特許第6337550号(P6337550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337550
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20180528BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   C08L23/10
   C08K3/34
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-59644(P2014-59644)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-96586(P2015-96586A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2017年1月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-213495(P2013-213495)
(32)【優先日】2013年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】松井 和也
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 浩善
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−074130(JP,A)
【文献】 特表2010−526898(JP,A)
【文献】 特開平08−183878(JP,A)
【文献】 特許第4874432(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/10− 23/14
C08K 3/00− 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂と、下記の要件(1−a)と要件(1−b)と要件(1−c)の全てを満たすフィラーを含有し、フィラーの含有量が10質量%以上50質量%以下であり、フィラーがタルクおよび/またはマイカであり、ポリプロピレン樹脂の含有量が50質量%以上90質量%以下であるポリプロピレン樹脂組成物からなり、下記の要件(2)を満たす成形体。(但し、フィラーとポリプロピレン樹脂組成物のそれぞれの含有量の合計を100質量%とする。)
要件(1−a):フィラーのJIS R1629に従ってレーザー回折法により測定したメディアン径D50(L)が10μm以上25μm以下であること。
要件(1−b):フィラーのJIS R1619に従って測定した遠心沈降法によるメディアン径D50(S)が2μm以上8μm以下であること。
要件(1−c):フィラーの下記式(1)により求められるアスペクト比定数が2以上15以下であること。
アスペクト比定数={D50(L)−D50(S)}/D50(S)・・・式(1)
要件(2):成形体に含まれるフィラーの、下記式(2)により求められる配向度が、80%以上であること。
配向度(%)={(180−hwd)/180}×100・・・式(2)
(式中、hwは、フィラーの厚み方向に垂直な格子面の方位角強度分布における半値幅(単位:度)を表す。)
【請求項2】
下記要件(3)を満たす請求項1に記載の成形体。
要件(3):成形体に含まれるポリプロピレン樹脂の、下記式(3)により求められる結晶配向度が、75%以上であること。
結晶配向度(%)={(180−hw040)/180}×100・・・式(3)
(式(3)中、hw040は、ポリプロピレン樹脂の(040)面の方位角強度分布における半値幅(単位:度)を表す。)
【請求項3】
フィラーがタルクである請求項1または2に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体に関するものである。具体的には、フィラーとポリプロピレン樹脂を含有するポリプロピレン樹脂組成物からなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンからなる成形体は、自動車内外装部品や家電部品などの各種工業部品に利用されている。
【0003】
特許文献1には、ポリプロピレンなどの結晶性熱可塑性樹脂の剛性や耐衝撃性の改良目的として、結晶性熱可塑性樹脂にフレーク状フィラーを溶融混練して得られたシート状物を、結晶性高分子の融点で、等方的に圧延させることで得られる結晶性熱可塑性樹脂シート状物が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ポリプロピレンの機械的強度の改良を目的として、高分子の結晶を含む高分子結晶体であって、高分子結晶体の結晶化度および上記結晶のサイズのそれぞれが特定の範囲にある高分子結晶体が記載されており、また、高分子結晶体の結晶化度および上記結晶の数密度のそれぞれが特定の範囲にある高分子結晶体も記載されている。
【0005】
そして、特許文献3には、ポリプロピレンなどの高分子材料の機械的強度、じん性及び延伸性、耐熱性を改良するために、特定の範囲の温度に加熱された高分子材料を冷却し、冷却過程で該高分子材料を圧縮して得られる高分子品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−141535
【特許文献2】WO2008/108251
【特許文献3】特許第4874432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、ポリプロピレンからなる成形体が利用されている各種工業部品は、薄肉化が求められており、高機能化された部品や大型の部品は、ポリプロピレンからなる成形体の利用が求められている。しかし、薄肉化が求められている部品や、高機能化された部品、大型の部品に利用する場合、上記の特許文献1、2、3に記載されている成形体の剛性や耐衝撃性、寸法安定性は、満足のいくものではなかった。かかる状況の下、本発明の目的は、剛性と耐衝撃性、寸法安定性に優れるポリプロピレン樹脂組成物からなる成形体を提供す
ることにある。
【0008】
そして、本発明者らは、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一は、ポリプロピレン樹脂と、下記の要件(1−a)と要件(1−b)と要件(1−c)の全てを満たすフィラーを含有し、フィラーの含有量が10質量%以上50質量%以下であり、ポリプロピレン樹脂の含有量が50質量%以上90質量%以下であるポリプロピレン樹脂組成物からなり、下記の要件(2)を満たす成形体(但し、フィラーとポリプロピレン樹脂のそれぞれの含有量の合計を100質量%とする。)に係るものである。
要件(1−a):フィラーのJIS R1629に従ってレーザー回折法により測定したメディアン径D50(L)が10μm以上25μm以下であること。要件(1−b):フィラーのJIS R1619に従って測定した遠心沈降法によるメディアン径D50(S)が2μm以上8μm以下であること。要件(1−c):フィラーの下記式(1)により求められるアスペクト比定数が2以上15以下であること。
アスペクト比定数={D50(L)−D50(S)}/D50(S)・・・式(1)
要件(2):成形体に含まれるフィラーの、下記式(2)により求められるフィラーの配向度が、80%以上であること。
配向度(%)={(180−hwd)/180}×100・・・式(2)
(式中、hwdは、フィラーの厚み方向に垂直な格子面の方位角強度分布における半値
幅(単位:度)を表す。)
【0010】
本発明の二は、下記要件(3)を満たす上記成形体に係るものである。
要件(3):成形体に含まれるポリプロピレン樹脂組成物の、下記式(3)により求められる結晶配向度が、75%以上であること。
結晶配向度(%)={(180−hw040)/180}×100・・・式(3)
(式(3)中、hw040は、ポリプロピレン樹脂の(040)面の方位角強度分布における半値幅(単位:度)を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、剛性と耐衝撃性、寸法安定性に優れるポリプロピレン樹脂組成物からなる成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ポリプロピレン樹脂>
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、ヘテロファジック重合材料が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0013】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂としては、アイソタクチック構造を有するポリプロピレン樹脂、またはシンジオタクチック構造を有するポリプロピレン樹脂のどちらをも用いることができる。耐熱性の点で好ましくは、アイソタクチック構造を有するポリプロピレン樹脂である。
【0014】
アイソタクチック構造を有するポリプロピレン樹脂である場合、13C−NMR法により測定されたアイソタクチック・ペンタッド分率(以下、[mmmm]と表記する)が0.90以上、好ましくは0.95以上であるポリプロピレン樹脂が好適である。
【0015】
ここでアイソタクチック・ペンタッド分率とは、13C−NMRを使用して測定される分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の存在割合を示しており、プロピレンに由来する構成単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンに由来する構成単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルで観測されるメチル炭素領域の全吸収ピーク中に占める[mmmm]ピークの分率として算出される値である。
【0016】
なお、この[mmmm]は、A.Zambelliらの報告(Macromolecules,1973年,6号,925頁から926頁)に記載の方法に従って求めることができる。
【0017】
一方、シンジオタクチック構造を有するポリプロピレン樹脂である場合、13C−NMR法により測定されたシンジオタクチック・ペンタッド分率(以下、[rrrr]と表記する)が0.85以上、好ましくは0.90以上であるポリプロピレン樹脂が好適である。
【0018】
ここでシンジオタクテチック・ペンタッド分率とは、13C−NMRを使用して測定される分子鎖中のペンタッド単位でのシンジオタクチック連鎖の存在割合を示しており、プロピレンに由来する構成単位が5個連続してラセモ結合した連鎖の中心にあるプロピレンに由来する構成単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルで観測されるメチル炭素領域の全吸収ピーク中に占める[rrrr]ピークの分率として算出される値である。
【0019】
なお、[rrrr]は、特開2008−169316号公報に記載の方法で求めることができる。
【0020】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂の示差走査熱量測定(DSC)により求められる融点は、150℃以上であり、好ましくは155℃以上、さらに好ましくは160℃以上である。
【0021】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂のメルトフローレートは、小さいほうが耐衝撃性に優れる。具体的には、JIS−K−7210に規定された方法に従って、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが20g/10分以下0.01g/10分以上であるのが好ましく、10g/10分以下0.5g/10分以上であるのが特に好ましい。
【0022】
<プロピレン単独重合体>
本発明で用いられるプロピレン単独重合体は、プロピレンに由来する構成単位からなる重合体であり、その製造方法は、プロピレンを単独重合させる方法である。
【0023】
<プロピレンランダム共重合体>
本発明で用いられるプロピレンランダム共重合体は、プロピレンに由来する構成単位とプロピレン以外のモノマーに由来する構成単位からなるランダム共重合体である。
【0024】
ランダム共重合体の製造方法は、プロピレンとプロピレン以外のモノマーをランダム共重合させる方法である。
【0025】
ランダム共重合体を構成するプロピレン以外のモノマーとしては、エチレン、α−オレフィン、環状オレフィン、スチレン系モノマーなどが挙げられる。
【0026】
α−オレフィンとしては、炭素数4〜10個のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0027】
プロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体は、プロピレン−エチレンランダム共重合体である。
【0028】
プロピレン由来の構成単位とα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム、プロピレン−1−デセンランダム共重合体等が挙げられる。
【0029】
プロピレン由来の構成単位と環状オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−ノルボルネン共重合体等が挙げられる。
【0030】
プロピレン由来の構成単位とスチレン系モノマーに由来する構成単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−スチレン共重合体等が挙げられる。
【0031】
プロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位とα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体等が挙げられる。
【0032】
プロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位と環状オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−ノルボルネン共重合体等が挙げられる。
【0033】
プロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位とスチレン系モノマーに由来する構成単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−スチレン共重合体等が挙げられる。
【0034】
ランダム共重合体に含有されるプロピレン以外のモノマーに由来する構成単位の含有量は0.1〜40重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましい。そして、プロピレンに由来する構成単位の含有量は99.9〜60重量%であることが好ましく、99.9〜70重量%であることがより好ましい。但し、ランダム共重合体の全重量を100重量%とする。
【0035】
<ヘテロファジック重合材料>
本発明で用いられるヘテロファジック重合材料は、多段重合により得られる、プロピレン単独重合体成分(I−1)とプロピレン共重合体成分(II)とからなるプロピレン重合材料または、プロピレン共重合体成分(I−2)とプロピレン共重合体成分(II)からなるプロピレン重合材料である。(なお、前記の単独重合体成分(I−1)とプロピレン共重合体成分(I−2)を重合体成分(I)と称する。)
【0036】
プロピレン単独重合体成分(I−1)は、プロピレンに由来する構造単位からなる単独重合体成分である。
【0037】
プロピレン共重合体成分(I−2)は、プロピレンに由来する構造単位と、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンに由来する構造単位からなる共重合体成分であって、エチレン及び炭素数4〜10のα―オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、0.01重量%以上20重量%未満である(但し、プロピレン共重合体成分(I−2)の全重量を100重量%とする)。
【0038】
プロピレン共重合体成分(II)は、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のオレフィンに由来する構造単位と、プロピレンに由来する構造単位とを含有する共重合体成分である。
重合体成分(II)に含有されるエチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンに由来する構造単位の含有量は、20〜80重量%であり、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜60重量%である(但し、プロピレン重合体成分(II)の全重量を100重量%とする)。
【0039】
プロピレン共重合体成分(I−2)またはプロピレン共重合体成分(II)に用いられる炭素数4〜10のα−オレフィンとして、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくは1−ブテンである。
【0040】
プロピレン共重合体成分(I−2)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
【0041】
重合体成分(I)として、好ましくは、プロピレン単独重合体成分、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分である。
【0042】
プロピレン共重合体成分(II)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−デセン共重合体成分等が挙げられ、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、より好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分である。
【0043】
ヘテロファジック重合材料に含有される重合体成分(II)の含有量としては、1〜50重量%が好ましく、1〜40重量%がより好ましく、10〜40重量%が更に好ましく、10〜30重量%が更にいっそう好ましい(但し、ヘテロファジック重合材料の全重量を100重量%とする)。
【0044】
ヘテロファジック重合材料の重合体成分(I)がプロピレン単独重合体成分(I−1)である場合、該重合材料としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−1−オクテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−1−デセン)ヘテロファジック重合材料等が挙げられる。
【0045】
また、ヘテロファジック重合材料の重合体成分(I)がプロピレン共重合体成分(I−2)である場合、該重合材料としては、例えば、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−デセン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−オクテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−デセン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−デセン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−オクテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−デセン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−オクテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−デセン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−オクテン)−(プロピレン−1−オクテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−オクテン)−(プロピレン−1−デセン)ヘテロファジック重合材料等が挙げられる。
【0046】
ヘテロファジック重合材料として、好ましくは、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)ヘテロファジック重合材料であり、より好ましくは、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ヘテロファジック重合材料である。
【0047】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂は、公知の固体状チタン触媒成分と、有機金属化合物触媒成分と、さらに必要に応じて用いられる電子供与体とを接触させて形成される触媒系や、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、アルキルアルミノキサンとを接触させて形成される触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物と、有機アルミニウム化合物とを接触させて形成される触媒系等を用い、公知の重合方法によって製造することができる。
【0048】
<フィラー>
本発明で用いられるフィラーとしては、マイカ、ガラスフレーク、タルク等が挙げられるが、これらは単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0049】
上記フィラーは、ポリプロピレン樹脂組成物の加工性の観点から、タルクを使用することが好ましい。
【0050】
本発明で用いたフィラーは、以下の特定形態を有する。
【0051】
(レーザー回折法により測定したメディアン径D50(L))
本発明で用いたフィラーのメディアン径D50(L)は、10μm以上25μm以下である。
【0052】
上記メディアン径D50(L)は、レーザー回折測定で得られる粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値から求められる。レーザー回折測定は、レーザー法粒度分布測定機を用いて、JIS R1629に従って測定する。レーザー法粒度分布測定機として、例えば、日機装株式会社MT−3300EX−II等が挙げられる。
【0053】
(遠心沈降法によるメディアン径D50(S))
本発明で用いたフィラーのメディアン径D50(S)は、2μm以上8μm以下である。
【0054】
上記メディアン径D50(S)は、遠心沈降測定で得られる累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値より求められる。遠心沈降測定測定は、JIS R1619に従って測定する。遠心沈降法粒度分布測定機は、例えば、株式会社島津製作所製島津製作所SA−CP3等が挙げられる。
【0055】
(アスペクト比定数)
本発明のフィラーのアスペクト比定数は、2以上15以下である。アスペクト比定数は、上記メディアン径D50(L)と上記メディアン径D50(S)の値から下記式によって求められる。
アスペクト比定数={D50(L)−D50(S)}/D50(S)
【0056】
本発明のポリプロピレン樹脂の含有量は、50質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上80質量%以下である。(但し、フィラーとポリプロピレン樹脂の含有量の合計を100質量%とする。)
【0057】
上記フィラーの含有量は、10質量%以上50質量%以下であり、剛性と耐衝撃性、寸法安定性の観点から、好ましくは20質量%以上40質量%以下である。(但し、フィラーとポリプロピレン樹脂の含有量の合計を100質量%とする。)
【0058】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、その他の樹脂や添加剤を加えてもよ良い。その他の樹脂として、熱可塑性エラストマーや変性樹脂等が挙げられる。
【0059】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、成形体の塗装性改良を目的として、熱可塑性エラストマーを更に添加してもよい。熱可塑性エラストマーとして、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー等が挙げられ、好ましくは、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーであり、より好ましくは、オレフィン系エラストマーが挙げられる。
【0060】
オレフィン系エラストマーとは、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1つのオレフィンと、エチレンとを重合したポリマーである。オレフィン系エラストマー中のエチレンに由来する構成単位の含有量は、10〜85重量%であることが好ましい。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられ、好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0061】
上記のオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合エラストマー、エチレン−ブテン−1共重合エラストマー、エチレン−ヘキセン−1共重合エラストマー、エチレン−オクテン−1共重合エラストマー等が挙げられる。オレフィン系エラストマーについては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、エチレン−ブテン−1共重合エラストマー、エチレン−オクテン−1共重合エラストマーである。
【0062】
スチレン系エラストマーとは、例えば、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体、前記ブロック共重合体の共役ジエン部分の二重結合が水素添加されているブロック重合体等が挙げられ、好ましくはブロック共重合体の共役ジエン部分の二重結合が80%以上水素添加されているブロック重合体であり、より好ましくは85%以上水素添加されているブロック重合体である。
【0063】
上記のスチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン系ゴム(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系ゴム(SEPS)、スチレン−ブタジエン系ゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン系ゴム(SIS)等のブロック共重合体又はこれらのゴム成分を水添したブロック共重合体等が挙げられる。
【0064】
また、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム(EPDM)等のオレフィン系共重合体ゴムとスチレン等のビニル芳香族化合物を反応させて得られるゴムも好適に使用することができる。また、2種類以上のビニル芳香族化合物含有エラストマーを併用してもよい。
【0065】
前記熱可塑性エラストマーは、得られた成形体の塗装性の観点や、剛性の観点から、フィラーとポリプロピレン樹脂組成物との総量を100質量部として、10質量部から45質量部添加することが好ましく、15質量部から35質量部添加することが更に好ましい。
【0066】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂組成物には、塗装性の改良や成形体中でのフィラーの分散性向上を目的として、変性ポリプロピレン等の変性樹脂をさらに添加してもよい。例えば、マレイン酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。
【0067】
上記変性樹脂は、得られた成形体の耐衝撃性の観点や、塗装性の観点から、フィラーとポリプロピレン樹脂組成物との総量を100質量部として、5質量部から20質量部添加することが好ましい。
【0068】
上記の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、結晶造核剤、粘着剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
【0069】
上記の結晶造核剤としては、ソルビトール系核剤、有機リン酸エステル金属塩系化合物、有機カルボン酸金属塩系化合物、ロジン系化合物などのα晶核剤や、アミド系化合物、キナナクリドン系化合物等のβ晶核剤を挙げることができる。フィラーとポリプロピレン樹脂組成物との総量を100質量部として、添加した効果を充分に得られるという点で、0.001質量部以上が好ましく、結晶核剤の分散性の悪化を抑えるという点で、1質量部以下であることが好ましい。
【0070】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法としては、ポリプロピレン樹脂とフィラーと、必要に応じて加えられるその他の樹脂や添加剤を溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練には、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸同方向回転押出機等が用いられる。 その他の樹脂や添加剤を加える場合、(1)ポリプロピレン樹脂と、その他の樹脂や添加剤を溶融混練した後に、フィラーを加えて溶融混練する方法、(2)ポリプロピレン樹脂とフィラーを予め溶融混練した後に、その他の樹脂や添加剤を加えて溶融混練する方法、等が挙げられる。
【0071】
<成形体>
本発明の成形体は、上記ポリプロピレン樹脂組成物からなる成形体であり、フィラーの厚み方向に垂直な面が、加熱圧縮時の流動方向と平行に配向していることが好ましい。剛性と衝撃性の観点から、成形体中におけるフィラーの配向度は80%以上である。
【0072】
成形体中におけるフィラーの配向状態は、成形体の広角X線散乱を測定することにより評価を行うことができる。
フィラーの配向状態は、フィラーの配向度によって定量化できる。フィラーの配向度は、二次元広角X線散乱像のフィラーの厚み方向に垂直な格子面の方位角強度分布の半値幅を用いて、下記の式により求めることができる。
配向度(%)={(180−hwd)/180}×100
(式中、hwdは、フィラーの厚み方向に垂直な格子面の方位角強度分布における半値幅(単位:度)を表す。)
上記配向度の値が大きいほど、フィラーの面内方向が加熱圧縮時のポリプロピレン樹脂の流動方向と平行に配向していると言える。
【0073】
結晶性ポリマーであるポリプロピレン樹脂の結晶内の原子は、三次元的な周期性をもって繰り返し配列されているため、その周期性を考慮して、結晶は一定の構造を持った平行六面体が三次元的に積み重なったものと考えられる。このような平行六面体を単位格子いう。この単位格子の三辺をそれぞれ、a軸、b軸、c軸と呼ぶ。α晶ポリプロピレン結晶の単位格子では、分子鎖方向をc軸といい、その他の結晶軸の2辺のうち、短軸をa軸、長軸をb軸という。
【0074】
本発明における成形体は、ポリプロピレン樹脂の結晶構造のうちα晶のc軸またはa軸が加熱圧縮時の流動方向に平行に配向していることが好ましい。ポリプロピレン樹脂のα晶のc軸またはa軸が加熱圧縮時の流動方向に配向していることによって、成形体の剛性と衝撃強度を高くすることができる。剛性と衝撃性の観点から、成形体に含まれるポリプロピレン樹脂の結晶配向度は、75%以上であり、好ましくは80%以上である。
【0075】
ポリプロピレン樹脂の結晶の配向状態は、成形体の広角X線散乱を測定することにより評価を行うことができる。
ポリプロピレン樹脂の結晶の配向状態は、結晶配向度によって定量化できる。結晶配向度は、二次元広角X線散乱像の(040)面の方位角強度分布の半値幅を用いて、下記の式により求めることができる。
結晶配向度(%)={(180−hw040)/180}×100
(式中、hw040は、ポリプロピレン樹脂のα晶における(040)面の方位角強度分布における半値幅(単位:度)を表す。)
結晶配向度の値が大きいほど、ポリプロピレン樹脂のα晶のc軸またはa軸が加熱圧縮時のポリプロピレン樹脂の流動方向と平行に配向していると言える。
【0076】
<成形体の製造方法>
本発明の成形体は、ポリプロピレン樹脂組成物を、その融点以上に加熱融解させ、冷却して固体状態の成形前駆体を得て、続いて、その成形前駆体を、ポリプロピレン樹脂組成物の融点以下の温度で加熱圧縮することにより得られる。成形前駆体を複数枚積層したものを加熱圧縮してもよい。
【0077】
成形前駆体は、ポリプロピレン樹脂組成物の融点以上に加熱、溶融したポリプロピレン樹脂組成物を冷却して固体状態に成形することにより得られる。例えば、射出成形法やプレス成形法等の一般的な樹脂の成形方法を用いることができる。成形前駆体の形状は、円柱体、円錐体、立方体、直方体等が挙げられるが、好ましくは立方体、もしく直方体である。
【0078】
成形前駆体を加熱圧縮するときの温度は、ポリプロピレン樹脂の融点(Tm)以下の温度であり、好ましくは50℃以上、融点(Tm)以下であり、より好ましくはポリプロピレン樹脂の結晶化温度(Tc)以上、融点(Tm)以下の温度範囲である。
【0079】
成形前駆体を加熱圧縮する時間は、成形体の剛性と耐衝撃性を高くするという点や、ポリプロピレン樹脂組成物の熱劣化を防止するという点から、15秒以上、60分以下の時間が好ましく、より好ましくは1分以上30分未満であり、更に好ましくは10分以上15分未満である。
【0080】
成形前駆体を加熱圧縮する装置としては、例えば、温度調節機能を有するプレス成形機、トラックベルト型の加熱加圧成形機、加圧可能なベルト型のシーラー、圧延ロール成形機等が挙げられる。また、加熱圧縮する方法としては、温度調節機能を有するプレス成形機により成形前駆体をその場で厚み方向から加圧圧縮する方法が好ましい。
【0081】
成形前駆体を加熱圧縮する方法として、加熱圧縮する装置において、成形前駆体と接触する加圧部に、潤滑剤を塗ることも可能である。潤滑剤としては、例えば、シリコンオイル等が挙げられる。潤滑剤を塗ることで、成形体前駆体と加圧部の摩擦抵抗が軽減され、よりスムーズに成形体前駆体を加熱圧縮することができ、成形サイクルの向上および加熱圧縮する装置の負荷低減に繋がる。
【0082】
本発明で得られた成形体は、真空成形法、圧空成形法、プレス成形法などの公知の方法を用いて、さらに所要の形状に成形加工することができる。
【0083】
本発明で得られた成形体は、他の樹脂・金属・紙・皮革と張り合わせを行い、多層構造として用いることが可能である。
【実施例】
【0084】
以下、本発明について実施例及び比較例を用いて説明する。実施例及び比較例で使用したポリプロピレン樹脂及びフィラーを下記に示す。
【0085】
(1)ポリプロピレン樹脂
(A)プロピレン単独重合体
特開平10−2123219号公報に記載の触媒を用い、気相重合法によって、重合反応器内の水素濃度と、重合温度を制御することによって、プロピレン単独重合体(A)を得た。物性値は下記のとおりである。
MFR(230℃、2.16kg荷重):7.8g/10分
アイソタクチック・ペンタッド分率:0.977
融点:165℃
結晶化温度:122℃
【0086】
(2)フィラー(B)
(B−1)タルク
(商品名)HAR W92:Imerys製
D50(L):11μm
D50(S):2.5μm
【0087】
(B−2)タルク
タルク粉末:林化成製
D50(L):4.6μm
D50(S):3.5μm
【0088】
(B−3)雲母
(商品名)600W:クラレ製
D50(L):14μm
D50(S):4.3μm
【0089】
(B−4)雲母
(商品名)A-21S:ヤマグチマイカ製
D50(L):22μm
D50(S):6.9μm
【0090】
(B−5)雲母
(商品名)C−100:Repco製
D50(L):64μm
D50(S):23μm
【0091】
原料成分及び成形体の物性は下記に示した方法に従って測定した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−7210に規定された方法に従って、測定した。測定温度230℃で、荷重2.16kgで測定した。
【0092】
(2)アイソタクチック・ペンタッド分率([mmmm])
直径10mmの試験管の中で、約200mgの樹脂サンプルを3mlのオルトジクロロベンゼンに均一に溶解させて試料を調整し、その試料の13C−NMRのスペクトルの測定を行った。13C−NMRのスペクトルの測定条件を以下に示す。
<測定条件>
機種:Bruker Avance600
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
測定結果から、A.Zambelliらの報告(Macromolecules,1973年,6号,925項から926項)に記載の方法に従って、[mmmm]を計算した。
【0093】
(3)融点(Tm、単位:℃)および、結晶化温度(Tc、単位:℃)
ポリプロピレン樹脂を熱プレス成形(230℃で5分間予熱後、1分間かけて5.0MPaまで昇圧し2分間保圧し、次いで、30℃、5.0MPaで5分間冷却)して、厚さ0.5mmのシートを作成した。示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、Diamond DSC)を用い、測定した。測定条件を以下に記す。
<測定条件>
作製されたシートの10mgを窒素雰囲気下220℃で5分間熱処理後、降温速度5℃/分で50℃まで冷却し、次いで、50℃において1分間保温した後、50℃から180℃まで昇温速度5℃/分で加熱した。
<TmとTcの算出法>
DSCの昇温時に得られるDSC曲線において、最も高温側の吸熱ピークのピークトップ温度をTm[℃]とし、降温時のDSC曲線において最も高温側の発熱ピークにピークトップ温度をTc[℃]とした。
【0094】
(8)レーザー回折法によるメディアン径D50(L)
レーザー回折法によるメディアン径D50(L)は、ホモジナイザを用いてエタノール中に分散させた試料に、マイクロトラック粒度分析計(日機装株式会社製「MT−3300EX II)を用いてレーザー光を照射し、JIS R1629に従って測定し、得られた粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値より求めた。
【0095】
(4)遠心沈降法によるメディアン径D50(S)
遠心沈降法によるメディアン径D50(S)は、超音波洗浄装置を用いてエタノール中に分散させた試料を、遠心沈降式粒度分布測定装置(島津製作所株式会社製「SA−CP3」)を用いて、JIS R1619従って測定し、得られた粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値より求められた。
【0096】
(4)広角X線散乱
成形体の広角X線散乱を以下の条件で測定した。
<測定条件>
機種 :リガク製 ultraX18
X線源:CuKα線
電圧 :40kV
電流 :200mA
検出器:X線光子計数型2次元検出器PILATUS
測定法:透過法
<測定方法>
(1)成形体を製造した時に加熱圧縮によって樹脂が流動した方向の第一の軸と、これに直交する前記成形体の厚み方向の第二の軸との両方を含む平面に平行に前記成形体を切断して、切断面を形成した。(2)前記切断面における前記成形体の両表面から等距離の深さ位置にX線を照射して広角X線散乱プロファイルを測定した。
【0097】
<成形体に含まれるポリプロピレン樹脂の結晶配向度測定>
以下の方法を用いてポリプロピレン樹脂の結晶配向度を評価した。
(1)上記測定によって得られた広角X線散乱プロファイルを用いて、ポリプロピレン樹脂のα晶の(040)面に由来する方位角強度分布を求めた。
(2)得られた方位角強度分布から、ピーク位置における半値幅を求め、下記の式により結晶配向度を求めた。

結晶配向度(%)={(180−hw040)/180}×100
(式中、hw040は、ポリプロピレン樹脂の(040)面の方位角強度分布における半値幅(単位:度)を表す。)
【0098】
<成形体に含まれるフィラーの配向度測定>
以下の方法を用いてフィラーの配向度を評価した。
(1)上記測定によって得られた広角X線散乱プロファイルを用いて、フィラーの厚み方向に垂直な格子面に由来する方位角強度分布を求めた。
(2)得られた方位角強度分布から、ピーク位置における半値幅を求め、下記の式によりフィラーの配向度を求めた。

配向度(%)={(180−hwd)/180}×100
(式中、hwdは、フィラーの厚み方向に垂直な格子面の方位角強度分布における半値幅(単位:度)を表す。)
【0099】
(4)平均線膨張係数
成形体の樹脂の流れ方向にそって10mmの長さの試験片を切り出し、−20℃から80℃の温度範囲における線膨張係数をTMA−40(島津製作所製)にて測定した。この値が小さいほど、寸法安定性に優れる。
【0100】
(5)曲げ弾性率(単位:MPa)
成形体から幅12.8mm、長さ80mmの大きさの試験片を切り出して測定に用いた。測定条件はJIS−K−7171に従い、23℃における曲げ弾性率を測定した。
【0101】
(6)常温アイゾット衝撃強度(単位:kJ/m
成形体から幅12.8mm、長さ63.5mmの大きさの試験片を切り出して測定に用いた。測定条件はJIS−K−7110に従い、23℃におけるアイゾット衝撃強度を測定した。
【0102】
(7)低温アイゾット衝撃強度(単位:kJ/m
成形体から幅12.8mm、長さ63.5mmの大きさの試験片を切り出して測定に用いた。測定条件はJIS−K−7110に従い、−30℃におけるアイゾット衝撃強度を測定した。
【0103】
(実施例1)
(ポリプロピレン樹脂組成物の作製)
ポリプロピレン重合体(A)及びフィラー(B−1)の配合割合を表1に示す。 これらを均一に予備混合した後、15mm二軸押出機KZW15−45MG(テクノベル製)を用いて、シリンダ設定温度:220℃、スクリュー回転数:5100rpm、押出量:約4kg/時間の条件で、加熱溶融混練して、ポリプロピレン樹脂組成物を製造した。
(成形前駆体の作製)
上記ポリプロピレン樹脂組成物を、東洋機械金属製SI30III型射出成形機を用い、成形温度220℃、金型温度50℃で射出成形を行い、50mm×50mm×3mmの成形前駆体を得た。
(成形体の作製)
上記成形前駆体を上下に4枚重ねたものを、プレス板の設定を160℃とした熱プレス成形機中に入れて、100tまで昇圧し5分間保圧し、圧力を維持したまま80℃まで冷却した後に脱圧し、厚さ2mmのシート状の成形体1を得た。シート状成形体の物性を表1に示した。
得られた成形体の物性を下記表2に示す。
【0104】
(実施例2)
成形体作製時において、成形前駆体を8枚重ねて加熱圧縮した以外は、実施例1に記載の方法と同じ方法で成形体2を作製した。得られた成形体の物性を下記表2に示す。
【0105】
(実施例3)
フィラーとして雲母(B−3)を用いた(含有量を表1に示す)こと以外は、実施例1に記載の方法と同じ方法で成形体3を得た。得られた成形体の物性を下記表2に示す。
【0106】
(実施例4)
フィラーとして雲母(B−4)を用いたこと(含有量を表1に示す)以外は、実施例1に記載の方法と同じ方法で成形体4を得た。得られた成形体の物性を下記表2に示す。
【0107】
(比較例1)
フィラーとしてタルク(B−2)を用いたこと(含有量を表1に示す)以外は、実施例1に記載の方法と同じ方法で成形体5を得た。得られた成形体の物性を下記表2に示す。
【0108】
(比較例2)
フィラーとしてタルク(B−5)を用いたこと(含有量を表1に示す)以外は、実施例1に記載の方法と同じ方法で成形体6を得た。得られた成形体の物性を下記表2に示す。
(比較例3)
実施例1で作製したポリプロピレン樹脂組成物を、厚み2mmで枠形状を有するスペーサーの枠内に入れ、スペーサーとポリプロピレン樹脂組成物をスペーサーよりも大きい0.5mm厚のアルミニウム板でサンドウィッチにして挟み、それをさらにアルミニウム板より大きい2mm厚のステンレス板ではさんだものを、プレス板の設定を230℃とした熱プレス成形機中に入れ、5分間予熱後、10MPaまで昇圧し5分間保圧した後、30℃、30MPaで5分間冷却して、厚さ2mmの成形体7を作製した。得られた成形体の物性を下記表2に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】