(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、測定装置に使用されるオートフォーカス装置が知られている(特許文献1参照)。オートフォーカス装置には被測定物(ワーク)に光を照射し、その反射光に基づき合焦位置を特定する方式がある。具体的に、フォトダイオードで受光された反射光は電気信号に変換される。続いて、その電気信号は増幅器によって増幅され、それら増幅信号に基づき合焦位置が特定される。
【0003】
しかしながら、上記オートフォーカス装置において、ワークの反射率が低い場合、得られる増幅信号は小さくなる。このため、増幅信号に電気ノイズがのれば、合焦位置の特定は困難となる。すなわち、オートフォーカスの精度は低下する。更に、合焦位置に基づきワーク表面を追従するフィードバック制御を安定して行うことができない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係るオートフォーカス装置の構成を示す概略図である。本実施の形態に係るオートフォーカス装置は、所謂、ダブルピンホール方式のレーザオートフォーカス装置であり、例えば、顕微鏡、画像測定機などの光学装置に搭載される。
【0010】
本実施の形態に係るオートフォーカス装置は、
図1に示すように、光学ヘッド10、増幅部20、増幅率設定部30、AD変換部40、及びコンピュータ50を有する。光学ヘッド10はワークWにレーザ光を照射し、その反射光を受光して電気信号に変換する。増幅部20は光学ヘッド10から受け付けた電気信号を増幅させる。増幅率設定部30は、増幅部20から受け付けた電子信号に基づき増幅部20の増幅率を設定する。AD変換部40は増幅部20から受け付けた電気信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。コンピュータ50はAD変換部40から受け付けた信号に基づき合焦位置を特定する。
【0011】
光学ヘッド10において、
図1に示すように、光源(レーザダイオード)11はレーザ光を発光し、そのレーザ光をビームスプリッタ12aに照射する。ビームスプリッタ12aは光源11からの光を透過してチューブレンズ13に照射し、ワークWからの反射光を反射させてビームスプリッタ12bに照射する。
【0012】
チューブレンズ13はビームスプリッタ12aからの光を平行光として対物レンズ14を介してワークWに照射する。また、チューブレンズ13はワークWからの反射光をビームスプリッタ12aに照射する。ビームスプリッタ12bは、ビームスプリッタ12aからの光を分光し、透過光をピンホール15aを介して受光素子(フォトダイオード)16aに照射する。また、ビームスプリッタ12bは、反射光をピンホール15bを介して受光素子(フォトダイオード)16bに照射する。受光素子16a、16bは、各々、受光した光の光量に基づき、信号A及び信号Bを増幅部20に出力する。
【0013】
図1において、光学ヘッド10(対物レンズ14)がワークWに対して合焦位置に配置されている場合、受光素子16a、16bの出力は等しくなる。光学ヘッド10が合焦位置より遠くに配置されている場合、受光素子16bの出力は受光素子16aの出力より大きくなる。一方、光学ヘッド10は合焦位置より近くに配置されている場合、受光素子16bの出力は受光素子16aの出力より小さくなる。このような変化を利用して、本実施の形態は、ワークWに対する光学ヘッド10(対物レンズ14)の合焦位置を特定できる。
【0014】
増幅部20は、
図1に示すように、信号A用の増幅器21、及び信号B用の増幅器22を有する。増幅器21は信号Aを増幅させた増幅信号A’(電圧値Va)をAD変換部40のチャンネルCH1に出力する。増幅器22は、信号Bを増幅させた増幅信号B’(電圧値Vb)をAD変換部40のチャンネルCH2に出力する。
【0015】
増幅率設定部30は、
図1に示すように、信号電圧加算部31、及び増幅率決定部32を有する。信号電圧加算部31は、信号A’の電圧値Vaと信号B’の電圧値Vbを加算(Va+Vb)する。増幅率決定部32は、加算値Va+Vbが一定値となるように、増幅器21、22の増幅率を決定する。具体的に、増幅率決定部32は、増幅率制御信号Sa,Sbを増幅器21、22に入力してそれらの増幅率を制御する。増幅器21と22の増幅率は同じである。なお、増幅率制御信号Sa,Sbは、アナログ信号及びデジタル信号のどちらでも良い。
【0016】
AD変換部40は増幅信号A’、B’をアナログ信号からデジタル信号に変換してコンピュータ50に出力する。
【0017】
コンピュータ50は、
図1に示すように、演算部51、記憶部52、及びS信号出力部53を有する。演算部51は、AD変換部40から入力された信号A’、B’に基づきS信号を算出する。ここで、S信号は、ワークWに対する対物レンズ14の合焦位置を特定するための信号である。具体的に、「S信号=(A’−B’)÷(A’+B’)」に基づきS信号は算出される。
図2はS信号を示す図である。
図2に示すようにS信号の電圧値は光学ヘッド10とワークWとの間の距離Dに応じて変化する。なお、S信号の電圧値が合焦判定電圧に一致すると、光学ヘッド10(対物レンズ14)はワークWに対して合焦位置にあると判定される。
【0018】
記憶部52は、プログラムの他、各種情報を記憶する。S信号出力部53はS信号を外部に出力する。例えば、S信号出力部53は、デジタル信号をアナログ信号に変換して出力する。また、例えば、S信号出力部53はシリアルやパラレルのデジタル信号を出力する。
【0019】
次に、比較例と比べた本実施の形態の効果を説明する。比較例において、増幅器21,22の増幅率は固定値であるものとする。このような比較例では、ワークWの反射率が低い場合、得られる増幅信号A’,B’は小さくなる。このため、AD変換部40でデジタル化された値(AD値)も小さくなる。S信号算出式は、このAD値が小さい場合と大きい場合とでは、AD値が1だけ変化したときのS信号の計算値の変化量(感度)が異なる。
【0020】
例えば、高反射率のワークWにて増幅信号A’のAD値が600、増幅信号B’のAD値が300であった場合、S信号の計算値は0.333となる。また、増幅信号A’のAD値が600、増幅信号B’のAD値が−1だけ変化して299であった場合、S信号の計算値は0.334となる。この場合、増幅信号B’の変化前後におけるS信号値の差は、0.001となる。
【0021】
一方、低反射率のワークWにて増幅信号A’のAD値が6、増幅信号B’のAD値が3であった場合、S信号の計算値は0.333となる。また、増幅信号A’のAD値が6、増幅信号B’のAD値が同じように−1だけ変化して2であった場合、S信号の計算値は0.5となる。この場合、増幅信号B’の変化前後におけるS信号値の差は0.167となる。したがって、増幅信号B’の−1の変化に対するS信号値は、高反射率のワークWよりも低反射率のワークWを用いた場合に大きく変化する。
【0022】
以上のように低反射率のワークWでは、信号A,Bのわずかな変化でS信号値が大きく変化するため、電気ノイズによってS信号は大きくばらつく。あるいは、信号A,Bの変化に対し、S信号の感度が高くなるためS信号は大きくばらつく。これは、固定増幅率の回路を切り替えて増幅する場合も、1つの増幅経路では、やはりAD値が小さい場合があるため、同様の不都合がある。
【0023】
これに対して、本実施の形態においては、増幅信号A’,B’の電圧値Va’,Vb’に基づき増幅器21,22の増幅率を設定する。したがって、ワークWの反射率が低い場合であっても、比較例と比べて増幅信号A’、B’が小さくなることはなく、常に得られるAD値は大きな値となる。このため、電気ノイズや感度に起因するS信号のばらつきを比較例よりも小さくできる。したがって、本実施の形態は、比較例と比べて合焦位置を特定する精度を向上させることができる。
【0024】
[第2の実施の形態]
次に、
図3を参照して第2の実施の形態に係るオートフォーカス装置について説明する。
図3に示すように、第2の実施の形態は、信号電圧加算部31の代わりに、最大電圧検出部31aを有する。この点で第2の実施の形態は第1の実施の形態と異なる。
【0025】
最大電圧検出部31aは、信号A’の電圧値Vaと信号B’の電圧値Vbのいずれか高い方の電圧値を検出する。増幅率決定部32は、検出された高い方の電圧値が一定の電圧になるように増幅器21、22の増幅率を設定する。
【0026】
以上の構成を有する第2の実施の形態であっても、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。また、第1の実施の形態においては、AD変換部40のデジタル変換可能な範囲より増幅信号A’、B’のいずれかが大きくなるおそれがある。一方、第2の実施の形態においては、上記構成によってAD変換部40のデジタル変換可能な範囲に増幅信号A’,B’を収めることができる。
【0027】
[第3の実施の形態]
次に、
図4を参照して、第3の実施の形態に係るオートフォーカス装置について説明する。本実施の形態に係るオートフォーカス装置は、ダブル・ナイフエッジ方式のレーザオートフォーカス装置である。
【0028】
本実施の形態に係るオートフォーカス装置は、
図4に示すように、光学ヘッド60、増幅部70、増幅率設定部80、AD変換部90、及びコンピュータ50を有する。
【0029】
光学ヘッド60においては、
図4に示すように、光源(レーザダイオード)61はレーザ光を発光し、そのレーザ光はチューブレンズ62、ビームスプリッタ64を経て対物レンズ65を通り、ワークWに照射される。対物レンズ65を通った光束は、対物レンズ65の合焦位置に光点像を形成する。
図4は、一例としてワークWと対物レンズ65の合焦位置が一致している場合を示す。ワークWで反射した光は、対物レンズ65を通り、ビームスプリッタ64で反射され、補助レンズ63を通り、三角プリズム66へと導かれる。
【0030】
三角プリズム66で分けられた光の内、1つは二分割された受光素子67a、67bで構成される二分割センサ67上に光点像を形成する。また、他のもう一つの光は、二分割された受光素子68a、68bで構成される二分割センサ68上に光点像を形成する。
【0031】
本実施の形態において、ワークWと光学ヘッド60との相対位置が対物レンズ65の光軸方向に変化してワークWが対物レンズ65の合焦位置からずれると、二分割センサ67上での光点像がぼける。ワークWに対して光学ヘッド60(対物レンズ65)が合焦位置より近いと、受光素子67a、68aで受光される光量が大きくなる。一方、ワークWに対して光学ヘッド60(対物レンズ65)が合焦位置より遠いと、受光素子67b、68bで受光される光量が大きくなる。このような変化を利用して、本実施の形態はワークWに対する光学ヘッド60(対物レンズ65)の合焦位置を特定できる。なお、受光素子67a、67bは、各々受光量に基づき信号C,Dを出力する。受光素子68a、68bは、各々受光量に基づき信号E,Fを出力する。
【0032】
増幅部70は、
図4に示すように、信号C用の増幅器71、信号D用の増幅器72、信号E用の増幅器73、及び信号F用の増幅器74を有する。
【0033】
増幅器71は信号Cを増幅させた増幅信号C’(電圧値Vc)をAD変換部90のチャンネルCH1に出力する。増幅器72は信号Dを増幅させた増幅信号D’(電圧値Vd)をAD変換部90のチャンネルCH2に出力する。増幅器73は信号Eを増幅させた増幅信号E’(電圧値Ve)をAD変換部90のチャンネルCH3に出力する。増幅器74は信号Fを増幅させた増幅信号F’(電圧値Vf)をAD変換部90のチャンネルCH4に出力する。
【0034】
増幅率設定部80は、
図4に示すように、信号電圧加算部81、及び増幅率決定部82を有する。信号電圧加算部81は、信号C’の電圧値Vcと信号D’の電圧値Vdと信号E’の電圧値Veと信号F’の電圧値Vfとを加算(Vc+Vd+Ve+Vf)する。増幅率決定部82は、加算値Vc+Vd+Ve+Vfが一定の電圧となるように、増幅器71〜74の増幅率を決定する。具体的に、増幅率決定部82は、増幅率制御信号Sc〜Sfを増幅器71〜74に入力してそれらの増幅率を制御する。増幅器71と74の増幅率は全て同じである。なお、増幅率制御信号Sc〜Sfは、アナログ信号及びデジタル信号のどちらでも良い。
【0035】
AD変換部90は増幅信号C’,D’,E’,F’をアナログ信号からデジタル信号に変換してコンピュータ50に出力する。
【0036】
コンピュータ50は、第1の実施の形態と略同様の構成を有する。但し、第3の実施の形態に係る演算部51におけるS信号の算出が第1の実施の形態と異なる。具体的に、「S信号=(C’−D’)÷(C’+D’)+(E’−F’)÷(E’+F’)」に基づきS信号は算出される。以上のような構成であっても、第3の実施の形態は第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0037】
以上、発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。例えば、第3の実施の形態は第1の実施の形態にダブル・ナイフエッジ方式を適応したものであるが、第3の実施の形態に係るダブル・ナイフエッジ方式は第2の実施の形態にも適用可能である。