【文献】
Kazufumi Kawahara et. al.,,Dendritic, Nanosized Building Block for Siloxane-Based Material: A Spherosilicate Dendrimer,Chem. Eur. J.,2011年,vol.17,p.13188-13196
【文献】
Felix Eckstorff et. al.,Materials with tunable low-kappa dielectric constant derived from functionalized octahedral silsensquioxanes and spherosilicates,Polymer,2011年,vol.52,p.2492-2498
【文献】
Ruo Qing Su et. al.,A New Type of Low-kappa Dielectric Films Based on Polysilsesquioxanes,Adv. Mater.,2002年,vol. 14, no.19,p.1369-1373
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明で用いる用語について説明する。
【0036】
式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と表記することがある。他の式で表される化合物についても同様に簡略化して称することがある。
【0037】
本発明において「少なくとも1つの“A”は、“B”で置き換えられてもよい」の表現は、“A”が1つのとき、“A”の位置は任意であり、“A”の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できることを意味する。「少なくとも1つのAが、B、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合、および任意のAがDで置き換えられる場合、さらに複数のAがB、C、Dの少なくとも2つで置き換えられる場合を含むことを意味する。例えば、少なくとも1つの−CH
2−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニルおよびアルケニルオキシアルキルが含まれる。
【0038】
なお、アルキルまたはアルキレンにおける任意の−CH
2−が−O−で置き換えられてもよいという設定には、連続する複数の−CH
2−のすべてが−O−で置き換えられることは含まれない。また、−O−O−のように、酸素原子が複数連続することはない。
【0039】
実施例においては、電子天秤の表示データを質量単位であるg(グラム)を用いて示した。質量%や質量比はこのような数値に基づくデータである。
【0040】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱または光照射により硬化することが可能な、(A)ケイ素化合物、(B)ケイ素を分子内に含有しないエポキシおよび/またはオキセタン樹脂、(C)シランカップリング剤、並びに(D)硬化剤を含む。
【0041】
<(A)ケイ素化合物>
本発明の硬化性樹脂組成物はアルコキシシリルおよび/またはシラノールを有するケイ素化合物を含む。アルコキシシリルを有するケイ素化合物は、以下の化合物(a)と化合物(b)とのヒドロシリル化反応により得られる。
化合物(a)1分子中にSiHを2個以上有する、シルセスキオキサン誘導体。
化合物(b)1分子中にアルコキシシリルと、炭素数が2〜18のアルケニルとを有する化合物。
【0042】
前記化合物(a)と化合物(b)とのヒドロシリル化反応により得られるアルコキシシリルを有するケイ素化合物を加水分解することで、シラノールを有するケイ素化合物に変換することができる。シラノール化することにより、アルコキシシリル基またはシラノールを有する他の化合物との架橋が速やかに進行し、高い水蒸気バリア性、高透明性、低熱膨張性、高ガラス転移温度、耐ヒートサイクル性、密着性の少なくとも1つ以上の物性を獲得できるである。
【0043】
また、前記化合物(a)と化合物(b)とのヒドロシリル化反応により得られるアルコキシシリルを有するケイ素化合物は、ナノフィラー等のナノ補強体と架橋し、良好な分散状態を保つことができる。また、本発明のケイ素化合物と架橋を形成したナノフィラー複合体は、他の成分との相溶性にも優れているため、硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物は、均一で密な架橋を形成することが可能で、より一層の高い水蒸気バリア性、密着性、低熱膨張性、高ガラス転移温度の物性を獲得できる、また、組成物中における蛍光体の沈降を防ぐこともできる。
【0044】
化合物(a)のSi−H基の数は2個以上であり、4個であることが好ましい。
【0045】
化合物(b)は、1分子中にアルコキシシリルと、炭素数が2〜18のアルケニルとを有する化合物である。アルコキシシリルとしては、例えば、メトキシシリル、エトキシシリル、プロポキシシリルおよびブトキシシリルが挙げられる。化合物(b)の分子量は、100〜500が好ましく、分子量100〜250がより好ましい。
【0046】
本発明に用いる(A)ケイ素化合物中の、化合物(a)および化合物(b)のそれぞれに由来する構成単位の割合は、各化合物のモル分率をそれぞれω、ψとすると、[ω×化合物(a)1分子に含まれるSiH基の数}≦{ψ×化合物(b)1分子に含まれるアルケニルの数}とすることが好ましい。
【0047】
化合物(a)と化合物(b)とのヒドロシリル化反応は、化合物(a)および化合物(b)を同時に加えてヒドロシリル化反応を行ってもよいが、過剰量の化合物(b)を徐々に滴下することで発熱を制御し、未反応のSiH基と化合物(b)のアルケニルとをヒドロシリル化反応させることにより行うことが好ましい。
【0048】
ヒドロシリル化反応は溶剤中で行うことが好ましい。ヒドロシリル化反応に用いる溶剤は、反応の進行を阻害しないものであれば特に制限されない。好ましい溶剤としては、ヘキサンおよびヘプタンなどの炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン(THF)およびジオキサンなどのエーテル系溶剤、塩化メチレンおよび四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素系溶剤、並びに酢酸エチルなどのエステル系溶剤などが挙げられる。
【0049】
これらの溶剤は単独で使用しても、その複数を組み合わせて使用してもよい。これらの溶剤の中でも、芳香族炭化水素系溶剤が好ましく、その中でもトルエンが最も好ましい。
【0050】
ヒドロシリル化反応は室温で実施してもよい。重合を促進させるために加熱してもよい。重合による発熱または好ましくない重合等を制御するために冷却してもよい。ヒドロシリル化重合では、必要に応じてヒドロシリル化触媒を用いることができる。
【0051】
ヒドロシリル化触媒を添加することによって、重合をより容易に進行させることができる。ヒドロシリル化触媒としては、カルステッド触媒、スパイヤー触媒、ヘキサクロロプラチニック酸などが好ましく利用できる。
【0052】
これらのヒドロシリル化触媒は、反応性が高いので少量の添加で十分に反応を進めることができる。その使用量は、触媒に含まれる遷移金属のヒドロシリル基に対する割合で、10
−9〜1モル%であることが好ましく、10
−7〜10
−3モル%であることがより好ましい。
【0053】
1分子中にSi−H基を2個以上有するシルセスキオキサンとしては、下記の式(a−1)〜式(a−5)で表わされる化合物が例示できる。化合物(a)は、下記式(a−1)〜式(a−5)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0057】
式(a−1)〜式(a−5)において、Rは炭素数1〜45のアルキル、炭素数4〜8のシクロアルキル、炭素数6〜14のアリールおよび炭素数7〜24のアリールアルキルから独立して選択される基である。
【0058】
炭素数1〜45のアルキルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして隣接しない少なくとも1つの−CH
2−は、−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよい。
【0059】
炭素数6〜14のアリールおよび炭素数7〜24のアリールアルキル中のベンゼン環において、少なくとも1つの水素はハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよい。この炭素数1〜10のアルキルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして隣接しない少なくとも1つの−CH
2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよい。
【0060】
アリールアルキル中のアルキレンの炭素数は1〜10であり、そして隣接しない少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよい。
【0061】
Rはシクロペンチル、シクロヘキシル、フェニルおよび素数1〜10のアルキルから独立して選択される基であることが好ましい。この炭素数1〜10のアルキルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして隣接しない少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよい。また、フェニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素等のハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよい。
【0062】
Rはシクロペンチル、シクロヘキシル、または少なくとも1つの水素が塩素、フッ素、メチル、メトキシまたはトリフルオロメチルで置き換えられてもよいフェニルであることがより好ましく、シクロヘキシルまたはフェニルであることが更に好ましく、そしてフェニルであることが最も好ましい。
【0063】
式(a−1)〜式(a−5)において、R
1およびR
2は、炭素数1〜4のアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびフェニルから独立して選択される基である。炭素数1〜4のアルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、2−メチルエチル、ブチルおよびt−ブチルである。R
1またはR
2の好ましい例はメチルおよびフェニルである。R
1およびR
2は同じ基であることが好ましい。
【0064】
式(a−1)〜式(a−5)において、各化合物の1分子中、Xは、少なくとも2個が水素であり、残りのXは、炭素数1〜4のアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびフェニルから独立して選択される基である。
【0065】
式(a−4)および式(a−5)において、nは1〜100の整数である。
【0066】
化合物(a)としては、下記式(a−1−1)で表わされる化合物がより好ましい。
【0068】
式(a−1−1)において、Meはメチルを示す。式(a−1−1)の化合物は国際公開第2004/024741号に記載された方法に従って合成することができる。また、その他の化合物も公知の方法に従って入手することができる。
【0069】
化合物(b)は、好ましくは式(b−1)で表される化合物である。
【0071】
式(b−1)において、R
3は炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルケニルにおける少なくとも1つの−CH
2−は−O−または1,4−フェニレンで置き換えられてもよく、R
4は炭素数1〜6のアルキルまたは水素であり、このR
4における少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよい。ただし、−O−O−のように、酸素原子が複数連続することはない。
【0072】
化合物(b)は、より好ましくは式(b−1−1)〜式(b−1−6)、式(b−2−1)〜式(b−2−2)および(b−3−1)で表わされる化合物である。
【0075】
これらの式において、Meはメチル、Etはエチル、Prはプロピル、iPrはi−プロピル、Buはブチル、tBuはt−ブチルを表す。
【0076】
なお、式(b−1−1)で表わされる化合物はJNC株式会社より販売されているサイラプレーンS210(商品名)、式(b−1−2)で表わされる化合物は、JNC株式会社より販売されているサイラプレーンS220(商品名)、が使用できる。
【0077】
本発明に用いる(A)ケイ素化合物は、下記式(α−I)〜(α−V)で示されるシルセスキオキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0080】
式(α−I)〜(α−V)において、R
5は炭素数1〜6のアルキルまたは水素であり、このR
5における少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよい。ただし、−O−O−のように、酸素原子が複数連続することはない。Meはメチルを表わす。式(α−III)および(α−V)においてpは0<p<4を満たす数である。
【0081】
本発明に用いる(A)ケイ素化合物の具体例としては、下記式(α1)〜(α8)で示されるシルセスキオキサンが挙げられる。
【0085】
式(α5)、(α6)、(α8)において、pは0<p<4を満たす数であり、式(α1)〜(α8)において、Meはメチルを、Etはエチルを表わす。
【0086】
アルコキシシリルとアルケニルとを有する化合物(b)と、1分子中にSi−H基を2個以上有するシルセスキオキサンである化合物(a)とのヒドロシリル化反応により得られる(A)ケイ素化合物は、前記式(α)で示すように、アルコキシシリル基および/またはシラノールを有する。ここでシラノールは、前記した通り、アルコキシシリル基を加水分解することにより得ることができる。
【0087】
国際公開第2004/024741号には、四官能ダブルデッカー型シルセスキオキサンに関し、アルコキシシランを有する構造が開示されている。これに対し、本発明の硬化性樹脂組成物における(A)ケイ素化合物は、アルキル基がヒドロシリル化により導入されており、化学構造が異なる。また、ヒドロシリル化においては、アルケニル基含有シランカップリング剤を種々選択できるため、一つのSiに対して物性を種々選択できることから、物性が異なると考えられる。さらに、低粘度、流動性がよく、ハンドリングに優れるとともに、官能基がダブルデッカー型構造の外側に付加しており、かつアルキル鎖が長くなったことにより、他成分との架橋がしやすくなるため硬化が速く、また密な硬化膜を形成できるため、その結果ガスバリア性が向上するという利点が得られる。
【0088】
本発明の硬化性樹脂組成物における(A)ケイ素化合物は、エポキシ基を有していないので、エポキシ基の架橋ではなく、アルコキシシリル基の縮合・架橋によって硬化性樹脂組成物を生成することが可能となる。エポキシ基を多く含む場合、着色および黄変性の問題があるが、本発明における(A)ケイ素化合物は、エポキシ基を有さず、アルコキシシリル基の縮合・架橋により硬化物を得ることが可能であり、(A)ケイ素化合物により得られる硬化性樹脂組成物は、得られる硬化性樹脂組成物におけるエポキシ基が少ないため、透明性に優れている。また、アルコキシシリル基を含有することにより、他のアルコキシシリル基またはシラノール有する他成分と縮合架橋し、さらに、ダブルデッカー型の構造であることから、他成分との相溶性に優れるため、ボイドの少ない均一で密な架橋構造を形成することができる。そのため、(A)ケイ素化合物を含む本発明の硬化性樹脂組成物は、長期耐久性が低いジメチルシリコーンの構造がベースとなっている硬化性樹脂組成物と比較して、長期にわたりガスバリア性およびその他物性を維持できる。ゆえに、封止樹脂として優れている。
【0089】
本発明の硬化性樹脂組成物における(A)ケイ素化合物の含有量は、硬化性樹脂組成物の合計量を基準として、10〜90質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。この範囲とすることで、耐熱性、透明性、耐黄変性、耐熱黄変性、耐光性、高ガスバリアー性、高密着性、に関して優れた特性を示す。
【0090】
<(B)ケイ素を分子内に含有しないエポキシおよび/またはオキセタン樹脂>
本発明の硬化性樹脂組成物は、ケイ素を分子内に含有しないエポキシおよび/またはオキセタン樹脂を含む。なお、本発明においては、4員環の環状エーテルであるオキセタン化合物またはオキセタン樹脂も含めてエポキシ樹脂と称することがある。
【0091】
ケイ素を分子内に含有しない化合物エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(γ)で表わされる化合物または下記式(δ)で表わされる水素化されたビスフェノール−A型のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0093】
このうち前記式(γ)で表されるエポキシ樹脂は、例えば、(株)ダイセル製のセロキサイド(商品名) 2021Pとして市販されており、前記式(δ)で表されるエポキシ樹脂は、例えば、三菱化学(株)製のjER(商品名)YX8000として市販されており容易に入手が可能である。
【0094】
また、ケイ素を分子内に含有しない四員環のエポキシ樹脂の具体例としては、東亞合成(株)製アロンオキセタン(登録商標)などのオキセタン樹脂が挙げられる。
【0095】
本発明の硬化性樹脂組成物における、(B)ケイ素を分子内に含有しないエポキシおよび/またはオキセタン樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の合計量を基準として、0.1〜80質量%であることが好ましく、1〜40質量%であることがより好ましい。この範囲とすることで、基板に対する硬化樹脂の密着性を向上し、また、硬化性樹脂組成物の粘度を調整することができる。
【0096】
<(C)シランカップリング剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含む。シランカップリング剤を含むことにより、上記(A)のケイ素化合物および(B)のケイ素を分子内に含有しないエポキシ樹脂および/またはオキセタン樹脂と架橋を形成し、架橋密度の高い硬化物が得られるため、ガスバリア性を向上できる。また、適宜シランカップリング剤を選択することで基材との密着性を向上することができる。さらに、ナノ構造体および蛍光体の分散性を高めることができる。シランカップリング剤としては、例えば、下記一般式で示される化合物が挙げられる。
【0098】
前記式において、R
6はFG−R
8−で表される反応性の官能基を有する基であり、FGはエポキシ、オキセタニル基、アミノ基、ビニル基、チーオル基、イソシアネート基、スチリル基、(メタ)アクリルであり、R
8は炭素数1〜10の直鎖状または環状のアルキレンまたはフェニレンである。R
7は炭素数1〜4のアルキルである。Zは、0〜3の整数である。
【0099】
本発明の硬化性樹脂組成物において、シランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン[JNC(株)製「サイラエース(登録商標)S530」]、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン[JNC(株)製「サイラエース(登録商標)S510」]、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン[JNC(株)製「サイラエース(登録商標)S810」]が、透明性、硬化性樹脂組成物中の保存安定性の観点から特に好ましい。
【0100】
本発明の硬化性樹脂組成物における(C)シランカップリング剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の合計量を基準として、0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。この範囲とすることで、基板に対する硬化性樹脂組成物の密着性を向上させ、高い透明性を示す。
【0101】
(C)シランカップリング剤としては、下記式(c−1−1)で表わされる化合物や下記式(c−2−1)で表わされる化合物や下記式(c−3−1)で表わされるシランカップリング剤が例示できる。
【0103】
<(D)硬化剤>
硬化剤は、用いる(A)アルコキシシリルおよび/またはシラノールを有するケイ素化合物の種類によって適宜選択すればよく、例えば、上記式(a−1)〜式(a−5)を用いる場合、これらの式中のXの種類によって適宜選択することができるが、カチオン重合開始剤または金属キレート化合物または有機金属化合物が好ましく用いられる。
【0104】
カチオン重合開始剤としては、例えば、紫外線などの活性エネルギー線によりカチオン種またはルイス酸を発生する活性エネルギー線カチオン重合開始剤(光カチオン重合開始剤)、および熱によりカチオン種またはルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤を挙げることができる。
【0105】
活性エネルギー線カチオン重合開始剤としては、例えば、金属フルオロホウ素錯塩および三フッ化ホウ素錯化合物、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、周期表第IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF
6(陰イオンの形の周期表第VIb族元素;Mはリン、アンチモンおよび砒素から選択される)、アリールスルホニウム錯塩、芳香族ヨードニウム錯塩および芳香族スルホニウム錯塩、並びにビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩が挙げられる。その他、鉄化合物の混合配位子金属塩も使用することができる。
【0106】
また、活性エネルギー線カチオン重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウムまたはヨードニウム塩、並びに周期表第II族、Va族およびVIa族元素の芳香族オニウム塩などが挙げられる。これらの塩のいくつかは商品として入手できる。
【0107】
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、トリフリック酸塩および三弗化ホウ素等のカチオン系触媒またはプロトン酸触媒が挙げられ、トリフリック酸塩が特に好ましい。トリフリック酸塩としては、例えば、トリフリック酸ジエチルアンモニウム、トリフリック酸ジイソプロピルアンモニウム、およびトリフリック酸エチルジイソプロピルアンモニウムが挙げられる。
【0108】
一方、活性エネルギー線カチオン重合開始剤としても用いられる芳香族オニウム塩のうち、熱によりカチオン種を発生するものがあり、これらも熱カチオン重合開始剤として用いることができる。
【0109】
これらのカチオン重合開始剤の中で、芳香族オニウム塩が、取り扱い性、潜在性および硬化性のバランスに優れるという点で好ましい。芳香族オニウム塩の中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩が取り扱い性および潜在性のバランスに優れるという点で好ましい。
【0110】
カチオン重合開始剤は、単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0111】
金属キレート塩化合物としては、例えば、有機アルミニウム化合物とシラノール基を有する有機ケイ素化合物との複合触媒または有機アルミニウム化合物とアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物との複合触媒、有機チタンキレート型化合物が挙げられる。
【0112】
有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリスアセチルアセトナートアルミニウム、トリスエチルアセトナートアルミニウム、トリスサリチルアルデヒダードおよびトリス(オルト−カルボニルフェノラート)アルミニウム等のアルミニウム錯体、ステアリン酸アルミニウムおよび安息香酸アルミニウム等のアルミニウム金属塩、並びにアルミニウムアルコキシドなどが挙げられ、有機チタンキレート化合物としては、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラ(アセチルアセトナート)、ジオクタノキシチタンジオクタネート、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。
【0113】
金属キレート塩化合物は、単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0114】
有機金属化合物としては、有機錫化合物が挙げられる。例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジマレイン酸モノブチルエステル、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫ジマレイン酸モノブチルエステル、ビス(アセトキシジブチル錫)オキサイド、ビス(ラウロキシジブチル錫)オキサイド、ジブチル錫オキシアセテートジブチル錫オキシオクチレート、ジブチル錫オキシラウレートジブチル錫ビスメチルマレートが挙げられる。
【0115】
有機金属化合物は、単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0116】
本発明の硬化性樹脂組成物における(D)硬化剤の含有量は、特に限定されないが硬化反応が十分に進行して目的とする硬化物が得ることができ、硬化物の物性低下を招かず、硬化物に着色を引き起さないためには、硬化性樹脂組成物の合計量を基準として、0.01〜10.0質量%であることが好ましく、0.03〜3.0質量%であることがより好ましい。また、カチオン重合開始剤、金属キレート化合物および有機金属化合物の2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0117】
<ナノ補強材>
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記(A)〜(D)で示される成分に加えてナノ補強材を含有してもよい。ナノ補強材としては、例えば、ナノシリカフィラーが挙げられる。
【0118】
使用するナノシリカとしては、平均粒径が1nm〜1,000nm未満で、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜50nm)の湿式や乾式の煙霧シリカや溶融シリカ等が代表的なものである。例えば、日本アエロジル(株)製のアエロジル200(商品名)、アエロジル300(商品名)、アエロジルRX300(商品名)、アエロジルR812(商品名)、アエロジルR8200(商品名)、アエロキサイドAlu130(商品名)、アエロキサイドTiO
2P25(商品名)が挙げられる。(アエロジルおよびアエロキサイドは登録商標)
【0119】
本発明の硬化性樹脂組成物における、ナノ補強材の含有量は、硬化性樹脂組成物の合計量を基準として、1〜30質量%であることが好ましい。
【0120】
ナノ補強体と本発明のケイ素化合物と架橋反応は、溶剤中ナノ補強体と本発明のケイ素化合物を加え、80〜220℃の温度で、1〜48時間撹拌還流させることにより、得ることもできる。
【0121】
この際にもし、ナノフィラーの凝集などにより、ナノレベルの分散状態を得られなかった場合、このナノ補強体と本発明のケイ素化合物の溶液を、スギノマシン(株)製スターバースト(商品名)により、数十回程の操作を繰り返すことで、ナノレベルの分散状態を得ることができる。
【0122】
場合によっては、さらに加熱還流条件でナノ補強体と本発明のケイ素化合物の架橋反応を進めてもよい。得られたナノ補強体と本発明のケイ素化合物との架橋体は、遠心分離させることで溶剤と粒子に分別し、乾燥後取得することができる。
【0123】
<蛍光体>
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記(A)〜(D)で示される成分に加えて蛍光体を含有してもよい。蛍光体は、発光ダイオード(LED)用の蛍光体として用いられている無機粒子であることが好ましく、LED用蛍光体であることがより好ましい。
【0124】
蛍光体としては、例えば、YAGと称され広く利用されている(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce
3+、(Ba,Sr,Ca)
2SiO
4:Eu
2+および窒化物蛍光体であるCaAlSiN
3:Eu
2+などが挙げられる。
【0125】
本発明の硬化性樹脂組成物における、蛍光体の含有量は、色変換材料を透過する光の透過率および色と深く関係することから、硬化性樹脂組成物の合計量を基準として、5〜50質量%であることが好ましい。
【0126】
硬化性樹脂組成物における蛍光体の含有量が50質量%以下であれば、透過率が下がり輝度が低下してしまうことがなく、また、5質量%以上であれば、透過する光の色が変化しない。
【0127】
<蛍光体の表面処理>
本発明の硬化性樹脂組成物に用いる蛍光体は、分散性、透明性、耐候性および耐湿性等を向上させるために、前記シランカップリング剤によって、表面処理することが好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で併用してもよい。
【0128】
蛍光体表面へのシランカップリング剤の使用量は、本発明の樹脂硬化物の効果を著しく損なわない限り、特に限定されないが、蛍光体の質量に対して、0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0129】
蛍光体の質量に対して、シランカップリング剤の使用量が0.1質量%以上であれば、表面被覆が不完全とはならず、分散性、透明性、耐候性、耐湿性の改善ができ、5質量%以下であれば、蛍光体の発光特性が損なわれることがない。
【0130】
<有機溶剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに有機溶剤を含んでもよい。ここで、有機溶剤としては、例えば、ヘキサンおよびヘプタンなどの炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン(THF)およびジオキサンなどのエーテル系溶剤、塩化メチレンおよび四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素系溶剤、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、並びにアセトンおよび2−ブタノンなどのケトン系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0131】
本発明の硬化性樹脂組成物における有機溶剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の合計量を基準として、0〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。この範囲とすることで、硬化性樹脂組成物の粘度を下げることができる。
【0132】
<安定剤;酸化防止剤>
本発明の硬化性樹脂組成物には、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤を添加することにより、加熱時の酸化劣化を防止し着色の少ない硬化物とすることができる。酸化防止剤の例は、フェノール系、硫黄系およびリン系の酸化防止剤である。
【0133】
本発明の硬化性樹脂組成物における酸化防止剤の配合割合は、硬化性樹脂組成物全量を基準とする質量比で0.0001〜0.1であることが好ましい。
【0134】
酸化防止剤としては、例えば、モノフェノール類、ビスフェノール類、高分子型フェノール類、硫黄系酸化防止剤、ホスファイト類およびオキサホスファフェナントレンオキサイド類が挙げられる。
【0135】
モノフェノール類としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノールおよびステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが挙げられる。
【0136】
ビスフェノール類としては、例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)および3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが挙げられる。
【0137】
高分子型フェノール類としては、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジンー2,4,6−(1H,3H,5H)トリオンおよびトコフェノールが挙げられる。
【0138】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネートおよびジステアリルル−3,3’−チオジプロピオネートが挙げられる。
【0139】
ホスファイト類としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトおよびビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイトが挙げられる。
【0140】
オキサホスファフェナントレンオキサイド類としては、例えば、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドおよび10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドが挙げられる。
【0141】
これらの酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、フェノール系/硫黄系またはフェノール系/リン系と組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0142】
市販のフェノール系の酸化防止剤としては、BASFジャパン(株)製「IRGANOX 1010(商品名)」や「IRGAFOS 168(商品名)」をそれぞれ単独で使用することができ、また、これらを混合して使用することもできる。(IRGANOXおよびIRGAFOSは登録商標)
【0143】
<接着助剤>
本発明の硬化性樹脂組成物には、基材との密着性を向上させるため、イソシアヌル環を有するシランカップリング剤を接着助剤として任意の添加量を必要に応じて加えることが好ましい。イソシアヌル環を有するシランカップリング剤の例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0145】
本発明の硬化性樹脂組成物における接着助剤の配合量は、硬化性樹脂組成物全量を基準とする質量比で0.1〜1.0であることが好ましい。
【0146】
<安定剤;紫外線吸収剤>
本発明の硬化性樹脂組成物には、耐光性を向上させるために紫外線吸収剤を配合してもよい。紫外線吸収剤としては、一般のプラスチック用の紫外線吸収剤が使用できる。本発明の硬化性樹脂組成物における配合割合は、硬化性樹脂組成物全量を基準とする質量比で0.0001〜0.1であることが好ましい。
【0147】
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸類、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類およびヒンダートアミン類が挙げられる。
【0148】
サリチル酸類としては、例えば、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレートおよびp−オクチルフェニルサリシレートが挙げられる。
【0149】
ベンゾフェノン類としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンおよび2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンが挙げられる。
【0150】
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジtert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジtert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジtert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールおよび2−{(2’−ヒドロキシ−3’,3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0151】
ヒンダートアミン類としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートおよびビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル}メチル]ブチルマロネートが挙げられる。
【0152】
<硬化物の作製>
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、例えば、以下の方法で作製できる。
【0153】
下記(I)液および(II)液を調製する。
(A)アルコキシシリルおよび/またはシラノールを有するケイ素化合物、任意の量の(B)ケイ素を分子内に含有しないエポキシおよび/またはオキセタン樹脂、表面処理された蛍光体、任意の量のシランカップリング剤および安定剤を混合する(I)液。
(D)硬化剤と任意の量の(B)ケイ素を分子内に含有しないエポキシおよび/またはオキセタン樹脂および(C)シランカップリング剤、さらに必要に応じて上記有機溶剤を混合する(II)液。
【0154】
それぞれ調製した(I)液、(II)液を攪拌し混合した後、減圧して脱泡する。そしてこの混合物をフィルム等の支持基材に塗布または型に流し込み、硬化剤として熱カチオン重合開始剤を添加した場合は、125℃で1時間加熱し、最後に150℃で2〜5時間加熱することで硬化でき、光カチオン硬化剤を添加した場合は100〜2000mJ/cm
2の紫外線(i線)を露光することで硬化させることができる。
【0155】
本発明の硬化性樹脂組成物中に硬化促進剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤等の添加剤を混合してもよい。
【0156】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の透明性は、耐熱試験前後の硬化物の透過率を紫外可視分光光度計で測定し、JIS K7363(1999年)に従って計算される黄色度(YI値)及び光線透過率の保持率により評価したときに、150℃での黄色度(YI値)及び光線透過率の保持率がそれぞれ20以下、70%以上であることが好ましい。これらの範囲内にそれぞれの値が入る場合には、硬化物は、無色で透明性が高いことを示しており、透明性が要求される光半導体封止剤などの分野に特に好ましく利用できる。
【0157】
本発明の硬化性樹脂組成物を熱硬化または光硬化させて、フィルム状、シート状または塗膜状とすることもできる。この様にして得られた硬化物は、様々な用途に用いることができる。
【0158】
本発明の硬化性樹脂組成物または該硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物の用途としては、例えば、シール材、封止材、絶縁膜、波長変換フィルム、光学レンズおよび接着剤などが挙げられる。これらの中でも、特にシール材、封止材および絶縁膜に特に好適である。
【0159】
封止材およびシール材は外界からの侵入物を遮断して内部を守る働きをする材料である。封止材は、例えば、穴を埋めたり、外界からの異物の侵入を防ぐ働きをする材料であり、具体例としては、光半導体(LED)封止材および半導体封止材が挙げられる。シール材としては、例えば、フィルムまたは層などを接着材として張り合わせる材料が挙げられる。絶縁膜としては、例えば、積層基板における層間絶縁膜、および金属配線間の絶縁のために用いられる材料が挙げられる。
【0160】
また、本発明の硬化性樹脂組成物または該硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物を含む色変換材料(例えば、光半導体封止材および光学レンズ)は、光半導体素子に用いることができる。
【0161】
本発明の塗膜は本発明の硬化性樹脂組成物を基材上に塗布することにより得られる。
【実施例】
【0162】
本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって限定されない。
【0163】
<エポキシ基を有するケイ素化合物の合成>〔合成例1〕
下記式により化合物(A1)を製造した。
【0164】
【化28】
【0165】
窒素雰囲気下、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた内容積300mLの反応容器に、国際公開第2004/024741号に開示されている方法により合成した化合物(a−1−1)(100g)、乾燥トルエン(100g)を仕込み、乾燥窒素でシールした。マグネチックスターラーで攪拌しながら反応温度が100℃になるように加熱した。
【0166】
マイクロシリンジを用いてPt触媒(30μL)を添加し、滴下ロートからJNC(株)製サイラプレーンS210(商品名)(54.6g)をゆっくりと滴下し、2時間攪拌した。冷却後、粗生成物に3質量%の活性炭を加えて終夜室温下で攪拌した。
【0167】
その後、ろ過を行い、ろ液をエバポレーターで濃縮した。真空下100℃で乾燥・モノマーを除去し、無色透明粘稠液体を得た(収量145g)。
【0168】
〔合成例2〕
下記式により化合物(A2)を製造した。
【0169】
【化29】
【0170】
窒素雰囲気下、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた内容積500mLの反応容器に、国際公開第2004/024741号に開示されている方法により合成した化合物(a−1−1)(100g)、乾燥トルエン(100g)を仕込み、乾燥窒素でシールした。マグネチックスターラーで攪拌しながら反応温度が100℃になるように加熱した。
【0171】
マイクロシリンジを用いてPt触媒(30μL)を添加し、滴下ロートからJNC(株)製サイラプレーンS220(商品名)(70.2g)をゆっくりと滴下し、2時間攪拌した。冷却後、粗生成物に3質量%の活性炭を加えて終夜室温下で攪拌した。
【0172】
その後、ろ過を行い、ろ液をエバポレーターで濃縮した。真空下100℃で乾燥・モノマーを除去し、無色透明粘稠液体を得た(収量158g)。
【0173】
〔合成例3〕
下記式により化合物(A3)を製造した。
【0174】
【化30】
【0175】
窒素雰囲気下、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた内容積500mLの反応容器に、国際公開第2004/024741号に開示されている方法により合成した化合物(a−1−1)(100g)、乾燥トルエン(100g)を仕込み、乾燥窒素でシールした。マグネチックスターラーで攪拌しながら反応温度が100℃になるように加熱した。
【0176】
マイクロシリンジを用いてPt触媒(30μL)を添加し、滴下ロートから東京化成工業(株)製ジメトキシメチルビニルシラン(48.3g)をゆっくりと滴下し、2時間攪拌した。冷却後、粗生成物に3質量%の活性炭を加えて終夜室温下で攪拌した。
【0177】
その後、ろ過を行い、ろ液をエバポレーターで濃縮した。真空下100℃で乾燥・モノマーを除去し、無色透明粘稠液体を得た(収量140g)。
【0178】
〔合成例4〕
下記式により化合物(A4)を製造した。
【0179】
【化31】
【0180】
窒素雰囲気下、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた内容積300mLの反応容器に、国際公開第2004/024741号に開示されている方法により合成した化合物(a−1−1)(100g)、乾燥トルエン(100g)を仕込み、乾燥窒素でシールした。マグネチックスターラーで攪拌しながら反応温度が100℃になるように加熱した。
【0181】
マイクロシリンジを用いてPt触媒(30μL)を添加し、滴下ロートから東京化成工業(株)製ジメトキシエチルビニルシラン(59.1g)を滴下し、2時間撹拌した。冷却後、粗生成物に3質量%の活性炭を加えて終夜室温下で攪拌した。
【0182】
その後、ろ過を行い、ろ液をエバポレーターで濃縮した。真空下100℃で乾燥・モノマーを除去し、無色透明粘稠液体を得た(収量149g)。
【0183】
〔合成例5〕
下記式により化合物(A5)を製造した。
【0184】
【化32】
【0185】
窒素雰囲気下、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた内容積300mLの反応容器に、国際公開第2004/024741号に開示されている方法により合成した化合物(a−1−1)(100g)、乾燥トルエン(100g)を仕込み、乾燥窒素でシールした。マグネチックスターラーで攪拌しながら反応温度が100℃になるように加熱した。
【0186】
マイクロシリンジを用いてPt触媒(30μL)を添加し、滴下ロートから東京化成工業(株)製ジメトキシメチルビニルシラン(15.2g)を滴下し、1時間撹拌した。さらに、JNC(株)製サイラプレーンS210(商品名)(34.1g)を加え、3時間攪拌した。冷却後、粗生成物に3質量%の活性炭を加えて終夜室温下で攪拌した。
【0187】
その後、ろ過を行い、ろ液をエバポレーターで濃縮した。真空下100℃で乾燥・モノマーを除去し、無色透明粘稠液体を得た(収量143g)。
【0188】
〔合成例6〕
下記式により化合物(A6)を製造した。
【0189】
【化33】
【0190】
窒素雰囲気下、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた内容積300mLの反応容器に、国際公開第2004/024741号に開示されている方法により合成した化合物(a−1−1)(100g)、乾燥トルエン(100g)を仕込み、乾燥窒素でシールした。マグネチックスターラーで攪拌しながら反応温度が100℃になるように加熱した。
【0191】
マイクロシリンジを用いてPt触媒(30μL)を添加し、滴下ロートから東京化成工業(株)製ジメトキシエチルビニルシラン(18.5g)をゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。次いで、JNC(株)製サイラプレーンS210(34.1g)を滴下し、3時間撹拌した。冷却後、粗生成物に3質量%の活性炭を加えて終夜室温下で攪拌した。
【0192】
その後、ろ過を行い、ろ液をエバポレーターで濃縮した。真空下100℃で乾燥・モノマーを除去し、無色透明粘稠液体を得た(収量146g)。
【0193】
〔合成例7〕
下記式により化合物(A7)を製造した。
【0194】
【化34】
【0195】
窒素雰囲気下、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた内容積300mLの反応容器に、国際公開第2004/024741号に開示されている方法により合成した化合物(a−1−1)(100g)、乾燥トルエン(100g)を仕込み、乾燥窒素でシールした。マグネチックスターラーで攪拌しながら反応温度が100℃になるように加熱した。
【0196】
マイクロシリンジを用いてPt触媒(30μL)を添加し、滴下ロートから東京化成工業(株)製アリルトリメトキシシラン(59.8g)を滴下し、1時間撹拌した。冷却後、粗生成物に3質量%の活性炭を加えて終夜室温下で攪拌した。
【0197】
その後、ろ過を行い、ろ液をエバポレーターで濃縮した。真空下100℃で乾燥・モノマーを除去し、無色透明粘稠液体を得た(収量149g)。
【0198】
〔合成例8〕
下記式により化合物(A8)を製造した。
【0199】
【化35】
【0200】
窒素雰囲気下、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた内容積300mLの反応容器に、国際公開第2004/024741号に開示されている方法により合成した化合物(a−1−1)(100g)、乾燥トルエン(100g)を仕込み、乾燥窒素でシールした。マグネチックスターラーで攪拌しながら反応温度が100℃になるように加熱した。
【0201】
マイクロシリンジを用いてPt触媒(30μL)を添加し、滴下ロートから東京化成工業(株)製ジメトキシメチルビニルシラン(15.2g)を滴下し、1時間撹拌した。さらに、東京化成工業(株)製アリルトリメトキシシラン(37.3g)を加え、3時間攪拌した。冷却後、粗生成物に3質量%の活性炭を加えて終夜室温下で攪拌した。
【0202】
その後、ろ過を行い、ろ液をエバポレーターで濃縮した。真空下100℃で乾燥・モノマーを除去し、無色透明粘稠液体を得た(収量145g)。
【0203】
〔合成例9 アルコキシシリル基を有するケイ素化化合物の変性例1〕
下記式により化合物(A9)を製造した。
【0204】
窒素雰囲気下、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた内容積200mLの反応容器に、合成例1で合成した化合物(A1)(20g)、乾燥トルエン(30g)、東京化成工業(株)製ジフェニルシランジオール(10.0g)を仕込み、還流条件115℃で7時間加熱撹拌した。
【0205】
その後、反応溶液を濃縮し、無色透明粘稠液体を得た(収量28g)。
【0206】
〔合成10 アルコキシシリル基を有するケイ素化化合物の変性例2〕
化合物(A10)を製造した。
【0207】
窒素雰囲気下、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた内容積200mLの反応容器に、合成例1で合成した化合物(A1)(20g)、乾燥酢酸n−プロピル(20g)、蒸留水(1.33g)を仕込み、80℃で12時間加熱撹拌した。
【0208】
その後、反応溶液を濃縮し、無色透明粘稠液体を得た(収量18g)。
【0209】
[合成例11] ケイ素化合物とシリカゾルとの複合化(A11)
内容積300mLのナスフラスコに、合成例1で合成した化合物(A1)(10g)、日産化学(株)製シリカゾルIPA−ST(製品名;6.67g)を仕込み、47℃で12時間加熱撹拌し、表面修飾されたナノシリカ溶液を(A11)を得た。
【0210】
本実施例において使用した主な材料〔アルコキシシリルおよび/またはシラノールを有するケイ素化合物。〕
・合成例1〜11で製造した化合物(A1)〜(A11)
・下記式(β)に示す、脂環式エポキシ基を有するシルセスキオキサンである化合物(B);比較例として使用
【0211】
【化36】
【0212】
・東レダウコーニング社製シリコーン樹脂[OE−6630(製品名)];比較例として使用
【0213】
〔硬化剤〕
・熱カチオン重合開始剤:サンアプロ(株)製[TA100(商品名)]〔分子内にベンゼン環およびケイ素原子を含まないエポキシ樹脂〕
・(株)ダイセル製エポキシ樹脂[セロキサイド(商品名)CEL2021P]
・三菱化学(株)製エポキシ樹脂[jER(商品名)YX8000]
・東亞合成(株)製オキセタン樹脂[アロンオキセタン(商品名)OXT−221]〔安定剤〕
・BASFジャパン(株)製酸化防止剤[IRGANOX1010(商品名)]
・BASFジャパン(株)製酸化防止剤[IRGAFOS168(商品名)](セロキサイド、アロンオキセタン、IRGANOX、IRGAFOSは登録商標)
【0214】
(硬化物1〜12の作製)
スクリュー管に合成例1〜11で合成した化合物(A1)〜(A11)または化合物(β)、分子内にケイ素原子を含まないエポキシ樹脂、オキセタン樹脂、シランカップリング剤および安定剤の混合物を入れ、加熱攪拌・溶解し、次に硬化剤として熱カチオン重合開始剤を加え溶解した。
【0215】
なお、合成例10または11で合成した化合物(A10)または(A11)については、分子内にケイ素原子を含まないエポキシ樹脂、オキセタン樹脂、シランカップリング剤および安定剤の混合物を入れ、加熱撹拌・溶解させ、エバポレーターにより、原料由来の溶剤を減圧下留去した。
【0216】
スクリュー管を自転・公転ミキサー[株式会社シンキー製 あわとり練太郎ARE−250(商品名)]にセットし、混合・脱泡を行ない、ワニスとした。なお後述において、ワニスのことを硬化性樹脂組成物と記載することがある。
【0217】
(硬化方法1)
ワニスを気泡が入らないようにガラス基板上に100μmの厚さに塗工し、120℃に温めておいたオーブン中に置き、硬化させた。加熱は、120℃で1時間、150℃で5時間、180℃で2時間の順に行い、アルコキシシリル基を有するエポキシシルセスキオキサンの塗膜状硬化物を得た。得られた硬化物は、初期透過性、耐熱透明性、耐熱黄変性の試験に使用した。
【0218】
(硬化物13の作製)
東レダウコーニング社製のOE−6630は、メーカー指定の規定の比率で調合し、室温で5分撹拌した。次いで、あわとり錬太郎にて混合・脱泡した。ワニスを気泡が入らないようにガラス基板上に100μmの厚さに塗工し、80℃に温めておいたオーブン中に置き、硬化させた。加熱は、80℃で1時間、150℃で1時間行い、シリコーンの塗膜状硬化物を得た。得られた硬化物は初期透過率、耐熱黄変性試験、密着性試験に使用した。得られた硬化物は、初期透過性、耐熱透明性、耐熱黄変性の試験に使用した。
【0219】
(硬化方法2)
リフレクターがポリフタル酸アミド(PPA)またはポリアミド9(PA9T)であるLED用銀リードフレームにワニスを充填し、120℃に温めておいたオーブン中に置き、硬化させた。加熱は、120℃で1時間、150℃で5時間、180℃で2時間の順に行い封止した。得られたサンプルは密着性試験に使用した。
【0220】
表1および2に硬化物1〜12の組成を示す。
【0221】
【表1】
【0222】
【表2】
【0223】
硬化物1〜13から得られた硬化物の物性を以下の方法で評価した。
【0224】
<初期透明性>
各硬化物の波長400nmにおける光透過率は、紫外可視分光光度計(日本分光製、V−660)により、測定した。下記の基準で評価した。その結果を表3および4に示す。A:光透過率が98%以上
B:光透過率が90以上、98%未満
C:光透過率が80以上、90%未満
D:光透過率が80%未満
【0225】
<透過率保持率>
波長400nmにおける保持率(72時間熱処理後の光透過率/初期光透過率×100)を計算して評価した。その結果を表3および4に示す。
A:光透過率の保持率が95%以上
B:光透過率の保持率が80%以上、95%未満
C:光透過率の保持率が80%未満
【0226】
<耐熱黄変性>
また、硬化物の黄色度(YI値)を計算し、初期YIと72時間熱処理後のYIの差を評価した。その結果を表3および4に示す。
A:YIの差が0.1以下
B:YIの差が0.1を超え0.5以下
C:YIの差が0.5を超える
【0227】
【表3】
【0228】
【表4】
【0229】
<密着性試験1>
硬化物1〜13の調製工程で調製したワニスを、ガラス基板上に塗布し、上述の同様の条件にて100μm厚の硬化膜を作成した。JIS K−5400(1990年)に準拠し、すきま間隔1mm、100個のます目で碁盤目テープ法を用いて密着性試験を行い、下記の基準で評価した。その結果を表5および6に示す。
A:剥離個数0
B:剥離個数1〜70
C:剥離個数71〜100
【0230】
<密着性試験2>
硬化物1〜13の調製工程で調製したワニスを、リフレクターがポリフタル酸アミド(PPA)またはポリアミド9(PA9T)であるLED用銀リードフレームにワニスを充填し、上述の条件にて硬化し封止した。エスペック(株)社製小型冷熱衝撃装置を使用し−40℃、25分、105℃、25分を1サイクルとし、連続で50サイクル行いフレームからの剥離を以下の基準で評価した。その結果を表5および6に示す。
A:剥離個数0
B:剥離個数1〜6
C:剥離個数7〜10
【0231】
【表5】
【0232】
【表6】
【0233】
<耐硫黄ガス腐食試験>
硬化物1〜13の調製工程で調製したワニスを、底辺部が銀メッキされたパワーLED用のPPA樹脂パッケージ(エノモト(株)製 型番5050 D/G)16個に熱硬化性樹脂組成物をディスペンサー(武蔵株式会社製 型番MPP−1)で注入した後、80℃にて1時間加熱後、さらに150℃にて4時間加熱する条件で熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させた。このPPAパッケージを、イオウ粉末を0.2g入れたガラス容器内に入れた。60間後にPPA樹脂パッケージの腐食の状態を観察した。耐硫黄ガス性を下記の基準で評価した。その結果を表7および8に示す。
A:銀配線の変化なし
B:銀配線が着色している
C:銀配線が黒色に変化
【0234】
<水蒸気バリア性試験>
硬化物1〜13の調製工程で調製したワニスを、離形フィルムを貼ったコの字型の2枚の石英基板内に注入し、真空脱泡した後、上述の同様の条件にて1mm厚の硬化膜を作成した。JIS Z−0208(1976年)に準拠し、カップ法にて透湿度を下記の基準で評価した。その結果を表7および8に示す。
A:水蒸気透過率が0〜30(g/m
2・day)
B:水蒸気透過率が31〜50(g/m
2・day)
C:水蒸気透過率が50〜(g/m
2・day)
【0235】
<150℃耐熱試験後の耐硫黄ガス腐食試験>
硬化物1〜13の調製工程で調製したワニスを、底辺部が銀メッキされたパワーLED用のPPA樹脂パッケージ(エノモト(株)製 型番5050 D/G)16個に熱硬化性樹脂組成物をディスペンサー(武蔵株式会社製 型番MPP−1)で注入した後、80℃にて1時間加熱後、さらに150℃にて4時間加熱する条件で熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させた。このPPAパッケージを、150℃/500時間の耐熱試験後に、イオウ粉末を0.2g入れたガラス容器内に入れた。60時間後にPPA樹脂パッケージの腐食の状態を観察した。耐硫黄ガス性を下記の基準で評価した。その結果を表7および8に示す。
A:銀配線の変化なし
B:銀配線が着色している
C:銀配線が黒色に変化
【0236】
<150℃耐熱試験後の水蒸気バリア性試験>
上述の硬化物を150℃/500時間の耐熱試験後、同様にJIS Z−0208(1976年)に準拠し、カップ法にて透湿度を下記の基準で評価した。その結果を表7および8示す。
A:水蒸気透過率が0〜30(g/m
2・day)
B:水蒸気透過率が31〜50(g/m
2・day)
C:水蒸気透過率が50〜(g/m
2・day)
【0237】
【表7】
【0238】
【表8】
【0239】
表3および4に示すように、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて得られた硬化物1〜11は、シルセスキオキサンをBに置き換えた比較用の硬化物12またはシリコーン樹脂である硬化物13と同等の初期透過率であるが、150℃およびより高温な条件である180℃耐熱黄変性評価において明らかな優位性を示した。
【0240】
表5および6に示すように、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて得られた硬化物1〜11は、シルセスキオキサンをBに置き換えた比較用の硬化物12と比較し、ガラスへの密着性で有意差を示した。さらにLED用銀リードフレーム(PPA,PA9T)を基材とした場合において、硬化物1〜11は、硬化物12と比較し、明らかに密着性が向上していることがわかった。
【0241】
表7および8に示すように、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて得られた硬化物1〜11は、0時間においては、シルセスキオキサンをBに置き換えた比較用の硬化物12と比較し、と同等の水蒸気バリア性および耐硫黄ガス性であるが、150℃/500時間の耐熱試験後の水蒸気バリア性および耐硫黄ガス性においては、明らかな優位性を示した。また、従来のシリコーン樹脂を使用した硬化物13に対しても、水蒸気バリア性および耐硫黄ガス性のいずれの評価において優位性を示した。
【0242】
上述したとおり、本発明の硬化性樹脂組成物は、多くの物性で従来以上の性能を有していることが分かった。