特許第6336554号(P6336554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336554
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】半導体本体上の接触層形成
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/28 20060101AFI20180528BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20180528BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20180528BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20180528BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180528BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20180528BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20180528BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20180528BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   H01L21/28 301S
   H01L29/48 M
   H01L29/48 D
   H01L21/28 301B
   H01L29/78 652M
   H01L29/78 652L
   H01L29/78 658F
   H01L29/78 652T
   H01L29/86 301P
   H01L29/91 A
   H01L29/86 301D
   H01L29/91 F
   H01L29/91 K
   H01L29/86 301M
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-233767(P2016-233767)
(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公開番号】特開2017-118104(P2017-118104A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2016年12月1日
(31)【優先権主張番号】10 2015 120 848.2
(32)【優先日】2015年12月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501209070
【氏名又は名称】インフィネオン テクノロジーズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ルップ, ローラント
(72)【発明者】
【氏名】コンラート, イェンス ペーター
(72)【発明者】
【氏名】サントス ロドリゲス, フランシスコ ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】シェファー, カルステン
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ, ハンス−ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】シュスターレダー, ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレンツォーン, ギュンター
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−177926(JP,A)
【文献】 特開昭62−005635(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0098689(US,A1)
【文献】 特開2011−134809(JP,A)
【文献】 特開2013−183050(JP,A)
【文献】 特表2009−545885(JP,A)
【文献】 特開昭62−166512(JP,A)
【文献】 特開2013−058602(JP,A)
【文献】 特開昭60−153121(JP,A)
【文献】 特開昭59−072181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28−21/288、21/329、21/336、
21/44−21/445、29/12、
29/40−29/49、29/739、29/78、
29/86−29/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素を含む半導体本体の第1の表面に金属層を形成するステップと、
前記金属層から前記半導体本体の中に金属原子を移動させて前記半導体本体の中に金属原子含有領域を形成するように、前記金属層に粒子を照射するステップと、
前記半導体本体を焼鈍するステップであって、少なくとも前記金属原子含有領域を500℃より低い温度に加熱するステップを含む、焼鈍するステップと、
を含む方法であって、前記焼鈍するステップにおいて、前記半導体本体からのシリコン原子及び前記金属原子含有領域の金属原子が、前記金属層に隣接するケイ化物層を形成する、方法。
【請求項2】
前記温度は350℃より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼鈍の持続時間は、30秒〜30分の範囲から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記半導体本体は、前記第1の表面に隣接する領域にドープ領域を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ドープ領域のドーピング濃度は、2E17cm−3〜2E20cm−3の範囲から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子は、希ガスイオンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子は、半導体イオンおよび金属イオンのうちの1つを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子は、ドーパントイオンを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
記ドーパントイオンは、
アルミニウムイオンと、
窒素原子と、
からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記金属層に照射するステップは、前記金属層に異なるタイプの粒子を照射するステップを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記焼鈍するステップの後に前記金属層を除去するステップ
をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の表面にさらなる金属層を形成するステップ
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記さらなる金属層は、ショットキー金属を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ショットキー金属は、n型SiCに対して0.7eV〜1.6eVの障壁高さのショットキー接触を形成するように構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ショットキー金属は、
チタン(Ti)、
モリブデン(Mo)、
ニッケル(Ni)、
タンタル(Ta)、
窒化モリブデン(MoN)、
窒化チタン(TiN)
からなる群から選択される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属層に粒子を照射するステップは、開口部を含み、前記金属層を部分的に覆う、マスクを使用するステップを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ドープ領域は、トランジスタデバイスのソース領域およびドレイン領域のうちの1つである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項18】
前記ドープ領域は、バイポーラダイオードのエミッタ領域である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項19】
前記ドープ領域は、統合されたバイポーラ・ショットキー・ダイオードのエミッタ領域である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項20】
前記半導体本体は、広バンドギャップ半導体材料を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に半導体本体上に接触層を形成することに関する。具体的には、本開示は、半導体本体にオーミック接触を形成することにより、接触層を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
ほんの一部を挙げると、ダイオード、トランジスタ、またはサイリスタなどの半導体デバイスは、半導体本体にドープされた半導体領域を含む。例えば、ダイオードのエミッタ領域、トランジスタデバイスのソース領域およびドレイン領域、またはサイリスタのコレクタ領域およびエミッタ領域などの、いくつかのタイプのこれらの半導体領域は、デバイスを他のデバイス、プリント回路基板などと相互接続することを可能にする接触層に接続される。それらの接触層は、それぞれの半導体領域にオーミック接続される。「オーミック接続される」は、接触層とそれぞれの半導体領域との間に整流接合がないことを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体本体上に金属層を形成することは、半導体本体の表面に金属層を堆積させることと、金属層および半導体本体を約980℃以上の温度まで加熱することを含み得る。しかしながら、このような高温は、製造工程における工程と両立できない場合がある。したがって、より低い温度で半導体本体とオーミック接触にある接触層を形成する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施例は方法に関する。方法は、半導体本体の第1の表面に金属層を形成するステップと、金属層から半導体本体の中に金属原子を移動させて半導体本体の中に金属原子含有領域を形成するように、金属層に粒子を照射するステップとを含む。方法は、半導体本体を焼鈍するステップをさらに含み、焼鈍するステップは、少なくとも金属原子含有領域を500℃より低い温度に加熱するステップを含む。
【0005】
実施例は、図面を参照して下に解説される。図面はある一定の原理を例示するのに役立つため、これらの原理を理解するために必要な態様だけが例示される。図面は原寸に比例していない。図面の中で同じ参照符号は類似の特徴を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】半導体本体の表面に接触層を作り出すための方法の1つの実施例を例示する。
図1B】半導体本体の表面に接触層を作り出すための方法の1つの実施例を例示する。
図1C】半導体本体の表面に接触層を作り出すための方法の1つの実施例を例示する。
図1D】半導体本体の表面に接触層を作り出すための方法の1つの実施例を例示する。
図1E】半導体本体の表面に接触層を作り出すための方法の1つの実施例を例示する。
図2】さらなる工程段階の後に図1Eに示される構成を示す。
図3A図1A図1Eに示される方法の変更形態を例示する。
図3B図1A図1Eに示される方法の変更形態を例示する。
図3C図1A図1Eに示される方法の変更形態を例示する。
図3D図1A図1Eに示される方法の変更形態を例示する。
図4A図1A図1Eに示される方法の別の変更形態を例示する。
図4B図1A図1Eに示される方法の別の変更形態を例示する。
図4C図1A図1Eに示される方法の別の変更形態を例示する。
図5】1つの実施例による、トランジスタデバイスの縦断面図を示す。
図6】1つの実施例による、バイポーラダイオードの縦断面図を示す。
図7】統合されたバイポーラ・ショットキー・ダイオードの縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次の詳細な説明で、添付の図面が参照される。図面は説明の一部を構成し、説明図を通して、本発明を実践し得る特定の実施形態を示す。本明細書で説明されるさまざまな実施形態の特徴は、特に断りのない限り、互いに組み合わせてもよいことを理解すべきである。
【0008】
図1A図1Eは、半導体本体100とオーミック接触にある接触層のための方法の1つの実施例を例示する。「オーミック接触」は、接触層200と半導体本体100との間に整流接合がないことを意味する。図1A図1Bおよび図1Dは、方法の異なる段階における半導体本体100の一部の縦断面図を示す。図1Cおよび図1Eは、それぞれ、図1Bおよび図1Dに示される構造の細部を示す。「縦断面図」は、半導体本体100の第1の表面101に垂直をなして広がる切断面での投影図である。図1A図1Bおよび図1Eは、半導体本体100の一部を示すだけであることに留意すべきである。すなわち、半導体本体100は、第1の表面101に垂直な方向である縦方向に、および第1の表面101に平行な方向である横方向に、さらに遠くへ延在し得る。1つの実施例によれば、図1A図1Eを参照して解説される工程順序は、複数の半導体本体(ダイ)を含み工程順序の後個別の半導体本体に細分され得る半導体ウェーハに適用される。
【0009】
1つの実施例によれば、半導体本体100は、広バンドギャップ半導体材料を含む。広バンドギャップ半導体材料は、2eV(電子ボルト)より大きいバンドギャップを有する。高バンドギャップ半導体材料の実施例は、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、またはダイヤモンドを含む。1つの実施例によれば、半導体材料はSiCである。1つの実施例によれば、SiCは、複数の適当なSiCポリタイプのほんの一部を挙げると、4H、6H、3Cまたは15Rポリタイプを有する。
【0010】
別の実施例によれば、半導体本体100は、ヒ化ガリウム(GaAs)を含む。
【0011】
図1Aを参照すると、方法は、半導体本体100の第1の表面101に金属層200を形成するステップを含む。金属層200を形成するステップは、第1の表面101に金属層200を堆積させるステップを含み得る。金属層200は少なくとも1つの金属を含むため、金属層は、純粋な金属または2つ以上の異なるタイプの金属を含む合金を含み得る。1つの実施例によれば、金属層200に含まれる少なくとも1つの金属は、ケイ化物形成金属である。「ケイ化物形成金属」は、半導体本体100に含まれるケイ素(Si)とともにケイ化物を形成するのに適した金属である。それらのケイ化物形成金属の実施例は、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)を含む。ケイ化物形成金属合金の実施例は、チタン−アルミニウム(TiAl)およびニッケル−アルミニウム(NiAl)である。
【0012】
1つの実施例によれば、金属層200は、5ナノメートル(nm)〜200ナノメートル(nm)、より具体的には10ナノメートル(nm)〜100ナノメートル(nm)の範囲から選択される厚さdとなるように形成される。金属層200の「厚さd」は、第1の表面101に垂直な方向での金属層200の寸法である。
【0013】
図1Bを参照すると、方法は、金属層200に粒子を照射するステップをさらに含む。金属層200に粒子を照射するステップは、半導体本体100の中に金属原子含有領域21を形成するために、それらの粒子が金属層200の内部の金属原子に衝突して金属原子を金属層200から半導体本体100に移動させるように、粒子を金属層200に導入するステップを含む。この金属原子含有領域21は、以下では混合領域21と呼ぶ。
【0014】
図1Cは、金属層200から半導体本体100に移動させられた金属原子Mを含む混合領域21の拡大された断面図を概略的に例示する。図1Cが金属原子を金属層200から半導体本体100に移動させる原理を例示するように意図された概略図にすぎないことに、留意すべきである。図1Cでは、金属層200に含まれる金属原子も、金属層200に照射される粒子も例示されていない。それらの粒子は、混合領域21に、またはより深く半導体本体100に行き着くことができる。「より深い」は、第1の表面101に対して混合領域21の縦寸法より遠いことを意味する。混合領域21の縦寸法は、第1の表面101に垂直な方向での寸法である。
【0015】
1つの実施例によれば、粒子はイオンであり、金属層200に粒子を照射する方法は、イオン注入工程を含む。このイオン注入工程で、異なるタイプのイオンを使用することができる。1つの実施例によれば、注入イオンは、例えば、ヘリウム(He)イオンまたはクリプトン(Kr)イオンなどの、希ガスイオンである。それらの希ガスイオンは、ただ金属原子を金属層200から半導体本体100に移動させる(押し込む)のに役立つだけである。半導体本体100に行き着くとき、それらの希ガスイオンは、半導体本体100の結晶格子中の原子(SiC半導体本体の場合ケイ素原子および炭素原子である)と化学反応することも、半導体本体100の結晶格子に化学結合することもない。別の実施例によれば、注入イオンは水素イオン(陽子)である。
【0016】
1つの実施例によれば、注入イオンは、例えば、ケイ素(Si)イオンまたはゲルマニウム(Ge)イオンなどの、等電イオンである。この文脈で、「等電」は、粒子がドーパントとして作用しないようにケイ素と同じ数の価電子を持つことを意味する。それらの等電イオンは、半導体本体100に侵入するとき、下に本明細書でより詳細に解説する焼鈍工程で、半導体本体100の結晶格子中に取り込まれ得る。
【0017】
1つの実施例によれば、注入イオンは金属イオンである。具体的には、それらの金属イオンは、ケイ化物形成金属からのイオンとすることができる。それらのイオンは、金属層200に含まれる金属のタイプと同じタイプの金属のイオンとしてもよく、または金属層200に含まれる金属のタイプと異なるタイプの金属のイオンとしてもよい。ケイ化物形成金属からの金属イオンを使用することは、混合領域21が金属層200から半導体本体100に移動させられた金属原子を含むだけでなく、金属層200を通して半導体本体100に注入された金属原子を同様に含むという効果がある。これによって、非金属イオンを使用する注入工程と比較して、混合領域21における金属原子Mの量を増加させることができる。
【0018】
さらに別の実施例によれば、炭素(C)イオンが注入工程で注入される。それらの炭素イオンは、半導体本体100に行き着くとき、炭素析出物の形成を促進し得る。このような炭素析出物の形成については、下に本明細書でより詳細に解説する。
【0019】
注入工程は、上で解説したイオンタイプの1つだけを使用するように制限されない。1つの実施例によれば、金属原子Mを金属層200から半導体本体100に押し込むために、異なるタイプのイオンを用いる2つ以上の注入工程が行われる。
【0020】
注入イオンの注入エネルギーは、とりわけ、金属層200の厚さdに依存する。一般に、金属層200の厚さdが増加するにつれて、必要とされる注入エネルギーが増加する。注入エネルギーは、注入イオンが金属原子Mを金属層から半導体本体100に押し込み半導体本体100に行き着くことができるように、選択される。1つの実施例によれば、半導体本体100の第1の表面101と注入粒子の範囲の終端との間の距離が、金属層の厚さdの50%〜200%、60%〜120%、または70%〜100%から選択されるように、注入エネルギーが選択される。「範囲の終端」は、粒子が半導体本体100の中に到達する(第1の表面101から見た)最大の深さによって規定される。基本的に、所与の金属層200の厚さdにおいて注入エネルギーがより高いほど粒子はより深く注入され、所与の注入エネルギーにおいて金属層200の厚さがより大きいほど粒子はあまり深く注入されない。
【0021】
図1Dを参照すると、方法は、少なくとも1つの混合領域21が所定の期間焼鈍温度に加熱される、焼鈍工程をさらに含む。焼鈍温度は500℃を下まわる。1つの実施例によれば、焼鈍温度は、350℃〜500℃の範囲から選択される。例えば、所定の期間は、30秒〜30分の範囲から選択される。この焼鈍工程で、混合領域21中の半導体本体100からのケイ素原子および混合領域21に導入された金属原子Mは、金属層200に隣接するケイ化物層22を形成する。さらに、混合領域21中の半導体本体100からの炭素原子は、ケイ化物層22の中に炭素析出物CPを形成する。これは、ケイ化物層22の1つの区画の拡大図を示す図1Eに概略的に例示される。図1Bを参照して解説した注入工程で炭素原子を混合領域21に導入するステップは、焼鈍工程における炭素析出物CPのこのような形成を促進し得る。焼鈍工程で、混合領域21中の金属原子Mは、ケイ化物層22が本質的に金属層200に沿って形をなすように、第1の表面101に向かって拡散し得る。そのため、ケイ化物層22の厚さは、混合領域21の厚さより小さくすることができる。これらの領域21、22の厚さは、半導体本体100の縦方向でのそれらの領域の寸法である。ケイ化物層22は、片側でケイ化物層22に隣接する金属層200と反対側でケイ化物層22に隣接する半導体本体100との間でオーミック接触を提供し、ケイ化物層22は、金属層200からの金属原子および半導体本体100からのケイ素原子によって形成されている。
【0022】
焼鈍工程でケイ化物層22を形成するステップは、混合領域中の金属原子Mの十分な濃度を必要とする。例えば、ケイ化物層が化学式NiSiを有するケイ化ニッケルを含むように、金属層200がニッケル層である場合、1つのニッケル原子および2つのケイ素原子が1つのケイ化物分子を形成するために必要とされる。混合領域中の金属原子の濃度は、注入工程における注入ドーズおよび注入エネルギーによって調整することができ、注入ドーズが増加するにつれて金属濃度が増加する。例えば、注入ドーズは、1E16cm−2〜1E18cm−2、より具体的には1E17cm−2〜1E18cm−2の範囲から選択される。
【0023】
上で解説した工程で、ケイ化物層22の一部になる金属原子は、図1Bを参照して解説した注入工程によって半導体本体100に導入される。図1Dを参照して解説した焼鈍工程で、ケイ化物層22は、500℃を下まわる比較的低い焼鈍温度で形成することができる。理由は、注入工程に起因して混合領域中の半導体本体100の結晶格子が激しく損傷されるため結晶格子中の原子間の結合が壊されることである。このことは、ケイ素原子を非常に反応的にし、ケイ化物の形成をサポートする。従来の工程で、金属原子は、900℃より高い温度、したがって、上に本明細書で図1A図1Eを参照して解説した工程より著しく高い温度を必要とする拡散工程によって半導体本体に導入される。
【0024】
図1A図1Eを参照すると、半導体本体100は、注入工程および焼鈍工程の前に金属層200に隣接し、焼鈍工程の後にケイ化物層22に隣接する、ドープ領域11を含む。1つの実施例によれば、このドープ領域11のドーピング濃度は、2E17cm−3〜2E20cm−3の範囲から選択され、より具体的には5E17cm−3〜5E19cm−3の範囲から選択される。このドープ領域11は、n型領域またはp型領域とすることができる。1つの実施例によれば、ドープ領域11は、n型領域であり、金属層200は、Ni、Mo、FeまたはCrのうちの少なくとも1つを含む。別の実施例によれば、ドープ領域11は、p型領域であり、金属層200は、Al、Ti、またはNiのうちの少なくとも1つを含む。ドープ領域11は、半導体本体100の第1の表面101に金属層200を形成する前に従来のドーピング工程を使用して形成することができる。
【0025】
1つの実施例によれば、金属層200を形成する前にドープ領域11を形成することに加えて、図1Bに示される注入工程でドーパント原子が半導体本体100に導入される。この場合、注入イオンの少なくとも1つのタイプは、ドーパントイオンである。ドープ領域11の望ましいドーピング型に依存して、これらのドーパントイオンはn型またはp型ドーパントイオンである。SiCで、n型ドーパントの1つの実施例は窒素(N)であり、p型ドーパントの1つの実施例はアルミニウム(Al)である。これらのドーパント原子は、注入工程で半導体本体100に行き着く。焼鈍工程で、これらのドーパント原子は、少なくともケイ化物層に隣接する領域で結晶格子中に取り込まれることによって、電気的に活性化される。そのため、これらのドーパント原子は、ケイ化物層22に隣接する領域でドープ領域11のドーピング濃度を増加させることができ、したがって、ケイ化物層22とドープ領域11との間の電気抵抗を減少させるのに役立つことができる。
【0026】
別の実施例によれば、ドーパントは、金属層200から半導体本体100に導入される。この場合、金属層200は、ドーパント原子を含むように形成され、これらのドーパント原子は、金属層200からのケイ化物形成金属原子とともに、注入工程によって金属層200から半導体本体100に導入される。ドーパント原子を含むように金属層200を形成するステップは、ドーパント原子を含む雰囲気中で金属層200を堆積させるステップを含み得る。例えば、金属層200を形成するステップは、窒素(N2)雰囲気またはTMA(トリメチルアルミニウム)雰囲気中で金属層200を堆積させるステップを含み得る。第1の実施例で、金属層200は、n型ドーパントとして窒素を含む。第2の実施例で、金属層200は、p型ドーパントとしてアルミニウムを含む。アルミニウム含有金属層200は、従来の堆積工程を使用してNiAlなどのアルミニウム含有合金として金属層200を形成することによって同様に取得することができる。
【0027】
1つの実施例によれば、金属層200は、ケイ化物層22だけが半導体本体100上に接触層として残るように、焼鈍工程の後除去される。金属層200を除去した結果が図2に示される。金属層200は、ケイ化物層22まで選択的に金属層200をエッチングするエッチング工程で除去することができるため、ケイ化物層22は、このエッチング工程でエッチング停止層として作用する。(図2に破線で例示される)1つの実施例によれば、金属層200を除去した後にケイ化物層22上にさらなる金属層400が形成される。さらなる金属層400は、金属層200と同じタイプまたは異なるタイプとすることができる。金属層の「タイプ」は、それぞれの金属層に含まれる金属のタイプによって定義される。
【0028】
図3A図3Dは、図1A図1Eに示される方法の変更形態を示す。この方法で、図3Aを参照すると、注入工程は、注入マスク300を使用するステップを含む。注入マスク300は、金属層200の注入マスク300によって覆われない部分にのみ開口部301を通って粒子(イオン)が注入されるように、金属層200の部分を覆い、開口部301を含む。したがって、混合領域21の形状および寸法は、本質的に注入マスク300の開口部301の形状および寸法によって与えられる。
【0029】
図3Bに示される、焼鈍工程で、ケイ化物層22は、混合領域21中の金属原子およびケイ素原子から形成される。半導体本体100の横方向でのケイ化物層22の形状および寸法は、本質的に、混合領域21の形状および寸法、したがって注入マスク300の開口部301の形状および寸法によって与えられる。
【0030】
焼鈍工程の後、金属層200は、上に図2を参照して解説した方法で除去することができる。あるいは、図3Cおよび図3Dに示されるように、金属層200は、金属層200がケイ化物層22を覆わない(ケイ化物層22に隣接しない)区画でのみ除去される。これは、金属層200の上にエッチングマスク500(図3C参照)を形成するステップ、およびエッチングマスク500によって覆われない領域で金属層200を除去するステップを含み得る。この結果が図3Dに示され、ここで201は除去(エッチング)工程後の金属層200の残っている区画を意味する。
【0031】
図4A図4Cは、図3A図3Dに示される方法の変更形態を示す。この方法で、図4Aに示されるように混合領域21が形成された後、金属層200は、金属層200の混合領域21を覆わない(混合領域21に隣接しない)区画を除去することによって構造化される。図4Bは、エッチングマスク500がまだ所定の位置にある状態で、金属層200の残っている区画201を示す。図4Cを参照すると、ケイ化物層22が形成される焼鈍工程は、金属層200を構造化するステップおよびエッチングマスク500を除去するステップに続く。
【0032】
ドープ領域11、ドープ領域11とオーミック接触にあるケイ化物層22、および任意選択の金属層200を有する、上に本明細書で解説した構成は、複数の異なるタイプの半導体デバイスで使用することができる。それらの半導体デバイスの3つの実施例、およびそれらの半導体デバイスでこのような構成を使用し得る場所の実施例は、下に本明細書で図5図7を参照して解説される。もちろん、構造は、それらの半導体デバイスで使用するように限定されるものではなく、同様に他の半導体デバイスで使用してもよい。
【0033】
図5は、トランジスタデバイス、具体的には絶縁ゲート電極を有するトランジスタデバイスの1つの区画の縦断面図を示す。図5は、このようなトランジスタデバイスの1つのトランジスタセルを示す。トランジスタデバイスは、並列に接続された複数のそれらのトランジスタデバイスを含み得る。これらのトランジスタセルのもう2つが図5に点線で例示される。トランジスタデバイスは、ボディ領域31、ボディ領域31の中のソース領域32、およびドリフト領域33を含む。ボディ領域31は、ソース領域32をドリフト領域33から分離する。ゲート電極41は、ボディ領域31に隣接し、ゲート誘電体42によってボディ領域31から誘電的に絶縁される。ドリフト領域33は、ボディ領域31とドレイン領域34との間に配置される。任意選択で(図示されない)フィールドストップ領域がドレイン領域34とドリフト領域33との間に配置される。トランジスタデバイスは、n型トランジスタデバイスまたはp型トランジスタデバイスとすることができる。n型トランジスタデバイスで、ソース領域32およびドリフト領域33はnドープされ、ボディ領域31はpドープされる。p型トランジスタデバイスで、個別のデバイス領域は、n型トランジスタデバイスにおけるそれぞれのデバイス領域のドーピング型に相補的なドーピング型を持つ。トランジスタデバイスはMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field−Effect Transistor:金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)とすることができる。この場合、ドレイン領域34は、ドリフト領域33と同じドーピング型を持つ。別の実施例によれば、トランジスタデバイスは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)である。この場合、ドレイン領域34は、ドリフト領域33のドーピング型に相補的なドーピング型を持つ。
【0034】
ゲート電極41は、ゲートノードGを形成し、またはトランジスタデバイスのゲートノードに電気的に接続される。ソース領域32およびボディ領域31は、ケイ化物層51および任意選択の電極層52を通してトランジスタデバイスのソースノードSに電気的に接続される。ケイ化物層51は、先に本明細書で解説したケイ化物層22に従って形成することができ、電極層52は、先に本明細書で解説した金属層200に従って形成することができる。ソース領域32およびボディ領域31は、ケイ化物層51を形成する前に(従来の方法で)形成することができる。
【0035】
さらに、ドレイン領域34は、ケイ化物層53および任意選択の電極層54を通してドレインノードDに電気的に接続される。ケイ化物層53は、先に本明細書で解説したケイ化物層22に従って形成することができ、電極層54は、先に本明細書で解説した金属層200に従って形成することができる。
【0036】
図6は、バイポーラダイオードの縦断面図を示す。バイポーラダイオードは、第1のエミッタ領域61、ベース領域62および第2のエミッタ領域63を含む。第1のエミッタ領域61とベース領域62との間にpn接合が形成される。ベース領域62および第2のエミッタ領域63は、同じドーピング型を持つ。第1のエミッタ領域61は、ケイ化物層71および任意選択の第1の電極層72を通してダイオードのアノードノードに接続される。ケイ化物層71および任意選択の電極層72は、それぞれ、先に本明細書で解説した、ケイ化物層22および金属層200に従って形成することができる。さらに、第2のエミッタ領域63は、ケイ化物層73および任意選択の第2の電極層74を通してカソードノードKに接続される。ケイ化物層73および電極層74は、それぞれ、先に本明細書で解説した、ケイ化物層22および金属層200に従って形成することができる。
【0037】
図7は、統合されたPiNショットキーダイオードとも呼ぶことができる、統合されたバイポーラ・ショットキー・ダイオードの縦断面図を示す。図7に示される統合されたバイポーラ・ショットキー・ダイオードは、図6に示されるバイポーラダイオードに基づいており、したがって同じ部分が同じ参照符号を持つ。このダイオードで、第1のエミッタ領域61はpドープされ、ベース領域62および第2のエミッタ領域63はnドープされる。第1のエミッタ領域61は、ケイ化物層71を介して第1の電極層72にオーミック接続される。さらに、ベース領域62は、第1の電極層72と接触している少なくとも1つの区画を含み、ショットキー接触が第1の電極層72とベース領域62との間に形成される。そのため、図7に示されるダイオードは、並列に接続されたバイポーラダイオードおよびショットキーダイオードを含む。
【0038】
第1の電極層72は、ベース領域62とショットキー接触を形成するのに適した金属である、ショットキー金属を含む。1つの実施例によれば、ベース領域62は、n型SiCを含み、ショットキー金属は、n型SiCに対して0.7eV〜1.6eVの障壁高さのショットキー接触を形成するように構成される。本明細書で使用される用語「ショットキー金属」は、半導体材料とショットキー接触を形成するのに適した任意の物質を意味する。それらの物質は、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、もしくはタンタル(Ta)などの純粋な金属、または窒化モリブデン(MoN)もしくは窒化チタン(TiN)などの金属化合物を含み得る。図7に示される統合されたダイオードで、ケイ化物層71は、図3Aおよび図3Bに示されるケイ化物層22を参照して解説されるように形成することができる。1つの実施例によれば、第1の電極層は、ケイ化物層を形成するために使用される金属層(図3Bに示される金属層200である)を除去し、ケイ化物層71および、ベース領域62の第1の表面101に広がっている区画に電極層72を形成することによって形成される。別の実施例によれば、ケイ化物層を形成するために使用される金属層は、ショットキー金属を含む。この場合、金属層はケイ化物層71を形成した後所定の位置に残ることができ、金属層(図3Bで200)が第1の電極層72を形成する。
【符号の説明】
【0039】
11 ドープ領域
21 金属原子含有領域
32 ソース領域
34 ドレイン領域
61 第1のエミッタ領域
63 第2のエミッタ領域
100 半導体本体
101 第1の表面
200 金属層
300 注入マスク
301 開口部
400 さらなる金属層
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7