(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶などを製造する際には、シリカガラスルツボを用いることが知られている。シリカガラスルツボは、例えば、当該シリカガラスルツボの内面から外面に向かって、気泡の含有量の小さな透明層と気泡の含有量の大きな気泡含有層とを備えるなど、複数の層を備えて構成されている。シリコン単結晶の製造は、例えば、このような構成のシリカガラスルツボの内部で融解した多結晶シリコンの融液に種結晶を接触させ、ネッキング処理の後シリカガラスルツボを回転させながら種結晶を引き上げることで行われることになる。
【0003】
上記のようなシリカガラスルツボの一例として、例えば、シリカガラスルツボのうちの鉛直方向に形成されている部分の上端と下端の中間部分において、透明層の厚さに対する気泡含有層の厚さの比が0.7〜1.4であるシリカガラスルツボが知られている(特許文献1)。特許文献1によると、このような構成により、加熱による体積膨張を最小限に抑えることが可能となり、シリカガラスルツボの変形、熔損を低減することが可能となる。また、特許文献1には、シリカガラスルツボ中の気泡を非破壊的に検査し、気泡含有率を測定する手法が記載されている。
【0004】
また、同じくシリカガラスルツボの一例として、例えば、シリカガラスルツボの内面から外面に向かって、合成シリカガラス層、天然シリカガラス層、不純物含有シリカガラス層及び天然シリカガラス層を有するシリカガラスルツボが知られている(特許文献2)。特許文献2によると、このような構成により、シリカガラスルツボの変形、熔損を低減することが可能となる。
【0005】
また、上記のように、シリコン単結晶の製造は、シリカガラスルツボを回転させながら種結晶を引き上げることで行われる。そのため、シリカガラスルツボの内表面及び外表面が真円に近く形成されているほど、融液の振動を軽減することが可能となり、シリコン単結晶の製造の際に好ましいものと考えられる。このようなシリカガラスルツボの一例として、例えば、ルツボ内表面の真円度とルツボ外表面の真円度とが、真円度と同一測定高さにおける最大肉厚Mに対して、何れも0.4以下であるシリカガラスルツボが知られている(特許文献3)。特許文献3によると、このような値を満たすことで、高い結晶化率を実現することが出来る。
【0006】
また、上記のようなシリカガラスルツボは、例えば、回転モールド法を用いて製造される。つまり、シリカガラスルツボは、回転しているモールドの中でシリカ粉層をアーク溶接することにより製造されることになる。ここで、このような方法により製造されるシリカガラスルツボは、様々な要因により、ルツボの形状や特性に差異が出ることになる。そのため、製造されたルツボが意図したものであるか否かを評価することが重要になる。このような製造されたルツボを評価するための方法として、例えば、シリカガラスルツボの内表面の三次元座標を求め、また、複数の測定点においてシリカガラスルツボの内表面のラマンスペクトルを測定することによって、内表面のラマンスペクトルの三次元分布を決定する方法が知られている(特許文献4)。このような方法により、シリカガラスルツボの内表面のラマンスペクトルを高精度に決定することが可能となり、製造されたシリカガラスルツボを評価することが可能となる。
【0007】
また、シリカガラスルツボを製造する際に用いる天然のシリカガラス原料粉末中には、Na、K、Li、Al、Ti等の不純物が含まれているため、製造されたシリカガラスルツボ内には不純物が残留している場合がある。このようなシリカガラスルツボを用いてシリコン単結晶を製造すると、不純物がシリコン融液中に溶けだして問題となる場合がある。そのため、製造されたシリカガラスルツボ中に含まれる不純物を測定するための方法として、例えば、365nmよりも短い波長の紫外光をシリカガラスルツボの壁面に照射し、発生する400nmから600nmの蛍光斑点の数を検査する方法が知られている(特許文献5)。特許文献5によると、このような方法を用いることで、シリカガラスルツボ中に局在する不純物を容易に検出することを可能とし、シリコン単結晶を引き上げる際に生じる結晶欠損などの発生を少なくすることが出来る。
【0008】
また、ルツボ内表面の極表層に含まれる不純物成分を検出するための方法として、レーザー光を照射し、照射によって生じる蛍光の波長と強度から不純物成分を特定し、かつ不純物成分の含有量を算出する検出方法が知られている(特許文献6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、様々な構成のシリカガラスルツボが知られている。しかしながら、製造されたシリカガラスルツボにおいて、特許文献1に記載されているような透明層と気泡含有層の厚さの比が実現されているか否かを確認するために、光学的検出手段を用いて気泡を検出し、当該検出した気泡の含有率を求めるやり方は、非常に手間がかかるものであった。そのため、製造されたシリカガラスルツボの厚み方向の層の構造は、一般的には、製造されたシリカガラスルツボの一部を抜き出し、破壊検査を行うことによって確認されていた。また、特許文献2では、シリカガラスルツボの構造を、当該シリカガラスルツボを製造する際に用いる材料で規定しており、特許文献3では、シリカガラスルツボの真円度を問題としているが、実際に製造されたシリカガラスルツボの厚み方向の層の構造が各文献で意図した構造であるか否かは、一般的には、破壊試験を行わないと分からなかった。
【0011】
このように、シリカガラスルツボの厚み方向の層の構造は、非常に手間のかかる方法を用いるか、破壊試験を行った結果として確認されていた。また、シリカガラスルツボを評価するための方法として、例えば、特許文献4のようなものがあるが、特許文献4に記載の技術では、シリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を考慮することは難しかった。また、特許文献5、6に記載されている検査方法は、シリカガラスルツボの内表面近くの不純物を測定するものである。その為、特許文献4と同様に、製造されたシリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を測定することは難しかった。
【0012】
以上のように、非破壊でシリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を測定することが難しい、という問題が生じていた。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上述した課題である、非破壊でシリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を測定することが難しい、という問題を解決することが出来るルツボ測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一形態であるルツボ測定装置は、
測定の対象となるシリカガラスルツボにレーザー光を出射する光出射部と、
前記光出射部によりシリカガラスルツボ内に入射されたレーザー光の散乱の状態を示す散乱状況を測定する散乱状況測定部と、
を有し、
前記散乱状況測定部は、シリカガラスルツボの厚み方向の各位置の散乱状況を測定するよう構成されている
という構成を採る。
【0015】
上記発明によると、まず、シリカガラスルツボにレーザー光を出射する。具体的には、例えば、半導体レーザーなどを利用したレーザーポインタから出射されるレーザー光を、シリカガラスルツボの厚み方向に出射する。すると、レーザーポインタから出射されたレーザー光は、シリカガラスルツボに入射する。そして、シリカガラスルツボに入射したレーザー光は、シリカガラスルツボの厚み方向の層の構造に応じて、透過する、一部散乱する、などの様々な反応を起こすことになる。
【0016】
続いて、シリカガラスルツボ内に入射されたレーザー光の散乱状況(レーザー光が透過したり、一部散乱したりする様)を、例えば、散乱状況測定部として用いるカメラ部により撮影する。つまり、カメラ部を用いて、レーザー光が入射されたシリカガラスルツボを撮影することにより、シリカガラスルツボの厚み方向の各位置の散乱状況を測定する。
【0017】
ここで、上記のように、シリカガラスルツボに入射されたレーザー光は、当該シリカガラスルツボの構造に応じて、透過する、一部散乱する、など様々な反応(散乱状況)を起こしている。そのため、シリカガラスルツボの端面を撮影してシリカガラスルツボの厚み方向の各位置の散乱状況を測定することにより、シリカガラスルツボの厚み方向の層の構造に応じた画像データを取得することが出来ることになる。その結果、当該画像データを解析することで、シリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を測定することが可能となる。
【0018】
シリコン単結晶の成長部分すなわちシリコン融液がシリコン単結晶になっていく境界部分の温度はシリコンの融点であり、この境界部分を適切な位置にするためには非常に繊細な温度コントロールが必要である。一般に、シリカガラスルツボは、当該シリカガラスルツボの内面から外面に向かって、気泡含有量の少ない透明層と、気泡含有量の覆い気泡含有層と、を有している。ここで、シリカガラスルツボが透明層のみから構成されている場合、シリカガラスルツボを熱した際などにおいて、非常に大きな温度の変化を示すことになる。そのため、シリコン単結晶を製造する際の熱の調整を行うことが難しくなるという問題があった。そこで、シリカガラスルツボにおいては、透明層の外側に気泡含有層を設けることが行われている。一方で、透明層の厚みが薄く、シリコン単結晶を製造する際に透明層が溶解し、シリコン融液と気泡含有層とが接触することになると、気泡に由来する凹凸部がシリコン融液との接触面に現れることになる。すると、いわゆるブラウンリングが集中的に生じる原因となるなど、製造するシリコン単結晶の不具合の原因となる場合がある、という問題があった。
【0019】
以上の点などから、シリカガラスルツボの厚み方向の層である透明層は、厚すぎず薄すぎず適度な厚さを有していることが望ましいと考えられている。そこで、本発明のルツボ測定装置を活用することが考えられる。つまり、本発明のルツボ測定装置を用いてシリカガラスルツボの厚み方向の層の構造(透明層)を測定することで、望ましい透明層の厚みを有するシリカガラスルツボを判別することが出来る。その結果、シリコン単結晶を製造する際に生じる不具合の可能性を減らすことが可能となる。
【0020】
また、気泡含有層に複数の構造が含まれている場合、層内の熱膨張率の違いなどから、シリカガラスルツボの強さに問題が生じる場合があるものと考えられる。そこで、本発明のルツボ測定装置を用いて、シリカガラスルツボの厚み方向の層の構造(気泡含有層の構造)を測定することで、望ましい構造を有するシリカガラスルツボを判別することが出来る。その結果、シリコン単結晶を製造する際に生じる不具合の可能性を減らすことが可能となる。
【0021】
このように、上記発明は、シリカガラスルツボにレーザー光を出射する光出射部と、シリカガラスルツボに入射されたレーザー光の、当該シリカガラスルツボの厚み方向の各位置の散乱状況を測定する散乱状況測定部と、を有している。上記構成により、シリカガラスルツボの厚み方向の層の構造に応じて生じる、当該シリカガラスルツボの厚み方向の各位置の散乱状況を測定することが出来る。その結果、シリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を測定することが可能となる。
【0022】
なお、例えば、シリカガラスルツボの端面方向から当該シリカガラスルツボの厚み方向の各位置にレーザー光を出射し、当該出射したレーザー光に応じて生じるラマン散乱を測定することによっても、シリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を把握することが出来る。つまり、本発明は、入射したレーザー光に応じて生じるラマン散乱を測定する構成を有することによっても、実現可能である。
【0023】
また、上記ルツボ測定装置は、
前記光出射部は、シリカガラスルツボの内側から当該シリカガラスルツボの厚み方向に向かって前記レーザー光を出射するように構成され、
前記散乱状況測定部は、測定の対象となるシリカガラスルツボのうちの前記光出射部によりレーザー光を入射される部分の端面方向から前記レーザー光の散乱状況を測定するように構成されている
という構成を採る。
【0024】
この構成によると、シリカガラスルツボの内側から当該シリカガラスルツボの厚み方向に向かって、レーザー光を出射する。つまり、例えば、レーザーポインタがシリカガラスルツボの内側に設置されており、当該レーザーポインタからシリカガラスルツボの厚み方向に向かってレーザー光が出射されることになる。
【0025】
また、シリカガラスルツボ内に入射されたレーザー光の散乱状況を、例えば、当該シリカガラスルツボの端面方向からカメラ部を用いて撮影する。上記のように、シリカガラスルツボには、当該シリカガラスルツボの内側から外側に向かって、レーザー光が入射され、また、様々な散乱状況を生じている。そのため、シリカガラスルツボ内に入射されたレーザー光の散乱状況を、当該シリカガラスルツボの端面方向から撮影することで、シリカガラスルツボの厚み方向の層の構造に応じた画像データを取得することが出来ることになる。その結果、当該画像データを解析することで、容易にシリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を測定することが可能となる。
【0026】
また、上記ルツボ測定装置は、
前記光出射部が出射するレーザー光の波長に応じた所定の波長の光を、シリカガラスルツボに照射する照明部を有し、
前記散乱状況測定部は、前記照明部による光の照射下で前記レーザー光の散乱状況を測定するよう構成されている
という構成を採る。
【0027】
この構成によると、散乱状況測定部(例えば、カメラ部)による散乱状況の測定が、照明部による照明下で行われることになる。ここで、照明部は、光出射部(例えばレーザーポインタ)が出射するレーザー光の波長に応じた所定の波長の光を照射するように構成されている。具体的には、例えば、照明部は、光出射部が赤色のレーザー光を出射する際には、黄色の光を照射する。このように、レーザー光の波長に応じて調整される照明光の照射下でレーザー光の散乱状況を測定することで、当該レーザー光の散乱状況を明確に測定することが出来る。その結果、より高い精度でシリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を測定することが出来る。
【0028】
また、上記ルツボ測定装置は、
前記光出射部は、前記レーザー光を広角に出射するよう構成されている
という構成を採る。
【0029】
この構成によると、光出射部がレーザー光を広角に出射する。具体的には、例えば、出射したレーザー光を、コリメートレンズを透過させた後に円柱状のロッドレンズに透過させることで、水平方向のレーザー光として広角に出射する。その後、上記出射したレーザー光は、シリカガラスルツボに入射した後、シリカガラスルツボの構造に応じて様々な散乱状況を示すことになる。そこで、レーザー光の散乱状況をカメラ部などの散乱状況測定部で測定する。これにより、上記のような水平方向のレーザー光が入射する広範囲のシリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を一度に測定することが出来るようになる。その結果、より容易にシリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を測定することが可能となる。
【0030】
また、上記ルツボ測定装置は、
前記光出射部は、シリカガラスルツボの端面方向から当該シリカガラスルツボの厚み方向の各位置に単色のレーザー光を出射するように構成され、
前記散乱状況測定部は、前記光出射部が出射した光に応じて生じるラマン散乱を前記レーザー光の散乱状況として前記各位置で測定する
という構成を採る。
【0031】
この構成によると、シリカガラスルツボの端面方向から当該シリカガラスルツボの厚み方向の各位置に単色のレーザー光を出射する。そして、当該出射したレーザー光に応じて生じるラマン散乱を測定する。具体的には、例えば、シリカガラスルツボからの散乱光を、レイリー光除去フィルタを通してレイリー光を除去した上で、回折格子などの分光器を通して分光する。そして、その結果をCCD(Charege Coupled Device)検出器などを用いて検出する。その後、情報処理装置などを用いてラマンシフトに変換して表示することになる。
【0032】
上述したように、上記構成によると、シリカガラスルツボの端面の厚み方向の各位置のラマン測定の結果を測定する。ここで、一般に、シリカガラスに対してラマン測定をした場合、測定の結果として、平面4員環に帰属されるピークと、平面3員環に帰属されるピークと、など複数のピークが測定されることが知られている。そのため、上記シリカガラスルツボの端面の厚み方向の各位置のラマン測定の結果も、同様に、平面4員環に帰属されるピークと、平面3員環に帰属されるピークと、など複数のピークを有しているものとなると考えられる。また、実際に測定を行うと、後述するように、シリカガラスルツボの厚み方向の各位置で、各ピークのラマンシフトの値にずれが生じている場合があることが分かる。つまり、シリカガラスルツボの厚み方向には、複数の構造が含まれている場合があり、上記のようにシリカガラスルツボの厚み方向の各位置でラマン測定を行うことで、上記複数の構造を測定することが出来ることが分かる。
【0033】
このように、上記構成によると、シリカガラスルツボの厚み方向の各位置でラマン測定を行うよう構成されている。これにより、ルツボ測定装置は、シリカガラスルツボの厚み方向の各位置の構造に応じた、ラマンスペクトルを測定することが出来る。その結果、シリカガラスルツボの厚み方向の構造を測定することが可能となり、シリコン単結晶を製造する際に生じる不具合の可能性を減らすことが可能となる。
【0034】
また、上記ルツボ測定装置は、
前記光出射部は、予め定められた所定の間隔でシリカガラスルツボの全周に亘ってレーザー光を出射するよう構成され、
前記散乱状況測定部は、前記光出射部が出射したレーザー光に応じた前記レーザー光の散乱状況をそれぞれ測定するよう構成されている
という構成を採る。
【0035】
この構成によると、光出射部が、予め定められた所定の間隔でシリカガラスルツボの全周に亘ってレーザー光を出射するよう構成されている。つまり、例えば、シリカガラスルツボの内側に設置されたレーザーポインタから、シリカガラスルツボの厚み方向に対してレーザー光を出射する。そして、レーザー光を出射した状態でレーザーポインタを回転させることで、シリカガラスルツボの全周に亘って、レーザー光を入射させる。
【0036】
また、散乱状況測定部であるカメラ部を、レーザー光の散乱状況を撮影しつつ、レーザーポインタの回転に合わせて移動させる。つまり、レーザーポインタの回転によりシリカガラスルツボの全周に亘って生じるレーザー光の散乱状況を、カメラ部を移動させることにより撮影する。これにより、シリカガラスルツボの全周の厚み方向の構造を容易に測定することが可能となる。その結果、シリコン単結晶を製造する際に生じる不具合の可能性を容易により減らすことが可能となる。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、以上のように構成されることにより、シリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を測定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[実施形態1]
本発明の第1の実施形態におけるルツボ測定装置を、
図1乃至
図10を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるルツボ測定装置の構成の一例を示す図である。
図2は、シリカガラスルツボにレーザー光を入射した際の様子を、シリカガラスルツボの端面方向から測定した際の一例を示す図である。
図3は、シリカガラスルツボにレーザー光を入射した際の様子を、シリカガラスルツボの端面方向から測定した際の一例を示す図である。
図4は、シリカガラスルツボの構造とレーザー光の散乱状況との関係の一例を示す図である。
図5は、シリカガラスルツボの構造とレーザー光の散乱状況との関係の一例を示す図である。
図6は、実際の測定画像の一例を示す図である。
図7は、
図5で示すシリカガラスルツボの内部残留応力を示す図である。
図8は、第1の実施形態にかかるルツボ測定装置の動作の一例を示す図である。
図9は、クロスラインレーザーを用いて、シリカガラスルツボ1の厚み方向の散乱状況を測定した図の一例である。
図10は、クロスラインレーザーを用いて、シリカガラスルツボ1の厚み方向の散乱状況を測定した図の一例である。
【0040】
本実施形態では、透明層と気泡含有層とを有するシリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置のレーザー光の散乱状況を測定するルツボ測定装置について説明する。本実施形態におけるルツボ測定装置は、後述するように、シリカガラスルツボ1の内側から当該シリカガラスルツボ1の厚み方向にレーザー光を出射するよう構成されている。そして、ルツボ評価装置は、シリカガラスルツボ1を端面方向から撮影することで、シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置の散乱状況を測定する。これにより、後述するように、シリカガラスルツボ1の厚み方向の構造を把握することが出来るようになる。
【0041】
図1を参照すると、本実施形態におけるルツボ評価装置は、測定対象のシリカガラスルツボ1に対してレーザー光を出射するレーザーポインタ2(光出射部)と、レーザーポインタ2が出射したレーザー光のシリカガラスルツボ2内の散乱状況を、シリカガラスルツボ2の端面方向から撮影することで測定するカメラ部3(散乱状況測定部)と、を有している。
【0042】
レーザーポインタ2は、例えば、半導体レーザーなどにより構成されており、シリカガラスルツボ1の厚み方向にレーザー光を出射するよう構成されている。本実施形態においては、630nmの赤色のレーザー光を出射するレーザーポインタ2を用いている。
【0043】
図1で示すように、本実施形態におけるレーザーポインタ2は、測定の対象となるシリカガラスルツボ1の内部に設置されている。そして、レーザーポインタ2は、シリカガラスルツボ1の内部から、当該シリカガラスルツボ1の厚み方向に向かってレーザー光を出射する。これにより、シリカガラスルツボ1には、当該シリカガラスルツボ1の内側から外側に向かって、レーザー光が入射されることになる。
【0044】
なお、レーザーポインタ2は、シリカガラスルツボ1の厚み方向に向かってレーザー光を出射するのであれば、シリカガラスルツボ1の壁に対して斜め方向に向かってレーザー光を出射しても構わない。また、レーザーポインタ2は、シリカガラスルツボ1の端面付近(例えば、端面から2cmまで)にレーザー光が入射して透過するように、レーザー光を出射するものとする。
【0045】
その後、
図2で示すように、シリカガラスルツボ1に入射したレーザー光は、シリカガラスルツボ1の構造に応じて、透過する、一部散乱する、など、様々な反応を起こすことになる。つまり、シリカガラスルツボ1に入射したレーザー光は、シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置で、シリカガラスルツボ1の厚み方向の構造に応じて、様々な散乱状況を示すことになる。
【0046】
ここで、ガラスは非晶体であり、また、ガラスの主成分の二酸化ケイ素は光を吸収しないという特性を有している。そのため、入射した光を散乱せず透過することになり、その結果、人間の目で見て透明に見えることになる(可視光は、約400〜800nmの範囲である)。従って、シリカガラスルツボ1の透明層においては、上記レーザーポインタ2(630nmのレーザー光を出射する)が出射したレーザー光は透過するものと考えられる。一方、気泡含有層においては、気泡との境界などにおいて、レーザー光が散乱することになる。そのため、上記レーザーポインタ2が出射したレーザー光が気泡含有層に入射すると、当該気泡含有層に入射したレーザー光は散乱することになる。
【0047】
する性質を有している。そのため、レーザーポインタ2としては、可視光のレーザーを出射する構成を有していることが望ましい。
【0048】
カメラ部3は、図示しないCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの撮像素子と、レンズ部と、を有する一般的なカメラである。本実施形態におけるカメラ部3は、測定対象となるシリカガラスルツボ1の端面を撮影可能な位置(つまり、端面方向)に設置されている。具体的には、例えば、
図1を参照すると、シリカガラスルツボ1が下向きで設置されている場合には、カメラ部3は、シリカガラスルツボ1の下側に、レンズ部が上を向く形で設置されている。
【0049】
上記のように、シリカガラスルツボ1にはレーザー光が入射されており、シリカガラスルツボ1に入射されたレーザー光は、当該シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置でシリカガラスルツボ1の構造に応じて様々な散乱状況を示している。そこで、カメラ部3は、シリカガラスルツボ1の端面を撮影することにより、シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置で生じているレーザー光の散乱状況を測定する。つまり、カメラ部3は、シリカガラスルツボ1の端面を撮影することで、シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置の散乱状況を示す画像データを取得する。その後、カメラ部3は、例えば、図示しない表示部に取得した画像データを表示する。
【0050】
ここで、カメラ部3が取得する画像データの一例を示す。カメラ部3は、例えば、
図2で示すような画像データを取得する。
図2を参照すると、シリカガラスルツボ1の内側からレーザー光が入射されると、当該シリカガラスルツボ1の内表面から所定位置まではレーザー光が透過している。つまり、シリカガラスルツボ1の最も内側には、レーザー光が散乱しておらず、レーザー光を測定することが出来ない領域があることになる。そして、その後、シリカガラスルツボ1に入射されたレーザー光は散乱する。
【0051】
また、カメラ部3は、例えば、
図3で示すような画像データを取得する。
図3を参照すると、
図2の場合と同様に、シリカガラスルツボ1の内表面から所定位置まではレーザー光が透過していることが分かる。そして、その後、レーザー光は散乱の強さを変化させながら散乱していることが観察される。つまり、上記所定位置まで透過した後、一度強く散乱し、その後散乱は弱くなり、そしてさらにその後に強く散乱していることが分かる。
【0052】
このように、カメラ部3により取得される画像データを参照すると、シリカガラスルツボ1に入射されたレーザー光は、所定の位置まで透過した後、散乱することが分かる。また、レーザー光の散乱の強さには、強弱がある場合があることが分かる。
【0053】
ここで、上述したように、シリカガラスルツボ1に入射したレーザー光は、シリカガラスルツボ1の構造に応じて、当該シリカガラスルツボ1の厚み方向の様々な位置で、様々な散乱状況を示している。従って、上記のような様々な入射されたレーザー光の散乱状況は、シリカガラスルツボ1の構造に応じて生じているものと考えることが出来る。つまり、カメラ部3により取得された画像データを参照することで、シリカガラスルツボ1の構造を把握することが出来るものと考えられる。
【0054】
具体的には、例えば、
図4で示すように、シリカガラスルツボ1に入射したレーザー光が透過する領域を、気泡含有量が少ない層である透明層であるものと考えることが出来る。また、レーザー光が散乱する領域を、気泡含有量が多い層である気泡含有層であるものと考えることが出来る。このように、シリカガラスルツボ1に入射されたレーザー光の厚み方向の各位置の散乱状況を測定することで、シリカガラスルツボ1の厚み方向の層の構造を把握することが出来るようになる。
【0055】
また、例えば、
図5で示すように、レーザー光の散乱の強さに強弱がある場合には、気泡含有層が複数の層により構成されていると考えることが出来る。このように、本実施形態におけるルツボ測定装置によると、気泡含有層が複数の層により構成されていることを把握することが出来るようになる。
【0056】
このように、本実施形態におけるルツボ測定装置は、レーザーポインタ2とカメラ部3とを有している。このような構成により、シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置に生じる散乱状況を測定することが可能となる。その結果、測定した厚み方向の各位置の散乱状況に基づいて、シリカガラスルツボ1の厚み方向の層の構造を把握することが出来るようになる。また、本実施形態におけるルツボ測定装置は、レーザーポインタ2をシリカガラスルツボ1の内部に設置し、カメラ部3で端面を撮影することにより厚み方向のレーザー光の散乱状況を測定している。このように、本実施形態におけるルツボ測定装置を用いると、シリカガラスルツボ1の厚み方向の層の構造を容易に把握することが出来る。
【0057】
ここで、仮にシリカガラスルツボ1が透明層のみから構成されているとした場合を考えてみる。この場合、シリカガラスルツボ1は加熱などにより容易に温度変化することになる。その結果、シリコン単結晶を製造する際の熱の調整を行うことが難しくなるという問題が生じることなる。従って、上記問題に対処するため、シリカガラスルツボ1は、透明層と気泡含有層とを含んで構成されていることが必要となることになる。
【0058】
また、仮に透明層の厚みが薄い場合、シリコン単結晶を製造する際に透明層が溶解し、シリコン融液と気泡含有層とが接触することになる。すると、気泡に由来する凹凸部がシリコン融液との接触面に現れることになり、ブラウンリングの発生などの原因になるものと考えられる。このため、透明層が薄すぎることは問題であるものと考えられる。一方で、仮に透明層及び気泡含有層を両方ともただひたすらに厚くすると、シリカガラスルツボ1の内部の容量が減ることとなり、また、製造する際にかかるコストが無駄に高くなるものとなる。また、気泡含有層の厚みを薄くすると、温度調整の役割を十分に果たすことが出来ないものと考えられる。
【0059】
以上より、シリカガラスルツボの厚み方向の層である透明層は、厚すぎず薄すぎず適度な厚さを有していることが望ましいと考えることが出来る。そこで、このような望ましい構造を有するシリカガラスルツボ1を判別するために、本実施形態におけるルツボ測定装置を活用することが考えられる。つまり、本実施形態におけるルツボ測定装置が取得した画像データを用いて、透明層を把握し、透明層の厚みを判定する。これにより、製造されたシリカガラスルツボ1が十分な厚みの透明層を有しているかを、非破壊で容易な方法により判定することが出来るようになる。その結果、シリコン単結晶を製造する際に不具合が発生する可能性を減らすことが可能となる。
【0060】
また、気泡含有層に複数の構造が含まれている場合、層内の熱膨張率の違いなどから、シリカガラスルツボの強さに問題が生じる場合があるものと考えられる。そこで、本実施形態におけるルツボ測定装置を活用する。つまり、本実施形態におけるルツボ測定装置が取得した画像データを用いて、気泡含有層を測定し、気泡含有層の構造(気泡含有層が複数の層から構成されていること)を判定する。これにより、製造されたシリカガラスルツボ1の気泡含有層が複数の層により構成されていないことを、非破壊で容易な方法により判定することが出来るようになる。その結果、シリコン単結晶を製造する際に不具合が発生する可能性を減らすことが可能となる。
【0061】
なお、本実施形態におけるルツボ測定装置は、カメラ部3が取得した画像データを解析して、透明層や気泡含有層などのシリカガラスルツボ1の厚み方向の層の構造を判定する、図示しない画像判定部を備えることが出来る。
【0062】
画像解析部は、例えば演算装置と記憶装置とを備える一般的な情報処理装置であり、記憶装置が記憶するプログラムを演算装置が実行することで、カメラ部3が取得した画像データを解析する機能を実現することになる。つまり、画像解析部は、画像データに基づいてシリカガラスルツボ1の厚み方向の層の構造を判断する。これにより、自動でシリカガラスルツボ1の厚み方向の層の構造を判断することが可能となる。
【0063】
また、シリカガラスルツボ1の構成によっては、当該シリカガラスルツボ1に入射されたレーザー光が、所定位置まで透過後一部反射していることが考えられる。このような場合には、例えば、反射していると判断される境界を境目にして、透明層と気泡含有層とを判別することが考えられる。
【0064】
(実施例)
図6は、実際にシリカガラスルツボ1にレーザー光を入射した際の、レーザー光の散乱状況を、カメラ部3を用いて撮影した画像である。
図6(A)を参照すると、シリカガラスルツボ1に入射されたレーザー光は、当該シリカガラスルツボ1の内側から所定位置まで透過した後、一部散乱している状況が観測される。そのため、
図6(A)で示すシリカガラスルツボ1は、レーザー光が透過する領域である透明層と、透明層の外側に位置しレーザー光が散乱する領域である気泡含有層と、を有していると判別することが出来る。
【0065】
また、
図6(B)を参照すると、シリカガラスルツボ1の内側から所定位置まで透過した後、一度強く散乱し、その後散乱が弱くなった後に、再度レーザー光が強く散乱している様子が観察される。そのため、
図6(B)で示すシリカガラスルツボ1は、レーザー光が透過する領域である透明層と、透明層の外側に位置しレーザー光が散乱する領域である気泡含有層と、を有しており、気泡含有層は複数の層により構成されている、と判別することが出来る。シリカガラスは複屈折性を持っているため内部残留応力の急激な変化があると屈折率が急激に変化する。
【0066】
ここで、
図6で示す画像を撮影したシリカガラスルツボ1の歪み(内部残留応力)を示す図を
図7に示す。
図7(A)を参照すると、
図6(A)の(透明層と気泡含有層とを有し、気泡含有層が単一の構造で構成されていると判断される)シリカガラスルツボ1では、透明層と気泡含有層との間に内部残留応力の境界があるものの、その他の部分においては、内部残留応力は緩やかな変化をしているものと判断することが出来る。
【0067】
一方、
図7(B)を参照すると、
図7(B)の(透明層と気泡含有層とを有し、気泡含有層が複数の層を含んで構成されていると判断される)シリカガラスルツボ1では、気泡含有層の内部においても、内部残留応力の境界(急激な変化)があるものと考えられる。
【0068】
このように、レーザー光の散乱状況とシリカガラスルツボ1の歪みとの間には、相関関係がある場合があるものと考えられる。上述したように、レーザー光の散乱状況は、非常に容易な方法で測定することが出来る。一方で、歪みの検査は、シリカガラスルツボ1を破壊して試験を行わないと難しい場合が少なくない。そのため、レーザー光の散乱状況の測定を、歪みの検査の代わりに行うことも考えられる。この場合には、例えば、レーザー光の散乱状況を測定して、当該測定の結果に応じて(必要に応じて)、アニール処理などを行うことも出来るものと考えられる。
【0069】
なお、例えば、シリコン単結晶を製造するために多結晶シリコンをシリカガラスルツボ1内部に組み込む際、多結晶シリコンによりシリカガラスルツボ1の内部に圧痕が付けられる場合がある。このような場合に、仮にシリカガラスルツボ1内の歪みが大きいとすると、圧痕が付けられたことを原因としてシリカガラスルツボ1が割れてしまうことがある。この割れは、圧痕が付けられた時間と時間差で生じることもあるため、例えば仮にシリコンを融解している最中にシリカガラスルツボ1が割れた場合、経済的な損失その他の損失が非常に大きいものと考えられる。そこで、非破壊で容易な方法でシリカガラスルツボ1の歪みの測定を代用することが可能となれば、その効果は非常に大きいものと考えられる。
【0070】
以上が、本実施形態におけるルツボ測定装置の構成である。次に、ルツボ測定装置の動作の一例について、
図8を参照して説明する。
【0071】
図8を参照すると、まず、レーザーポインタ2を用いて、シリカガラスルツボ1の内側から厚さ方向に向かってレーザー光を入射する(ステップS101)。これにより、シリカガラスルツボ1には、レーザー光が入射されることになる。その後、シリカガラスルツボ1に入射されたレーザー光は、当該シリカガラスルツボ1の構成に応じて、透過する、一部散乱する、など様々な散乱状況を示すことになる。
【0072】
続いて、シリカガラスルツボ1の端面をカメラ部3により撮影する。これにより、カメラ部3は、シリカガラスルツボ1の厚さ方向の各位置のレーザー光の散乱状況を測定する。つまり、カメラ部3によりシリカガラスルツボ1の端面を撮影することにより、レーザー光の散乱状況を示す画像データを取得する(ステップS102)。その後、カメラ部3は、例えば、取得した画像データを表示装置に表示する。
【0073】
このように、本実施形態におけるルツボ測定装置は、レーザーポインタ2と、カメラ部3と、を有している。このような構成により、測定の対象となるシリカガラスルツボ1に入射されたレーザー光の、シリカガラスルツボ1の厚さ方向の各位置の散乱状況を測定することが可能となる。その結果、当該測定した結果に基づいて、シリカガラスルツボ1の厚さ方向の層の構造を把握することが可能となる。
【0074】
なお、本実施形態においては、シリカガラスルツボ1の内側からレーザー光を出射する場合について説明した。しかしながら、レーザー光を出射する場所は、シリカガラスルツボ1の内側に限定されない。レーザー光は、シリカガラスルツボ1の外側から、シリカガラスルツボ1の厚さ方向に向かって出射されても構わない。また、レーザー光をシリカガラスルツボ1の端面方向から出射して、例えばレーザー光の散乱状況を、シリカガラスルツボ1の内部から測定することも考えられる。このようにすることで、シリカガラスルツボ1の内部で透明層や気泡含有層に凹凸が形成されていることを把握することが出来る。
【0075】
また、内側からレーザー光を出射した状態でレーザーポインタ2を回転させることで、シリカガラスルツボ1の全周に亘って、レーザー光を入射させることが可能である。この際に、カメラ部3をレーザーポインタ2の回転に合わせて移動させることで、シリカガラスルツボ1の全周に亘るそれぞれのレーザー光の散乱状況を測定することが出来る。その結果、容易な方法でシリカガラスルツボ1の全周に亘る、当該シリカガラスルツボ1の厚み方向の構造を測定することが可能となる。
【0076】
また、このようにシリカガラスルツボ1の全周に亘る、当該シリカガラスルツボ1の厚み方向の構造を測定することで、例えば、透明層と気泡含有層との境目の真円度を図ることも可能となる。ここで、シリカガラスルツボ1の内表面の真円度を図ることは可能である。そのため、シリカガラスルツボ1の内表面の真円度と、透明層と気泡含有層との境目の真円度と、を用いることで、例えば、無駄なく必要な分だけ透明層を形成できているかを算出することが出来るようになる。
【0077】
また、本実施形態においては、光出射部としてレーザーポインタ2を用いる場合について説明したが、光出射部としては、レーザーポインタ2以外を用いても構わない。具体的には、例えば、光出射部としてクロスラインレーザーを用いることも考えられる。ここで、クロスラインレーザーは、例えば、出射したレーザー光を、コリメートレンズを透過させた後に円柱状のロッドレンズに透過させることで、水平方向及び垂直方向のレーザー光として出射する、という構成を有している。そのため、光出射部としてクロスラインレーザーを用いることで、広範囲の散乱状況を一度に測定することが可能となるものと考えられる。
【0078】
図9は、クロスラインレーザーを用いてレーザー光を出射した際の、シリカガラスルツボ1の厚み方向の散乱状況を撮影した一例の図である。
図9で示すように、クロスラインレーザーを用いることで、カメラ部3が撮影した全ての範囲において、透明層と気泡含有層とを判別することが可能となっていることが分かる。
【0079】
また、クロスラインレーザーを用いると、広範囲の散乱状況を測定可能となるため、例えば、リム端の加工の仕方によっては、当該リム端の加工の仕方が判別することが出来るようになることがある(透明層の部分においても、光が散乱しているように見える。
図10参照)。このように、クロスラインレーザーを用いて散乱状況を測定することで、透明層と気泡含有層の構造以外の、リム端の加工の仕方などを測定することも可能となる。
【0080】
[実施形態2]
続いて、本発明の第2の実施形態について、
図11及び
図12を参照して説明する。
図11は、本実施形態におけるルツボ測定装置の構成の一例を示している。
図12は、照明部による照明下での散乱状況の測定のしやすさの違いを説明するための図である。
【0081】
本実施形態においては、シリカガラスルツボ1に入射したレーザー光の散乱状況を、所定の波長の光の照射下で測定するルツボ測定装置について説明する。
【0082】
図9を参照すると、本実施形態におけるルツボ測定装置は、レーザーポインタ2と、カメラ部3と、を有している。レーザーポインタ2とカメラ部3との構成は、第1の実施形態において説明したものと同様である。そのため、説明は省略する。そして、
図11を参照すると、本実施形態におけるルツボ測定装置は、上記各構成に追加して、照明部4を有している。
【0083】
照明部4は、例えばLED(Light emitting diode)などで構成されており、レーザーポインタ2が出射するレーザー光の波長に応じた波長の光を照射するよう構成されている。具体的には、例えば、レーザーポインタ2が赤色のレーザー光を出射する際には、例えば、青色の波長の光を照射するように構成されている。このように、照明部4は、レーザーポインタ2が出射するレーザー光の波長に応じた光を照射する。
【0084】
カメラ部3は、上記照明部4による光の照射下で、レーザー光の散乱状況を測定することになる。つまり、レーザーポインタ2がシリカガラスルツボ1にレーザー光を入射している際に、照明部4による光の照射を行う。そして、そのような環境下で、カメラ部3がレーザー光の散乱状況を測定する。このように、レーザーポインタ2が出射するレーザー光の波長に応じて調整される照明部4の光の照射下でカメラ部3がシリカガラスルツボ1の端面を撮影することで、レーザー光の散乱状況をより明確に測定することが可能となる。その結果、より高い精度でシリカガラスルツボの厚み方向の層の構造を測定することが出来るものと考えられる。
【0085】
図12は、シリカガラスルツボ1の内表面と照明部4との距離による、レーザー光の散乱状況の測定のしやすさの関係を示している。具体的には、
図12(A)は、シリカガラスルツボ1の内表面と照明部4との距離が100mmの場合を示しており、
図12(B)は、シリカガラスルツボ1の内表面と照明部4との距離が300mmの場合を示している。また、
図12(C)は、シリカガラスルツボ1の内表面と照明部4との距離が500mmの場合を示している。
図12で示すように、
図12で使用したレーザーポインタ2と照明部4とにおいては、シリカガラスルツボ1の内表面と照明部4との距離が500mm程度離れている場合が、最もレーザー光の散乱状況を明確に測定することが出来ることが分かる。このように、シリカガラスルツボ1の内表面と照明部4との距離を調整することで、レーザー光をより明確に測定可能なよう調整することが出来る。
【0086】
また、上述したクロスラインレーザー(光出射部)と、照明部4とを組み合わせることも有効である。特に、照明部4による青色の照明下で赤色の光を出射することで、散乱している部分が紫色として測定可能となり、より明確に散乱状況を測定することが可能となる。
【0087】
[実施形態3]
次に、本発明の第3の実施形態について、
図13乃至
図16を参照して説明する。
図13は、本実施形態におけるルツボ測定装置の構成の一例である。
図14は、本実施形態におけるルツボ測定装置がラマンスペクトルの測定を行う位置の一例を示す図である。
図15及び
図16は、実際に測定したラマンスペクトルの一例である。
【0088】
本実施形態においては、シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置に単色のレーザー光を出射し、当該出射したレーザー光に応じて生じるラマン散乱光を測定することで、シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置の散乱状況を測定するルツボ測定装置について説明する。後述するように、シリカガラスルツボ1の端面の厚み方向の各位置でラマン測定を行うことによっても、シリカガラスルツボ1の厚み方向の層の構造を把握することが可能となる。
【0089】
図13を参照すると、本実施形態におけるルツボ測定装置は、例えば、レーザー部21(光出射部)と、ラマン分光測定部31(散乱状況測定部)と、を有している。また、ラマン分光測定部31は、例えば、レイリー光除去フィルタ311と、分光器312と、検出器313と、を有している。
【0090】
レーザー部21は、例えば半導体レーザーなどであり、シリカガラスルツボ1の端面方向から、シリカガラスルツボ1の端面に向かって、当該シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置に単色のレーザー光を出射するよう構成されている。つまり、
図14で示すように、レーザー部21は、シリカガラスルツボ1の端面に、当該シリカガラスルツボ1の厚み方向に出射位置を移動させながらレーザー光を出射させることになる。これにより、後述するように、シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置のラマンスペクトルが測定されることになる。
【0091】
ラマン分光測定部31は、上記のように、レイリー光除去フィルタ311と、分光器312と、検出器313と、を有している。
【0092】
レイリー光除去フィルタ311は、散乱光の中に含まれる、出射したレーザー光と同じ波長の光であるレイリー散乱を除去するためのフィルタである。レーザー部21が出射したレーザー光は、シリカガラスルツボ1の端面に入射した後、散乱光を発生させることになる。この散乱光には、測定の対象となるラマン散乱光(ストークス、アンチストークス、一方でも構わない)の他に、レイリー散乱光が含まれている。そこで、レイリー光除去フィルタ311を用いて、レイリー散乱光を除去することになる。
【0093】
続いて、レイリー光除去フィルタ311を通過した光は、分光器312に入射する。そして、分光器312にて、レイリー散乱光を除去した散乱光を分光する。その後、CCD検出器などの検出器313を用いて、分光した光を波長毎に検出する。このような構成により、本実施形態におけるルツボ測定装置は、シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置の散乱状況を測定することになる。また、検出器313は、例えば図示しない情報処理装置に接続されており、当該情報処理装置にて、検出した光に応じたラマンシフト値を算出する。これにより、ラマンスペクトルが測定されることになる。
【0094】
なお、上記ラマンスペクトルを測定するための構成は、あくまで一例である。上記構成以外を用いて、シリカガラスルツボ1の厚さ方向の各位置のラマンスペクトルを測定するように構成しても構わない。
【0095】
このように、本実施形態におけるルツボ測定装置は、レーザー部21と、ラマン分光測定部31と、を有している。このような構成により、シリカガラスルツボ1の端面の、当該シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置のラマンスペクトルを取得することが出来る。
【0096】
ここで、シリカガラスのラマンスペクトルには、平面4員環に帰属されるピークと、平面3員環に帰属されるピークと、を代表とする複数のピークが測定されることが知られている。そのため、上記シリカガラスルツボ1の端面の厚み方向の各位置のラマンスペクトルも、同様に、平面4員環に帰属されるピークと、平面3員環に帰属されるピークと、を含む複数のピークを有しているものと考えられる。一方で、実際に測定を行うと、後述するように、シリカガラスルツボの厚み方向の各位置で、各ピークの溶解の値にずれが生じている場合があることが分かる。つまり、シリカガラスルツボの厚み方向には、複数の構造が含まれている場合があり、上記のようにシリカガラスルツボの厚み方向の各位置でラマン測定を行うことで、上記複数の構造を測定することが出来ることになる。
【0097】
(実施例)
図15及び
図16は、実際にシリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置のラマンスペクトルを測定した結果である。
図15は、
図6(A)、
図7(A)と同様のシリカガラスルツボ1の端面の、当該シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置のラマンスペクトルを測定した結果である。
図16は、
図6(B)、
図7(B)と同様のシリカガラスルツボ1の端面の、当該シリカガラスルツボ1の厚み方向の各位置のラマンスペクトルを測定した結果である。
【0098】
図15、
図16のラマンスペクトルは、下から順番に、内面側(透明層)、内面と中間との境界、中間、中間と外面側との境界、外面側、の位置のラマン測定の結果を示している。なお、見やすいように
図15及び
図16のラマンスペクトルの結果は、各結果が重なり合わないように修正されている。そのため、以下においては、ラマンシフトのみを問題とし、強度は見ないものとする。
【0099】
図15を参照すると、平面4員環に帰属されるピークにおいて、内面側(透明層)及び内面と中間との境界の測定結果と、中間、中間と外面側との境界、外面側の測定結果とに大きな開きがあることが分かる。
図6(A)、
図7(A)で示したように、
図15を測定したシリカガラスルツボ1は、透明層と気泡含有層とを有し、気泡含有層が単一の構造で構成されていると判断される層である。以上より、ラマン測定の結果と、シリカガラスルツボ1の厚み方向の散乱状況の測定結果とは、一定の相関関係があるものと考えることが出来る。つまり、内面側(透明層)及び内面と中間との境界の測定結果が透明層を示し、中間、中間と外面側との境界、外面側の測定結果が気泡含有層を示しているものと考えることが出来る。このように、ラマン測定の結果に基づいて、シリカガラスルツボ1の厚み方向の層の構造を把握することが出来ることが分かる。
【0100】
また、同様に、
図16では、平面4員環に帰属されるピーク及び平面3員環に帰属されるピークにおいて、各境界(内面と中間との境界、中間と外面側との境界)のラマンシフトの値にずれが見られることが分かる。
図6(B)、
図7(B)で示したように、
図16を測定したシリカガラスルツボ1は、透明層と気泡含有層とを有し、気泡含有層が複数の層から構成されていると判断されている。このことからも、ラマン測定の結果と、シリカガラスルツボ1の厚み方向の散乱状況の測定結果とは、一定の相関関係があるものと考えることが出来る。
【0101】
なお、レーザー光の散乱状況の測定と、ラマンスペクトルの測定と、を同時に行うことも考えられる。つまり、最初にレーザー光の散乱状況の測定を行い、当該レーザー光の散乱状況の測定により異なる構造であると判断される各層に対してラマン測定を行う。例えば、このように両方の方法を用いて測定を行うことで、容易に、かつ、より精度高く、シリカガラスルツボ1の厚み方向の層の構造を把握することが可能となる。
【0102】
以上、上記実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることが出来る。