(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のサンプリングノズルを備えたサンプル分注機構を有する自動分析装置において、前記サンプル分注機構は、前記サンプリングノズル内の試料をセルに吐出する際に前記セルの底に前記先端部を接触させた状態で試料を吐出することを特徴とする自動分析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いわゆるCTSノズルにおいては、分注精度が確保できる構造であり、尚且つ以下2つの要素を考慮することが重要である。1つ目は、CTSノズルをゴム栓に挿入したときに発生するゴムの切り屑を低減できる構造であること。2つ目は、ノズルの寿命が長いことである。
【0007】
例えば、特許文献1のようにサンプル容器のゴム栓をCTSノズルで貫通し、内部のサンプルを分注するCTSでは、CTSノズルがゴム栓を挿抜したときにゴムの切り屑が発生することがある。ゴム栓から引き抜いたCTSノズルにゴムの切り屑が付着すると、ノズルの移動やサンプルの吐出などのタイミングで切り屑が装置上に落下する。落下した切り屑が、反応セル内のサンプルなどに混ざると検査精度に影響を与える虞があるため好ましくない。また、反応セル以外に落下した場合も装置を汚すため、CTSノズルを挿抜したときに発生するゴムの切り屑を低減することが望まれる。
【0008】
特許文献1のCTSノズルにおいてゴムの切り屑が発生し易い理由としては、円錐状テーパ角度16とカット角18との構造的なバランスが考慮されておらずCTSノズルをゴム栓に挿入したときの負荷がカット角18側の面に偏るためである。このため、カット角18側に偏ったゴム圧がかかる。偏ったゴム圧によりゴムとノズルとの摩擦力が挿入時に大きくなり、この結果ゴムが削られ易くなりゴムの切り屑が発生する。従い、特許文献1における構造のノズルは比較的ゴムの切り屑が発生し易い構造であるという課題があり、ゴムの切り屑の課題については何ら考慮されていない。
【0009】
また、自動分析装置のCTSノズルは、分注後にノズルの内部や外部を洗浄することで繰り返し使用され、1日に数千サンプルを取り扱うこともある。また、検査件数の増加に対応するため、ノズルを高速にゴム栓に挿抜する必要があり、ノズルの先端は次第に磨耗し、ゴム栓を切り開く性能は劣化していく。従い、ノズルの先端の摩耗がし難い構造のノズルが望まれる。
【0010】
一方、特許文献2や3のような先端がニードル形状のノズルでは、吸引口が側面にあるため吸引したサンプルを吐出するときに、サンプルの液切れが悪くなること(分注精度の悪化)やノズル内部の洗浄ムラが発生しやすくなるなどの別の本質的な課題がある。
【0011】
特に、特許文献3では、先端8の領域に力成分が半径方向に互いに打ち消すように、傾斜と面積が選択されることを開示している。ノズルの構造的なバランスが考慮されおりある程度の摩擦力の低減効果は期待できる構造である。しかしながら、面26は針先端に配置されておらず、真に針先端での構造的なバランスについては何ら考慮されていない。真に針先端での構造的なバランスが取られていない、つまり局所的な針先端において力の負荷分散が適切になされない場合には、僅かながら力の偏りが生じその結果として、挿入時に針が僅かながら傾いて挿入される。この結果として、垂直に挿入した場合に比べノズル先端の摩耗が生じ易い。これは、ゴムとノズルの摩擦力が大きくなる箇所が生じることになるため、ゴムの切り屑が発生し易いことにも繋がる。
【0012】
特許文献4では、ゴム栓を開口するための専用の針やそれを上下駆動するための機構が必要となるため、装置が複雑になりコストが増える。
【0013】
上記のように、これまでのCTSノズルは、分注精度が確保できる構造であって、ゴムの切り屑を低減できること、かつ、ノズルの寿命が比較的長いこと、の両方を充分満足できる構造のノズルが見当たらなかった。そして、将来的なゴム栓へのノズルの挿入速度の高速化は、これらの課題を顕在化させるためこれらの課題を同時に解決することを発明者は考えた。発明者は鋭意検討に努めた結果、実施例に開示する構造のCTSノズルを発明するに至った。
【0014】
そこで、本発明では繰り返し使用に耐え切り屑の発生が少ないCTSノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の代表的なものを挙げると以下のとおりである。
【0016】
本発明は、ゴム付きのサンプリング容器を貫通し内部のサンプルを吸引する円筒形のサンプリングノズルにおいて、サンプルを吸引するための開口部を含み、前記サンプリングノズルの長さ方向に延在する中空部と、前記中空部が配置された管の端部に備えられ、前記開口部を取り囲む平面を有する第1の面と、前記第1の面の反対方向に備えられた第2の面と、前記第1の面と前記第2の面の交線で形成された前記サンプリングノズルの先端部と、を備え、前記中空部は前記先端部付近で屈曲せずに前記開口部を含み、前記第2の面は、前記円筒形の円周方向に湾曲し、前記長さ方向に対して直線的に傾斜する曲面を有し、前記第2の面の前記サンプリングノズルの根元側の端部と前記先端部の距離は、前記第1の面の前記サンプリングノズルの根元側の端部と前記先端部の距離よりも短いサンプリングノズルである。
【0017】
本発明のサンプリングノズル(CTSノズル)では、真の針先端となるノズル先端部に2面の切削面(以下、切断面や面とも言う)を設けることで、ノズルをゴム栓に挿入したときにゴムから受ける圧力(ノズルがゴムに押し付けられる力)がノズルの片面に偏らず、ノズルの2面(第1の面と第2の面)に分散する。ゴムから受ける圧力が分散することで、ノズルの切削面がゴムに押し付けられる力は小さくなり、ノズルの切削面とゴムの摩擦によって発生していたゴムの切り屑の発生を低減できる。また、ゴムとの摩擦が低減することで、ノズル先端部の磨耗が抑えられる。
【0018】
また、製造方法においては、本発明は、(a)長さ方向に延在する中空部を有する管を準備する工程と、(b)前記管の軸に軸対照な曲面であって、前記中空部を屈曲させることなく、前記管の先端に前記円筒形の円周方向に湾曲し、前記長さ方向に対して直線的に傾斜する曲面を形成する工程と、(c)前記曲面上の点と、前記曲面が配置された箇所よりも前記管の根元側の点とを通過する平面で直線的に加工し、前記中空部を取り囲む面、かつ、前記曲面との交線で前記サンプリングノズルの先端部を形成する工程と、を有する。
【0019】
以上のように、ノズル先端部に上記の第1と第2の面に相当する2面の切削面を設けることでゴムの切り屑の発生を抑え、ゴムの摩擦によって磨耗していたノズルのカット面の寿命を延ばすことを可能とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ゴム栓を貫通して内部のサンプルを直接吸引するCTSに対応した自動分析装置で、CTSノズルをゴム栓に挿抜したときに発生するゴムの切り屑を低減し、ノズル寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1から
図9を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の自動分析装置の構成を示す図である。自動分析装置10は、試薬容器11を複数搭載する試薬ディスク12と、試薬とサンプルを混ぜ合わせて反応を測定する反応ディスク13と、試薬の吸引や吐出を行う試薬用分注機構14と、サンプルの吸引や吐出を行うサンプル分注機構15から構成される。試薬用分注機構14は試薬分注用の試薬用ノズル21を備え、サンプル分注機構15はサンプル分注用のCTSノズル22を備える。装置に投入されたサンプルは、ゴム栓23で閉栓されたサンプル容器(試験管)24に封入された状態で、ラック25に搭載されて搬送される。ラック25には複数のサンプル容器24が搭載される。なお、サンプルは血清や全血などの血液由来のサンプル又は尿などである。
【0024】
サンプル分注機構15は、CTSノズル22を、サンプル容器24からサンプル吸引を行う吸引位置、セル28に吐出を行う吐出位置、および、CTSノズル22の先端を洗浄する洗浄槽20がある洗浄位置へ移動させる。さらに、サンプル分注機構15は、吸引位置、吐出位置、および、洗浄位置ではサンプル容器24、反応セル13、洗浄槽20の高さの夫々合わせて、CTSノズル22を下降させる。サンプル容器24での下降動作では、CTSノズル22をサンプル容器24のゴム栓23に貫通させ、サンプル容器24内にあるサンプルにCTSノズル22先端を入れてサンプル吸引が行われる。前述の通りゴム栓23を取り外すことなく、CTSノズル22でゴム栓23を貫通させて直接分注を行うため、CTSノズル22の先端部は、ゴム栓23を貫くために先鋭である。
【0025】
以上のような動作を行うため、サンプル分注機構15は上下左右にCTSノズル22を移動できる構成となっている。また、CTSノズル22は1つのサンプルを分注したあとで洗浄されて、別のサンプルを同じCTSノズル22で分注する。このようにCTSノズル22は繰り返し分注に使用される。
【0026】
サンプル吸引が行われた後、セル28にサンプルが吐出され、セル28内でサンプルと試薬の混合液を光学的に測定することにより、サンプルに含まれる所定成分の濃度等を算出することができる。自動分析装置の分析の詳細については公知であるためここでの詳細な説明は省略する。
【0027】
図2は一般的なCTSノズルの先端部の断面図(a)と外観図(b)の一例である。一般的なCTSノズル200は、内部が中空の金属製の管でできており、先端部分を斜めにカットすることでカット面201を有し先端が鋭利になっている。CTSノズル200の先端部には、先端カットによって楕円状の開口部202があり、開口部202からサンプルの吸引や吐出を行う。また、CTSノズル200の根元側には配管と接続する部分(図示せず)があり、中空部203は水で充填された配管とつながり、さらに配管にはポンプ(図示せず)がつながる。CTSノズル200の中空部203内の圧力は、ポンプの動作によって変化できるので、CTSノズル200でサンプルの吸引や吐出が行える。
【0028】
前述の通り、ノズルは繰り返しゴム栓に貫通させ使用するため、CTSノズル200の先端部204は鋭利過ぎると肉厚が薄くなり欠けやすくなる。そのため、先端部204にはある程度の肉厚が必要であり、特に高速に繰り返しゴム栓23に挿入する装置に搭載するCTSノズル200の先端は1回のみ使用する注射針に比べると鋭角になっていない。
【0029】
図3は一般的なCTSノズル200をゴム栓23に挿入したときの断面図である。CTSノズル200の先端部204がゴム栓23を切断し、斜めにカットされたカット面201がゴムを押しのけて、ゴム栓23の切断部分を押し広げながらCTSノズル200はゴム内を通過する。カット面201が押しのけたゴムは、ゴムの復元力によってカット面201へゴムの圧力を与えることになる。しかし、CTSノズル200は、カット面201が片側にあるため、ゴムの変形はカット面201側が大きく、ゴムから受ける圧力はCTSノズル200のカット面201側に偏ることになる。そのため、ゴム栓23の切断面とカット面201の間には大きな摩擦力が発生する。さらに、通常CTSノズル200のカット面201は、レーザ加工機などで切断されるが、CTSノズル200の側面に比べると表面が粗く、ゴム栓23との摩擦でゴムの切り屑が発生しやすい。また、前述のような摩擦力のためCTSノズル200はゴムに対して傾いて挿入される傾向にある。
【0030】
図4は
図3(CTSノズル200)とは別のCTSノズル400の例である。例えば、特許文献1のように円錐状テーパが設けられたノズルである(特許文献1の円錐状テーパ角度16で得られるテーパ)。図は夫々、CTSノズルの先端部の断面図(a)、側面から見た外観図(b)、開口部から見た外観図(c)、斜視図(d)である。
【0031】
CTSノズル400は、内部が中空の金属製の管の先端部にテーパ401を設け、さらに先端を斜めに切断することでカット面402を有し先端403が鋭利になっている。先端部にテーパ401を設けることで、ゴムを通過する際の荷重は低減できるが、テーパ長が短いとノズル挿入によってゴムが急激な変化をし、ノズルには強いゴム圧がかかり挿入荷重の増加とゴムの切り屑が発生する。そのため、CTSノズル400のような形状では、テーパ端404を少なくとも先端カット端405よりノズルの根元側の位置としテーパ角度を小さくする必要がある。しかし、テーパ角を小さくしたとき(テーパ長を長くしたとき)、CTSノズル400の先端は、CTS200と同様にゴムはノズルのカット面402側に偏ってあたることで切り屑が発生する。また、CTSノズル400は、先端部全体にテーパ401があるため、先端の肉厚は全体的に薄くなり、繰り返しの使用で欠けやすくなる。
【0032】
図5は本発明のCTSノズル形状の一例である。CTSノズル22は、根元側ストレート部501の外径がφ1.6mmで、先端側ストレート部502(先端から3.5mm)の外径がφ0.8mmで、根元側ストレート部501と先端側ストレート部502との間に中間テーパ部503があり、さらに先端側ストレート部502より先端側に先端側テーパ部504を有し、内部にストレートの中空部505を有する(
図5(a))。中空部505は、CTSノズルの長さ方向に延在する。図では、断面図(b)、外観図(c)、(d)を示している。なお、根元側ストレート部501は円筒形であり、先端側ストレート部502はテーパ箇所を除き円筒形である。従い、サンプリングノズルの基本的な形状は円筒形である。ここで、本明細書ではストレート部とは、その断面において外面と断面の向かい合う線同士が略平行な円筒形を意味する。また、ストレートの中空部とは、その断面において中空部と管との向かい合う境界線が略平行な円筒形の空洞であることを意味する。
【0033】
なお、CTSノズル22の根元側には、一般のCTSノズル200と同様に配管に接続され、ポンプの動作によって、サンプルの吸引や吐出が行える。
【0034】
ゴム栓23にCTSノズル22を挿入するとき、一般のCTSノズル200の例で前述したとおり変形したゴムの復元力がCTSノズル22に圧力として作用する。CTSノズル22を搭載したサンプル分注機構15は、高速(90mm/s〜300mm/s)にゴム栓23にCTSノズル22を挿入するが、テーパ部503の長さが短いとゴムは急激な変形が必要となり、CTSノズルに作用する圧力が増大することで挿入時の荷重は増大する。そのため、テーパ部503の長さはできるだけ長くすることが望ましく、例えば20mm以上とすることが好ましい。
【0035】
また、本発明のCTSノズル22の先端には、前述の通り先端側テーパ部504があり、先端ストレート部502の先端を、切断面508と先端側テーパ部504の切削面を夫々斜めに削ることで、CTSノズル22の先端部506は鋭利となっている((b)参照)。切断面508は、開口部507を楕円状とする切断面である。切断面508は、中空部が配置された管の端部に備えられ、開口部507を取り囲む平面を有するカット面(第1の面)である。また、先端側テーパ部504は、このカット面の反対側に備えられたテーパ部(第2の面)である。そして、先端部506は、切断面508(第1の面)と先端側テーパ部504(第2の面)の交線で形成されている先端部である。なお、符号508は特に管を切断する面であるため切断面と称しているが切削面と同義であり単に切削面と言う場合もある。
【0036】
また、中空部505はサンプルを吸引するための開口部507を含み、分注精度の悪化を防ぐため、先端部付近で屈曲していない。
【0037】
CTSノズル22の先端部506の角度は、切断面508の切断角度と先端側テーパ部504の角度によって決まり、27.5度付近が望ましい(角度の詳細については後述する)。
【0038】
CTSノズル22の切断面508は、例えばレーザ加工機などの切断機で切断するが、切削面の淵509には角ができる。切削面に角のある状態でCTSノズル22をゴム栓23に挿入すると切削面の淵509がゴムを削りゴムの切り屑を発生するため、切削面の淵の部分を丸める加工(例えばブラスト研磨など)を行うことが好ましい。
【0039】
また、CTSノズル22の開口部の根元側の淵509が鋭角であると、ゴム栓23に挿入したときに先端部506と同様にゴムに対して刃として作用するため、CTSノズル22の開口部507内に入ってきたゴムをCTSノズルの根元側の淵509で切断し、CTSノズル22の中空部505を詰まらせてしまう。ゴム栓23の切り屑の詰まり防止のためにも、CTSノズル22の切削面の淵を丸める加工を行うことが好ましい。
【0040】
本発明では、先端側テーパ部504(第2の面)を設けたことが特徴であるため、これについて
図6を用いて説明する。
【0041】
図6は本発明のCTSノズル形状の一例の補足図である。CTSノズルを開口部507から見た図(a)と要部斜視図の拡大図である(b)。
【0042】
まず本発明に係るCTSノズルの1点目の特徴は、先端側テーパ部504となる切削面の根元側の端部の位置である。
図5(a)、(b)、(d)および
図6(b)で示すようにこの端部は比較的先端側に位置付けられていることが分かる。この端部を境に先端に向かって肉厚が薄くなるためこの端部は先端に近づけている。肉厚部分が薄くなる部分の長さが短くできるため強度の面でメリットがある。従いこの構成はノズル寿命の長期化に寄与する。少なくともこの端部は切断面508の端部よりも先端側に近づけることが重要であり、構成上の特徴として、先端側テーパ部504(第2の面)のCTSノズルの根元側端部と先端部との距離は、切断面508(第1の面)のCTSノズルの根元側の端部と先端部との距離よりも短い。なお、この距離は傾斜した面上の距離ではなく軸方向の距離を比較することを意味する。
【0043】
次に2点目の特徴は、先端部506を形成する先端側テーパ部504における円筒形の円周方向に対して湾曲した曲面である。
図6(a)で示すように先端側テーパ部504が円周方向に対して曲面であることが分かる。肉厚が薄くなっている部分が曲面であるため先端側テーパ部が平面である場合に比べ切断面508側から受ける力を分散し易く先端が欠けにくい構造となっている。また、曲面とすることで表面積を大きくでき曲面側で受ける力を大きくすることができ、切断面508と先端側テーパ部504とにかかる力において適度なバランスを確保することができる。
【0044】
また、本発明のCTSノズル22は先端側テーパ部504が曲面であるため、CTSノズル22の先端506には幅が広い刃が構成できる。CTSノズル22をゴム栓23に貫通したときは、CTSノズル22が通過した部分のゴムはCTSノズル22の根元径(本実施例では1.6mm)以上の大きさに押し広げることになるが、先端506の幅が広いことでゴム栓23に大きな切り口が開けられ、ゴムを小さい力で押し広げられる。特に本発明のCTSノズル22の形状においては、ストレート部502の外径幅と同じ幅に先端部506の刃となる部分を持つことで、ストレート部502がゴムを通過するときにはわずかな力で挿入でき、その後のテーパ部503がゴムを通過するときにゴムを緩やかに押し広げ、最後に最も外径が太い根元側ストレート部501が通過することになり、ゴムが無理に押し広げられないことで、ゴムの切り屑の発生を減らすことができる。
【0045】
また、3点目の特徴は、先端側テーパ部504がCTSノズルの長さ方向に対して直線的に傾斜していることである。
図5(a)、(b)、(d)および
図6(b)で示すように長さ方向に対して直線的に傾斜していることが分かる。切断面508も長さ方向に対して直線的に傾斜する面であることから、ゴム圧を均等に分散し易くなりノズルが斜めに挿入することを防ぐことができる。斜めに挿入することが防げることで、ゴムの切り屑を低減でき、ノズルの長寿命化に寄与する。例えば、先端側テーパ部504が直線的に傾斜していないとすると、ゴム圧を受ける面の角度が、ノズルがゴムに挿入される深さによって変わり安定しないので、ノズルが僅かに斜めに挿入される傾向がある。特に本発明のノズルと同タイプの吸引口が真下にある構造では先端部がノズルの肉厚部近傍に偏って配置されているため先端部がノズル中心付近に配置されている特許文献2や3のノズルと比較し、ゴムに挿入された直後のゴム圧の分散バランスの不安定さがノズル挿入の垂直性に大きな影響を与える。従い、先端側テーパ部504は円周方向に対しては曲面でありつつも長さ方向に対しては直線的に傾斜していることが重要である。
【0046】
これらの3点の特徴を備えることにより、CTSノズルの強度の他、ゴム栓に挿抜したときに発生するゴムの切り屑を低減し、かつノズル寿命を延ばすことができる。
【0047】
また、上記3点が本発明に係るCTSノズルの特徴であるが、好ましくは以下の構成をとすることが望ましい。
【0048】
まず、切断面508の傾斜角が先端側テーパ部504の傾斜角よりも大きいことである。これについては
図8で詳細を述べる。
【0049】
また、ストレート部502の側面から先端部506までの距離510と、中空部505の端から先端部506までの距離511を定義したとき、刃となる先端部506の位置は、距離510が距離511より大きくなるように選択することが望ましい。言い換えると、開口部507側から見たときに、先端部506は、ノズルの肉厚範囲内に位置付けられ、先端部は肉厚範囲内の外側よりも開口部507側に近い位置に位置付けられている。これについても後述する。
【0050】
また、先端テーパ部504と切断面508の面積との差で力分散のバランスを確保することが望ましい。これについても後述する。
【0051】
また、
図5で示したように、根元側ストレート部と、根元側ストレート部よりも外径の小さい先端側ストレート部と、根元側ストレート部と先端側ストレート部との間に配置されたテーパ部とを備え、先端部は先端側ストレート部の先端に配置されていることが望ましい。
【0052】
また、根元側ストレート部、先端側ストレート部、テーパ部、先端部は互いに溶接されることなく同一の部材であることが望ましい。
【0053】
図7は本発明のCTSノズルをゴム栓23に挿入したときの断面図である。本発明のCTSノズル22をゴム栓23に挿入すると、先端部506がゴムを切断し、CTSノズル22の通過によってゴムは先端側テーパ部504とノズル先端の切断面508の2面でそれぞれの方向にゴムを押しのけて、切断部分を押し広げながらCTSノズル22は通過する。CTSノズル22がゴム栓23を通過するとき、ゴムの復元力によって先端側テーパ部504とノズル先端の切断面508はゴムから圧力を受けるが、CTSノズル22の先端が複数方向にゴムを押しのけるため、ゴムからの圧力は分散する。また、図示する左右2方向のみならず、先端側テーパ部の曲面により図右側の矢印は紙面の手前や奥方向に対してもゴムを押しのけることができる。そのため、切断面508とゴム栓23との間の摩擦力は、一般的なCTSノズル200に比べ低くなり、CTSノズルの切削面とゴムの摩擦によって発生していたゴムの切り屑の発生を低減できる。
【0054】
さらに、CTSノズル22の先端に2面の切削面(504と508)を設けることで、ゴム栓23に挿入したときにゴムから受ける圧力が偏り難いため、ノズルが斜めに挿入されることを防ぎゴム栓23に垂直に挿入できる。特に、真に先端部での構造的なバランスが確保できるためノズルが斜めに挿入されることを防ぐことができる。また、ゴムから受ける圧力が分散することで、CTSノズル22の切断面508は、ゴムとの摩擦が低減され、切断面508の磨耗が抑えられる。
【0055】
また、前述したように、先端側テーパ部504は
図8の断面図において直線的な形状であることも重要である。切断面508が直線的な形状であり裏面の先端側テーパ部504も直線であることで、ノズル先端の挿入時に安定してゴム圧を均等に分散しやすくなりノズルが斜めに挿入することを防ぐことができる。
【0056】
ここで、切断面508の形状について説明する。切断面508(第1のテーパ部)は開口部507を取り囲む平面である。この開口部507は管に対して斜めに切断されて形成された箇所であるため楕円形状である。仮に先端側テーパ部504が無ければ切断面508の外周は均等な肉厚を斜めに切削されているため楕円形状であるが、先端側テーパ部504が形成されているため切断面508は開口部507の長径方向において僅かに削られている。すなわち切断面508の平面は開口部507の長径方向において先端部側の方が根元側よりも短くなっている。ここでの長短は切断面508の平面上の長さを比較しているが、
図6(a)の向きにおいても符号510の箇所が削られており符号511の箇所が残されていることからこの長短関係を把握することができる。また、
図5(c)において根元側の肉厚の切断面508が幅広になっていることからもこの関係を把握することができる。
【0057】
また、前述のようなゴム圧の分散効果を好適に得るため、先端側テーパ部504の面積とノズル先端の切断面508の刃として機能している部分の面積(
図6においてノズル中心からノズル先端506の部分、以降ノズル先端の切断面512と呼ぶ)が同等程度であることが好ましい。ゴム栓23に挿入直後のゴム圧のバランスを適切に確保することがノズルの斜め挿入を効果的に防ぐことができるためである。例えば、これらの面積の差を0.1mm
2以内に抑えることが望ましい。
【0058】
言い換えると、開口部507の楕円形状の短径を境として略同心楕円形状の切断面508は根元側と先端部側とに2分割することができ、この先端部側に分割された面積と、先端側テーパ部504の面積との差を0.1mm
2以内に抑えることが望ましい。なお、切断面508の根元側の面積によりゴム圧のバランスの偏りが生じることになるがある程度の深さまでノズルが挿入されていることによりノズルの斜め挿入への影響は無視することができる。また、先に述べたように、先端側テーパ部504(第2の面)が円周方向に曲面であるため、CTSノズル22の先端506には幅が広い湾曲した刃が構成でき、ゴムを小さい力で押し広げることができるため、ノズルの斜め挿入への影響を無視できる程度に抑えることができる。
【0059】
図8は本発明のCTSノズル22における切削部の角度の定義を示す図である。本発明のCTSノズル22は前述の通り、ノズル先端506の部分に先端側テーパ部504とノズル先端の切断面508があり、CTSノズル22の断面図において切断部508の直線とCTSノズル22の中心線の間の角度(傾斜角)を角度A(801)と定義し、先端側テーパ部504の直線とCTSノズル22の中心線の間の角度(傾斜角)を角度B(802)と定義し、CTSノズル22の先端角度を角度C(803)と定義する。角度C(803)は、角度A(801)と角度B(802)を足し合わせた角度である。また、CTSノズル22の先端から切断面508の端までの長さをLa(804)、CTSノズル22の先端から先端側テーパ部504(第2の面)の端までの長さをLb(805)と定義する。
【0060】
CTSノズル22の先端部506は、前述の通りゴムを押しのけて、切断面504への圧力を低減し切り屑の発生を低減する効果があるが、切り屑の発生には切断面504との摩擦以外にも影響する因子がある。例えば、CTSノズル22の詰まりの原因となる開口部の根元側の淵509の部分が鋭角であるためにゴムを削ることで切り屑が発生する場合や、CTSノズル22の先端部506が鈍角であるために切断性能が低くなり、CTSノズル22の先端部506がゴムを押しつぶしながら切断し切り口を荒らして切り屑を発生する場合がある。つまり、切り屑の発生には、角度A(801)や角度C(803)も関係する。
【0061】
表1に角度A(801)と角度B(802)の組み合わせを変えて作ったCTSノズル22を使い、ゴム栓23に挿抜を行ったときの切り屑の発生率を示す。
【0063】
一定速度(150mm/s)で直動できる機構に表1記載の各条件のCTSノズル22を固定して、CTSノズル22の進行方向にはゴム栓23の付いた状態のサンプル容器24を固定して、CTSノズル22を一定速度でゴム栓23に挿抜し、CTSノズル22に付着した切り屑の有無を確認した。表1から、CTSノズル22の先端角度C(803)が27.0度と28.5度の条件においてゴムの切り屑の付着はなかった。表1の結果から角度A(801)が15.0度、角度B(802)が12.5度、角度C(803)は27.5度(角度A(801)が15.0度、角度B(802)が12.5度)のCTSノズル22を作り、ゴム栓23に挿抜を行い切り屑の付着を確認したところ、表1の条件5および条件6と同じく切り屑の付着はなかった。
【0064】
以上の結果から、切り屑の低減に対して、先端角度C(803)を25.5度より大きく30.0度未満の範囲の角度とすることが望ましいことが分かる。さらに望ましい範囲は26.0度以上29.5度以下の範囲であることが望ましい。さらに望ましい範囲は26.5度以上29.0以下の範囲であり、さらに望ましい範囲は27.0度以上28.5度以下の範囲である。
【0065】
次に、表面積について確認した。角度A(801)を9.0〜18.0度の範囲で変更したときノズル先端の切断面512の表面積は0.39〜0.97mm
2(角度が小さく方が表面積は大きくなる)となり、角度B(802)を12.0〜15.0度の範囲で変更したとき先端側テーパ部504の表面積は0.36〜0.44mm
2(角度が小さく方が表面積は小さくなる)となる。前述の通り、ゴム圧の分散効果を好適に得るため、ノズル先端の切断面512と先端側テーパ部504の表面積は同程度であることが好ましいが、先端角度C(803)は鋭角である方がゴムの切断性能が高まることから、表1の結果から先端角度C803は30.0度未満の範囲が望ましい。本発明の構成によれば、ノズル先端の切断面512と先端側テーパ部504の角度の調整で先端角度C803を調整可能である。
【0066】
角度A(801)を15度とするとノズル先端の切断面512の表面積は0.44mm
2で、角度B(802)を12.5度とすると0.38mm
2で、両面の表面積は同等で先端の角度Cは27.5度と29.5度以下となる。また両面積の差は0.06mm
2である。この差は限りなく同等であることが望ましいが、0.1mm
2以下であればこの差は許容できる。これは角度C(803)を変更せずともCTSノズルの肉厚に依存する値であるため肉厚の厚さを決めるのに有効な指標となる。
【0067】
さらに、CTSノズル22をゴムに挿入したときには、先端側テーパ部504とノズル先端の切断面512のそれぞれの表面積と角度によってゴムの分散化効果が決まる。そのため、角度A(801)と角度B(802)が近い角度で、かつ切断面512と先端側テーパ部504の表面積が近い値となることが好ましい。以上のような条件を満たすには、先端側テーパ部504の位置は、ノズルの開口部507の根元側の端よりも先端側にあり、Lb(805)はLa(804)よりも小さい値となる。なお、先端側テーパ部504は先端に位置付けられるものであり、先端側テーパ部504の根元側の端部は開口部507の楕円中心(開口部の楕円とノズルの中心軸との交点)よりも先端側に位置付けられることが望ましい。
【0068】
また、先端側テーパ部504の表面積を確保するために、ストレート部502の側面から先端部506までの距離510と、中空部505の端から先端部506までの距離511は、距離510が距離511より大きくなるように選択することが望ましい(
図6(a)参照)。さらに、ノズル先端506は、前述の通り肉厚が薄いと繰り返し使用により磨耗が進行するため、Lb(805)の長さを短くし肉厚を確保することが好ましい。以上により、本発明のCTSノズル22では、Lb(805)がLa(804)よりも短く、角度A(801)を15.0度、角度B(802)を12.0度以上15.0度未満の範囲とすることが望ましい。従い先述のように角度A(801)は角度B(802)よりも大きいことが望ましい。
【0069】
また、前記の3つの特徴点を備えたCTSノズルは例えば90mm/s以上の高速でゴム栓23に挿入される分注動作に対して特に効果があり、さらには
図8で説明したような具体的な構造を備えていることが望ましい。低速の場合にはゴムとノズルとの摩擦力が小さいためゴム屑の課題が生じ難いためである。なお、望ましくは100mm/s以上で用いられる場合や150mm/s以上で用いられる場合等、速ければ速い程、摩擦力の影響が大きくなるためこれらの速度以上で用いられることでより効果が得られる。
【0070】
また、CTSノズル22においては、
図5で示したようにCTSノズル22の先端部に先端側テーパ部504(および切断面512)、ストレート部502、テーパ部503、ストレート部501を有することが望ましい。これにより、ゴムを鋭角である先端506で切断し、その後先端側テーパ部504と切断面512がゴムを分散し、テーパ部503がゴムを緩やかに押し広げる。CTSノズル22をサンプル分注機構15に搭載することで、ゴム栓23の挿抜時に発生するゴムの切り屑を少なくし、さらにCTSノズル22の先端磨耗を抑えることで交換期間を長くすることができる。
【0071】
また、試料の微量分注ではセル28に先端を接触させた状態で試料を吐出する場合がある。先端側テーパ部504で切削されていることにより切削面508側から見た切削面508先端は比較的緩やかな曲線となっている(
図5(c)の先端参照)。先端の曲線が緩やかであれば先端接触時に相対的に広い範囲でセル底と接触できるため本発明のCTSノズルは先端を接触させた状態で試料を吐出する場合に適している。広い範囲でセル底と接触できると吐出する液玉のセル底との接触面積を大きくすることができ、試料である液玉のノズル先端への持ち帰りを適切に防ぎ、セル底への微量分注を行い易くすることができる。従い、自動分析装置の構成としてサンプル分注機構を備え、このサンプル分注機構は、CTSノズル内の試料をセルに吐出する際にセルの底に先端部を接触させた状態で試料を吐出することが望ましい。
【0072】
次にCTSノズルの製造方法について説明する。
【0073】
図9は本発明のCTSノズル形状を製作する方法の一例である。本発明のCTSノズル22は、一般的なCTSノズル200と同様に金属製の管を加工して製作し、例えばステンレス鋼材の中空管(内径φ0.4mm)を用いる。ストレートの中空部505を有するストレート管901(
図9(a))は単一の部品であり、ストレート管901を旋盤などの切削機械を用いて切削加工902を行うことで、先端側テーパ部504と、先端ストレート部502と、根元テーパ部503と、根元ストレート部501に形成される(
図9(b)、(c))。なお、この加工は管を軸中心に回転させながら切削加工するためどの向きから見てもこの形状である。この先端側テーパ部504について、この加工によりテーパ角や面形状が決まる。つまり2点目と3点目の特徴点を考慮した加工が必要となる。この先端側テーパ部となる先端の形状は円筒形の円周方向に対して湾曲し長さ方向に対して直線的に傾斜する面である。なお、この時点では回転させながら切削加工しているため要部曲面は円錐形の一部の曲面を有している。
【0074】
次に、
図9(c)の形状に対し、さらに、切断機(例えばレーザ加工機)で切断加工903を行うことで
図5(a)に示した本発明のCTSノズル22を製作することができる。ここでは1点目の特徴を考慮した加工が必要となる。つまり、この切断加工903では、先端側テーパ部504より根元側を切削端部とし、他方の切削端部は先端側テーパ部の傾斜面の途中に設ける。切削加工902と切断加工903の加工角度によってノズル先端506の位置(510と511)やノズル先端506の刃角を決定できる。以上のような工程においては、CTSノズル22の形状を製造する上で加工が単純であるためばらつきが少なく、さらに低コストで製造が可能である。なお、根元ストレート部501を別部材として溶接することも可能であるがこのように単一部材から切り出して製造することが望ましい。
【0075】
図9の製造工程の要点を言い換えると以下のとおりである。まず、長さ方向に延在する中空部を有する管を準備する。次に、管の軸に軸対照な曲面であって、管の先端に円筒形の円周方向に切削する。これにより、円周方向に湾曲し、かつ長さ方向に対して直線的に傾斜する曲面が形成される。なお、軸対照な曲面とは円錐形の底面近くの曲面の一部であり、この切削は中空部を屈曲させない状態で行われる。次に、この曲面上の点と、この曲面が配置された箇所よりも管の根元側(CTSノズルとなったときの根元側)の点とを通過する平面、つまり切断線903で直線的に加工し、中空部を取り囲む面、かつ、(平面と)この曲面との交線で前記サンプリングノズルの先端部を形成する。すなわち、先端部は、管の先端をテ―パ加工した形状に対して、斜め方向に加工して一部を取り除いた残りの部分から構成されている。
【0076】
また望ましくは、曲面を切削する工程は、根元側ストレート部501よりも外径の小さい先端側ストレート部502と、これらの間の根元側テーパ部503とを形成する工程を含み、この曲面を切削する工程は、先端側ストレート部502の先端を切削する工程を含む。また望ましくは、前述のように切断面の淵の部分を丸める加工(例えばブラスト研磨など)を行うことが好ましいため、中空部を取り囲む面と中空部で挟まれた管の鋭角部を丸める工程を含む。
【0077】
なお、本発明のCTSノズルにおいては、前述の特徴点以外にも望ましい形状を有するが先端部を形成するための曲面と平面の加工位置や加工角度を調節することで当業者であれば容易に製造方法も特定できる。例えば、先端部の位置が肉厚範囲内の外側よりも開口部側に近い位置に位置付ける場合には、前述の切削面508を形成するための加工面に含まれる曲面上の点の位置を調節すればよい。また、先端部の角度を26.0度以上29.5度以下とするためには夫々の面のテーパ角を調整すればよい。
【0078】
また、先端部においては他の面で切削して複雑な先端形状とするのではなく曲面と平面の2面で形成されることがコストの面から望ましい。
【0079】
実施例で示したCTSノズル22の諸寸法は一例であり、テーパ部の長さ、および材質は、ノズル先端の2面の切削面によるゴムの切り屑の低減効果や磨耗抑制効果には影響せず、本発明の実施形態を拘束するものではない。