(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上流側シール部材が、一の面の外周側に厚肉の部として形成される上流側Oリング保持部と、前記一の面側を他の面側に押し出すように前記他の面上に立設され、胴部が前記上流側シール部材の下流側シール部材に対する離間移動及び接近移動の移動操作部をなすとともに試料分析部内の気密を取りつつ立設端側から測定用ガスを管内に導入可能な中空管状のガス導入部とを有する全体略円盤状部材として形成される請求項1から3のいずれかに記載のガス透過度測定装置。
【背景技術】
【0002】
フィルム部材のガス透過度を測定する方法として差圧法が知られている。前記差圧法としては、フィルム試料を、ガス透過セルの二つのチャンバ間に密封シールするような状態で装着した後、低圧チャンバを真空排気し、試験ガスを高圧チャンバに導入すると、ガスが試験片を通過し、低圧チャンバ内に透過することを利用し、ガス透過度を低圧側の圧力上昇又はガス量の増加として測定する方法(JIS K 7126−1)や、低圧側の圧力上昇又はガス量の増加として測定することに代え、前記低圧チャンバを真空排気しつつ、前記低圧チャンバ壁面への気体の吸脱着反応が平衡で、かつ、前記低圧チャンバ内でのガス透過量と真空ポンプの排気量とが平衡となった時点における圧力等を計測してガス透過度を測定する方法により実施される。
前記差圧法による前記フィルム部材の前記ガス透過度測定装置としては、例えば、フィルムを保持するためのフランジと、前記フィルムにガスを暴露するための容器と、前記フィルムのガス暴露面と逆側のガス透過面に対して所定の圧力まで排気することが可能な真空部とが接続され、前記真空部に取付けられる質量分析計により、前記ガス透過面から前記真空部内に透過するガスのガス透過度を測定する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、有機EL、薄膜太陽電池等の半導体分野では、前記フィルム部材に対し、素子内部等への空気等の侵入を抑制するための封止材として10
−6g/m
2/day程度のガスバリア性が求められており、従来の前記ガス透過度測定装置では、こうした極微小なガスバリア性を短時間、高効率かつ高精度に測定することができない問題がある。
今、一般的に用いられるサイズである縦横90mmのフィルム試料を考えたとき、10
−6g/m
2/dayの水蒸気透過度(WVTR;Water Vapour Transmission Rate)は、1.3×10
−11Pa・m
3/sの水蒸気流量に対応する。排気速度0.01m
3/sの真空ポンプで真空排気された真空容器に、1.3×10
−11Pa・m
3/sの前記水蒸気流量を導入すると、前記真空容器内の水蒸気分圧は、1.3×10
−9Paとなる。即ち、前記差圧法で、10
−6g/m
2/day台の前記水蒸気透過度を測定するためには、10
−9Pa台の前記水蒸気分圧を測定する必要が生じる。そして、10
−9Pa台といった極微小の前記水蒸気分圧を測定するためには、バックグラウンドの前記水蒸気分圧を、少なくとも10
−8Pa台、望ましくは10
−9Pa台以下まで下げることが求められる。
【0004】
一方で、水蒸気は、吸着性・凝集性があることから、不活性ガスに比べて、真空排気しにくいことが知られており、前記真空容器の内璧に吸着した水蒸気は、室温条件下で10
−2Pa程度以下の真空環境下では、おおよそ時間tの逆数t
−1に従って圧力降下する(例えば、非特許文献1参照)。下記表1に、時間t=0秒における初期水蒸気分圧と、逆数t
−1に従って圧力降下することを仮定して計算した、10
−9Pa台の前記水蒸気分圧を得るまでに要する時間を示す。即ち、10
−9Pa台の前記水蒸気分圧を短時間で得るためには、前記初期水蒸気分圧を下げることが重要であり、そのための機構を開発する必要がある。
【0005】
【表1】
【0006】
なお、一般に、10
−9Pa台の前記水蒸気分圧を短時間で得るためには、200℃以上で真空容器を加熱脱ガス(ベーキング)することが有効である。しかし、測定対象となるフィルム部材の耐熱温度は、典型的には80℃であるため、前記フィルム部材を前記真空容器に入れた状態で、200℃以上という高温でのベーキングを行うことができない。
【0007】
ところで、独立した排気系を有する複数の処理室がゲートバルブを介して連設された真空容器に半導体ウエハを搬出入させることで、処理室ごとに異なる真空条件で前記半導体ウエハに対する加熱処理や蒸着処理等を行うロードロック装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。こうしたロードロック装置によれば、半導体ウエハを真空容器に搬出入する度、容器全体を大気に開放することがなく、予め高真空に排気された処理室で所望の処理を実施することができる。
しかしながら、こうしたロードロック装置の機構に基づく前記フィルム部材のガス透過度を測定する方法としては、これまで何ら検討されておらず、10
−6g/m
2/dayといったハイガスバリア性のものを含め、前記フィルム試料のガス透過度を短時間、高効率かつ高精度に測定するためには、新たな機構の開発が求められる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係るガス透過度測定装置を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るガス透過度測定装置の概要を示す説明図である。
該
図1に示すように、ガス透過度測定装置100は、主として、シール機構1と、試料分析部10と、試料準備部20と、ゲート弁30と、トランスファーロッド31と、試料ホルダ32とを有して構成される。
【0015】
試料準備部20は、真空容器21と、ヒータ22と、試料ホルダストック機構25と、挿通部26とを有する。
真空容器21は、ステンレス鋼材等の公知の真空容器形成材料から形成される筒状部材であり、内部空間が試料準備室27とされる。
【0016】
真空容器21の一端側には、試料ホルダ32が取着された状態のトランスファーロッド31を試料準備室27内に気密状態で進退動自在として挿通させる挿通部26が形成されるとともに、真空容器21は、試料準備室27内において、試料ホルダ32が後述の試料ホルダストック機構25に保持された状態、或いは、トランスファーロッド31に取着された状態で滞留可能とされる。
また、真空容器21は、側面に図示しない密閉扉が形成され、前記密閉扉を通じてトランスファーロッド31に対する試料ホルダ32の脱着操作や、必要に応じて、試料ホルダストック機構25に対する試料ホルダ32のストック操作を行うことが可能とされる。
また、真空容器21の他端側は、ゲート弁30を介して試料分析部10の真空容器11と連結され、ゲート弁30を閉じた状態で、真空容器21に接続される第1の真空ポンプ28により試料準備室27内が試料分析部10と独立して排気可能とされる。
なお、第1の真空ポンプ28としては、公知の真空ポンプから適宜選択して用いることができるが、ハイガスバリア性のフィルムを測定対象とする場合、試料準備室27内を、 10
−3Pa以下に排気可能なものが好ましく、例えば、ターボ分子ポンプ等を用いることができる。
【0017】
また、真空容器21の外周には、試料準備室27に導入される試料ホルダ32に吸着された水蒸気等を脱離させ、第1の真空ポンプ28でより効率的に排気可能とする等の観点から、公知の加熱装置で構成されるヒータ22が周設される。
なお、本例では、ヒータ22が真空容器21の外周に周設されるが、ヒータ22としては、別の態様で配してもよく真空容器21内に配されていてもよい。
【0018】
試料ホルダストック機構25は、試料準備室27内に配され、複数の試料ホルダ32をストック可能なストック部23と、一端がストック部23と連結され、他端側が真空容器21の外方に突出して試料準備室27外に気密を取りつつ延在する棒状部材で形成されるストック部支持部24とで構成される。なお、試料ホルダストック機構25としては、ステンレス鋼等の公知の金属材料で形成することができる。
ただし、この試料ホルダストック機構25の構成は、一例を示すものであり、試料準備室27内に試料ホルダ32をストック可能なストック部を有する構成であれば、こうした構成に限定されない。
【0019】
試料分析部10は、真空容器11で構成される。
真空容器11は、ステンレス鋼材等の公知の真空容器形成材料から形成される筒状部材であり、内部空間が試料分析室12とされる。
真空容器11の一端側は、ゲート弁30を介して試料準備部20の真空容器21と連結され、ゲート弁30を閉じた状態で、真空容器11に接続される第2の真空ポンプ13により試料分析室12内が試料準備部20と独立して排気可能とされる。
なお、第2の真空ポンプ13としては、公知の真空ポンプから適宜選択して用いることができるが、ハイガスバリア性のフィルムを測定対象とする場合、試料分析室12内を10
−3Pa以下に排気可能なものが好ましく、例えば、ターボ分子ポンプ等を用いることができる。
【0020】
また、真空容器11は、ゲート弁30を開いた状態で、トランスファーロッド31の進退動により試料分析室12内での試料ホルダ32の搬出入が可能とされる。
真空容器11の側面では、後述するガス透過量測定室41の一部を構成するよう、下流側シール部材3の内側の一部壁面が外方に突出するよう形成されるが、真空容器11としては、このような形状で形成されなくともよい。
また、試料分析室12内に搬入された試料ホルダ32を安定的に支持するため、真空容器11の底部には、一例として試料分析室12内に搬入された試料ホルダ32を保持する試料ホルダ支持部14が形成される。
なお、真空容器11と真空容器21とは、例えば、ゲート弁30を連結部材として別々の真空容器を連結させて形成することができる。
【0021】
ゲート弁30は、ステンレス鋼等の公知の金属材料で形成され、試料準備部20(真空容器21)と試料分析部10(真空容器11)とを連結するように、これらの部間に配され、開状態で試料準備部20内−試料分析部10内間(試料準備室27−試料分析室12間)で試料ホルダ32が搬出入可能とされ、閉状態で試料準備部20内−試料分析部10内間(試料準備室27−試料分析室12間)を気密状態で密封可能とされる。
また、トランスファーロッド31は、一端側が試料ホルダ32と脱着自在に取着可能とされる棒状部材であり、公知のロードロック装置で用いられるものを好適に使用することができる。
【0022】
シール機構1を
図2を参照しつつ説明をする。
図2は、シール機構を拡大して示す説明図である。
該
図2に示すように、シール機構1は、上流側シール部材2と下流側シール部材3とで構成される。なお、本明細書において、「上流」とは、測定用ガスの流通経路において、供給元のガス供給源6(
図1参照)に近いことを指し、「下流」とは、測定用ガスの流通経路において、供給元のガス供給源6(
図1参照)から遠いことを指す。
【0023】
上流側シール部材2には、上流側Oリング保持部2aと、ガス導入部2bとが形成される。
上流側Oリング保持部2aは、上流側Oリング4aが試料ホルダ32から露出するフィルム試料Fのガス暴露面と当接するよう一部が突出した状態で埋設され、上流側Oリング4aと下流側Oリング4bとで試料ホルダ32から露出するフィルム試料Fを狭持可能に下流側Oリング保持部3’と対向配置される。
また、ガス導入部2bは、ガス供給源6と接続され、ガス供給源6から供給される測定用ガスを上流側シール部材2内側に形成されるガス暴露室40に導入可能とされる。
また、上流側シール部材2は、下流側Oリング保持部3’に接近させて上流側Oリング4aと下流側Oリング4bとでフィルム試料Fを狭持させ、下流側Oリング保持部3’から離間させて上流側Oリング4aと下流側Oリング4bとの間に試料ホルダFを挿通させるように少なくとも上流側Oリング保持部4aを移動可能として試料分析部10に支持される。なお、ここでは、上流側シール部材2全体が移動可能とされる。また、上流側シール部材2(上流側Oリング保持部4a)を下流側シール部材3に対して安定状態で移動させ、支持することを目的として、試料分析部10の真空容器11内壁に上流側シール部材2を搬送し支持するレール部材(不図示)が形成されていてもよい。
【0024】
上流側シール部材2は、一の面の外周側に厚肉の部として形成される上流側Oリング保持部2aと、前記一の面側を他の面側に押し出すように前記他の面上に立設され、胴部が上流側シール部材2の下流側シール部材3に対する離間移動及び接近移動の移動操作部をなすとともに試料分析部10(試料分析室12)内の気密を取りつつ立設端側から測定用ガスを管内に導入可能な中空管状のガス導入部2bとを有する全体略円盤状部材として形成される。
これにより、ガス導入部2bの真空容器11外に突出して延在する部分又は当該部分と接続される配管をスライド操作させて、試料分析室12内と気密を取りつつ上流側シール部材2を下流側シール部材3側に容易に移動させることができる。ただし、上流側シール部材2としては、このような構成でなくともよい。例えば、本例では、ガス導入部2bを前記一の面側を他の面側に押し出すように前記他の面上に立設された中空管状の部材とし、上流側Oリング4aと下流側Oリング4bとでフィルム試料Fを狭持した状態で一部が試料分析部10(試料分析室12)内と気密を取りつつ試料分析部10(試料分析室12)外に突出して延在させ、該一部を直接操作して試料分析部10(試料分析室12)外部からの前記移動操作を行うこととしているが、これに代えて、試料分析部10の真空容器11の開口部分に、ガス導入部2bと接続され気密を取りつつ上流側シール部材2をガス導入部2bを介して前記移動操作させることが可能なベローズ配管等の管継手部を配し、これによりガス導入部2bを間接的に操作させることとしてもよい。
なお、上流側シール部材2としては、上流側Oリング4aを除き、ステンレス鋼等の公知の金属材料で形成することができる。
【0025】
下流側シール部材3は、下流側Oリング4bが試料ホルダ32から露出するフィルム試料Fのガス透過面と当接するよう一部が突出した状態で埋設される下流側Oリング保持部3’を有し、試料分析部10の真空容器11内壁に固定される。また、下流側シール部材3は、トランスファーロッド31の進動により試料分析室12内に搬入される試料ホルダ32と下流側Oリング4bとが当接する位置に配される。したがって、下流側Oリング4bの位置調整を行うことなく、トランスファーロッド31の進動操作を行うだけで、試料ホルダ32に挿入されたフィルム試料Fと下流側Oリング4bとを当接させ、当接後、下流側シール部材3に対する上流側シール部材2の離間・接近操作を行うだけで、試料ホルダ32を上流側Oリング4aと下流側Oリング4bとで狭持させることができる。また、測定後、トランスファーロッド31の進動先に試料ホルダ32が存在するため、トランスファーロッド31の進動操作を行うだけで、トランスファーロッド31の一端側に試料ホルダ32とを取着させることができ、トランスファーロッド31による試料ホルダ32の回収を容易に行うことができる。
また、本例では、下流側シール部材3は、一の面の外周側に厚肉の部として下流側Oリング保持部3’が形成され、中央が開口された略円盤状の部材として形成される。
なお、下流側シール部材3としては、下流側Oリング4bを除き、ステンレス鋼等の公知の金属材料で形成することができる。
【0026】
ここで、試料ホルダ32及び上流側及び下流側Oリング4a,bの詳細及びこれら部材の関係について、
図3(a),(b),
図4を参照しつつ説明する。なお、
図3(a)は、試料ホルダ部を説明する説明図であり、
図3(b)は、
図3(a)のA−A線断面を示す断面図であり、
図4は、Oリングを説明する説明図である。
【0027】
図3(a),(b)に示すように、試料ホルダ32は、中央に直径Φ
1の円形開口部が形成され、ステンレス鋼等の公知の金属材料で形成される2枚の金属板33a,33bとの間にフィルムFを内挿した状態でビス34a〜dにより金属板33a,33bを密着させて固定可能とされ、前記開口部からフィルム試料Fの一面(ガス暴露面)と、反対側の他の面(ガス透過面)とが露出される。
また、試料ホルダ32は、取付部35が形成され、トランスファーロッド31の一端側と取付部35とのスイッチ式の嵌合やこれらの磁着等により、トランスファーロッド31と脱着自在に取着可能とされる。なお、磁着等させる場合には、必ずしも、取付部35を設ける必要はない。
【0028】
一方、上流側及び下流側Oリング4a,bは、それぞれフッ素ゴム等の公知の樹脂材料やインジウム、金等の軟性金属材料で形成され、外径がΦ
2、内径がΦ
3とされる(
図4参照)。
上流側及び下流側Oリング4a,bの外径Φ
2は、試料ホルダ32開口部の直径Φ
1よりも小さく上流側及び下流側Oリング4a,bで、直接、試料ホルダ32から露出する状態のフィルム試料Fを狭持可能とされ、内径Φ
3で囲まれた領域がフィルム試料Fのガス透過領域とされる。また、上流側及び下流側Oリング4a,bとしては、非シール時における断面形状が円形状のものであってもよいが、高い気密性を得る観点から、断面形状が四角形状のものが好ましい。
なお、この例は、説明を簡単にするためのものであり、試料ホルダ32の前記開口部は、上流側及び下流側Oリング4a,bの外径がΦ
2よりも大きいサイズであれば、特に円形である必要はなく、また、上流側及び下流側Oリング4a,bは、フィルム試料Fを狭持可能である限り、同じ材質、全く同じ大きさである必要はない。
【0029】
ガス透過度測定装置100について再び
図1を参照しつつ説明する。
シール機構1では、上流側Oリング4aと下流側Oリング4bとでフィルム試料Fを狭持した状態で、フィルム試料Fの前記ガス暴露面と上流側Oリング4aの内側と上流側シール部材2の内側とで画成されるガス暴露室40及びフィルム試料Fの前記ガス透過面と下流側Oリング4bの内側と下流側シール部材3の内側と試料分析部10(真空容器11)の内壁で画成されるガス透過量測定室41を形成する。
【0030】
また、下流側シール部材3(下流側Oリング保持部3’)では、下流側シール部材3から一部が突出する下流側Oリング4bの内側に一部が開口された金属板5が嵌着される等により、フィルム試料Fが金属板5により支持されることが好ましい。即ち、ガス暴露室40よりもガス透過量測定室41の方が圧力が小さいため、フィルム試料Fがガス透過量測定室41側に引き寄せられ、試料フォルダ32からの外れや湾曲により上流側及び下流側Oリング4a,bの内径Φ
3で囲まれた領域でフィルム試料Fのガス透過領域を見積もれない状況が発生することがあり、フィルム試料Fの前記ガス透過面側を金属板5で支持することが好ましい。
なお、金属板5としては、ステンレス鋼等の公知の金属材料で形成され、任意の場所に一又は複数の開口が形成された金属板やメッシュ状に開口が形成された金属板等を用いることができる。
【0031】
ガス透過量計測部42(ガス分析器)は、試料分析部10(真空容器11)のガス透過量測定室41を画成する部分と接続され、フィルム試料Fからガス透過量測定室41内に透過したガス透過量を測定する。ガス透過量計測部42としては、特に制限はなく、電離真空計等の公知の真空計、四重極質量分析計等の公知の質量分析計を用いることができる。
また、ガス透過度の測定方法に応じて、試料分析部10(真空容器11)のガス透過量測定室を画成する部分と接続され、ガス透過量測定室41内を排気する第3の真空ポンプ43が配される。即ち、ガス透過度をガス透過量測定室41内を真空排気しつつ、ガス透過量測定室41内壁への気体の吸脱着反応が平衡で、かつ、ガス透過量測定室41内でのガス透過量と真空ポンプの排気量とが平衡となった時点における圧力等を計測してガス透過度を測定する場合、その真空ポンプとして第3の真空ポンプ43が配される。
第3の真空ポンプ43としては、公知の真空ポンプを用いることができるが、ハイガスバリア性のフィルムを測定対象とする場合、ガス透過量測定室41内を10
−6Pa以下に排気可能なものが好ましく、例えば、ターボ分子ポンプ等を用いることができる。
試料分析室12内を第2の真空ポンプ13で真空排気した後、ガス透過量測定室41を形成し、フィルム試料Fからのガス透過量をガス透過量測定室41内における圧力上昇又はガス量の増加として測定する場合には、必ずしも第3の真空ポンプ43を配する必要はない。
なお、ガス透過度測定装置100は、試料準備部20と試料分析部10とを鉛直方向に連結させた例に係るが、水平方向に連結させてもよい。この場合、フィルム試料Fが水平面に対して垂直に配されるよう、シール機構1を構成することが好ましい。
また、ガス透過度測定装置100は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、この実施形態に限定されない。
【0032】
次に、ガス透過度測定装置100の動作について
図1を参照しつつ説明をする。
ゲート弁30を閉じた状態で、試料分析室12内を第2の真空ポンプ13で排気する。ガス透過度測定対象のフィルム試料Fがハイバリア性(ガス透過度が高い)のフィルムである場合、試料分析室12内を10
−3Pa以下程度に真空排気する。
【0033】
また、真空容器21の密閉扉(不図示)を通じて挿通部26から真空容器21内に垂下されたトランスファーロッド31の一端側に試料ホルダ32を取着させる。なお、トランスファーロッド31からの試料ホルダ32の着脱は、例えば、トランスファーロッド31の電磁石で試料ホルダ32が取着される場合、前記電磁石の励磁をオンオフ動作させて行う。トランスファーロッド31に取着される試料ホルダ32は、試料ホルダストック機構25におけるストック部23にストックされていないものを直接取着させて用いてもよいが、吸着ガス等を脱離させる観点から、予めストック部23にストックさせておいたものが好ましい。試料ホルダストック機構25のストック部23に対する試料ホルダ32のストックは、真空容器21の密閉扉(不図示)を通じて行う。密閉扉は、作業完了後、速やかに閉じるようにする。
また、試料準備室27内に滞留される試料ホルダ32等に吸着される水蒸気等は、ヒータ22による加熱により脱離され、第1の真空ポンプ28で効率的に排気可能とされる。ヒータ22による加熱は、フィルム試料Fの耐熱温度未満の温度で行う。また、第1の真空ポンプ28では、フィルム試料Fがハイバリア性のフィルムである場合、試料準備室27内を10
−3Pa以下程度に真空排気させる。
【0034】
試料分析部10では、予め上流側シール部材2のガス導入部2bの真空容器11外に突出して延在する部分又は当該部分と接続される配管をスライド操作し、上流側Oリング4aと下流側Oリング4bとの間に試料ホルダ32を挿通させるよう上流側シール部材2(上流側Oリング保持部2a)を下流側シール部材3(下流側Oリング保持部3’)から離間させておく。
ストック部23にストックされた試料ホルダ32をトランスファーロッド31に取着させた後、ゲート弁30を開き、トランスファーロッド31を試料分析部12内の所定の深さまで搬送操作することで、試料ホルダ32を内挿される試料フィルムFの上流側Oリング4aと下流側Oリング4bとによる狭持位置まで搬送する。
この状態で、上流側シール部材2のスライド操作により、上流側Oリング保持部2aを下流側Oリング保持部3に接近させて上流側Oリング4aと下流側Oリング4bとでフィルム試料Fを狭持させる。
この時、シール機構1内では、フィルム試料Fの前記ガス暴露面(一の面)と上流側Oリング4aの内側と上流側シール部材2の内側とで画成されるガス暴露室40と、フィルム試料Fの前記ガス透過面(一の面と反対側の他の面)と下流側Oリング4bの内側と下流側シール部材3の内側と試料分析部10(真空容器11)の内壁で画成されるガス透過量測定室41とが気密状態で形成される。
その後、試料ホルダ32からトランスファーロッド31を脱着させ、トランスファーロッド31を試料準備室27に戻し、ゲート弁30を再び閉じ、引き続き第2の真空ポンプ13で試料分析室12内を真空排気し、ガス透過度測定の測定準備を完了させる。
【0035】
本例におけるガス透過度測定では、ガス透過量測定室41内を第3の真空ポンプで真空排気しつつ、上流側シール部材2のガス導入部2bを介してガス供給源6から供給される測定用ガスをガス暴露室40内に導入させ、フィルム試料Fからガス透過量測定室41内に透過する前記測定用ガスの透過量を透過量ガス透過量計測部42(ガス分析器)で計測して行う。計測は、ガス透過量測定室41内壁への気体の吸脱着反応が平衡で、かつ、ガス透過量測定室41内でのガス透過量と第3の真空ポンプ43の排気量とが平衡となった時点における圧力等を計測してガス透過度を測定する。なお、フィルム試料Fがハイバリア性のフィルムである場合、ガス透過量測定室41内を第3の真空ポンプを用いて10
−6Pa以下程度に真空排気する。
【0036】
次に、本発明の効果について、ガス透過度測定装置100を例にとり詳細に説明する。
ガス透過度測定装置100では、装置に対してフィルム試料Fを搬出入する度に装置内を大気に暴露することがなく、予め所望の真空環境にまで真空排気された試料分析部10でガス透過度を測定するため、短時間で測定条件の真空環境を得ることができ、延いては、フィルム試料Fのガス透過度を短時間で効率的に測定することができる。
また、フィルム試料F、試料ホルダ32等に吸着したガスをガス透過度測定前に予め試料準備部20で排除することができるため、試料分析部10において、これらが脱離せず短時間で測定条件の真空環境を得ることができ、延いては、フィルム試料Fのガス透過度を短時間で効率的に測定することができる。
また、試料準備部20において、試料ホルダストック機構25に試料ホルダ32をストックしておくことで、試料ホルダ32に吸着したガス、水蒸気等が排除された試料ホルダ32を予め準備することができる。したがって、試料分析部10においてより短時間で測定条件の真空環境を得ることができ、延いては、フィルム試料Fのガス透過度を短時間で効率的に測定することができる。
【0037】
また、ガス透過度測定装置100では、装置内に配され、また、金属製の試料ホルダ32の開口部直径Φ
1よりも小さな外径Φ
2の上流側及び下流側Oリング4a,bで直接試料ホルダ32を狭持してガス透過度測定を行うため、高精度にガス透過度の測定を行うことができ、延いては、10
−6g/m
2/dayといったハイバリア性のフィルム試料を測定対象とすることができる。
この点について、更に、
図2,
図5〜7を参照しつつ、下記参考例1及び2に係るガス透過度測定装置と比較した説明を行う。なお、
図5は、参考例1に係るガス透過度測定装置のシール機構を拡大して示す説明図であり、
図6は、参考例1に係るガス透過度測定装置の変形例に係るガス透過度測定装置のシール機構を拡大して示す説明図であり、
図7は、参考例2に係るガス透過度測定装置シール機構を拡大して示す説明図である。
【0038】
参考例1に係るガス透過度測定装置では、
図5に示すように、上流側及び下流側Oリング4a,bの外径Φ
2に対して、開口部の直径Φ
1が小さい金属製の試料ホルダ50を用いることとし、試料ホルダ50の金属板51a,51bでフィルム試料Fを狭持してガス透過度測定を行う点で、ガス透過度測定装置100と異なる。なお、符号53は、トランスファーロッド31への取付部を示す。
【0039】
この参考例1に係るガス透過度測定装置をガス透過度測定を行うと、ガス導入部2bから導入される測定用ガスが、Oリングによるシールがないため金属板51aとフィルム試料Fとの間から試料分析室12内に漏れ出した後、金属板51bとフィルム試料Fとの間からガス透過量測定室側に漏れ出し(
図5中の黒矢印参照)、フィルム試料Fを透過したガス(
図5中の白抜き矢印参照)と混ざり込み、フィルム試料Fのガス透過度測定を精度良く実施することができない。
【0040】
また、
図6に示すように、参考例1に係るガス透過度測定装置の問題を解消する変形例として、金属板51a,51bの対向面にOリング52a,bを埋設し、これらOリング52a,bでフィルム試料Fを狭持させても、Oリング52a,bが試料ホルダ50とともに装置内外に搬出入されるため、装置外でOリング52bに吸収されたガスが金属板51bとフィルム試料Fとの間からガス透過量測定室側に漏れ出し(
図6中の黒矢印参照)、フィルム試料を透過したガス(
図6中の白抜き矢印参照)と混ざり込み、フィルム試料Fのガス透過度測定を精度良く実施することができない。
【0041】
参考例2に係るガス透過度測定装置では、
図7に示すように、上流側及び下流側Oリング4a,bの外径Φ
2に対して、開口部の直径Φ
1が小さい金属製の試料ホルダ60を用いることとし、試料ホルダ60の金属板61a,61bでフィルム試料Fを狭持してガス透過度測定を行う点で、ガス透過度測定装置100と異なる。また、金属板51aよりもサイズが小さい金属板61aを用い、金属板61bのみを上流側及び下流側Oリング4a,bで狭持する点で、参考例1に係るガス透過度測定装置と異なる。なお、符号63は、トランスファーロッド31への取付部を示す。
【0042】
この参考例2に係るガス透過度測定装置では、参考例1に係るガス透過度測定装置と異なり、前記測定用ガスが試料分析室12内に漏れ出すことはないものの、前記測定用ガスが金属板61bとフィルム試料Fとの接合面に直接到達し、この接合面には、Oリングによるシールがされていないことから、前記測定用ガスが金属板61bとフィルム試料Fとの間からガス透過量測定室側に漏れ出し(
図7中の黒矢印参照)、フィルム試料を透過したガス(
図7中の白抜き矢印参照)と混ざり込み、ガス透過度測定を正確に実施することができない。また、金属板61bとフィルム試料Fとの接合面にOリングを配しても、参考例1に係るガス透過度測定装置の変形例について説明した問題が生じ、フィルム試料Fのガス透過度測定を精度良く実施することができない。
【0043】
これらに対し、ガス透過度測定装置100では、前記測定ガスのガス透過量測定室側に漏れ出しがなく、フィルム試料Fを透過したガスのみを測定対象とすることができ(
図2中の白抜き矢印参照)、フィルム試料Fのガス透過度測定を高精度に実施することができる。