(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン− プロピレン共重合体から選択されるポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマー樹脂を主成分としてなる微多孔性フィルムと、不織布との少なくとも2層以上からなり、前記微多孔性フィルムと前記不織布とが熱ラミネート法により積層されてなることを特徴とする複合フィルム。
前記微多孔性フィルムが、ポリオレフィン系樹脂を100質量部に対し、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマー樹脂を25〜75質量部含有する請求項1に記載の複合フィルム。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン多孔フィルムは、電池用セパレ−タ−、電解コンデンサ−、各種フィルタ−、防水透湿衣料等の各種用途に用いられている。従来、このようなポリオレフィン多孔フィルムは、異種固体がミクロ分散しているポリオレフィン成形体に延伸等の歪を与えることにより異種固体間に空孔を生じさせ多孔化する方法、あるいは異種ポリマ−等の微粉体をポリオレフィンにミクロ分散させた後、孔形成剤を抽出する方法等で製造されている。
【0003】
上記のような従来の多孔フィルムは、充填剤として炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの無機フィラーを用いる場合においては(例えば、特許文献1)、フィラーの形状が不均一で、樹脂との相溶性が悪いなどの理由から均一な物性が期待できなかったり、表面が平滑にならずに凹凸が発生するためフィルムとの接触により粉落ちが発生するなどという問題点があった。また、これらフィラーは、耐薬品性が悪く、例えば酢酸等の酸に溶出することがあるため、使用できる用途には制限があった。
【0004】
一方、多孔フィルムの製造方法として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンをマトリックスとする研究開発が盛んである。例えば、特許文献2には、有極性熱可塑性樹脂と無極性熱可塑性樹脂とからなるシートをロール圧延し、次いで、延伸する熱可塑性樹脂多孔体の製造方法が記載されている。この2種類の樹脂の界面が、シートを延伸することで引き離され、気孔を生じることを利用し、多孔フィルムとするのである。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂等が用いられている。
【0005】
ポリオレフィンをマトリックスとする多孔フィルムを、このように延伸法により製造する方法は、多孔フィルムの製造方法として有用であり、この製造方法は更に、特許文献3、特許文献4、特許文献5等にも記載されている。例えば、特許文献3には、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂Aと、樹脂Aに対して相溶性が乏しく、且つ溶融点が少なくとも20℃高い熱可塑性樹脂Bとを用いる延伸法による多孔フィルムの製造方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、このようにして得られるポリオレフィン多孔フィルムは、必ずしも満足な強度を有するとは言えない。そのため、ポリオレフィン多孔フィルムを強度のある適当な多孔性支持体に積層し, ポリオレフィン多孔フィルムの優れた透湿性等の特性を保ったまま, 強度不足を補うことが考えられている。従来法としては接着剤を用いて熱接着または常温接着する方法があるが、多孔フィルムの孔径や空孔率が変化し、満足な透湿性を持った防水透湿シ−トが得られない。また、強度のある多孔支持体として不織布を用い、エンボスロ−ル、カレンダ−ロ−ル等を用いた熱融着による接着方法も多方面で利用されているが、良好な接着性と透気性・強度の全てを満足できるものとはならない。
【0007】
上記のような例として、ポリオレフィン系多孔フィルムを用いて、不織布を複合化した透湿性シートも従来から開発がなされている。例えば特許文献6には、ポリオレフィン系樹脂と無機充填剤からなる通気性フィルムと不織布とを積層化した透湿性シートが開示されている。また特許文献7には、通気性フィルムとプロピレン・エチレンランダム共重合体を主成分とする樹脂からなる不織布とを積層化した透湿性シートが開示されている。
【0008】
しかし、上記のような透湿性シートにおいては、ポリオレフィン系多孔フィルムの無機充填剤として硫酸バリウムや炭酸カルシウムが使用されており、粉落ちの問題が解消されておらず、また透湿度も十分な値であるとは言えない。さらに、実用性を兼ね備えた十分な強度の値を満足できるものではなく、良好な透気性・透湿性・耐水性及び強度等の諸物性全てを満たすことは困難であった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の複合フィルムについて、詳細に説明する。
本発明の複合フィルムは、以下に説明するポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーからなる微多孔性フィルムと、不織布とを、構成材料として備える。
【0014】
<ポリオレフィン系樹脂>
本発明の微多孔性フィルムに用いられるポリオレフィン系樹脂は、プロピレン、エチレン等のオレフィン炭化水素を単量体成分として含む重合体をいう。ポリオレフィン系樹脂はホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。コポリマーである場合、オレフィン炭化水素の共重合割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であってもよいし、90質量%以上であってもよい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられ、とりわけポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂が好ましい。
ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレンを単量体成分として含む重合体であり、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。コポリマーである場合ランダムコポリマーであってもよいし、ブロックコポリマーであってもよい。また、コポリマーである場合、共重合成分に限定はなく、例えば、エチレン、ブテン、ヘキセン等が挙げられる。
ポリプロピレン樹脂がコポリマーである場合、プロピレンの共重合割合は50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂は、1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。また、重合触媒にも特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系の触媒やメタロセン系の触媒などが挙げられる。また、立体規則性にも特に制限はなく、アイソタクチックやシンジオタクチックを使用することができる。
また、用いるポリオレフィン系樹脂は、いかなる結晶性や融点を有するものであっても本実施の形態においては単独で用いることができるが、得られる微多孔性フィルムの物性や用途に応じて、異なる性質を有する2種のポリオレフィン系樹脂を特定範囲で配合したポリオレフィン系樹脂組成物を用いても良い。
【0016】
前記ポリオレフィン系樹脂は、190もしくは230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.1〜100g/10分、より好ましくは0.1〜50g/10分の範囲のものから選択できる。MFRが上記範囲であれば、ポリプロピレン系樹脂とポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーを混合した際、ポリオレフィン・ポリスチレンエラストマーの分散性が良好となることや、あるいは、フィルムに加工する際にフィルムが破断し難くなる等成型性の観点から好ましい。
【0017】
<ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマー>
本発明の微多孔性フィルムに用いられるポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーは、オレフィン系及びスチレン系の重合体あるいは共重合体であって、常温付近でゴム状弾性を示すものであれば良く特に制限はない。具体的には、スチレン−水添イソプレンブロックコポリマー等のスチレン−オレフィンブロックコポリマーや、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー等のスチレン−オレフイン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー等が挙げられる。中でも、スチレン−水添イソプレン−スチレンブロックコポリマーや、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマーが好適に用いられる。
【0018】
ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーの粘度は高い方が好ましく、メルトフローレート(MFR)が好ましくは0.5〜1.0g/10分、より好ましくは0.1〜0.5g/10分、更に好ましくは0〜0.1g/10分である。上記範囲における粘度に設定することで、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーがポリオレフィン系樹脂中に球状に均一分散することができ、延伸による多孔化が容易になる。なお、MFRの測定方法はJIS K 7210に準拠し、230℃、2.16kgの荷重下で測定する。
【0019】
ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーのスチレン含有量は好ましくは1質量%〜50質量%、より好ましくは1質量%〜40質量%、更に好ましくは5質量%〜35質量%、特に好ましくは10質量%〜35質量%である。ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーのスチレン含有量が上記範囲であれば、得られる成形体が柔軟になり過ぎず、後に詳細に説明する延伸時の多孔性が良好となるため好ましい。
【0020】
本発明の微多孔性フィルムのポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーの含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマー30〜70質量部であることが好ましく、さらに好ましくはポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマー40〜65質量部である。ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーの含有割合が上記範囲であれば、得られるフィルムの延伸性、透気性をバランスよく得ることができるため好ましい。
【0021】
本発明の微多孔性フィルムのポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーの混合物は、延伸前のシート状態において、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする海部と、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーを主成分とする島部からなる海島構造を有していることが好ましい。さらには、該島部の粒径が0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましい。延伸前のシート状態が上記海島構造を有していると、本発明のフィルムの透気性がより良好となるため好ましい。
【0022】
本発明の微多孔性フィルムには、上記成分のほか、公知の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑り剤、ブロッキング防止剤、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、充填剤などを製造工程やフィルム特性を低下させない程度に含有させてもよい。
【0023】
本発明の微多孔性フィルムは、フィルム厚みが、好ましくは40〜500μm、より好ましくは60〜200μm、さらに好ましくは80μm〜150μmであることが実用上好ましい。フィルム厚みが40μm以上であれば、製膜工程及び二次加工工程で、張力によってフィルムが伸びたり、縦じわが発生したり、破断したりすることがなく好ましい。
【0024】
本発明の微多孔性フィルムは、透気度が、好ましくは20秒/100cc〜1000秒/100cc、より好ましくは20秒/100cc〜500秒/100cc、更に好ましくは20秒/100cc〜200秒/100ccである。通常、不織布との熱ラミネート時に空孔が押しつぶされることによって透気度の値が悪化してしまうが、微多孔性フィルムの透気度が上記範囲であれば、高度な水蒸気透過性を有する複合フィルムを得ることができるため好ましい。
【0025】
<本発明の微多孔性フィルムの製造方法>
本発明の微多孔性フィルムは、まず、原料を混合し、実質的に未延伸のフィルムを、押出方法にて製造する。
原料の混合方法は、一軸または二軸押出機、バンバリーミキサー、ミル、ニーダーブレンダーなど、各種公知の方法を採用することができ、これらの方法を用いて、あらかじめ各成分を溶融混合し、ペレット状に加工したものを押出成形に用いてもよいし、溶融混合し直接押出成形を行ってもよい。
押出方法としては、Tダイ押出成形、インフレーション成形、カレンダー成形、スカイフ法等の各種成形方法を採用し得るが、中でも、本発明のフィルムに要求される物性や用途の観点からは、Tダイ押出成形が好ましい。
【0026】
次いで、押出方法により作成された実質的に未延伸シートを延伸し、本発明の微多孔性フィルムを得る。
延伸方法としては、ロール、テンター、チューブラー、オートグラフ等の各種方法を採用し得るが、本発明のフィルムの延伸方法としては、ロールによる縦延伸工程と、テンターによる横延伸工程を組み合わせた、逐次二軸延伸を採用することが好適である。
さらに、本発明のフィルムの製造方法は、縦延伸工程において、1段目として冷延伸工程、2段目として熱延伸工程の2段階の延伸工程を行うことが好ましい。縦延伸工程を2段階で行うことにより、得られる多孔性フィルムは、高度な透気性を備えたものとなる。またフィルム外観にも優れたものとなる。
縦延伸1段目の冷延伸工程は、延伸温度は0℃以上60℃未満、好ましくは10℃以上40℃未満とすることが好ましい。延伸倍率は1.1〜3倍、好ましくは1.2〜2倍とすることが好ましい。
縦延伸2段目の熱延伸工程は、延伸温度は70℃以上170℃未満、好ましくは90℃以上140℃未満とすることが好ましい。延伸倍率は1.5〜5倍、好ましくは1.5〜3倍とすることが好ましい。
横延伸工程については、延伸温度は90〜160℃、好ましくは120〜150℃とすることが好ましい。延伸倍率は、1.5〜4倍、好ましくは2〜3倍とすることが好ましい。
なお、上述の各延伸工程に加えて、更に延伸工程を追加することもできる。
【0027】
<不織布>
本発明で用いられる不織布は、材質としては、熱可塑性樹脂、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィンなどが挙げられる。これらの中では、汎用性を有し、低コストである、ポリオレフィン製のものが好ましい。
【0028】
ポリオレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィン単独重合体、又はこれらのα−オレフィン同士の共重合体が挙げられる。中でもエチレン系重合体及びプロピレン系重合体が好ましく、エチレン系重合体としては、エチレン単独重合体、エチレンと他のα−オレフィンを10モル%以下含有するエチレン系共重合体が挙げられ、プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、又はプロピレンとエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。とりわけ、プロピレンと少量のエチレンからなり、エチレンに由来する構造単位含有量が、5モル%以下のプロピレン・エチレンランダム共重合体が特に好ましい。これらのポリオレフィンは、1種単独でも、2種以上を組み合わせても、用いることができる。
【0029】
不織布の製造方法としては、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法などのいずれの方法であってもよいが、生産性が良く、高強度のものが得られる点で、スパンボンド法が望ましい。この方法で得られたスパンボンド不織布は、高強度で、摩擦堅牢性に優れる点で好ましい。また、不織布を構成する繊維として、複数の樹脂を用いて成形する複合溶融紡糸法で得られる複合繊維も用いることが出来、例えば、上記の1つの樹脂からなる鞘部と、他の樹脂からなる芯部とから構成される芯鞘型複合繊維、又はサイドバイサイド複合繊維からなる不織布は、柔軟性を向上させることができる点で好ましい。
【0030】
不織布を構成する繊維の平均繊維径は、通常、10〜22μm程度であり、指先で触れた際のひっかかり感を低減する点で、好ましくは10〜18μmである。
【0031】
不織布の目付量は、通常3〜40g/m
2 であり、好ましくは10〜30g/m
2 であり、さらに好ましくは10〜25g/m
2 である。
【0032】
<本発明の複合フィルムの製造方法>
本発明の複合フィルムは、上記微多孔性フィルムと、上記不織布とを積層して形成される。本発明においては、積層方法として、熱ラミネート法、特には、熱ロールを用いた熱ラミネート法により、微多孔性フィルムと不織布とを積層、複合化することが重要である。熱ロールのロール温度は70〜140℃、好ましくは90〜130℃の温度範囲とし、ロール圧力0.2〜1.5MPa、好ましくは0.4〜1.0MPaの範囲とすることにより、微多孔性フィルムの空孔が完全に押しつぶされることなく、十分実用に供する性能を有する複合フィルムを得ることができる。積層構成は、微多孔膜/不織布の2層でもよく、さらには不織布/微多孔膜/不織布の3層のように、微多孔膜の片側又は両側に不織布を積層してもよい。またその他、本発明の複合フィルムの効果を損なわない範囲で、その他の材料を積層してもよい。
【0033】
このようにして得られた本発明の複合フィルムは、微多孔性フィルムと不織布とが強固に圧接し、かつ、微多孔性フィルムの持つ優れた透気性、透湿性、耐水性と、熱接着性繊維からなる不織布の持つ優れた強度とを併せ持つ良好なものとなる。また、積層することにより機械的強力も一段と強くなる。
【0034】
本発明の複合フィルムの厚みは、通常、10〜300μm程度であり、適度の透湿性および耐水性と、強度を有する点で、好ましくは50〜200μm程度である。
【0035】
本発明の複合フィルムは、通気性と防水性を有するフィルムであり、空気、水蒸気等の気体に対して透過性を有し、且つ水滴(液体)に対しては非透過性を有する。上記性能を満足するものであれば広い範囲から選ばれるが、好ましくは透気度20〜1000秒/100cc、透湿度5000〜20000g/m
2/日 、耐水圧1000mmH
2O以上であれば、実用充分な性能を発揮することができる。
【0036】
本発明の複合フィルムの突刺強度は、直径が1mmのニードルを用いて測定したときの突刺強度で500gf以上であることが望ましい。突刺強度500gf未満の場合には、複合フィルムの突き破れによる短絡が発生する虞がある。特に医療用包装材料用途等に使用する場合は、注射器やカテーテル等の鋭利な物を包装する際に破れてしまうといった懸念も生じる。
【0037】
本発明の複合フィルムの引裂強度は、強度の観点から、MD、TD両方向ともに4.0N以上であることが好ましい。本発明の複合フィルムは、加工する際に破損しないことはもちろんであるが、種々用途に使用されている時の外的力に対抗するに十分な強度が必要であり、上記範囲の物性値を有していると、これらの外的力に対抗するに十分なものである。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
(1)ガーレー透気度
JIS P8117に準拠し、王研式透気度試験機EGO1型(旭精工製)にて測定した。
【0040】
(2)透湿度
JIS Z0208に準拠し、水蒸気透過量試験方法(40℃、90%RH)により測定した。
【0041】
(3)耐水圧
JIS L1092防水性試験方法(低水圧法)により測定した。
【0042】
(4)突刺強度
島津製万能型試験機AGS−Xを用い、針の直径1.0mm、押し込み速度300mm/分の条件で測定し、膜が破れる時の最大荷重を突刺強度(針貫通強度)とした。
【0043】
(5)引裂強度
JIS K7128−1トラウザー法に準拠し、幅50mm、150mmの試験片を用い、引張速度200mm/分にて、インテスコ社製引張試験機IM−20により測定した。
【0044】
(6)粉落ち試験
10cm角に切ったサンプルの表裏面を、5cm角の黒色発泡クロロプレンゴム(イノアックコーポレーション社製、製品番号C−4205)で10往復こすり、目視評価を行った。
・評価基準
○:粉落ちが生じていなかった。 ×:粉落ちが生じた。
【0045】
各実施例、比較例に用いた原材料は、以下の通りである。各エラストマーの()内の表示は略号である。
(ポリオレフィン系樹脂)
PO1:プライムポリマー社製 商品名「ハイゼックス 3300F」
MFR=1.1g/10分、融点=132℃
PO2:日本ポリプロ社製 商品名「ノバテックPP FY6HA」
MFR=2.4g/10分、融点=158℃
PO3:日本ポリエチ社製 商品名「ノバテック SF240」
MFR=2.0g/10分、融点=126℃
(ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマー)
ER1:クラレ社製 商品名「セプトン1001」
スチレン−水添イソプレンブロックコポリマー(SEP)
ER2:クラレ社製 商品名「セプトン8006」
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)
ER3:三井化学社製 商品名「タフマーP0480」
オレフィン系エラストマー、エチレン−プロピレンコポリマー(EPM)
(充填剤)
BS :硫酸バリウム、平均粒径=1.1μm
【0046】
(実施例1)
PO1を100質量部、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーとしてER1を43質量部の割合で配合し、設定温度190℃〜210℃に設定した同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製、口径=25mmφ、L/D=40)に投入して溶融混練し、ダイ温度210℃、ダイ幅300mm、リップギャップ1mmとなるTダイから押出し、キャスト温度100℃の設定でキャスティングし、幅=280mm、平均厚み=300μmのシートを得た。
次に、得られた原反シートを、ロール延伸機にて、縦方向に、延伸温度20℃、延伸倍率2.5倍で延伸した後、さらに延伸温度120℃、延伸倍率2.5倍で延伸し、次いで、この縦延伸フィルムの端部をテンタークリップで保持し、テンターオーブン内で、横方向に延伸温度80℃、延伸倍率2倍で延伸を行い、厚み平均50μmの微多孔性フィルムを得た。
【0047】
得られた微多孔性フィルムとスパンボンド不織布(ユニチカ製「エルベスS023WDO」、厚み平均160μm、目付20g/m
2)を、加熱弾性ニップロールを利用して、ロール温度105℃、ロール圧力0.4MPa、ロール速度30cm/分で熱間圧着して複合フィルムを得た。各種物性評価の結果を表1に示す。
【0048】
(実施例2)
PO2を100質量部、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーとしてER2を43質量部の割合で配合し、設定温度190℃〜210℃に設定した同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製、口径=25mmφ、L/D=40)に投入して溶融混練し、ダイ温度210℃、ダイ幅300mm、リップギャップ1mmとなるTダイから押出し、キャスト温度120℃の設定でキャスティングし、幅=280mm、平均厚み=300μmのシートを得た。
次に、得られた原反シートを、ロール延伸機にて、縦方向に、延伸温度20℃、延伸倍率2倍で延伸した後、さらに延伸温度120℃、延伸倍率2倍で延伸し、次いで、この縦延伸フィルムの端部をテンタークリップで保持し、テンターオーブン内で、横方向に延伸温度145℃、延伸倍率3倍で延伸を行い、厚み平均80μmの微多孔性フィルムを得た。
【0049】
得られた微多孔性フィルムとスパンボンド不織布(ユニチカ製「エルベスS023WDO」、厚み平均160μm、目付20g/m
2)を、加熱弾性ニップロールを利用して、ロール温度125℃、ロール圧力0.4MPa、ロール速度30cm/分で熱間圧着して複合フィルムを得た。各種物性評価の結果を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
実施例1で得られた微多孔性フィルムとスパンボンド不織布(ユニチカ製「エルベスS023WDO」、厚み平均160μm、目付20g/m
2)を、不織布/微多孔性フィルム/不織布となるように三層に積層させ、加熱弾性ニップロールを利用して、ロール温度125℃、ロール圧力0.4MPa、ロール速度30cm/分で熱間圧着して複合フィルムを得た。各種物性評価の結果を表1に示す。
【0051】
(比較例1)
実施例1で作成した微多孔性フィルムについて、評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例2)
実施例2で作成した微多孔性フィルムについて、評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例3)
実施例2の微多孔性フィルムのポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーをEL3に変更して微多孔性フィルムを作成し、この微多孔性フィルムについて、評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例4)
ポリオレフィン系樹脂としてPO1を100質量部に対しPO3を233質量部、充填剤としてBSを500質量部の割合で配合し、これに加えて、硬化ひまし油(KFトレーディング社製、商品名「H−COP」)を20質量部、酸化防止剤(BASF社製、商品名「イルガフォス168」)を1.3質量部、熱安定剤(BASF社製、商品名「イルガノックス1010」)0.7質量部を添加し、同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製、口径=40mmφ、L/D=32)に投入し、設定温度240℃で溶融混練してストランドダイより押出した後、ストランドを水中で冷却固化し、カッターによりストランドをカットし、ペレット状に加工した樹脂組成物を作製した。
得られた樹脂組成物を240℃の溶融状態で単層で押出し、シートを作製した。
次に、得られた原反シートを、ロール延伸機にて、縦方向に延伸温度20℃、延伸倍率1.5倍で延伸した後、さらに延伸温度110℃、延伸倍率2倍で延伸し、次いで、この縦延伸フィルムの端部をテンタークリップで保持し、テンターオーブン内で、横方向に延伸温度100℃、延伸倍率3倍で延伸を行い、厚み平均150μmの微多孔性フィルムを得た。各種物性評価の結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1の結果より、いずれの実施例で得られた本発明の複合フィルムは、高い透湿性・透気性を有するとともに、微多孔性フィルムのもつ優れた耐水性もその性能を維持していることがわかる。また、引裂強度、突刺強度のいずれもバランス良く良好な値を示しており、さらに、粉落ちのデメリットも無く衛生面にも優れたフィルムを得ることができた。
【0057】
一方、比較例1、2のように、不織布をラミネートしていない微多孔性フィルムに関しては、透湿性・透気性、耐水性は有しているものの、引裂強度、突刺強度が極端に低くなる傾向があり、両物性を満足に発現させることができなかった。
【0058】
また、比較例3のように、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマー以外のエラストマーを配合して得た微多孔性フィルムは、粉落ちはしないものの、良好な透気度が得られなかった。
【0059】
さらに、比較例4のように、無機充填剤を用いた場合は、粉落ち試験での粉落ちが目立ち、衛生面での問題を解消させることができなかった。