【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0036】
Cuを30〜60質量%、Ruを2〜20質量%、貴金属(Pt、Au、Ag、Pd、Rh、Ir)を38〜68質量%含有するCu合金に対し、以下の実験を行った。
図1は、本実施例で使用した実験装置の概略を説明するための図である。実験装置10は、反応管102、反応管102を加熱するヒータ104、反応管102の内部温度を測定する熱電対106、反応管102の内部に設けられたアルミナ製ルツボ108を備えてなる。
【0037】
内径12mmの純度99.5%以上のアルミナ製ルツボ108の中に、前記のRuを含むCu合金(S1)を2g、純度99%以上の各種添加物質(S2)を所定量挿入し、アルゴンガス雰囲気中(流量300cc/分)、目的温度より100℃高い温度で1時間保持した後、目的温度に降温し、1時間加熱保持し均質化した。その後、試料を炉内から取り出し、アルゴンガスを吹き付けて10分以内に500℃以下まで急冷した。急冷後の試料を室温付近まで放冷し、アルミナ粉体(粒度:0.3μm)を研磨剤として用いたバフ研磨により鏡面研磨した後、光学顕微鏡とEPMA(日本電子(株)JXA−8500F)により、組織の観察および各相の定量分析を行い「均質さ」を評価した。
【0038】
EPMAの分析の際は、
図2に示すように、試料を鉛直方向で上部1〜3、中心部4〜6、下部7〜9の3つの領域および9つの箇所に対し、300μmのビーム範囲でそれぞれの領域の平均組成を求めた。また、必要に応じて、固相は1μmビーム径で、液相は100μmの範囲で分析した。
各種添加物質の添加量、目的温度およびEPMA分析の結果を下記表1に示す。なお表1で示す「添加量」とは、Cu合金(S1)に対する量である。また「均質さ」は、以下の評価基準で評価したものである。
○:上部、中心部、下部のRu含有量のばらつきがCu合金中2.0質量%未満
×:上部、中心部、下部のRu含有量のばらつきがCu合金中2.0質量%以上
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果から、以下の事項が明らかとなった。
(1)Fe(電解鉄)の添加
添加物質としてFe(電解鉄粉)を20〜50質量%添加し、1600℃で1時間保持した場合、Ruの均質化が確認できた。
図3(a)〜(c)は、Feを20質量%添加した場合の
図2で示す試料位置におけるEPMAのCOMP像を示す図である。
【0041】
図3(a)〜(c)において、Feを20質量%添加した試料では、試料下部に固相の偏析は観察されず、各元素濃度の試料位置による差は見られず、均質な合金となっていることが分かる。
【0042】
(2)Niの添加
添加物質としてNi粉を30〜50質量%添加し、1500℃または1600℃で1時間保持した場合、Ruの均質化が確認された。
【0043】
図4(a)〜(c)は、Niを40質量%添加し1500℃で保持した場合の
図2で示す試料位置におけるEPMAのCOMP像を示す図である。
【0044】
図4(a)〜(c)において、Niを40質量%添加した試料では、試料下部に固相は観察されず、試料位置による偏析は見られず、均質な合金となっていることが分かる。
【0045】
(3)Snの添加
比較添加物質として金属Snを10〜50質量%添加し、1500℃で1時間保持した場合、いずれの試料でも合金を均質化することができなかった。
図5(a)〜(c)は、Snを50質量%添加した場合の
図2で示す試料位置におけるEPMAのCOMP像を示す図である。
【0046】
図5(a)〜(c)において、試料の下部ではルテニウムの濃度が高く、また固相が確認された。10質量%および30質量%の試料においても同様に固相が観察され、Snの添加では、均質な合金が得られないことが分かった。
【0047】
(4)FeSiの添加
添加物質としてFeSiを12.5〜20質量%添加し、1500℃または1600℃で1時間保持した場合、Ruの均質化が確認された。
【0048】
図6(a)〜(c)は、FeSiを20質量%添加し1500℃で保持した場合の
図2で示す試料位置におけるEPMAのCOMP像を示す図である。
図6(a)〜(c)において、試料下部に固相は観察されず、試料位置による偏析は見られず、均質な合金となっていることが分かる。
【0049】
(5)Siの添加
添加物質としてSiを7.5質量%添加し、1600℃で1時間保持した場合、Ruの均質化が確認された。
図7(a)〜(c)は、Siを7.5質量%添加し1600℃で保持した場合の
図2で示す試料位置におけるEPMAのCOMP像を示す図である。
図7(a)〜(c)において、試料下部に固相は観察されず、試料位置による偏析は見られず、均質な合金となっていることが分かる。
【0050】
(6)Alの添加
比較添加物質としてAlを30質量%添加し、1300℃で1時間保持した場合、Cu合金を均質化できなかった。
図8(a)〜(c)は、Alを30質量%添加し1300℃で保持した場合の
図2で示す試料位置におけるEPMAのCOMP像を示す図である。
図8(a)〜(c)において、均質な合金が得られていないことが分かる。
【0051】
実施例のFeSiの12.5質量%添加により均質化され得られた均一溶融固体を、その体積の10倍量の王水により溶解させ、Cu、Ru、Fe、Siおよび貴金属(Pt、Au、Ag、Pd、Rh、Ir)の含有液体とした。均一溶融固体の液化率は93%と高い溶解率であった。液化されたルテニウムおよび貴金属は、溶媒抽出、還元による固液分離、電解や吸着剤による分離等の常法によりルテニウムおよび貴金属の各成分にそれぞれ分離され回収された。
【0052】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2014年2月12日付けで出願された日本特許出願(特願2014−024668)に基づいており、その全体が引用により援用される。