げられる。
【0069】
<極薄銅層>
中間層の上には極薄銅層を設ける。極薄銅層は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気めっきにより形成することができ、一般的な電解銅箔で使用され、高電流密度での銅箔形成が可能であることから硫酸銅浴が好ましい。極薄銅層の厚みは特に制限はないが、一般的にはキャリアよりも薄く、例えば12μm以下である。典型的には0.5〜12μmであり、より典型的には2〜5μmである。
【0070】
<粗化処理>
極薄銅層の表面には、例えば絶縁基板との密着性を良好にすること等のために粗化処理を施すことで粗化処理層を設けてもよい。粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理は微細なものであっても良い。粗化処理層は、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層などであってもよい。また、銅又は銅合金で粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。その後に、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層または防錆層を形成しても良く、更にその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。または粗化処理を行わずに、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層又は防錆層を形成し、さらにその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。すなわち、粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよく、極薄銅層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。なお、上述の耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層はそれぞれ複数の層で形成されてもよい(例えば2層以上、3層以上など)。
【0071】
<プリント配線板、プリント回路板及び銅張積層板>
キャリア付銅箔を極薄銅層側から絶縁樹脂板に貼り付けて熱圧着させ、キャリアを剥がすことで銅張積層板を作製することができる。また、その後、極薄銅層部分をエッチングすることにより、プリント配線板やプリント回路板の銅回路を形成することができる。ここで用いる絶縁樹脂板はプリント配線板やプリント回路板に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等を使用する事ができる。このようにして作製したプリント配線板、プリント回路板、銅張積層板は、搭載部品の高密度実装が要求される各種電子部品に搭載することができる。
【0072】
<プリント配線板の製造方法>
本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを極薄銅層側が絶縁基板と対向するように積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、モディファイドセミアディティブ法、パートリーアディティブ法及びサブトラクティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含む。絶縁基板は内層回路入りのものとすることも可能である。
【0073】
本発明において、セミアディティブ法とは、絶縁基板又は銅箔シード層上に薄い無電解めっきを行い、パターンを形成後、電気めっき及びエッチングを用いて導体パターンを形成する方法を指す。
【0074】
従って、セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0075】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0076】
本発明において、モディファイドセミアディティブ法とは、絶縁層上に金属箔を積層し、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けを行った後、レジストを除去し、前記回路形成部以外の金属箔を(フラッシュ)エッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する方法を指す。
【0077】
従って、モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した極薄銅層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
【0078】
モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0079】
本発明において、パートリーアディティブ法とは、導体層を設けてなる基板、必要に応じてスルーホールやバイアホール用の孔を穿けてなる基板上に触媒核を付与し、エッチングして導体回路を形成し、必要に応じてソルダレジストまたはメッキレジストを設けた後に、前記導体回路上、スルーホールやバイアホールなどに無電解めっき処理によって厚付けを行うことにより、プリント配線板を製造する方法を指す。
【0080】
従って、パートリーアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
【0081】
本発明において、サブトラクティブ法とは、銅張積層板上の銅箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。
【0082】
従って、サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0083】
サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されていない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0084】
スルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、及びその後のデスミア工程は行わなくてもよい。
【実施例】
【0085】
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0086】
1.キャリア付銅箔の製造
キャリアとして、厚さ35μmの長尺の電解銅箔(JX日鉱日石金属社製JTC)及び圧延銅箔(JX日鉱日石金属社製 タフピッチ銅箔 JIS H3100 合金番号C1100)を用意し、表面に中間層を形成した。中間層の形成は、表1の「中間層形成方法」の項目に記載の処理順により行った。すなわち、例えば「Ni/亜鉛クロメート」と表記されているものは、まず「Ni」の処理を行った後、「亜鉛クロメート」の処理を行ったことを示している。また、当該「中間層」の項目において、「Ni」と表記されているのは純ニッケルめっきを行ったことを意味し、「Ni−Zn」と表記されているのはニッケル亜鉛合金めっきを行ったことを意味し、「スパッタNi」と表記されているのはスパッタリングでNiめっきを形成したことを意味し、「純クロメート」と表記されているのは純クロメート処理を行ったことを意味し、「BTA処理」と表記されているのはベンゾトリアゾールを用いた表面処理を行ったことを意味する。以下に、各処理条件を示す。なお、Ni、Zn、Cr、Mo、Coの付着量を多くする場合には、電流密度を高めに設定すること、および/または、めっき時間を長めに設定すること、および/または、めっき液中の各元素の濃度を高くすることを行った。また、Ni、Zn、Cr、Mo、Coの付着量を少なくする場合には、電流密度を低めに設定すること、および/または、めっき時間を短めに設定すること、および/または、めっき液中の各元素の濃度を低くすることを行った。また、めっき液等の液組成の残部は水である。
【0087】
・「Ni」:ニッケルめっき
(液組成)硫酸ニッケル:270〜280g/L、塩化ニッケル:35〜45g/L、酢酸ニッケル:10〜20g/L、クエン酸三ナトリウム:15〜25g/L、光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等、ドデシル硫酸ナトリウム:55〜75ppm
(pH)4〜6
(液温)55〜65℃
(電流密度)1〜25A/dm
2
(通電時間)1〜20秒
【0088】
・「Ni−Zn」:ニッケル亜鉛合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中に硫酸亜鉛(ZnSO
4)の形態の亜鉛を添加し、亜鉛濃度:0.05〜5g/Lの範囲で調整してニッケル亜鉛合金めっきを形成した。
【0089】
・「Ni−Co」:ニッケルコバルト合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中に硫酸コバルトの形態のコバルトを添加し、コバルト濃度:0.1〜10g/Lの範囲で調整してニッケルコバルト合金めっきを形成した。
【0090】
・「Ni−W」:ニッケルタングステン合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中にタングステン酸ナトリウム形態のタングステンを添加し、タングステン濃度:0.1〜10g/Lの範囲で調整してニッケルタングステン合金めっきを形成した。
【0091】
・「Ni−Mo」:ニッケルモリブデン合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中にモリブデン酸ナトリウムの形態のモリブデンを添加し、モリブデン濃度:0.1〜10g/Lの範囲で調整してニッケルモリブデン合金めっきを形成した。
【0092】
・「Ni−Sn」:ニッケルスズ合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中にスズ酸ナトリウムの形態のスズを添加し、スズ濃度:0.1〜10g/Lの範囲で調整してニッケルスズ合金めっきを形成した。
【0093】
・「Cr」:クロムめっき
(液組成)CrO
3:200〜400g/L、H
2SO
4:1.5〜4g/L
(pH)1〜4
(液温)45〜60℃
(電流密度)10〜40A/dm
2
(通電時間)1〜20秒
【0094】
・「純クロメート」:純クロメート処理
(液組成)重クロム酸カリウム:1〜10g/L、亜鉛:0g/L
(pH)2〜4、7〜10
(液温)40〜60℃
(電流密度)0.1〜2.6A/dm
2
(クーロン量)0.5〜90As/dm
2
(通電時間)1〜30秒
【0095】
・「亜鉛クロメート」:亜鉛クロメート処理
上記電解純クロメート処理条件において、液中に硫酸亜鉛(ZnSO
4)の形態の亜鉛を添加し、亜鉛濃度:0.05〜5g/Lの範囲で調整して亜鉛クロメート処理を行った。
【0096】
・BTA処理:ベンゾトリアゾールを用いた表面処理
(液組成)ベンゾトリアゾール:0.1〜20g/L
(pH)2〜5
(液温)20〜40℃
(浸漬時間)5〜30s
【0097】
・MBT処理:メルカプトベンゾチアゾールを用いた表面処理
(液組成)2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム:0.1〜20g/L
(pH)7〜10
(液温)40〜60℃
(電圧)1〜5V
(通電時間)1〜30秒
【0098】
・「スパッタNi」:スパッタリングによるNiめっき
Ni:99mass%の組成のスパッタリングターゲットを用いてニッケル層を形成した。
ターゲット:Ni:99mass%
装置:株式会社アルバック製のスパッタ装置
出力:DC50W
アルゴン圧力:0.2Pa
【0099】
・「スパッタCr」:スパッタリングによるCrめっき
Cr:99mass%の組成のスパッタリングターゲットを用いてクロム層を形成した。
ターゲット:Cr:99mass%
装置:株式会社アルバック製のスパッタ装置
出力:DC50W
アルゴン圧力:0.2Pa
【0100】
・「Mo−Co」:モリブデンコバルト合金めっき
(液組成)硫酸コバルト:10〜200g/L、モリブデン酸ナトリウム:5〜200g/L、クエン酸ナトリウム:2〜240g/L
(pH)2〜5
(液温)10〜70℃
(電流密度)0.5〜10A/dm
2
(通電時間)1〜20秒
【0101】
中間層の形成時において、Ni付着量の変動係数:X及びX’の制御は、Niめっきの電流密度を低く保ち、搬送速度で付着量を制御することや、キャリアとアノードとの平行度を均一に保つことで行った。
【0102】
中間層の形成後、中間層の上に厚み1〜10μmの極薄銅層を以下の条件で電気めっきすることにより形成し、キャリア付銅箔を製造した。
・極薄銅層
銅濃度:30〜120g/L
H
2SO
4濃度:20〜120g/L
電解液温度:20〜80℃
電流密度:10〜100A/dm
2
【0103】
2.キャリア付銅箔の評価
上記のようにして得られたキャリア付銅箔について、以下の方法で各評価を実施した。
<中間層の金属付着量>
ニッケル付着量はサンプルを濃度20質量%の硝酸で溶解してICP発光分析によって測定し、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト付着量はサンプルを濃度7質量%の塩酸にて溶解して、原子吸光法により定量分析を行うことで測定した。なお、前記ニッケル、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト付着量の測定は以下のようにして行った。まず、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後、極薄銅層の中間層側の表面付近のみを溶解して(例えば表面から0.5μm厚みのみ溶解する)、極薄銅層の中間層側の表面の付着量を測定する。また、極薄銅層を剥離した後に、キャリアの中間層側の表面付近のみを溶解して(例えば表面から0.5μm厚みのみ溶解する)、キャリアの中間層側の表面の付着量を測定する。そして、極薄銅層の中間層側の表面の付着量とキャリアの中間層側の表面の付着量とを合計した値を、中間層の金属付着量とした。
【0104】
<Ni付着量の変動係数>
極薄銅層側のNi付着量の分析には、250mm×250mm角のキャリア付き銅箔を用いた。キャリア付銅箔を極薄銅層側をBT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)の基板に、大気中、圧力:20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させて貼り付けた。その後、JIS C 6471(方法A)に準拠して極薄銅層をキャリアから剥がし、極薄銅層/BT樹脂の積層体を20mm×20mm角サイズに切り出した。続いて、極薄銅層の剥離面のNiの付着量を濃度20質量%の硝酸で溶解してICP発光分析によって、幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値をAとし、標準偏差をσとし、Ni付着量の変動係数:X=σ×100/Aを求めた。また、樹脂基板へ貼り合わせる前のキャリア付銅箔の極薄銅層についても、同様に、Ni付着量の変動係数:X’=σ’×100/A’を測定しておいた。
【0105】
<剥離強度>
キャリア付銅箔を極薄銅層側をBT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)に、大気中、圧力:20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させて貼り付けた。続いて、ロードセルにてキャリア側を引っ張り、90°剥離法(JIS C 6471 8.1)に準拠して剥離強度を測定した。また、上記樹脂との加熱圧着前の各試料についても、同様に剥離強度を測定しておいた。
【0106】
<エッチング性>
キャリア付銅箔をポリイミド基板に貼り付けて220℃で2時間加熱圧着し、その後、極薄銅層をキャリアから剥がした。続いて、ポリイミド基板上の極薄銅層表面に、感光性レジストを塗布した後、露光工程により50本のL/S=5μm/5μm幅の回路を印刷し、銅層の不要部分を除去するエッチング処理を以下のスプレーエッチング条件にて行った。
(スプレーエッチング条件)
エッチング液:塩化第二鉄水溶液(ボーメ度:40度)
液温:60℃
スプレー圧:2.0MPa
エッチングを続け、回路トップ幅が4μmになるまでの時間を測定し、さらにそのときの回路ボトム幅(底辺Xの長さ)及びエッチングファクターを評価した。エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。
図1に、回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このXは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。なお、a=(X(μm)−4(μm))/2で計算した。エッチングファクターは回路中の12点を測定し、平均値をとったものを示す。これにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。また、12点のエッチングファクターの標準偏差も算出することで、エッチングにより形成した回路の直線性の良し悪しを判定することができる。
本発明では、エッチングファクターが5以上をエッチング性:○、2.5以上5未満をエッチング性:△、2.5未満或いは算出不可または回路形成不可をエッチング性:×、剥離不可をエッチング性:−と評価した。また、エッチングファクターの標準偏差は小さいほど回路の直線性が良好であると云える。エッチングファクターの標準偏差が0.5未満を直線性:○、0.5〜1.0未満を直線性:△、1.0以上を直線性:×と判断した。また、上記樹脂との加熱圧着前の各試料についても、同様にエッチング性を測定しておいた。
【0107】
<中間層の有機物厚み>
樹脂との加熱圧着前の各試料について、キャリア付銅箔の極薄銅層をキャリアから剥離した後に、露出した極薄銅層の中間層側の表面と、露出したキャリアの中間層側の表面をXPS測定し、デプスプロファイルを作成する。そして、極薄銅層の中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをA(nm)とし、キャリアの中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをB(nm)とし、AとBとの合計を中間層の有機物の厚み(nm)とした。なお、xの値が大きいほど、金属の原子濃度の測定位置が表面から深い(遠い)ことを意味する。なお、深さ方向(x:単位nm)の金属の原子濃度の測定間隔は0.18〜0.30nm(SiO
2換算)とするとよい。本発明においては、深さ方向の金属の原子濃度を0.28nm(SiO
2換算)間隔で測定した(スパッタリング時間で、0.1分おきに測定した)。
XPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10
-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar
+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.8nm/min(SiO
2換算)
上述の通り、中間層の有機物厚みを測定した結果、実施例6の中間層の有機物厚みは39nm、実施例7の中間層の有機物厚みは40nm、実施例14の中間層の有機物厚みは30nm、実施例17の中間層の有機物厚みは35nm、比較例11の中間層の有機物厚みは16nm、比較例12の中間層の有機物厚みは11nmであった。
結果を表1及び表2に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
実施例1〜18は、いずれも、極薄銅層表面に転写しているNi付着量の平均値Aが400μg/dm
2以下であり、基板貼り合わせ後のNi付着量の変動係数:X=σ×100/Aが30.0%以下であったため、加熱圧着前後で良好なエッチング性を示した。
比較例1及び2は、中間層が存在しないため、基板貼り合せ前後で剥離できなかった。比較例3及び4は、中間層にNiが存在しないため、基板貼り合せ前後で剥離できなかった。比較例5は、中間層にCrが存在しないため、基板貼り合せ後に剥離できなかった。比較例6及び8は、中間層のCrの付着量が少なかったためプレス後に剥離できなかった。比較例9は、中間層のZnの付着量が多かったため、プレス後に剥離できなかった。比較例14は、極薄銅層表面に転写しているNi付着量の平均値Aが多かったため、基板貼り合せ前後でエッチングできなかった。比較例15は、極薄銅層表面に転写しているNi付着量の平均値Aが多かったため、基板貼り合せ後でエッチングできなかった。