(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
疎水性基が、直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、ハロゲンで置換されたアルキル基、芳香族基、複素芳香族基、ハロゲンで置換された芳香族および/または複素芳香族基を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
コポリマーが、10,000g/molと120,000g/molとの間の重量平均分子量、および/または、1.05〜2.5の間の多分散性を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
試料のイオン強度が、20℃で測定された、17mS/cm以下の導電率と等しくなるように調節されることを特徴とする、請求項1〜8の記載のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図
【
図1】
図1は、本発明の方法において使用されるコポリマーに好適な基本単位(building block)の異なる種の化学構造を示す。
【0021】
【
図2】
図2は、a)本発明による精製技術で処置されたモノクローナル抗体Cetuximab、b)沈殿に供されていないモノクローナル抗体Cetuximabの2次構造を比較するため、スペクトルのオーバーレイとして中赤外スペクトルを示し、および、抗体の2次構造が、沈殿の際に有意に変化しないことを示す。
【0022】
【
図3】
図3は、a)沈殿しないモノクローナル抗体、b)同封の精製技術で処置された、沈殿させられ再溶解したモノクローナル抗体のバイオレイヤー干渉分光法(BLI)後のセンサーグラムを示す。それは、沈殿および非沈殿の抗体の結合アフィニティーにおける差異がないことを明らかにする。赤線は、1:1相互作用モデルに対する広範囲なフィッティングを示す。データはOctet Redを使用して集めた。非沈殿および沈殿した抗体の動力学は、同じ抗原を含有するウェル(6、4、3、2および1nM)において測定した。
【0023】
定義
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、組成物またはプロセスステップが変動してもよいため、特定の組成物またはプロセスステップに限定されないことが理解されるべきである。本明細書および添付のクレームにおいて使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から明確に定められない限り、複数の対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「リガンド(単数)」への言及は複数のリガンドを含み、「抗体(単数)」への言及は複数の抗体などを含む。
【0024】
別途定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術または科学用語は、本発明が関連する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。以下の用語は、本発明の目的において、本明細書に記載されるとおりに定義される。
【0025】
本明細書に使用される用語「標的分子」は、1または2以上の他の化合物(例えば試料中の不純物等)から、単離、分離または精製されるべき、あらゆる分子、物質または化合物を指す。標的分子の例は、抗体、抗原に結合する断片(Fab)、定常領域の断片(Fc)、タンパク質、ペプチド、組換えタンパク質、他の天然の化合物、他のバイオ医薬化合物、ワクチンまたはバイオ医薬化合物の集合体等である。
【0026】
好ましい態様において、標的分子は、生体分子、好ましくは、タンパク質である。極めて好ましい態様において、標的分子は、抗体である。典型的には、標的分子は、本発明の方法を適用することにより、単離されるべき産物であるが、単離される産物ではない標的分子を沈殿させるために、本発明の方法を用いることもまた可能である。
【0027】
このケースにおいて、標的分子は除去されるべき成分である一方、最終産物は上清中に残存し、標的分子を除去することにより精製される。FabおよびFc断片の精製および分離のために本発明を使用するとき、例えば、沈殿される標的分子が、望まれる産物であることも可能であるが、望まれる産物が上清中に残存する断片である一方、ある種の断片を沈殿させることもまた可能である。あらゆるケースにおいて、沈殿される成分は、標的分子と呼ばれる。
【0028】
用語「抗体」は、抗原に特異的に結合する能力を有するタンパク質を指す。典型的には、抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖からなる4ポリペプチド鎖の基本構造を有し、前記鎖は、例えば鎖間ジスルフィド結合等により、安定化されている。抗体は、モノクローナルであっても、ポリクローナルであってもよく、モノマーまたはポリマーの形態で存在していてもよく、例えばIgM抗体は5量体形態で存在し、および/または、IgA抗体は単量体、二量体または多量体の形態で存在する。
【0029】
抗体はまた、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体等)も、それらが、リガンド特異的な結合ドメインを保持またはそれを含むように修飾される限り、抗体断片も含んでよい。用語「断片」は、無傷または完全な抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む、抗体または抗体鎖の一部または一部分を指す。
【0030】
断片は、無傷または完全な抗体または抗体鎖の化学的または酵素的な処置を介して得ることができる。断片はまた、組換え手段によっても得ることができる。組換え的に産生される場合、断片は、単独で、または、融合タンパク質と呼ばれるより大きなタンパク質の一部として、発現されてもよい。例となる断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fcおよび/またはFv断片等を含む。例となる融合タンパク質は、Fc融合タンパク質等を含む。本発明によると、融合タンパク質はまた、用語「抗体」によっても包含される。
【0031】
上述したように、いくつかの態様において、抗体は、Fc領域を含有するタンパク質、例えば免疫グロブリン等である。いくつかの態様において、Fc領域を含有するタンパク質は、別のポリペプチドまたはそれらの断片に融合した免疫グロブリンのFc領域を含む、組換えタンパク質である。
【0032】
例となるポリペプチドは、例えば、レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを含む、成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1アンチトリプシン;インスリンα鎖;インスリンβ鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX因子、組織因子およびヴォン・ヴィレブランド因子などの凝固因子;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;ウロキナーゼまたはヒト尿または組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)などのプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;
【0033】
造血成長因子;腫瘍壊死因子−αおよび−β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T- cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;リラキシンα鎖;リラキシンβ鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β−ラクタマーゼなどの微生物タンパク質;DNアーゼ;
【0034】
IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)(例えばCTLA−4等);インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモンまたは成長因子の受容体;プロテインAまたはD;リウマチ因子;骨由来神経因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5または−6(NT−3、NT−4、NT−5またはNT−6)などの神経栄養因子、または、NGF−βなどの神経成長因子;血小板由来増殖因子(PDGF);αFGFおよびβFGFなどの繊維芽細胞成長因子;上皮成長因子(EGF);TGF−アルファおよびTGF−βl、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4またはTGF−β5を含むTGF−βなどのトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);des(I−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBPs);
【0035】
CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD34およびCD40などのCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン−α、−βおよび−γなどのインターフェロン;例えばM−CSF、GM−CSFおよびG−CSF等のコロニー刺激因子(CSFs);例えばIL−1〜IL−10等のインターロイキン(IL);スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;例えばAIDSエンベロープの一部分等のウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4およびVCAMなどのインテグリン;
【0036】
HER2、HER3またはHER4受容体などの腫瘍関連抗原;ならびに、上に列記されたポリペプチドのいずれかの断片および/または変異体を含む。加えて、本発明の抗体は、上に列記されたポリペプチドのいずれかに特異的に結合する、あらゆるタンパク質またはポリペプチド、それらの断片または変異体である。
【0037】
本明細書に使用されるとおりであるが、特に記載のない限り、用語「試料」は、標的分子を含有するあらゆる組成物または混合物を指す。試料は、生物学的なまたは他の供給源に由来してもよい。生物学的な供給源は、植物および動物細胞、組織および器官など、真核性および原核性の供給源を含む。好ましい試料は、哺乳動物細胞培養のような細胞培養液、例えばCHO、NS−0、SP2/0、BioWa、細菌細胞培養等、例えばE. coli、B. subtilis、酵母細胞培養または糸状菌からのものである。
【0038】
試料はまた、希釈剤、バッファー、界面活性化剤、および、標的分子との混合物から見出される汚染種、デブリなども含んでもよい。試料は、「部分的に精製され」てもよく(すなわち、濾過ステップなどの1または2以上の精製ステップに供される)、または、標的分子を産生する宿主細胞または生体から直接的に得られてもよい(例えば、試料が、回収される細胞培養液を含んでよい)。
【0039】
本明細書に使用される用語「不純物(impurity)」または「汚染物(contaminant)」は、外来のまたは好ましくないあらゆる分子を指し、DNA、RNA、1または2以上の宿主細胞タンパク質、核酸、エンドトキシン、脂質、合成起源の不純物などの生物学的な巨大分子、および、本発明のプロセスを使用して、外来のまたは好ましくない分子の1または2以上から分離される、標的分子を含有する試料中に存在していてもよい、1または2以上の添加物を含む。加えて、かかる不純物は、本発明の方法に先立ち存在してもよいステップにおいて使用されるあらゆる試薬を含んでもよい。
【0040】
本明細書において互換的に使用される用語「精製すること」、「分離すること」または「単離すること」は、標的分子の純度を、標的分子および1または2以上の他の成分(例えば不純物等)を含む組成物または試料からそれを分離することによって、高めることを指す。典型的には、標的分子の純度を、組成物から、少なくとも1つの不純物を(完全にまたは部分的に)除去することにより高める。
【0041】
用語「クロマトグラフィー」は、混合物中に存在する他の分子から、目的の分析物(例えば標的分子等)を分離する、あらゆる種類の技術を指す。通常、標的分子は、混合物の個々の分子が、移動相の影響下または結合および溶出プロセスにおいて、静止した媒体を介して移動する速度の差異の結果として、他の分子から分離される。
【0042】
用語「アフィニティークロマトグラフィー」は、標的分子(例えば、Fc領域を含有する目的のタンパク質または抗体等)が、標的分子に特異的なリガンドに対し特異的に結合する、タンパク質分離技術を指す。かかるリガンドは、一般的に、生体特異的リガンドといわれる。いくつかの態様において、生体特異的リガンド(例えばプロテインAまたはそれらの機能的変異体等)は、クロマトグラフィーマトリックス材料に共有結合的に取り付けられ、溶液がクロマトグラフィーマトリックスに接触する際に、溶液中の標的分子に接近しやすい。
【0043】
標的分子は、一般的に、クロマトグラフィーのステップの間、生体特異的リガンドに対するその特異的結合アフィニティーを保持する一方、混合物中の他の溶質および/またはタンパク質は、目に見えるほどに(appreciably)または特異的にリガンドへ結合しない。固定化リガンドへの標的分子の結合によって、汚染タンパク質またはタンパク質不純物が、クロマトグラフィーマトリックスを通過することができる一方、標的分子は、固体相材料上に固定化されたリガンドへ特異的に結合したままである。
【0044】
特異的に結合した標的分子は、次いで、好適な条件下(例えば低pH、高pH、高塩、競合リガンドなど)、固定化リガンドから活性化形成で除去され、溶出バッファーによりクロマトグラフィーカラムを通過させる。そこには、前にカラムを通過することができた汚染タンパク質またはタンパク質不純物の汚染がない。
【0045】
あらゆる成分が、そのそれぞれの特異的結合タンパク質(例えば抗体等)を精製するためのリガンドとして、使用することができる。しかしながら、本発明による様々な方法において、プロテインAが、Fc領域を含有する標的分子に対するリガンドとして使用される。標的分子(例えばFc領域を含有するタンパク質等)の生体特異的リガンド(例えばプロテインA等)からの溶出のための条件は、当業者によって容易に決定されることができる。
【0046】
いくつかの態様において、プロテインGまたはプロテインLまたはそれらの機能的変異体は、生体特異的リガンドとして使用されてもよい。いくつかの態様において、プロテインAなどの生体特異的リガンドは、Fc領域を含有するタンパク質へ結合させること、生体特異的リガンド/標的分子コンジュゲートを洗浄または再平衡化すること、において、5〜9のpH範囲で使用され、その後、少なくとも1つの塩を含有し、約4または4未満のpHを有するバッファーで溶出される。
【0047】
標的分子(例えばFc領域を含有するタンパク質等)とコポリマー分子との間の相互作用を記載するために本明細書中に使用される用語「結合」は、例えばタンパク質およびコポリマー構造等の結合部位での空間相補性の複合効果を通じて、結合部位での静電気力、水素結合、疎水性相互作用および/またはファンデルワールス力によりカップリングされた、標的分子のコポリマー分子への一般的な可逆的な結合を指す。
【0048】
一般的に、空間相補性が大きくなればなるほど、および、結合部位における他の力が強くなればなるほど、そのそれぞれのリガンドに対するタンパク質の結合特異性は大きくなるであろう。特異的結合の非限定例は、抗体−抗原結合、酵素−基質結合、酵素−補因子結合、金属イオンキレート、DNA結合タンパク質−DNA結合、調節タンパク質−タンパク質相互作用などを含む。理想的には、アフィニティークロマトグラフィーにおいて、特異的結合は、自由溶液中、約10
“4〜10
”8Mのアフィニティーで生じる。
【0049】
「バッファー」は、その酸−塩基のコンジュゲート成分の作用により、pHの変化に抵抗する溶液である。例えばバッファーの所望のpH等に依存し、用いることができる様々なバッファーは、Buffer A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems, Gueffroy, D., ed. Calbiochem Corporation (1975)に記載される。バッファーの非限定例は、MES、MOPS、MOPSO、Tris、HEPES、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩およびアンモニウムバッファー並びにこれらの組み合わせを含む。
【0050】
本発明によると、用語「バッファー」は、
a)本発明の範囲内で使用される標的分子またはいずれか他の分子を含有する溶液の、pHおよび/またはイオン強度、または、他の化学的または物理的な特性を調節するために、
b)本発明の範囲内で使用される沈殿した標的分子またはいずれか他の分子を洗浄するために、
c)本発明の範囲内で使用される沈殿した標的分子またはいずれか他の分子を再溶解するために、
使用される、あらゆる液体組成物に対して使用される。
【0051】
本発明によると、用語「重合」または「コポリマーの合成」は、互換的に使用することができ、以下の技術:これらに限定されないが、フリーラジカル重合、リビングラジカル重合(ATRP、RAFT、NMPなど)、アニオン性またはカチオン性重合、縮合重合またはあらゆる種類の開環重合の1つを使用する、コポリマーまたはポリマー合成を指してもよい。フリーラジカル重合は、例えば熱的に、光化学的に、酸化還元反応を通し、または、電気化学的に、開始してよい。
【0052】
本発明によれば、モノマー比は、コポリマーに存在する他の全ての種のコポリマー対する、コポリマーに存在する1つのモノマー種のモル比である。
本発明によれば、コポリマーの分子量は、重量平均分子量(本発明において、コポリマーについて述べるときは、Mwとして略される)の観点から与えられ、これは、コポリマーの分子量を決定するための、したがって、当業者に知られている標準方法であるゲル透過クロマトグラフィーによって決定される。本発明によれば、用語「多分散性」は、所定のコポリマーの重量平均分子量と数平均分子量との比である。
【0053】
「脂肪族」または「脂肪族基」は、任意に置換され得る、非芳香族炭化水素部分を意味する。部分は、例えば直鎖状、分枝状または環状(例えば単環状、または、縮合、架橋等の多環状、または、スピロ−縮合多環状等)またはそれらの組み合わせであってもよい。特に断りのない限り、脂肪族基は、1〜30個の炭素原子、好ましくは1〜20個の炭素原子を含有する。好ましい脂肪族基は、アルキル基である。
【0054】
本明細書中に記載の「アルキル基」は、好ましくは、主鎖において1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を、全体で最大30個までの炭素原子を、含有する低級アルキルである。それらは、直鎖状、分枝状または環状であってもよく、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシルなどを含んでもよい。
【0055】
用語「芳香族基」は、任意に置換され得る、合計5〜14個の環メンバー(ring member)を有する単環状、二環状および三環状の環系を指し、ここで該系における少なくとも1つの環は芳香族であり、および、ここで該系における各環は3〜7個の環メンバーを含有する。好ましくは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチルなどの環部分に6〜12個の炭素を含有する、単環または二環基である。
【0056】
[疎水性基]は、モノマーまたはポリマーなどの分子に共有結合的に付着するとき、水素原子の代わりに、分子の疎水性が増大させる、置換基または残基などの部分である。
【0057】
本発明の詳細な説明
合成/コポリマーの特性
本発明によれば、コポリマーは、少なくとも2つの異なる種のモノマーからなるポリマーである。好ましくは、コポリマーは直鎖状であり、それは、水、および、例えば20℃で測定された10〜20mS/cmの導電率を含み、好ましくは生理学的な塩の条件下での、水性バッファーに、可溶である。本発明の方法で使用されるコポリマーは、少なくとも1つの種のアニオン性基、および、少なくとも1つの種の疎水性基を含む。一態様において、それは、アニオン性基および疎水性基を1つずつ含有する。
【0058】
本発明によれば、用語「アニオン性基」は、コポリマー中に存在する負に荷電した基を指す。アニオン性基の電荷が、あるpH条件しか存在し得ないが、非電荷の状態において、アニオン性基は、例えば求電子試薬(例えばpHに依存したやり方で、例えばプロトン(H(+)))の除去等によって、アニオン性に荷電するようになることが可能であるということは、当業者に明らかなことである。
【0059】
アニオン性基は、静電相互作用が可能であり、強イオン交換体、弱イオン交換体であってもよく、および/または、金属イオンを錯化することが可能であってもよい。アニオン性基は、以下の官能基:これらに限定されないが、スルホン酸およびその塩−SO
3−、硫酸エステル/アミドおよびそれらの塩−SO
4−、−NHSO
3−、ホスホン酸−PO
32−、リン酸エステルおよびその塩−PO
42−、カルボン酸およびその塩−COO
−、の1つであってもよい。コポリマーにアニオン性基を導入するのに好適なモノマー単位の例は、2−アシルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、ビニルスルホン酸VS、スチレンスルホン酸または(メタ)アクリル酸等である。
【0060】
疎水性基は、直鎖状、分枝状または環状の脂肪族基、ハロゲンで置換された脂肪族基、芳香族、複素芳香族またはハロゲンで置換された芳香族基であってもよい。コポリマーに疎水性基を導入するのに好適なモノマー単位の例は、ベンジルアクリルアミド(BzAAm)またはベンジルメタクリラート(BzMA)、N−イソプロピルアクリアミド(NIPAM)、メチルメタクリラート(MMA)、ブチルアクリラートまたはtert−ブチルアクリラート等である。
【0061】
好ましい態様において、疎水性基は、スルホン酸、カルボン酸またはホスホン酸のようなアニオン性基で、さらに官能化される。かかる官能化された疎水性基の例は、安息香酸等である。官能化された疎水性基をコポリマーに導入するのに好適なモノマーの例は、4−(アクリルアミド)安息香酸(4−ABZ)等である。
【0062】
本発明によるコポリマーは、典型的には、アニオン性および疎水性基が付着されているコポリマー骨格を含む。典型的には、コポリマーは、モノマー単位を重合することにより合成される。コポリマー骨格は、ラジカル重合(例えばフリーラジカル重合等)、リビングラジカル重合(ATRP、RAFT、NMPなど)、アニオン性またはカチオン性重合、縮合重合またはあらゆる種類の開環重合のような、あらゆる種の重合を介して作ることができる、いずれかのポリマーであってもよい。
【0063】
フリーラジカル重合は、例えば、熱的に、光化学的に、酸化還元反応を通して、または、電気化学的に、開始されてよい。典型的なポリマー骨格は、これらに限定されないが、ビニルポリマー(例えばポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリアクリアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン等)、ポリエステル(例えばポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシド等)、ポリエステル、ポリアミド等であってもよい。
【0064】
式I〜IVにおいて、可能なコポリマーの模式図を挙げる。コポリマーは、ランダムまたはブロックコポリマー、好ましくはランダムであってもよい。以下の定義が適用される:
R=ポリマー骨格
R’=ポリマーにおいて存在していても、存在していなくてもよい、スペーサー
F=官能基(F1=アニオン性基、F2=疎水性基、F3およびF4=互いに独立して、いずれの官能基または−H
n>0、m>0、l≧0、k≧0
【化1】
【0065】
表1において、ポリマー骨格(R)およびポリマーの側基の好適な例が定義され、それによると、いわゆる側基は、官能基(F)およびスペーサー(R’)からなるか、または、スペーサー(R’)が存在しない場合、官能基(F)のみからなる。
好ましい態様において、コポリマーを合成するために使用される各モノマー単位は、少なくとも1つの疎水性基または1つのアニオン性基を有する。
【0066】
【表A】
【0067】
極めて良好な結果が、少なくともAMPSおよび4−ABZ並びにAMPSおよびBzAAmから作られるコポリマーから得られることができる。
本発明の方法に有用なコポリマーは、典型的には、約千(1000)g/molから約1,100,000g/molまでの範囲の重量平均分子量、および/または、1.05〜2.5の間の多分散性を有する。本発明のコポリマーは、同種のモノマー単位を含むが多様な鎖長を有するコポリマーの混合物として使用されてもよく、すなわち約1000g/molから約百万(1,000,000)g/molまでの重量平均分子量の範囲であり、好ましくは、1.05〜2.5の間の多分散性を有する。混合物はまた、狭い範囲の重量平均分子量、例えば約35,000g/molから約45,000g/molまで、または、約50,000g/molから約55,000g/molまで等をも有してもよく、好ましくは全てが1.05〜2.5の間の多分散性を有していてもよい。
【0068】
重量平均分子量および分子量分布のプロファイルは、濃度、重合開始剤または触媒、温度または時間などの、モノマー単位のある重合条件の下、制御されてもよい。コポリマーの重量平均分子量は、好ましくは、1.05〜2.5の間の多分散性を有し、好ましくは10,000g/molと120,000g/molとの間、最も好ましくは35,000g/molと60,000g/molとの間である。
【0069】
アニオン性および疎水性基の総数のうち、典型的には、基の10〜90%が、アニオン性基である。アニオン性および疎水性基の総数の、好ましくは35〜65%、最も好ましくは45〜60%が、アニオン性基である。
【0070】
コポリマーを、例えば定義された分子量、鎖長、または、定義された疎水度および組成のコポリマーを用いることにより、種々の標的分子を選択的に沈殿させるための要件を明確に満たすように、合成することができる。
【0071】
沈殿プロセス
本発明の方法は、アニオン性および疎水性基を含むコポリマーを使用して、バイオ医薬試料中に典型的に存在する標的分子の精製に向けられている。試料溶液にコポリマーを添加すると、コポリマーは標的分子に結合し、沈殿する。最適な沈殿結果を得るために、試料が提供され、標的分子濃度、pHおよびイオン強度のようなある条件に調節される。
【0072】
これは、コポリマーを加える前か、または、それと並行して行うことができる。本発明の方法によるコポリマーを使用すると、試料が、20℃で測定された最大22.5mS/cmまでの導電率である高いイオン強度を有する場合でさえ、良好な沈殿結果を達成することができることが見出された。
【0073】
典型的には、試料のイオン強度は、適切な希釈方法を使用し、20℃で決定される導電率で、0mS/cm〜22.5mS/cmの導電率、好ましくは、0mS/cm〜17mS/cmの導電率に調節されるべきである。多くの知られている手順とは対照的に、本発明の方法は、20℃で決定される、10mS/cm〜22.5mS/cmの導電率の間のイオン強度においてさえ、標的分子の効率的な沈殿を可能にする。イオン強度を、適切な希釈技術またはバッファー交換技術を使用して、変更または低減させてもよい。
【0074】
とりわけモノクローナル抗体の酵素処置後にFc領域からFabを分離する特定のケースにおいて、8mS/cm〜22.5mS/cmの導電率の間のイオン強度の調節は、選択的な沈殿を可能にするために必要とされてもよい。好ましくは、Fc領域からのFabの分離のために、イオン強度は、9mS/cmと18mS/cmとの間、最も好ましくは10mS/cmと16mS/cmとの間の導電率へ調節される。
【0075】
pHは、好ましくは、適切な方法を使用して、標的分子の等電点(pI)より低いpHを達成するために調節され、適用可能である場合、不純物タンパク質またはほとんどの不純物タンパク質の等電点を超えるpHに調節される。典型的には、pHは、4〜7、好ましくは4〜5.5へ調節されるべきであることが見出された。特に、NS0、CHO−SまたはSP2/0細胞培養液のような細胞培養液から、7と9との間の等電点でモノクローナル抗体を沈殿させるとき、4と5.5との間のpH、特に5.0と5.2との間のpHが、極めて好適である。
【0076】
とりわけモノクローナル抗体の酵素処置後にFc領域からFabを分離する特定のケースにおいて、4と5.5との間のpH、特に5.0と5.2との間のpHへのpH調節が、極めて好適である。
【0077】
本発明の方法に使用されるコポリマーの量は、試料中に存在する標的分子の量に依存する。典型的には、良好な結果は、mg標的分子あたり、0.2と1.2mgコポリマーとの間で使用されるとき、得られることができる。好ましくは、mg標的分子あたり、0.35と0.9mgとの間のコポリマーが加えられる。
【0078】
最適な沈殿を達成するために、試料溶液へコポリマーを加えた後、混合物は、好ましくはインキュベートされる。典型的なインキュベーション時間は、10分間と2時間との間である。好ましくは、混合物は、インキュベーションの間、例えばシェーカー上またはスターラーとともに、撹拌される。
【0079】
その後、標的分子およびコポリマーを含む、共沈殿物は、例えばろ過、沈降、遠心分離またはあらゆる他の手段によって、上清から単離することができる。典型的には、標的分子を含む共沈殿物は、次いで、標的分子を単離またはさらに精製するためのさらなるプロセスステップに供される。
【0080】
しかし、上清をさらなるプロセスステップに供することもまた可能である。例えば、標的分子が、試料から除去れるべき知られている物質(例えば抗体のFc領域等)の場合であるが、試料から最終的に単離、精製されるべき産物は、本発明のプロセスを行った後、上清に今存在する別の分子(例えば抗体のFab領域等)である。
【0081】
しかし、ほとんどのケースにおいて、コポリマーを加えることにより沈殿された標的分子は、さらに精製されるべき化合物である。このケースにおいて、標的分子を含む共沈殿物を、1回または数回、例えば酸性バッファー等により、洗浄してもよい。好ましくは、洗浄バッファーは、試料にコポリマーを加えた後に得られる混合物と同じpH、および、同じかまたはより低いイオン強度を有する。
【0082】
共沈殿物は、次いで、再溶解してもよい。これは、標的分子の等電点から1pH単位を超えて下回るpHを有する水性バッファー中で行うことができる。典型的には、7と9との間のpHを有するバッファー、例えばTrisバッファーpH8.0またはK−Na−リン酸バッファーpH7.4(PBS)等を、共沈殿物の再溶解のために使用する。再溶解は、例えば振盪または撹拌等によって、例えば300〜600rpmで5〜20分間振盪する等によって、サポートすることができる。
【0083】
本発明の一態様において、高度に精製された標的分子を得るために、本発明による方法のさらなるスッテプにおいて、コポリマーを、再溶解した共沈殿物を含む溶液から、除去することができる。これは、例えば陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親水性相互作用クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィー法のような、いくつかの方法により行うことができる。
【0084】
沈殿剤を加えることによってもまた、コポリマーを再沈殿させることが可能である。好適な沈殿剤は、例えば、高分子電解質が共有結合的に付着しているビーズである。高分子電解質は、繰り返し単位が電解質基を持つポリマーである。ポリカチオンおよびポリアニオンは、高分子電解質である。好適なビーズの例は、例えばガラスビーズ、シリカビーズまたはポリマービーズ等である。好適な高分子電解質は、例えば、H結合をすることができる、陽イオン高分子電解質、混合モード高分子電解質、疎水性高分子電解質または疎水性高分子電解質である。
【0085】
好適なビーズは、例えばUS 5,922,531等に開示される。
好ましい態様において、ビーズは、ガラスまたはシリカビーズ、より好ましくはガラスまたはマイカまたはシリカフレークである。0.8cm/minと1.2cm/minとの間の沈降速度を持つガラスまたはシリカフレークが、再沈殿に特に好適であることが見出された。典型的には、10〜200μMの範囲の直径および100nmと1000nmとの間の厚さを持つ、シリカまたはガラスフレークは、かかる好適な沈降速度を示し、コポリマーの再沈殿に特に好適である。
【0086】
好ましい態様において、ガラスまたはシリカビーズ、および、他のタイプのビーズもまた、陽イオン基、または、陰イオンおよび疎水性または親水性基で官能化される。好ましくは、官能化は、陽イオン高分子電解質、または、陽イオンおよび疎水性または親水性官能基を持つ高分子電解質の共有結合によってなされる。
【0087】
特に好ましくは、TMAEまたはDMAEを含む高分子電解質である。
ビーズは、典型的には、0.0001mg/mlと0.5mg/mlとの間の最終混合物中、ビーズまたはフレークの最終濃度に達するように、再懸濁した標的分子−コポリマー溶液に加えられる。
ビーズは、典型的には、溶液のpHをpH7.0〜8.5に水調節した後、再懸濁した標的分子−コポリマー溶液に加えられる。
【0088】
付着したコポリマーを持つビーズを、例えば遠心分離、沈降またはろ過することによって除去した後、高度に純粋な標的分子を含み、全くまたはほとんどコポリマー汚染を含まない上清を得る。典型的には、コポリマーを、これらのシリカフレークを使用して、試料中の最初のコポリマー濃度と比較し、>90%(重量/重量)まで、除去することができる。
【0089】
これらのシリカフレークの濃度を調整し、コポリマーを、試料中の最初のコポリマー濃度と比較して、典型的には>95%(重量/重量)まで、最大99%(重量/重量)まで、除去することができる。
本発明の方法は、クロマトグラフィー、ろ過または遠心分離などのその後の精製ステップの不純物を低減させ、目詰まりを防止する。本発明の方法は、定義された体積で、選択的沈殿およびその後の再溶解により、標的分子を濃縮させることができ、最大100までの濃縮係数を達成し、それによって、その後の精製ステップの処理時間が増加し、クロマトグラフィーの作業負荷が低減される(時間/kgクロマトグラフィーで精製された標的分子)。
【0090】
先行技術に開示される沈殿のためのポリマーの使用はしばしば、高精製収率を与えるが、それは、これらの刊行物に示されるような5mS/cm以下の導電率と同程度に低いイオン強度でしか十分に働かない。
しかしながら、この制限は、沈殿のためのポリマーの適用前に、細胞培養液の希釈を必要とし、例えば、25000リットルの最初の細胞培養液と比較し、75000リットル以上の希釈細胞培養液に上る。
これらの大きな体積は、加減され、保管される必要があり、精製後の高い廃棄物負荷を有し、全てが高コストにつながる。
【0091】
これらの制限および欠点とは対照的に、本発明の方法は、生理食条件と同様のイオン強度であっても標的分子の高収率および純度を得るために、消費者が、特に最適化されたコポリマーを使用することを可能にする。これにより、過度の前希釈ステップが必要とされない。
【0092】
本発明は、バイオ医薬または組換えタンパク質の精製において今日まで使用されている精製ステップを、部分的または完全に置き換えることができるため、同等かまたはより良好なの収率、精製時間、効率、純度をもたらすことができる。
【0093】
以上以下で引用された全ての出願、特許および刊行物、および、2012年12月20日に提出された対応EP出願EP12008475.1の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
例
以下の例は、本発明の方法において使用されるコポリマーを得るための可能な合成ステップを表す。
【0095】
例1a:
4.92gの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および6.82gの4−アクリルアミド安息香酸を、300mlの水/DMF(1/1)および3.4mlのNaOH溶液(32%)の混合物に溶解する。溶液を、窒素を使用し脱気する。0.436gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを脱気した水に溶解し、水溶液に加える。温度を80℃まで上げる。反応時間は5時間である。反応混合物を室温まで冷却し、空気にさらす。溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。固体ポリマーを、再び水に溶解し、2−プロパノールに沈殿させる。ポリマーをろ過し、乾燥する。重量平均分子量は約Mw=100000g/molであり、1.3の多分散性を有する。
【0096】
例1b:
Sephadex(登録商標)カラム(架橋デキストランゲル)を使用する以外は例1aと同様に、ポリマーの精製をする。カラムを5回×5mlの水で洗浄し、2.5mlの反応混合物を「注入」し、カラムを3.5mlの水で洗浄する。溶出液を集めて、7回×5mlの水で、再平衡化を行う。手順を3回繰り返す。溶媒を、ロータリーエバポレーターを使用し、溶出液から除去し、ポリマーを乾燥する。
【0097】
例1c:
透析またはタンジェンシャルフローろ過に通して精製する以外は例1aと同様である。反応後、混合物を室温まで冷却し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。固体ポリマーを再び水に溶解し、ポリマーを、例えば12000〜14000Da等の適切なMWCOを使用する透析またはタンジェンシャルフローろ過で精製する。
【0098】
例2a:
4.92gの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および6.82gの4−アクリルアミド安息香酸を、300mlの水/DMF(1/1)および3.4mlのNaOH溶液(32%)の混合物に溶解する。95μLの1−ブタンチオール(連鎖移動剤として)を加える。溶液を、窒素を使用し脱気する。脱気した水に溶解された0.436gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを溶液に加える。温度を80℃まで上げる。反応時間は5時間である。反応混合物を室温まで冷却し、空気にさらす。溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。固体ポリマーを再び水に溶解し、2−プロパノールに沈殿させる。ポリマーをろ過し、乾燥する。重量平均分子量は約Mw=55000g/molであり、1.16の多分散性を有する。
【0099】
例2b:
380μLの1−ブタンチオールを加える以外は例2aと同様である。結果として生じるポリマーの重量平均分子量は約Mw=35000g/molであり、1.6の多分散性を有する。
【0100】
例3:
【表B】
【0101】
例4:
4−アクリルアミド安息香酸の代わりにアクリル酸ベンジルをコモノマーとして使用する以外は、例3と同様である。
以下の例は、本発明の適用を示す。
【0102】
例5:
2.0mg/mlのモノクローナル抗体(mAb03)力価(プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによる)を有するモノクローナル抗体細胞培養溶液(SP2/0細胞培養液)(ここで、HCP(宿主細胞タンパク質)量は、9000ng/mg抗体ある(免疫酵素法SP2/0による))を、事前に細胞培養溶液をpH5.0へ調節した後、アニオン性−疎水性コポリマーで処置する。コポリマーを、61.7%(w/w)AMPSおよび38.3%(w/w)(ABZ)から、3.17%(w/w)ペルオキソ二硫酸ジナトリウムおよび連鎖移動剤1−ブタンチオールを1:0.03の比(molにおける全体のモノマー濃度(AMPS+ABZ)に対し)で使用して、合成する。
【0103】
コポリマーの特徴づけによって、36%(w/w)の4−(アクリロイルアミノ)安息香酸(ABZ、
図1);64%(w/w)の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS、
図1);減衰全反射赤外分光によって決定された;SECにおける示差屈折率によって決定された分子量分布:Mw28000Da、Mn13000Da、多分散性指標2.1が得られる。コポリマーを、10mg/mlの濃度、pH5.0に調節し、最終濃度が0.4mg/mlポリマーから1.2mg/mlポリマーまでの範囲になるように、そして最終抗体濃度が1.4mg/ml(イオン強度:20℃で測定された、12mS/cmの導電率または120mM NaCl当量)となるように、抗体細胞培養溶液に少量加える。
【0104】
1時間のゆっくりとした撹拌後、加えられたコポリマーとともに抗体細胞培養を、2500rcfで15分間遠心分離する。上清を捨て、ペレットを、500rpmで12分間振盪することにより、80mMのK−Na−リン酸バッファー(pH7.4)に再溶解する。シリカフレークに付着させた第4級アンモニア残基(トリメチルアミノエチル)を、再溶解したペレットに10%(v/v)の比で加え、続いて、2500rcfで10分間遠心分離をする。
【0105】
上清を除去し、98.8%のコポリマー除去、70%のHCP除去、初期抗体力価と比較して80%の抗体リカバリーを得る。IRスペクトル(添付の
図2を参照)は、沈殿前後、続く再溶解における抗体の2次構造に有意な変化がないことを示す。バイオレイヤー干渉分光法(BLI)によって、本発明による沈殿および再分解を使用して精製された抗体(添付の
図3Bを参照)と、非沈殿の抗体(添付の
図3Aを参照)とを比較しても、その標的への抗体の結合アフィニティーにおいて差異がないことが示される。
【0106】
例6:
2mg/mlモノクローナル抗体(それぞれmAb03、mAb04、mAb05、mAb07、追加情報は表2)および2mg/mlウシ血清アルブミンを含有する溶液を、事前に細胞培養溶液をpH5.0へ調節した後、様々なアニオン性−疎水性コポリマーで処置する。
【0107】
コポリマー(10〜77.5%ABZ(w/w);22.5〜90%AMPS(w/w);減衰全反射分光によって決定された;SECにおける屈折指標によって決定される分子量分布:Mw5000〜300000Da、Mn5000〜131000Da、多分散性指票1〜2.3;SECにおけるUV計測によって決定される分子量分布は、Mw5000〜300000Da、Mn5000〜131000Da、多分散性指標は1〜2.5)を、溶液に加える(各濃度、各pHおよびイオン強度の各コポリマーを、別個の溶液容器に加える)ことによって、1mg/mlの最終抗体濃度、1mg/mlの最終BSA濃度、pH5.0、20℃で測定された約5mS/cmの導電率のイオン強度、および、0.1〜1.5mg/mlのコポリマー濃度を有するコポリマー−タンパク質溶液が構成される。
【0108】
300rpmで1時間振盪した後、コポリマー−タンパク質溶液を、2500rcfで15分間遠心分離する。上清を捨て、ペレットを、500rpmで12分間振盪することにより、80mMのK−Na−リン酸バッファー(pH7.4)に再溶解する。10%(v/v)TMAEフレークを、再溶解したペレットに加え、続いて、2500rcfで10分間遠心分離する。
【0109】
上清を除去し、95%のコポリマー除去、20〜80%のBSA除去、初期抗体力価と比較し85%の抗体リカバリーを得る。最も有望なコポリマー(10〜70%ABZ、30〜90%AMPS、重量平均鎖長<80000Da)は、85%のmAbリカバリーおよび80%のBSA除去を得る。
【0110】
【表C】
【0111】
例7:
0.7mg/mlのモノクローナル抗体(mAb05)および既知量のHCPタンパク質/mg抗体を含有するCHO−S細胞株におけるモノクローナル抗体細胞培養溶液を、pH5.0、および、20℃で測定された11mS/cmの導電率に調節する。溶液を、アニオン性疎水性コポリマー(65%ABZ、35%AMPS;SECにおける示差屈折率によって決定されたMw80000Da、Mn55000Da)により、最終コポリマーの抗体に対する重量比0.57:1〜1.14:1で、処置する。
【0112】
300rpmで1時間振盪し、2500rcfで15分間遠心分離した後、上清を移して、再溶解したペレット(500rpmで12分間の振盪により、80mMのK−Na−リン酸バッファー(pH7.4))と同様に分析する。両者の測定により、50%の宿主細胞タンパク質の除去および80〜90%の抗体沈殿が示される。中赤外線スペクトルにより、文献調査と一致して、沈殿前後の抗体の構造的変化がないことが明らかにされる。バイオレイヤー干渉分光法により、沈殿前後の抗体の結合アフィニティーにおいて、変化がないことが示される。
【0113】
例8:
2mg/mlの濃度で、モノクローナル抗体(mAb03)のFAb部(抗原に結合する断片)を含有する溶液を、2mS/cm(20℃で測定された)の導電率のイオン強度で、pH5.0に調節し、その後、FAb−コポリマー溶液(1mS/cmの導電率を有するイオン強度、pH5.0)において、0.1〜0.8mg/mlの最終濃度になるように、100%(v/v)のアニオン性−疎水性コポリマー(50%BzAAm、50%AMPS;SECにおける屈折率測定によって決定されたMw63000、Mn46000)を加える。溶液を、300rpmで1時間シェーカー上でインキュベートし、2500rcfで15分間遠心分離する。80%のFabが溶液から沈殿する。
【0114】
例9:
2mg/mlのモノクローナル抗体(mAb07)および既知量のHCPタンパク質/mg抗体を含有するマウスミエローマ細胞株(NS0)におけるモノクローナル抗体細胞培養溶液を、pH5.0、12mS/cmの導電率に調節し、アニオン性−疎水性コポリマー(65%ABZ、35%AMPS;SECにおける屈折率により決定されたMw80000Da、Mn55000Da)により、抗体に対するコポリマーの様々な最終重量比で、処置する。300rpmで1時間振盪し、2500rcfで15分間遠心分離した後、上清を移し、溶解したペレット(500rpmで12分間の振盪により、80mMのK−Na−リン酸バッファー(pH7.4))と同様に分析する。両者の測定により、50〜70%の宿主細胞タンパク質の除去や80〜95%の抗体沈殿が示される。
【0115】
例10:
沈殿の最初の体積が20mLであり、標的−分子−コポリマーペレットを500uLに溶解し、40倍に標的−分子濃度を増大させる以外は例9と同様である。
【0116】
例11:
パパイン消化後のモノクローナル抗体のFabおよびFc断片を含有する溶液を、pH5.0および14mS/cmの導電率に調節した。溶液を、アニオン性−疎水性コポリマー(64%ABZ、36%AMPS;SECにおける屈折率よって決定されたMw160.000Da、Mn55000Da)により、全タンパク質に対するコポリマーの様々な最終重量比で、処置する。300rpmで1時間振盪し、2500rcfで15分間遠心分離した後、上清を移し、溶解したペレット(500rpmで12分間の振盪により、80mMのK−Na−リン酸バッファー(pH7.4))と同様に分析する。ペレットがFc断片のみからなる一方、上清は、10%の非沈殿Fcおよび100%の最初に用いたFab断片から構成された。
【0117】
例12:
シリカまたはジオールガラスフレーク−TMAE合成:
シリカまたはジオールガラスフレークを、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランで被覆され10〜100μmの直径を有するジオールガラスフレークまたはシリカフレークを使用し、モノマーのN,N−ジメチルエチレンジアミン(0.225M)、アクリル酸クロリド(0.216M)および硫酸ジメチル(0.228M)を加え、開始剤として4.5mMの硝酸アンモニウムIVを使用して、合成する。
【0118】
他の課題
コポリマー組成物は、赤外分光法とともに減衰全反射分光(ATR)と同様にNMR分光法を使用して、特徴づける。NMRおよびATRの結果は同等であり(表3)、このことはコポリマーの特徴づけに対するATRの実行可能性を示す。
【0119】
【表D】
表4は、例1〜4に記載の手順に従い調製される本発明の方法により使用されるコポリマーの例を示す。
【0120】
【表E】
【0121】
表5は、沈殿実験において使用されるタンパク質発現系のイオン強度を示す。
【表F】