(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
【0020】
<ヒドロキシガリウムフタロシアニン>
本願の電荷発生層に使用する電荷発生材料としては、高感度を発現する結晶型のヒドロキシガリウムフタロシアニンが好適に使用される。中でも、特許文献1の
図8のX線回折パターンに代表されるV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン、特許文献2記載の、28.1゜にもっとも強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、または26.2゜にピークを持たず28.1゜に明瞭なピークを有し、かつ25.9゜の半値幅Wが0.1゜≦W≦0.4゜であることを特徴とするヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等がより好ましく、これらのうち、V型のヒドロキシガリウムフタロシアニン、28.1゜にもっとも強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンが特に好ましい。
【0021】
上記のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、公知の方法により製造することができる。例えば、o−フタロジニトリルまたは1,3−ジイミノイソインドリンと三塩化ガリウムとを所定の溶媒中で反応させる方法(I型クロロガリウムフタロシアニン法);o−フタロジニトリル、アルコキシガリウムおよびエチレングリコールを所定の溶媒中で加熱し反応させてフタロシアニン二量体(フタロシアニン・ダイマー)を合成する方法(フタロシアニン・ダイマー法)、等により、前駆体の粗ガリウムフタロシアニンを製造する。上記の反応における溶媒としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、α−メチルナフタレン、メトキシナフタレン、ジメチルアミノエタノール、ジフェニルメタン、ジフェニルエタン、エチレングリコール、ジアルキルエーテル、キノリン、スルホラン、ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミドなどの不活性且つ高沸点の溶剤を用いることが好ましい。 これらのうち、製
造の容易さ、純度の観点からは、ハロゲン系溶媒の使用が好ましく、上記の中ではα−クロロナフタレン、β−クロロナフタレンが好ましい。また、低環境負荷、画像特性の観点から、非ハロゲン溶媒の使用が好ましく、上記の中ではキノリン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドがより好ましく、ジメチルスルホキシドが特に好ましい。
【0022】
次に、上記の工程で得られた前駆体の粗ガリウムフタロシアニンを、更にアシッドペースティング処理を行うことによって、粗ガリウムフタロシアニンを微粒子化するとともにI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料に変換する。ここで、アシッドペースティング処理とは、具体的には、粗ガリウムフタロシアニンを硫酸などの酸に溶解させたものあるいは硫酸塩などの酸塩としたものを、アルカリ水溶液、水または氷水中に注ぎ、再結晶させることをいう。前記アシッドペースティング処理に用いる酸としては硫酸が好ましく、中でも濃度70〜100%(特に好ましくは95〜100%)の硫酸がより好ましい。
【0023】
上記のアシッドペースティング処理後、得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を溶剤と共にミリング処理することによって、CuKα特性X線を用いたX線回折パターンにおいてブラッグ角度(2θ±0.2゜)7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜、28.3゜に強い回折ピークを有するV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を得ることができる。あるいは、上記のアシッドペースティング処理後、更に凍結乾燥して得られた低結晶性のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を、溶剤と共にミリング処理することによって、CuKα特性X線を用いたX線回折パターンにおいてブラッグ角度(2θ±0.2゜)が28.1°に最大ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンを得ることができる。
【0024】
ここで行なうミリング処理とは、例えばガラスビーズ、スチールビーズ、アルミナボール等の分散メディアと共にサンドミル、ボールミル等のミリング装置を用いて行う処理である。ミリング処理時間は、使用するミリング装置により異なるため、一概には言えないが4〜48時間程度が好ましい。1〜3時間おきにサンプルをとりブラッグ角を確認してもよい。ミリング処理で用いる分散剤の量は、重量基準で低結晶ヒドロキシガリウムフタロシアニンの10〜50倍が好ましい。
【0025】
電荷発生層におけるバインダー樹脂と前記ヒドロキシガリウムフタロシアニンとの配合比(質量)は、電荷発生効率の観点から、電荷発生層中のバインダー樹脂100質量部に対してヒドロキシガリウムフタロシアニンが10質量部以上、好ましくは50質量部以上、また、分散性の観点から、通常500質量部以下、好ましくは300質量部以下の範囲である。
【0026】
<本発明の電荷輸送材料>
本発明の電荷輸送材料は下記式(1)で表される。
【0028】
(式(1)Ar
1〜Ar
5はそれぞれ独立して置換基を有していても良いアリール基を表し、Ar
6〜Ar
9はそれぞれ独立して置換基を有していても良い1,4−フェニレン基を表す。m、nはそれぞれ独立して1以上3以下の整数を表す。)
上記式(1)においてAr
1〜Ar
5は、それぞれ独立して置換基を有していても良いアリール基を表す。アリール基の炭素数としては、30以下、好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基等があげられる。中でも、電子写真感光体の特性を考慮すると
、フェニル基、ナフチル基、アントリル基が好ましく、電荷輸送能力の観点からは、フェニル基、ナフチル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。Ar
1〜Ar
5が有していてもよい置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられ、具体的にはアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられ、アリール基としては、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の直鎖状アルコキシ基、イソプロポキシ基、エチルヘキシロキシ基等の分岐状アルコキシ基、シクロヘキシロキシ基等の環状アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、1,1,1−トリフルオロエトキシ基等のフッ素原子を有するアルコキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等があげられる。これらの中でも、製造原料の汎用性から炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましく、製造時の取扱性の面から、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基がより好ましく、電子写真感光体としての光減衰特性の面から、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましい。Ar
1〜Ar
5がフェニル基である場合、電荷輸送能力の観点から置換基を有することが好ましく、置換基の数としては1〜5個が可能であるが、製造原料の汎用性からは1〜3個が好ましく、電子写真感光体の特性の面からは、1〜2個がより好ましく、また、Ar
1〜Ar
5がナフチル基である場合は、製造原料の汎用性から置換基の数が2以下、もしくは置換基を有さないことが好ましく、より好ましくは置換基の数が1、もしくは置換基を有さないことである。Ar
1がフェニル基である場合は、窒素原子に対してオルト位又はパラ位に少なくとも1つの置換基を有することが好ましい。中でも、電気特性、溶解性の観点からは、パラ位に炭素数1〜12のアルキル基を有することが好ましく、光疲労抑制の観点からは、オルト位に1または2個の炭素数1〜3のアルキル基を有することが好ましい。
【0029】
上記式(1)において、Ar
6〜Ar
9は、それぞれ独立して置換基を有していても良い1,4−フェニレン基を表す。Ar
6〜Ar
9が有していてもよい置換基としては、Ar
1〜Ar
5が有していてもよい置換基として挙げたものが適用できる。これらの中でも、製造原料の汎用性から炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、製造時の取扱性の面から、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基がより好ましく、電子写真感光体としての光減衰特性の面から、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基が更に好ましい。Ar
6〜Ar
9が置換基を有すると、分子構造にねじれが生じ、分子内でのπ共役拡張を妨げ、電子輸送能力が低下する可能性があることから、Ar
6〜Ar
9は置換基を有さないことが好ましい。
【0030】
上記式(1)において、m、nは、それぞれ独立して1以上3以下の整数を表す。m、nが大きくなると塗布溶媒への溶解性が低下する傾向にあることから、好ましくは2以下であり、電荷輸送材料としての電荷輸送能力の面から、より好ましくは1である。m、nが1の場合、エテニル基を表し、幾何異性体を有するが、電子写真感光体特性の面から、好ましくはトランス体構造である。m、nが2の場合、ブタジエニル基を表し、この場合も幾何異性体を有するが、塗布液保管安定性の面から、2種以上の幾何異性体混合物であることが好ましい。
【0031】
本発明の電子写真感光体は、感光層に、式(1)で表される化合物を単一成分として含有するものでもよいし、式(1)で表される化合物の混合物として含有することも可能である。
また、下記式(1a)で表される化合物が特に好ましい。式(1a)は、式(1)においてAr
1はアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はアラルキルオキシ基を有する、フェニル基であり、Ar
2〜Ar
5はそれぞれ独立して、置換基として炭素数1
〜6のアルキル基を有していてもよい、フェニル基であり、Ar
6〜Ar
9はいずれも無置換の1,4−フェニレン基であり、m及びnは共に1である。
【0033】
式(1a)中、R
aはアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はアラルキルオキシ基、R
b〜R
eはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表し、p,q,r,s,tはそれぞれ独立して0以上3以下の整数を表す。R
a〜R
eの好ましい例は、上記式(1)の場合と同様である。溶解性、分子内立体障害、材料製造の容易さの観点から、pは1〜3が好ましく、q,r,s,tは0〜2が好ましい。
【0034】
電荷輸送層中のバインダー樹脂と式(1)で表される化合物との割合は、電荷輸送層中のバインダー樹脂100質量部に対して、通常、電荷輸送材料を5質量部以上で使用する。残留電位低減の観点から10質量部以上が好ましく、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から15質量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、通常、電荷輸送材料を120質量部以下で使用する。式(1)で表される化合物とバインダー樹脂との相溶性の観点から100質量部以下が好ましく、耐熱性の観点から90質量部以下がより好ましく、耐傷性の観点から80質量部以下が好ましく、耐摩耗性の観点から60質量部以下が特に好ましい。
【0035】
以下に本発明に好適な電荷輸送材料の構造を例示する。以下の構造は本発明をより具体的にするために例示するものであり、本発明の概念を逸脱しない限りは下記構造に限定されるものではない。
【0040】
<本発明の電荷輸送材料の製造方法>
上記に例示した電荷輸送材料は、下記に記すスキームに従って製造することが可能である。
前記した化合物を例にすると、例えば、ホルミル基を有するトリフェニルアミン骨格を有する化合物を、トリフェニルアミン骨格を有するリン酸エステル化合物と反応させることにより製造することができる。(スキーム1)
【0042】
また、他の製造方法としては、下記のようなハロゲン原子を有するトリフェニルアミン誘導体とアニリン化合物とをカップリング反応を行うことによっても製造することが可能である。(スキーム2)
【0044】
上記のスキーム1、2のうち、スキーム2が製造コストの観点から好ましく、特に、スキーム2において、パラジウム触媒を使用して製造することが、純度及び電気特性の観点からより好ましい。純度は、電気特性の観点から通常97.0%以上、好ましくは98.0%以上である。溶解性の観点から、通常99.9%以下、好ましくは99.8%以下である。なお、上記電荷輸送材料は、NMR、IR、マススペクトル等により同定できる。
【0045】
≪電子写真感光体≫
以下に、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、少なくともヒドロキシガリウムフタロシアニンを含有する電荷発生層と、上述した式(1)で表される電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を、この順に有するものであれば、その構成は特に限定されない。
【0046】
<導電性支持体>
導電性支持体については特に制限はないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用しても良い。導電性支持体の形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。更には、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いても良い。
【0047】
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いても良い。陽極酸化被膜を施した場合には、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
導電性支持体表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、導電性支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであっても良い。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
【0048】
<下引き層>
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性、ブロッキング性等の改善、支持体の表面欠陥の隠ぺい等の目的のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、樹脂、又は樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。また、下引き層は、単一層からなるものであっても、複数層からなるものであってもかまわない。
【0049】
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、
チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いても良いし、複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
【0050】
また、金属酸化物粒子の粒径としては種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の点から、その平均一次粒径は、10nm以上100nm以下が好ましく、特に10nm以上50nm以下が好ましい。この平均一次粒径は、TEM写真等から得ることができる。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタンアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知のバインダー樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても良く、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すことから好ましい。
【0051】
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する無機粒子の使用比率は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、バインダー樹脂に対して、通常は10質量%以上、500質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、電子写真感光体の電気特性、強露光特性、画像特性、繰り返し特性、及び製造時の塗布性を向上させる観点から、通常は0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常30μm以下、好ましくは20μm以下である。下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合しても良い。画像欠陥防止等を目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させて用いても良い。
【0052】
<電荷発生層>
電荷発生層は、電荷発生材料をバインダー樹脂で結着することにより形成される。電荷発生材料としては、前記ヒドロキシガリウムフタロシアニンが使用される。通常は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の微粒子を、各種のバインダー樹脂で結着した分散層の形で使用する。
【0053】
電荷発生材料としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の1種を単独で用いてもよいが、2種類以上結晶型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料や、他の配位子を有するフタロシアニンを混合して用いてもよい。混合してもよい例としては、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、スズ、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウムなどの金属又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシドな
どの配位したフタロシアニン類の各結晶型を持ったもの、酸素原子等を架橋原子として用いたフタロシアニンダイマー類などが挙げられる。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
【0054】
また、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と、公知のアゾ顔料を混合して使用してもよい。この場合、可視域と近赤域の異なるスペクトル領域で分光感度特性を有するように、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料を組み合わせて用いることがより好ましい。
電荷発生層に用いるバインダー樹脂は特に制限されないが、例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、何れか1種を単独で用いても良く、2種類以上を任意の組み合わせで混合して用いても良い。
【0055】
塗布液の作製に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂を溶解させるものであれば特に制限されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状又は環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状又は環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水などが挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。なお、上述の下引き層を設ける場合には、この下引き層を溶解しないものが好ましい。
【0056】
電荷発生層において、バインダー樹脂と電荷発生材料との配合比(質量)は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生材料が通常10質量部以上、好ましくは30質量部以上、また、通常1000質量部以下、好ましくは500質量部以下の範囲であり、その
膜厚は通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常1μm以下、好ましくは0.6μm以下の範囲である。電荷発生材料の比率が高過ぎると、電荷発生材料の凝集等により塗布液の安定性が低下したり、感光体としての帯電性が低下するおそれがある一方、電荷発生材料の比率が低過ぎると、塗布ムラを生じたり、感光体としての感度の低下を招くおそれがある。
【0057】
電荷発生材料を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散法を用いることができる。この際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の範囲の二次粒子サイズに微細化することが有効である。
【0058】
<電荷輸送層>
電荷輸送層は、前述の式(1)で表される電荷輸送材料及びバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、電荷輸送材料等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送材料としては、前述の式(1)で表される電荷輸送材料に加えて、公知の他の電荷輸送材料を併用してもよい。他の電荷輸送材料を併用する場合、その種類は特に制限されないが、例えば、カルバゾール誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、エナミン誘導体、ブタジエン誘導体及びこれらの誘導体が複数結合されたものが好ましい。これらの電荷輸送材料は、何れか1種を単独で用いても良く、複数種のものを任意の組み合わせで併用しても良い。
【0059】
本発明の感光体では、前記式(1)で表される電荷輸送材料に加えてバインダー樹脂が膜強度確保のために使用される。バインダー樹脂としては、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好適に使用される。このうち、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。これらのうち、電気特性の観点からはポリカーボネート樹脂が好ましい。また、ポリエステル樹脂の中では、全芳香族ポリエステル樹脂に対する呼称であるポリアリレート樹脂は、弾性変形率を高くすることが可能で、耐摩耗性、耐傷性、耐フィルミング性等の機械物性の観点から好ましい。
【0060】
本発明で用いられるバインダー樹脂の粘度平均分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、機械的強度の観点から、下限は通常20,000以上、好ましくは30,000以上、より好ましくは40,000以上である。また、前記化合物の分散性、塗布液の粘度等の生産性の観点から、上限は通常100,000以下、好ましくは90,000以下、より好ましくは80,000以下である。なお、粘度平均分子量は、例えばウベローデ型毛細管粘度計等を用いて、公知の方法で測定することができる。
【0061】
電荷輸送層形成用の塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒に特に制限は無いが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロ
エタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の組み合わせ及び種類で併用してもよい。
【0062】
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には帯電安定性の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、一方、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更には30μm以下の範囲で、高解像度化の観点からは25μm以下が特に好適に用いられる。
電荷輸送層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤等の添加物を含有させても良い。
【0063】
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、電荷輸送層にフッ素系樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレン樹脂等、又はこれらの樹脂からなる粒子やシリカやアルミナ等の無機化合物の粒子を添加剤として含有させても良い。この場合、電荷輸送層を二層構成にして、表面に近い側の層に、それらの添加剤を使用することができる。
【0064】
<各層の形成方法>
上記した感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、導電性支持体上に浸漬塗布、リング塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
【0065】
溶媒又は分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度は、使用時の温度において、通常0.01mPa・s以上、好ましくは0.1mPa・s以上、また、通常20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下の範囲とする。
【0066】
電荷輸送層の場合には、塗布液の固形分濃度を通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、また、通常40質量%以下、好ましくは35質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を使用時の温度において通常10mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、また、通常800mPa・s以下、好ましくは500mPa・s以下の範囲とする。
塗布液の乾燥は、室温における放置乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行っても良い。
【0067】
≪画像形成装置≫
次に、本発明の電子写真感光体を用いたドラムカートリッジ、画像形成装置について、装置の一例を示す
図2に基づいて説明する。
図2において、1はドラム状感光体であり、矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1はその回転過程で帯電手段2により、その表面に正または負の所定電位の均一
帯電を受け、ついで露光部3において像露光手段により潜像形成のための露光が行われる。
【0068】
形成された静電潜像は、次に現像手段4でトナー現像され、そのトナー現像像がコロナ転写手段5により給紙部から給送された印刷媒体(紙など)Pに順次転写されていく。
図2では、現像手段4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像手段4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0069】
像転写された転写体はついで定着手段7に送られ、像定着され、機外へプリントアウトされる。定着手段7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、
図2では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71、72は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71、72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0070】
印刷媒体P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。像転写後の感光体1の表面はクリーニング手段6により転写残りのトナーが除去され、除電手段により除電されて次の画像形成のために清浄化される。
【0071】
本発明の電子写真感光体を使用するにあたって、帯電器としては、コロトロン、スコロトロンなどのコロナ帯電器の他に、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電手段を用いてもよい。直接帯電手段の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器などが挙げられる。直接帯電手段として、気中放電を伴うもの、あるいは気中放電を伴わない注入帯電いずれも可能である。また、帯電時に印可する電圧としては、直流電圧だけの場合、および直流に交流を重畳させて用いることもできる。
【0072】
露光はハロゲンランプ、蛍光灯、レーザー(半導体、He−Ne)、LED、感光体内部露光方式等が用いられるが、デジタル式電子写真方式として、レーザー、LED、光シャッターアレイ等を用いることが好ましい。波長としては780nmの単色光の他、600〜700nm領域のやや短波長寄りの単色光を用いることができる。
現像行程はカスケード現像、1成分絶縁トナー現像、1成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や湿式現像方式などが用いられる。
【0073】
トナーとしては、粉砕トナーの他に、懸濁造粒、懸濁重合、乳化重合凝集法等のケミカルトナーを用いることができる。特に、ケミカルトナーの場合には、4〜8μm程度の小粒径のものが用いられ、形状も球形に近いものから、ポテト状の球形から外れたものも使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化には好適に用いられる。
【0074】
転写行程はコロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法が用いられる。定着は熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着、IH定着、ベルト定着、IHF定着などが用いられ、これら定着方式は単独で用いても良
く、複数の定着方式を組み合わせた形で使用してもよい。
クリーニングにはブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなどが用いられる。
【0075】
除電工程は、省略される場合も多いが、使用される場合には、蛍光灯、LED等が使用され、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーが使用される場合が多い。これらのプロセスのほかに、前露光工程、補助帯電工程のプロセスを有してもよい。
本発明においては、上記ドラム状感光体1、帯電手段2、現像手段4及びクリーニング手段6等の構成要素の内の複数のものをドラムカートリッジとして一体に結合して構成し、このドラムカートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。例えば、帯電手段2、現像手段4及びクリーニング手段6の内、少なくとも1つをドラム状感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化とすることが出来る。
また、本発明に係る電子写真感光体、帯電手段2、露光部3、現像手段4及びクリーニング手段6を備える画像形成装置に適用することも可能である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を示して本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではなく任意に変形して実施することができる。また、以下の実施例、及び比較例中の「部」の記載は、特に指定しない限り「質量部」あるいは「重量部」を示す。
【0077】
[実施例1]
<V型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの製造>
窒素雰囲気下、o-フタロジニトリル32g、三塩化ガリウム10gをα−クロロナフタレン164g中に入れ、205℃において5時間反応させた。この反応液を150℃まで
冷却し、ろ別し、得られた結晶をN−メチルピロリドン150ml、さらにメタノール150mlで洗浄し、その後乾燥することによりクロロガリウムフタロシアニン11.5gを得た。
得られたクロロガリウムフタロシアニンを濃硫酸に−10℃にて溶解後、この溶液を5℃の蒸留水中に滴下して結晶を析出させた。蒸留水、希アンモニア水等で洗浄後、乾燥してV型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折パターンを
図1に示す。
【0078】
<下引き層形成用塗布液の製造>
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの質量比が7/3の混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、表面処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒及び、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表される化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表される化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表される化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表される化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表される化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの質量比が7/1/2で、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層形成用塗布液を作製した。
【0079】
【化11】
【0080】
<電荷発生層形成用塗布液の製造>
電荷発生材料として、上述の、
図1に示すX線回折パターンを有するV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン(略号:CG1)20部と1,2−ジメトキシエタン280部とを混合し、サンドグラインドミルで1時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。続いてこの微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10部を、1,2−ジメトキシエタンの255部と4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの85部との混合液に溶解させて得られたバインダー液、及び230部の1,2−ジメトキシエタンを混合して電荷発生層形成用塗布液を調製した。
【0081】
<電荷輸送層形成用塗布液の製造>
下記の繰返し構造単位を有するポ
リカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)
を100部、電荷輸送材料として前記(1)−1で表される化合物(前記スキーム2にお
いて、パラジウム触媒を使用して製造)を50部、シリコーンオイル(信越シリコーン社
製:商品名KF96)0.05部を、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2(質量比)
)の混合溶媒520部に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
【0082】
【化12】
【0083】
<感光体の製造>
前記のようにして得られた下引き層形成用塗布液を、表面にアルミニウム蒸着したポリエチレンテレフタレートシート上に、乾燥後の膜厚が約1.3μmになるようにワイアバーで塗布、室温で乾燥して下引き層を設けた。
続いて、前記のようにして得られた電荷発生層形成用塗布液を、上記下引層上に、乾燥後の膜厚が約0.3μmになるようにワイアバーで塗布、室温で乾燥して電荷発生層を設けた。
続いて、前記のようにして得られた電荷輸送層形成用塗布液を、上記電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が約25μmになるようにアプリケーターで塗布し、125℃で20分間乾燥して、感光体を作製した。
【0084】
<電気特性試験>
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体シ
ートをアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数で回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、初期表面電位を約−700Vとし、除電は660nmのLED単色光を用いた。帯電した感光体に、ハロゲンランプの光を、干渉フィルターで780nmの単色光として照射し、表面電位が初期表面電位の半分(約−350V)となる時の照射エネルギー(半減露光エネルギー:μJ/cm
2)を感度(E
1/2)として測定した。また、当該780nmの単色光を0.46μ
J/cm
2露光した際の表面電位(露光部電位;VLと称する)をあわせて求めた。露光
から電位測定までの時間は、60msとした。測定環境は25℃,50%RH(NNと称する)、5℃,10%RH(LLと称する)で行なった。VLの絶対値が大きい場合は、露光後の減衰が悪いことを示す。また、NN条件とLL条件のE
1/2とVLの差も算出した。結果を表-1に示す。
【0085】
<耐転写メモリー性評価>
上記の電気特性試験と同様に、感光体の初期電気特性を測定した。ただし、露光電位としては、780nmの単色光を2.2μJ/cm
2露光した際の表面電位(Vrと称する
)をモニターした。初期電気特性を実施後、除電部を取り外し、代わりに+6.5kVを印加したコロトロンを、転写負荷をシミュレートするために設置した。この状態で帯電−露光−転写負荷のサイクルを4000回繰返した後、再度除電部を元のように設置し、前記のVrを測定し、初期との差異ΔVrを算出した。測定環境は25℃,50%RHで行なった。結果を表−2に示す。ΔVr絶対値が小さいほど、耐写メモリー性が良好であることを示す。
【0086】
[
参考例2]
実施例1において、電荷輸送材料として前記(1)−1で表される化合物に代えて、前
記(1)−8で表される化合物を使用した以外は、実施例1と同様に測定サンプルを作製
、評価した。結果を表−1、表−2に示す。
[実施例3]
実施例1において、電荷輸送材料として前記(1)−1で表される化合物に代えて、前
記(1)−20で表される化合物を使用した以外は、実施例1と同様に測定サンプルを作
製、評価した。結果を表−1、表−2に示す。
【0087】
[比較例1]
実施例1において、電荷輸送材料として前記(1)−1で表される化合物に代えて、下記Aで表される化合物を使用した以外は、実施例1と同様に測定サンプルを作製、評価した。結果を表−1、表−2に示す。
【0088】
【化13】
【0089】
[比較例2]
実施例1において、電荷輸送材料として前記(1)−1で表される化合物に代えて、下記Bで表される化合物を使用した以外は、実施例1と同様に測定サンプルを作製、評価した。結果を表−1、表−2に示す。
【0090】
【化14】
【0091】
[比較例3]
実施例1において、電荷輸送材料として前記(1)−1で表される化合物に代えて、下記Cで表される化合物を使用した以外は、実施例1と同様に測定サンプルを作製、評価した。結果を表−1、表−2に示す。
【0092】
【化15】
【0093】
[比較例4]
実施例1において、電荷輸送材料として前記(1)−1で表される化合物に代えて、下記Dで表される化合物を使用した以外は、実施例1と同様に測定サンプルを作製、評価した。結果を表−1、表−2に示す。
【0094】
【化16】
【0095】
[比較例5]
実施例1において、電荷輸送材料として前記(1)−1で表される化合物に代えて、下記Eで表される化合物を使用した以外は、実施例1と同様に測定サンプルを作製、評価した。結果を表−1、表−2に示す。
【0096】
【化17】
【0097】
[比較例6]
実施例1において、電荷発生材料として前記V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン(CG1)に代えて、Y型チタニルフタロシアニン(略号:CG2)を使用した以外は、実施例1と同様に測定サンプルを作製、評価した。結果を表−1、表−2に示す。
[比較例7]
実施例1において、電荷発生材料として前記V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン(CG1)に代えて、β型チタニルフタロシアニン(略号:CG3)を使用した以外は、実施例1と同様に測定サンプルを作製、評価した。結果を表−1、表−2に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1で示されるように、実施例1
,3
及び参考例2の感光体は、温湿度によるE
1/2
、VLの変動が共に非常に小さく、ハーフトーンからベタ濃度域まで温湿度による画像濃
度変動(画像ムラ)を起こしにくいことが分かる。
【0100】
【表2】
【0101】
表−2から分かるように、実施例1
,3
及び参考例2は、転写負荷を繰り返し受けた後
も露光部電位がほとんど上昇しないのが分かる。
【0102】
[実施例4]
<感光体ドラムの製造>
表面が粗切削仕上げされ、清浄に洗浄された外径30mm、長さ246mm、肉厚0.75mmのアルミニウム製シリンダー上に、実施例1のシート状感光体製造に使用した下引き層形成用塗布液、電荷発生層形成用塗布液、電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥し、乾燥後の膜厚がそれぞれ、0.4μm、18μmとなるように、電荷発生層、電荷輸送層を形成し、感光体ドラムを製造した。なお、電荷輸送層の乾燥は、130℃で20分間行なった。
【0103】
<画像試験1>
上記の感光体ドラムを、沖データ社製タンデムフルカラープリンタ C711dn(DCローラー帯電、LED露光、接触非磁性一成分現像、中間転写体無し)の黒用の電子写真感光体カートリッジに装着し、プリンタ25℃,50%RHの環境下で、全面ベタ印刷(ハーフトーン濃度)を行った。その後、プリンタを5℃,10%RHの環境に移動して24時間放置した後、同様に全面印刷を行ったが、画像濃度低下は観測されなかった。
【0104】
<画像試験2>
上記の感光体ドラムを、沖データ社製タンデムフルカラープリンタ C711dn(DCローラー帯電、LED露光、接触非磁性一成分現像、中間転写体無し)のシアン用の電子写真感光体カートリッジに装着し、プリンタごと35℃,80%RHの環境下で6時間静置した。その後、プリンタを25℃,50%RHの環境に移動して24時間静置した後、全面ハーフトーン印刷を行ったが、濃度ムラは観測されなかった。
【0105】
<画像試験3>
上記の感光体ドラムを、上記画像試験2同様に、シアン用の電子写真感光体カートリッジに装着し、25℃,50%RHの環境下で、A4用紙を縦送りで1000枚印刷した。その後、A4用紙を横送りし、全面ハーフトーン画像を印刷したが、端部の濃度段差等の画像欠陥は観測されなかった。
【0106】
[
参考例5
、実施例6、比較例8〜14]
実施例4の電荷輸送材料、もしくは電荷発生材料を、前記表―1同様に変更して、実施
例4同様に画像試験を実施した。結果を表−3に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
*画像濃度低下 大: 目視ではっきり分かる
中: 目視である程度分かる
小: 目視で僅かに判別できる
濃度ムラ 大: 目視ではっきり分かる
中: 目視である程度分かる
小: 目視で僅かに判別できる
端部画像濃度変化 大: 目視ではっきり分かる
中: 目視である程度分かる
小: 目視で僅かに判別できる
【0109】
表−3から分かるように、実施例4
,6
及び参考例5の感光体は、温湿度による濃度変
化、濃度ムラを起こさず、転写負荷にも強いことが分かる。一方、比較例8〜14の感光
体では、NN/LLで画像濃度変化を観測した。また、比較例8、10、12〜14の感
光体は、静置時に現像部と近接していた部分に、濃度の濃いバンドムラを発生した。また
、比較例8、11〜14では、端部白抜けが生じた。