特許第6336734号(P6336734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336734
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 45/00 20060101AFI20180528BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20180528BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20180528BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20180528BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B24B45/00 Z
   H01L21/78 F
   H01L21/304 631
   B24B27/06 M
   B24B7/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-230846(P2013-230846)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-89606(P2015-89606A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】徳永 昭司
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−067079(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0138989(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 45/00
B24B 7/04
B24B 27/06
H01L 21/301
H01L 21/304
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物を加工するための加工手段と、該加工手段による加工部に加工水を供給する加工水供給手段と、を具備する加工装置であって、
該加工手段は、被加工物を加工するための加工工具と、該加工工具が装着されるマウンターと、該マウンターに該加工工具を固定する固定部材とからなり、
該加工工具は、砥石と該砥石を支持する基台とから構成されており、
該マウンターには、該加工工具を構成する基台よりイオン化傾向の大きい腐食部材が電気的に接触した状態で固定ナットまたは締結ボルトにより固定されている、
ことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該加工工具を構成する基台はアルミニウムによって形成され、該腐食部材はマグネシウムによって形成されている、請求項1記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を切削するための切削ブレードを備えた切削装置や、被加工物を研削して所定の厚みに形成する研削ホイールを備えた研削装置等の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。このように形成された半導体ウエーハは、研削装置によって裏面が研削され所定の厚みに形成された後、切削ブレードを備えた切削装置によって分割予定ラインに沿って切断され個々のデバイスに分割される。
【0003】
研削装置は、被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物を研削する研削ホイールを備えた研削手段と、該研削ホイールによる研削加工部に研削水を供給しつつ被加工物を研削する。研削手段は、アルミニウムで形成されたホイール基台と該ホイール基台の外周部に装着された砥石とからなる研削ホイールと、該研削ホイールが装着されるマウンターと、該マウンターを連結した回転スピンドルとを具備し、マウンターに研削ホイールのホイール基台をボルトによって固定するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、切削装置は、被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを備えた切削手段と、該切削ブレードによる切削部に切削水を供給しつつ被加工物を切削する。切削手段は、アルミニウムで形成され中央に取付け穴を有するブレード基台の外周部側面に砥粒をメッキによって固定した電鋳砥石が配設された切削ブレードと、該切削ブレードを構成するブレード基台の取付け穴が嵌合するボス部を有するとともに切削ブレードのブレード基台の背面を支持するフランジ部を備えたマウンターと、該マウンターが装着される回転スピンドルとを具備し、マウンターを構成するボス部に切削ブレードを構成するブレード基台の取り付け穴を嵌合した後、ボス部の先端部外周に形成された雄ねじに固定ナットを螺合することにより、切削ブレードのブレード基台をマウンターのフランジと固定ナットとの間に挟持固定するように構成されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−50931号公報
【特許文献2】特開2001−144034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、研削装置においてはアルミニウムによって形成されたホイール基台が研削加工中に腐食してマウンターに密着し、研削ホイールをマウンターから取り外すことが困難になるという問題がある。
また、切削装置においては、アルミニウムによって形成されたブレード基台が切削加工中に腐食して外周部に配設された電鋳砥石が脱落したり、または蛇行して高精度な切削が困難になるという問題がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、研削ホイールや切削ブレード等の加工工具の基台の腐食を防止することができる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物を加工するための加工手段と、該加工手段による加工部に加工水を供給する加工水供給手段と、を具備する加工装置であって、
該加工手段は、被加工物を加工するための加工工具と、該加工工具が装着されるマウンターと、該マウンターに該加工工具を固定する固定部材とからなり、
該加工工具は、砥石と該砥石を支持する基台とから構成されており、
該マウンターには、該加工工具を構成する基台よりイオン化傾向の大きい腐食部材が電気的に接触した状態で固定ナットまたは締結ボルトにより固定されている、
ことを特徴とする加工装置が提供される。
【0009】
上記加工工具を構成する基台はアルミニウムによって形成され、上記腐食部材はマグネシウムによって形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、加工工具が装着されるマウンターには、加工工具を構成する基台よりイオン化傾向の大きい腐食部材が電気的に接触した状態で固定ナットまたは締結ボルトにより固定されているので、イオン化傾向の大きい腐食部材が腐食するため加工工具を構成する基台の腐食を防止することができる。従って、切削装置の加工工具としての切削ブレードを構成するアルミニウムからなる基台が腐食して砥石切れ刃が脱落したり、または蛇行して高精度な切削が困難になるという問題が解消する。また、研削装置の加工工具として研削ホイールを構成するアルミニウムからなる基台が腐食してマウンターに密着し、研削ホイールをマウンターから取り外すことが困難になるという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従って構成された加工装置としての切削装置の斜視図。
図2図1に示す切削装置に装備される切削手段としてのスピンドルユニットの構成部材を分解して示す斜視図。
図3図2に示す切削手段としてのスピンドルユニットの断面図。
図4図2に示す切削手段としてのスピンドルユニットを構成する腐食部材の配設位置に関する他の実施形態を示す断面図。
図5図1に示す切削装置に装備される切削水供給手段の要部を分解して示す斜視図。
図6】本発明に従って構成された加工装置としての研削装置の斜視図。
図7図6に示す研削装置に装備される研削手段を構成するマウンターの下方から視た斜視図。
図8図6に示すマウンターに装着する研削ホイールの斜視図。
図9図7に示すホマウンターに図8に示す研削ホイールを装着した状態を示す断面図および腐食部材の斜視図。
図10図7に示すホマウンターに図8に示す研削ホイールを装着するとともに腐食部材を装着した他の実施形態を示す断面図および腐食部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によって構成された加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0013】
図1には、本発明によって構成された加工装置としての切削装置の斜視図が示されている。図1に示す切削装置2は、略直方体状の装置ハウジング21を具備している。この装置ハウジング2内には、被加工物を保持する被加工物保持手段としてのチャックテーブル3が切削送り方向である矢印Xで示す方向(X軸方向)に移動可能に配設されている。チャックテーブル3は、吸着チャック支持台31と、該吸着チャック支持台31上に配設された吸着チャック32を具備しており、該吸着チャック32の上面である保持面上に被加工物を図示しない吸引手段を作動することによって吸引保持するようになっている。また、チャックテーブル3は、図示しない回転機構によって回転可能に構成されている。なお、チャックテーブル3には、被加工物として後述するウエーハをダイシングテープを介して支持する環状のフレームを固定するためのクランプ33が配設されている。このように構成されたチャックテーブル3は、図示しない切削送り手段によって、矢印Xで示す切削送り方向(X軸方向)に移動せしめられるようになっている。
【0014】
図1に示す切削装置2は、切削手段としてのスピンドルユニット4を具備している。スピンドルユニット4は、切削送り方向(X軸方向)と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って配設されている。スピンドルユニット4は、図示しない割り出し送り手段によって割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられるとともに、図示しない切り込み送り手段によって図1において矢印Zで示す切り込み送り方向(Z軸方向)に移動せしめられるようになっている。このスピンドルユニット4は、図示しない移動基台に装着され割り出し方向(Y軸方向)および切り込み方向(Z軸方向)に移動調整されるスピンドルハウジング41と、該スピンドルハウジング41に回転自在に支持された回転スピンドル42と、該回転スピンドル42の前端部に装着された切削ブレード43とを具備している。
【0015】
次に、上記回転スピンドル42および回転スピンドル42の前端部に装着された切削ブレード43の取付け構造について図2および図3を参照して説明する。
切削ブレード43は、円形状の基台431と該基台431の片側側面の外周部に配設された環状の砥石切れ刃432とからなる所謂ハブブレードである。基台431はアルミニウムによって形成されその回転中心部には取付け穴433が設けられており、該取付け穴433が後述するマウンターのボス部に嵌合するようになっている。砥石切れ刃432は、例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒をニッケルメッキによって固定した電鋳砥石によって厚みが15μm程度に形成されている。
【0016】
上述した切削ブレード43を装着する回転スピンドル42は、その先端部がスピンドルハウジング41の先端から突出して配設されている。回転スピンドル42の先端部には先端に向かって外径が漸次減少するテーパ状のマウンター取付部421が設けられており、このマウンター取付部421の先端側に円柱状のナット螺合部422が設けられており、このナット螺合部422の外周面には雄ねじ422aが形成されている。回転スピンドル42の先端部に設けられたマウンター取付部421にマウンター44が装着される。マウンター44はステンレス鋼等の金属材によって形成され、上記切削ブレード43の基台431に設けられた取付け穴433と嵌合するボス部441と、該ボス部441の後端から径方向に突出して形成され切削ブレード43の基台431の背面を支持するフランジ部442とからなっている。ボス部441は円筒状の外周面を有し、その外径は上記切削ブレード43の基台431に設けられた取付け穴433の内径と対応する寸法に形成されており、先端部外周面に雄ねじ441aが形成されている。上記フランジ部442の外周部前面には環状の支持面442aが形成されている。マウンター44の中心部には、上記回転スピンドル42の先端部に設けられたマウンター取付部421に嵌合する取付け穴443が設けられている。この取付け穴443は、マウンター取付部421のテーパと対応するテーパ状に形成されている。このように構成されたマウンター44は、回転スピンドル42のマウンター取付部421に取付け穴443を嵌合し、その後雄ねじ441aに固定部材としてのステンレス鋼等の金属材によって形成された固定ナット45を螺合することにより、図3に示すように回転スピンドル42に装着される。
【0017】
上記のようにして、回転スピンドル42に装着されたマウンター44に切削ブレード43が取り付けられる。即ち、切削ブレード43は、基台431に設けられた取付け穴433をマウンター44のボス部441に嵌合する。このとき、図示の実施形態においては、切削ブレード43をマウンター44のボス部441に嵌合する前に、切削ブレード43を構成するアルミニウムからなる基台431よりイオン化傾向の大きいマグネシウムによって環状に形成された腐食部材46をボス部441に嵌合する。このようにマウンター44のボス部441に腐食部材46と切削ブレード43の基台431を嵌合したならば、ボス部441の先端部外周面に形成された雄ねじ441aに固定手段としてのステンレス鋼等の金属材によって形成された固定ナット47を螺合することにより、切削ブレード43の基台431は図3に示すようにマウンター44のフランジ部442の支持面442a(図2参照)と固定ナット47との間に腐食部材46を介して挟持固定される。この結果、腐食部材46はマウンター44および切削ブレード43の基台431に電気的に接触した状態となる
【0018】
次に、腐食部材の配設位置に関する他の実施形態について、図4の(a)および(b)を参照して説明する。
図4の(a)に示す実施形態は、切削ブレード43の基台431と固定ナット47との間に腐食部材46aを配設した例である。
また、図4の(b)に示す実施形態は、マウンター44のボス部441と固定ナット45との間に腐食部材46bを配設した例である。
【0019】
上記スピンドルハウジング41の前端部には、図5に示すように切削ブレード43の上半部を覆うブレードカバー48が取り付けられている。ブレードカバー48は、図示の実施形態においてはスピンドルハウジング41に装着された第1のカバー部材481と、該第1のカバー部材481に装着される第2のカバー部材482とからなっている。第1のカバー部材481の側面には雌ねじ穴481aと2個の位置決めピン481bが設けられており、第2のカバー部材482には上記雌ねじ穴481aと対応する位置に挿通穴482aが設けられている。また、第2のカバー部材482の第1のカバー部材481と対向する面には、上記2個の位置決めピン481bが嵌合する図示しない2個の凹部が形成されている。このように構成された第1のカバー部材481と第2のカバー部材482は、第2のカバー部材482に形成された図示しない2個の凹部を第1のカバー部材481に設けられた2個の位置決めピン481bに嵌合することによって位置決めする。そして、締結ボルト483を第2のカバー部材482の挿通穴482aに挿通し、第1のカバー部材481に設けられた雌ねじ穴481aと螺合することにより、第2のカバー部材482を第1のカバー部材481に装着する。
【0020】
図5を参照して説明を続けると、図示の実施形態における切削装置2は、上記切削ブレード43の砥石切れ刃432による切削加工部に切削水を供給する切削水供給機構49を具備している。この切削水供給機構49は、上記ブレードカバー48を構成する第1のカバー部材481および第2のカバー部材482に配設された第1の切削水供給管491および第2の切削水供給管492と、該第1の切削水供給管491および第2の切削水供給管492に切削水を送給する切削水送給手段493と、上記第1の切削水供給管491および第2の切削水供給管492にそれぞれ接続された第1のノズル494および第2のノズル495を具備している。
【0021】
第1の切削水供給管491および第2の切削水供給管492は、それぞれ上記ブレードカバー48を構成する第1のカバー部材481および第2のカバー部材482に配設されており、その上端が切削水送給手段493に接続され、その下端にはそれぞれ第1のノズル494および第2のノズル495が接続される。
【0022】
上記第1のノズル494および第2のノズル495は、パイプ材によって形成され、切削ブレード43の環状の砥石切れ刃432の両側に切削送り方向(X軸方向)に沿って配設されている。このパイプ材からなる第1のノズル494および第2のノズル495は、それぞれ先端が閉塞されており、基端がそれぞれ上記第1の切削水供給管491および第2の切削水供給管492の下端に接続されている。第1のノズル494および第2のノズル495には、切削ブレード43による切削加工部に向けて切削水を噴射する複数の噴口(図示せず)が設けられている。
【0023】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態における切削装置2は、上記チャックテーブル3上に保持された被加工物の表面を撮像し、上記切削ブレード43によって切削すべき領域を検出するための撮像手段51を具備している。この撮像手段51は、顕微鏡やCCDカメラ等の光学手段からなっている。また、切削装置は、撮像手段51によって撮像された画像を表示する表示手段52を具備している。
【0024】
上記装置ハウジング21におけるカセット載置領域53aには、被加工物を収容するカセットを載置するカセット載置テーブル53が配設されている。このカセット載置テーブル53は、図示しない昇降手段によって上下方向に移動可能に構成されている。カセット載置テーブル53上には、被加工物としての半導体ウエーハ10を収容するカセット54が載置される。カセット54に収容される半導体ウエーハ10は、表面に格子状の分割予定ラインが形成されており、この格子状の分割予定ラインによって区画された複数の矩形領域にIC、LSI等のデバイスが形成されている。このように形成された半導体ウエーハ10は、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に裏面が貼着された状態でカセット54に収容される。
【0025】
また、図示の実施形態における切削装置は、カセット載置テーブル53上に載置されたカセット54に収容されている半導体ウエーハ10(環状のフレームFにダイシングテープTを介して支持されている状態)を仮置きテーブル55に搬出する搬出・搬入手段56と、仮置きテーブル55に搬出された半導体ウエーハ10を上記チャックテーブル3上に搬送する第1の搬送手段57と、チャックテーブル3上で切削加工された半導体ウエーハ10を洗浄する洗浄手段58と、チャックテーブル3上で切削加工された半導体ウエーハ10を洗浄手段58へ搬送する第2の搬送手段59を具備している。
【0026】
次に、上述した切削装置2を用いて半導体ウエーハ10を所定の分割予定ラインに沿って切断する切削作業について説明する。
カセット載置テーブル53上に載置されたカセット54の所定位置に収容されている半導体ウエーハ10(環状のフレームFにダイシングテープTを介して支持されている状態)は、図示しない昇降手段によってカセット載置テーブル53が上下動することにより搬出位置に位置付けられる。次に、搬出・搬入手段56が進退作動して搬出位置に位置付けられた半導体ウエーハ10を仮置きテーブル55上に搬出する。仮置きテーブル55に搬出された半導体ウエーハ10は、第1の搬送手段57の旋回動作によって上記チャックテーブル3上に搬送される。
【0027】
チャックテーブル3上に半導体ウエーハ10が載置されたならば、図示しない吸引手段が作動して半導体ウエーハ10をチャックテーブル3上に吸引保持する。また、半導体ウエーハ10をダイシングテープTを介して支持する環状のフレームFは、上記クランプ33によって固定される。このようにして半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル3は、撮像手段51の直下まで移動せしめられる。チャックテーブル3が撮像手段51の直下に位置付けられると、撮像手段51によって半導体ウエーハ10に形成されている分割予定ラインが検出され、スピンドルユニット4を割り出し方向である矢印Y方向に移動調節して分割予定ラインと切削ブレード43との精密位置合わせ作業が行われる(アライメント工程)。
【0028】
上述したようにアライメント工程が実施されたならば、チャックテーブル3を切削ブレード43の下方である切削加工領域に移動し、切削ブレード43を所定方向に回転せしめるとともに、所定量切り込み送りする。そして、半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル3を矢印Xで示す切削送り方向に所定の切削送り速度で移動する。この結果、チャックテーブル3上に保持された半導体ウエーハ10は、切削ブレード43により所定の分割予定ラインに沿って切断される(切削工程)。この切削工程においては、上記切削水供給手段493が作動して切削ブレード43による切削加工部に加工水としての切削水が供給される。
【0029】
上述した切削ブレード43による切削加工部に加工水としての切削水を供給しつつ切削工程を実施すると、アルミニウムによって形成された切削ブレード43の基台431はステンレス鋼によって形成されたマウンター44や固定ナット47よりイオン化傾向が大きいため電解腐食が生じるが、本発明においては上述したようにマウンター44および/または固定ナット45、47にはアルミニウムによって形成された切削ブレード43の基台431よりイオン化傾向が大きいマグネシウムからなる腐食部材46(46a、46b)が電気的に接触して配設されているので、アルミニウムによって形成された切削ブレード43の基台431の腐食を防止することができる。従って、切削ブレード43の基台431が腐食して砥石切れ刃432が脱落したり、または蛇行して高精度な切削が困難になるという問題が解消する。
【0030】
次に、本発明によって構成された加工装置の他の実施形態について、図6乃至図10を参照して説明する。
図6には、本発明によって構成された加工装置としての研削装置の斜視図が示されている。図6に示す研削装置6は、全体を番号60で示す装置ハウジングを具備している。この装置ハウジング60は、細長く延在する直方体形状の主部601と、該主部601の後端部(図6において右上端)に設けられ上方に延びる直立壁602とを有している。直立壁602の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール611、611が設けられている。この一対の案内レール611、611に移動基台62が摺動可能に装着されている。移動基台62は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部621、621が設けられており、この一対の脚部621、621に上記一対の案内レール611、611と摺動可能に係合する被案内溝621a、621aが形成されている。このように直立壁602に設けられた一対の案内レール611、611に摺動可能に装着された移動基台62の前面には前方に突出した支持部63が設けられている。この支持部63に研削手段としてのスピンドルユニット7が取り付けられる。
【0031】
スピンドルユニット7は、支持部63に装着された円筒状のスピンドルハウジング71と、該スピンドルハウジング71に回転自在に配設された回転スピンドル72と、該回転スピンドル72を回転駆動するための駆動源としてのサーボモータ73とを具備している。スピンドルハウジング71に回転可能に支持された回転スピンドル72は、一端部(図6において下端部)がスピンドルハウジング71の下端から突出して配設されており、その一端(図6において下端)にマウンター74が設けられている。そして、このマウンター74の下面に研削ホイール8が取り付けられる。
【0032】
上記マウンター74および研削ホイール8について、図7乃至図9を参照して説明する。
図7には回転スピンドル72の下端に設けられたマウンター74の斜視図が示されており、図8にはマウンター74の下面に装着される研削ホイール8の斜視図が示されており、図9には図7に示すマウンター74の下面に図8に示す研削ホイール8が装着された断面図が示されている。図7および図9に示すマウンター74はステンレス鋼等の金属材によって円形状に形成され、回転スピンドル72の下端に一体的に設けられている。このマウンター74には、図7に示すように周方向に所定の間隔を置いて4個のボルト挿通穴741が形成されている。また、マウンター74には、図9に示すように回転スピンドル72の軸心に形成された研削水供給通路721と連通する複数(図示の実施形態においては8個)の連通路742が形成されている、この連通路742は図7および図9に示すように下面に開口している。なお、回転スピンドル72の軸心に形成された研削水供給通路721は、図6に示すように研削水供給手段70に接続されている。
【0033】
上述したように構成されたマウンター74に装着される研削ホイール8について、図8および図9を参照して説明する。
図8および図9に示す研削ホイール8は、環状の基台81と、該基台81の下面における外周部の砥石装着部に装着された複数の研削砥石82とからなっている。基台81はアルミニウムによって環状に形成されており、上記マウンター74に形成された複数のボルト挿通穴741と対応する位置に上面から形成された4個の雌ねじ穴811が設けられている。なお、研削砥石82は、粒径が1〜2μmのダイアモンド砥粒をボンド剤に混入して混練し、所定の形状に成型して焼成することによって構成されている。
【0034】
以上のように構成された研削ホイール8をマウンター74に装着するには、図9の(a)に示すように研削ホイール8の基台81の上面をマウンター74の下面に押し当て、マウンター74に形成された複数のボルト挿通穴741(図7参照)から固定部材としての締結ボルト85を挿入し基台81に設けられた複数の雌ねじ穴811(図8参照)に螺合することにより、マウンター74の下面に研削ホイール8を取り付けることができる。このとき、図示の実施形態においては、マウンター74の上面に研削ホイール8を構成するアルミニウムからなる基台81よりイオン化傾向の大きいマグネシウムによって環状に形成された腐食部材86を配設し締結ボルト85によって共締めする。即ち、環状に形成された腐食部材86には図9の(b)に示すように上記マウンター74に形成されたボルト挿通穴741と対応する4個のボルト挿通穴861が設けられており、このボルト挿通穴861に締結ボルト85を挿通して共締めする。この結果、腐食部材86はマウンター74に電気的に接触した状態となる。このようにしてマウンター74の下面に取り付けられた研削ホイール8の研削砥石82による研削加工部には、上記研削水供給手段70が作動することにより、研削水が回転スピンドル72に設けられた研削水供給通路721およびマウンター74に形成された複数の連通路742を介して供給される。
【0035】
次に、腐食部材の配設位置に関する他の実施形態について、図10の(a)および(b)を説明する。
図10の(a)および(b)に示す実施形態は、環状の腐食部材86aをマウンター74の下面と研削ホイール8を構成する基台81の上面との間に配設した例である。なお、図10の(a)および(b)に示す腐食部材86aは、マウンター74に形成されたボルト挿通穴741および連通路742と対応するボルト挿通穴861aおよび連通穴862aが設けられている。
【0036】
図6に戻って説明を続けると、図示の実施形態における研削装置6は、上記スピンドルユニット7を上記一対の案内レール611、611に沿って上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる研削送り手段91を備えている。この研削送り手段91は、直立壁602の前側に配設され上下方向に延びる雄ねじロッド911を具備している。この雄ねじロッド911は、その上端部および下端部が直立壁602に取り付けられた軸受部材912および913によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材912には雄ねじロッド911を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ914が配設されており、このパルスモータ914の出力軸が雄ねじロッド911に伝動連結されている。上記移動基台62の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部には貫通雌ねじ穴(図示していない)が形成されており、この雌ねじ穴に上記雄ねじロッド911が螺合せしめられている。従って、パルスモータ914が正転すると移動基台62およびスピンドルユニット7が下降即ち前進せしめられ、パルスモータ914が逆転すると移動基台62およびスピンドルユニット7が上昇即ち後退せしめられる。
【0037】
図6を参照して説明を続けると、装置ハウジング60の主部601にはチャックテーブル機構92が配設されている。チャックテーブル機構92は、被加工物保持手段としてのチャックテーブル921と、該チャックテーブル921の周囲を覆うカバー部材922と、該カバー部材922の前後に配設された蛇腹手段923および924を具備している。チャックテーブル921は、図示しない回転駆動機構によって回転せしめられるようになっており、その上面に被加工物であるウエーハを図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持するように構成されている。また、チャックテーブル921は、図示しないチャックテーブル移動手段によって図6に示す被加工物載置域925と上記スピンドルユニット7を構成する研削ホイール8と対向する研削域926との間で移動せしめられる。蛇腹手段923および924はキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段923の前端は主部601の前面壁に固定され、後端はカバー部材922の前端面に固定されている。また、蛇腹手段924の前端はカバー部材922の後端面に固定され、後端は装置ハウジング60の直立壁602の前面に固定されている。チャックテーブル921が矢印921aで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段923が伸張されて蛇腹手段924が収縮され、チャックテーブル921が矢印921bで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段923が収縮されて蛇腹手段924が伸張せしめられる。
【0038】
図示の実施形態における研削装置6は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図6に示すように研削装置6の被加工物載置域925に位置付けられているチャックテーブル921上に被加工物としての半導体ウエーハ10を載置する。なお、半導体ウエーハ10のデバイスが形成された表面には保護テープTが貼着されており、この保護テープT側をチャックテーブル921に載置する。このようにしてチャックテーブル921上に載置された半導体ウエーハ10は、図示しない吸引手段によってチャックテーブル921上に吸引保持される。チャックテーブル921に半導体ウエーハ10を吸引保持したならば、図示しないチャックテーブル移動手段を作動してチャックテーブル921を矢印921aで示す方向に移動し研削域926に位置付ける。次に、チャックテーブル921を所定方向に例えば300rpmの回転速度で回転するとともに、研削ホイール8を所定の方向に例えば6000rpmの回転速度で回転する。そして、研削ホイール8を下降して複数の研削砥石82を半導体ウエーハ10の上面である裏面(被研削面)に所定の圧力で押圧することにより被研削面を研削する(研削工程)。この研削工程においては、研削水供給手段70を作動することにより回転スピンドル72に設けられた研削水供給通路721およびマウンター74に形成された複数の連通路742を介して研削砥石82による研削加工部に研削水が供給される。
【0039】
上述した研削砥石82による研削加工部に加工水としての研削水を供給しつつ研削工程を実施すると、アルミニウムによって形成された研削ホイール8の基台81はステンレス鋼によって形成されたマウンター74や締結ボルト85よりイオン化傾向が大きいため電解腐食が生じるが、本発明においては上述したようにマウンター74にはアルミニウムによって形成された研削ホイール8を構成する基台81よりイオン化傾向が大きいマグネシウムからなる腐食部材86(86a)が電気的に接触して配設されているので、アルミニウムによって形成された研削ホイール8を構成する基台81の腐食を防止することができる。従って、アルミニウムによって形成された研削ホイール8を構成する基台81が腐食してマウンター74に密着し、研削ホイール8をマウンター74から取り外すことが困難になるという問題が解消する。
【符号の説明】
【0040】
2:切削装置
3:チャックテーブル
4:スピンドルユニット
42:回転スピンドル
43:切削ブレード
431:基台
432:砥石切れ刃
44:マウンター
441:ボス部
442:フランジ部
45:固定ナット
46:腐食部材
47:固定ナット
49:切削水供給機構
10:半導体ウエーハ
F:環状のフレーム
T:ダイシングテープ
6:研削装置
7:スピンドルユニット
70:研削水供給手段
72:回転スピンドル
73:サーボモータ
74:マウンター
8:研削ホイール
81:基台
82:研削砥石
85:締結ボルト
86:腐食部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10