(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の弾性膜の、基板に接触する当接部は、前記第1の弾性膜の、基板に接触する当接部の厚さとは異なる厚さを有することを特徴とする請求項1または2に記載の研磨装置。
前記第2の弾性膜の、基板に接触する当接部は、前記第1の弾性膜の、基板に接触する当接部のエッジ部とは異なる形状のエッジ部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の研磨装置。
前記第1のリテーナリングまたは前記第2のリテーナリングは、テーパ形状、または湾曲形状のエッジ部を有していることを特徴とする請求項9または10に記載の研磨装置。
前記第1のリテーナリングまたは前記第2のリテーナリングは、内側リテーナリングと外側リテーナリングとを含むことを特徴とする請求項9または10に記載の研磨装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体デバイスの高集積化が進むにつれて、また半導体デバイス製造の生産性向上のため、研磨装置の性能の向上が強く求められている。研磨装置に求められる性能を列挙すると、平坦化特性(段差解消性能)、研磨レート(除去レートともいう)、研磨レート分布のウェハ面内均一性、研磨されたウェハの低欠陥性、研磨装置のスループットなどがある。
【0007】
上述した性能は相反する研磨条件を必要とする場合が多い。例えば、平坦化特性を向上させるためには一般的に低圧での研磨が望ましいが、研磨レートおよびスループットを向上させるためには高圧での研磨が望ましい。また、平坦化特性を向上させるためには高硬度の研磨パッドを用いた研磨が一般的に望ましいが、低欠陥性を得るためには低硬度の研磨パッドが望ましい場合が多い。
【0008】
特許文献1には、複数の研磨ヘッドを有する研磨装置が開示されている。このような研磨装置を用いて複数段研磨を行う場合は、粗研磨、仕上げ研磨などの研磨の目的によって異なる研磨液や研磨パッドが用いられるために、基本的な研磨レート分布が異なってくる。したがって、ウェハ面内での研磨レートの均一性を改善するために必要とされる研磨ヘッドの制御特性も粗研磨と仕上げ研磨とで異なってくる。
【0009】
そこで、本発明は、異なる研磨条件下で最適な多段研磨を実行することができる複数種の研磨ヘッドを備えた研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基板を研磨する研磨装置であって、基板を第1の研磨面に押し付けて該基板の表面を研磨する第1の研磨ヘッドと、基板を第2の研磨面に押し付けて該基板の表面を研磨する第2の研磨ヘッドとを備え、前記第1の研磨ヘッドは、流体の圧力を受けて基板を前記第1の研磨面に押し付ける第1の弾性膜を有し、前記第2の研磨ヘッドは、流体の圧力を受けて基板を前記第2の研磨面に押し付ける第2の弾性膜を有し、前記第2の弾性膜は、前記第1の弾性膜と異なる構成を有していることを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記第2の研磨ヘッドは、前記第1の研磨ヘッドによって研磨された基板をさらに研磨するように構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2の弾性膜は、前記第1の弾性膜の硬度とは異なる硬度を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2の弾性膜は、前記第1の弾性膜の周壁とは異なる形状の周壁を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2の弾性膜の、基板に接触する当接部は、前記第1の弾性膜の、基板に接触する当接部の厚さとは異なる厚さを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記第2の弾性膜は、前記第1の弾性膜の基板押圧面の面積とは異なる面積の基板押圧面を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2の弾性膜の、基板に接触する当接部は、前記第1の弾性膜の、基板に接触する当接部のエッジ部とは異なる形状のエッジ部を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、基板を第3の研磨面に押し付けて該基板の表面を研磨する第3の研磨ヘッドと、基板を第4の研磨面に押し付けて該基板の表面を研磨する第4の研磨ヘッドとをさらに備え、前記第3の研磨ヘッドは、流体の圧力を受けて基板を前記第3の研磨面に押し付ける第3の弾性膜を有し、前記第4の研磨ヘッドは、流体の圧力を受けて基板を前記第4の研磨面に押し付ける第4の弾性膜を有し、前記第1の弾性膜と前記第3の弾性膜は同じ構成を有しており、前記第2の弾性膜と前記第4の弾性膜は同じ構成を有していることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様は、基板を研磨する研磨装置であって、基板を第1の研磨面に押し付けて該基板の表面を研磨する第1の研磨ヘッドと、基板を第2の研磨面に押し付けて該基板の表面を研磨する第2の研磨ヘッドとを備え、前記第1の研磨ヘッドは、基板を囲むように配置された、前記第1の研磨面を押し付ける第1のリテーナリングを有し、前記第2の研磨ヘッドは、基板を囲むように配置された、前記第2の研磨面を押し付ける第2のリテーナリングを有し、前記第2のリテーナリングは、前記第1のリテーナリングと異なる構成を有していることを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記第2の研磨ヘッドは、前記第1の研磨ヘッドによって研磨された基板をさらに研磨するように構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1のリテーナリングは、その内周面から外周面まで延びる複数の第1の溝を有し、前記第2のリテーナリングは、その内周面から外周面まで延びる複数の第2の溝を有し、前記複数の第2の溝の数は、前記複数の第1の溝の数とは異なることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1のリテーナリングは、その内周面から外周面に延びる複数の第1の溝を有し、前記第2のリテーナリングは、その内周面から外周面に延びる複数の第2の溝を有し、前記複数の第2の溝の形状は、前記複数の第1の溝の形状とは異なることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1のリテーナリングおよび前記第2のリテーナリングのうちの一方は、その内周面から外周面に延びる溝を有し、前記第1のリテーナリングおよび前記第2のリテーナリングのうちの他方は、その内周面から外周面に延びる溝を有していないことを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様は、前記第1のリテーナリングまたは前記第2のリテーナリングは、テーパ形状、または湾曲形状のエッジ部を有していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2のリテーナリングは、前記第1のリテーナリングの幅とは異なる幅を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1のリテーナリングまたは前記第2のリテーナリングは、内側リテーナリングと外側リテーナリングとを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記第2のリテーナリングは、前記第1のリテーナリングの材料とは異なる材料から構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、基板を第3の研磨面に押し付けて該基板の表面を研磨する第3の研磨ヘッドと、基板を第4の研磨面に押し付けて該基板の表面を研磨する第4の研磨ヘッドとをさらに備え、前記第3の研磨ヘッドは、基板を囲むように配置された、前記第3の研磨面を押し付ける第3のリテーナリングを有し、前記第4の研磨ヘッドは、基板を囲むように配置された、前記第4の研磨面を押し付ける第4のリテーナリングを有し、前記第1のリテーナリングと前記第3のリテーナリングは同じ構成を有しており、前記第2のリテーナリングと前記第4のリテーナリングは同じ構成を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、研磨装置は、複数のタイプの研磨ヘッドを用いて最適な多段研磨を実行することができる。例えば、1段目の研磨では硬度の高い弾性膜を有する研磨ヘッドを用いて比較的高圧でウェハを研磨し、2段目の研磨では硬度の低い弾性膜を有する研磨ヘッドを用いて比較的低圧でウェハを研磨する。他の例では、1段目の研磨と2段目の研磨とで異なるウェハエッジプロファイルを得るために、エッジ部の形状が異なる弾性膜を有する研磨ヘッドを用いて1段目の研磨および2段目の研磨を行う。さらに、1段目の研磨では高硬度の研磨パッドを用い、2段目の研磨では、1段目の研磨で用いられたリテーナリングよりも溝本数の少ないリテーナリング、またはエッジ部がテーパ形状または湾曲形状を有したリテーナリングを有する研磨ヘッドを用いてもよい。リテーナリングの幅は、パッドリバウンド特性や、ウェハ面に供給される研磨液の流れに影響を与えるため、幅が異なるリテーナリングをそれぞれ備えた2つの研磨ヘッドを用いてウェハを多段研磨してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る研磨装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る研磨装置を示す図である。
図1に示すように、この研磨装置は、略矩形状のハウジング1を備えており、ハウジング1の内部は隔壁1a,1bによってロード/アンロード部2と研磨部3と洗浄部4とに区画されている。研磨装置は、ウェハ処理動作を制御する動作制御部5を有している。
【0020】
ロード/アンロード部2は、多数のウェハ(基板)をストックする基板カセットが載置されるフロントロード部20を備えている。このロード/アンロード部2には、フロントロード部20の並びに沿って走行機構21が敷設されており、この走行機構21上に基板カセットの配列方向に沿って移動可能な搬送ロボット(ローダー)22が設置されている。搬送ロボット22は走行機構21上を移動することによってフロントロード部20に搭載された基板カセットにアクセスできるようになっている。
【0021】
研磨部3は、ウェハの研磨が行われる領域であり、第1研磨ユニット3A、第2研磨ユニット3B、第3研磨ユニット3C、第4研磨ユニット3Dを備えている。
図1に示すように、第1研磨ユニット3Aは、研磨面を有する研磨パッド10が取り付けられた第1研磨テーブル30Aと、ウェハを保持しかつウェハを研磨テーブル30A上の研磨パッド10に押圧しながら研磨するための研磨ヘッド31Aと、研磨パッド10に研磨液(例えばスラリー)やドレッシング液(例えば、純水)を供給するための第1研磨液供給ノズル32Aと、研磨パッド10の研磨面のドレッシングを行うための第1ドレッサ33Aと、液体(例えば純水)と気体(例えば窒素ガス)の混合流体を霧状にして研磨面に噴射する第1アトマイザ34Aとを備えている。
【0022】
同様に、第2研磨ユニット3Bは、研磨パッド10が取り付けられた第2研磨テーブル30Bと、研磨ヘッド31Bと、第2研磨液供給ノズル32Bと、第2ドレッサ33Bと、第2アトマイザ34Bとを備えており、第3研磨ユニット3Cは、研磨パッド10が取り付けられた第3研磨テーブル30Cと、研磨ヘッド31Cと、第3研磨液供給ノズル32Cと、第3ドレッサ33Cと、第3アトマイザ34Cとを備えており、第4研磨ユニット3Dは、研磨パッド10が取り付けられた第4研磨テーブル30Dと、研磨ヘッド31Dと、第4研磨液供給ノズル32Dと、第4ドレッサ33Dと、第4アトマイザ34Dとを備えている。
【0023】
後述するように、4つの研磨ヘッド31A,31B,31C,31Dは、互いに異なる構成を有しているが、第1研磨ユニット3A、第2研磨ユニット3B、第3研磨ユニット3C、および第4研磨ユニット3Dは、全体として基本的に同一の構成を有している。以下、第1研磨ユニット3Aについて
図2を参照して説明する。
図2は、第1研磨ユニット3Aを模式的に示す斜視図である。なお、
図2において、ドレッサ33Aおよびアトマイザ34Aは省略されている。
【0024】
研磨テーブル30Aは、テーブル軸30aを介してその下方に配置されるテーブルモータ19に連結されており、このテーブルモータ19により研磨テーブル30Aが矢印で示す方向に回転されるようになっている。この研磨テーブル30Aの上面には研磨パッド10が貼付されており、研磨パッド10の上面がウェハWを研磨する研磨面10aを構成している。研磨ヘッド31Aはヘッドシャフト16Aの下端に連結されている。研磨ヘッド31Aは、真空吸引によりその下面にウェハWを保持できるように構成されている。ヘッドシャフト16Aは、上下動機構(
図2には図示せず)により上下動するようになっている。
【0025】
ウェハWの研磨は次のようにして行われる。研磨ヘッド31Aおよび研磨テーブル30Aをそれぞれ矢印で示す方向に回転させ、研磨液供給ノズル32Aから研磨パッド10上に研磨液(スラリー)を供給する。この状態で、研磨ヘッド31Aは、ウェハWを研磨パッド10の研磨面10aに押し付ける。ウェハWの表面は、研磨液に含まれる砥粒の機械的作用と研磨液の化学的作用により研磨される。研磨終了後は、ドレッサ33Aによる研磨面10aのドレッシング(コンディショニング)が行われ、さらにアトマイザ34Aから高圧の流体が研磨面10aに供給されて、研磨面10aに残留する研磨屑や砥粒などが除去される。
【0026】
図1に戻り、第1研磨ユニット3Aおよび第2研磨ユニット3Bに隣接して、第1リニアトランスポータ6が配置されている。この第1リニアトランスポータ6は、4つの搬送位置(第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、第4搬送位置TP4)の間でウェハを搬送する機構である。また、第3研磨ユニット3Cおよび第4研磨ユニット3Dに隣接して、第2リニアトランスポータ7が配置されている。この第2リニアトランスポータ7は、3つの搬送位置(第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、第7搬送位置TP7)の間でウェハを搬送する機構である。
【0027】
ウェハは、第1リニアトランスポータ6によって研磨ユニット3A,3Bに搬送される。第1研磨ユニット3Aの研磨ヘッド31Aは、そのスイング動作により研磨テーブル30Aの上方位置と第2搬送位置TP2との間を移動する。したがって、研磨ヘッド31Aと第1リニアトランスポータ6との間でのウェハの受け渡しは第2搬送位置TP2で行われる。
【0028】
同様に、第2研磨ユニット3Bの研磨ヘッド31Bは研磨テーブル30Bの上方位置と第3搬送位置TP3との間を移動し、研磨ヘッド31Bと第1リニアトランスポータ6との間でのウェハの受け渡しは第3搬送位置TP3で行われる。第3研磨ユニット3Cの研磨ヘッド31Cは研磨テーブル30Cの上方位置と第6搬送位置TP6との間を移動し、研磨ヘッド31Cと第2リニアトランスポータ7との間でのウェハの受け渡しは第6搬送位置TP6で行われる。第4研磨ユニット3Dの研磨ヘッド31Dは研磨テーブル30Dの上方位置と第7搬送位置TP7との間を移動し、研磨ヘッド31Dと第2リニアトランスポータ7との間でのウェハの受け渡しは第7搬送位置TP7で行われる。
【0029】
第1搬送位置TP1に隣接して、搬送ロボット22からウェハを受け取るためのリフタ11が配置されている。ウェハはこのリフタ11を介して搬送ロボット22から第1リニアトランスポータ6に渡される。リフタ11と搬送ロボット22との間に位置して、シャッタ(図示せず)が隔壁1aに設けられており、ウェハの搬送時にはシャッタが開かれて搬送ロボット22からリフタ11にウェハが渡されるようになっている。
【0030】
第1リニアトランスポータ6と、第2リニアトランスポータ7と、洗浄部4との間にはスイングトランスポータ12が配置されている。第1リニアトランスポータ6から第2リニアトランスポータ7へのウェハの搬送は、スイングトランスポータ12によって行われる。ウェハは、第2リニアトランスポータ7によって第3研磨ユニット3Cおよび/または第4研磨ユニット3Dに搬送される。
【0031】
スイングトランスポータ12の側方には、図示しないフレームに設置されたウェハの仮置き台72が配置されている。この仮置き台72は、
図1に示すように、第1リニアトランスポータ6に隣接して配置されており、第1リニアトランスポータ6と洗浄部4との間に位置している。スイングトランスポータ12は、第4搬送位置TP4、第5搬送位置TP5、および仮置き台72の間でウェハを搬送する。
【0032】
仮置き台72に載置されたウェハは、洗浄部4の第1の搬送ロボット77によって洗浄部4に搬送される。
図1に示すように、洗浄部4は、研磨されたウェハを洗浄液で洗浄する第1の洗浄ユニット73および第2の洗浄ユニット74と、洗浄されたウェハを乾燥する乾燥ユニット75とを備えている。第1の搬送ロボット77は、ウェハを仮置き台72から第1の洗浄ユニット73に搬送し、さらに第1の洗浄ユニット73から第2の洗浄ユニット74に搬送するように動作する。第2の洗浄ユニット74と乾燥ユニット75との間には、第2の搬送ロボット78が配置されている。この第2の搬送ロボット78は、ウェハを第2の洗浄ユニット74から乾燥ユニット75に搬送するように動作する。
【0033】
次に、研磨装置の動作について説明する。搬送ロボット22は、基板カセットからウェハを取り出して、第1リニアトランスポータ6に渡し、さらにウェハは第1リニアトランスポータ6および/または第2リニアトランスポータ7を経由して研磨ユニット3A〜3Dのうちの少なくとも2つに搬送される。ウェハは、研磨ユニット3A〜3Dのうちの少なくとも2つで研磨される。
【0034】
研磨されたウェハは、第1リニアトランスポータ6または第2リニアトランスポータ7、スイングトランスポータ12、搬送ロボット77を経由して第1の洗浄ユニット73および第2の洗浄ユニット74に搬送され、研磨されたウェハはこれら第1の洗浄ユニット73および第2の洗浄ユニット74によって順次洗浄される。さらに、洗浄されたウェハは搬送ロボット78によって乾燥ユニット75に搬送され、ここで洗浄されたウェハが乾燥される。
【0035】
乾燥されたウェハは、搬送ロボット22によって乾燥ユニット75から取り出され、フロントロード部20上の基板カセットに戻される。このようにして、研磨、洗浄、および乾燥を含む一連の処理がウェハに対して行われる。
【0036】
搬送ロボット22、第1リニアトランスポータ6、第2リニアトランスポータ7、およびスイングトランスポータ12は、ウェハを研磨ユニット3A〜3Dのうちの少なくとも2つに搬送する搬送装置を構成する。この搬送装置の動作は、動作制御部5によって制御される。搬送装置は、予め定められた搬送経路に従って、ウェハを4つの研磨ユニット3A,3B,3C,3Dのうちの少なくとも2つに搬送する。
【0037】
図3は、研磨ヘッド31Aを示す断面図である。研磨ヘッド31Aは、円板状のキャリヤ101と、キャリヤ101の下に複数の圧力室D1,D2,D3,D4を形成する円形の柔軟な弾性膜(メンブレン)103と、ウェハWを囲むように配置され、研磨パッド10を押し付けるリテーナリング105とを備えている。圧力室D1,D2,D3,D4は弾性膜103とキャリヤ101の下面との間に形成されている。
【0038】
弾性膜103は、複数の環状の仕切り壁103aを有しており、圧力室D1,D2,D3,D4はこれら仕切り壁103aによって互いに仕切られている。中央の圧力室D1は円形であり、他の圧力室D2,D3,D4は環状である。これらの圧力室D1,D2,D3,D4は、同心円状に配列されている。研磨ヘッド31Aは少なくとも2つの圧力室を備えていればよく、その圧力室の数は特に限定されない。
【0039】
圧力室D1,D2,D3,D4は、流体ラインG1,G2,G3,G4に接続されており、圧力調整された加圧流体(例えば加圧空気などの加圧気体)が流体ラインG1,G2,G3,G4を通じて圧力室D1,D2,D3,D4内に供給されるようになっている。流体ラインG1,G2,G3,G4には真空ラインU1,U2,U3,U4が接続されており、真空ラインU1,U2,U3,U4によって圧力室D1,D2,D3,D4に負圧が形成されるようになっている。圧力室D1,D2,D3,D4の内部圧力は互いに独立して変化させることが可能であり、これにより、ウェハWの対応する4つの領域、すなわち、中央部、内側中間部、外側中間部、および周縁部に対する研磨圧力を独立に調整することができる。
【0040】
リテーナリング105とキャリヤ101との間には、環状の弾性膜106が配置されている。この弾性膜106の内部には環状の圧力室D5が形成されている。この圧力室D5は、流体ラインG5に接続されており、圧力調整された加圧流体(例えば加圧空気)が流体ラインG5を通じて圧力室D5内に供給されるようになっている。また、流体ラインG5には真空ラインU5が接続されており、真空ラインU5によって圧力室D5に負圧が形成されるようになっている。圧力室D5内の圧力変化に伴い、リテーナリング105の全体が上下方向に動くことができる。圧力室D5内の圧力はリテーナリング105に加わり、リテーナリング105は弾性膜(メンブレン)103とは独立して研磨パッド10を直接押圧することができるように構成されている。ウェハWの研磨中、リテーナリング105はウェハWの周囲で研磨パッド10を押し付けながら、弾性膜103がウェハWを研磨パッド10に対して押し付ける。
【0041】
キャリヤ101は、ヘッドシャフト16Dの下端に固定されており、ヘッドシャフト16Dは、上下動機構110に連結されている。この上下動機構110は、ヘッドシャフト16Dおよび研磨ヘッド31Aを上昇および下降させ、さらに研磨ヘッド31Aを所定の高さに位置させるように構成されている。この研磨ヘッド位置決め機構として機能する上下動機構110としては、サーボモータとボールねじ機構の組み合わせが使用される。研磨ヘッド31Aの高さは、研磨パッド10の研磨面(上面)10aからの高さである。
【0042】
上下動機構110は、研磨ヘッド31Aを所定の高さに位置させ、この状態で、圧力室D1〜D5に加圧流体が供給される。弾性膜103は、圧力室D1〜D4内の圧力を受けてウェハWを研磨パッド10に対して押し付け、リテーナリング105は、圧力室D5内の圧力を受けて研磨パッド10を押し付ける。この状態でウェハWが研磨される。
【0043】
第1研磨ヘッド31A、第2研磨ヘッド31B、第3研磨ヘッド31C、および第4研磨ヘッド31Dは、基本的に同じ構成を有しているが、4つの研磨ヘッド31A〜31Dのうちの2つは、他の2つの研磨ヘッドとは異なる構造の弾性膜103を有している。例えば、第1研磨ヘッド31Aと第3研磨ヘッド31Cは互いに同じ構造の弾性膜103を有し、第2研磨ヘッド31Bと第4研磨ヘッド31Dは互いに同じ構造の弾性膜103を有しているが、第1研磨ヘッド31Aおよび第3研磨ヘッド31Cの弾性膜103は、第2研磨ヘッド31Bおよび第4研磨ヘッド31Dの弾性膜103とは異なる構造を有している。本明細書において、弾性膜103の構造には、弾性膜103の大きさ、硬度、形状が少なくとも含まれる。
【0044】
4つの研磨ヘッド31A〜31Dのうちの2つは、他の2つの研磨ヘッドとは異なる構造のリテーナリング105を有していてもよい。例えば、第1研磨ヘッド31Aと第3研磨ヘッド31Cは互いに同じ構造のリテーナリング105を有し、第2研磨ヘッド31Bと第4研磨ヘッド31Dは互いに同じ構造のリテーナリング105を有しているが、第1研磨ヘッド31Aおよび第3研磨ヘッド31Cのリテーナリング105は、第2研磨ヘッド31Bおよび第4研磨ヘッド31Dのリテーナリング105とは異なる構造を有してもよい。本明細書において、リテーナリング105の構造には、リテーナリング105の形状、材料、リテーナリング105の底面に形成された溝(後述する)の形状、本数が少なくとも含まれる。
【0045】
1段目の研磨と2段目の研磨とで研磨圧力を変更する場合、以下のような問題が起こる場合がある。高圧研磨では弾性膜103の変形量が大きくなったり、弾性膜103がねじれてしまったりして押圧力が均一にウェハにかからない場合がある。そこで、高圧研磨を実行する研磨ヘッドは、他の研磨ヘッドの弾性膜の硬度よりも高い硬度を有する弾性膜を使用することが望ましい。硬度の高い弾性膜は、変形しにくく、かつねじれにくいので、押圧力を均一にウェハに加えることができる。
【0046】
弾性膜103は、その下面にウェハを真空吸引するための穴を有している。具体的には、圧力室D3に真空を形成すると、ウェハは穴を通じて弾性膜103に吸引される。ウェハの研磨中に弾性膜103の変形やねじれが生じると、穴を通じて加圧流体が漏れることがある。加圧流体の漏洩が発生すると、弾性膜103はウェハを適正な押圧力で研磨することができない。結果として、研磨レートが低くなったり、研磨レートがウェハ面内でばらつき、研磨装置の生産性を非常に低下させることとなる。研磨中の弾性膜103からの加圧流体のリークを防ぐためにも、硬度の高い弾性膜103を使用することが効果的である。
【0047】
弾性膜103の硬度は、弾性膜103の縦方向の伸びにも影響する。このため、各研磨ヘッドで硬度の異なる弾性膜を使用すると、ウェハ周縁部の研磨プロファイルが異なることになる。一般に、高硬度の弾性膜を使用した場合、弾性膜のエッジ部が伸びにくくなる為にウェハの周縁部への押圧力が低下し、ウェハ周縁部の研磨レートを低下させることが可能となる。一方、比較的硬度の低い弾性膜を使用した場合には、弾性膜のエッジ部が伸びやすくなり、高硬度の弾性膜を用いた場合よりもウェハ周縁部への押圧力が増加する。したがって、硬度の低い弾性膜は、硬度の高い弾性膜に比べてウェハ周縁部の研磨レートを増加させることが可能である。
【0048】
硬度の低い弾性膜は、硬度の高い弾性膜に比べて伸びやすいために、圧力室に加圧流体を供給した時の圧力損失が小さい。したがって、低圧研磨の場合においては、硬度の低い弾性膜を使用することで、ウェハの円周方向に沿った研磨ばらつきが小さくなることがある。ここで、高圧研磨とは、概ね2psi(約140hPa)以上の圧力の加圧流体を用いて実施する研磨工程のことを言い、低圧研磨とは、概ね2psi(約140hPa)未満の圧力の加圧流体を用いて実施する研磨工程のことを言う。高硬度の弾性膜とは、ISO7619に準拠したタイプAのデュロメータで60ポイント以上の弾性膜を言い、低硬度の弾性膜とはタイプAのデュロメータで60ポイントよりも小さい弾性膜のことを言う。
【0049】
低圧研磨では、プロセス消耗品の組み合わせに基づいて、使用すべき弾性膜を選択することが好ましい。例えば、1段目の研磨ではウェハ周縁部が研磨されやすいプロセス消耗品を使用し、2段目の研磨ではウェハ周縁部が研磨されにくいプロセス消耗品を用いる場合には、1段目の研磨で高硬度の弾性膜を使用し、2段目の研磨で低硬度の弾性膜を使用することが好ましい。使用されるプロセス消耗品の組み合わせによっては、1段目の研磨に低硬度の弾性膜を使用し、2段目の研磨に高硬度の弾性膜を使用してもよい。プロセス消耗品の例としては、研磨パッド、研磨液、ドレッサなどが挙げられる。
【0050】
また、研磨前の初期の膜厚分布に基づいて、使用すべき弾性膜の硬度を選択してもよい。例えば、周縁部の初期膜厚が大きいウェハを研磨する場合には、1段目の研磨に低硬度の弾性膜を用いて、周縁部の研磨レートを上げ、2段目の研磨では高硬度の弾性膜を用いてウェハ周縁部の研磨レートを下げてもよい。
【0051】
次に、周壁形状が異なる弾性膜103の具体例について説明する。
図4は、伸び易い周壁形状を有する弾性膜103、または硬度の低い弾性膜103を用いて研磨した場合の研磨レート分布と、伸びにくい周壁形状を有する弾性膜103、または硬度の高い弾性膜103を用いて研磨した場合の研磨レート分布の例を示すグラフである。
図5は伸び易い周壁形状を有する弾性膜103の一例を示す断面図であり、
図6は伸びにくい周壁形状を有する弾性膜103の一例を示す断面図である。
【0052】
図5および
図6に示す弾性膜103は、最も外側の第1周壁103a−1、第1周壁103a−1の内側にある第2周壁103a−2、第2周壁103a−2の内側にある第3周壁103a−3、第3周壁103a−3の内側にある第4周壁103a−4、およびウェハに接触する円形の当接部111を有している。第1周壁103a−1と第2周壁103a−2との間には圧力室D4が形成され、第2周壁103a−2と第3周壁103a−3との間には圧力室D3が形成され、第3周壁103a−3と第4周壁103a−4との間には圧力室D2が形成されている。
図5および
図6に示される例では、弾性膜103の下面の穴は、圧力室D1の下に形成されている。
【0053】
図5および
図6の弾性膜103の具体的形状の違いとして、最も外側の第1周壁103a−1の厚みが挙げられる。第1周壁103a−1の厚さを増やすことにより、ウェハ周縁部の研磨レートが低い研磨プロファイルを実現することが可能である。例えば、
図5の第1周壁103a−1の厚みを0.5mm以上1.5mm以下とし、
図6の第1周壁103a−1の厚みを1.5mm以上4mm以下とすることが可能である。
【0054】
図5および
図6の弾性膜103のその他の違いは、第2周壁103a−2の接続位置である。すなわち、
図5に示す例では、第1周壁103a−1、第2周壁103a−2、第3周壁103a−3、および第4周壁103a−4はすべて当接部111に接続されているが、
図6に示す例では、第2周壁103a−2は第1周壁103a−1に接続され、第1周壁103a−1、第3周壁103a−3、および第4周壁103a−4は当接部111に接続されている。
図6に示す形状によれば、圧力室D4内の圧力を変えたときに、研磨レートは、
図5に示す形状に比べて、より狭い領域で変化する。
【0055】
このように
図5および
図6に示す弾性膜103では第2周壁103a−2の接続位置が異なるために、圧力室D4内の圧力変化に対して応答する領域が異なってくる。したがって、これらの弾性膜103を多段研磨で用いることにより種々の要求に応じた研磨特性を得ることが可能となる。例えば1段目の研磨では
図5の弾性膜103を用いて、圧力室D4の圧力を高くして比較的広い領域の研磨レートを増加させ、2段目の研磨では
図6の弾性膜103を用いて、圧力室D4の圧力を低くして比較的狭い領域の研磨レートを減少させる。1段目の研磨、2段目の研磨で用いられる弾性膜103を入れ替えたり、使用される圧力室D4の圧力を変更してもよい。
【0056】
次に、ウェハに接触する当接部111の厚さが異なる弾性膜103の具体例について説明する。
図7は、
図3に示す研磨ヘッドの弾性膜103のさらに変形例を示す断面図である。
図7に示す弾性膜103は、
図3に示す弾性膜103よりも厚い当接部111を有している。弾性膜103の当接部111の厚みを増加させることは弾性膜103の硬度を増加させる場合と類似の効果が得られる。すなわち、厚い当接部111は弾性膜103の変形やねじれを抑制することができる。特に、当接部111の厚い弾性膜103は、高圧研磨時の加圧流体の漏洩や不均一な押圧力を防止することができる。
【0057】
また、弾性膜103の当接部111の厚みが増加すると、ダンピング効果が大きくなるために研磨ヘッドや研磨装置の異音や振動を抑制することが可能となる。したがって、厚い当接部111を有する弾性膜103を高圧研磨で使用することで、研磨レートを増加させ、スループットを向上させることが可能となる。一方、当接部111が薄い弾性膜103は、ウェハと弾性膜103との間のシール性が向上するために、弾性膜103の当接部111に形成された穴からの加圧流体の漏洩を防止することが可能となる。一例として、当接部111が薄い弾性膜103は、当接部111の厚みが0.5mm以上1mm以下の弾性膜であり、当接部111が厚い弾性膜103は、当接部111の厚みが1mmより厚く4mm以下の弾性膜である。当接部111の一部の厚みを変えてもよい。例えば穴に連通する圧力室の部分を薄くし、その他の部分を厚くしてもよい。
【0058】
次に、ウェハを押圧する押圧面(ウェハ押圧面または基板押圧面)の面積が異なる弾性膜103の具体例について説明する。
図8、
図9、および
図10は、弾性膜103の押圧面の面積が異なる実施例を示している。
図8、
図9は弾性膜103の外径が互いに異なっており、
図10に示す弾性膜103は
図8に示す弾性膜103と外径は同じであるが、当接部111のエッジ部に段差が設けられており、
図8に示す弾性膜103に比べて押圧面が小さくなっている。弾性膜103の外径が小さいと一般にウェハ周縁部への押圧力が低下するため、ウェハ周縁部の研磨レートが低くなる。その逆に弾性膜103の外径が大きい場合はウェハ周縁部の研磨レートが高くなる。
【0059】
弾性膜103の外径が小さい場合、
図9に示すようにリテーナリング105と弾性膜103との隙間が増加する。この場合、ウェハを保持する弾性膜103の横方向の移動量が増加するために押圧力が不安定になる場合がある。これを避けるために
図10に示すように弾性膜103の外径は
図8に示す弾性膜103と同等に維持したまま押圧面を小さくすることが有効な場合がある。
【0060】
次に、当接部111のエッジ部の形状が異なる弾性膜103の具体例について説明する。
図11,
図12,
図13はウェハWを研磨パッド10に対して押し付ける当接部111のエッジ部の形状が異なる弾性膜103の実施例を示している。より具体的には、
図11は当接部111のエッジ部が略直角形状、
図12は当接部111のエッジ部が湾曲した形状、
図13は当接部111のエッジ部が傾斜した形状のものである。
図11に示す弾性膜103は、ウェハWの最外周に押圧力を与えることができるため、ウェハ周縁部の研磨レートを上げることができる。
図12や
図13に示す弾性膜103は、ウェハWの最外周とは非接触となるために、ウェハWの最外周にはウェハWへ押圧力が加えられない。したがって、
図11に示す弾性膜103を使用するときよりもウェハ周縁部の研磨レートを低くすることができる。
【0061】
次に、構造が異なるリテーナリング105の具体例について説明する。
図14に示すように、リテーナリング105の底面には、研磨液をリテーナリング105の外側から内側へ、および内側から外側へ移動させるための複数の溝107が形成されている。各溝107は、リテーナリング105の内周面から外周面まで延びている。溝107は、リテーナリング105の全周において等間隔に配列されている。
【0062】
図14に示す例では、溝107は、リテーナリング105の半径方向に延びている。
図15に示す溝107の数は、
図14に示す溝107の数と同じであるが、
図15に示す溝107は
図14に示す溝107よりも幅が広い。
図16に示す溝107の幅は、
図14に示す溝107の幅と同じであるが、
図16に示す溝107の数は
図14に示す溝107の数よりも多い。図示しないが、溝107の本数と幅の両方を変更してもよい。さらに、
図17及び
図18に示すように、溝107はリテーナリング105の半径方向に対して傾いてもよい。リテーナリング105の構造の違いには、溝107の本数、溝107の形状の違い、および溝107の有無も含まれる。
【0063】
図19は、径方向に幅の広いリテーナリング105を有した研磨ヘッドの断面図である。
図19に示すような幅の広いリテーナリング105を使用してもよい。
図20は、二重リテーナリングを有した研磨ヘッドを示す断面図である。
図20に示すリテーナリング105は、内側リテーナリング105Aと外側リテーナリング105Bとを含む。内側リテーナリング105Aは、内部に圧力室D5を形成する環状の弾性膜106に接続され、外側リテーナリング105Bは、内部に圧力室D6を形成する環状の弾性膜108に接続されている。外側リテーナリング105Bは、内側リテーナリング105Aを囲むように内側リテーナリング105Aの外側に配置されている。圧力室D5は、流体ラインG5に接続されており、圧力室D6は、流体ラインG6に接続されている。内側リテーナリング105Aまたは外側リテーナリング105Bは他の押圧方法で押圧されてもよい。
【0064】
図14乃至
図20に示されるようなリテーナリング105を使用することにより、研磨パッド10のリバウンド状態が変わり、結果として、ウェハ周縁部のプロファイルが変化し、さらにウェハ面に向かう研磨液の流れやウェハ面から離れる研磨液の流れが変化する。つまり、リテーナリング105の構造により、研磨結果が変わる場合がある。要求されるプロセス性能に基づいて、1段目の研磨と2段目の研磨で使用されるリテーナリング105を変更してもよい。
【0065】
通常、研磨パッド10は、不織布、発泡ポリウレタン、多孔質樹脂、非多孔質樹脂等から構成される。砥粒を保持した固定砥粒パッドが用いられる場合もある。発泡ポリウレタンよりも硬度の低い、不織布やスエードからなる研磨パッドは、リテーナリング105のエッジ部との接触により寿命が短くなることがある。このような場合には、溝107の数の少ないリテーナリング105、溝107のないリテーナリング105、または溝107の幅の小さいリテーナリング105を使用することが好ましい。これらのリテーナリング105は、研磨パッドとリテーナリング105のエッジ部との摩擦を低減することができるので、研磨パッドの寿命が延びる場合がある。
【0066】
さらに、
図21および
図22に示されるように、研磨パッド10に接触する外側エッジ部105aがテーパ形状、または湾曲形状になっているリテーナリング105を用いてもよい。この場合でも、リテーナリング105の外側エッジ部105aと研磨パッド10との摩擦が低減され、研磨パッド10の寿命が延長される。
【0067】
1段目の粗研磨では発泡ポリウレタンなどの比較的硬質材料からなる研磨パッドを用い、2段目の仕上げ研磨では1段目研磨で使用した研磨パッドよりも軟質の研磨パッドを使用してもよい。この場合に、2段目の仕上げ研磨では、1段目研磨で用いられるリテーナリング105とは異なる構造のリテーナリング105を用いることにより仕上げ研磨の研磨パッドの寿命を延ばすことが可能となる。2段目の仕上げ研磨で使用されるリテーナリング105の例としては、溝107の数の少ないリテーナリング、溝107のないリテーナリング、溝107の幅の小さいリテーナリング、研磨パッドに接触する外側エッジ部がテーパ形状のリテーナリング、または外側エッジ部が湾曲形状を有するリテーナリングが挙げられる。
【0068】
次に、異なる材料から構成されたリテーナリング105の具体例について説明する。リテーナリング105は、通常、研磨液の存在下で研磨パッド10と摺接するためにリテーナリング105の底面は徐々に減耗していく。また、リテーナリング105の摩耗粉が研磨中のウェハに異物として付着したり、ウェハ表面にスクラッチなどの傷をつける場合がある。したがって、砥粒が含まれた研磨液が用いられる場合には、耐摩耗性の高い材料からなるリテーナリング105を用いることが好ましい。砥粒が含まれない、または砥粒濃度が低い研磨液が用いられる場合には、ウェハへのスクラッチを防止するために柔らかい材料からなるリテーナリング105を用いることが好ましい。多段研磨で必要とされる様々な要求に対応するために、1段目研磨と2段目研磨で用いられるリテーナリング105の材料が異なることが有効な場合がある。リテーナリング105に用いられる材料の例としては、SiCなどのセラミック、PPS、PEEK、PTFE、PP、ポリカーボネート、ポリウレタン等や上述の樹脂材料の耐摩耗性を向上させるために充填材を添加したものなどが挙げられる。
【0069】
同一の研磨テーブルに複数種類の研磨ヘッドを配置した構成の研磨装置であれば、ある基板に対する1段目研磨と2段目研磨を同一の研磨面上の異なる構成の研磨ヘッドを使用して研磨を行うこともできる。
【0070】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。