特許第6337553号(P6337553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特許6337553電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置
<>
  • 特許6337553-電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置 図000022
  • 特許6337553-電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337553
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/05 20060101AFI20180528BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   G03G5/05 101
   G03G5/06 312
【請求項の数】5
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-60710(P2014-60710)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2014-209221(P2014-209221A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2017年1月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-62624(P2013-62624)
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鴇 聖史
(72)【発明者】
【氏名】熊野 勇太
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−096929(JP,A)
【文献】 特開2012−226275(JP,A)
【文献】 特開平05−307268(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0216620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/05−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が、カ
ルボン酸末端値が100μ当量/g以上、500μ当量/g以下であるポリアリレート樹脂及びト
リフェニルアミン化合物を含有し、前記ポリアリレート樹脂が、下記式(1)で表される
構造単位を有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

(式(1)中、Ar〜Arはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン
基を表し、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す。sは0以上2以
下の整数を表す。Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す。)
【請求項2】
前記カルボン酸末端値が、150μ当量/g以上、500μ当量/g以下であることを特徴と
する請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記ポリアリレート樹脂の粘度平均分子量Mvが10000〜200000であることを特徴とする
請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させ
る帯電手段とを備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させ
る帯電手段と、帯電した該電子写真感光体に対し露光を行ない静電潜像を形成する露光手
段と、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段と、前記トナーを被転写体に転写する転
写手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置に関する。特に、感光層の接着性に関して著しく優れる電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は、即時的に高品質の画像が得られることなどから、複写機、プリンター、印刷機として広く使われている。電子写真技術の中核となる電子写真感光体(以下適宜「感光体」という)については、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電物質を使用した感光体が広く使用されている。
近年、高画質化の要求により、トナーの小径化が進み、中でもケミカルトナーにおいては形状が球に近い形態となることが多いため、感光体上に残ったトナーをブレードによりクリーニングする際にすり抜けが発生し易く、その結果地汚れ等の画像欠陥となる可能性が高くなっている。そのため、クリーニングブレードを強い圧力で感光体に当接し、トナーのすり抜けを防止する対策が取られることが多くなっている。
【0003】
クリーニングブレードの感光体への当接圧が大きくなると、ブレードが感光体最表面とくっつき/滑りを繰り返す、いわゆるスティック・スリップ現象によるビビリを生じ、その結果、クリーニング不良や、異音を発生するリスクが高くなる。また、トナー成分である外添剤やトナーキャリアがクリーニングブレードにニップ部を介して感光体に強く押し当てられた状態で回転することにより、感光層の摩耗の増大による感光体寿命の低下や、周方向傷の発生による画像欠陥も発生し易くなる。また、感光体表面にトナーの成分である外添剤やワックス等が固着し、除去が困難になる、いわゆるフィルミング現象も発生し易くなり、持続的な画像欠陥となるリスクも高くなってくる。
【0004】
このように、感光体に対してはより厳しい使用条件下でも画像欠陥や異音、寿命の低減を最小限にするような表面機械物性を有することが求められる。表面機械物性を改良する手段として、感光体の最表層に保護層を設けることが検討されているものの、生産性が低下し、コスト高となるため、一部のハイエンド機用途以外は、適用が難しいケースが多い。一方、感光体の最表層にポリエステル樹脂、中でも高い弾性変形率を有するポリアリレート樹脂(全芳香族系ポリエステル樹脂)を使用することが、上記のような厳しい機械物性の改良要求に応えられる手段として実用化されている。
【0005】
例えば、商品名「U−ポリマー」として市販されているポリアリレート樹脂をバインダーとして用いた電子写真感光体は、ポリカーボネートを用いる場合と比較して感度が向上することが報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、この樹脂を溶解して調製した塗布液の安定性が低く、塗布製造が困難な場合がある。この問題に対し、特定構造の2価フェノール成分を用いたポリエステル樹脂をバインダー樹脂とすることで、電子写真感光体を製造する際に用いる塗布溶液の安定性の向上、及び電子写真感光体の機械的強度、耐摩耗性の改良が報告されている(特許文献2〜特許文献4参照)。更に、ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分にジフェニルエーテルジカルボン酸成分を用いることで、感光体の機械的強度が一段と向上することが報告されている(特許文献5、特許文献6参照)。しかしながら、ポリアリレート系樹脂はポリカーボネート系樹脂と比較して、分子の極性が大きく、電荷輸送能が相対的に劣る問題があった。
【0006】
一方、ポリオレフィン等の樹脂では、カルボキシル基を導入することにより接着性が向上することは一般に知られているが(特許文献7)、極性基の多い樹脂を感光層に用いるこ
とは電子写真感光体の電気特性に悪影響があるため、極性基はなるべく減らすことが求められてきた(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭56−135844号公報
【特許文献2】特開平3−6567号公報
【特許文献3】特開平9−22126号公報
【特許文献4】特開2004−294750号公報
【特許文献5】特開2006−53549号公報
【特許文献6】特開2008−293006号公報
【特許文献7】特開平7−206946号公報
【特許文献8】特許3621169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らの検討によれば、ポリアリレート樹脂を感光層に含有すると耐摩耗性に向上は見られるが、感光層の収縮が大きくなるため、内部応力が大きくなり、感光層の密着性において充分な性能が得られない場合があり、基板や隣接層との接着性が不充分な際に、層の剥離が発生するという問題があった。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、感光体の特性に影響することなく感光層の接着性が著しく良好に保たれ、電気特性が良好な電子写真感光体を提供すること、また該電子写真感光体を用いたプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、感光層に特定のカルボン酸末端量を持つ樹脂を含有する電子写真感光体
によって、著しく接着性が改善できることを見出した。即ち本発明の要旨は以下に存する

<1>導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が
、カルボン酸末端値が100μ当量/g以上、500μ当量/g以下であるポリアリレート樹脂及
びトリフェニルアミン化合物を含有し、前記ポリアリレート樹脂が、下記式(1)で表さ
れる構造単位を有することを特徴とする電子写真感光体。
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、Ar〜Arはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基
を表し、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す。sは0以上2以下
の整数を表す。Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す。)
<2>前記カルボン酸末端値が、150μ当量/g以上、500μ当量/g以下であることを特
徴とする<1>に記載の電子写真感光体。
>前記ポリアリレート樹脂の粘度平均分子量Mvが10000〜200000であることを特徴
とする<1>又は<2>に記載の電子写真感光体。
><1>〜<>のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯
電させる帯電手段とを備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
><1>〜<>のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯
電させる帯電手段と、帯電した該電子写真感光体に対し露光を行ない静電潜像を形成する
露光手段と、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段と、前記トナーを被転写体に転写
する転写手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子写真感光体は、電荷輸送層に特定のカルボン酸末端量を持つ樹脂を含有することにより、感光層の接着性を著しく良好にできるものであり、該電子写真感光体を備える電子写真プロセスカートリッジ、及び該電子写真感光体を備える画像形成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。
図2】実施例で用いたオキシチタニウムフタロシアニンのCuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更して実施することができる。
【0015】
[電子写真感光体]
以下、本発明の電子写真感光体について詳述する。
<導電性支持体>
感光体に用いる導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。金属材料の導電性支持体に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のために。適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものでもよい。
【0016】
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100―300g/l、溶存アルミニウム濃度は2−15g/l、液温は15−30℃、電解電圧は10−20V、電流密度は0.5−2A/dmの範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行うことは好ましい。封孔処理は、通常の方法でよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
【0017】
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3−6g/lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をス
ムーズに進めるために、処理温度としては、25−40℃、好ましくは30−35℃で、また、フッ化ニッケル水溶液のpHは、4.5−6.5、好ましくは5.5−6.0の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることが出来る。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1−3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
【0018】
前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることが出来るが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5−20g/lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は80−100℃、好ましくは90−98℃で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0−6.0の範囲で処理するのが好ましい。ここでpH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることが出来る。処理時間は10分以上、好ましくは20分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。
【0019】
次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
【0020】
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム基体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な基体が得られるので好ましい。
【0021】
<下引き層>
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。
下引き層に用いられる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素含む金属酸化物粒子が挙げられる。1種類の粒子のみを用いていてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることが出来る。また、複数の結晶状態のものが含有されていてもよい。
【0022】
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径としては10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましいのは、10nm以上50nm以下である。この平均一次粒径は、TEM写真等か
ら得ることができる。
【0023】
下引き層は、前記金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤などの公知の結着樹脂を用いることが出来る。これらは単独、もしくは硬化剤とともに硬化した形で使用できる。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。
【0024】
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する無機粒子の添加比は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、バインダー樹脂に対して、通常は10質量%以上、500質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、電子写真感光体の電気特性、強露光特性、画像特性、繰り返し特性、及び製造時の塗布性を向上させる観点から、通常は0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常30μm以下、好ましくは20μm以下である。下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合しても良い。また、下引き層は、画像欠陥防止などを目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させ用いてもよい。
【0025】
<感光層>
感光層は、上述の導電性支持体上に(前述の下引き層を設けた場合は下引き層上に)形成される。感光層は、本願で規定するポリアリレートを含有する層であり、その型式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質(本願で規定する電荷輸送物質を含む)とが同一層に存在し、それらがバインダー樹脂中に分散した単層構造のもの(以下適宜、「単層型感光層」という。)と、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送物質(本願で規定する電荷輸送物質を含む)がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層を含む、二層以上の層からなる積層構造の機能分離型のもの(以下適宜、「積層型感光層」という)が挙げられるが、何れの形態であってもよい。
【0026】
また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に導電性支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
【0027】
<機能分離型感光層>
<電荷発生層>
積層型感光層(機能分離型感光層)の電荷発生層は、電荷発生材料を含有すると共に、通常はバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷発生層は、例えば、電荷発生材料の微粒子及びバインダー樹脂を溶媒又は分散媒に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)、また、逆積層型感光層の場合には電荷輸送層上に塗布、乾燥して得ることができる。
【0028】
<電荷発生物質>
電荷発生物質は単独として用いてもよいし、又はいくつかの染顔料との混合状態で用いてもよい。
電荷発生物質としては、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム等の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、中でも特に有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、混合状態として用いる染顔料としては、光感度の面から、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種のバインダー樹脂で結着した分散層の形で使用する。
【0029】
電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン及び金属含有フタロシアニンが使用される。金属含有フタロシアニンの具体的な例としては、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるA型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型,I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
【0030】
なお、これらのフタロシアニンのうち、A型(β型)、B型(α型)、D型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。特に、オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる明瞭な回折ピークを有するものが好ましい。
【0031】
また、該オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°〜9.7°に、明瞭な回折ピークを有することが好ましく、電子写真感光体特性に面から、9.6°、24.1°、27.2°、又は9.5°、9.7°、24.1°、27.2°に主たる回折ピークを有することが好ましく、分散時の安定性の面からは26.2°付近にはピークを有さないことが好ましい。上述したオキシチタニウムフタロシアニンのなかでも、7.3°、9.6°、11.6°、14.2°、18.0°、24.1°及び27.2°、又は7.3°、9.5°、9.7°、11.6°、14.2°、18.0°、24.2°及び27.2°に主たる回折ピークを有することがより好ましい。
【0032】
電荷発生物質として、無金属フタロシアニン化合物、又は金属含有フタロシアニン化合物を用いた場合は比較的長波長のレーザー光、例えば、780nm近辺の波長を有するレーザー光に対して高感度の感光体が得られる。また、モノアゾ、ジアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料を用いた場合には、白色光、又は660nm近辺の波長を有するレーザー光、もしくは比較的短波長のレーザー光(例えば、380nm〜500nmの範囲の波長を有するレーザー光)に対して十分な感度を有する感光体を得ることができる。
【0033】
フタロシアニン化合物は単一の化合物のものを用いてもよいし、幾つかの混合又は混晶
状態のものを用いてもよい。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態における混合状態としては、それぞれの構成要素を後から混合したものを用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に磨砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
【0034】
機能分離型感光体における電荷発生層に用いられる結着樹脂の例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーの中から選択し、用いることが出来るが、これらポリマーに限定されるものではない。また、これら結着樹脂は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
機能分離型感光体における電荷発生層は、具体的に、上述のバインダー樹脂を有機溶剤に、電荷発生物質を分散させて塗布液を調整し、これを導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布することにより形成される。
【0035】
バインダー樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒、分散媒としては例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状、及び環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2―ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状、及び環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水などが挙げられ、前述の下引き層を溶解しないものが好ましく用いられる。またこれらは単独、又は2種以上を併用しても用いることが可能である。
【0036】
機能分離型感光体の電荷発生層において、前記結着樹脂と電荷発生物質との配合比(質量)は、バインダー樹脂100質量部に対して10から1000質量部、好ましくは30から500質量部の範囲であり、その膜厚は通常0.1μmから10μm、好ましくは0.15μmから0.6μmである。電荷発生物質の比率が高過ぎると、電荷発生物質の凝
集等により塗布液の安定性が低下する虞がある。一方、電荷発生物質の比率が低過ぎると、感光体としての感度の低下を招く虞がある。
【0037】
前記電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散方法を用いることが出来る。この際粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の粒子サイズに微細化することが有効である。
【0038】
<電荷輸送層>
<バインダー樹脂>
電荷発生層と電荷輸送層を有する機能分離型感光体の電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層形成の際は、膜強度確保のためバインダー樹脂が使用される。機能分離型感光体の電荷輸送層の場合、電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液、また、単層型感光体の場合、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂を溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることが出来る。本発明で用いられるバインダー樹脂は、カルボン酸末端値が100μ当量/g以上、500μ当量/g以下であるポリアリレート樹脂を含有する。
【0039】
カルボン酸末端値としては小さすぎると接着性の効果が少ないため、100μ当量/g以
上であり、150μ当量/g以上が好ましい。大きすぎるとバインダーに必要な強度を持た
せるために十分な分子量の樹脂を合成することが困難になるため、500μ当量/g以下で
あり、300μ当量/g以下が好ましい。
カルボン酸末端値は、精秤したポリアリレート樹脂をベンジルアルコールに加熱溶解し、0.01N−NaOHベンジルアルコール溶液で滴定することにより定量することができる。本発明におけるカルボン酸末端値は実施例に記載の<カルボン酸(−COOH)末端値の測定方法>で測定される値であり、この中には樹脂中の残存モノマー等の酸成分も含まれる可能性があるが、それらも含めてカルボン酸末端値と定義する。
【0040】
遊離の残存モノマーの含有量は液体クロマトグラフやガスクロマトグラフ等の手法で分析することができるが、通常の手法で製造したポリアリレート樹脂では、カルボン酸末端値に対して残存モノマーによる酸成分は十分に少ないのでカルボン酸末端値としては無視することができる。
カルボン酸末端値の100μ当量/g以上500μ当量/g以下のポリアリレート樹脂を得る
方法としては、ビスフェノール成分と酸ハライド成分を基質として重合反応する場合には、後述する製造方法の例において、(A)〜(D)のいずれかを満たすことが挙げられる。(A)酸ハライド成分/フェノール成分のモル比を1.03〜1.10として酸ハライド成分を過剰に用いること、(B)触媒をビスフェノール成分の3モル%〜8モル%として過剰に用いること、(C)30〜40度以下の温度条件で重合すること、(D)末端停止剤として4-ヒドロキシ安息香酸のようなカルボキシル基を持った1価フェノールを用
いること等が挙げられる。
【0041】
この中でも(A)酸ハライド成分を過剰に用いる方法が、比較的簡便な方法であり、他の手法に比べて電気特性に影響を与える成分が生成する副反応がおこる可能性が小さいので好ましい。
界面重合法による製造の場合は、例えば、2価フェノール化合物をアルカリ水溶液に溶解した溶液と、芳香族ジカルボン酸クロライド化合物を溶解したハロゲン化炭化水素の溶液とを混合する。この際、触媒として、4級アンモニウム塩もしくは4級ホスホニウム塩を存在させることも可能である。重合温度は0℃〜40℃の範囲、重合時間は2時間〜20時間の範囲であるのが生産性の点で好ましい。重合終了後、水相と有機相とを分離し、有機相中に溶解しているポリマーを公知の方法で、洗浄、回収することにより、目的とす
る樹脂が得られる。
【0042】
界面重合法で用いられるアルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等を挙げることができる。アルカリ成分の使用量としては、反応系中に含まれるフェノール性水酸基の1.01倍当量〜3倍当量の範囲が好ましい。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0043】
触媒として用いられる4級アンモニウム塩もしくは4級ホスホニウム塩としては、例えば、トリブチルアミンやトリオクチルアミン等の3級アルキルアミンの塩酸、臭素酸、ヨウ素酸等の塩;ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリエチルオクタデシルホスホニウムブロマイド、N−ラウリルピリジニウムクロライド、ラウリルピコリニウムクロライド等が挙げられる。
【0044】
また、界面重合法では、分子量調節剤を使用することができる。分子量調節剤としては、例えば、フェノール、o,m,p−クレゾール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−プロピルフェノール、o,m,p−(tert−ブチル)フェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体、2−メチルフェノール誘導体等のアルキルフェノール類;o,m,p−フェニルフェノール等の1官能性のフェノール;酢酸クロライド、酪酸クロライド、オクチル酸クロライド、塩化ベンゾイル、ベンゼンスルホニルクロライド、ベンゼンスルフィニルクロライド、スルフィニルクロライド、ベンゼンホスホニルクロライドやそれらの置換体等の1官能性酸ハロゲン化物等が挙げられる。これら分子量調節剤の中でも、分子量調節能が高く、かつ溶液安定性の点で好ましいのは、o,m,p−(tert−ブチル)フェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体、2−メチルフェノール誘導体である。特に好ましくは、p−(tert−ブチル)フェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノールである。
【0045】
また、2価フェノールをアルカリ溶液中で酸化させないために、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト(次亜硫酸ナトリウム)、二酸化硫黄、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、酸化防止の効果及び環境負荷の低減からもハイドロサルファイトが特に好ましい。酸化防止剤の使用量としては、全2価フェノールに対して、0.01質量%以上、10.0質量%以下が好ましい。更に好ましくは0.1質量%以上、5質量%以下である。含有量が少なすぎると酸化防止効果が不十分の可能性があり、多すぎるとポリエステル中に残存してしまい電気特性に悪影響する場合がある。
【0046】
ポリエステル樹脂の重合後の精製方法は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の方法を用いることができるが、例えば、ポリエステル樹脂の溶液を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液;塩酸、硝酸、リン酸等の酸水溶液;水等で洗浄した後、静置分離、遠心分離等により分液する方法が挙げられる。
また他の精製方法としては、例えば、生成したポリエステル樹脂の溶液を、ポリエステル樹脂が不溶の溶媒中に析出させる方法、ポリエステル樹脂の溶液を温水中に分散させ溶媒を留去する方法、又はポリエステル樹脂溶液を吸着カラム等に流通させる方法等により精製してもよい。
【0047】
精製後のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂が不溶の水、アルコールその他有機溶媒中に析出させるか、ポリエステル樹脂の溶液を温水又はポリエステル樹脂が不溶の分散媒中で溶媒を留去するか、加熱、減圧等により溶媒を留去することにより取り出してもよいし、スラリー状で取り出した場合は遠心分離器、濾過器とうにより固体を取り出すこともできる。
【0048】
得られたポリエステル樹脂は、通常ポリエステル樹脂の分解温度以下の温度で乾燥するが、好ましくは20℃以上、樹脂の溶融温度以下で乾燥することができる。このとき減圧下で乾燥することが好ましい。
乾燥時間は残存溶媒等の不純物の純度が一定以下になるまでの時間以上行うことが好ましく、具体的には、残存溶媒が通常1000ppm以下、好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下になる時間以上乾燥する。
【0049】
また、本発明中のポリエステル樹脂に含まれる遊離の2価カルボン酸量は、その量は特に限定されないが、50ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましい。遊離の2価カルボン酸含有量が50ppmを超える場合、感光体の電気特性が悪化したり、画像評価に現れる異物となったりする場合がある。感光体の電気特性・画像特性の観点からは、遊離の2価カルボン酸量は少ないほどよいが、ポリエステル樹脂の安定性の観点からは、0.01ppm以上であることが好ましく、0.1ppm以上であることが特に好ましい。
【0050】
更に、本発明中のポリエステル樹脂に含有される遊離の2価フェノールについては、その量は特に限定されないが、感光体の電気特性の観点からは、100ppm以下が好ましく、50ppm以下が更に好ましい。製造の簡便性からは、0.001ppm以上が好ましく、0.01ppm以上が更に好ましい。
ポリアリレート樹脂の粘度平均分子量Mvは、特に限定されないが、下限は通常10,000以上、好ましくは15,000以上、更に好ましくは40,000以上であり、上限は、通常200,000以下、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下である。粘度平均分子量が過度に小さいと、感光層の機械的強度が低下し実用的ではない。また、粘度平均分子量が過度に大きいと、感光層を適当な膜厚に塗布形成する事が困難である。
【0051】
感光層に含まれるポリアリレート樹脂の構造としては、下記一般式(1)で表される構造単位を含むものが好ましい。公知の方法により、例えば二価ヒドロキシアリール成分とジカルボン酸成分とを重合することにより製造することができる。
【0052】
【化2】
【0053】
(式(1)中、Ar〜Arはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す。sは0以上2以
下の整数を表す。Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す。)
上記式(1)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリーレン基を表す。アリーレン基が有する炭素数としては、通常6以上であり、また、その上限は、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは6である。炭素数が多すぎる場
合、製造コストが高くなり、電気特性も悪化する恐れがある。
【0054】
Ar〜Arの具体例としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。中でも、アリーレン基としては、電気特性の観点から、1,4−フェニレン基が好ましい。アリーレン基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0055】
また、Ar〜Arの置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、アルコキシ基等が挙げられる。中でも、感光層用のバインダー樹脂としての機械的特性と感光層形成用塗布液に対する溶解性とを勘案すれば、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、ハロゲン基としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましい。なお、置換基がアルキル基である場合、そのアルキル基の炭素数は通常1以上、また、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは2以下である。
【0056】
より詳しくは、Ar及びArは、それぞれ独立に置換基の数は0以上2以下が好ましく、接着性の観点から置換基を有することがより好ましく、中でも、耐磨耗性の観点から置換基の数は1個であることが特に好ましい。また、置換基としてはアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
一方、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基の数は0以上2以下が好ましく、耐磨耗性の観点から置換基を有さないことがより好ましい。
【0057】
また、上記式(1)において、Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基である。アルキレン基としては、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、シクロヘキシレンが好ましく、より好ましくは、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、シクロヘキシレンであり、特に好ましくは−CH−、−CH(CH)−である。
【0058】
また、上記式(1)において、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基であって、中でも、Xは、酸素原子であることが、カルボン酸末端の酸性が弱くなるため、電気特性への影響が小さくなるので好ましい。その際、sは0か1であることが原料の入手がしやすいために好ましく、感光体の耐久性のためには1であることが好ましい。
sが1の場合に好ましいジカルボン酸残基の具体的としては、ジフェニルエーテル−2,2'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,3'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,4'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−3,3'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−3,4'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸残基等が挙げられる。これらの中でも、ジカルボン酸成分の製造の簡便性を考慮すれば、ジフェニルエーテル−2,2'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル
−2,4'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸残基がより好ましく、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸残基が特に好ましい。
【0059】
sが0の場合のジカルボン酸残基の具体例としては、フタル酸残基、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基、トルエン−2,5−ジカルボン酸残基、p−キシレン−2,5−ジカルボン酸残基、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸残基、ビフェニル−2,2'−ジカルボ
ン酸残基、ビフェニル−4,4'−ジカルボン酸残基が挙げられ、好ましくは、フタル酸
残基、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸残基、ビフェニル−2,2'−ジカルボン酸残基、ビ
フェニル−4,4'−ジカルボン酸残基であり、特に好ましくは、イソフタル酸残基、テ
レフタル酸残基であり、これらのジカルボン酸残基を複数組み合わせて用いることも可能である。好ましい具体例としては、下記式(3)、(4)で表される構造単位を有するポリアリレート樹脂が挙げられる。式(3)、(4)中、イソフタル酸残基とテレフタル酸残基の比率は通常50:50であるが、任意に変更することができる。その場合、テレフタル酸残基の比率が高い程、電気特性の観点からは好ましい。
【0060】
【化3】
【0061】
なお、式(1)の繰り返し構造と他の繰り返し構造とを有する場合、式(1)の繰り返し構造が、繰り返しユニットの個数として70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。特に好ましくは、式(1)の繰り返し構造のみを有する場合、すなわち、本発明を構成する繰り返し構造が、繰り返しユニットの個数として100%である場合である。
ポリアリレート樹脂が有する構造単位として好ましいものは、以下に記載するものが挙げられる。ポリアリレート樹脂が有しうる構造単位は、以下に記載する構造に限定されない。また、下記構造の1種を単独で含んでもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで含んでもよい。
・kが0の場合の繰返し構造
【0062】
【化4】
【0063】
・kが1の場合の繰り返し構造
【0064】
【化5】
【0065】
<電荷輸送物質>
電荷輸送物質としては、トリフェニルアミン化合物を感光層(電荷輸送層)に含有する。トリフェニルアミン化合物が、化学的に安定であるので本発明のポリアリレート樹脂のカルボン酸末端の影響を受けずに電荷輸送能を発揮できる。トリフェニルアミン構造を含む化合物であれば、特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルボン酸末端の影響を受けにくいことからカルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
【0066】
電荷輸送物質の好適な具体例を以下に示す。下記の化合物において、Rは同一でも、それぞれ異なっていてもよい。具体的には、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アリールアルキル等が好ましい。特に好ましくは、メチル基、エチル基又はベンジル基である。また、nは0以上2以下の整数である。
なお、以下の例示物は、電荷輸送物質の具体例であり、その他の電荷輸送物質は以下のものに限定されない。
【0067】
【化6】
【0068】
【化7】
【0069】
電荷輸送物質としては移動度の観点から以下の化合物が好ましい。π共役系が広がっていることにより、高い電子輸送能を有し、特に本願のポリアリレート樹脂と組合せることにより電気特性と接着性の両立をした感光体を得ることができる。
【0070】
【化8】
【0071】
【化9】
【0072】
バインダー樹脂と電荷輸送物質の割合は、単層型、積層型共に、通常、バインダー樹脂100質量部に対して20質量部以上、残留電位低減の観点から30質量部以上が好ましく、更に繰り返し使用時の安定性、電荷移動度の観点から、40質量部以上がより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は150質量部以下、更に電荷輸送物質とバインダー樹脂の相溶性の観点からは好ましくは100質量部以下、更に耐刷性の観点からは70質量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは50質量部以下が特に好ましい。特に電荷輸送物質が50質量部以下の場合には、感光層の収縮が顕著になり感光層が浮き上がりやすくなる。また、感光層表面もより平面となるためアンカー効果も得られないため、接着性が悪化しやすく、本願のポリアリレート樹脂と組合せることにより接着性の悪化が起因する電気特性の不良などを抑制することができる。
【0073】
積層型感光体の場合、電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、一方、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更に好ましくは30μm以下の範囲とする。
【0074】
<単層型感光層>
単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質に加えて、機能分離型感光体の電荷輸送層と同様に、バインダー樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作成し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることが出来る。
電荷輸送物質及びバインダー樹脂の種類並びにこれらの使用比率は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂からなる電荷輸送媒体中に、更に電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質は、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用できる。但し、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を十分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
【0075】
単層型感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少な過ぎると十分な感度が得られない一方で、多過ぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があることから、単層型感光層全体に対して、通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常50質量%以下、好ましくは20質量%以下の範囲で使用される。
また、単層型感光層におけるバインダー樹脂と電荷発生物質との使用比率は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質が通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、通常30質量部以下、好ましくは10質量部以下の範囲とする。
【0076】
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。
なお、積層型感光体、単層型感光体ともに、感光層又はそれを構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させる目的で、周知の酸化
防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤などを含有させてもよい。
【0077】
<その他の機能層>
積層型、あるいは単層型感光体では、その最表層に、感光層の損耗を防止し、帯電器等からの発生する放電物質等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けてもよい。保護層は導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることが出来る。
【0078】
保護層に用いる導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物などを用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
保護層に用いる結着樹脂としてはポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることも出来る。本願の感光層におけるポリアリレート樹脂は、接着性が良好なため熱可塑性のポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリカーボネート樹脂を用いることができる。
保護層の電気抵抗は、通常10Ω・cm以上、1014Ω・cm以下の範囲とする。電気抵抗が該範囲より高くなると、残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまう一方、前記範囲より低くなると、画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層は像露光の際に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
【0079】
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂等、又はこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含有させても良い。或いは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成しても良い。
【0080】
<各層の形成方法>
上記した感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、導電性支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
【0081】
塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒に特に制限は無いが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の組み合わせ及び種類で併用してもよい。
【0082】
溶媒又は分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
例えば、単層型感光体、及び機能分離型感光体の電荷輸送層の場合には、塗布液の固形分濃度を通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、また、通常40質量%以下、好ましくは35質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を使用時の温度において通常10mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、また、通常500mPa・s以下、好ましくは400mPa・s以下の範囲とする。
【0083】
また、積層型感光体の電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度は、使用時の温度において、通常0.01mPa・s以上、好ましくは0.1mPa・s以上、また、通常20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下の範囲とする。
【0084】
これらの感光体を構成する各層は、前記方法により得られた塗布液を、支持体上に公知の塗布方法を用い、各層ごとに塗布・乾燥工程を繰り返し、順次塗布していくことにより形成される。塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
【0085】
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行っても良い。
【0086】
[画像形成装置]
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0087】
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1,帯電装置2,露光装置3及び現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5,クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0088】
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。帯電装置としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。直接帯電手段の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器などが挙げられる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。直接帯電手段として、気中放電を伴う帯電、あるいは気中放電を伴わない注入帯電いずれも可能である。また、帯電時に印可する電圧としては、直流電圧だけの場合、及び直流に交流を重畳さ
せて用いることもできる。
【0089】
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。これらの中で380〜500nmの短波長光を用いると解像度が高くなり好ましい。中でも405nmの単色光が好適である。
【0090】
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0091】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケルなどの金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0092】
規制部材45は、シリコン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
【0093】
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
【0094】
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、
感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
【0095】
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0096】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
【0097】
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
【0098】
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
【0099】
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
【0100】
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写
真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
【実施例】
【0101】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
製造例1(樹脂A1)
1000mLビーカーに水酸化ナトリウム19.84gと水940mLを量り取り、攪拌しながら溶解させた。そこに1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン48.72gを添加、攪拌、溶解した後、このアルカリ水溶液を2L反応槽に移した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5409g及び2,3,5−トリメチルフェノール1.4539gを順次反応槽に添加した。別途、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロライド65.92gとジクロロメタン470mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。重合槽の外温を20℃に保ち、反応槽内のアルカリ水溶液を攪拌しながら、滴下ロートよりジクロロメタン溶液を1時間かけて滴下した。更に5時間攪拌を続けた後、ジクロロメタン783mLを加え、撹拌を7時間続けた。その後、酢酸8.10mLを加え30分攪拌した後、攪拌を停止し有機層を分離した。この有機層を0.1N水酸化ナトリウム水溶液942mLにて洗浄を2回行い、次に0.1N塩酸942mLにて洗浄を2回行い、更に水942mLにて洗浄を2回行った。洗浄後の有機層をメタノール6266mLに注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して樹脂A1を得た。樹脂A1の単位構造を以下に示す。この樹脂の粘度平均分子量は37200であった。
【0103】
【化10】
【0104】
製造例2(樹脂A2)
1000mLビーカーに水酸化ナトリウム20.41gと水940mLを量り取り、攪拌しながら溶解させた。そこに1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン50.12gを添加、攪拌、溶解した後、このアルカリ水溶液を2L反応槽に移した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5564g及び2,3,5−トリメチルフェノール1.4956gを順次反応槽に添加した。別途、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロライド64.04gとジクロロメタン470mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。その後は製造例1と同様の操作を実施して樹脂A2を得た。樹脂A2の粘度平均分子量は45100であった。
【0105】
製造例3(樹脂A3)
1000mLビーカーに水酸化ナトリウム20.59gと水940mLを量り取り、攪拌しながら溶解させた。そこに1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン50.55gを添加、攪拌、溶解した後、このアルカリ水溶液を2L反応槽に移した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5612g及び2,3,5−
トリメチルフェノール1.5086gを順次反応槽に添加した。別途、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロライド63.46gとジクロロメタン470mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。その後は製造例1と同様の操作を実施して樹脂A3を得た。樹脂A3の粘度平均分子量は39600であった
【0106】
製造例4(樹脂A4)
1000mLビーカーに水酸化ナトリウム19.66gと水940mLを量り取り、攪拌しながら溶解させた。そこに1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン48.27gを添加、攪拌、溶解した後、このアルカリ水溶液を2L反応槽に移した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5359g及び2,3,5−トリメチルフェノール1.4405gを順次反応槽に添加した。別途、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロライド66.52gとジクロロメタン470mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。その後は製造例1と同様の操作を実施して樹脂A4を得た。樹脂A4の粘度平均分子量は37100であった。
【0107】
製造例5(樹脂B1)
1000mLビーカーに水酸化ナトリウム24.20gと水940mLを量り取り、攪拌しながら溶解させた。そこに2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン63.21gを添加、攪拌、溶解した後、このアルカリ水溶液を2L反応槽に移した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.6564g及び2,3,5−トリメチルフェノール1.4105gを順次反応槽に添加した。別途、テレフタル酸クロライド27.38g、イソフタル酸クロライド27.38gとジクロロメタン470mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。その後は製造例1と同様の操作を実施して樹脂B1を得た。樹脂B1の単位構造を以下に示す。樹脂B1の粘度平均分子量は17500であった。
【0108】
【化11】
【0109】
製造例6(樹脂B2)
1000mLビーカーに水酸化ナトリウム24.77gと水940mLを量り取り、攪拌しながら溶解させた。そこに2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン64.69gを添加、攪拌、溶解した後、このアルカリ水溶液を2L反応槽に移した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.6717g及び2,3,5−トリメチルフェノール1.4434gを順次反応槽に添加した。別途、テレフタル酸クロライド26.24g、イソフタル酸クロライド26.24gとジクロロメタン470mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。その後は製造例1と同様の操作を実施して樹脂B2を得た。樹脂B2の粘度平均分子量は34000であった。
【0110】
製造例7(樹脂C1)
1000mLビーカーに水酸化ナトリウム20.98gと水940mLを量り取り、攪拌しながら溶解させた。そこに1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン20.67g、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン25.63gを添加、攪拌、溶解した後、このアルカリ水溶液を2L反応槽に移した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5704g及び2,3,5−トリメチルフェノール1.3650gを順次反応槽に添加した。別途、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロ
ライド69.59gとジクロロメタン470mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。その後は製造例1と同様の操作を実施して樹脂C1を得た。樹脂C1の単位構造を以下に示す。樹脂C1の粘度平均分子量は33600であった。
【0111】
【化12】
【0112】
製造例8(樹脂C2)
1000mLビーカーに水酸化ナトリウム21.71gと水940mLを量り取り、攪拌しながら溶解させた。そこに1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン21.39g、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン26.52gを添加、攪拌、溶解した後、このアルカリ水溶液を2L反応槽に移した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5902g及び2,3,5−トリメチルフェノール1.4124gを順次反応槽に添加した。別途、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロライド67.43gとジクロロメタン470mLの混合溶液を滴下ロート内に移した。その後は製造例1と同様の操作を実施して樹脂C2を得た。樹脂C2の粘度平均分子量は40300であった。
【0113】
<末端カルボン酸(−COOH)基量の測定方法>
トールビーカーに約0.4gのポリアリレート樹脂を精秤し、ベンジルアルコール25mL加え、195℃のオイルバスにて加熱溶解させた。完全溶解を確認の上、オイルバスから取り出し溶液を冷却した。冷却後エチルアルコール2mLをトールビーカーの壁を伝わせ静かに入れた。
【0114】
この溶液を、自動滴定装置(GT100、三菱化学製)を用い、0.01N−NaOHベンジルアルコール溶液で滴定した。
別途、溶媒のベンジルアルコールのみを0.01N−NaOHベンジルアルコール溶液で滴定しブランク値を求めた。
また、0.01N−NaOHベンジルアルコール溶液のファクターは、下記の方法で求めた。
(1)0.1N 塩酸(HCL)(容量分析用試薬 既知規定液(FHCL)10mLをホールピペットで正確に100mLメスフラスコに入れ、脱塩水で標線を合わせ均一混合した。
(2)(1)の調製液1、2、4mLをホールピペットで正確に滴定用トールビーカに秤取る。
(3)それぞれにベンジルアルコール25mL、エチルアルコール2mLを加える。
(4)自動滴定装置(GT100、三菱化学製)を用い、0.01N−NaOHベンジルアルコール溶液で滴定した。
(5)計算:(1)の塩酸調整液量(X軸)に対するNaOHベンジルアルコール滴定液量(Y軸)をプロットし、その傾きをSとする。
0.01N−NaOHベンジルアルコール溶液のファクターF=FHCL/S
〔計算〕
・末端COOH基(μeq/g)={(A−B)×F×10}/W
A:測定滴定量(mL)
B:ブランク滴定量(mL)
F:0.01N NaOHベンジルアルコール液のファクター
W:ポリアリレート樹脂量(g)
樹脂A1〜A4、B1〜B2、C1〜C2のカルボン酸末端値を以下表−1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
<電気特性評価用感光体の製造>
実施例1(感光体X1)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着層(厚み700Å)を形成した導電性支持体を用い、その支持体の蒸着層上に、以下の下引き層用分散液を、バーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように塗布し、乾燥させ下引き層を形成した。
【0117】
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシランをボールミルにて混合して得られたスラリーを乾燥後、更にメタノールで洗浄、乾燥して得られた疎水性処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとなし、該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエン(質量比7/1/2)の混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム/ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン/ヘキサメチレンジアミン/デカメチレンジカルボン酸/オクタデカメチレンジカルボン酸(組成モル%75/9.5/3/9.5/3)からなる共重合ポリアミドのペレットを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行うことにより、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比3/1で含有する固形分濃度18.0%の分散液とした。
【0118】
電荷発生材料として、図2(D型)に示すCuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルパターンを有するチタニウムオキシフタロシアニン20部と1,2−ジメトキシエタン280部を混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行った。続いて、ポリビニルブチラールの4%1,2−ジメトキシエタン溶液500部と1,2−ジメトキシエタン200部を混合して分散液を調製した。この分散液を前記下引き層上にバーコーターで塗布して、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように電荷発生層を形成し
た。
【0119】
次にこのフィルム上に、下記に示す構造を主成分とする、幾何異性体の化合物群からなる、特開2002−080432号公報の実施例1に記載の方法で製造した混合物(CTM−1)を50部、及び樹脂A1(COOH値159μ当量/g)を100部と、酸化防
止剤(イルガノックス1076:3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル)を8部、及びレベリング剤としてシリコーンオイル0.05部をテトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640部に溶解させた液を塗布し、125℃で20分間乾燥し、乾燥後の膜厚が25μmとなるように電荷輸送
層を設け感光体を作製した。この感光体を感光体X1とする。
【0120】
【化13】
【0121】
比較例1(感光体X2)
樹脂A1の代わりに樹脂A2(COOH値53μ当量/g)を用いた以外、実施例1と同様に作成した感光体を感光体X2とする
比較例2(感光体X3)
樹脂A1の代わりに樹脂A3(COOH値24μ当量/g)を用いた以外、実施例1と同様に作成した感光体を感光体X3とする。
【0122】
<感光体の電気特性の評価>
電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404−405頁記載)を使用し、上記感光体をアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数で回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。
【0123】
その際、初期表面電位を−700Vとし、露光は780nm、除電は660nmの単色光を用いた。780nmの光を1.0μJ/cm2照射した時点の表面電位(VL)、及び感度を表す指標として、表面電位を−350Vまで半減させるのに必要な露光量(半減露光量)を測定した。VL測定に際しては、露光−電位測定に要する時間を100msとした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%下で行った。感度(半減露光量)及びVLの値の絶対値が小さいほど電気特性が良好であることを示す。電気特性の結果を表−2に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
<接着性試験用感光体の製造>
実施例2(感光体Y1)
アルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ0.5mmのアルミ板を用いた上に、下引き層なしに直接基板上に実施例1と同じ電荷発生層、電荷輸送層を形成して接着性試験用感光体Y1を作製した。
【0126】
比較例3(感光体Y2)
アルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ0.5mmのアルミ板を用いた上に、下引き層なしに直接基板上に比較例1と同じ電荷発生層、電荷輸送層を形成して接着性試験用感光体Y2を作製した。
【0127】
比較例4(感光体Y3)
アルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ0.5mmのアルミ板を用いた上に下引き層なしに直接基板上に比較例2と同じ電荷発生層、電荷輸送層を形成して接着性試験用感光体Y3を作製した。
【0128】
<接着性試験>
この接着性試験用感光体上に、NTカッターを用いて、2mm間隔で縦に6本、横に6本切り込みを入れ、5×5の25マスを作製した。その上からセロテープ(登録商標)(ニチバン製)を貼り付け、接着面に対し90゜に引き上げることで、感光層の接着性を試験した。これを2箇所行い、計50マスのうち、支持体上に残存した感光層のマス数を残存マス数とした。残存マス数が多いほど接着性は良好である。結果を表−3に示す。
【0129】
【表3】
【0130】
実施例3(感光体Y4)
実施例2と同じようにして樹脂A1の代わりに樹脂A4(COOH値215μ当量/g)を用いて作成した感光体を感光体Y4とする
【0131】
実施例4(感光体Y5)
実施例2と同じようにして樹脂A1の代わりに樹脂A3とA4の混合品(質量比3/7)(平均COOH値158μ当量/g)を用いて作成した感光体を感光体Y5とする
【0132】
比較例5(感光体Y6)
実施例2と同じようにして樹脂A1の代わりに樹脂A3とA4の混合品(質量比8/2)(平均COOH値62μ当量/g)を用いて作成した感光体を感光体Y6とする
これらY4〜6の3点の感光体を用いて、上述と同様に接着性試験を実施した。結果を表
−4に示す。
【0133】
【表4】
【0134】
実施例5(感光体Y7)
厚さ0.5mmのアルミ板上に、以下の電荷発生層、電荷輸送層を形成して接着性試験用の感光体を作成した
電荷発生材料として、図2に示すCuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルパターンを有するチタニウムオキシフタロシアニン20部と1,2−ジメトキシエタン280部を混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行った。続いて、ポリビニルブチラールの4%1,2−ジメトキシエタン溶液250部と1,2−ジメトキシエタン450部を混合して分散液を調製した。この分散液を前記アルミ板上にバーコーターで塗布して、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように電荷発生層を形成した。
【0135】
次に、電荷輸送材料として実施例1で使用した混合物(CTM−1)を50部、及び樹脂B1(COOH値191μ当量/g)を100部と、酸化防止剤(イルガノックス1076:3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル)を8部、及びレベリング剤としてシリコーンオイル0.05部をテトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640部に溶解させた液を前記電荷発生層上に塗布し、125℃で20分間乾燥し、乾燥後の膜厚が25μmとなるように電荷輸送層を設
け感光体を作製した。この感光体を感光体Y7とする。
【0136】
実施例6(感光体Y8)
実施例5と同じようにして、樹脂B1の代わりに樹脂B1とB2の混合品(質量比8/2)(平均COOH値155μ当量/g)を用いて作成した感光体を感光体Y8とする。
比較例6(感光体Y9)
実施例5と同じようにして、樹脂B1の代わりに樹脂B1とB2の混合品(質量比2/8)(平均COOH値48μ当量/g)を用いて作成した感光体を感光体Y9とする。
【0137】
比較例7(感光体Y10)
実施例5と同じようにして、樹脂B1の代わりに樹脂B2(COOH値12μ当量/g)を用いて作成した感光体を感光体Y10とする。
これらY7〜10の4点の感光体を用いて上述と同様に接着性試験を実施した。結果を表−5に示す。
【0138】
【表5】
【0139】
実施例7(感光体Y11)
厚さ0.5mmのアルミ板上に、以下の電荷発生層、電荷輸送層を形成して接着性試験用の感光体を作成した
電荷発生材料として、図2(D型)に示すCuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルパターンを有するチタニウムオキシフタロシアニン20部と1,2−ジメトキシエタン280部を混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行った。続いて、ポリビニルブチラールの4%1,2−ジメトキシエタン溶液600部と1,2−ジメトキシエタン300部を混合して分散液を調製した。この分散液を前記アルミ板上にバーコーターで塗布して、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように電荷発生層を形成し
た。
【0140】
次に、電荷輸送材料として実施例1で使用した混合物(CTM−1)を50部、及び樹脂C1(COOH値192μ当量/g)を100部と、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05部をテトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640部に溶解させた液をこの上に塗布し、125℃で20分間乾燥し、乾燥後の膜厚が25μmとなるよう
に電荷輸送層を設け感光体を作製した。この感光体を感光体Y11とする。
【0141】
比較例8(感光体Y12)
実施例7と同じようにして樹脂C1の代わりに樹脂C2(COOH値46μ当量/g)を用いて作成した感光体を感光体Y12とする
これらY11、Y12の2点の感光体を用いて上述と同様に接着性試験を実施した。結果を表−6に示す。
【0142】
【表6】
【0143】
<感光体ドラムの製造>
実施例8
表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ260.5mm、肉厚0.75mmのアルミニウム製シリンダー上に、実施例1で用いた下引き層形成用塗布液、電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液を、浸漬塗布法により順次塗布し、乾燥後の膜厚がそれぞれ、1.5μm、0.4μm、21μmとなるように、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し、感光体ドラムZ1を得た。
【0144】
この感光体ドラムZ1を用いて、画像特性試験を行った。画像特性試験は、ヒューレットパッカード社製カラープリンターHP Color LaserJet 4650dn(クリーニングブレード、カウンター当接方式)を用いて行った。作製した感光体ドラムZ1とトナーとをシアン色用のプロセスカートリッジに装着し、このカートリッジをプリンターに装着した。温度25℃、湿度50%環境下で画像形成を行い、得られた画像を目視で確認したところ、良好な画像が得られた。また1枚目、1000枚目の画像を目視で確認したが変化は見られなかった。
【符号の説明】
【0145】
1 感光体(電子写真感光体)
2 帯電装置(帯電ローラ;帯電部)
3 露光装置(露光部)
4 現像装置(現像部)
5 転写装置
6 クリーニング装置(クリーニング部)
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(加圧ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙(用紙,媒体)
図1
図2