特許第6336775号(P6336775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336775
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】利得可変型増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03G 3/10 20060101AFI20180528BHJP
   H03F 1/56 20060101ALI20180528BHJP
   H03F 3/193 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   H03G3/10 A
   H03F1/56
   H03F3/193
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-29291(P2014-29291)
(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公開番号】特開2015-154443(P2015-154443A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 岳
【審査官】 石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−109710(JP,A)
【文献】 特開2013−239775(JP,A)
【文献】 特開2013−234990(JP,A)
【文献】 特開平10−173453(JP,A)
【文献】 特開平10−303720(JP,A)
【文献】 特開2012−004777(JP,A)
【文献】 特開2001−102880(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0295472(US,A1)
【文献】 米国特許第5446413(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03G 1/00−3/34
H03F 1/00−3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路の入出力間に並列に接続されて入力信号を出力へバイパスせしめるバイパス回路とを具備してなる利得可変型増幅器であって、
前記増幅回路の入力段とグランドとの間に、インピーダンス補整回路が設けられ、前記インピーダンス補整回路は、電源電圧の供給が遮断された状態にあって導通可能な補整用半導体素子と、前記補整用半導体素子と直列接続された補整抵抗器とを有してなり、前記電源電圧の供給が遮断された状態における入力インピーダンスを前記補整抵抗器により設定可能に構成されてなり、
前記増幅器は、エンハンスメント型FETである第1のFETを有し、当該第1のFETのゲートには高周波信号が、当該第1のFETのゲートにはバイアス回路を介して制御電圧が、当該第1のFETのドレインには前記電源電圧が、それぞれ印加可能に構成され、
前記補整用半導体素子にはディプレッション型FETが用いられ、当該補整用半導体素子のドレインは、前記補整抵抗器及び補整回路用第1のコンデンサを介して前記第1のFETのゲートに接続されると共に、補整回路用電源抵抗器を介して前記第1のFETのドレインに接続され、当該補整用半導体素子のソースは、補整回路用第2のコンデンサを介してグランドに接続されると共にドレインとの間に補整回路用ドレイン・ソース間抵抗器が接続され、当該補整用半導体素子のゲートは、補整回路用ゲート抵抗器を介してグランドに接続され、
前記制御電圧が前記電源電圧の供給が遮断された際に接地電位とされることで、前記補整用半導体素子のドレイン及びソースは、前記第1のFETのドレイン及びゲートと共に接地電位とされて前記補整用半導体素子の導通を可能ならしめることを特徴とする利得可変型増幅器。
【請求項2】
高周波信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路の入出力間に並列に接続されて入力信号を出力へバイパスせしめるバイパス回路とを具備してなる利得可変型増幅器であって、
前記バイパス回路は、バイパス用第1及び第2の半導体素子が前記増幅回路の入力側から順に直列接続されて設けられると共に、前記バイパス用第1の半導体素子には、電源電圧の供給が遮断された状態にあって導通可能なものが用いられてなる一方、
前記バイパス用第1の半導体素子と前記バイパス用第2の半導体素子の相互の接続点とグランドとの間にインピーダンス補整回路が設けられ、
前記インピーダンス補整回路は、電源電圧の供給が遮断された状態にあって導通可能な補整用半導体素子と補整抵抗器とが直列接続されてなり、
電源電圧の供給が遮断された状態において、前記増幅回路の入力段とグランドとの間に、前記バイパス用第1の半導体素子及び前記補整用半導体素子を介して前記補整抵抗器を直列接続可能とし、電源電圧の供給遮断時における前記増幅回路の入力インピーダンスを前記補整抵抗器により設定可能に構成されてなり、
前記増幅器は、エンハンスメント型FETである第1のFETを有し、当該第1のFETのゲートには高周波信号が、当該第1のFETのゲートにはバイアス回路を介して制御電圧が、当該第1のFETのドレインには前記電源電圧が、それぞれ印加可能に構成され、
前記バイパス用第1の半導体素子にはディプレッション型FETが、前記バイパス用第2の半導体素子にはエンハンスメント型FETが、それぞれ用いられ、
前記補整用半導体素子にはディプレッション型FETが用いられ、当該補整用半導体素子のドレインは、前記補整抵抗器及び補整回路用第1のコンデンサを介して前記バイパス用第1の半導体素子と前記バイパス用第2の半導体素子の相互の接続点に接続されると共に、補整回路用電源抵抗器を介して前記第1のFETのドレインに接続され、当該補整用半導体素子のソースは、補整回路用第2のコンデンサを介してグランドに接続されると共にドレインとの間に補整回路用ドレイン・ソース間抵抗器が接続され、当該補整用半導体素子のゲートは、補整回路用ゲート抵抗器を介してグランドに接続され、
前記制御電圧が前記電源電圧の供給が遮断された際に接地電位とされることで、前記補整用半導体素子のドレイン及びソースは、前記第1のFETのドレイン及びゲートと共に接地電位とされて前記補整用半導体素子及び前記バイパス用第1の半導体素子の導通を可能ならしめることを特徴とする利得可変型増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信機器、テレビジョン放送受信機等に用いられる利得可変型増幅器に係り、特に、低コスト化、高帯域化等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機器等の無線通信に用いられる増幅器は、強電界の入力信号を増幅する際、増幅信号に歪みが発生してしまうため、利得可変型増幅器とすることがあり、かかる利得可変型増幅器は、例えば、特許文献1、2等に種々開示されている。
【0003】
図9には、特許文献1等に開示された従来の利得可変型増幅器の第1の回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この従来回路について概説する。
この利得可変型増幅器は、高周波信号を増幅する増幅回路510と、強電界の入力の場合に増幅回路510をバイパスするバイパス回路520と、増幅回路510の入力、出力インピーダンスを利得最大時及び利得最小時において一定とするためのインピーダンス補整回路530,540とを具備して構成されたものとなっている。かかる構成においては、入力信号が強電界の場合に、入力信号をバイパス回路520へバイパスして出力することで、出力信号が歪むのを防止可能としている。
【0004】
また、図11には、特許文献2等に開示された従来の利得可変型増幅器の第2の回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この従来回路について概説する。
この利得可変型増幅器は、高周波信号を増幅する増幅回路620と、強電界の入力の場合に増幅回路620をバイパスするバイパス回路610とを有してなるものである。
バイパス回路610は、スイッチ回路621,622を有すると共に、インピーダンス素子630,650,660を有して構成され、特に、インピーダンス素子630,650,660を設けることで、入力及び出力インピーダンスを利得最大時及び利得最小時において一定に維持できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−194105号公報(第4−8頁、図1図2
【特許文献2】特開2007−258829号公報(第5−7頁、図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、テレビジョン放送受信機に用いられる利得可変型増幅器は、低コスト化の要求が非常に高くなっており、しかも、かかる利得可変型増幅器は、数十メガヘルツから数百メガヘルツ帯までの広い周波数帯域に対応することが要求される。
さらに、昨今のテレビジョン放送受信機に求められる諸性能は益々高くなってきており,EN55020イミュニティ試験に代表されるように、電源電圧が遮断された状態でも利得可変型増幅器の入力インピーダンスを75Ωとする必要がある。
【0007】
しかしながら、従来の利得可変型増幅器では、このような要求を満たすことは困難であった。
例えば、図10には、先に図9を参照しつつ説明した第1の従来回路における入力リタンロス特性が示されており、同図によれば、入力リタンロスが約4dB程度となっており、信号源インピーダンス75Ωに対して入力インピーダンスが離れていることが理解できる。
【0008】
このような第1の従来回路に対して、図11に示された第2の従来回路を応用して、インピーダンス素子の値を最適化して電源電圧が遮断された状態の入力インピーダンスを75Ωに近づける方策も考えられるが、先に述べたように数十メガヘルツから数百メガヘルツ帯までの広い周波数帯域に対応させるためには、インピーダンス素子の規模が大きくなり、大幅なチップコストの増加を伴うという問題を招く。
【0009】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、電源電圧が遮断された状態での入力インピーダンスを75Ωとしつつ、低コスト化の要求に応えることが可能な利得可変型増幅器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る利得可変型増幅器は、
高周波信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路の入出力間に並列に接続されて入力信号を出力へバイパスせしめるバイパス回路とを具備してなる利得可変型増幅器であって、
前記増幅回路の入力段とグランドとの間に、インピーダンス補整回路が設けられ、前記インピーダンス補整回路は、電源電圧の供給が遮断された状態にあって導通可能な補整用半導体素子と、前記補整用半導体素子と直列接続された補整抵抗器とを有してなり、前記電源電圧の供給が遮断された状態における入力インピーダンスを前記補整抵抗器により設定可能に構成されてなり、
前記増幅器は、エンハンスメント型FETである第1のFETを有し、当該第1のFETのゲートには高周波信号が、当該第1のFETのゲートにはバイアス回路を介して制御電圧が、当該第1のFETのドレインには前記電源電圧が、それぞれ印加可能に構成され、
前記補整用半導体素子にはディプレッション型FETが用いられ、当該補整用半導体素子のドレインは、前記補整抵抗器及び補整回路用第1のコンデンサを介して前記第1のFETのゲートに接続されると共に、補整回路用電源抵抗器を介して前記第1のFETのドレインに接続され、当該補整用半導体素子のソースは、補整回路用第2のコンデンサを介してグランドに接続されると共にドレインとの間に補整回路用ドレイン・ソース間抵抗器が接続され、当該補整用半導体素子のゲートは、補整回路用ゲート抵抗器を介してグランドに接続され、
前記制御電圧が前記電源電圧の供給が遮断された際に接地電位とされることで、前記補整用半導体素子のドレイン及びソースは、前記第1のFETのドレイン及びゲートと共に接地電位とされて前記補整用半導体素子の導通を可能ならしめるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源電圧の供給が遮断された際に、増幅回路の入力インピーダンスの設定を可能とするインピーダンス補整回路を設けたので、電源電圧の供給が遮断された際の入力インピーダンスを、所望される値、又は、その近傍に確実に維持することができ、そのため、従来に比して、広帯域化における安定性、信頼性の高い利得可変型増幅器を提供することができるという効果を奏するものである。
また、本発明によれば、従来の整合回路を用いてインピーダンス素子の最適化によって、電源電圧の供給の有無に関わらず入力インピーダンスを可能な限り最適値とする場合に比べて、大幅なチップサイズの拡大を伴うことがなく、コストの低減を図ることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態における利得可変型増幅器の第1の実施例の回路構成を示す回路図である。
図2図1に示された第1の実施例の利得可変型増幅器における電源電圧遮断時の入力リタンロスの周波数変化特性を示す特性線図である。
図3図1に示された第1の実施例の利得可変型増幅器における利得最大時の利得の周波数変化特性を示す特性線図である。
図4】本発明の実施の形態における利得可変型増幅器の第2の実施例の回路構成を示す回路図である。
図5図4に示された第2の実施例の利得可変型増幅器における電源電圧遮断時の入力リタンロスの周波数変化特性を示す特性線図である。
図6図4に示された第2の実施例の利得可変型増幅器における利得最大時の利得の周波数変化特性を示す特性線図である。
図7】本発明の実施の形態における利得可変型増幅器の第3の実施例の回路構成を示す回路図である。
図8】本発明の実施の形態における利得可変型増幅器の第4の実施例の回路構成を示す回路図である。
図9】従来の利得可変型増幅器の第1の回路構成例を示す回路図である。
図10図9に示された従来回路における電源電圧遮断時の入力リタンロスの周波数変化特性を示す特性線図である。
図11】従来の利得可変型増幅器の第2の回路構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図8を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、第1の実施例について、図1を参照しつつ説明する。
この第1の実施例における可変利得型増幅器は、増幅回路110と、バイパス回路120と、インピーダンス補整回路130とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0014】
増幅回路110は、信号入力端子101に入力される高周波信号を増幅、出力する回路であり、バイパス回路120は、入力信号が強電界の場合に、増幅回路110への高周波信号の入力をバイパスさせて信号出力端子102へ出力せしめ、増幅回路110の増幅により信号に歪みが生ずるのを防止するものである。
インピーダンス補整回路130は、電源電圧が遮断された場合における入力インピーダンスを75Ωとするための回路である。
【0015】
増幅回路110は、第1及び第2の電界効果型トランジスタ(以下、電界効果型トランジスタを「FET」と称する)111,112とバイアス回路113とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
本発明の実施の形態において、第1及び第2のFET111,112には、閾値電圧が正となるエンハンスメント型電界効果トランジスタが用いられており、この第1及び第2FET111,112は、直列接続されて設けられている。
【0016】
すなわち、第1のFET111のソースと第2のFET112のドレインは、相互に接続される一方、第1のFET111のドレインは、出力DCカット用キャパシタ31を介して信号出力端子102に、そして、第2のFET112のソースはグランドに、それぞれ接続されている。
また、第1のFET111のドレインは、チョークインダクタ109を介して電源電圧印加端子103に接続されており、外部から電源電圧が印加されるようになっている。
【0017】
そして、第1のFET111のゲートは、信号入力端子101に接続されると共に、バイアス回路113を介して第1の制御端子104に接続されており、外部からの制御電圧が印加可能になっている。
また、第2のFET112のゲートは、バイアス抵抗器114を介して第1の制御端子10に接続されている。
【0018】
バイパス回路120は、バイパス用FET121と、ゲート抵抗器122とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
本発明の実施の形態においては、バイパス用FET121には、閾値電圧が正となるエンハンスメント型電界効果トランジスタが用いられている。
バイパス用FET121は、そのドレインがDCカット用キャパシタ124を介して第1のFET111のドレインに接続され、また、ソースが第1のFET11のゲートに接続される一方、ゲートがゲート抵抗器122を介して第2の制御端子105に接続されており、外部からの制御電圧が印加可能になっている。
また、バイパス用FET121のドレイン・ソース間には、ドレイン・ソース間用抵抗器123が接続されている。
【0019】
インピーダンス補整回路130は、補整回路用FET(補整用半導体素子)131を中心に構成されたものとなっている。
本発明の実施の形態において、補整回路用FET131には、閾値電圧が負となるディプレッション型FETが用いられている。
この補整回路用FET131は、そのドレインが補整抵抗器137及び補整回路用第1のコンデンサ133を介して、第1のFET111のゲート及びバイパス用FET121のソースと共に信号入力端子101に接続されると共に、補整回路用電源抵抗器135を介して第1のFET111のドレインに接続されている。
【0020】
また、補整回路用FET131のソースは、補整回路用第2のコンデンサ134を介してグランドに接続されると共に、ドレインとの間には、補整回路用ドレイン・ソース間抵抗器136が接続されている。
さらに、補整回路用FET131のゲートは、補整回路用ゲート抵抗器132を介してグランドに接続されたものとなっている。
【0021】
次に、かかる構成における動作について説明する。
最初に、電源電圧印加端子103に所要の電源電圧が印加された状態における利得最大時、及び、利得最小時の動作について説明する。
まず、利得最大時においては、第1の制御端子104に正の電圧を印加する一方、第2の制御端子105は接地する。
第1の制御端子104に正の電圧を印加することで、第2のFET112のゲートと、バイアス回路113を介して第1のFET111のゲートには、共に正の電圧が生じ、増幅回路110に動作電流が流れ始める。
【0022】
したがって、増幅回路110は、信号入力端子101に印加された高周波信号を増幅し、信号出力端子102に出力する。
一方、第2の制御端子105が接地されることで、バイパス用FET121のゲートは、そのドレイン及びソースに対して負電圧のバイアスとなり、バイパス用FET121は非導通状態となるため、バイパス回路120は信号入力端子101に印加された高周波信号の通過を遮断することとなる。
【0023】
次に、利得最小時においては、第1の制御端子104を接地する一方、第2の制御端子105に正の電圧を印加する。
第1の制御端子104を接地することで、第2のFET112のゲートは接地電位となり、非導通状態となるため、増幅回路110への動作電流の流入が遮断され、増幅回路110は増幅動作を停止する。
一方、第2の制御端子105に正の電圧を印加することで、バイパス用FET121のゲートは、そのドレイン及びソースに対して正電圧のバイアスとなり、バイパス用FET121が動作状態となるため、バイパス回路120は、信号入力端子101に印加された高周波信号を通過せしめて信号出力端子102に出力することとなる。
【0024】
一方、インピーダンス補整回路130は、補整回路用FET131のドレイン及びソースに、補整回路用電源抵抗器135を介して、利得最大時及び利得最小時のいずれの場合にも電源電圧が供給されている。
そして、補整回路用FET131のゲートは、補整回路用ゲート抵抗器132を介して接地されていることから、利得最大時及び利得最小時のいずれの場合にも、ドレイン及びソースに対して負電圧のバイアスとなり補整回路用FET131は遮断状態(非導通状態)とされる。
【0025】
次に、電源電圧供給端子103に電源電圧が供給されない状態、すなわち、電源電圧が遮断された状態について説明する。
電源電圧が遮断された状態にあっては、第1及び第2の制御端子104,105は、共に接地状態とする。このとき、第1及び第2のFET111,112のドレイン及びソース、並びに、ゲートは、いずれも接地電位となり、増幅回路110は、遮断状態(非動作状態)となる。
一方、バイパス用FET121のドレイン及びソース、並びに、ゲートは、いずれも接地電位となりバイパス回路120も遮断状態(非動作状態)となる。
【0026】
かかる状態にあって、インピーダンス補整回路130の補整回路用FET131のドレイン及びソース、並びに、ゲートは、いずれも接地電位となるが、先に述べた通り、補整回路用FET131はディプレッション型が用いられているため、導通状態となる。
したがって、このとき、インピーダンス補整回路130は、主に補整抵抗器137によるインピーダンスを呈することとなる。
この補整抵抗器137の抵抗値を75Ωとすることで、電源電圧が遮断された状態における信号入力端子101のインピーダンスは略75Ωをなすこととなる。
【0027】
図2には、上述の第1の実施例の利得可変型増幅器において、電源電圧を遮断した場合の入力リタンロスの周波数変化特性が示されており、同図によれば、入力リタンロスは約10dB以上であり、電源電圧が遮断された状態における入力インピーダンスは略75Ωが実現されていることが確認できるものとなっている。
【0028】
ところで、上述した第1の実施例の利得可変型増幅器においては、利得最大時の利得特性に次述するような弊害が生ずる場合がある。
まず、図3には、第1の実施例の利得可変型増幅器において、図1に示されたようにインピーダンス補整回路130を設けた場合とインピーダンス補整回路130を設けない場合の入力信号の周波数変化に対する利得最大時の利得変化が示されおり、同図によれば、インピーダンス補整回路130を設けると、入力信号の周波数が100Mzから900MHzの広い周波数帯域に亘って利得が低下していることが確認できる。
これは、信号入力端子101に接続されたインピーダンス補整回路130が遮断状態となった際に、寄生容量により利得最大時の利得特性に影響があることを示すものである。
【0029】
次述する第2の実施例の利得可変型増幅器は、インピーダンス補整回路130を接続することによる利得の低下を防止するための構成例である。
以下、図4を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の実施例の利得可変型増幅器は、増幅回路110と、バイパス回路220と、インピーダンス補整回路130とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
増幅回路110及びインピーダンス補整回路130は、図1に示された回路構成と同一の構成を有するものであるが、インピーダンス補整回路130が接続される箇所が後述するように1の実施例と異なるものとなっている。
【0030】
バイパス回路220は、その機能としては、第1の実施例と基本的に同一であるが、具体的な回路構成が次述するように異なるものとなっている。
すなわち、バイパス回路220は、バイパス用第1及び第2のFET221,222を中心に構成されている。
本発明の実施の形態において、バイパス用第1のFET221には、閾値電圧が負となるディプレッション型電界効果トランジスタが、バイパス用第2のFET222には、閾値電圧が正となるエンハンスメント型電界効果トランジスタが用いられている。
【0031】
バイパス用第1及び第2のFET221,222は、次述するように信号入力端子101と増幅回路110の第1のFET111のドレインとの間に直列接続されて設けられている。
すなわち、まず、バイパス用第1のFET221のドレインと第2のFET222のソースとが相互に接続される一方、バイパス用第1のFET221のソースが信号入力端子101に接続され、また、バイパス用第2のFET222のドレインがDCカット用キャパシタ124を介して第1のFET111のドレインに接続されている。
【0032】
また、バイパス用第1のFET221のゲートは、第1のゲート抵抗器223を介して、また、バイパス用第2のFET222のゲートは、第2のゲート抵抗器224を介して、共に第2の制御端子105に接続されている。
さらに、バイパス用第1のFET221のドレインとソース間には、第1のドレイン・ソース抵抗器225が、同様に、バイパス用第2のFET222のドレインとソース間には、第2のドレイン・ソース間抵抗器226が、それぞれ接続されている。
そして、バイパス用第1のFET221のドレインとバイパス用第2のFET22のソースの接続点には、インピーダンス補整回路130の第1のコンデンサ133の一端が接続されている。
【0033】
次に、かかる構成における動作について説明する。
最初に、電源電圧印加端子103に所要の電源電圧が印加された状態における利得最大時、及び、利得最小時の動作について説明する。
まず、利得最大時においては、第1の制御端子104に正の電圧を印加する一方、第2の制御端子105は接地する。
第1の制御端子104に正の電圧を印加することで、第2のFET112のゲートと、バイアス回路113を介して第1のFET111のゲートには、共に正の電圧が生じ、増幅回路110に動作電流が流れ始める。
【0034】
このとき、増幅回路110は、信号入力端子101に印加された高周波信号を増幅し、信号出力端子102に出力する。
一方、第2の制御端子105が接地されることで、バイパス用第1及び第2のFET221,222のゲートは、ドレイン及びソースに対して負電圧のバイアスとなり、バイパス用第1及び第2のFET221,222は共に非導通状態となるため、バイパス回路220は信号入力端子101に印加された高周波信号の通過を遮断することとなる。
【0035】
次に、利得最小時においては、第1の制御端子104を接地する一方、第2の制御端子105に正の電圧を印加する。
第1の制御端子104を接地することで、第2のFET112のゲートは接地電位となり、非導通状態となるため、増幅回路110への動作電流の流入が遮断されることとなる。すなわち、増幅回路110は増幅動作を停止する。
【0036】
一方、第2の制御端子105に正の電圧を印加することで、バイパス用第1及び第2のFET221,222のゲートは、ドレイン及びソースに対して正の電圧にバイアスされた状態となり、バイパス用第1及び第2のFET221,222が動作状態となるため、バイパス回路220は、信号入力端子101に印加された高周波信号を通過せしめて信号出力端子102に出力することとなる。
【0037】
ところで、インピーダンス補整回路130は、補整回路用FET131のドレイン及びソースに、補整回路用電源抵抗器135を介して、利得最大時及び利得最小時のいずれの場合にも電源電圧が供給されている。
そして、補整回路用FET131のゲートは、補整回路用ゲート抵抗器132を介して接地されていることから、利得最大時及び利得最小時のいずれの場合にも、ドレイン及びソースに対して負電圧のバイアスとなり補整回路用FET131は遮断状態(非導通状態)とされる。
【0038】
次に、電源電圧供給端子103に電源電圧が供給されない状態、すなわち、電源電圧が遮断された状態について説明する。
電源電圧が遮断された状態にあっては、第1及び第2の制御端子104,105は、共に接地状態とする。このとき、第1及び第2のFET111,112のドレイン及びソース、並びに、ゲートは、いずれも接地電位となり、増幅回路110は、遮断状態(非動作状態)となる。
【0039】
一方、バイパス用第1及び第2のFET221,222のドレイン及びソース、並びに、ゲートは、いずれも接地電位となるが、ディプレッション型であるバイパス用第1のFET221は導通状態となる一方、エンハンスメント型であるバイパス用第2のFET222は遮断状態となるため、バイパス回路220は遮断状態となる。
【0040】
また、インピーダンス補整回路130の補整回路用FET131のドレイン及びソース、並びに、ゲートは、いずれも接地電位となるが、先に述べた通り、補整回路用FET131はディプレッション型が用いられているため導通状態となる。
したがって、このとき、インピーダンス補整回路130は、主に補整抵抗器137によるインピーダンスを呈することとなる。
【0041】
かかる状態にあって、先に述べた通り、バイパス用第1のFET221は導通状態であるため、補整抵抗器137は、バイパス用第1のFET221及び補整回路用FET131を介して信号入力端子101とグランドの間に接続された状態となり、信号入力端子101のインピーダンスは、主に補整抵抗器137により定まるものとなる。
【0042】
図5には、上述の第2の実施例の利得可変型増幅器において、電源電圧を遮断した場合の入力リタンロスの周波数変化特性が示されており、同図によれば、入力リタンロスは約10dB以上であり、電源電圧が遮断された状態における入力インピーダンスは略75Ωが実現されていることが確認できるものとなっている。
【0043】
図6には、第2の実施例の利得可変型増幅器において、図1に示されたようにインピーダンス補整回路130を設けた場合とインピーダンス補整回路130を設けない場合の入力信号の周波数変化に対する利得最大時の利得変化が示されおり、同図によれば、先の第1の実施例の場合(図3参照)と異なり、インピーダンス補整回路130を設けても殆ど利得の低下が無いことが確認できる。
【0044】
ところで、インピーダンス補整回路130は、先に述べた通り、利得最大時に遮断状態となるが寄生容量が生じる。
上述の第2の実施例においては、先の第1の実施例と異なり、信号入力端子101とインピーダンス補整回路130を直接接続せずに、バイパス回路220を構成するバイパス用第1のFET221を介して接続している。そのため、利得最大時には、バイパス用第1のFET221が上述したように遮断状態であるため、インピーダンス補整回路130における寄生容量が利得特性へ及ぼす影響が軽減されるようになっている。
このように、第2の実施例は、第1の実施例における利得最大時の利得特性の低下という欠点の解消が図られたものとなっている。
【0045】
上述した第1及び第2の実施例において、数十メガヘルツのような低い周波数において十分な性能を得るためには、集積化するコンデンサ素子133,134は百ピコファラッド程度の大きな容量が必要となり、大幅なチップサイズの拡大を伴い、集積回路のコストが増加するというデメリットを招く。
以下に、説明する第3及び第4の実施例は、上述のデメリットを解消すべく、集積化するコンデンサ素子を減らし、集積回路の低コスト化を図ったものである。
【0046】
以下、第3の実施例について、図7を参照しつつ説明する。
なお、図1又は図4に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第3の実施例の利得可変型増幅器は、増幅回路110と、バイパス回路120と、インピーダンス補整回路330と、制御回路340とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0047】
増幅回路110とバイパス回路120は、次述するように制御回路340を介して制御信号が入力されるよう構成された点を除けば、図1に示された回路構成と基本的に同一の構成を有してなるものである。
インピーダンス補整回路330は、補整回路用FET131を中心に構成された点は、図1に示されたインピーダンス補整回路130と同様であるが、具体的な回路構成が次述するように若干異なるものとなっている。なお、この実施例において、補整回路用FET131には、閾値電圧が負となるディプレッション型FETが用いられている。
【0048】
この補整回路用FET131は、そのドレインが補整抵抗器137を介して、第1のFET111のゲート及びバイパス用FET121のソースと共に信号入力端子101に接続されている。
また、補整回路用FET131のソースは、補整回路用第2のコンデンサ134を介してグランドに接続されると共に、ドレインとの間には、補整回路用ドレイン・ソース間抵抗器136が接続されている。
さらに、補整回路用FET131のゲートは、補整回路用ゲート抵抗器132を介してグランドに接続されたものとなっている。
【0049】
制御回路340は、第1及び第2の反転素子341,342を有して、制御端子304に印加された制御電圧に対して、論理反転した電圧と、非反転の電圧とを出力可能に構成された回路である。
第1の反転素子341の入力段には制御端子304が接続されて、外部から制御電圧が入力されるようになっている一方、第1の反転素子341の出力段は、第2の反転素子342の入力段に接続されている。
【0050】
そして、第1の反転素子341の出力段は、バイパス回路120のゲート抵抗器122を介してバイパス用FET121のゲートに接続され、第2の反転素子432の出力段は、増幅回路110のバイアス回路113を介して第1のFET111のゲートに接続されると共に、バイアス抵抗器114を介して第2のFET112のゲートに接続されている。
なお、制御回路340の電源ライン(図示せず)は、第1のFET111のドレインに接続されて、増幅回路110と共に電源電圧印加端子103を介しての外部からの電源源電圧の供給を受けるようにになっている。
【0051】
次に、かかる構成における動作について説明する。
最初に、電源電圧印加端子103に所要の電源電圧が印加された状態における利得最大時、及び、利得最小時の動作について説明する。
まず、利得最大時においては、制御端子304に正の電圧を印加する。
その結果、制御回路340の非反転論理出力である第2の反転素子342の出力段からの正の電圧が、第1のFET111のゲートに印加され、増幅回路110に動作電流が流れ始める。
【0052】
したがって、増幅回路110は、信号入力端子101に印加された高周波信号を増幅し、信号出力端子102に出力する。
一方、制御回路340の反転論理出力である第1の反転素子342からの接地電位がバイパス用FET121のゲートに印加され、バイパス用FET121のゲートは、ドレイン及びソースに対して負電圧のバイアスとなる。そのため、バイパス用FET121は非導通状態となり、バイパス回路120は信号入力端子101に印加された高周波信号の通過を遮断することとなる。
【0053】
次に、利得最小時においては、制御端子304を接地する。
その結果、制御回路340からは、非反転論理出力である第2の反転素子432の接地電位が第2のFET112のゲートに印加されるため、第2のFET112は非導通状態となり、増幅回路110への動作電流の流入が遮断されることとなる。すなわち、増幅回路110は増幅動作を停止する。
【0054】
一方、制御回路340の反転論理出力である第1の反転素子31からの正の電圧がバイパス用FET121のゲートに印加される。そのため、バイパス用FET121のゲートは、そのドレイン及びソースに対して正電圧のバイアスとなり、バイパス用FET121が動作状態となる。そのため、バイパス回路120は、信号入力端子101に印加された高周波信号を通過せしめて信号出力端子102に出力することとなる。
【0055】
また、インピーダンス補整回路330は、補整回路用FET131のドレイン及びソースが補整抵抗器137を介して、第1のFET111のゲート及びバイパス用FET12のソースと接続されており、利得最大時及び利得最小時のいずれの場合にも正の電圧が印加されている。
補整回路用FET131のゲートは、補整回路用ゲート抵抗器132を介して接地されていることから利得最大時及び利得最小時のいずれの場合にもドレイン及びソースに対して負電圧のバイアスとなり遮断状態とされるようになっている。
【0056】
次に、電源電圧供給端子103に電源電圧が供給されない状態、すなわち、電源電圧が遮断された状態について説明する。
電源電圧が遮断された状態にあっては、制御回路340の出力は、反転論理出力、非反転論理出力のいずれも接地電位となる。このとき、第1のFET111のドレイン及びソース、並びに、ゲートは、いずれも接地電位となり、増幅回路110は、遮断状態(非動作状態)となる。
【0057】
一方、バイパス用FET121のドレイン及びソース、並びに、ゲートは、いずれも接地電位となりバイパス回路120も遮断状態(非動作状態)となる。
かかる状態にあって、インピーダンス補整回路330の補整回路用FET131のドレイン及びソース、並びに、ゲートは、いずれも接地電位となるが、先に述べた通り、補整回用FET131はディプレッション型が用いられているため導通状態となる。
したがって、このとき、インピーダンス補整回路330は、主に補整抵抗器137によるインピーダンスを呈することとなる。
【0058】
この補整抵抗器137の抵抗値を75Ωとすることで、電源電圧が遮断された状態における信号入力端子101のインピーダンスは略75Ωをなすこととなる。
この第3の実施例においては、第1の実施例における第1のコンデンサ133を用いない構成としているため、前述の百ピコファラッド程度の大きな容量を削減することができるものとなっている。
【0059】
次に、第4の実施例の利得可変型増幅器について、図8を参照しつつ説明する。
なお、図1図4図7のいずれかに示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第4の実施例の利得可変型増幅器は、増幅回路110と、バイパス回路220と、インピーダンス補整回路330と、制御回路340とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0060】
この第4の実施例の利得可変型増幅器は、図4に示された第2の実施例の利得可変型増幅器を基本として、図4におけるインピーダンス補整回路130を図7に示された構成を有するインピーダンス補整回路330とすると共に、制御回路340を新たに設けた構成を有するものである。
【0061】
以下、具体的に説明すれば、まず、インピーダンス補整回路330は、補整回路用FET131のドレインが補整抵抗器137を介してバイパス回路220のバイパス用第1のFET221のドレインとバイパス用第2のFET222のソースの相互の接続点に接続されている。
制御回路340を構成する第1の反転素子341の出力段は、第1のゲート抵抗器223を介してバイパス用第1のFET221のゲートに接続されると共に、第2のゲート抵抗器224を介してバイパス用第2のFET222のゲートに接続されている。
また、制御回路340を構成する第2の反転素子342の出力段は、図7で説明したと同様に、増幅回路110の入力段に接続されている。
【0062】
次に、かかる構成における動作について説明する。
最初に、電源電圧印加端子103に所要の電源電圧が印加された状態における利得最大時、及び、利得最小時の動作について説明する。
まず、利得最大時においては、制御端子304に正の電圧を印加する。
その結果、制御回路340の非反転論理出力である第2の反転素子342の出力段からの正の電圧が、第1及び第2のFET111,112のゲートに印加され、増幅回路110に動作電流が流れ始める。
したがって、増幅回路110は、信号入力端子101に印加された高周波信号を増幅し、信号出力端子102に出力する。
【0063】
一方、制御回路340の反転論理出力である第1の反転素子342からの接地電位が、バイパス用第1及び第2のFET221,222のゲートに印加され、バイパス用第1及び第2のFET221,222のゲートは、ドレイン及びソースに対して負電圧のバイアスとなる。そのため、バイパス用第1及び第2のFET221,222は非導通状態となり、バイパス回路220は信号入力端子101に印加された高周波信号の通過を遮断することとなる。
【0064】
次に、利得最小時においては、制御端子304を接地する。
その結果、制御回路340からは、非反転論理出力である第2の反転素子432の接地電位が第2のFET112のゲートに印加されるため、第2のFET112のは非導通状態となり、増幅回路110への動作電流の流入が遮断されることとなる。すなわち、増幅回路110は増幅動作を停止する。
【0065】
一方、制御回路340の反転論理出力である第1の反転素子31からの正の電圧がバイパス用第1及び第2のFET221,222のゲートに印加される。そのため、バイパス用第1及び第2のFET221,222のゲートは、そのドレイン及びソースに対して正電圧のバイアスとなる。その結果、バイパス用第1及び第2のFET221,222が動作状態となるため、バイパス回路220は、信号入力端子101に印加された高周波信号を通過せしめて信号出力端子102に出力することとなる。
【0066】
また、インピーダンス補整回路330は、補整回路用FET131のドレイン及びソースが、補整抵抗器137を介して、バイパス用第1のFET221のドレインとバイパス用第2のFET222のソースとの相互の接続点に接続されており、利得最大時及び利得最小時のいずれの場合にも電源電圧が供給されている。
そして、補整回路用FET131のゲートは、補整回路用ゲート抵抗器132を介して接地されていることから、利得最大時及び利得最小時のいずれの場合にも、ドレイン及びソースに対して負電圧のバイアスとなり補整回路用FET131は遮断状態(非導通状態)とされる。
【0067】
次に、電源電圧供給端子103に電源電圧が供給されない状態、すなわち、電源電圧が遮断された状態について説明する。
電源電圧が遮断された状態にあっては、制御回路340の出力は、反転論理出力、非反転論理出力のいずれも接地電位となる。このとき、第1及び第2のFET111,112のドレイン及びソース、並びに、ゲートは、いずれも接地電位となり、増幅回路110は、遮断状態(非動作状態)となる。
【0068】
一方、バイパス用第1及び第2のFET221,222のドレイン及びソース、並びに、ゲートは、いずれも接地電位となるが、ディプレッション型であるバイパス用第1のFET221は導通状態となる。また、エンハンスメント型であるバイパス用第2のFET222は遮断状態となるため、バイパス回路220は遮断状態となる。
【0069】
また、インピーダンス補整回路330は、補整回路用FET131のドレイン及びソース、並びに、ゲートのいずれも接地電位となるが、補整回路用FET131はディプレッション型であるため導通状態となる。
したがって、このとき、インピーダンス補整回路330は、主に補整抵抗器137によるインピーダンスを呈することとなる。
先に述べたように、バイパス用第1のFET221は導通状態であるため、信号入力端子101のインピーダンスは、主に補整抵抗器137により定まることとなる。
【0070】
この第4の実施例においては、第2の実施例(図4参照)における第1のコンデンサ133を用いない構成としているため、前述の百ピコファラッド程度の大きな容量を削減することができるものとなっている。
このように、上述した第3及び第4の実施例においては、第1及び第2の実施例と比べて集積化する百ピコファラッド程度の大きな容量のコンデンサ素子が削減されており、このようなコンデンサ素子を用いることによる集積回路のコスト増加の弊害が解消できるものとなっている。
【0071】
以上説明したとおり、本発明の実施の形態における利得可変型増幅器は、大幅なチップザイズの拡大及び利得の低下を伴うことなく、電源電圧が遮断された状態での入力インピーダンスを75Ωとする要求に応えることが可能なものとなっている。
なお、本発明の係る利得可変型増幅器は、上述した各実施例の構成に限定されるものではなく、例えば、増幅回路、バイパス回路を多段に接続した構成であっても良い。また、エンハンスメント型の電界効果トランジスタは、必ずしも電界効果トランジスタである必要はなく、同等の性能特性を有するバイポーラトランジスタや機械的なスイッチ素子を用いるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
チップサイズの拡大を伴うことなく電源電圧が遮断された状態での入力インピーダンスが75Ωであることが所望される可変利得型増幅器に適用できる。
【符号の説明】
【0073】
110…増幅回路
120…バイパス回路
130…インピーダンス補整回路
137…補整抵抗器
340…制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11