特許第6337311号(P6337311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6337311水底面下の堆積層の音響による情報収集方法及び水底面下の堆積層の音響による情報収集装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337311
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】水底面下の堆積層の音響による情報収集方法及び水底面下の堆積層の音響による情報収集装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/89 20060101AFI20180528BHJP
   G01S 7/52 20060101ALI20180528BHJP
   G01S 7/521 20060101ALI20180528BHJP
   G01S 7/62 20060101ALI20180528BHJP
   G01V 1/00 20060101ALI20180528BHJP
   G01V 1/20 20060101ALI20180528BHJP
   G01V 1/34 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   G01S15/89 B
   G01S7/52 E
   G01S7/521 B
   G01S7/62 A
   G01V1/00 C
   G01V1/20
   G01V1/34
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-98178(P2015-98178)
(22)【出願日】2015年5月13日
(65)【公開番号】特開2016-212042(P2016-212042A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】505378714
【氏名又は名称】株式会社アーク・ジオ・サポート
(74)【代理人】
【識別番号】100071102
【弁理士】
【氏名又は名称】三觜 晃司
(72)【発明者】
【氏名】水野 勝紀
(72)【発明者】
【氏名】浅田 昭
(72)【発明者】
【氏名】池田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】村越 誠
【審査官】 安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−050415(JP,A)
【文献】 特表2013−525776(JP,A)
【文献】 特開2005−235015(JP,A)
【文献】 特開昭54−158301(JP,A)
【文献】 特開平09−243435(JP,A)
【文献】 特開昭60−050471(JP,A)
【文献】 特開昭60−210707(JP,A)
【文献】 特開平04−279881(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0258811(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52− 7/64,
G01S 15/00−15/96,
G01V 1/00− 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
12本のフレーム部材の端部が結合されて構成された直方体形状のフレーム構造基体において、このフレーム構造基体が着底状態において上側となる対向するフレーム部材にXY駆動機構を構成して、このXY駆動機構により、送波器と受波器とから成る音響計測部を、前記フレーム構造基体の空間内において、このフレーム構造基体が着底した状態における水底面の拡がり方向に対応するXY方向に移動可能とし、前記音響計測部は前記XY方向と直交するZ方向の下向きに鋭指向性を形成するものとし、前記フレーム構造基体を重量により水底面に着底させた状態において、音響計測部をXY方向に走査して音響反射信号のデータにより水底面下の堆積層の情報を収集することを特徴とする水底面下の堆積層の音響による情報収集方法。
【請求項2】
音響計測部は、送波器と、その周囲に環状に配置した複数の受波器とからビームフォーミングにより鋭指向性を形成することを特徴とする請求項1に記載の水底面下の堆積層の音響による情報収集方法。
【請求項3】
音響計測部をXY方向に走査して収集した音響反射信号のデータを処理して、Z方向の多数位置におけるCモード平面画像を構築し、構築された多数のCモード平面画像を積み上げて3次元音響画像を構築することを特徴とする請求項1又は2に記載の水底下の堆積層の音響による情報収集方法。
【請求項4】
構築された3次元音響画像をアルファブレンド処理して表示することを特徴とする請求項3に記載の水底下の堆積層の音響による情報収集方法。
【請求項5】
XY駆動機構は、フレーム構造基体の、着底状態において上側となる対向するフレーム部材間に音響計測部を移動可能に支持する移動フレーム部材を架設し、この移動フレーム部材を、前記対向するフレーム部材に沿って移動可能とした構成であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水底面下の堆積層の音響による情報収集方法。
【請求項6】
音響計測部をZ方向に移動可能に支持する構成としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水底面下の堆積層の音響による情報収集方法。
【請求項7】
12本のフレーム部材の端部が結合されて構成された直方体形状のフレーム構造基体と、送波器と受波器とから成る音響計測部と、前記フレーム構造基体が着底状態において上側となる対向するフレーム部材に形成されたガイドレール部により、対向するフレーム部材間に架設した移動フレーム部材をX方向に駆動するX方向直動機構を構成すると共に、この移動フレーム部材に沿って形成されたガイドレール部により、前記音響計測部の支持部材を前記X方向と直交するY方向に駆動するY方向直動機構を構成して、これらのX方向直動機構とY方向直動機構により、前記音響計測部をフレーム構造基体が着底した状態における水底面の広がり方向に対応するXY方向に移動可能に支持するXY駆動機構と、このXY駆動機構と前記音響計測部を制御すると共に、音響計測部により音響反射信号のデータを収集する制御手段を備え、前記音響計測部は、その指向性を前記XY方向と直交するZ方向の下向きに形成していることを特徴とする水底面下の堆積層の音響による情報収集装置。
【請求項8】
収集された音響反射信号のデータから3次元音響画像を構築する画像構築手段を備え、この画像構築手段には、収集された音響反射信号のデータを処理して、Z方向の多数位置におけるCモード平面画像を構築する手段と、構築された多数のCモード平面画像を積み上げて3次元音響画像を構築する手段とを備えていることを特徴とする請求項7に記載の水底下の堆積層の音響による情報収集装置。
【請求項9】
画像構築手段には、構築された3次元音響画像をアルファブレンド処理して表示する手段を備えていることを特徴とする請求項8に記載の水底下の堆積層の音響による情報収集装置。
【請求項10】
音響計測部は、送波器と、その周囲に環状に配置した複数の受波器とから構成され、制御装置により収集された複数の受波器の音響反射信号のデータからビームフォーミングにより鋭指向性を形成する処理を行う構成としたことを特徴とする請求項7又は8に記載の水底面下の堆積層の音響による情報収集装置。
【請求項11】
支持部材は、音響計測部から突設した支持杆体をZ方向に支持する構成としたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の水底面下の堆積層の音響による情報収集装置。
【請求項12】
支持部材には、支持杆体をZ方向に移動させる駆動機構を設けたことを特徴とする請求項11に記載の水底面下の堆積層の音響による情報収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底、湖沼底、人工構造物等の水底面下の堆積層の情報を音響により収集する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海底、湖沼底、人工構造物等の水底面下の堆積層内の空間的な情報を、柱状コアリング等の破壊性の方法に依らず、非破壊で詳細に把握したいという要望が増えており、その対象は、浮泥、軟泥の厚み、水生植物、根菜等の生育状況、底生生物の分布、深度方向の地質変化、沈没船や兵器等の埋没物体の形状計測等、多岐に渡っている。
【0003】
ところで、水底面下の堆積層内の情報を非破壊で収集するものとしては、従来から、音波を利用した各種方式のソナーが広く知られている。
【0004】
例えば特許文献1には、海中を航行する自立型無人潜水機(AUV)等の移動体に超音波の送受波器を支持した構成において、潮流等の外乱による移動体の動揺に対しての修正を行う合成開口ソナーが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、水中又は水上を航行する移動体に支持した音波の送信部と受信部により、水底面からの反射音波を逐次受信して、水中の情報を可視化し、探知した機雷が沈底機雷か埋没機雷かを判別する技術を備えた水中音波撮像装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5497302号公報
【特許文献2】特許第5470146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来のソナー等の音響を用いた装置は、送受波器を船舶、ROV、AUV等の水上又は水中の移動体に支持して対象物体の検出を行うものであり、移動体が、潮流や波浪又は風等の影響を受けて動揺するため、高精度の検出を行うことは困難である。このため、検出対象範囲は広いものの、検出可能な対象物体は、例えば特許文献2に記載されているような機雷等の比較的大きな物体に限られてしまう。また、計測時の気象条件によってデータの品質が変化するため、繰り返し計測によるデータの再現性は低い。このため、検出対象の経時的な変化をモニタリングすることは困難である。
【0008】
このため、水底面下の堆積層内における根菜や貝類等の底生生物のように、比較的小さな対象物体(例えば蓮根では直径2−5cm)の情報収集はもちろんのこと、それらの経時的な変化をモニタリングするために音響を利用しようという動機は、従来は全く生じ得なかった。
【0009】
これに対して、本発明者は、鋭意研究の結果、音響を合理的に利用して水底面下の堆積層の情報を収集することにより、比較的小さな物体を含め堆積層の情報を非破壊で、しかも高分解能、高い再現性で計測可能な方法及び装置を想到したものであり、これによって従来の課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明では、前記課題を解決するために、12本のフレーム部材の端部が結合されて構成された直方体形状のフレーム構造基体において、このフレーム構造基体が着底状態において上側となる対向するフレーム部材にXY駆動機構を構成して、このXY駆動機構により、送波器と受波器とから成る音響計測部を、前記フレーム構造基体の空間内において、このフレーム構造基体が着底した状態における水底面の拡がり方向に対応するXY方向に移動可能とし、前記音響計測部は前記XY方向と直交するZ方向の下向きに鋭指向性を形成するものとし、前記フレーム構造基体を重量により水底面に着底させた状態において、音響計測部をXY方向に走査して音響反射信号のデータにより水底面下の堆積層の情報を収集することを特徴とする水底面下の堆積層の音響による情報収集方法を提案する。
【0011】
また本発明では、前記方法において、音響計測部は、送波器と、その周囲に環状に配置した複数の受波器とからビームフォーミングにより鋭指向性を形成することを提案する。
【0012】
また本発明では、前記方法において、音響計測部をXY方向に走査して収集した音響反射信号のデータを処理して、Z方向の多数位置におけるCモード平面画像を構築し、構築された多数のCモード平面画像を積み上げて3次元音響画像を構築することを提案する。そして更に、この方法において、構築された3次元音響画像をアルファブレンド処理して表示することを提案する。
【0013】
また本発明では、前記方法において、XY駆動機構は、フレーム構造基体の、着底状態において上側となる対向するフレーム部材間に音響計測部を移動可能に支持する移動フレーム部材を架設し、この移動フレーム部材を、前記対向するフレーム部材に沿って移動可能とした構成である水底面下の堆積層の音響による情報収集方法を提案する。
【0014】
また本発明では、前記方法において、音響計測部をZ方向に移動可能に支持する構成とした水底面下の堆積層の音響による情報収集方法を提案する。
【0015】
また本発明では、12本のフレーム部材の端部が結合されて構成された直方体形状のフレーム構造基体と、送波器と受波器とから成る音響計測部と、前記フレーム構造基体が着底状態において上側となる対向するフレーム部材に形成されたガイドレール部により、対向するフレーム部材間に架設した移動フレーム部材をX方向に駆動するX方向直動機構を構成すると共に、この移動フレーム部材に沿って形成されたガイドレール部により、前記音響計測部の支持部材を前記X方向と直交するY方向に駆動するY方向直動機構を構成して、これらのX方向直動機構とY方向直動機構により、前記音響計測部をフレーム構造基体が着底した状態における水底面の広がり方向に対応するXY方向に移動可能に支持するXY駆動機構と、このXY駆動機構と前記音響計測部を制御すると共に、音響計測部により音響反射信号のデータを収集する制御手段を備え、前記音響計測部は、その指向性を前記XY方向と直交するZ方向の下向きに形成していることを特徴とする水底面下の堆積層の音響による情報収集装置を提案する。
【0016】
また本発明では、前記装置において、収集された音響反射信号のデータから3次元音響画像を構築する画像構築手段を備え、この画像構築手段には、収集された音響反射信号のデータを処理して、Z方向の多数位置におけるCモード平面画像を構築する手段と、構築された多数のCモード平面画像を積み上げて3次元音響画像を構築する手段とを備えた水底下の堆積層の音響による情報収集装置を提案する。
【0017】
また本発明では、前記装置において、画像構築手段には、構築された3次元音響画像をアルファブレンド処理して表示する手段を備えた水底下の堆積層の音響による情報収集装置を提案する。
【0018】
また本発明では、前記装置において、音響計測部は、送波器と、その周囲に環状に配置した複数の受波器とから構成され、制御装置により収集された複数の受波器の音響反射信号のデータからビームフォーミングにより鋭指向性を形成する処理を行う構成とした水底下の堆積層の音響による情報収集装置を提案する。
【0019】
また本発明では、前記装置において、前記支持部材は、音響計測部から突設した支持杆体をZ方向に支持する構成とした水底面下の堆積層の音響による情報収集装置を提案する。
【0020】
また本発明では、前記装置において、支持部材には、支持杆体をZ方向に移動させる駆動機構を設けた水底面下の堆積層の音響による情報収集装置を提案する。
【発明の効果】
【0021】
以上の構成において、本発明に係る方法及び装置では、フレーム構造基体を重量により水底面に着底させた状態において、音響計測部をXY駆動機構によりXY方向に走査して音響反射信号のデータを収集し、こうして水底面下の堆積層の情報を収集する。
【0022】
収集した情報は、従来のソナー等と同様に、ディスプレイ上で適宜の形式、例えば3次元画像、断層画像等として可視化することができる。
【0023】
音響計測部をXY駆動機構によりXY方向に走査して音響による情報を収集する際、音響計測部を支持するフレーム構造基体は、重量により水底面に着底させていることと、フレーム構造であるため水流や波の影響を受け難く、安定した静止状態が維持されるため、音響計測部はフレーム構造基体による外乱の影響は全く受けない。このため、繰り返し計測によるデータの再現性が高く、検出対象の経時的な変化をモニタリングすることも容易である。
【0024】
そしてXY駆動機構自体は非常に高い位置決め精度を容易に得ることができることから、音響計測部のXY方向の走査を非常に高精度で行うことができる。
【0025】
更に、音響計測部は前記XY方向と直交するZ方向の下向きに鋭指向性を形成しているため、前記XY方向の走査の高精度と相俟って、非常に高分解能で情報を収集することができる。
【0026】
音響計測部は、Z方向の位置を、予め設定した位置に固定する構成としても良いが、Z方向に移動可能とすれば、その位置を移動して計測を行うことができ、適切な位置を計測時に設定するようにすることもできる。
【0027】
音響計測部は、送波器と、その周囲に環状に配置した複数の受波器とからビームフォーミングにより鋭指向性を形成することにより、ビーム幅を全周に渡って平均的に小さくすることができ、これにより更に高分解能化を図ることができる。
【0028】
フレーム構造基体を直方体状に構成し、そしてXY駆動機構は、フレーム構造基体が着底状態において上側となる対向するフレーム部材にガイドレール部を形成し、このガイドレール部により前記対向するフレーム部材間に架設した移動フレーム部材を駆動するX方向直動機構と、移動フレーム部材に形成したガイドレール部により音響計測部の支持部材を駆動するY方向直動機構とから構成することにより、必要最小限のフレーム構造によりフレーム構造基体及びXY駆動機構を構成することができ、上述したように、水流や波の影響を受け難い構成を実現することができる。
【0029】
そして、このような構成の場合、音響計測部の支持部材は、音響計測部から突設した支持杆体をZ方向に支持する構成とすることができ、更に、支持杆体をZ方向に移動させる駆動機構を設けることにより、音響計測部のZ方向の位置を変更した計測を行うことが可能となる。
【0030】
上述の、収集した情報の可視化においては、音響計測部をXY方向に走査して収集した音響反射信号のデータを処理して、Z方向の多数位置におけるCモード平面画像を構築し、そして構築された多数のCモード平面画像を積み上げて3次元音響画像を構築することができ、構築された3次元音響画像をアルファブレンド処理して表示すること等により、非常に視認性の良い画像を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は本発明に係る情報収集装置の主要要素を模式的に示す斜視図である。
図2図2は本発明に係る情報収集装置の主要要素を模式的に示す側面図である。
図3図3は本発明に係る情報収集装置の主要要素を模式的に示す平面図である。
図4図4は本発明に係る音響計測部の底面図である。
図5図5図4の音響計測部の構成において、ビームフォーミングを行った後のビームパターンを計算によって求めた結果を示すもので、(a)は送波器から20cm離れた平面位置の計算値、(b)は送波器から1m離れた平面位置における送受波器の総合的な指向性(送波器と受波器の指向性の積)の計算値を示すものである。
図6図6は本発明に係る音響計測部においてビームフォーミングを行った後のビームパターンを示すもので、(a)は音響計測部の送波器と受波器の配置、(b)はZ方向から見たビームパターンを示すものである。
図7図7は音響計測部において1つの送波器と受波器によるビームパターンを示すもので、(a)は音響計測部の送波器と受波器の配置、(b)はZ方向から見たビームパターンを示すものである。
図8図8は音響計測部において1つの送波器と、その外側に配置した2つの受波器によるビームパターンを示すもので、(a)は音響計測部の送波器と受波器の配置、(b)はZ方向から見たビームパターンを示すものである。
図9図9は本発明に係るXY駆動機構と音響計測部の制御構成を示す説明図である。
図10図10は本発明に係る方法及び装置により収集した水底面下の堆積層の情報をディスプレイに表示する処理の一例を示す流れ図である。
図11図11は本発明に係る方法及び装置により収集した水底面下の堆積層の情報をディスプレイに表示した3次元画像の一例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0033】
まず本発明に係るフレーム構造基体と音響計測部をXY方向に移動するXY駆動機構の例を図1図3につき説明する。
符号1は本発明に係るフレーム構造基体であり、図1図3はフレーム構造基体1を水底面に着底させた状態に相当する。このフレーム構造基体1は、複数のフレーム部材2、この例の場合、12本のフレーム部材2により直方体形状に構成している。
【0034】
そしてこの実施の形態では、フレーム構造基体1が着底状態において上側となる対向するフレーム部材2a,2bにガイドレール部3xを形成し、このガイドレール部3xにより、対向するフレーム部材2a,2b間に架設した移動フレーム部材4を駆動するX方向直動機構を構成している。
【0035】
移動フレーム部材4は、両端に設けた移動支持部材5をガイドレール部3に沿って適宜の移動支持機構により移動支持する構成としており、フレーム部材2bに沿って配置したモータ5x駆動の送りネジ6xと、この送りネジ6xに螺合するナット部材7xによりX方向に駆動される構成である。更に、移動フレーム部材4にもガイドレール部3yが形成されており、このガイドレール部3yに音響計測部8の支持部材9が駆動可能に構成され、これにより支持部材9を移動フレーム部材4に沿って駆動するY方向直動機構が構成されており、これらにより、支持部材9のXY駆動機構が構成されている。このY方向直動機構においては、移動フレーム部材4に沿ってモータ5y駆動の送りネジ6yが設けられており、この送りネジ6yに螺合するナット部材7yが支持部材9に設けられている。
【0036】
符号8は音響計測部を示すもので、この音響計測部8には上側に間隔を隔てた一対の支持杆体10を突設しており、前記支持部材9は、この支持杆体10を上下動、即ち、Z方向に移動可能に支持する構成としている。この際、支持部材9は、支持杆体10の固定位置を調節可能な半固定式の構成としたり、モータ駆動の適宜機構により、音響計測部8の位置をZ方向で変更可能とする構成とすることができる。
【0037】
この実施の形態において、音響計測部8は、ビームフォーミングにより前記Z方向の下向きに鋭指向性を形成するものとしている。即ち、この実施の形態では、図4に示すように、音響計測部8は、中心側の送波器11の周囲に8個の受波器12を円環状に配置してビームフォーミングを行う構成としている。
【0038】
この実施の形態では、このようなビームフォーミングを行うことにより、図5図8に示すように、ビーム幅を全周に渡って平均的に小さくすることができ、良好な鋭指向性を得ることができる。
【0039】
この他、音響計測部は、適宜のビームフォーミングにより、又は音響レンズを装着する等により、鋭指向性を形成することができる。
【0040】
以上の構成の本発明に係る情報収集装置は、前記フレーム構造基体1を重量により対象とする海や湖沼等の水底面に着底させた状態において、音響計測部8をXY駆動機構によりXY方向に走査して音響による水底面下の堆積層の情報を収集する。
【0041】
このようにして情報を収集する際、音響計測部8を支持するフレーム構造基体1は、重量により水底面に着底させていることと、フレーム構造であるため水流や波の影響を受け難く、安定した静止状態が維持されるため、音響計測部8はフレーム構造基体1による外乱の影響は全く受けない。
【0042】
情報収集装置の全体としての重量は、重すぎると、水底面下の堆積層内に沈みすぎてしまう可能性があるため、これを考慮して重量を設定する必要がある。
【0043】
本発明の実施の形態においては、フレーム構造基体1は、アルミニウム製のフレーム部材2により構成すると共に、XY駆動機構の一方側の直動機構の構成要素であるガイドレール部3xをフレーム部材2に形成していて、必要最小限のフレーム構造によりフレーム構造基体及びXY駆動機構を構成しているので、強固なフレーム構造体を比較的軽量に構成することができ、従って、水底面に着底させた際に、水底面下の堆積層内に沈みすぎてしまうことを防止することができる。
【0044】
こうして本発明では、音響計測部8がフレーム構造基体1による外乱の影響を受けないこと、そして、XY駆動機構自体は非常に高い位置決め精度を容易に得ることができることから、音響計測部8のXY方向の走査を非常に高精度で行うことができ、更にZ方向の下向きの鋭指向性と相俟って、水底面下の堆積層内の音響によるデータを非常に高精度、高分解能で収集することができる。
【0045】
上述した通り、音響計測部8は、Z方向の位置を、予め設定した位置に固定する構成としても良いが、Z方向に移動可能とすれば、その位置を移動して計測を行うことができ、適切な位置を計測時に設定するようにすることもできる。
【0046】
以上のように本発明の情報収集装置により収集したデータは、収集装置自体に構成した画像表示手段により表示したり、又は別装置として構成した画像表示装置等にデータを入力して表示することができる。
【0047】
図9は、本発明に係るXY駆動機構と音響計測部の制御構成の実施の形態を示すもので、この構成では、ノートパソコンをプラットホームとする制御プログラムにより、XY駆動機構を構成するX方向直動機構とY方向直動機構の夫々のモータ(ステージモータ(X)、(Y))をモータドライバを介して制御すると共に、データ収集プログラムを介して、1つの送波器と8つの受波器を用いてデータを、データ収集手段を介してノートパソコンに収集する。そして、ノートパソコンに収集したデータは、別装置の画像出力装置に入力して表示する。即ち、この実施の形態では、XY駆動機構と音響計測部8を制御すると共に、音響計測部8により音響反射信号のデータを収集する制御手段は、ノートパソコンにより構成している。
【0048】
図10は、本発明に係る方法及び装置により収集した水底面下の堆積層のデータを、画像出力装置のディスプレイに表示する処理の一例を示す流れ図である。即ち、この処理は、上述した画像構築手段に相当する。
【0049】
まず、ステップS1はデータの読込処理であり、この処理は、上述したように音響計測部6をXY方向に移動させながら、送波器9から発した音波(例えば、矩形パルス)の反射信号を8つの受波器10により受波し、こうして収集し、収録された所定の範囲の音波の反射信号レベルのデータを読み込む処理である。
【0050】
実施例においては、位置決め精度±0.1mmのXY駆動機構により、80 (X方向)×85 (Y方向) cm2の範囲を走査し、6,966(=81×86)の位置の夫々において、8つの受波器10の夫々の音響反射信号のレベルのデータを収集し、収録している。即ち、この実施例において収録されたデータは、6,966個のファイルから成り、夫々のファイルに位置データと、8つの受波器10に対応する8chの音響反射信号のレベルのデータが含まれている。
【0051】
次いでステップS2では、8つの受波器10に対応する8chの音響反射信号を用いてビームフォーミング処理を行って、鋭指向性化を行う。
【0052】
次いでステップS3では、ヒルベルト変換に基づく包絡線検波処理を行う。この処理は超音波診断装置等で音波を画像化する際の一般的な処理であり、この処理により、振幅情報のみを抽出する。この処理を設けることにより、表示される3次元画像の視認性を良好とすることができる。
【0053】
次いでステップS4では、水底検出処理を行う。この処理は、水中と低泥の境目(水底表面)を検知するもので、具体的には、反射信号レベルがある閾値を初めて越えたところとして認識する。
【0054】
次いでステップS5では、閾値処理を行う。この処理は、ある閾値以上の信号成分のみを抽出することにより、微弱なノイズ成分を除去する、一般的な処理である。
【0055】
次いでステップS6では、吸収減衰量補正処理を行う。この処理は、水底面下の堆積層内における音波の吸収減衰量α[dB/m]として、簡易線形モデルを想定した下記式を用いて求める。
Ad = Ai・exp(−αd)
(但し、Adは水底表面から距離dの位置における信号レベル,Aiは水底表面での信号レベルである。)
【0056】
次いでステップS7では、Cモード画像生成処理を行う。この処理は、ステップS6で吸収減衰量補正を行った水底表面からの距離d(深さ)毎に、上記所定範囲の信号レベルを纏めて、各距離d毎の2次元データを構築して、これを記憶する処理であり、この2次元データは、各距離d毎の2次元断層画像に対応する。実施例では、2次元断層画像は1,600枚構築している。
【0057】
次いでステップS8では、3次元画像生成処理を行う。この処理は、上記ステップ6にて得られた各距離d毎の2次元データを、距離方向に並べ、即ち積み上げて3次元画像のデータを生成し、これを記憶するものである。
【0058】
尚、以上の処理の流れにおいて、ステップS5とステップS6は、逆にすることもできる。
【0059】
次いでステップS9では、アルファブレンド処理を行う。この処理は、3次元画像出力における描画処理として一般に行われている処理であり、3次元画像データの各画素毎に、透過度に対応する計数α(アルファ値)を設定することにより、遠近感のある3次元画像を構築するものである。
【0060】
上述したとおり、アルファブレンド処理自体は一般的であるが、本発明に係る実施の形態では、3次元画像の視点から遠くにあるものから描画処理を行い、より近くの画素の描画において、それまでに描画されていた画素との重なりが生じた際には、下記の式に従って、描画する近くの画素の輝度(lout)を設定する処理を行っている。
lout = lfront・α+lnow・(1−α)
(但し、loutは今描画する近くの画素の輝度、lfrontは今描画しようとしている近くの画素の元の輝度、lnowは既に描画されている画素の輝度である。)
【0061】
以上の処理を行うことで、ステップS10においては、水底の所定範囲、例えば、実施例では80 (X方向)×85 (Y方向) cm2の範囲の堆積層の3次元音響データを高精度(例えば精度0.1mm)、高分解能で、3次元的に美しく、そして必要情報を直感的に把握可能なように描画することができる。堆積層の情報をディスプレイに表示した3次元画像の一例を図11に示している。
【0062】
尚、ステップS10の画像出力処理では、ステップS8にて得られた3次元画像のデータに基づいて、画像出力装置(ディスプレイ,プリンタ等)に出力する際、画像出力は、3次元画像のデータに基づいて、3次元画像出力、水平方向・垂直方向等の2次元断面画像出力等、適宜に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は以上の通りであるので、以下に示すような各種の利用を行うことができ、産業上の利用可能性が大である。
1.堆積泥の厚み計測…これによって柱状コアリングを簡素化することができる。
2.農業IT技術と組み合わせた根菜類の管理
3.堆積泥に覆われた沈没船の精密な形状計測
4.堆積泥に覆われた兵器等の精密な形状計測
5.埋設された海底ケーブルの精密な形状計測
6.堆積泥中に生息する水産生物の資源量調査、資源管理、生態把握
【符号の説明】
【0064】
1 フレーム構造基体
2(2a,2b) フレーム部材
3x,3y ガイドレール部
4 移動フレーム部材
5x,5y モータ
6x,6y 送りネジ
7x,7y ナット部材
8 音響計測部
9 支持部材
10 支持杆体
11 送波器
12 受波器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11