(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る研削研磨装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る研削研磨装置の一例を示す斜視図である。
図2は、本実施の形態に係る研削研磨装置の研磨エリアにおけるチャックテーブルと研磨手段との位置関係を示す3面図である。なお、本実施の形態に係る研削研磨装置は、以下の図に示す構成に限定されない。研削研磨装置は、板状ワークを研削および研磨可能な構成であれば、どのような構成でもよい。
【0013】
図1に示すように、研削研磨装置1は、フルオートタイプの加工装置であり、板状ワークWに対する粗研削加工、仕上げ研削加工、研磨加工、からなる一連の加工を全自動で実施するように構成されている。また、研削研磨装置1は、粗研削エリア、仕上げ研削エリアおよび研磨エリアへ板状ワークWを搬送可能であり、仕上げ研削エリアから研磨エリア、および研磨エリアから粗研削エリアへ板状ワークWを搬送する際に、チャックテーブル43の傾きを自動調整する。このため、研削研磨装置1は、チャックテーブル43を粗研削加工および研磨加工のそれぞれに適した傾きに変更可能になっている。
【0014】
本実施の形態においては、加工対象となる板状ワークWとして、シリコンやGaAsなどの半導体材料で構成される半導体ウエーハの他に、セラミック、ガラス、サファイヤなどの無機材料で構成される無機材料ウエーハ等が用いられる。また、ミクロンオーダーからサブミクロンオーダーの平坦度(TTV: Total Thickness Variation)が要求される各種加工材料を用いてもよい。
【0015】
研削研磨装置1には、略直方体状の基台11の前面12に、一対のカセット台13、14が設けられている。カセット台13には、加工前の板状ワークWが収容された搬入用カセット15が載置される。カセット台14には、加工済みの板状ワークWが収容される搬出用カセット16が載置される。このように、カセット台13は研削研磨装置1の搬入口として機能し、カセット台14は研削研磨装置1の搬出口として機能する。また、一対のカセット台13、14上の搬入用カセット15および搬出用カセット16は、開閉可能に構成されている。
【0016】
基台11の上面には、カセット台13、14の後方に、搬入用カセット15および搬出用カセット16に対して板状ワークWを出し入れするロボット17が設けられている。また、ロボット17の両斜め後方には、加工前の板状ワークWを位置決めする位置決め機構21と、加工済みの板状ワークWを洗浄する洗浄機構25とが設けられている。位置決め機構21と洗浄機構25との間には、チャックテーブル43に加工前の板状ワークWを供給する供給機構31と、チャックテーブル43から加工済みの板状ワークWを回収する回収機構36とが設けられている。
【0017】
ロボット17は、複数のアームからなる多節リンク部18と、多節リンク部18の先端に設けられたハンド部19とを有している。ロボット17は、多節リンク部18を駆動して、搬入用カセット15から位置決め機構21に加工前の板状ワークWを搬送する他、洗浄機構25から搬出用カセット16に加工済みの板状ワークWを搬送する。位置決め機構21は、板状ワークWが載置される仮置きテーブル22と、仮置きテーブル22の中心に対して径方向に進退可能な複数のピン23とを有している。位置決め機構21は、複数のピン23を板状ワークWの外周縁に突き当てることで、仮置きテーブル22の中心に板状ワークWの中心を位置決めする。
【0018】
供給機構31は、上下に延在する軸部32と、軸部32の上端に支持された旋回アーム33と、旋回アーム33の先端に設けられた搬送パッド34とを有している。軸部32は、上下動可能かつ回転可能に構成されている。供給機構31は、搬送パッド34によって仮置きテーブル22から板状ワークWを吸着保持して持ち上げ、搬送パッド34を旋回させてチャックテーブル43に搬送する。このとき、仮置きテーブル22の中心とチャックテーブル43の中心とが搬送パッド34の旋回軌跡上に位置するため、板状ワークWの中心がチャックテーブル43の中心に位置合わせされる。
【0019】
回収機構36は、上下に延在する軸部37と、軸部37の上端に支持された旋回アーム38と、旋回アーム38の先端に設けられた搬送パッド39とを有している。軸部37は、上下動可能かつ回転可能に構成されている。回収機構36は、搬送パッド39によってチャックテーブル43から板状ワークWを吸着保持して持ち上げ、搬送パッド39を旋回させて洗浄機構25のスピンナテーブル26に搬送する。このとき、チャックテーブル43の中心とスピンナテーブル26の中心とが搬送パッド39の旋回軌跡上に位置するため、板状ワークWの中心がスピンナテーブル26の中心に位置合わせされる。
【0020】
洗浄機構25は、板状ワークWよりも小径な円盤状のスピンナテーブル26を有している。スピンナテーブル26に加工済みの板状ワークWが載置されると、開口部27を介してスピンナテーブル26が基台11内に降下する。そして、スピンナテーブル26が高速回転し、スピンナテーブル26に向けて洗浄水が噴射されることで板状ワークWが洗浄される。続いて、スピンナテーブル26が回転された状態で、洗浄水の代わりに乾燥エアが吹き付けられることで板状ワークWが乾燥される。
【0021】
供給機構31および回収機構36の後方には、ターンテーブル41が設けられている。ターンテーブル41の周囲には、支柱部47、48、49が立設されている。支柱部47には粗研削用の研削手段51、支柱部48には仕上げ用の研削手段61、支柱部49には研磨手段71が支持されている。ターンテーブル41には周方向に等間隔で4つのチャックテーブル43が配置されており、ターンテーブル41は90度間隔で間欠回転する。このため、各チャックテーブル43は、板状ワークWが受け渡される載せ換えエリア、研削手段51に対向する粗研削エリア、研削手段61に対向する仕上げ研削エリア、研磨手段71に対向する研磨エリアの順に位置付けられる。
【0022】
各チャックテーブル43は、ターンテーブル41の上面に回転可能に設けられている。チャックテーブル43の上面にはポーラスセラミック材によって保持面44が形成されている。チャックテーブル43の保持面44は、チャックテーブル43の回転中心を頂点とし外周が僅かに低い円錐状に形成されている(
図2参照)。保持面44に板状ワークWが吸引保持されると、板状ワークWも保持面44に沿って緩傾斜の円錐状になる。チャックテーブル43では、調整手段45によって研削手段51、61および研磨手段71に対する傾きが調整される。
【0023】
調整手段45は、2つの可動支持部451と1つの固定支持部452とからなり、チャックテーブル43を3点支持している(
図5参照)。この調整手段45では、2つの可動支持部451の上下動により、固定支持部452を支点としてチャックテーブル43が傾斜される。例えば、粗研削加工の際には、研削手段51の研削面とチャックテーブル43の保持面44とが平行になるように、2つの可動支持部451が作動されることで、チャックテーブル43の傾きが調整される(
図4参照)。また、研磨加工の際には、研磨手段71で保持面44を均等な圧力で押圧するように、チャックテーブル43の傾きが調整される。なお、調整手段45は、3つの可動支持部451で構成してもよい。その場合、1つまたは2つの可動支持部451を作動させることで、チャックテーブル43の傾きを調整することができる。また、3つの可動支持部451を作動させることで、チャックテーブル43全体の高さを調整することができる。
【0024】
支柱部47、48には、チャックテーブル43の保持面44に対して粗研削用および仕上げ研削用の研削手段51、61を接近および離反させる研削送り手段52、62が設けられている。研削送り手段52、62は、支柱部47、48の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール53、63と、一対のガイドレール53、63にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸基台54、64とを有している。Z軸基台54、64の前面には、ハウジング55、65を介して研削手段51、61が支持されている。Z軸基台54、64の背面側には、それぞれ図示しないナット部が形成され、ナット部にボールネジ56、66が螺合されている。ボールネジ56、66の一端部に連結された駆動モータ57、67によりボールネジ56、66が回転駆動され、研削手段51、61がガイドレール53、63に沿ってZ軸方向に移動される。
【0025】
粗研削用および仕上げ研削用の研削手段51、61は、円筒状のスピンドル58、68の下端にマウント59、69を設けて構成されている。スピンドル58、68には径方向に広がるフランジ60、70が設けられ、このフランジ60、70を介してハウジング55、65に研削手段51、61が支持される。マウント59、69の下面には、複数の研削砥石85、87が環状に配置された研削ホイール86、88が装着される。粗研削用の研削砥石85は、例えば、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドやレジンボンド等の結合剤で固めたダイヤモンド砥石で構成される。仕上げ研削用の研削砥石87は、粗研削用の研削砥石85よりも粒度が細かいものが使用される。
【0026】
支柱部49には、チャックテーブル43の保持面44に対して研磨手段71を所定の研磨位置に接近および離反させる研磨送り手段72が設けられている。研磨送り手段72は、支柱部49の前面に配置されたY軸方向に平行な一対のガイドレール73と、一対のガイドレール73にスライド可能に設置されたモータ駆動のY軸基台74とを有している。また、研磨送り手段72は、Y軸基台74の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール75と、一対のガイドレール75にスライド可能に設置されたZ軸基台76とを有している。Z軸基台76の前面には、ハウジング79を介して研磨手段71が支持されている。
【0027】
Y軸基台74、Z軸基台76の背面側には、それぞれナット部が形成され、ナット部にボールネジ(不図示)が螺合されている。ボールネジの一端部に連結された駆動モータ77、78によりボールネジが回転駆動され、研磨手段71がガイドレール73、75に沿ってY軸方向およびZ軸方向に移動される。研磨手段71は、円筒状のスピンドル81の下端にマウント82を設けて構成されている。マウント82の下面には繊維質や発泡剤等で形成された研磨パッド89が装着される。スピンドル81には径方向に広がるフランジ83が設けられ、このフランジ83を介してハウジング79に研磨手段71が支持される。
【0028】
研磨パッド89は、軟質研磨層90と硬質研磨層91とを積層して構成され、硬質研磨層91を下方に向けて軟質研磨層90がマウント82の下面に取り付けられる(
図2参照)。また、硬質研磨層91の表面が板状ワークWの表面に接触する研磨面になっている。例えば、軟質研磨層90にはニッタ・ハース株式会社製のSUBA400(登録商標)が用いられ、硬質研磨層91にはニッタ・ハース株式会社製のIC1000(登録商標)が用いられる。
【0029】
また、研磨手段71の近傍には、研磨パッド89で板状ワークW(チャックテーブル43)を押圧するときの圧力分布を測定する圧力シート92が設けられている。圧力シート92は板状に形成されており、ロール状に巻かれている。圧力シート92は、圧力シート92の前端が引き出されて板状ワークW上に載置される。また、圧力シート92は、研磨パッド89と板状ワークWとの間に挟持されることで生じる圧力分布を測定する。なお、ここでいう板状の圧力シート92とは、チャックテーブル43の保持面44の形状に沿って変形するものを表している。
【0030】
基台11内には、研削研磨装置1の各部を統括制御する制御手段94が設けられている。制御手段94は、研削手段51、61による研削制御、研磨手段71による研磨制御、チャックテーブル43の傾き制御等の各種制御を実行する。制御手段94は、各種処理を実行するプロセッサや、メモリ等により構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。また、制御手段94は、研削時および研磨時のそれぞれにおけるチャックテーブル43の調整角度を記憶する記憶部97(
図3参照)を備えている。
【0031】
このように構成された研削研磨装置1では、加工前に予め、チャックテーブルが研削時および研磨時に適した傾きになるように調整され、それぞれにおけるチャックテーブル43の回転軸の傾きが記憶部97(
図3参照)に記憶される。粗研削エリアでは、研削砥石85と保持面44とが平行になるようにチャックテーブル43が傾けられ、そのときのチャックテーブル43の回転軸の傾きが第1の記憶部98(
図3参照)に記憶される。研磨エリアでは、圧力シート92によって、板状ワークWに生じる圧力分布が測定される。そして、その圧力分布が保持面44(板状ワークW)の全面で均等になるようにチャックテーブル43が傾けられ、そのときのチャックテーブル43の回転軸の傾きが第2の記憶部99(
図3参照)に記憶される。
【0032】
加工する際には、先ず、ロボット17により搬入用カセット15から研削前の板状ワークWが取り出され、位置決め機構21に搬送される。位置決め機構21では、複数のピン23によって仮置きテーブル22の中心に板状ワークWの中心が位置決めされる。次に、供給機構31によって板状ワークWが載せ替えエリアのチャックテーブル43に搬送され、ターンテーブル41によってチャックテーブル43上の板状ワークWが粗研削エリアに位置付けられる。このとき、第1の記憶部98(
図3参照)に記憶されたチャックテーブル43の回転軸の傾きに基づいて、チャックテーブル43は研削加工に適した傾きに調整されている。この結果、板状ワークWは均一な厚みで粗研削される。そして、板状ワークWは粗研削エリアから仕上げ研削エリアに位置付けられ、粗研削と同様にして仕上げ研削が実施される。
【0033】
仕上げ研削の後、板状ワークWは仕上げ研削エリアから研磨エリアに位置付けられる。
図2に示すように、研磨エリアに板状ワークWが位置付けられると、研磨手段71(研磨パッド89)の回転軸は、チャックテーブル43の回転軸から偏心した位置に位置付けられる。このため、研磨手段71の回転軸近傍の回転速度が遅いことに起因する研磨量不足を解消することができ、板状ワークWの全面において研磨量にムラが生じるのを防止することができる。また、板状ワークWが仕上げ研削エリアから研磨エリアに位置付けられる間に、第2の記憶部99(
図3参照)に記憶されたチャックテーブル43の回転軸の傾きを基にして、チャックテーブル43が研磨加工に適した傾きに変更される。この結果、板状ワークWの表面は均一な荷重で研磨される。
【0034】
そして、加工済みの板状ワークWは、回収機構36によってスピンナテーブル26に搬送され、洗浄機構25で洗浄される。洗浄済みの板状ワークWは、ロボット17により搬出用カセット16内に収容される。また、板状ワークWが回収された後のチャックテーブル43は、研磨エリアから載せ替えエリアに位置付けられ、新たな板状ワークWがチャックテーブル43に搬送される。
【0035】
次に
図3を参照して、本実施の形態に係る研削研磨装置の加工前における研磨エリアでのチャックテーブルの傾き調整について説明する。
図3は、本実施の形態に係る研削研磨装置の圧力分布測定の一例を示す模式図である。
図3Aは圧力シートが板状ワークの上に載置される前の状態を示し、
図3Bは圧力シートが研磨パッドと板状ワークとの間に挟まれた状態を示している。なお、粗研削エリアにおいては、研削砥石と保持面とが平行になるようにチャックテーブルの傾き調整が実施されており、そのときのチャックテーブルの回転軸の傾きは第1の記憶部に記憶されている。
【0036】
図3に示すように、研磨手段71の下方には、板状ワークWが保持されたチャックテーブル43が位置付けられている。研磨手段71の研磨パッド89は、硬質研磨層91を板状ワークWに対向させた状態になっている。研削研磨装置1(
図1参照)の制御手段94は、研削時および研磨時のチャックテーブル43の調整角度を記憶する記憶部97、研削加工および研磨加工の相互間でチャックテーブル43の傾きを切換える切換部95、圧力シート92で測定された押圧力を認識する圧力認識部96とを有している。
【0037】
記憶部97は、研削時におけるチャックテーブル43の回転軸の傾きを記憶する第1の記憶部98と、研磨時におけるチャックテーブル43の回転軸の傾きを記憶する第2の記憶部99とを有している。切換部95は、研削時および研磨時に、記憶部97に記憶されたチャックテーブル43の回転軸の傾きを基に調整手段45に作動させてチャックテーブル43の傾きを選択的に調整する。圧力認識部96は、圧力シート92で測定された圧力分布を認識する。
【0038】
図3Aに示すように、研磨手段71の近傍に設けられた圧力シート92が引き出され、圧力シート92は載置手段93によって板状ワークWの上に載置される。そして、
図3Bに示すように、研磨送り手段72によって研磨手段71が降下され、研磨パッド89が圧力シート92を押圧する高さに研磨手段71が位置付けられる。このとき、研磨パッド89および板状ワークWは回転されておらず、圧力シート92が研磨パッド89と板状ワークWとの間に挟まれることにより、圧力シート92に生じる圧力分布が測定される。
【0039】
圧力シート92によって測定された圧力分布は、電気信号として制御手段94の圧力認識部96に出力される。チャックテーブル43の傾きが調整される前においては、圧力分布にムラが生じている(例えば、
図5A参照)。この場合、制御手段94は、圧力分布が圧力シート92の全面において均等になるように調整手段45を作動させ、チャックテーブル43の傾きを調整する。そして、圧力認識部96で認識される圧力分布が均等になったところで(例えば、
図5B参照)、調整手段45の作動を終了する。
【0040】
調整後のチャックテーブル43の傾きは、研磨加工に適したチャックテーブル43の傾きであり、このときのチャックテーブル43の回転軸の傾きは、制御手段94の第2の記憶部99に記憶される。このようにして、研磨時のチャックテーブル43の調整角度が決定される。詳細は後述するが、仕上げ研削加工から研磨加工に移行する際には、第2の記憶部99に記憶されたチャックテーブル43の回転軸の傾きを基に切換部95が調整手段45を作動させることで、チャックテーブル43は研磨加工に適した傾きに変更される。
【0041】
次に、
図4を参照して、本実施の形態に係る研削研磨装置の加工動作について説明する。
図4は、本実施の形態に係る研削研磨装置の研削加工および研磨加工の一例を示す模式図である。なお、
図4の右側は粗研削エリアを示しており、左側は研磨エリアを示している。また、
図4においては、説明の便宜上、仕上げ研削手段および制御手段の圧力認識部を省略している。
【0042】
本実施の形態に係る研削研磨装置1(
図1参照)では、粗研削エリアで粗研削加工が、仕上げ研削エリアで仕上げ研削加工が、研磨エリアで研磨加工がそれぞれ実施される。
図4に示すように、先ず、粗研削加工が実施される。チャックテーブル43上に保持された板状ワークWは、ターンテーブル41が回転されることにより、研削手段51の下方(粗研削エリア)に位置付けられる。このとき、チャックテーブル43の回転軸は、研削砥石85の回転軸から偏心した位置に位置付けられる。
【0043】
また、チャックテーブル43が研削エリアに位置付けられる際に、切換部95は、第1の記憶部98に記憶されたチャックテーブル43の回転軸の傾きを基に調整手段45を作動させる。これにより、研削砥石85の接触面と板状ワークWとが平行になるように、チャックテーブル43の傾きが調整される。チャックテーブル43の傾きが調整された後、研削送り手段52によって研削手段51が下降され、板状ワークW(チャックテーブル43の保持面44)の中心から外周に至る半径部分に研削砥石85が円弧状に接触される。そして、研削砥石85と板状ワークWとが回転接触されることにより、板状ワークWの表面が平坦に粗研削される。
【0044】
板状ワークWが所定の厚みに粗研削されると、研削砥石85が板状ワークWから離反されて粗研削加工が終了する。粗研削加工の後には仕上げ研削加工が実施される。チャックテーブル43に保持された板状ワークWは、ターンテーブル41が回転されることにより、粗研削エリアから仕上げ研削エリアに位置付けられる。そして、チャックテーブル43の傾きは変更されることなく、板状ワークWは平坦に仕上げ研削加工される。
【0045】
仕上げ研削加工が終了すると、次に研磨加工が実施される。チャックテーブル43に保持された板状ワークWは、ターンテーブル41が回転されることにより、仕上げ研削エリアから研磨エリアに位置付けられる。このとき、切換部95は、第2の記憶部99に記憶されたチャックテーブル43の傾きを基に調整手段45を作動させる。これにより、研磨パッド89が保持面44(板状ワークW)全面を均等な圧力で押圧するように、チャックテーブル43の傾きが調整される。チャックテーブル43の傾きが調整された後、研磨送り手段72によって研磨手段71が下降され、研磨パッド89と板状ワークWとが回転接触される。
【0046】
研磨パッド89が板状ワークWの表面に接触して板状ワークWが押圧されると、硬質研磨層91は板状ワークWの傾斜に沿って変形する。このとき、硬質研磨層91の中央部分が上方に凹むように撓むのに伴い、軟質研磨層90の中央部分が上方に窪む。また、上述したように、研磨パッド89が板状ワークWの全面を均等な圧力で押圧するように、チャックテーブル43が傾けられているため、板状ワークWの全面が均一な荷重で研磨される。よって、粗研削加工および仕上げ研削加工で生じた研削痕を除去することができる。また、硬質研磨層91によって研削面の凸凹を修正することができ、研磨精度をより向上させることができる。
【0047】
次に、
図5および
図6を参照して、チャックテーブルの傾きを調整して研磨した場合と調整せずに研磨した場合の板状ワークの除去量について説明する。
図5は、本実施の形態に係る研磨時の板状ワークの圧力分布を示す図である。
図6は、本実施の形態に係る板状ワークの研磨後の除去量を示すグラフである。
図5Aはチャックテーブルの傾きが調整される前の圧力分布を示し、
図5Bはチャックテーブルの傾きが調整された後の圧力分布を示している。
図6において、縦軸は板状ワークの除去量(高さ)を示しており、横軸は板状ワークの中心からの距離を示している。また、
図6中の曲線C1は、
図5Aに示す圧力分布で研磨加工した後の板状ワークの除去量を示しており、曲線C2は、
図5Bに示す圧力分布で研磨加工した後の板状ワークの除去量を示している。また、板状ワークは、外径300mmのシリコンウエーハを例とした。
【0048】
図5に示すように、チャックテーブル43外周側には、周方向に等間隔で3つの調整手段45が配置されている。3つの調整手段45のうち、右側の1つが固定支持部452になっており、中央と左側の2つが可動支持部451になっている。
図5Aに示す状態では、一点鎖線を境界として、可動支持部451側の圧力が低く、固定支持部452側の圧力が高くなっており、圧力分布にムラが生じている。
図5Bに示す状態では、2つの可動支持部451を上動させてチャックテーブル43を固定支持部452を支点にして傾けたことにより、チャックテーブル43(板状ワークW)の全面が均等な圧力分布になっている。
【0049】
図5Aに示す状態で板状ワークWを研磨した場合、
図6の曲線C1に示すように、板状ワークWの中央付近の除去量が最も多く(4.5μm)、外周に向かって徐々に除去量が少なくなっている(2.5μm)。この場合、除去量のバラツキは、およそ2.0μmになっている。一方、
図5Bに示す状態で板状ワークWを研磨した場合、
図6の曲線C2に示すように、板状ワークWの中央では除去量が少なく(2.8μm)、外周近傍でわずかに除去量が多くなっている(3.5μm)。この場合、除去量のバラツキは、およそ0.7μmになっている。このように、
図5Bに示す状態、すなわち、圧力分布が均一な状態で板状ワークWを研磨することにより、除去量のバラツキを抑えることができる。
【0050】
本実施の形態に係る研削研磨装置1によれば、先ず、チャックテーブル43は、ターンテーブル41によって研削手段51に対応する位置(粗研削エリア)に位置付けられ、研削加工が実施される。このとき、第1の記憶部98に記憶されたチャックテーブル43の回転軸の傾きを基に調整手段45が作動されることで、研削砥石85の接触面と保持面44(板状ワークWの表面)とが平行になるように、チャックテーブル43の傾きが調整される。よって、板状ワークWの表面を平坦に研削することができる。粗研削加工の後には、ターンテーブル41によって研削手段61に対応する位置(仕上げ研削エリア)に位置付けられ、仕上げ研削加工が実施される。仕上げ研削加工の後には、チャックテーブル43は、ターンテーブル41によって研削手段61に対応する位置から研磨手段71に対応する位置(研磨エリア)位置付けられ、研磨加工が実施される。このとき、第2の記憶部99に記憶されたチャックテーブル43の回転軸の傾きを基に調整手段45が作動されることで、研磨パッド89で保持面44を均等な圧力で押圧するように、チャックテーブル43の傾きが調整される。よって、板状ワークWの全面を均一に研磨して研削痕を除去することができる。このように、記憶部97に記憶されたチャックテーブル43の回転軸の傾きを基に調整手段45を作動させることで、粗研削エリア、仕上げ研削エリア、研磨エリア間でチャックテーブル43が移動されている間に、チャックテーブル43を自動的に所望の傾きに変更することができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0052】
例えば、上記した実施の形態においては、粗研削加工と仕上げ研削加工との2種類の研削加工が実施される構成としたが、この構成に限定されない。粗研削加工または仕上げ研削加工のどちらか一方のみが実施される構成としてもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態において、研削研磨装置1は圧力シート92で測定した圧力分布を基にチャックテーブル43の傾きを調整する構成としたが、この構成に限定されない。研削研磨装置1は、保持面44を研磨パッド89で均等な圧力で押圧できればよく、圧力シート92で測定した圧力分布を基にチャックテーブル43の傾きを調整しなくてもよい。例えば、3つの調整手段45とチャックテーブル43との間、または3つ調整手段45とターンテーブル41との間に、それぞれ圧力を検知する圧力検知部を配設してもよい。この場合、研磨パッド89でチャックテーブル43を押圧して、3つの圧力検知部が検知する圧力値が一致したときに、保持面44が研磨パッド89で均等な圧力で押圧されたとしてもよい。
【0054】
また、上記した実施の形態において、圧力シート92は板状に形成され、ロール状に巻かれる構成としたが、この構成に限定されない。圧力シート92は、圧力分布を測定できればよく、圧力シート92の形状は特に限定されない。
【0055】
また、上記した実施の形態において、圧力シート92は載置手段93によって、板状ワークWの上に載置される構成としたが、この構成に限定されない。圧力シート92は、手動で板状ワークWの上に載置されてもよい。
【0056】
また、上記した実施の形態において、チャックテーブル43は、ターンテーブル41によって移動される構成としたが、この構成に限定されない。チャックテーブル43は、研削エリアと研磨エリアとの間で移動可能であればよく、チャックテーブル43を移動させる構成は特に限定されない。
【0057】
また、上記した実施の形態において、ターンテーブル41には4つのチャックテーブル43が設けられる構成としたが、この構成に限定されない。チャックテーブル43は、いくつ設けられてもよい。