(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チップ側接合面への水の付着及び基板の接合部への水の付着は、表面活性化処理の後、チップ側接合面及び基板の接合部をそれぞれ大気に暴露することなくチャンバ内で行われる、請求項1に記載の方法。
複数のチップ又は基板に対して交番電圧を印加することで、チップ側接合面又は基板の接合部の周りに前記粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の前記粒子を前記電圧によりチップ側接合面又は基板の接合部に向けて加速させることにより、粒子に所定の運動エネルギーを付与する、請求項3に記載の方法。
前記加圧ステップは、チップあたり100N以上の力、又はハンダ領域に対して150MPa以上の圧力を印加することで行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
前記基板と基板上に取り付けられた複数のチップとを含む構造体を加熱するステップは、前記基板と前記基板に接合された複数のチップとを、互いに近接する方向に加圧するステップを含む、請求項6に記載の方法。
前記基板と基板上に取り付けられた複数のチップとを含む構造体を加熱するステップは、還元雰囲気中で行われる還元処理ステップを含む、請求項6又は7に記載の方法。
前記金属領域は、銅(Cu)、はんだ材料、金(Au)及びこれらの合金からなる群から選ばれる材料により形成されている、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
前記金属領域は、一つ又は複数の第一の金属領域と当該第一の金属領域を囲むように形成された閉じた環状の第二の金属領域とを有する、請求項6から12のいずれか一項に記載の方法。
前記親水化処理ステップの後に、親水化処理ステップにより生成したOH基を残し、付着した水分子をチップ側接合面上から除去するステップを更に備える、請求項6から14のいずれか一項に記載の方法。
一つ又は複数の金属領域を有する第一接合面と当該第一接合面の裏側に位置する第二接合面とを有する所定数のチップからなるチップ層を、複数の層に亘り、複数の接合部を有する基板上に積層して接合する方法であって、
当該方法は、
チップの第一接合面の少なくとも金属領域を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水を付着させることにより親水化処理するステップと、
基板の接合部を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水を付着させることにより親水化処理するステップと、
表面活性化処理されかつ親水化処理された所定数のチップを、それぞれ、チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、表面活性化処理されかつ親水化処理された基板の対応する接合部上に取り付けるステップと、
次に取り付けるべき所定数のチップの第一接合面の少なくとも金属領域を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化処理し、かつ水を付着させることにより親水化処理するステップと、
基板上に積層されているチップの中で最上層の所定数のチップの第二接合面を、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることにより表面活性化し、かつ水を付着させることにより親水化処理するステップと、
表面活性化処理されかつ親水化処理された前記次に取り付けるべき所定数のチップを、それぞれ、当該チップの金属領域が前記最上層の所定数のチップの第二接合面に接触するように、表面活性化処理されかつ親水化処理された前記最上層の所定数のチップ上に取り付けるステップと、
複数のチップ層に亘りチップを基板上に取り付けた後に、基板と基板上に取り付けられたチップとを含む構造体を加熱するステップと、
を備え、
前記第一接合面は金属領域以外の領域に非金属領域を有し、当該非金属領域は樹脂により形成され、
前記表面活性化処理において、前記第一接合面又は前記第二接合面又は基板の接合部から離間された位置から、前記第一接合面又は前記第二接合面又は基板の接合部に向けて所定の運動エネルギーを有する粒子を放射し、
前記粒子は、前記第一接合面又は前記第二接合面から離間して配置されたイオンビーム源又は中性原子ビーム源により、当該接合面に向かって加速されて放射される、方法。
一つ又は複数の金属領域を有し、当該金属領域以外の領域に非金属領域を有し、当該非金属領域は樹脂により形成されたチップ側接合面を有する複数のチップを、複数の接合部を有する基板に接合する装置であって、
チップ側接合面の少なくとも金属領域を表面活性化処理するために、所定の運動エネルギーを有する粒子を当該チップ側接合面に対して衝突させるチップ用表面活性化処理手段と、
基板の接合部を表面活性化処理するために、所定の運動エネルギーを有する粒子を当該基板の接合部に対して衝突させる基板用表面活性化処理手段と、
表面活性化処理されたチップの金属領域を親水化処理するために、当該チップの金属領域に水を付着させるチップ用親水化処理手段と、
表面活性化処理された基板の接合部を親水化処理するために、当該基板の接合部に水を付着させる基板用親水化処理手段と、
複数のチップを、それぞれ、チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、基板の対応する接合部上に取り付けるチップ取付手段と、
を備え、
チップ用表面活性化処理手段と基板用表面活性化処理手段とは、それぞれ、チップ側接合面と基板の接合部とから離間されて配置され、チップ側接合面と基板の接合部とに向けて所定の運動エネルギーを有する粒子を放射する、粒子ビーム源を有して構成される、装置。
前記チップ取付手段は、チップを基板の対応する接合部上に取り付ける際に、前記チップと前記基板とを互いに近接する方向に加圧する手段を更に有し、前記加圧手段は、チップの金属領域に0.3〜600MPaの圧力を印加する、請求項17から20のいずれか一項に記載の装置。
一つ又は複数の金属領域を有し、当該金属領域以外の領域に非金属領域を有し、当該非金属領域は樹脂により形成された第一接合面を有する複数のチップからなるチップ層を、複数の層に亘り、複数の接合部を有する基板上に積層して接合する装置であって、
チップの第一接合面を表面活性化処理するために、チップの第一接合面に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させるチップ第一接合面用表面活性化処理手段と、
チップの第一接合面の裏側に位置する第二接合面を表面活性化処理するために、チップの第二接合面に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させるチップ第二接合面用表面活性化処理手段と、
基板の接合部を表面活性化処理するために、基板の接合部に対して所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させる基板用表面活性化処理手段と、
表面活性化処理されたチップの第一接合面を親水化処理するために、チップの第一接合面に水を付着させるチップ第一接合面用親水化処理手段と、
表面活性化処理されたチップの当該第一接合面の裏側に位置する第二接合面を親水化処理するために、チップの第二接合面に水を付着させるチップ第二接合面用親水化処理手段と、
基板の接合部を親水化処理するために、基板の接合部に水を付着させる基板用親水化処理手段と、
チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、チップを基板の対応する接合部上に取り付け、基板上に取り付けられているチップの第二接合面に次に取り付けられるチップの第一接合面が接触するように、当該チップを基板上に取り付けられているチップ上に取り付けるチップ取付手段と、を備え、
チップ第一接合面用表面活性化処理手段とチップ第二接合面用表面活性化処理手段と基板用表面活性化処理手段とは、それぞれ、チップの第一接合面とチップの第二接合面と基板の接合部とから離間されて配置され、チップの第一接合面とチップの第二接合面と基板の接合部とに向けて所定の運動エネルギーを有する粒子を放射する、粒子ビーム源を有して構成される、装置。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、添付の図面を参照して本願発明に係る実施形態を説明する。
【0066】
<1.接合方法>
<1.1 第1の実施形態>
図1は、本願発明の第1の実施形態に係るチップの基板への接合方法を示すフローチャートである。
【0067】
工程S1では、基板への接合が予定されている複数のチップの表面(以下、チップ側接合面と称する)を、表面活性化処理し、そして親水化処理する。このチップ側接合面は、金属で形成される一つ又は複数の領域(以下、金属領域と称する)を含んでいる。
【0068】
工程S2では、上記チップ側接合面が接合される基板上においてそれぞれのチップに対応する表面領域(以下、接合部と称する)を、すべて表面活性化処理し、そして親水化処理する。
【0069】
ここで、本願発明における表面活性化処理について説明する。
チップ側接合面又は基板の接合部(以下、接合面と称する。)41上には、様々な物質の酸化物、付着した有機物などの汚染物(不純物)などを含む表面層42が存在し、接合すべき材料の新生表面43を覆っている(
図2(a)参照)。上記表面層42は、材料の新生表面43のエネルギーレベルを低くしていると考えられる。表面活性化処理により、この表面層が除去され、接合すべき材料の新生表面が露出させられると考えられる(
図2(b)参照)。さらには、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させて行う表面活性化処理には、新生表面近傍において原子間の結合を切断し結晶構造を乱すことで、表面エネルギーのレベルを一層高める効果もあると考えられている。
【0070】
本願発明において、上記表面活性化処理を行った後の親水化処理では、表面活性化処理により露出された新生表面に水又は水酸(OH)基を含む物質を供給する。表面活性化処理により露出された新生表面に水又は水酸(OH)基を含む物質が接触すると、この新生表面に水酸基の層44が形成され(
図2(c))、あるいは新生表面に新生表面を形成する材料の酸化物の層が形成される。さらに水を供給すると、形成された水酸基の層又は酸化物の層の上に水が付着すると考えられている。
【0071】
工程S1と工程S2とを同時に並行して行ってもよい。また、工程S1を行った後に、工程S2を行ってもよい。その逆に、工程S2を行った後に、工程S1を行ってもよい。
【0072】
工程S1又は工程S2における親水化処理は、好ましくは、表面活性化処理の後に行われる。しかし、表面活性化処理が完了する前に、親水化処理を開始してもよい。また、表面活性化処理と親水化処理を同時に行ってもよい。表面活性化処理が、親水化処理の完了後に行われなければ、表面活性化処理と親水化処理との時間上の前後関係は、所望の条件により調節することができる。
【0073】
工程S3で、チップ側接合面が表面活性化処理され親水化処理されたチップを、それぞれ、チップの金属領域が基板上の対応する接合部に接触するように基板に取り付ける。本願明細書中、この工程S3を「仮接合」と称する。
【0074】
チップの基板への取り付けは、チップを基板の接合部に一つずつ取り付けることを、基板に取り付けるべき所定数のチップの取付けが完了するまで繰り返すことで行う。あるいは、複数のチップからなるグループごとに、基板の対応する接合部に取り付けることを、基板に取り付けるべき所定数のチップの取付けが完了するまで繰り返すことで行ってもよい。接合面の平坦度を高めたもの(例えば表面粗さが数nmのもの)は、実質的な接触面積が大きくなることから、本来の水酸基(OH基)による接合が強固な接合となり、低温、低圧での接合でも十分な接合強度を得ることが可能である。一方、接合面の平坦度が低いもの(例えば表面粗さが数十〜数百nmのもの)の場合は、加圧(数十M〜数百MPa)により金属領域を押しつぶすことで実質的な接触面積を大きくすることや、摂氏数百度程度で加熱(例えば150℃)により拡散を促し接合界面で原子の動きを促進させることで、実質的な接合面積を大きくすることができる。
【0075】
工程S4では、接合が予定されていた複数のチップがすべて基板に取り付けられることにより形成された、チップと基板とからなる構造体に対して、加熱処理を施す。加熱により、所望の導電性と機械的強度を有する接合界面が得られる。本願明細書中、この工程S4を、「本接合」と称する。
【0076】
工程S3により取り付けられたチップの金属領域の表面と基板の接合部の表面とは、微視的には原子レベル又はナノメートルから数十ナノメートルの表面粗さを有している。したがって、工程S3により取り付けられた際に、チップの金属領域の表面と基板の接合部の表面との間の実質的な接合面積は、みかけの接合面積より小さい。加熱処理により、取り付けられたチップの金属領域と基板の接合部との界面近傍の原子が拡散して、実質的な接合面積が増加すると考えられる。本願明細書中、この工程S4を、「本接合」と称する。
【0077】
加熱処理の際に、雰囲気を形成するガスの種類、流量などを調節してもよい。また、加熱処理の際に、接合界面に垂直方向の圧力が加わるように、チップと基板との接合体に、力又は圧力を加えることもできる。接合界面に垂直方向の圧力が加わることで、実質的又は微視的な接合面積がさらに増加する。
【0078】
加熱処理における、温度又は上記力若しくは圧力の時間プロファイルは、仮接合の条件、金属領域を形成する材料の熱特性、チップ又は基板を形成する材料の熱特性、加熱処理の際の雰囲気、加熱処理装置の特性などにより、調節することができる。
【0079】
表面活性化処理され親水化処理されたチップ側接合面及び基板の接合部上に形成されている水酸(OH)基層又は酸化物層、これらの表面に付着した水などは接合界面にとりこまれても、加熱処理で新生表面同士の接合界面が形成する際に、表面層や樹脂などと比べて低い温度又は短時間で消滅する。したがって、本願発明による接合方法は、樹脂などを使用する従来の接合技術に比べて、接合に必要なサーマルバジェット(熱消費量)を低減することができる。
【0080】
次に、チップの形態について説明する。
【0081】
<チップ側の接合面>
図3(a)から(f)は、チップ側接合面に垂直な平面でチップを切断した場合の、チップの断面の模式図である。これらの図は、金属領域の形状を例示的に示すことを意図するもので、金属領域の形状を限定するものではない。
【0082】
図3(a)から(d)で示された金属領域の場合には、チップ側接合面上に、金属領域MRが、いわゆるバンプ(突起)状に突出するように形成されている。金属領域MRの上端面が、基板と接合する。
【0083】
当該金属領域MR以外の領域NRは、シリコン(Si)、酸化ケイ素(SiO2)などの非金属で形成されることが好ましいが、金属など、その他の材料で形成されていてもよい。金属領域MR以外の材料は、デバイスの用途、接合方法などに応じて選択することができる。以下、金属領域MRと金属領域以外の領域NRを合わせてチップ側接合面と称する。また、便宜的に、金属領域MR以外の領域NRを、非金属領域NRと称することとする。
【0084】
金属領域MRの上端部の断面形状は、平坦でなくてもよい。
図3(a)のように金属領域の上端部が平坦である場合、上端部の平面は、微視的にはある程度の粗さを有している。この粗さが大きい場合には、比較的低い圧力をかけても、微視的にみて十分な接合面積を形成することができず、金属領域と基板との間の所望の導電性または機械的強度を確立することができないこともありえる。そこで、例えば、金属領域の表面の断面は、曲面で形成されてもよく、
図3(b)で示されるように球面で形成されてもよい。
図3(b)の各金属領域MRは、その頂点において基板と接触するので、金属領域MRの上端部が平坦である場合より、初期の接触点に掛かる圧力が大きくなる。その結果、微視的にみて十分な接合面積を形成することができ、チップの金属領域と基板との間の導電性および機械的強度(接合強度)の向上につながる。
【0085】
図3(c)に示されているように、金属領域MRは、シリコンチップに形成された貫通電極(シリコン貫通電極、TSV、Through Silicon Via)(VA)に接続して設けられてもよい。TSV(貫通電極)を設けることで、数層に亘り積層されたチップ間での高速な電気的接続を確立することができる。
【0086】
図3(d)に示されているように、金属領域MRの上端部の面積が、TSV(VA)の領域面積より大きくなるように、金属領域MRとSi貫通電極VAが形成されてもよい。接合面積が大きくなり、積層されたチップ間の電気的接続の比較的高い導電性を確保することができる。
【0087】
図3(e)及び(f)に示されているように、金属領域MRと非金属領域NRとがほぼ同一面上にあるようにチップ側接合面が構成されてもよい。この場合、金属領域MRと非金属領域NRとが同一面上にある構成としてもよく、また、金属領域MRを基板接合部と確実に接触及び接合させるために、金属領域MRを非金属領域NRよりも1μm(マイクロメータ)程度またはそれ以下の高さだけ突出させるようにしてもよい。金属領域MRの非金属領域NRに対して突出する高さは、金属領域MR及び非金属領域NRの材質、形状、チップ全体の形状、寸法、機械的性質など、種々のパラメータに応じて、最終的に金属領域MRと非金属領域NRの両方において接合界面が形成されるように調節される。
【0088】
図3(e)及び(f)に示されている、金属領域MRと非金属領域NRとがほぼ同一面上にあるようなチップ側接合面の構成は、例えば、チップの所定の製造段階でチップ側表面に化学機械研磨(CMP)を行うことで実現される。CMPの条件を調節することにより、金属領域MRと非金属領域NRとをほぼ同一面上に形成することができるとともに、金属領域MRが非金属領域NRよりも所定の高さだけ突出するようにすることもできる。
【0089】
図3(e)で示されている例は、バンプレスTSVと呼ばれるチップ構造に対応している。このチップは、接合される基板の接合面が平面で形成されている場合には、金属領域MRと非金属領域NRとの両方が基板に接合される。したがって、チップと基板との間の電気的接続を確立する金属領域に係る接合界面を、その周りの非金属領域に係る接合界面により保護することができる。さらに、チップと基板との接合界面が、金属領域MRのみならず非金属領域NRにまで亘って形成されることで接合面積が著しく大きくなり、チップと基板との間の接合強度を増加することができる。さらにまた、複数の層を形成して、チップを基板上に積層して実装する場合には、基板面に垂線方向の寸法(厚み)を、減少させることができる。
【0090】
図3(f)に示されている例では、チップ側接合面にキャビティが形成され、このキャビティ内に金属領域MRがバンプ(突起)状に突出するように形成されている。
図3(f)の構成により、チップの基板への接合が完了すると、非金属領域NRに係る接合界面により、その内部の金属領域MRに係る接合界面を外部雰囲気に対して封止する。よって、接合工程が完了した後に樹脂などを用いて接合箇所を封止することを必要とせずに、大気の侵入に起因する酸化、チップと基板間への不純物の混入などによる接合界面の電気的又は機械的特性の悪化を防ぐことができる。
【0091】
図3(e)又は(f)で示されている構成のチップを使用する場合には、金属領域MRと同様の表面活性化処理と親水化処理を施して、基板上の対応する接合部と仮接合及び本接合を行うことができるような材料で非金属領域NRを形成することが好ましい。これにより、プロセスを簡略化、効率化することができる。非金属領域NRは、シリコン(Si)、酸化ケイ素(SiO
2)などの非金属で形成されることが好ましいが、これに限られない。
【0092】
また、
図3(e)又は(f)で示されている構成のチップを使用する場合には、非金属領域NRの表面の一部又は全部を疎水化処理してもよい。後述のように、チップ側接合面が疎水化処理された領域を有することで、親水化処理された金属領域MRと対応する基板上の親水化処理された部位とを用いて、基板に対するチップのセルフアラインメントを実現することができる。
【0093】
図4(a)から(c)は、接合面に対して垂直な方向から見たときの、チップ側接合面上に形成された金属領域の配置を模式的に示している。
【0094】
図4(a)から(c)が示すチップ側接合面上には、複数の円形の金属領域MRが、列状に並んで配置されている。
【0095】
金属領域MRの形状及び配列は、
図4(a)から(c)に示された例に限定されない。各金属領域MRの形状は、円形に限らず、例えば正方形、長方形でもよい。また、
図4(a)から(c)は、複数の金属領域MRが、矩形を描くように並んで配列されているが、これに限定されない。
【0096】
図4(b)が示すチップ側接合面には、複数の金属領域MRが、異なる大きさで形成されている。
【0097】
たとえば、比較的小さい面積の金属領域MRを形成する場合に、所望の導電性を確保する電気的接続は確保されているにも係わらず、基板との最終的な接合面積の合計が、チップと基板との間の十分な機械的強度を達成できるほどの面積に満たないことがある。このような場合には、電気的接続に必要とする金属領域MRに加えて、機械的強度を向上するために、基板と接続される、強度用金属領域MR2を設けてもよい。金属領域MR2は、チップ内の回路又はチップを通過するTSVと、電気的に接合されていなくてもよく、また接合されていてもよい。また、金属領域MR2の面積、形状、配置などは、電子デバイスの使用環境などに応じて、チップと基板との間に要求される機械的強度、金属領域MRと強度用金属領域MR2の形状、大きさ、チップ側接合面上での配置などに基づいて調節されてもよい。
【0098】
図4(c)が示すチップ側接合面には、
図4(a)に示された、電気的接続のために形成された金属領域MRを第一の金属領域として、この第一の金属領域の外側に、第一の金属領域を囲むように、第二の金属領域として、閉じた環状に金属壁である金属領域MR3が形成されている。この場合、第一及び第二の金属領域がチップ側接合面の金属領域以外の領域に対して突出するように形成されることが好ましい。
【0099】
閉じた環状の金属領域MR3は、チップの基板への接合が完了すると、その内部の金属領域MRに係る接合界面を外部雰囲気に対して封止する。すなわち、外部雰囲気は金属領域MRに係る接合界面に到達することができない。よって、接合工程が完了した後に樹脂などを用いて接合箇所を封止することを必要とせずに、大気の侵入に起因する酸化、チップと基板間への不純物の混入などによる接合界面の電気的又は機械的特性の悪化を防ぐことができる。
【0100】
また、金属領域MR3を有するチップを接合することで、接合面積が増加し、高い接合強度を達成することができる。さらに、鉛などの材料を含まず、リフロー工程が必要ないので、環境に優しいチップと基板とを含む構造体の封止構造を提供することができる。
【0101】
上記の各チップは、例えば、複数の電子回路が形成された基板を縦方向及び横方向に切削することにより作成してもよい。
【0102】
<基板>
基板WAの接合部UTは、例えば、
図5に示されているように、基板の面上に縦方向及び横方向に引かれた等間隔の直線で画定される複数の長方形又は正方形として設定されてもよく、また離散的に任意の箇所に設定されてもよい。典型的に、上記基板は、本願発明に係る接合方法の工程が完了した後に、接合部毎に切断(ダイシング)され、ダイ(die)に分割される。最終製品として与えられたダイの大きさは、基板上に設定された接合部の大きさにより定められる。
【0103】
各接合部は、基板上に物理的に又は光学的に認識可能に設定されていてもよいが、これに限られない。たとえば、接合部の配置は、基板を支持するステージ上の位置を認識可能なコンピュータシステムにより、ステージ上の位置に基づいて認識する構成としてもよい。
【0104】
基板の接合部は、複数のチップの金属領域にそれぞれ対応するようにして、当該チップとの間で電気的接続を確立すべき複数の接合領域を有するように構成してもよい(図示せず)。この接合領域は、金属で形成されてもよい。この場合、接合されるチップと基板との間の電気的接続が実現される。
【0105】
また基板の接合部は、シリコン(Si)、酸化ケイ素(SiO
2)などの非金属材料を用いて形成されてもよい。この場合は、チップの金属領域は、基板と接合して、チップと基板との間の接合強度を高めることができる。
【0106】
<表面活性化処理>
工程S1及び工程S2において、チップ側接合面及び基板の接合部(以下、接合面と称する)に、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることで表面活性化処理を行う。
【0107】
所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させて、接合面を形成する物質を物理的に弾き飛ばす現象(スパッタリング現象)を生じさせることで、表面層を除去することができる。表面活性化処理には、表面層を除去して接合すべき物質の新生表面を露出させるのみならず、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることで、露出された新生表面近傍の結晶構造を乱し、アモルファス化する作用もあると考えられている。アモルファス化した新生表面は、原子レベルの表面積が増え、より高い表面エネルギーを有するので、その後の親水化処理において結合される、単位表面積当たりの水酸基(OH基)の数が増加すると考えられる。これに対し、従来のウェット処理による表面の不純物の除去工程後に化学的に親水化処理する場合には、所定の運動エネルギーを有する粒子の衝突に起因する新生表面の物理的変化がないので、本願発明の接合方法に係る表面活性化処理に続く親水化処理は、この点で従来の親水化処理とは根本的に異なると考えられる。また、結晶構造が乱れ、アモルファス化した新生表面近傍の領域にある原子は、本接合時の加熱処理の際に、比較的低い熱エネルギーで拡散しやすく、比較的低温での本接合プロセスを実現することができると考えられる。
【0108】
表面活性化処理に用いる粒子として、例えば、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの希ガス又は不活性ガスを採用することができる。これらの希ガスは、比較的大きい質量を有しているので、効率的に、スパッタリング現象を生じさせることができ、新生表面の結晶構造を乱すことも可能になると考えられる。
【0109】
表面活性化処理に用いる粒子として、酸素のイオン、原子、分子などを採用することもできる。酸素イオン等を用いて表面活性化処理を行うことで、表面層を除去した後に新生表面上を酸化物の薄膜で覆うことが可能になる。新生表面上の酸化物の薄膜は、その後の親水化処理における、水酸(OH)基の結合又は水の付着の効率を高めると考えられる。また、新生表面上に形成された酸化物の薄膜は、本接合での加熱処理の際に、比較的容易に分解すると考えられる。
【0110】
表面活性化される接合面に衝突させる粒子の運動エネルギーは、1eVから2keVであることが好ましい。上記の運動エネルギーにより、効率的に表面層におけるスパッタリング現象が生じると考えられる。除去すべき表面層の厚さ、材質などの性質、新生表面の材質などに応じて、上記運動エネルギーの範囲から所望の運動エネルギーの値を設定することもできる。
【0111】
表面活性化される接合面に衝突させる粒子には、粒子を接合面に向けて加速することで所定の運動エネルギーを与えることができる。
【0112】
プラズマ発生装置を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることができる。複数のチップ又は基板などの接合面に対して、交番電圧を印加することで、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の電離した粒子の陽イオンを、上記電圧により接合面に向けて加速させることで、所定の運動エネルギーを与える。プラズマは数パスカル(Pa)程度の低真空度の雰囲気で発生させることができるので、真空システムを簡易化でき、かつ真空引きなどの工程を短縮化することができる。
【0113】
プラズマ発生装置は、例えば、100Wで稼動して、アルゴン(Ar)のプラズマを発生させて、このプラズマを接合面に600秒ほど照射させるように使用されてもよい。
【0114】
接合面から離間された位置に配置された、中性原子ビーム源、イオンビーム源(イオンガン)などの粒子ビーム源を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることもできる。所定の運動エネルギーが付与された粒子は、粒子ビーム源から複数のチップ又は基板などの接合面に向けて放射される。
【0115】
粒子ビーム源は、例えば1x10
−5Pa(パスカル)以下などの、比較的高い真空中で作動するので、表面活性化処理後に、新生表面の不要な酸化や新生表面への不純物の付着などを防ぐことができる。さらに、粒子ビーム源は、比較的高い加速電圧を印加することができるので、高い運動エネルギーを粒子に付与することができる。したがって、効率良く表面層の除去及び新生表面のアモルファス化を行うことができると考えられる。
【0116】
中性原子ビーム源としては、高速原子ビーム源(FAB、Fast Atom Beam)を用いることができる。高速原子ビーム源(FAB)は、典型的には、ガスのプラズマを発生させ、このプラズマに電界をかけて、プラズマから電離した粒子の陽イオンを摘出し電子雲の中を通過させて中性化する構成を有している。この場合、例えば、希ガスとしてアルゴン(Ar)の場合、高速原子ビーム源(FAB)への供給電力を、1.5kV(キロボルト)、15mA(ミリアンペア)に設定してもよく、あるいは0.1から500W(ワット)の間の値に設定してもよい。たとえば、高速原子ビーム源(FAB)を100W(ワット)から200W(ワット)で稼動してアルゴン(Ar)の高速原子ビームを2分ほど照射すると、接合面の上記酸化物、汚染物等(表面層)は除去され、新生表面を露出させることができる。
【0117】
イオンビーム源は、例えば110V、3Aで稼動して、アルゴン(Ar)を加速させ600秒ほど接合面に照射せるように使用されてもよい。
【0118】
本願発明において、表面活性化に用いられる粒子は、中性原子又はイオンでもよく、さらには、ラジカル種でもよく、またさらには、これらが混合した粒子群でもよい。
【0119】
各プラズマ又はビーム源の稼動条件、又は粒子の運動エネルギーに応じて、表面層の除去速度は変化しえる。そこで、表面活性化処理に必要な処理時間を調節する必要がある。たとえば、オージェ電子分光法(AES、Auger Electron Spectroscopy)やX線光電子分光法(XPS、X−ray Photo Electron Spectroscopy)などの表面分析法を用いて、表面層に含まれる酸素や炭素の存在が確認できなくなる時間又はそれより長い時間を、表面活性化処理の処理時間として採用してもよい。
【0120】
表面活性化処理において接合面をアモルファス化するためには、粒子の照射時間を、表面層を除去し新生表面を露出させるために必要な時間より、長く設定してもよい。長くする時間は、10秒から15分、あるいは、表面層を除去し新生表面を露出させるために必要な時間の5%以上に設定してもよい。表面活性化処理において接合面をアモルファス化するための時間は、接合面を形成する材料の種類、性質、及び所定の運動エネルギーを有する粒子の照射条件によって適宜設定してもよい。
【0121】
表面活性化処理において接合面をアモルファス化するためには、照射される粒子の運動エネルギーは、表面層を除去し新生表面を露出させるために必要な運動エネルギーより、10%以上高く設定されてもよい。表面活性化処理において接合面をアモルファス化するための粒子の運動エネルギーは、接合面を形成する材料の種類、性質、及び粒子の照射条件によって適宜設定してもよい。
【0122】
ここで、「アモルファス化した表面」又は「結晶構造が乱れた表面」とは、具体的に表面分析手法を用いた測定により存在が確認されたアモルファス層又は結晶構造が乱れた層を含むとともに、粒子の照射時間を比較的長く設定した場合、又は粒子の運動エネルギーを比較的高く設定した場合に想定される結晶表面の状態を表現する概念的な用語であって、具体的に表面分析手法を用いた測定によりアモルファス層又は結晶構造が乱れた表面の存在が確認されていない表面をも含むものである。また、「アモルファス化する」又は「結晶構造を乱す」とは、上記アモルファス化した表面又は結晶構造が乱された表面を形成するための動作を概念的に表現したものである。
【0123】
<親水化処理>
工程S1及び工程S2において、親水化処理は、上記表面活性化処理の後に行われる。接合面の親水化処理により、接合面に水酸基(OH基)が結合されると考えられている。さらには、水酸基(OH基)が結合された接合面上に水分子が付着してもよい。
【0124】
水酸化処理により、接合面に酸化物が形成されることもある。酸化物は、比較的薄い(例えば、数nm又は数原子層以下)ので、本接合の際の加熱処理において、金属材料内で吸収され、又は水として接合界面から外側へ逃げるなどして、消滅あるいは減少すると考えられる。したがって、この場合、チップと基板との間の接合界面を介した導電性には実用上の問題が生じることはほぼないと考えられる。
【0125】
親水化処理は、表面活性化された接合面に水を供給することにより行われる。当該水の供給は、上記表面活性化された接合面の周りの雰囲気に、水(H
2O)を導入することで行うことができる。水は、気体状で(ガス状で、又は水蒸気として)導入されても、液体状(霧状)で導入されてもよい。さらに、水の付着の他の態様として、ラジカルやイオン化されたOHなどを付着させてもよい。しかし、水の導入方法はこれらに限定されない。
【0126】
表面活性化された接合面の周りの雰囲気の湿度を制御することで、親水化処理の工程を制御することができる。当該湿度は、相対湿度として計算しても、絶対湿度として計算してもよく、又は他の定義を採用してもよい。
【0127】
気体状の水は、たとえば液体の水の中に窒素(N
2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、酸素(O
2)などのキャリアガスを通過させること(バブリング)で、気体状の水がキャリアガスに混合されて、表面活性化された接合面を有するチップ又は基板が配置された空間又はチャンバ内に導入されることが好ましい。
【0128】
水の導入は、チップ側接合面と基板の接合部との少なくとも一方又は両方の周りの雰囲気における相対湿度を10%から90%となるように制御することが好ましい。
【0129】
たとえば、窒素(N
2)又は酸素(O
2)をキャリアガスとして気体状の水を導入する場合、上記チャンバ内の全圧を9.0x10
4Pa(パスカル)、すなわち0.89atm(アトム)とし、チャンバ内での気体状の水の量を、容積絶対湿度で8.6g/m
3(グラム/立方メートル)又は18.5g/m
3(グラム/立方メートル)、23℃(摂氏23度)の相対湿度でそれぞれ43%又は91%となるように制御することができる。また例えば、銅(Cu)を、容積絶対湿度で、5g/m
3(グラム/立方メートル)から20g/m
3(グラム/立方メートル)の気体状の水を含む雰囲気に曝すと、2nm(ナノメートル)から14nm(ナノメートル)程度の酸化銅の層が形成されると想定される。
【0130】
また、チャンバ内の酸素(O
2)の雰囲気中濃度を10%としてもよい。
【0131】
親水化処理は、表面活性化処理された接合面を大気に曝すことなく、当該接合面に水を供給することが好ましい。例えば、表面活性化処理を行うチャンバと親水化処理を行うチャンバとを同一とするように構成されていてもよい。また、表面活性化処理を行うチャンバと親水化処理を行うチャンバとは、複数のチップ又は基板がそれらの間を大気に曝されることなく搬送されるように連結されて構成されていてもよい。これらの構成を採用して、表面活性化処理された接合面を大気に曝さないことで、接合面の望ましくない酸化や、接合面への不純物などの付着などを防ぐとともに、親水化処理をより容易に制御することができ、効率よく表面活性化処理の後に親水化処理を続けて実行することができる。
【0132】
また、親水化処理を行うために、所定の湿度を有するチャンバ外の大気を導入してもよい。大気をチャンバ内に導入する際には、望ましくない不純物の接合面への付着を防ぐために、当該大気が所定のフィルタを通過するように構成することが好ましい。所定の湿度を有するチャンバ外の大気を導入して親水化処理を行うことで、接合面の親水化処理を行う装置構成を簡略化することができる。
【0133】
また、水(H
2O)の分子やクラスターなどを加速して、接合面に向けて放射してもよい。水(H
2O)の加速に、上記表面活性化処理に用いる粒子ビーム源などを使用してもよい。この場合、上記バブリングなどで生成したキャリアガスと水(H
2O)との混合ガスを、上記粒子ビーム源に導入することにより、水の粒子ビームを発生させ、親水化処理すべき接合面に向けて照射することができる。
【0134】
表面活性化処理と親水化処理が施された接合面41a、41bは、その後のチップの基板への取り付け(仮接合)での接触の際に水素結合の作用により互いに引き合い、比較的強い仮接合を形成する(
図2(d))。さらに水素と酸素とを含む接合界面が形成されているので、本接合での加熱処理により水素と酸素が接合界面の外部に放出され、清浄な接合界面45を形成することが可能になる(
図2(e))。
【0135】
<仮接合>
工程S3で、チップ側接合面が表面活性化処理され親水化処理されたチップが、それぞれ、チップの金属領域が基板の接合部に接触するように、表面活性化処理され親水化処理された基板の対応する接合部上に取り付けられる。
【0136】
基板の対応する接合部に対するチップの位置決めは、例えば、チップ側に複数の位置調節用マークを設け、基板の対応する接合部側に、対応する複数の位置調節用マークを設け、両方の位置調節用マークを互いに合わせることで行っても良い。両方の位置調節用マーク間のずれは、チップと基板とを透過する光を、チップ又は基板側から接合面に垂直方向に入射し、その反対側に設けたカメラにより撮像された、当該透過光による位置調節用マークの画像を観察することにより測定するように構成してもよい。
【0137】
親水化処理が施されたチップ側接合面と基板の接合部とは、水酸(OH)基又は水分子により覆われているため、取付け時(仮接合時)の接触により、水酸基又は水分子間に働く水素結合などの引力により仮接合される。
【0138】
上記のチップの基板への取付けにより、チップ側接合面と基板の接合部とは、少なくとも、接合すべきチップのすべてが基板に取り付けられてから加熱処理が行われるまでの過程において、チップと基板とが仮接合することで構成される構造体が搬送される際や位置変換される際に、チップが基板から剥がれ落ちたり、チップが基板上の所定の取付け位置からずれたりすることがない十分な接合力で固定される。
【0139】
接合すべき複数のチップをすべて基板に仮接合する間、当該複数のチップと基板の周りの雰囲気の湿度を所定の値に保つようにしてもよい。
【0140】
チップの金属領域が、ニッケル(Ni),金(Au),スズ(Sn)などの金属で、20μm(マイクロメータ)四方、高さ3μm(マイクロメータ)から10μm(マイクロメータ)のパッド状に形成されている場合は、パッドに対し0.3MPa(メガパスカル)から600MPa(メガパスカル)の圧力を、チップと基板とが互いに近接する方向に加えてもよい。
【0141】
上記パッドに対して加える圧力は、高すぎると塑性変形により金属領域同士が接触して短絡の原因となり、低すぎると所定の導電性又は接合強度を得ることができない場合がある。したがって、上記パッドに対して加える圧力は、金属領域の材料の機械的特性、形状、その後の本接合での加熱処理の条件などに応じて、調節される。
【0142】
上述の仮接合で得られた複数のチップと基板とを含む構造体は、チップと基板とが比較的強い水素結合で結合しているので、チップ実装システム内部で又は外部へ搬送されても、チップが基板からすべり落ち、又は剥がれ落ちる危険性は小さい。また、仮接合で得られた複数のチップと基板とを含む構造体は、比較的安定であるので、加熱処理まで数時間から数日までの間、大気中で保存することも可能である。したがって、任意のタイミングで、チップと基板とを含む構造体に加熱処理を行うことができる。
【0143】
上述の仮接合で得られた複数のチップと基板とを含む構造体を複数個まとめて加熱処理を行うことができる。これにより、本接合されたチップと基板とを含む構造体を、高い生産効率で製造できるという効果がある。さらに、チップと基板とが比較的強い水素結合で結合しているので、チップ実装システム内部又は外部へ搬送されても、チップが基板からすべり落ち、又は剥がれ落ちる危険性は小さい。また、仮接合で得られた複数のチップと基板とを含む構造体は、比較的安定であるので、加熱処理まで数時間から数日までの間、大気中で保存することも可能である。したがって、任意のタイミングで、チップと基板とを含む構造体に加熱処理を行うことができる。
【0144】
仮接合されるチップは、仮接合の前に供給されたチップに対して所定の検査を行い、良好と判断されたチップのみを選別するように構成されてもよい。これにより、検査により良好と判断されたチップのみを実装することにより、生産される最終製品の歩留まりを高めることができる。
【0145】
<本接合>
工程S4では、工程S3で得られた複数のチップと基板との構造体に加熱処理を行うことにより、チップと基板との間の所定の導電性(抵抗率)又は接合強度(機械的強度)を得ることができる。
【0146】
加熱処理中の最高温度は、100℃(摂氏100度)以上、チップと基板との接合外面を形成する材料の融点未満の温度に設定することが好ましい。
【0147】
加熱処理中の最高温度を100℃(摂氏100度)以上に設定することで、接合界面に含まれている水酸(OH)基又は水の多くが、接合界面外部に抜け出していくと考えられる。このとき、水が仮接合の界面から抜け出していく過程で、それまでは接触していなかった接合面同士が接触するようになり、実質的な接合界面が広がり、接合面積が大きくなると考えられる。また、本発明による表面活性化処理後に親水化処理された接合面を接合することで、従来の単純な親水化処理を用いた接合に要した400℃を超える温度での加熱は不要となり、150℃から250℃程度の温度の加熱で十分な接合強度を得ることができる。
【0148】
接合界面に含まれている水酸(OH)基又は水が接合界面まわりの材料中へ拡散しても、接合界面近傍の部位の電気的特性又は機械的特性が顕著に低下することはないと考えられる。
【0149】
また、本願の発明によれば、加熱処理中の最高温度を、チップと基板との接合面を形成する材料の融点未満に設定しても、十分な電気的特性及び機械的特性を得ることができる。接合界面近傍で材料の固相拡散が生じて、それまでは接触していなかった接合面間の隙間を埋めることで、実質的な接合界面が広がり、接合面積が大きくなると考えられる。
【0150】
また、加熱処理中の最高温度を、チップと基板との接合面を形成する材料の融点未満に設定して、固相拡散により本接合を行うことで、本接合における位置ずれをほぼなくすことができる。これにより、最終製品において、基板の接合部上の所定の位置に対するチップの位置決め精度を高くすることができ、例えば±1μm以下に抑えることが可能になる。
【0151】
加熱処理中の最高温度を、チップと基板との接合面を形成する材料の融点以上に設定して本接合を行うと、仮接合で取り付けられた基板上の位置から、チップがずれることがあり得る。この位置ずれは、数μmになる場合がある。チップを本接合する際に位置ずれが生じると、ある金属領域が隣接する金属領域と接触するなどして、ショートの原因となる。また、接合面積が小さくなり、接合界面で生じる段差などにより、接合界面の接合強度が低下する場合がある。
【0152】
上述のように、一例として、基板の対応する接合部に対するチップの位置決めは、チップ側と基板側とに設けられた位置調節用マークを、チップと基板とを透過する光を用いて、互いに合わせることで行われる。これにより、例えば、±1μmの位置決め精度を得ることができる。さらに、位置決めが十分でなかった場合には、仮接合直後にチップを基板から一度離し、再度位置決めしてから仮接合を行うことを、所定の位置決め精度が得られまで繰り返すこともできる。これにより、±0.2μmの位置決め精度を得ることができる。
【0153】
したがって、位置調節用マークを用いるなどしてチップを基板上の所定の位置に対して位置決めした上で仮接合を行い、さらに本接合において加熱温度をチップと基板との接合面を形成する材料の融点未満に設定することで、最終製品において、基板の接合部上の所定の位置に対するチップの位置決め精度を極めて高くすることができる。これにより、ショートなどの欠陥の発生を抑制するとともに、チップを積層基板上に積層して接合する場合でも、基板上における複数層に亘るチップの上下方向の位置決め精度を高く保つことができる。
【0154】
たとえば、チップ側接合面と基板の接合部とが銅(Cu)で形成されている場合には、仮接合後のチップと基板との構造体を150℃(摂氏150度)で600秒間、加熱することで、高い導電率と接合強度とを有するチップと基板との構造体が得られる。
【0155】
チップ側接合面と基板の接合部との金属領域が銅(Cu)で形成されている場合には、0.14MPa(メガパスカル)程度の圧力を接合界面に垂直な方向に加えることで十分な導電性及び機械的強度が得られる。
【0156】
従来、銅(Cu)と銅(Cu)とを直接接合するために、350℃(摂氏350度)程度での高温で、基板毎に数トンもの力を10分ほど保持することが必要だったが、本願発明において金属領域を形成する材料として銅を採用することで、低温、低圧、かつ高速に、所望の導電性及び機械的強度を有するチップと基板との構造体を製造することができる。
【0157】
チップの各金属領域が、ニッケル(Ni)、金(Au)、スズ(Sn)、スズ―銀の合金などの金属で、20μm(マイクロメータ)四方、高さ3μm(マイクロメータ)から10μm(マイクロメータ)のパッド状に形成されている場合は、各パッドに対し0.3MPa(メガパスカル)から600MPa(メガパスカル)の圧力を加熱処理中に加えてもよい。
【0158】
加熱処理中の構造体周りの雰囲気は、大気でもよく、窒素又は希ガス雰囲気でもよい。
【0159】
加熱処理中の構造体周りの雰囲気の湿度を調節してもよい。この湿度は、得られる接合界面の電気的特性又は機械的特性に応じて調節してもよい。
【0160】
更に好適には、加熱処理中の構造体周りの雰囲気は、還元性雰囲気である。
【0161】
<還元処理>
親水化処理の後の接合、すなわち仮接合では、接合面の大部分がOH基、酸化膜又はこれらの上に付着している水分子(水酸基の層等)を介して他の接合面と接合される。接合面表面にあった表面粗さ又は凹凸は、仮接合時の接触により完全にはなくならないので、仮接合後の接合界面はこの凹凸のある接合面間で形成されている。この仮接合時の接合界面に対して、本接合時に還元処理を行い、酸化膜の除去により新生表面の形成を促進させることは有用である。すなわち、本接合の際の加熱に還元処理を伴うことで酸化膜除去の速度を向上させることができる。さらに、接合界面に対して加圧することで、酸化膜の除去により新生表面の形成と、接合面近傍での原子拡散と同時に、接合面にあった凹凸を低くし実質的な接合面積を効率よく大きくさせることができる。
【0162】
還元雰囲気は、還元性気体を、基板と複数のチップとを含む構造体の雰囲気中、又は本接合をするチャンバ内に導入することで形成されてもよい。還元性気体として、水素分子、水素ラジカル、水素プラズマ、ギ酸ガスなどを使用することが好ましい。
【0163】
特に、水素分子、及び水素ラジカルなどの水素を含むガスは、サイズが小さいので、接合界面の凹凸などによる隙間に入り込むことができる。また、実際に接触している接合界面においても、拡散しやすい。したがって、これらの水素を含むガスを使用することにより、仮接合界面の酸化膜を、本接合時に効率よく還元することができる。
【0164】
水素ラジカルは、活性であるので、仮接合による構造体を加熱しなくてもよい。加熱をする場合には、たとえば摂氏150度程度で加熱するのが好ましい。ギ酸を用いる場合には、摂氏200度程度で加熱することが好ましい。
【0165】
還元雰囲気を形成する前に、基板と複数のチップとを含む構造体の雰囲気又は本接合のチャンバを真空引きすることが好ましい。仮接合された接合界面には、接合面の微小な表面粗さにより、微小な間隙が存在する。したがって、真空引きした後に還元性気体を導入することにより、真空引きされた仮接合界面の微小な間隙に還元性気体がより効率よく入り込むことができるようになる。さらに、真空引きにより、還元処理による酸化膜除去を妨害しうる酸素や汚染物質などを上記雰囲気から予め除去することができる。
【0166】
また、真空引きと還元性気体の導入とを繰り返して行ってもよい。
【0167】
還元処理を行った後に加圧を行うようにしてもよい。すなわち、接合界面の微小な間隙が存在する間に接合界面の還元処理を効率よく行い、還元処理後に加圧して、還元処理された接合面又は新生表面間の間隙を無くし又は小さくして、実質的な接合面積を清浄な状態で大きくすることができる。
【0168】
また、還元処理を行った後に真空引きをして、接合界面の間隙からガスを排出させた跡に加圧することが好ましい。これにより、接合界面に残るガスや不純物を取り除き又は少なくすることができる。また、ボイドの無い又は少ない接合界面を形成することができる。
【0169】
あるいはまた、還元処理を行う場合には、チップの基板への取り付け時、すなわち仮接合時の加圧を比較的小さくすることが好ましい。仮接合では、その後のハンドリングでチップが位置ずれしない程度の接合強度が得られればよい。したがって、仮接合時の加圧又は加圧力を落とすことで、仮接合後の接合界面の凹凸がつぶれないで残り、接合界面に微小な間隙がある状態を維持することができる。こうすることにより、還元処理の際に、還元性気体を接合界面の間隙に導入しやすくなる。
【0170】
また、接合面の表面粗さを敢えて大きくすることでも同様な結果が得られる。
【0171】
以下の表2に示す実験例5(150MPa)や実験例7(100MPa)の低圧条件でも、チップは位置ずれすることなく、還元処理を行うことができる。その後、本加圧時に300MPaの圧力を掛けることで、十分な実質的な接合面積を得ることができる。たとえば、還元処理をする際の仮接合時の圧力は、150MPa以下とすることがより好ましい。
【0172】
このような還元処理は、銅(Cu)で形成されたバンプ(金属領域)に適用されうるが、これに限られず、はんだ材料、金(Au)、あるいはそれらの合金に対しても適用されうる。
【0173】
本接合時に還元処理を併せて行うことで、金属領域で形成される接合界面の電気抵抗を更に下げることができる。当該手法は、特性が接合界面の電気抵抗の影響を受け易いハイエンドコンピュータやパワーデバイスのためのチップオンウエハ技術に応用することが特に有用である。
【0174】
水素ラジカルによる還元処理の一例を
図33を参照しつつ以下に説明する。
【0175】
加熱手段80として本接合を行う本接合チャンバ81には、ヒータ82が設けられていて、構造体を所望の温度に加熱することができる。本接合チャンバ81は上部にトップ板82を有し、当該トップ板82には、水素ラジカルなどのガスをチャンバに導入するために複数の開口83が開けられている。本接合チャンバ81には水素ラジカル源(図示せず)が設けられており、この水素ラジカル源からトップ板81の開口82を通って、水素ラジカルが本接合チャンバ81内に導入される。本接合チャンバ81には、真空ポンプ84が接続され、これによりチャンバ81内の雰囲気を真空引きすることができる。
【0176】
図33に示すように、チャンバ81内に、仮接合されたバンプMRを有するチップCP一対が置かれている。表面活性化処理と親水化処理が施されているので、バンプMRの表面には薄い酸化膜又はOH基の層(水酸基の層44)が形成され、あるいはまたその上に水分子が付着している層がある。
【0177】
たとえば、本接合チャンバ81は、真空ポンプ84により5Pa程度の気圧となるように真空引きされる。その後、水素ラジカル源は、250W、27MHzで作動して100%の水素ガスをプラズマ化し、その中からラジカル種を本接合チャンバ81に導入するようにしてもよい。水素ラジカルは、流量100sccmで、トップ板82の開口83を通って本接合チャンバ81にダウンフローで導入され、本接合チャンバ81内の圧力が50Paとなるように、5分維持される。この際の、還元処理の間、構造体の温度は摂氏150度に保たれる。還元処理の後、再度真空引きを行い、バンプに対して300MPaとなるように構造体に圧力を掛け、摂氏200度で10分維持した。これにより、導電性の高い接合界面をバンプMR間に形成することができる。
【0178】
また、ここでは構成図としてチップ一対のみ記載したが、もちろん複数チップが実装された基板に対して行ってもよい。また、ここでは加圧手段を記載しなかったが、同じチャンバ内で上方から又は上下方向に加圧する手段を設けてもよい。また、還元処理後に真空雰囲気や不活性雰囲気、窒素雰囲気中をハンドリングして加熱加圧チャンバへ移送して加圧してもよい。
【0179】
<還元処理を伴う本接合装置の一例>
還元処理には、
図34に示すような接合装置401を用いてもよい。
【0180】
<装置構成>
接合装置401は、被接合物491及び492が置かれる雰囲気を制御するための真空チャンバ402と、被接合物491及び492の接合面に対して表面活性化処理を行う表面活性化処理手段408と、被接合物491及び492間の位置ずれを測定する位置ずれ測定手段428M,428e,428fと、被接合物491及び492間の位置ずれを補正するために被接合物491及び492を接合面の面内方向に相対的に移動させるアライメント手段423と、被接合物491及び492を接合面にほぼ垂直方向に遠ざけ、近づけ又は接触させ、或いは接触させた上で加圧するための相対移動手段426と、真空引き手段405,406,407と、還元処理手段441,442,445とを有して構成される。これらの構成により、接合装置1を用いて、チャンバ(真空チャンバ)402内を減圧し、被接合物491及び492の表面処理、接合、加圧、加熱及び還元処理を行うことができる。
【0181】
<加熱機構>
ヘッド422は、当該ヘッド422に内蔵されたヒータ422hによって加熱され、ヘッド422に保持された被接合物492の温度を調整することができる。同様に、ステージ412は、当該ステージ412に内蔵されたヒータ412hによって加熱され、ステージ412上の被接合物491の温度を調整することができる。また、ヘッド422は、当該ヘッド422に内蔵された空冷式の冷却装置等によって当該ヘッド422自身を室温付近にまで急速に冷却することもできる。ステージ412も同様である。ヒータ412h,422h(特に422h)は、金属バンプMRを加熱または冷却する加熱冷却手段として機能する。
【0182】
<加圧機構>
また、ヘッド422は、Z軸昇降駆動機構426によって、Z方向に移動(昇降)される。ステージ412とヘッド422とがZ方向に相対的に移動することによって、ステージ412に保持された被接合物491とヘッド422に保持された被接合物492とが接触している際に、加圧するように構成されてもよいされて接合される。なお、Z軸昇降駆動機構426は、複数の圧力検出センサ(ロードセル等)429,432により検出された信号に基づいて、接合時の加圧力を制御することも可能である。
【0183】
<還元処理手段>
還元性ガス源441は、水素ラジカル源又はギ酸ガス源である。還元性ガスは、還元性ガス源441から、弁442、導入間443を通り、所定の流量でチャンバ402内へ導入される。
【0184】
図34では、還元処理と加熱処理又は加熱加圧処理とを同一のチャンバ402内で行う構成になっているが、これに限らない。還元処理と加熱処理又は加熱加圧処理とを異なるチャンバで行う構成を採用してもよい。例えば、還元性ガスとして水素ラジカルを用いる場合に、還元処理を一つのチャンバで行い、加熱(加圧)処理を他のチャンバで行い、ギ酸を用いる場合に、同一のチャンバで還元処理をしつつ加熱(加圧)する構成を採用してもよい。
【0185】
<本願発明によるCOW実装の生産効率>
本願発明に係る仮接合と本接合とを有する接合方法を採用することで、COW実装の生産効率が従来の接合方法と比較して著しく向上する。例えば、チップ毎に対応する基板上の接合部に仮接合及び本接合をすることを繰り返し行い、所定の数のチップを基板上に実装する場合と比較することにより、本願発明の効果をよりよく理解することができる。
【0186】
1つの基板上に5000個のチップを接合する場合で比較する。
従来のようにチップ毎に仮接合と本接合とを繰り返す場合には、チップあたり60秒ほど掛かるといわれている。したがって、例えば、1つの基板上に5000個のチップを本接合するためには、(60秒/チップ)×(5000チップ)=300000秒=約83時間掛かる。チップ毎の仮接合及び本接合を10秒で行うとしても、1つの基板上に5000個のチップを本接合するためには、(10秒/チップ)×(5000チップ)=50000秒=約14時間掛かる。
【0187】
本願発明に係る接合方法によれば、チップ毎に1秒から5秒で仮接合をすることができる。したがって、1つの基板上に5000個のチップをチップ毎に1秒で仮接合する場合には、(1秒/チップ)×(5000チップ)=5000秒=約1.4時間で仮接合が完了する。よって、本接合を比較的低温で数時間行ったとしても、従来の方法と比較して著しく生産時間が短縮されることが理解できる。また、1つの基板上に5000個のチップをチップ毎に5秒で仮接合する場合には、(5秒/チップ)×(5000チップ)=25000秒=7時間で仮接合が完了する。したがって、上記の従来の接合方法を用いて仮接合及び本接合を行う場合の所要時間である14時間と比較しても、7時間未満で本接合を行えば、生産時間が短縮されることが理解される。本接合の所要時間は、加熱の温度に依存するものの、7時間未満とすることは可能である。
【0188】
<水付着処理>
上記の親水化処理(工程S1)が完了したチップを基板の対応する接合部に取り付ける(工程S3)前に、チップ側接合面に水(H
2O)を付着させてもよい(工程S5)。
図6は、この工程(工程S5)を含む、本願発明の第1の実施形態の変形例に係る接合方法のフローチャートを示している。
【0189】
水付着処理は、チップ側接合面の少なくとも金属領域に水を吹き付けることで行ってもよい。吹き付けられる水は、気体状(ガス状又は水蒸気等)でも液体状(霧状又は水滴状等)でもよく、水の形態はこれらに限定されない。水をチップ側接合面に吹き付けることで、チップ側接合上に効率よくかつ均一に水を付着することができる。
【0190】
水付着処理は、液体の水を収容する水槽を設け、この水にチップ側接合面の少なくとも金属領域を浸漬させることで行ってもよい。これにより、表面活性化処理された接合面上により多量の水をより確実に付着することができる。
【0191】
最初の親水化処理の完了から仮接合が行われるまでの間に、チップ側接合面を下向き(フェイスダウン)の状態で当該液体の水と接触させて、チップ側接合面に水を付着させることができる。金属領域が、チップ側接合面における他の領域より突出している場合は、当該突出した金属領域のみに、上記液体の水との接触により、水を付着させてもよい。
【0192】
一度親水化処理した表面に、さらに水(H
2O)を付着させ、水の層を形成することで、チップ側接合面の凹部を水(H
2O)で埋めて、接合面の表面粗さを低減させることができる。この水の層を介してチップ側接合面と基板の接合部とが接触することで、仮接合時の実質的な接合面積は大きくなると考えられる。
【0193】
また、例えば大気暴露による親水化処理で行った際に、表面に十分な密度でOH基を形成させる程には水が付着していない場合には、その後、更に水を付着させることでOH基の生成密度を十分に増加させることができる。大気中では湿度が30%から50%が一般的であり、OH基生成のための水分量が十分でない場合がある。
【0194】
付着させる水の層の平均厚さは、水付着前の接合面の表面粗さと同程度又はそれ以上であることが好ましい。このようにすることで、仮接合したときに、水付着されなければ接触しないような接合面の間の隙間を水で埋めることが可能となり、実質的な接合面積を確実に大きく確保することができる。(
図7を参照)
【0195】
チップが有する複数の金属領域の高さにばらつきがある場合に、比較的低い金属領域は、チップに力を加えて変形させないと基板と十分に接触しないことがありえる。この場合でも、当該複数の金属領域の間の高さの差とほぼ同程度あるいはそれ以上の厚さの水分子の層を、金属領域上に形成することで、水の層を介して所定の強度の仮接合が得られる。
(
図8を参照)
【0196】
接合面、特にチップの金属領域上に形成された水の層は、チップを基板に取り付ける(仮接合の)工程S3の際に、チップと基板との接合面間で、接合面に垂直な方向に作用する互いの吸着力又は吸引力を増加させる機能があると考えられる。その結果、水の層がなかった場合と比較して、チップと基板との接合面間に水の層が形成される部分の面積に応じて、仮接合の力が増加する。
【0197】
さらに、チップの複数の金属領域上に形成された水の層は、接合面に平行な方向に作用する吸引力をも発生させるので、チップを基板の接合部に向けて引き寄せることにより、基板に対するチップのセルフアラインメントを実現することができる。
【0198】
図9に示すように、たとえば、それぞれ水付着処理により水の層が形成された、チップが有する複数の金属領域と、これに対応する基板上の接合領域を、接合面に垂直な方向に沿って互いに近づけるとき、チップは、基板に対し、接合面に平行な方向にずれている場合がある(
図9(a))。接合面に垂直な方向にさらに近づけると、水の層同士が接触し、チップの金属領域とこれに対応する基板上の接合領域との間を結合するような水の層が形成される(
図9(b))。この水の層には表面エネルギーを最小にさせる表面張力が作用して、チップの金属領域は、これに対応する基板上の接合部上の所定の位置に自動的に位置決め(セルフアラインメント)される(
図9(c))。その結果、仮接合のためにチップを基板に対して取り付ける際に、位置決めの精度を比較的低く設定することができ、接合装置の簡略化、位置決め工程の高速化が可能になる。
【0199】
セルフアラインメントを実現するために、チップ側接合面に親水化された金属領域と疎水化された領域とを設け、これらに対応するようにして、基板の接合部に親水化された接合領域と疎水化された基板側疎水化領域とを設ける構成を採ることもできる。これにより、親水化されたチップの金属領域と基板の接合領域とが接触するようにチップを基板の対応する接合部に取り付ける際に、親水化領域と疎水化領域があることで、水の層で発生する表面張力の作用が大きくなり、位置決めの精度がさらに向上し、所定の位置にチップを高速で仮接合することができる。また、金属領域の表面がチップ側接合面の表面とほぼ同一面上にあるように構成したチップを使用する場合には、親水化領域と疎水化領域をほぼ同一平面上に配置することができるので、デバイスの最終製品の厚みを小さくし高密度化することができる。
【0200】
ただし、セルフアラインメントが出来るということは、仮接合の界面での水分子の付着量が多いということを意味する。このような比較的水付着量が多い場合に、チップが既に仮接合されている基板を高速移動させて次のチップの位置決めを行おうとすると、基板上のチップの位置がずれるという問題が生じる。これは、OH基を十分生成させるために必要な量を超えて付着された水が分子として接合面上に存在しているために生じる問題である。したがって、水を付着させる工程の後で、余剰に付着している水分子を除去することが好ましい。
【0201】
親水化処理後の水の付着は、チップ側接合面の金属領域のみに対して行われてもよく、またチップ側接合面の金属領域に加え、チップ側接合面の金属領域が対応して接合される、基板の接合部に形成された接合領域に対して行われてもよい。
【0202】
本願発明によれば、チップと基板との間に清浄な接合界面を形成し、良好な導電性と高い機械的強度を有するチップと基板とを含む構造体を製造することができる。また、すべてのチップを基板上に取り付けた後に本接合のための加熱処理を一回のみ行うように構成したことで、高い生産効率で、複数のチップを基板上に接合することができるという効果を奏する。さらに、水付着処理を有することで、十分な水が接合面に付着されるので、仮接合によるチップと基板との間の接合力が増強されるという効果を奏する。
【0203】
<1.2 第2の実施形態>
図10は、本願発明の第2の実施形態に係る、複数の層のチップを基板へ接合する方法を示すフローチャートである。基板に1層目のチップを取り付ける工程S11から工程S13の処理は、第1の実施形態の工程S1から工程S3と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0204】
第1の実施形態では1層分のチップが基板上に取り付けられるのに対し、第2の実施形態では複数層のチップが基板上に取り付けられる点で異なる。また、複数層のチップを基板上に取り付けるために、第2の実施形態では、複数層に亘って積層されるチップが、第1の実施形態のチップ側接合面に対応する第一接合面と、この第一接合面の裏側に位置する第二接合面とを有して構成されている。
【0205】
工程S11から工程S13(
図11(a))が完了すると、基板上には所定数の1層分のチップが取り付けられている。この第1層を構成するチップの第二接合面に第2層を構成する所定数のチップの第一接合面が接触するように、それぞれのチップを基板上に取り付ける。3層目以降も、同様の取付動作を実行することで、所望の数のチップ層を基板上に取り付ける。
【0206】
第2層のチップの取付けを例として説明すると、新たな(第2層の)チップ側接合面(第一接合面)に対して表面活性化処理と親水化処理を行い(工程S14)、既に基板に取り付けられている第1層のチップの第二接合面に対して表面活性化処理と親水化処理を行う(工程S15)。
【0207】
工程S16で、工程S14が施された、第1層のチップの数に対応する所定数の第2層のチップが、それぞれ、工程S15が施された第2層のチップに取り付けられる。第2層のチップの第1層のチップへの取付けは、第2層のチップを一つずつ取り付けることを、取り付けるべき所定数のチップの取付けが完了するまで繰り返すことで行われる。この工程S16が完了すると、基板上には2層分のチップが仮接合される(
図11(b))。
【0208】
以降これを繰り返し、第i層(iは3以上)のチップの第一接合面を基板上に既に取り付けられている第i―1層のチップに取り付けることにより、所定数の第i層のチップを基板上に取り付ける。
【0209】
第i層が所望の数の層(N層)まで、新たな所定数のチップに対して表面活性化処理及び親水化処理(工程S14)を行い、取り付けられた最上層の所定数のチップに対して表面活性化処理及び親水化処理を行い(工程S15)、仮接合する(工程S16)動作を繰り返すことにより(S17、S18)、基板上にN層の仮接合チップ層を形成することができる(
図11(c))。
図11(c)では、5層のチップ層が形成されているが、チップ層の数Nは、これに限定されることはなく、2以上であればよい。
【0210】
工程S19では、上記形成されたN層の仮接合チップ層と基板とを含む構造体を加熱する。
【0211】
加熱処理の際に、雰囲気を形成するガスの種類、流量などを調節することができる。また、加熱処理の際に、接合界面に圧力が加わるように、チップと基板との仮接合により形成された構造体に圧力を加えることもできる。
【0212】
加熱処理における、温度又は上記力若しくは圧力の時間プロファイルは、仮接合の条件、接合界面を形成する材料の熱特性、チップ又は基板を形成する材料の熱特性、加熱処理の際の雰囲気、加熱処理装置の特性、チップ層の数Nなどにより、調節することができる。
【0213】
本願発明の第2の実施形態に係る接合方法によれば、第1の実施形態に係る接合方法と同様の効果を奏するとともに、さらに、接合界面の電気的又は機械的特性を低下させる樹脂等の物質を使わない清浄な工程で、所定のN層のチップ層を基板上に形成できるという効果を奏する。また、従来の接合方法では、各チップ層の仮接合が完了するごとに、樹脂を塗布することが必要であったが、本願発明の第2の実施形態によれば、このような樹脂処理工程を省略することができるので、複数のチップの基板上への仮接合をきわめて効率的に行うことができる。
【0214】
図12は、本願発明の第2の実施形態に係る複数の層のチップを基板へ接合する方法の他の例を示すフローチャートである。各層(第1層及び第i層(iは2以上))において、表面活性化処理及び親水化処理(工程S11及び工程S14)が完了したチップの第一接合面に、水付着処理(工程S21及工程S22)を行うことを特徴とする。
【0215】
接合面、特にチップの金属領域上に形成された水の層は、チップを基板に取り付ける(仮接合の)工程S13の際及び第i層のチップを第i−1層のチップ上に取り付ける工程S16の際に、チップと基板との接合面間及びチップ同士の接合面間で、接合面に垂直な方向に作用する互いの吸着力又は吸引力を増加させる機能があると考えられる。その結果、水の層がなかった場合と比較して、チップと基板との接合面間に水の層が形成される部分の面積に応じて、仮接合の力が増加する。
【0216】
さらに、チップの複数の金属領域上に形成された水の層は、接合面に平行な方向に作用する吸引力をも発生させるので、チップを基板の接合部に向けて引き寄せることにより、基板に対するチップのセルフアラインメントを実現することができる(
図9を参照)。N層のチップを基板上に積層する際に、上下に隣接する2層のチップ間において、下層のチップの第二接合面に対して上層のチップの第一接合面を位置決めする必要があるが、上下に隣接する2層のチップ間においても同様にセルフアラインメント機能が作用するので、接合装置の位置決め精度を比較的低く設定することができ、接合装置のさらなる簡略化、位置決め工程の高速化が可能になる。
【0217】
第2の実施形態のさらなる変形例(図示せず)として、各層のチップの仮接合(工程4(S4))の後に、加熱処理を行ってもよい。この場合、N層のチップの仮接合後の接合体の加熱処理(工程5(S5))を省略してもよい。
【0218】
第1及び第2の実施形態において、基板に接合される複数のチップは、複数の種類のチップを含んでいてもよい。例えば、複数の種類のチップは、XY方向の寸法、大きさの異なる複数のチップを含んでいてもよい。
【0219】
たとえば、
図13に示すように、縦横方向にp0の寸法で設定された各接合部において、第1の種類のチップCP11と第2の種類のチップCP12との双方が配置されるようにしてもよい。
図13では、チップCP11とチップCP12は、いずれもピッチp1で縦横方向に配置されており、ピッチp1はピッチp0に等しい。ここで、第2の種類のチップCP12のサイズは、第1の種類のチップCP11のサイズよりも小さい。また、第2の種類のチップCP12のサイズと第1の種類のチップCP11のサイズとは、いずれも、接合部よりも小さい。
【0220】
このように、複数の種類の異なるサイズのチップが同一のチップ層(第i層)において混在するようにチップを配置する構成を採ることもできる。このような態様によれば、多様なサイズのチップで構成される完成品チップを効率的に作成することが可能になる。
【0221】
本願発明によれば、チップと基板との間及びチップ間に清浄な接合界面を形成し、良好な導電性と高い機械的強度を有する複数層のチップと基板とを含む構造体を製造することができる。複数層に亘ってすべてのチップを取り付けた後に本接合のための加熱処理を一回のみ行うように構成したことで、高い生産効率で、複数層のチップを基板上に接合することができるという効果を奏する。
【0222】
また、本接合での加熱処理を行う前の、複数層のチップと基板とを含む構造体を、複数個まとめて加熱することで、より効率的に、清浄な接合界面を有する複数層のチップと基板とを含む構造体を製造することができる。
【0223】
<2.接合装置>
<2.1 システム構成>
図14は、チップ実装システム(電子部品実装システム)1の概略構成を示す上面図である。なお、
図14等においては、便宜上、XYZ直交座標系を用いて方向等を示している。
【0224】
このチップ実装システム1は、表面活性化手段と親水化処理手段と、これらにより表面処理されたチップを基板に取り付けるチップ取付手段とを有して構成され、基板(チップ実装対象の基板)上に表面処理された複数のチップから構成される1又は複数のチップ層を取り付けて実装するシステムである。たとえば、このチップ実装システム1は、対象の基板WA上に第1層の複数のチップCP1を接合することができる。また、チップ実装システム1は、基板WA上に配置された第1層の複数のチップCP1上に第2層の複数のチップCP2等をさらに積層して接合することも可能である。
【0225】
図14に示すように、より具体的には、チップ実装システム1は、複数のチップを保持して接合すべきチップを個別に供給するチップ供給装置10と、チップ供給装置10からチップ搬送手段により供給されたチップを基板上に取り付けるチップ取付手段であるボンディング装置30と、複数のチップ及び基板の接合面に表面活性化処理と親水化処理を行う表面処理装置50と、チップ実装システムの外部から接合すべきチップ及び基板をその内部に搬入し、チップが取り付けられた基板(チップと基板とを含む構造体)をその外部へ搬出する搬出入部90と、複数のチップ、基板及びチップと基板とを含む構造体を搬出入部90、チップ供給装置10、ボンディング装置30及び表面処理装置50の間において搬送する搬送部70とを備える。
【0226】
図14等に示す実施形態においては、加熱手段は図示されていないが、加熱手段はチップ実装システム1に組み込まれるように構成されても、またチップ実装システム1とは別に構成されてもよい。
【0227】
加熱手段がチップ実装システム1に組み込まれる構成を採る場合には、加熱装置を搬送部70に連結した構成とすることで、仮接合後にチップと基板とを含む構造体を当該加熱装置に搬送することができる。
【0228】
加熱手段をチップ実装システム1とは別に構成する場合には、加熱手段を、はんだ材のリフローなどを行うための加熱炉としても、一般的な加熱炉としてもよい。この場合、仮接合後のチップと基板とを含む構造体を複数個まとめて加熱処理することができるので、効率的に本接合を行うことができる。
【0229】
<2.2 搬送部>
搬送部70は、接合すべき複数のチップを、搬出入部90から表面処理装置50へ搬送し、表面活性化処理と親水化処理が行われた後に表面処理装置50からチップ供給装置10へ搬送する。また、搬送部70は、基板を、搬出入部90から表面処理装置50へ搬送し、表面活性化処理と親水化処理が行われた後に表面処理装置50からボンディング装置30へ搬送する。さらに、搬送部70は、所定数のチップが基板上に取り付けられた後に、チップと基板とを含む構造体をボンディング装置30から搬出入部90へ搬送する。
【0230】
<2.3 表面処理装置>
図14に示す表面処理装置50は、真空チャンバ内に基板WA又は複数のチップを保持するステージ53と、表面活性化処理のために粒子を放射する粒子ビーム源51と、親水化処理のために水を放出する水導入口54とを備え、複数のチップと基板WAとの両方に対して表面活性化処理と親水化処理とを行うことができる構成となっている。以下、便宜的に、
図14に示す装置の実施例を用いて本願発明を説明するが、これに限定されない。
【0231】
図14には、表面処理装置50内に基板WAのみが示されているが、複数のチップと、この複数のチップが既に取り付けられている基板とを含む構造体における、最上層のチップの第二接合面に対して表面活性化処理又は親水化処理をする場合には、
図14の基板WAが示されている位置に、基板WAに代わって、上記複数のチップとこの複数のチップが既に取り付けられている基板とを含む構造体を配置するような構成としてもよい。
【0232】
たとえば、表面活性化処理のために一つのチャンバを設け、親水化処理のために別のチャンバを設けてもよい。また、複数のチップの表面処理(表面活性化処理及び親水化処理)をするために一つのチャンバを設け、基板の表面処理(表面活性化処理及び親水化処理)をするために別のチャンバを設けてもよい。
【0233】
さらにまた、チップの表面活性化処理と親水化処理、そして基板の表面活性化処理と親水化処理とを別個に実施するために、それぞれの処理に対してチャンバを設け、計4つのチャンバを設けてもよい。また、表面活性化処理及び親水化処理の処理態様に応じて、1又は複数のチャンバを設ける構成とすることができ、各チャンバに収容する処理装置の組み合わせも種々に変更することが可能である。
【0234】
表面処理装置50は、真空ポンプ(図示せず)に接続されており、表面処理装置50内部の気圧を低下させ、真空度を上げることができる。真空度を上げることで、粒子ビーム源による粒子ビームの放射が可能になる。真空ポンプは、表面処理装置50内の気圧を10
−5Paに下げる能力を有することが好ましい。また、真空引きにより、表面処理装置50内の、浮遊不純物や水分子などを予め除去し、清浄な雰囲気を準備することができる。
【0235】
<表面活性化処理手段1>
所定の運動エネルギーが付与された粒子(破線で図示)は、
図15に示されるように、粒子ビーム源51から複数の接合部が設定された接合面を有する基板WA全体に向けて放射状に放出されてもよい。比較的小型の粒子ビーム源などを使うことができ、装置を比較的単純に構成することで小型化できる。
【0236】
粒子ビーム源51は、所定の運動エネルギーが付与された粒子が、粒子ビーム源から複数の接合部が設定された接合面を有する基板の一部分に向けて放射状に放射されるように構成されてもよい。このとき、粒子ビーム源の位置、向きなどを変えることで、接合面が設定された領域全体を照射することができる。
【0237】
図14では、粒子ビーム源51は、表面処理装置50内でステージ53の斜め上部に取り付けられ、ステージ53上に搬送された基板の表面に向けて所定の運動エネルギーが付与された粒子を放射する。ステージ53は、円形であり、ステージ53の中心軸を回転軸として回転することができる。ステージ53を表面活性化処理中に回転させることで、基板WA表面に亘って、基板WA表面の単位面積当たりに照射される粒子の量を均一にし、表面層の除去量(厚さ)を均一にすることができる。
【0238】
粒子ビーム源のチャンバ内の配置又は粒子ビームが照射される対象物に対する配置は、
図14に示された実施態様に限定されない。
【0239】
<表面活性化処理手段2>
中性原子ビーム源、イオンビーム源、高速原子ビーム源などの粒子ビーム源は、
図16に示されるように、ライン型でもよい。ライン型の粒子ビーム源は、ライン型(線状)の又は細長い粒子ビーム放射口を有し、この放射口からライン型(線状)に粒子ビームを放射することができる。放射口の長さは、粒子ビームが照射される基板の直径より大きいことが好ましい。基板が円形でない場合には、放射口の長さは、粒子ビーム源に対して相対的に移動させられる基板に係る放射口が延びる方向の最大寸法より大きいことが好ましい。
【0240】
ライン型の粒子ビーム源から放射された粒子ビームは、表面活性化処理中のある時刻においては、基板の表面の線状の領域を照射している。そして、ライン型の粒子ビーム源を、接合面を有する基板に向けて粒子ビームを放射しつつ、放射口が延びる方向と垂直方向に走査させる。その結果、線状の粒子ビームの照射領域が基板のすべての接合部上を通過する。ライン型の粒子ビーム源が、基板上を通過し終えると、基板全体が、粒子ビームにより照射され、表面活性化される。
【0241】
ライン型の粒子ビーム源は、比較的面積の大きい基板の表面を、比較的均一に粒子ビームで照射する際に適している。また、ライン型の粒子ビーム源は、基板の様々な形状に対応して、比較的均一に粒子ビームを照射することができる。
【0242】
<表面活性化処理手段3>
プラズマ発生装置を用いても、粒子に所定の運動エネルギーを与えることができる。粒子への所定の運動エネルギーの付与は、プラズマ発生装置を用いて、複数のチップ又は基板などの接合面に対して、交番電圧を印加することで、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の電離した粒子の陽イオンを、上記電圧により接合面に向けて加速させることで行うことができる。プラズマは数パスカル(Pa)程度の低真空度の雰囲気で発生させることができるので、真空システムを簡易化でき、かつ真空引きなどの工程を短縮化することができる。
【0243】
プラズマ発生装置は、表面活性化される接合面に衝突させる粒子の運動エネルギーを1eVから2keVの範囲に制御できるように構成されていることが好ましい。上記の運動エネルギーにより、効率的に表面層におけるスパッタリング現象が生じると考えられる。除去すべき表面層の厚さや材質などの性質、新生表面の材質などに応じて、上記運動エネルギーの範囲から所望の運動エネルギーの値を設定することもできる。
【0244】
<親水化処理手段>
図14に示される実施形態においては、水ガス供給部55と、弁56と、ガス供給管と、水導入口54とから、接合面を親水化処理する親水化処理手段が構成される。水ガス供給部55から供給される気体状又は液体状の水は、弁56の開放に応じて、ガス供給管を通って水導入口54から表面処理装置50のチャンバ内に導入される。弁56は、マスフローとして機能し、その開放度に応じて水の供給量を調節するようにしてもよい。
【0245】
また、親水化処理手段は、水ガス供給部55で水ガス(気体状の水又は霧状の水)をキャリアガスと混合させることで、水ガスとキャリアガスの混合体が表面処理装置50のチャンバ内に導入されるように構成されてもよい。さらにまた、親水化処理手段は、水ガスとキャリアガスとの混合比、弁56を通過するガスの流量を調節することで、表面処理装置50内の雰囲気の湿度を調節するように構成されてもよい。
【0246】
あるいはまた、親水化手段は、チャンバ外又はボンディング装置外の大気をチャンバ内へ導入するように構成されてもよい。
【0247】
<2.4 チップ供給装置>
チップ供給装置10は、ダイシングされた基板から各チップCPを取り出し、ボンディング装置30に各チップCP(CPi)を供給する装置である。チップ供給装置10は、複数のチップから一つのチップのみを上方に持ち上げて支持する突上部11と、突上部11により持ち上げられたチップをボンディング装置30に搬送するチップ移載装置13等を備える。チップ移載装置13は、ダイピッカ131とチップ供給機135とを有する。
(
図17参照)
【0248】
チップ供給装置10は、その内部でダイシング処理が行われて複数のチップCPが生成されるように構成されてもよい。具体的には、複数の電子回路を有する基板WCが縦方向および横方向に切削されチップ化される。
【0249】
あるいは、ダイシング処理が既に行われた複数のチップCPが、支持基板に支持された状態で、表面活性化処理、親水化処理が施されてチップ供給装置10に搬送されてもよい。ダイシング処理による汚染粒子などの発生を抑制することができる。
【0250】
チップ供給装置10内において、ダイシングされた複数のチップCPがダイシングテープTE上に載置される。各チップCPは、フェイスアップ状態(金属領域としてのハンダバンプBU(図示せず)が付された側の面が上側を向いた状態)でダイシングテープTE上に載置されている。
【0251】
そして、切り出された各チップCPは、チップ供給装置10の突上部(突上ニードル)11によって、1個ずつ上方に突き上げられ、ダイピッカ131に位置PG1で受け渡される。フェイスアップ状態のチップCPが、反転機構を有するダイピッカ131によって上下反転されて、フェイスダウン状態でボンディング装置30に供給される。ダイピッカ131は、その先端(下端)の吸着部でチップCPをフェイスアップ状態で吸着し、反転機構によって上下反転されて、フェイスダウン状態でさらに上方に移動した後に、チップ供給機135に受け渡す。チップ供給機135は、フェイスダウン状態のチップCPの上面を吸着して、チップ搬送部39側へ向けて移動する。
【0252】
<2.5 チップ搬送部>
図18において、チップ搬送手段であるチップ搬送部(ターレットとも称する)39は、チップ供給装置10から供給されたチップを一つずつボンディング部33(詳細にはヘッド部33H)に受け渡す装置である。
【0253】
チップ搬送部39は、複数(N個;ここでは3つ)のプレート部391を備えている。各プレート部391は、薄板形状を有しており、例えば数mm(ミリメートル)程度(好ましくは1mm〜2mm程度以下)の厚さを有している。複数のプレート部391は、上面視において、軸AXの周りに等角度間隔で配置される。
【0254】
チップ搬送部39は、複数のプレート部391を一斉に回転駆動する駆動部392をも備えている。チップ搬送部39は、駆動部392を用いて、所定の鉛直軸AXを中心に複数のプレート部391を回転させることが可能である。
【0255】
図18に示すように、チップ供給装置10から供給されたチップCPは、チップ搬送部39の3つのプレート部391(詳細には、391a,391b,391c)のうちのいずれか(例えば391b)によって受け取られる。その後、当該プレート部391が180度回転した後に、プレート部391上のチップは、ボンディング部33(ヘッド部33H)へと受け渡される。
【0256】
プレート部391はそれぞれ上記の動作を実行するので、ボンディング部33にはチップが連続的に受け渡される。
【0257】
より具体的には、N個(ここではN=3)のプレート部391を有するチップ搬送部39が角度β(=360度/(N*2))(ここでは60度(360度/(3*2))回転するごとに、チップ供給装置10からプレート部391へのチップCPの受け取り動作と、プレート部391からボンディング部33(ヘッド部33H)へのチップCPの受け渡し動作とが交互に実行される。
【0258】
たとえば、
図18に示すように、或るチップCPが受渡位置PR1でプレート部391bによって受け取られプレート部391bに保持される。このとき、別のチップCPが位置PR9まで進行したプレート部391aによって既に受け取られプレート部391a上に保持されている。
【0259】
この状態から、チップ搬送部391が軸AX周りに(時計回りに)角度β(60度)回転すると、
図19に示すように、プレート部391a上のチップCPは、ヘッド部33Hの直下の位置(受渡位置PR2)にまで移動する。ヘッド部33Hは、チップCPに干渉しない基準位置から若干量下降し、ヘッド部33Hの先端部(下端部)で当該チップCPを吸着して、プレート部391aからチップCPを受け取る。ヘッド部33Hは、プレート部391a上のチップCPを吸着した後に今度は若干上昇して基準位置に戻る。これにより、プレート部391a上のチップCPは、ヘッド部33Hに受け渡される。このようにして、プレート部391aからヘッド部33HへのチップCPの受け渡しが実行される。
【0260】
このとき、チップ搬送部391(詳細にはそのプレート部391a)は、受渡位置PR2(XY平面においてボンディング位置と同じ位置)において、上側のチップCPと下側の基板WTとの間にある。
【0261】
次の角度βの回転動作が実行されると、プレート部391cが受取位置PR1に移動する。この状態において、さらに別のチップCPが受取位置PR1でプレート部391cによって受け取られる。このとき、プレート部391bには上述の動作によって既にチップCPが載置されている。
【0262】
この角度βの回転動作によって、プレート部391aがヘッド部33Hの直下の位置から離間する。この回転動作により、ヘッド部33Hからボンディング位置(X,Y)を直接的に見通すことができるようになる。そして、この動作後において、ヘッド部33Hが下降し、ヘッド部33Hに吸着保持されたチップCPが位置PG7(図示せず)まで下降させられる。これにより、ヘッド部33Hの先端部で吸着されていたチップCPが、ステージ31に設置された基板WA上に載置される。このとき、後述するような位置合わせ動作等が実行され、当該チップCPが基板WA上の所望の位置に載置される。その後、ヘッド部33Hは上昇して再び基準位置に復帰し、プレート部391aとヘッド部33Hとの干渉が回避される。
【0263】
その後、さらに角度βの回転動作が実行されると、今度はプレート部391bが受渡位置PR2に到達し、プレート部391bからヘッド部33HへのチップCPの受け渡し動作等が実行される。
【0264】
そして、さらに角度βの回転動作が実行され、今度はプレート部391aが受取位置PR1に移動し、プレート部391aによるチップCPの受け取り動作が実行される。
【0265】
以後、同様の動作が繰り返し実行される。
【0266】
ここにおいて、奇数個(特に3つ以上)のプレート部391が軸AX周りに略等角度間隔で(角度γ(=β×2)間隔で)配置されており、チップ搬送部39が角度β回転するごとに、位置PR1でのチップ受け取り動作と位置PR2でのチップ受け渡し動作とが交互に実行され得る。
【0267】
特に、回転式のチップ搬送部39によって、角度γの回転動作ごとに各チップCPを供給することができる。詳細には、或るチップの載置後においては、角度β(例えば60度)の回転移動で、次のチップを供給することができる。したがって、位置PR1から位置PR2へとチップCPを1個ずつ搬送(往復搬送)する場合に比べて、比較的短い時間間隔で複数のチップCPを順次に供給することが可能である。すなわち、チップ供給におけるサイクルタイムを短縮することが可能である。特に、プレート部391の数が大きいほど、チップを取り付ける時間間隔が短縮される。
【0268】
図17において、チップ搬送部39の3つのプレート部391上に、チップの突起部(金属領域)が下向きに載置されているが、チップの金属領域はチップ搬送部39に接触しないことが好ましい。
【0269】
チップ搬送部39の3つのプレート部391は、チップの金属領域に触れないように、チップ側接合面の一部分を支持するように構成されてもよい。これにより、親水化処理が完了してから仮接合が行われるまでに、チップの金属領域は、親水化処理が完了したときの表面状態を保つことができる。
【0270】
そこで、
図4に示されたような複数のバンプ(金属領域)が形成されたチップを搬送するためには、
図20に示されるように、当該複数のバンプにより囲まれた領域及びチップの外周部の双方又はいずれか一方を支持するように、プレート部391に内側支持部61、外側支持部62及びバンプに対応する箇所にはバンプが接触しないような凹部63が構成されてもよい。その際、当該複数のバンプにより囲まれた領域を支持する内側支持部61には、プレート部を貫通してなる、チップを真空吸着するための真空吸着孔64を設けるのが好ましい。チップを真空吸着することで、チップ搬送部39が回転するときに、チップはプレート部391に固定され、チップのプレート部391からの離脱や、プレート部391上での位置ずれを防ぐことができる。
【0271】
図20では、チップを内側支持部61と外側支持部62とで支持する構成が示されているが、内側支持部61と外側支持部62のいずれか一方でチップを支持する構成としてもよい(
図21(a)及び(b))。外側支持部62のみでチップを支持する場合は、外側支持部62がチップの外周部と接触されて、プレート部391の凹部63とチップの支持される側の面とで囲まれる領域を真空吸着孔64で真空引きすることにより、チップをプレート部391に固定して支持することができる(
図21(b))。
【0272】
<2.6 ボンディング装置>
ボンディング装置30は、基板を支持するステージ31、チップを保持して基板に取り付けるボンディング部33、撮像部(カメラ)35、位置認識部(不図示)等を備える。
【0273】
ボンディング部33は、チップを保持してZ方向に移動させるヘッド部33Hと、ヘッド部33HをZ方向に移動させ又はθ方向に回動移動させるヘッド駆動部36を有して構成されている。
【0274】
撮像部(カメラ)35a、35bは、ボンディング部33に取り付けられ、基板からチップに附されたマーク部位、ヘッド33HをZ方向に透過し、ボンディング部33に設けられた光路変更部材(図示せず)により水平方向(X方向)に反射される光を撮像するように配置されている。撮像部(カメラ)35a、35bを用いて、チップのマークと、基板の対応するマークとを撮像し、これらのマークを所定の位置関係にするように、ステージのXY方向位置とヘッド33Hのθ方向位置とを制御することができる。これにより、チップの基板上への位置決めを高い精度で効率良く行うことができる。
【0275】
チップ搬送部39は、チップ供給機135からチップCPを、
図17の位置PG3、
図18の位置PR1で受け取ると、中心軸AX周りの回転動作によって当該チップCPをボンディング部33のヘッド部33H(後述)の直下の位置である
図17のPG5、
図19の位置PR2まで搬送する。チップCPは、このような搬送動作を経て、フェイスダウン状態のまま受渡位置PG5にまで到達する。
【0276】
その後、ボンディング部33のヘッド部33Hは、チップCPを吸着することにより受け取る。ステージ31をX方向およびY方向に移動し、基板WAの当該チップCPを仮接合すべき箇所(基板の接合部)を、ヘッド部33Hの真下に配置する。その後、撮像部(カメラ)35a、35bを用いてチップ基板間の位置決めを行い、ボンディング部33のヘッド部33Hが降下し、チップ側接合面を基板上の対応する接合部に接触させる。接触時に、チップ側接合面と基板の接合部との間に圧力を加えることができるようにボンディング部を構成してもよい。
【0277】
ボンディング部33のヘッド部33Hに、保持されたチップを加熱するためのヒータが設けられていてもよい。
【0278】
<変形例>
従来のボンディング装置においては、ボンディング部33に対応する部位が、装置内で水平方向に支持された片持ち梁構造のビームに沿って、水平方向、又は基板表面に平行面内方向(XY方向)に移動できるように構成されている。しかし、片持ち梁構造は剛性が低く、チップの取り付けの際に力を加えると、片持ち梁がZ方向にたわむ。このため、チップと基板との接触の際に印加することのできる力は極めて制限され、通常、最大で2〜3kgf(重量キログラム)すなわち20〜30N程度の力しか印加することができない。従来のNCPやハンダバンプ接合方法では、チップを樹脂やフラックスで一旦、仮接合するのみなので20〜30Nの加圧力で十分あった。また、その場でハンダ接合させるにしても加熱して溶融させるので大きな加圧力は不要であり、装置の簡易化と高速化のためにヘッド(又はボンディング部)を移動させて、場合によっては複数ヘッドを有する構成を採用して高速化を図っていた。しかし、本願発明の接合方法のように金属領域の融点未満で接合を行う場合には、界面の接触した部分しか接合できないため、比較的高い圧力が必要になる。例えば、金属領域(バンプ)に対して、通常のウエハ表面の研磨に有効なCMP研磨方法を用いても、表面粗さを数nm以下にすることは困難である。そのため、研削方法も用いられる。このようにして準備された、金属領域の表面の一般的な表面粗さは、測定したところ、Ra10nm以上であり200nmにも達するものもあった。そのため、ウエハ同士を接合させようとする場合には、数百トンレベルの力を印加することが必要となり、現実的ではなかった。しかし、COW接合することで、1チップあたりに印加する圧力は同じでも必要な力は小さくて済み、1チップあたりに印加することができる力を増大させることができる。仮接合時の加圧は、接合の量産を可能にする現時的な解となりうる。そこで、金属領域の融点未満であっても良好な接合界面を形成するために、チップと基板との接合界面により高い圧力を掛けることで、金属領域の変形を促し、実質的な接合面積を増加させることができる。また、界面に残った水分子を押し出して、OH基同士の強度の高い接合を確保することができる。
【0279】
図31は、チップの基板への取り付けの際に、高い圧力を加えることが出来るように構成された接合装置(ボンディング装置30)の一例を示す。
図31では、ボンディング部33は固定され、ヘッド33Hが固定されたボンディング部33に対してZ方向及び回転方向に動くことができるように構成されている。すなわち、ボンディング装置30は、ステージ31と、ボンディング部33と、更に、ステージ31をZ方向に固定すると共にボンディング部33をXY方向に固定するフレーム34とを有して構成される。フレーム34は、ステージ31をXY方向に可動でありZ方向に動かないように固定して支持するステージ支持部34Aと、ボンディング部33をXY方向に動かないように固定して支持するボンディング部支持部34Bと、ステージ支持部34Aとボンディング部支持部34Bとを所定の位置関係に固定して接続する支柱部34Cとを有して構成されてもよい。ステージ支持部34Aとボンディング部支持部34Bとは、XY方向に板状に構成されて、支柱部34Cは、ステージ支持部34Aとボンディング部支持部34Bとを互いに平行となるように固定する。支柱部34Cは、複数の支柱を有して構成され、例えば、4つの支柱をボンディング部33を囲む4方向に設けて、ステージ支持部34Aとボンディング部33とを所定の間隔となるように固定されていることが好ましい。さらに、ボンディング部支持部34Bを貫通して、基板WA表面に対してヘッド33HのZ方向移動方向が垂直となるように固定されていることが好ましい。
【0280】
この構成により、剛性の高いフレーム34を構成することができ、ヘッド33Hは、支持するチップCPを基板WAに対して高い圧力で押し付けることが可能になる。さらに剛性を高めるためにフレーム34は鋼などの金属の鋳物により形成されることが好ましい。このような剛性の高いフレーム34を用いることで、10kgf又は100N以上、好ましくは300N以上の高い力を接触状態にあるチップと基板とに印加することが可能になり、さらには、1000Nほどの力を印加することも可能になる。
【0281】
フレーム34又はボンディング装置30に対して動かないボンディング部33へのチップの供給は、チップ供給装置10からチップ搬送部39を用いて行われる。
【0282】
<2.7 水付着装置>
上記の親水化処理の完了後、チップが基板上に取り付けられる前に、またはチップが基板上に既に取り付けられたチップの第二接合面上に取り付けられる前に、接合されるチップのチップ側接合面又は第一接合面に水を付着させるための孔部を有する装置(水付着手段又は水付着装置)を設けてもよい。水付着装置は、チップ搬送部39に設けられてもよく、あるいはチップ供給装置10内やボンディング装置30内に設けられてもよい。
【0283】
<回転噴射型1>
図22に示されるように、水付着手段として、上記孔部を水噴射口65としてなし、当該水噴射口65から水を噴射する構成としてもよい。この水噴射口65は、プレート部391に付設された部分に、真空吸着孔64と同じ向きに開口されるように設けてもよい。この水噴射口65は、真空吸着孔64の軸AXを中心とした回転円上に配置される。チップ搬送部39の回転中心の軸AXを基準として、真空吸着孔64と水噴射口65とは角(φ)をなしている。
【0284】
チップがプレート部391からヘッド部33Hへ受け渡された後に、プレート部391が角(φ)だけ回転し、水噴射口がヘッド部33Hに吸着されているチップのチップ側接合面(第一接合面)に対向する位置に来たときに、水噴射口から気体又は液体状の水をチップのチップ側接合面(第一接合面)に向けて噴射させる。
【0285】
チップ搬送部39の回転動作中に水の噴射を行うことができるので、工程時間を短縮することができる。
【0286】
水噴射口は、チップ搬送部39のN個のプレート部391のそれぞれに配置されるのが好ましい。この場合、N個のプレート部391のうち、チップをヘッド部33Hに受け渡した直後に、当該チップを受け渡したプレート部391に設けられた水噴射口を開放することで、チップのチップ側接合面又は第一接合面に向けて水を噴射することができる。
【0287】
<回転噴射型2>
図23に示されているように、水噴射口の変形例として、真空吸着孔64を水噴射口として機能させてもよい。真空吸着孔64は、真空ポンプ(図示せず)に接続されるとともに水供給源にも接続されるように構成される。そして、真空吸着孔64は、チップを吸着する時及び吸着している間は、真空ポンプと接続され、水供給源との接続が遮断されて、チップを真空吸着する。水噴射口として機能するときは、真空ポンプとの接続が遮断され、水供給源と接続されて、真空引きの際に気体が流れる方向と逆方向に気体状又は液体状の水が流れるように構成されるのが好ましい。
【0288】
このように真空吸着孔64を水噴射口としても構成することで、チップがプレート部391からヘッド部33Hへ受け渡された直後に、チップ搬送部39のプレート部391に設けられた上記真空吸着孔である水噴射口を介して、水を、チップ側接合面に向けて吹き付けることができる。(
図23参照)
【0289】
チップ搬送部39のN個のプレート部391のそれぞれの真空吸着孔から水分子ガスを噴射できるように構成することが好ましい。この場合、N個のプレート部391のうち、チップをヘッド部33Hに受け渡した直後に、当該チップを受け渡したプレート部391に設けられた真空吸着孔から水分子ガスを噴射させる。
【0290】
チップがプレート部391からヘッド部33Hへ受け渡される動作とほぼ同時にチップ表面に水を吸着させることができるので、工程時間を短縮することができる。また、チップは受け渡した後には、真空吸着孔の上方にあるので、プレート部を回転させずにそのまま水を噴射するだけでよい。したがって、チップのプレート部391への受渡し後に、改めて水噴射口をチップに対して相対的に位置決めする必要はない。
【0291】
<固定噴射型>
図24に示されるように、水付着手段のさらなる変形例として、水噴射口65は、チップ供給装置10又はボンディング装置30に対して固定され、チップの取出し位置から接合位置までの移動経路中に設けられてもよい。各プレート部391の先端にボンディング部33のヘッド部33Hを配置し、搬送されるチップが水噴射口65を通過する際に、チップ側接合面に対して水を噴射できるように構成されてもよい。
【0292】
例えば、チップ搬送部39のプレート部391は、チップをフェイスダウン(下向き)の状態で、チップ側接合面を下方向に開放させた状態で搬送するように構成され、水噴射口は、チップ供給装置10又はボンディング装置30内の、チップ搬送部39の回転によるチップの移動経路上の所定の位置に、上向きに固定されるように構成されてもよい。
【0293】
チップ搬送部39がチップCPをフェイスダウン(下向き)の状態を保ち、搬送するために、
図25に示すように、各プレート部391の先端にボンディング部33のヘッド部33Hを配置してもよい。
【0294】
チップ側接合面を下方向に開放して搬送する構成は、
図25に示された実施態様に限られない。
【0295】
たとえば、
図14等の態様を変形して、プレート部391が、バンプ(金属領域)をフェイスアップの状態で受け取り、水噴射口が、チップの取出し位置から接合位置までの移動経路中に上から下に向けて水を噴射するように構成されてもよい。
【0296】
また、水噴射口は、チップの取出し位置から接合位置までの移動経路中に下から上に向けて水を噴射するように構成され、プレート部391は、チップをフェイスアップ状態で受け取り、チップが水噴射口上を通過するときに、プレート部391がプレート部391の長手軸周りに回転して、チップ側接合面又は第一接合面を水噴射口に向けさせるように構成されてもよい。
【0297】
ここにおいて、偶数個(特に4つ以上)のプレート部391が軸AX周りに略等角度間隔で(角度γ間隔で)配置されている。
図18等の構成と異なり、各プレート部391の先端にボンディング部33のヘッド部33Hが配置されている。したがって、偶数個のプレート部391が配置されることにより、チップ搬送部39が角度γ回転するごとに、位置PR1でのチップ受取動作と、位置PR2でのチップ仮接合動作と、位置PR3での水付着動作とが同じタイミングで行われるので、チップの受渡し、水付着動作、及び仮接合の一連の工程に必要な時間を短縮することができる。
【0298】
<浸漬型>
親水化処理の完了後、チップが基板上に取り付けられる前に、チップ側接合面又は第一接合面の金属領域に水を付着する装置(水付着装置)として、チップ供給装置10又はボンディング装置30内に液体の水を収容する水槽66を設けてもよい。(
図26を参照)
【0299】
上記水槽66は、チップ供給装置10又はボンディング装置30内の、チップ搬送部39の回転によるチップの通過経路上の所定の位置に配置されるのが好ましい。たとえば、
図24の水噴射口65が設けられている位置に、この水槽66を配置してもよい。
【0300】
図26に示すように、各プレート部391の先端にボンディング部33のヘッド部33Hが配置されている構成を採ることもできる。ヘッド部33Hに吸着されているチップは、水槽上に位置決めされ下方向(−Z方向)に移動することでチップ側接合面が、水槽内に収容されている液体状の水と接触する。水槽内の水との接触により、チップ側接合面に多量の水を確実に吸着させることができる。
【0301】
チップ側接合面の金属領域がバンプ状に(突起部として)形成されている場合には、チップの降下量を制御することで、当該バンプ上の金属領域のみを液体の水に接触させることが可能になる。
【0302】
水槽内の水位を検出するセンサ(図示せず)により、水槽内でチップの水面の鉛直方向(Z方向)の位置を一定又は所定の位置に制御してもよい。
【0303】
水槽に蓋を設け(図示せず)、水槽を開閉できるように構成してもよい。水槽を蓋でしめることで、例えば水槽が使用されていないときに、チップ供給装置10又はボンディング装置30内への不要な水分子の蒸発を防ぐことができる。
【0304】
以下に、仮接合及び表面活性化処理に係る具体的な実施例を示す。
【0305】
<実施例1>
第1の実施形態及び第2の実施形態において、仮接合時に、接合されるチップ側接合面と基板の接合部とを比較的低温で加熱しつつ加圧することが好ましい。これにより、平坦度に対して厳しい条件を必要としないため好ましい。
【0306】
図3(a)、(c)又は(d)に示すような、平坦に形成されたチップの金属領域MR上端部は、一般的に、研磨されていない場合が多い。研磨されていない金属領域MRの上端部の表面粗さは、例えば、100nmから200nmRaである。この表面粗さを有する金属領域MRを用いた場合には、当該表面粗さは比較的高いので、金属領域MRの表面に対して表面活性化処理と親水化処理とを行った後でも、仮接合により十分な接合強度を得ることができない場合がある。したがって、この場合には、仮接合時に、チップの金属領域MRを100℃から350℃の温度となるように加熱するとともに、チップの金属領域MRに1MPaから400MPaの圧力を0.1秒から10秒ほど印加することが好ましい。接合面の平坦度を高めたもの(例えば表面粗さが数nmのもの)は、実質的な接触面積が大きくなることから、本来の水酸基(OH基)による接合が強固な接合となり、低温、低圧での接合でも十分な接合強度を得ることが可能である。しかし、接合面の平坦度が低いもの(例えば表面粗さが数十〜数百nmのもの)の場合は、加圧(数十M〜数百MPa)により金属領域を押しつぶすことで実質的な接触面積を大きくすることや、摂氏数百度程度で加熱(例えば150℃)により拡散を促し接合界面で原子の動きを促進させることで、実質的な接合面積を大きくすることができる。
【0307】
直径30μmの円形の金属領域を500個ほど有するチップを、当該金属領域が150℃から200℃となるように加熱し、金属領域に50MPaから400MPaの圧力を加える条件で、シリコン基板に仮接合した。この仮接合されたチップと基板とを含む構造体について、いわゆるシェアテストを行ったところ、シェア強度は1つの金属領域あたり5gfであった。この強度は、仮接合の後、チップと基板との構造体が搬送されるなどの際に、チップが基板上の所定の取り付け位置からずれたりすることがない十分な接合強度である。
【0308】
上記加熱及び加圧条件で仮接合したチップと基板とを含む構造体を、200℃で1時間加熱することで本接合を行った。本接合したチップと基板とを含む構造体について、シェアテストを行ったところ、シェア強度は1つの金属領域あたり20gfという、比較的高い接合強度を有していることが分かった。
【0309】
したがって、上記加熱及び加圧条件で仮接合を行うと、接合面が比較的高い表面粗さを有している場合でも、仮接合されたチップと基板との構造体において十分な接合強度を得ることができ、さらには、本接合されたチップと基板との構造体において比較的高い接合強度を得ることができる。
【0310】
仮接合時の加熱として、例えば、ボンディング部33のヘッド部33Hに埋め込んだヒータを用いて加熱するようにしてもよい。ヒータからの熱は、ヘッド部33Hを通って、ヘッド部33Hに吸着されたチップCPに伝わり、その結果、チップの金属領域が加熱される。
【0311】
ヘッド部33Hのヒータを用いて熱をパルスとして発する(パルスヒートを行う)ようにしてもよい。これにより、例えば、チップの温度を60℃程度から150℃程度まで1秒以内で上昇させることができる(
図32)。
図32はこの例を図示するものである。チップを保持するヘッド部33Hが降下し、チップが基板に接触した瞬間(時刻0)で、ヒータはパルスヒートを開始し、約0.5秒でチップの温度は60℃から150℃に達する。さらに0.5秒間、接触状態とチップの温度とを保つ。その後、ヘッド部を上昇させ始めることで接触状態を開放し、これと同時にヒータの加熱を停止し冷却する。約1秒でチップの温度は再び約60℃に戻る。したがって、接触後に温度を上げ始めても、十分短時間内にチップを所望の温度まで効率的に加熱することができる。これにより、接合前に加熱をすると接合面を酸化させてしまい、接合不良が生じることを回避又は抑制することができる。
【0312】
複数のチップに亘り仮接合を繰り返す間、ヘッド部33Hが常に加熱されていることが好ましい。これにより、チップCPがヘッド部33Hへ受け渡された時点から、チップCPが加熱されるので、短時間、例えば1秒から数秒で、金属領域MRを所定の温度に加熱することができる。
【0313】
基板の接合部を加熱するためには、ステージ31にヒータを埋め込んでもよい。またさらに効率的に行うには、ステージ31にヒータを埋め込まなくても、加熱されたチップの金属領域が、基板の接合部と接触することで、基板の接合部が加熱されるようにすることが好ましい。さらに、ステージ31がガラス材により形成されている場合には、加熱された基板からステージ31への放熱が制限されるので、さらに効率的に、基板の接合部を加熱することができる。また、基板全体を長時間に亘り加熱するのではなく、チップを一つずつ仮接合する際に、加熱された金属領域に対応する基板の接合部のみを加熱するので、加熱による親水化処理後の基板接合部の表面状態の変化を最小限にとどめることができる。
【0314】
接合部の加熱の方法は、上記の態様に限られない。たとえば、紫外光や赤外光などの光を接合部に照射することで加熱してもよい。
【0315】
<実施例2>
図3(e)又は
図3(f)に示すような、金属領域MRと非金属領域NRとがほぼ同一面上にあるようにチップ側接合面は、一般的に、研磨により形成される場合が多い。研磨された金属領域MRは比較的に平坦度が高く、表面粗さは、例えば、1nmRa以下である。
【0316】
この場合には、仮接合時には、加熱を行わなくても、すなわち常温でも、接合面に1MPa以下の圧力を印加することで、仮接合後および本接合後のチップと基板とを含む構造体において、十分な接合強度を得ることができる。金属領域MRの表面粗さに応じて、仮接合時の接合面に印加する圧力を0.3MPaに設定しても、仮接合後および本接合後のチップと基板とを含む構造体において、十分な接合強度を得ることができる。
【0317】
<実施例3>
チップ非金属領域NRが樹脂を含む場合には、チップ側接合面の表面活性化処理を、接合面から離間した位置に配置された粒子ビーム源を用いて、所定の運動エネルギーが付与された粒子を接合面に向けて放射することで行うことが好ましい。
【0318】
例えば、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching; RIE)などのプラズマ発生装置を用いて、接合面に対して交番電圧を印加することで、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の電離した粒子を、上記電圧により接合面に向けて加速させることで表面活性化処理を行うと、以下のような接合面の汚染の問題が生じる場合がある。すなわち、表面活性化処理のスパッタリング現象により弾き飛ばされ、接合面周りの雰囲気に存在する樹脂の成分や不純物の一部が、上記電圧により接合面に引き寄せられるように加速されて衝突し得る。これにより、表面活性化処理された金属領域の表面に樹脂の成分や不純物が付着して接合面は汚染される。その結果、チップと基板とを含む構造体において、高い接合強度を得ることができない場合がある。
【0319】
このような場合に、イオンビーム源や、高速原子ビーム源(FAB、Fast Atom Beam)などの中性原子ビーム源を用いて表面活性化処理を行うことで、イオンビーム源や中性原子ビーム源から加速して放射された粒子(例えばアルゴンなどの不活性ガス)のみが接合面に衝突し、弾き飛ばされた樹脂や不純物が金属領域へ向かって加速されることはなくなる。その結果、金属領域への樹脂の再付着などによる接合面の汚染の問題は低減され、さらに高い接合強度を有するチップと基板とを含む構造体を製造することができる。
【0320】
<実施例4:薄型チップ>
デバイスに対する不断の高密度化三次元化要求に合わせて、チップにもバンプの微細化、薄膜化が進行している。本願において、薄型チップとは、厚さが10μm〜300μmのチップを指すものとする。ここにおいて、本願発明者は、電気接続用のバンプ(
図3、
図4に示した突起状の金属領域MR参照)を搭載した薄型チップにあっては、チップの「反り」が問題になることを見出した。
【0321】
たとえば、この種の薄型チップを基板に接合するに際して、ハンダバンプを溶解させる必要があるが、ハンダバンプを溶解させようとすると、薄型チップの「反り」の問題で、フリップチップボンダーによる接合では周辺バンプがつぶれてしまい、また、リフロー溶解方式を適用した場合には、薄型チップが反って、中央部のバンプが浮いてしまい、接合できない(チップの逆方向の反りの場合は逆の現象が出る)。チップを薄片化するにはウエハの状態でCMP研磨して薄くするわけであるが、その時の温度や応力、またはバンプ側の材料等の要因により、チップを個片化(ダイシング)した後に反りが発生する。周辺バンプがつぶれた例を
図27に示す。ここでは、Sn−Agハンダバンプを使用した場合であり、加熱温度250℃、圧力0.2N、1秒間の仮接合により周辺バンプがつぶれた様子が写真で示されている。典型的には、5mm角、厚み0.2mmのチップで0.2mm程度の反りが発生する。なお、高密度化三次元化の流れのなかで薄型チップの場合には、チップの薄さとともにバンプの配置間隔も微小になり(たとえば、30μm以下)、バンプサイズも微小(たとえば、φ30μm以下のバンプ径)になる傾向があり、これら微小要素に対しては加圧力のコントロールも数十グラム/チップ以下となり、制御が困難になっていく。また、数十グラム程度の力ではこの反りの修正は不可能であり、少なくとも一桁以上高い力で押す必要が生じる。また、たとえ仮接合を高い圧力で押せたとしても本接合時にハンダを溶融させるとその時に反りの力に負けてチップが反ってしまい、接合不良となってしまう。また、ハンダは溶融させることで共晶させ、共晶後の再溶融温度を上げることで信頼性をアップさせている。
【0322】
ここにおいて、本願発明者は、薄型チップ問題に対する解決手段として、薄型チップの場合であっても、基板との間で確実な電気接続を達成する基板・チップ接合方法を発明した。
【0323】
当該解決手段は、固相接合条件で仮接合を実施する。すなわち、ハンダバンプの溶解温度より低い温度(ハンダバンプが固相となる温度下で)、所定の加圧力をチップと基板との間に加えて仮接合を行う。仮接合の後、「後加熱」により本接合(固相状態で粒界拡散を促して共晶させるなど、チップと基板との間の接合を安定にするための処理)を行うが、この後加熱も固相接合条件下(ただし、後加熱のための温度は、仮接合時の温度と必ずしも同一である必要はないし、後加熱処理の間、必ずしも温度を一定に維持する必要もない)で実施される。これは表面活性化処理をしない場合では、ハンダ界面は比較的厚い酸化膜層で覆われているため簡単に固相状態では粒界拡散は生じない。しかし、事前の表面活性化処理によって強固な酸化膜層は除去されており、親水化処理によりOH基が付着した薄い酸化物層は溶融温度以下でも粒界拡散が生じやすく容易に共晶化させることができた。
【0324】
ハンダバンプの材料として、Sn−Agハンダ材(溶解温度は約230℃)を用いた場合の実験例としての接合条件を表1に示す。なお、表面活性化条件は、Arを反応ガスとしたイオンガン処理により、駆動電力80V、電流3A、照射時間120秒間であった。親水化条件は、75%水ガスを混入した窒素(N
2)ガスに曝露して実施した。また、イオンガン処理に換えてArを反応ガスとしたプラズマ処理(100W、300秒)においても、実験例1から5においてほぼ同等な結果が得られた。
【0325】
仮接合の加熱はパルスヒートにより行った。すなわち、
図32に示すように、接触と同時に加熱を開始し、ほぼ0.5秒後には所定の温度に達し、残りの時間はこの温度が保たれた。
【表1】
【0326】
表1から直接、読み取れるように、仮接合時の処理温度として適した温度、仮接合時に加える加圧力(単位ニュートン)、あるいはそれに等価な圧力(単位メガパスカル)、および仮接合の処理時間(単位は秒)にはいずれも幅がある。たとえば、仮接合時の温度は、130℃〜220℃の範囲であってよく、仮接合時の加圧力(圧力)は、チップあたり50N〜300N、すなわちバンプあたり75MPa〜450MPa圧力の範囲であってよく、仮接合時間は、0.2秒以上でよいと見込まれる。なお、仮接合に必要な時間に上限はないが、下限は生産性のためには短いほどよい。表1に明記するように、仮接合時間は、1秒間の短時間でも十分であることが確認された。
図28に固相接合条件による例を示す。これは、実験例3に示すように加熱温度200℃、加圧力100N、1秒の仮接合を行った場合に得られた写真であり、つぶれたハンダバンプは発生せず、良好な接合が得られた。
【0327】
実験例5では、仮接合条件が温度150℃、圧力100MPaで、シェア強度9Nが得られ、実験例1から4と比べ僅かに強度が落ちているものの、ほぼ同等のシェア強度が得られたということができる。実験例4では、仮接合条件が温度150℃、圧力150MPaで、シェア強度10.5Nが得られている。これに対し、実験例6では、仮接合条件が温度150℃、圧力50MPaで、ほとんど強度は得られなかった。また、実験例7では、仮接合条件が温度100℃、圧力150MPaで、ほとんど強度は得られなかった。すなわち、実験例6では、実験例5と比較して仮接合時の圧力を100MPaから50MPaに下げたために、実験例7では、実験例4と比較して仮接合時の温度を150℃から100℃に下げたために、OH基の接合が十分に行われず、接合界面の強度が低くなったと考えられる。以上の比較より、仮接合時の圧力の下方限界が100MPaにあり、温度の下方限界が150℃にあるということができる。ハンダバンプでは100MPa以上の圧力と150℃以上の加熱が必要であった。Cuバンプでは、150MPa以上の圧力と150℃以上の加熱が必要であり、ハンダバンプと比較して、比較的高い圧力が必要であることが分かる。一般的に半導体デバイスのバンプ接合においては、貫通電極上のバンプは高圧で加圧しても問題ないが、素子上やLow−k(低誘電率)材の再配線上に施されたバンプに対して掛ける圧力は、比較的弱くしなければならない。本願発明のハンダバンプによる固相接合方法は、比較的弱い圧力で接合する場合に有効であり、また、ハンダ接合部が、チップと基板との間の熱膨張差により生じる応力を吸収して有効に働く場合に好適である。また、Cuバンプは、ハンダ材料を不要とするので、安価で工程を短縮できるメリットを有する。したがって、ハンダとCuとは、バンプ材料として、場合により使い分ければ良い。
【0328】
本接合(後加熱)の処理温度、加熱時間についても幅があり、表1に記載した数字は一例にすぎない。たとえば、後加熱の温度は、130℃〜220℃の範囲であってよく、後加熱の時間は、界面に共晶を形成するのに必要な時間であり、1時間〜24時間の範囲であってよい。なお、所望の接合が確保される限り、後加熱時間は短い方がよいことはいうまでもない。
【0329】
本接合の後、バンプの接合強度を評価するために、シェア強度の破壊試験を実施した。実験例1、2、3、4に対して、破壊時のシェア強度は、それぞれ、10N、11.5N、10.2N、10.5Nとなり、一定の接合強度が得られていることが確認された。
【0330】
なお、表1の実験に供したチップに関する関連情報を説明すると、バンプMRの材料はSn−Ag(融点が約230℃のハンダ材料)、バンプ径はφ20μm、バンプ高さ20μm、チップ上に搭載したバンプ個数は2300個、バンプの配置間隔は30μm、チップ厚さは200μmであった。
【0331】
次の実施例として、バンプ材料がCuであり、バンプの接合相手(基板上の接合面)をCuとした場合の接合条件を表2に示す。なお、表面活性化条件は、Arを反応ガスとしたイオンガン処理により、駆動電力110V、電流3A、照射時間300秒間であった。親水化条件は、75%水ガスを混入した窒素(N
2)ガスに曝露して実施した。
【0332】
表1の実験例と同様に、仮接合の加熱はパルスヒートにより行った。
【表2】
なお表2の実験に供したチップに関する関連情報は、表1の場合と同じである。
【0333】
具体的には、仮接合のための接合条件の温度は、130℃〜300℃の範囲にあってよい。その他、仮接合のための加圧力(または等価圧力)については、表1に関して述べた範囲と同様で概ねよく、仮接合のための時間についても表1に関して述べた範囲で概ねよい。
【0334】
仮接合の後に実施する本接合(後加熱)についても、その処理温度は表1に関して述べた値と同様でよい(たとえば、200℃の温度でよい)。なお、後加熱の時間は0.4時間〜8時間の範囲でよく、具体的には、表2に記載するように1時間の後加熱で十分であった。後加熱の後で実施したシェア破壊試験でも、十分なシェア強度を確保することができた。表2には、表2の実験例1、2、3、4、5、6について、それぞれ、37N、35N、35N、29N、30N、35Nが得られたことを示した。すなわち、チップと基板との間に、Cuのバンプを介して十分な接合が得られることが判明した。
【0335】
仮接合時の圧力の影響について調べるために、実験例9においては、400MPaが加えられた。実験例9での温度は、実験例4の温度と同じ200℃であった。実験例9のシェア強度は35Nであり、実験例1、2、3、6のシェア強度とほぼ同等であった。したがって、仮接合時の圧力が150MPa以上であれば、十分に高いシェア強度が得られることが判った。
【0336】
実験例5では、仮接合条件が温度150℃、圧力150MPaで、シェア強度30Nが得られ、実験例1、2、3、6と比べ僅かに強度が落ちているものの、ほぼ同等のシェア強度が得られたということができる。これに対し、実験例7では、仮接合条件が温度150℃、圧力100MPaで、ほとんど強度は得られなかった。また、実験例8では、仮接合条件が温度100℃、圧力150MPaで、ほとんど強度は得られなかった。すなわち、実験例7では、実験例5と比較して仮接合時の圧力を150MPaから100MPaに下げたために、実験例8では、実験例5と比較して仮接合時の温度を150℃から100℃に下げたために、接合強度を向上させるためのOH基表面に付着する水分子の除去とバンプの変形による接触面積の増大とが妨げられた結果、接合界面の強度が低くなったと考えられる。これにより、仮接合時の圧力の下方限界が150MPaにあり、温度の下方限界が150℃にあるということができる。
【0337】
実験例2と実験例3とを比較すると、同じ仮接合の温度250℃で、圧力が300MPa、150MPaと異なるにも係らず、シェア強度はいずれも35Nと同じであった。すなわち、仮接合の温度250℃では、300MPaと150MPaという圧力の差は、シェア強度に影響をもたらさないということができる。これに対し、実験例3から5を比較すると、同じ仮接合の圧力150MPaで、仮接合の温度が250℃から200℃又は150℃に下がると、シェア強度が35Nから29N又は30Nへと下がった。そして、実験例5と実験例6とを比較すると、同じ仮接合の温度150℃で、圧力を150MPaから200MPaに上げると、シェア強度も30Nから実験例1から3と同等の35Nに上がった。以上の比較より、仮接合の温度が200℃以下の比較的低温領域においては、圧力が200MPa以上であることが好ましいということができる。
【0338】
<実施例5>
従来のチップのバンプ(金属領域)の一例として、銅のTSV(MR1)上にSn−Ag系のはんだ材料(MR2)を載せて接合面を形成したバンプ(金属領域)がある。はんだ材料の接合面は、銅上に塗布された後に熱処理による溶融、そして冷却工程を経て形成されるために、液相での表面張力に応じた球面又は凸形状の曲面を有している(
図29(a))。従来のバンプの接合方法では、接触に先立ちバンプを融点以上の温度まで加熱するために、接触により溶融したはんだ材料(MR2)同士が混ざり合って、接合界面が形成される。これにより、バンプ同士の位置決め精度を保つこともできる(
図29(b))。
【0339】
これに対し、本願発明の場合のように、バンプ(金属領域)MR2は、接触時に加熱されず又は融点未満の温度で加熱されるために、固相状態で接触することになる。この状態で、接触したバンプ同士を押圧すると、あるいは押圧しなくても、バンプは互いに滑って、所望の位置からずれ得る。その結果、バンプ間で適切な接合がされず、接合界面における所定の導電性や機械強度が得られなくなり、さらにずれると、バンプは本来接合されるべきバンプと接合されずに、非金属領域NRなどの本来接合されるべきでない基板表面と接触する場合がある(
図29(c))。
【0340】
上記問題は、従来のはんだ材料を液相状態で行うバンプ(金属領域)の接合では生じなかった問題であり、バンプ(金属領域)を固相状態で接合する際に初めて生じた問題である。この問題を解決するために、本願発明は、バンプ(金属領域)を固相状態で接合する際に滑ることで位置ずれが生じない又は位置ずれを最小限に抑える接合方法を提供することを目的とする。
【0341】
そこで、本願発明に係る接合方法は、一態様として、チップを基板に取り付ける前に、チップと基板との少なくとも一方のバンプ(金属領域)の接合面を平坦化(レベリング)することを備えるようにしたものである(
図30(a)及び(b))。これにより、固相状態で接触するバンプ(金属領域)が仮接合時の接触の際に接合面方向(せん断方向)にずれることがなく、押圧しても良好な位置精度を保つことができる。
【0342】
本実施例は、特に微細ピッチバンプを有するチップの接合に適用されることが好ましい。
【0343】
平坦化は、平坦化後のバンプ(金属領域)の表面がチップ又は基板の接合面の平均的な高さの面に対してほぼ平行となるように行うことが好ましい。あるいは、平坦化は、チップ又は基板の表面を、接触の際に押圧する力が加わる方向にほぼ垂直な方向な面となるように行うことが好ましい。これにより、平坦化された面は、接触の際の押圧により、剪段(せん段)方向の力を受けにくくなり、バンプが滑ることで所定の位置からはずれることを防止し又は最小限に留めることができる。
【0344】
平坦化は、たとえば、平坦な表面を有する基板(平坦化部材)を、バンプに対して押圧することによって行うことができる。十分な表面積、すなわちバンプを有するチップ又は基板よりも大きい面積を有する平坦な表面を、バンプを有する表面に対してほぼ平行に保ちつつ、バンプに対して押し付けられてもよい。これにより、チップ又は基板の全面又は広い領域に亘って、均一に、そして効率よく、バンプの平坦化を行うことができる。また、平坦化時に融点以下の温度で加熱することで、バンプが柔らかくなり、加圧を抑えた条件で平坦化を行うことができる。これにより、バンプの下側に素子が設けられている場合に、圧力によるチップの損傷を回避することができる。また、加圧を小さくすることで、バンプの平坦化をウエハレベルで行うことが容易になる。
【0345】
平坦化部材として、シリコン半導体基板を用いてもよい。しかし、平坦化部材は、これに限られず、所望の表面粗さや平坦度を有する表面を有する部材であればよい。平坦化部材は、シリコン以外でも、他の半導体材料、金属、セラミックス、ガラスなどにより、形成された部材でもよい。
【0346】
チップのバンプ(金属領域)の平坦化は、チップがチップ搬送部39に保持されている間に行うようにしてもよい。
【0347】
例えば、チップ搬送部39のプレート部39上面を上記平坦化部材の平坦面として構成して、チップを上記プレート部39上面にフェイスダウンで、バンプの接合面をプレート部39上面に接触するように配置し、チップの裏面からプレート部39に対して押圧を行うようにしてもよい。この場合に、プレート部39を下面から上記押圧に対向するような支持部材を設けてもよい。
【0348】
あるいは、チップを上記プレート部39上面にフェイスアップで載置して、上方に向いているバンプ(金属領域)に対して、プレート部39とは別個に設けた平坦化部材を用いて、下方向に押圧するようにしてもよい。
【0349】
チップがチップ搬送部39に保持されている間に、チップのバンプ(金属領域)の平坦化を行うことで、仮接合工程と並行して行うことができるので、効率的に平坦化工程を接合工程に組み込むことができる。
【0350】
<変形例1>
バンプ(金属領域)の平坦化は、取付けステップの直前に行ってもよい。例えば、チップがボンディング部33のヘッド部33Hに保持され基板上に配置された段階で、チップと基板との間に平坦化部材として両端が平坦な基板(たとえば、シリコン基板)を挿入し、当該基板に対してチップと基板とを近づけるように押圧させてもよい。当該基板の両面は互いに平行であることが好ましい。これにより、押圧後のチップ側のバンプ(金属領域)の平坦化された面と基板側の(金属領域)の平坦化された面とをほぼ平行となるように形成することができる(
図30(c)及び(d))。
【0351】
平坦化が行われた後は、チップと基板とを再び離し、平坦化部材をチップと基板との間の空間から後退させ、チップと基板との接合面を接触させることで仮接合を行うことができる。
【0352】
これにより、接合位置(
図17のPG5、PG7の垂直方向の位置)で平坦化が行われるので、他に平坦化のための位置を規定する必要もなく、また平坦化部材をチップ基板間に挿入する機構は簡易に構成することができるので、平坦化機構を有する接合装置を簡易に構成することができ、さらには平坦化ステップから仮接合ステップへの移行をスムーズに行うことができる。
【0353】
なお、上記の平坦化は、表面活性化処理と親水化処理とが行われた後に行っているが、これに限られない。たとえば、以下の変形例のように、表面活性化処理を行う前に平坦化(レベリング)を行ってもよい。この場合は、平坦化の後に、表面活性化処理と親水化処理とを行うので、平坦化部材との接触による汚染接合面の汚染を回避又は低減させることができる。
【0354】
<変形例2>
本実施例の上記説明及び変形例1においては、チップのバンプ(金属領域)を個別に平坦化したが、これに限られず、複数のチップのバンプ(金属領域)を一括して平坦化してもよい。
【0355】
たとえば、各チップのダイシング前に基板状である間に、当該基板状に保持されているチップすべて又は一部の接合面に対して、平坦化部材を押圧してもよい。これにより、大量のチップについて平坦化を効率的に行うことができる。
【0356】
あるいは、ダイシング後に、所定のチップだけを集め、平板状の支持体上にフェイスアップ又はフェイスダウン状態で載置し、これらに対して一括的に平坦化を行ってもよい。たとえば、検査などにより良好され選択されたチップのみを、ダイシング後に所謂チップソータ上に載置し、当該チップソータを支持体として、チップソータに保持されたチップ全体のバンプ(金属領域)に対して平坦化部材を押圧して一括的に平坦化を行ってもよい。
【0357】
<変形例3>
チップ側と同様に、チップが接合される基板(ウエハ)側のバンプ(金属領域)についても平坦化を行ってもよい。この場合は、基板(ウエハ)側のバンプ(金属領域)のみについて平坦化を行っても(
図30(a)及び(b))、チップと基板との両方についてバンプ(金属領域)の平坦化を行ってもよい(
図30(c)及び(d))。
【0358】
<変形例4>
平坦化工程を比較的低温、例えば100℃以下又は常温で、1秒程度の加圧で行う場合には、金属領域を十分に変形させて所望の平坦度が得ることができず、実質的に接触面積又は接合界面が大きくならず、所望の導電性、機械的特性を得ることが出来ない場合がある。従来の金属領域を溶融させる接合方法と異なり、本願発明のように加熱温度が金属領域の融点を超えない場合には、仮接合前に加圧し、この加圧下で加熱し温度を上げ、又は加圧時間を長くして、事前に平坦化処理を行うことで、仮接合時の実質的な接合面を増大させておくことが好ましい。
【0359】
例えば、温度150℃、圧力200N、加圧時間1秒の平坦化処理条件で金属領域表面の十分な平坦化が行えなかった場合には、温度を上げて温度200℃、圧力200N、加圧時間1秒の平坦化処理条件、又は加圧時間を長くして温度150℃、圧力200N、加圧時間60秒の平坦化処理条件とすることで十分な平坦化を行うことができる。
【0360】
<比較実験>
親水化の程度は、親水化処理の条件の他に、チップの種類、表面活性化処理の条件、仮接合の条件などによって変わり得るものであり、また調節もされ得る。以下の表3において、金属領域が銅(Cu)のバンプで形成され、非金属領域がSiO
2(酸化ケイ素)で形成されている場合の、表面活性化処理の条件、親水化処理の条件、仮接合の条件に対する、仮接合の可否に関する比較実験の結果を示す。
【表3】
【0361】
表3の実験例1では、表面活性化処理も親水化処理もなかったため、300℃での加熱でも仮接合に成功しなかった。実験例2では、表面活性化処理を行っても接合しなかった。これは、プラズマ処理の場合は、上述したように、プラズマによりSiO
2からスパッタ現象で弾き出された酸素が、プラズマにより金属領域の表面に付着したために金属領域の表面は実質的に活性化されなかったためであると考えられる。
【0362】
実験例3、4では、イオンガンによる表面活性化後に、大気への暴露により親水化処理を行った。200℃では仮接合したが、150℃では仮接合しなかった。
【0363】
実験例5では、親水化処理が、実験例3、4では大気への暴露により行われたのに対し、イオンガン処理後に連続して、チャンバ内に水ガス(湿度90%)を接合面に対して導入することで行われた点で異なる。その結果、同じ150℃の接合温度である実験例3では仮接合に成功しなかったのに対し、実験例5では仮接合に成功した。すなわち、この相違は、親水化処理において、大気への暴露よりも水ガスの導入の方が好ましいことを示している。大気中の湿度は通常40%程度であり高くない。また、大気中には水以外に炭素を含む有機物などが浮遊しており、この有機物等が接合面に付着することで、接合面の活性が落ち、又はOH基の生成量が低下すると考えられる。これに対し、表面活性化後のチャンバ内に水ガスを導入するプロセスにおいては、湿度の制御が容易でありかつ湿度を上げて例えば90%とすることもでき、かつ大気中にある有機物等のチャンバ内への導入を防止することができる。これにより、活性化された表面に良好なOH基が高い密度で生成され、より低温での接合に成功したものと考えられる。
【0364】
また、大気暴露では十分なOH基の生成がされていないとも考えられたため、実験例6、7では、強制的にOH基の生成を行う目的で、大気暴露後に接合面を液体の水に浸漬させて、仮接合を行った。その結果、大気暴露のみでは200℃が接合限界であったのに対し、180℃まで低減することができた。これは、大気暴露では接合面に付着する水分量が十分でなく、接合面上に十分にOH基が生成されなかったが、その後の水の強制的な付着によりOH基の生成量が増加したためと考えられる。しかし、チャンバ中での水ガス処理と比較すると、大気暴露後に強制的な水付着をした場合では、炭素(C)や有機物などの不純物の付着もあり、水ガス処理よりはOH基の生成量が少ないため、180℃が限界であったと考えられる。これは、効率良くOH基が生成されると、接合界面に残存する水分子を除去して強固な接合を得るための加熱温度が低減されたためであると考えられる。
【0365】
また、実験例4、5及び6の仮接合後に、200℃で1時間の加熱(本接合又はエージング)を行うことにより、シェア強度35Nという高い接合強度が得られた。
【0366】
ただし、水の強制付着により、接合面上に水がOH基を形成せず分子状で大量に存在する場合は、この水分子を介して仮接合される。水分子を介した接合は比較的弱い力であるために、チップが基板に対して動きうると考えられる。そこで、直接OH基同士を接触させてより高い接合強度を得る目的で、生成したOH基を残し、OH基上にある余剰の水分子を除去することが好ましい。水分子を除去するためには、加熱、窒素(N
2)でのブロー、自然乾燥、大気圧プラズマの適用、種々のエネルギー波の照射などにより行うことができるが、これに限定されない。また、水分子の除去は、完全に行われなくてもよい。仮接合時の加圧や加熱による除去効果もあるので、適度な水分子の除去が行われれば十分である。
【0367】
<その他の変形例>
平坦化されるバンプ(金属領域)MRの構成として、銅で形成されたTSV(MR1)とその先端部に接合界面を形成するためのはんだ材料部(MR2)を有する構成について説明してきたが、これに限られない。TSV(MR1)の部分は銅以外の金属で形成されていてもよく、バンプ(金属領域)の先端領域(MR2)はSn−Ag系以外のはんだ材料でも他の金属により形成されていてもよい。
【0368】
また、上記の平坦化は、接合装置1の内部で行うように説明したが、これに限られない。バンプ(金属領域)の平坦化を、接合措置1の外部で行ってもよい。
【0369】
平坦化前のバンプ(金属領域)の形状として、球面又は曲面を示したが、これに限られない。バンプが接触する際に、接合面方向など押圧方向以外の方向に滑ることが問題となる種々の表面の形状又は物性を有する場合に有効である。
【0370】
平坦化部材は、常温であってもよく、押圧するバンプ(金属領域)を加熱するように構成されていてもよい。すなわち、平坦化部材は、加熱機構を備えていてもよい。上記実施例1のように取付けステップ(接触又は仮接合)の直前にバンプ(金属領域)の平坦化を行う場合には、平坦化部材により、バンプ(金属領域)を室温以上融点未満の温度に加熱することが好ましい。また、バンプ(金属領域)がヘッド部33Hなどにより所定の温度により加熱されている場合には、これにより、温度の低下などを防ぐことも可能になる。
【0371】
また、平坦化が行われたバンプ(金属領域)を有するチップ又は基板は、固相状態で行う種々の接合プロセスにとって極めて有効な解決となる。
【0372】
上記の説明では、平坦化は、平坦な表面を持つ基板をバンプに対して平坦化部材を押圧することにより行ったが、これに限られない。たとえば、平坦化は、接合されるチップ又は基板の表面に平行な方向に研削又は研磨を行うことで行ってもよい。
【0373】
以上、本願発明の幾つかの実施形態及び実施例について説明したが、これらの実施形態及び実施例は、本願発明を例示的に説明するものである。特許請求の範囲は、本願発明の技術的思想から逸脱することのない範囲で、実施の形態に対する多数の変形形態を包括するものである。したがって、本明細書に開示された実施形態及び実施例は、例示のために示されたものであり、本願発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。