(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正関数は、前記第1近似直線の傾きをa、実際の運転時の測定対象水の流量をZ、前記加熱部の温度をTs、前記実際の運転時の測定対象水の設定流量をZ0、補正後の前記加熱部の温度をyとした場合において、表現される以下の式を含む、請求項5に記載の障害発生監視装置。
y=a×(Z0−Z)+Ts
【背景技術】
【0002】
水系設備は、ボイラや冷却設備などのプラントの熱交換器と、熱交換器によって上昇した冷却水を冷却させる冷却塔と、冷却水が熱交換器と冷却塔との間を循環する循環流路とを備える。循環流路は、例えば、金属製の配管で構成される。
水系設備において、冷却水が流れる熱交換器や循環流路には、腐食、スケール、バイオファウリングという3大障害が発生しやすい。
例えば、腐食が熱交換器や循環流路に発生すると、熱交換器や循環流路に貫通孔ができ、冷却水がその貫通孔から漏れ、熱交換器が使用できなくなり、プラントの操業停止などの損失が発生することがある。
また、スケールやバイオファウリングが熱交換器や循環流路に付着すると、熱交換器や循環流路における冷却水の通水を悪化させるので、熱交換器の熱交換効率が低下する。
【0003】
特に、熱交換器は金属製の熱交換用の伝熱面を有するので、水系設備は熱交換用伝熱面と冷却水とが常時接触する環境である。
また、冷却塔は、開放冷却水系と密閉冷却水系とがあり、開放冷却水系の冷却塔は冷却水を周囲空気に接触させるので、水系設備は冷却水の溶存酸素が冷却塔で飽和する環境でもある。このため、開放冷却水系の冷却塔では、熱交換用の伝熱面における腐食やスケールの発生状況を監視したり、発生状況を評価したりする必要がある。
他方、密閉冷却水系の冷却塔は冷却コイル上に散布水を散布するので、冷却コイルが濡れたり乾いたりする。また、密閉冷却水系の冷却塔が保水する散布水の保有水量が少なく、冷却塔内を循環する散布水の濃縮過多が生じる場合がある。このため、密閉冷却水系の冷却塔では、冷却コイルにおけるスケールの発生状況を監視したり、発生状況を評価したりする必要がある。
特許文献1には、監視対象設備である熱交換器への付着物の状況を監視する監視装置が記載されている。特許文献1に記載の監視装置は、循環流路から分岐した採取配管に設けられた、熱交換用伝熱面と同じ材質か又はそれと同等の材質の評価用伝熱面の温度を監視する。そして、評価用伝熱面の温度が上昇したことを温度センサが検知すると、監視装置は付着物が発生したと判断する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1に記載の監視装置では、スケールなどの発生を、評価用伝熱面の温度の変化(上昇)により検知する方法を採用している。
しかし、測定対象水の流量が変動すると評価用伝熱面から奪われる熱量が変化するので、評価用伝熱面の温度は、測定対象水の流量の変動によっても変化する。例えば、流量が低下すると伝熱面から流水中に奪われる熱量が減少し、伝熱面温度が上昇する。
このため、特許文献1に記載の監視装置の方法では、流量の低下による伝熱面の温度の上昇を、付着物の付着による伝熱面の温度の上昇と誤認する可能性がある。
そこで、流量を測定し、流量を用いて伝熱面の温度の変化を補正する方法が考えられる。
しかし、流量の変化により伝熱面から奪われる熱量は、伝熱面の温度(加熱熱量)及び測定対象水の水温にも依存するものであり、単純に流量のみを用いて伝熱面の温度を補正することは難しい場合がある。
【0006】
本発明の課題は、水系設備が有する熱交換器の障害の発生状態を適切に監視する障害発生監視装置及びそれを用いた障害発生監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のものを開示する。
[1]水系設備が有する熱交換器の障害の発生状態を監視する障害発生監視装置であって、通水する測定対象水の監視結果を出力するモニタリングセンサと、前記測定対象水の温度を測定する温度センサと、前記測定対象水の流量を測定する流量センサと、前記モニタリングセンサの監視結果を補正する補正関数を記憶した演算器と、を備え、前記モニタリングセンサは、前記測定対象水の通水に曝され、前記熱交換器の障害の発生状態を評価するための模擬伝熱部材と、前記模擬伝熱部材に発生する障害を監視する模擬伝熱部材監視センサとを有し、前記演算器は、前記測定対象水の温度及び流量に基づいて、前記補正関数を介して前記監視結果の補正をする、障害発生監視装置。
[2]前記モニタリングセンサは、さらに、前記模擬伝熱部材の内部に設けられ、前記模擬伝熱部材を加熱する加熱部を有し、前記演算器は、さらに、前記加熱部の熱負荷量、前記測定対象水の温度及び流量に基づいて、前記監視結果の補正をする、[1]に記載の障害発生監視装置。
【0008】
[3]前記モニタリングセンサは、さらに、前記模擬伝熱部材の内部に設けられ、前記模擬伝熱部材を加熱する加熱部を有し、前記温度センサ及び前記流量センサは、いずれも、前記測定対象水の流れ方向において、前記加熱部の上流又は下流に設けられ、前記温度センサ、前記流量センサ及び前記モニタリングセンサは、それぞれ、温度、流量及び監視結果を連続測定し、前記演算器は、前記加熱部の熱負荷量、前記測定対象水の前記温度及び前記流量に基づいて、前記補正関数を介して前記監視結果の補正を行う、[1]に記載の障害発生監視装置。
[4]前記モニタリングセンサは、さらに、前記模擬伝熱部材の内部に設けられ、前記模擬伝熱部材を加熱する加熱部を有し、前記補正関数は、前記加熱部の加熱の下で、パイロット用水を通水させ、前記パイロット用水の温度及び流量を変動させた場合に対する前記監視結果から、測定された前記加熱部の温度、前記パイロット用水の温度及び流量の数値変化の相関関係を示す相互関数であり、測定された前記加熱部の温度を、前記加熱部の熱負荷量、前記パイロット用水の温度及び流量に基づいて、標準化された前記加熱部の温度を得る式である、[1]に記載の障害発生監視装置。
【0009】
[5]前記補正関数は、所定負荷における前記加熱部の温度に対する前記パイロット用水の温度と流量との間を規定する線形の式であり、前記演算器は、測定された前記加熱部の温度を、前記パイロット用水の温度及び流量に基づいて、前記補正関数を介して補正する、[4]に記載の障害発生監視装置。
[6]前記補正関数は、前記パイロット用水の温度に対する、前記パイロット用水の流量と前記加熱部の温度との間を規定する第1近似直線と、前記パイロット用水の温度と前記第1近似直線の傾きとの間を規定する第2近似直線と、前記第2近似直線を用いて、前記パイロット用水の温度における前記第1近似直線の傾きを求める式と、を有する、[4]又は[5]に記載の障害発生監視装置。
【0010】
[7]前記補正関数は、前記第1近似直線の傾きをa、実際の運転時の測定対象水の流量をZ、前記加熱部の温度をTs、前記実際の運転時の測定対象水の設定流量をZ0、補正後の前記加熱部の温度をyとした場合において、表現される以下の式を含む、[6]に記載の障害発生監視装置。
y=a×(Z0−Z)+Ts
[8]前記演算器は、さらに、前記補正後の前記加熱部の温度に基づいて、前記熱交換器の障害の発生を監視する、[7]に記載の障害発生監視装置。
[9]前記演算器は、さらに、補正後の前記監視結果に基づいて、前記熱交換器の障害の発生を監視する、[1]から[7]のいずれかに記載の障害発生監視装置。
[10][1]から[9]のいずれかに記載の障害発生監視装置を用いた障害発生監視方法であって、前記測定対象水の温度及び流量に基づいて、前記補正関数を介して前記監視結果の補正をする、障害発生監視方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、模擬伝熱部材測定センサが監視した監視結果が、測定対象水の温度や流量の影響を受けていても、演算器が、測定された測定対象水の温度及び流量に基づいて、監視結果を補正するので、水系設備が有する熱交換器の障害の発生状態を適切に監視する障害発生監視装置及びそれを用いた障害発生監視方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に実施形態を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
図1を参照して、障害発生監視装置10を適用する水系設備100について説明する。
【0015】
(水系設備)
図1に示すように、水系設備100は、冷却塔200と、熱交換器500と、循環流路400とを備える。水系設備100は、冷却塔200と熱交換器500との間を循環する循環流路400に冷却水を循環させて、熱交換器500を冷却水で冷却させる循環式冷却水系である。
【0016】
冷却塔200は、周囲空気と冷却水とを直接接触させることにより、周囲空気と冷却水とのエンタルピー差を利用して冷却水の一部を蒸発させ、冷却水から奪われる蒸発潜熱で冷却水を冷却する装置である。
冷却塔200は、ケーシング(塔体)210と、充填材220と、散水板240と、送風機250と、を備える。
【0017】
ケーシング210は、例えば円筒形状を有し、その上部に形成された排気口212と、その側面に形成されたルーバ214と、その底部に形成された冷却水が溜まる水槽(ビット)216とを有する。
充填材220は、複数枚の充填材用シートを積層させて構成され、ケーシング210の内部の水槽216より上方の位置に収容されている。各充填材用シートは、その表面積が大きくなるように、複数の突起部を有する。
【0018】
散水板240は、熱交換器500で温度が上昇した冷却水をケーシング210内において充填材220の上部へ散布する装置である。
送風機250は、ケーシング210の排気口212に設けられており、周囲空気を、散水板240から散布された冷却水に接触するように、ルーバ214から導入して排気口212へ排出する装置である。
【0019】
循環流路400は、水槽216と散水板240とを繋ぐ循環配管420と、循環配管420に設けられた循環ポンプ410及び分岐部430とを備える。
循環ポンプ410は、循環配管420を通じて水槽216に溜まっている冷却水を、熱交換器500を介して散水板240へ送出するポンプである。
分岐部430は、冷却水の一部を測定対象水として、採取配管15を介して障害発生監視装置10に流れるように、循環配管420を流れる冷却水を分岐する配管である。
分岐部430は、循環配管420において、熱交換器500の下流側に設けられていればよい。本実施形態では、分岐部430は、循環配管420において、循環ポンプ410の下流側に設けられているが、熱交換器500と循環ポンプ410との間に設けてもよい。
【0020】
熱交換器500は、例えば、ボイラや冷却設備などのプラントが発生する熱を、循環する冷却水で冷やす設備である。熱交換器500は、循環配管420上に設けられており、循環配管420を流れる冷却水を冷却媒体とする熱交換装置である。
【0021】
水系設備100は、水槽216に溜められた冷却水を、循環ポンプ410で循環配管420を通じて散水板240へ送出する。このとき、循環配管420を流れる冷却水の温度は、熱交換器500を通る際に、熱交換器500からの熱により上昇する。
そして、水系設備100は、熱交換器500で温度が上昇した冷却水を、充填材220に流れるように、散水板240から散布させ、散布された冷却水をそのときにルーバ214から導入された周囲空気に接触させて冷却させると共に、水槽216に溜められる。
このように、水系設備100は、冷却塔200と熱交換器500との間を冷却水が循環して熱交換器500の熱を冷却する循環式冷却水系を構成している。
【0022】
(障害発生監視装置)
図1及び
図2を参照して、障害発生監視装置10の説明をする。
図1に示すように、障害発生監視装置10は、水系設備100の冷却塔200に接続された熱交換器500の障害の発生状態を監視する装置である。障害発生監視装置10は、熱交換器500の障害の発生状態が監視できるように、循環配管420に設けられた分岐部430から分岐した採取配管15上に設けられている。循環配管420を通水する冷却水は分岐部430で分岐し、分岐された冷却水は採取配管15を測定対象水として通水する。障害発生監視装置10を通水した測定対象水は、排水配管16を介してケーシング210内に戻される。したがって、測定対象水は、冷却塔200と障害発生監視装置10との間を循環する。
【0023】
障害発生監視装置10は、モニタリングセンサ20と、温度センサ52と、流量センサ54と、演算器60と、を備える。モニタリングセンサ20と、温度センサ52と、流量センサ54とは、これらが測定対象水を測定することができるように、採取配管15上に設けられている。
モニタリングセンサ20は、測定対象水の通水に曝された状態で監視を行い、測定対象水の監視を行った結果(監視結果)を監視結果信号S1として演算器60に出力するセンサである。また、モニタリングセンサ20は、演算器60からのヒータ制御信号S5に基づいて加熱するヒータ35を有する。
【0024】
温度センサ52及び流量センサ54は、それぞれ、測定対象水の温度及び流量を連続的に測定するセンサである。温度センサ52及び流量センサ54は、それぞれ、測定された温度及び流量を演算器60に温度信号S2及び流量信号S3として連続的に出力する。
温度センサ52及び流量センサ54は、採取配管15において、モニタリングセンサ20の上流側の部分を流れる測定対象水を測定するよう、採取配管15に設けられているが、モニタリングセンサ20の下流側の部分を流れる測定対象水を測定するようしてもよい。
【0025】
演算器60は、ヒータ制御部62と、記憶部64と、補正部66と、を備え、監視結果信号S1の監視結果を、温度信号S2と流量信号S3とヒータ制御信号S5とに基づいた補正関数を介して補正し、補正された監視結果を補正監視結果信号S4として出力する演算機能を有する。
【0026】
ヒータ制御部62は、ヒータ35の温度が設定された目標温度となるように、ヒータ制御信号S5を出力し、ヒータ35への通電量を制御するが、評価チューブ25に加えるヒータ35の加熱量が設定された目標加熱量となるように、ヒータ制御信号S5を出力し、ヒータ35への通電量を制御してもよい。
【0027】
記憶部64は、監視結果を補正する補正関数を記憶している。補正関数は、ヒータ35の熱負荷量、測定対象水の温度及び流量に応じた関数である。ヒータ35の熱負荷量としては、設定された温度や設定された加熱量である。
補正部66は、測定対象水の測定温度を示す温度信号S2、測定対象水の測定流量を示す流量信号S3、及び、ヒータ35の熱負荷量を示すヒータ制御信号S5に基づいて、記憶部64に予め記憶されている補正関数を介して、監視結果信号S1の監視結果を補正する。
【0028】
図2に示すように、モニタリングセンサ20は、通水セル30と、模擬伝熱部材24と、模擬伝熱部材監視センサ28と、加熱部34と、を備える。
通水セル30は、測定対象水が通水する容器であり、開口30bを有する容器本体30aと、容器本体30aの底部に設けられた採取水入口30cと、容器本体30aの上部に設けられた排出口30dと、容器本体30aの開口30bを塞ぐフランジ30eとを有する。
【0029】
模擬伝熱部材24は、測定対象水の通水に曝された熱交換器500の障害の発生状態を評価する部材である。本実施形態では、模擬伝熱部材24は、通水セル30内において、測定対象水の通水に置かれる管状の評価チューブ25である。
【0030】
模擬伝熱部材監視センサ28は、模擬伝熱部材に発生する障害を監視する部材である。本実施形態では、模擬伝熱部材監視センサ28は、評価チューブ25の測定温度(管肉温度)が測定できるように、評価チューブ25に形成された孔に挿入された評価チューブ温度センサ29である。評価チューブ温度センサ29は、測定された評価チューブ25の測定温度を監視結果信号S1として演算器60に出力する。したがって、評価チューブ25の測定温度は、評価チューブ温度センサ29によって実際に測定された伝熱面温度である。
【0031】
加熱部34は、模擬伝熱部材24の内部に設けられ、模擬伝熱部材24を加熱する加熱部材である。本実施形態では、加熱部34は、評価チューブ25の内部に挿入されたヒータ35と、ヒータ35が評価チューブ25内に留まるように、一端及び他端がそれぞれヒータ35及びフランジ30eに取り付けられた押し棒36とを有する。ヒータ35は評価チューブ25を加熱するヒータである。
【0032】
(障害発生監視装置の動作)
以下、障害発生監視装置10が熱交換器500の障害の発生状態を監視する動作を説明する。障害発生監視装置10の動作は、予め行う補正関数導出の手順と、常時、障害の発生状態を監視する、障害発生監視装置10の運用手順とに分けて説明する。
【0033】
(測定対象水)
補正関数導出の手順で用いる採取配管15に挿通させる水について説明する。補正関数の導出にあたっては、採取配管15に挿通させる測定対象水をパイロット用水にして行う。採取配管15に通水させるパイロット用水は、水を溶媒とする溶液であればよく、測定対象水、熱交換器500に障害を生じさせない清浄水を挙げることができるが、これらに限定されず、水道水でもよく、また、採取配管15に通水させる時間が短い場合は、熱交換器500の運転のような長時間通水させると付着物が生じるような水であってもよく、好ましくは清浄水である。
【0034】
(補正関数導出の手順)
次に、
図3を参照して、補正関数導出の手順を説明する。
補正関数は、ヒータ35の設定温度、測定対象水の測定温度、測定対象水の測定流量に基づいて、評価チューブ25の測定温度を補正する関数である。したがって、補正関数(補正関数の各パラメータ)は、予め、ヒータ35の温度、パイロット水の温度、流量を種々に変化させた際の評価チューブ25の測定温度から導く必要がある。
【0035】
(ステップST01、標準伝熱面温度の測定、
図4から
図6の測定点参照)
ステップST01では、標準的な運転条件におけるヒータ35の伝熱面の温度、すなわち、評価チューブ25の管肉の温度の測定を行う。
具体的には、ヒータ35の設定温度を所定の温度(例えば、ヒータ35に付与する電力を所定の一定の電力とする)とした場合において、種々の設定温度及び設定流量のパイロット用水を通水セル30内に通水させ、評価チューブ25の温度(管肉温度)を測定する。このとき、例えば、ヒータ35の設定温度を10℃ごと(例えば、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃)、パイロット用水の温度を10℃ごと(例えば、10℃、20℃、30℃、40℃)に、また、流量を0.5L/minごと(例えば、4.0L/min、4.5L/min、5.0L/min、5.5L/min、6.0L/min)に変化させる。
記憶部64は、ヒータ35の設定温度、パイロット用水の設定温度及び設定流量、測定された評価チューブ25の温度(測定温度)を組合せ測定データとし、複数の組合せ測定データを記憶する。
【0036】
(ステップST03、第1近似直線の傾きの算出、
図4から
図6の近似直線参照)
ステップST03では、ヒータ35及びパイロット用水を所定の設定温度とした場合における、パイロット用水の設定流量−評価チューブの測定温度の関係を示す第1近似直線の傾きの算出を行う。
具体的には、ヒータ35の設定温度、パイロット用水の設定温度において、パイロット用水の設定流量を独立変数、測定された評価チューブ25の測定温度を従属変数として第1近似直線の一次方程式を求める。ここで、第1近似直線の一次方程式の傾きは、ヒータ35の設定温度、パイロット用水の設定温度において、パイロット用水の設定流量の変化に対して評価チューブ25が受ける温度の影響の程度を表す。
例えば、ヒータ35の設定温度を50℃にし、パイロット用水の設定温度を10℃にした場合、パイロット用水の設定流量に対する評価チューブ25の測定温度を示す第1近似直線は、
図4の直線A50(10)である。
同様に、パイロット用水の設定温度を20℃、30℃、及び、40℃にした場合、パイロット用水の設定流量に対する評価チューブ25の測定温度を示す第1近似直線は、それぞれ、
図4の直線A50(20)、直線A50(30)、及び、直線A50(40)である。
また、ヒータ35の設定温度を70℃にし、パイロット用水の設定温度を10℃、20℃、30℃、及び、40℃にした場合、パイロット用水の設定流量に対する評価チューブ25の測定温度を示す第1近似直線は、それぞれ、
図5の直線A70(10)、直線A70(20)、直線A70(30)、及び、直線A70(40)である。
また、ヒータ35の設定温度を90℃にし、パイロット用水の設定温度を10℃、20℃、30℃、及び、40℃にした場合、パイロット用水の設定流量に対する評価チューブ25の測定温度を示す第1近似直線は、それぞれ、
図6の直線A90(10)、直線A90(20)、直線A90(30)、及び、直線A90(40)である。
【0037】
(ステップST05、第2近似直線の算出、
図7参照)
ステップST05では、パイロット用水の設定水温−傾きの第2近似直線の算出を行う。
ヒータ35の設定温度において、パイロット用水の設定温度を独立変数、第1近似直線の傾きを従属変数として、第2近似直線の一次方程式を求める。
このように、第2近似直線を表す一次方程式を用いることにより、パイロット用水の設定温度に応じて変化する第1近似直線の傾きを決定することができる。換言すると、これらのヒータ35の設定温度、パイロット用水の設定温度、設定流量に対する評価チューブ25の測定温度の相関関係を示す第2近似直線の一次方程式を導く。
例えば、ヒータ35の設定温度を50℃にした場合、パイロット用水の設定温度に対する第1近似直線の傾きを示す第2近似直線は、
図7の直線B50である。
【0038】
(ステップST07、補正関数の導出)
ステップST07では、導かれた第2近似直線の一次方程式を用いて、補正関数の導出を行う。
第1近似直線の傾きをa、実際の運転時の測定対象水の流量(流量センサ54の測定流量)をZ、評価チューブ25の測定温度(評価チューブ温度センサ29の測定温度)をTs、測定された実際の運転時の測定対象水の流量(設定流量)をZ0、補正後の評価チューブ25の温度(補正温度)をyとした場合、補正関数は、
y=a×(Z0−Z)+Ts
で表現される。
【0039】
以上の作業により、障害発生監視装置10における、測定対象水の設定温度及び設定流量に基づいて、評価チューブ25の測定温度を補正する補正関数が導出される。
【0040】
(第1近似直線の傾きの推定、
図8参照)
ここで、上述で導出した補正関数は、ヒータ35の設定温度を10℃間隔としている。このため、予め導出する際に用いたヒータ35の設定温度以外の温度で運用する場合には、上述で導出した補正関数の第1近似直線の傾きは適合しないと推定される。
そこで、パイロット用水を設定温度とした場合における、ヒータ35の設定温度−第1近似直線の傾きの関係を推定する第3近似直線の方程式の算出を行う。
具体的には、パイロット用水の設定温度において、ヒータ35の設定温度を独立変数、第1近似直線の傾きを従属変数として、第3近似直線を算出する。
図8に示すように、例えば、パイロット用水の設定温度を10℃、20℃、30℃、及び、40℃にした場合、ヒータ35の設定温度に対する第1近似直線の傾きを示す第3近似直線は、それぞれ、
図8の直線C10、直線C20、直線C30、及び、直線C40である。第3近似直線の一次方程式を
図8に記載する。
そして、予め導出する際に用いたヒータ35の設定温度以外の温度で運用する場合であっても、この第3近似直線の一次方程式を用いることにより、上述で導出した補正関数で用いる第1近似直線の傾きを推定することができる。
なお、第1近似直線、第2近似直線、第3近似直線は、例えば、回帰直線で算出する。
【0041】
(障害発生監視装置の障害発生監視方法)
図9を参照して、導出された補正関数を用いた障害発生監視装置10の障害発生監視方法を説明する。
【0042】
(ステップST21、温度、流量の測定)
ステップST21では、温度センサ52及び流量センサ54が、それぞれ、測定対象水の温度及び流量の測定を行うことができるよう、所定の温度及び流量の測定対象水を採取配管15に通水させる。
演算器60は、ヒータ制御部62に、ヒータ35の設定温度で発熱するよう、ヒータ35を制御させる。そして、演算器60は、所望のタイミングで、温度センサ52及び流量センサ54に測定対象水の温度及び流量の測定を行わせると共に、評価チューブ温度センサ29に評価チューブ25の温度の測定を行わせる。
【0043】
(ステップST23、補正関数の導出)
ステップST23では、補正関数の導出を行う。補正部66は、温度センサ52により測定された温度を用い、測定対象水の温度に対応する第1近似直線の一次方程式から第1近似直線の傾きを求め、補正関数を導出する。
【0044】
(ステップST25、補正後の測定温度の算出)
ステップST25は、補正後の測定温度の算出を行う。補正部66は、評価チューブ25の測定温度(評価チューブ温度センサ29の測定温度、すなわち、監視結果信号S1の監視結果)を、第1近似直線の傾き、測定対象水の実際の運転時の流量(流量センサ54により測定された、測定対象水の測定流量)、設定された測定対象水の流量(設定流量)に基づいて、導出した補正関数を介して、補正後の評価チューブ25の温度(補正された監視結果)を算出する。補正部66は算出された補正後の評価チューブ25の温度を補正監視結果信号S4として出力する。
【0045】
以上のステップST21からST25を行うことにより、障害発生監視装置10は、測定対象水の温度及び流量による影響を補正した評価チューブ25の温度を得ると共に、補正監視結果信号S4として出力する。そして、障害発生監視装置10は、ステップST21からST25を繰り返して行うことにより、評価チューブ25の測定温度の変化に基づいて、熱交換器500の伝熱面での各障害の発生を監視することができる。
【0046】
障害発生監視装置10は、補正後の評価チューブ25の温度(補正された監視結果)の変化量の絶対値、一定期間での傾き、又は、その両方が事前に設定した閾値を超えているか否かを判断し、超えている場合には、熱交換器500に付着物が付着していると判断し、例えば、アラームを出すなどの報知を行う。
障害発生監視装置10がこの閾値で付着物の厚さなど障害の程度を図ることができるように、補正部66は、補正後の評価チューブ25の温度(補正された監視結果)をそれらの障害の程度に対応する値に換算する工程を備えてもよい。
また、障害発生監視装置10が付着物の物質を予測できる場合、又は、公知の手段により特定できる場合には、補正部66は、補正後の評価チューブ25の温度(補正された監視結果)の変化量から付着物の厚さを推定してもよい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。
なお、通常、ヒータ35の温度は一定に設定するので、ヒータ制御信号S5は変化しない。このため、以下の実施例、比較例では、補正部66はヒータ制御信号S5を考慮しないものとして説明する。
【0048】
(補正関数の作成方法)
本実施例では、
図2に示した構造のモニタリングセンサ20を用いた。この障害発生監視装置10は、SUS304からなる評価チューブ25の管肉に挿入した評価チューブ温度センサ(熱電対)29の測定温度(評価チューブ25の測定温度)を任意に設定(ヒータ35の設定温度)し、評価チューブ25の測定温度がヒータ35の設定温度になるように、評価チューブ25内に設置したヒータ35への通電量を調整した後、通電量を一定にし、評価チューブ25の測定温度が一定となる評価チューブ25の伝熱面を形成する。通水した測定対象水の水質によって、評価チューブ25の表面に付着物が生じると、評価チューブ25の測定温度が上昇するので、障害発生監視装置10は、評価チューブ25の測定温度の上昇によって、付着物を検知する。
【0049】
本実施例では、このモニタリングセンサ20を内径20mmの塩ビ製の通水セル30に設置し、評価チューブ25の表面における流量(パイロット用水の設定流量)が5.0L/minになるようにポンプを用いてパイロット用水(水道水)を通水し、評価チューブ25の測定温度が設定温度となるようにヒータ35に通電する電力量を調整した後、電力量を一定とした。その後、評価チューブ25の表面における測定対象水の設定流量を4.0〜6.0L/minの間で0.5L/minずつ変えて評価チューブ25の測定温度を測定し、各測定対象水の設定流量で安定した時の評価チューブ25の測定温度を記録した。
【0050】
表1に示したヒータ35の設定温度及びパイロット用水(水道水)の設定温度の条件を変えて、上記の測定を繰り返し行った。
【0051】
【表1】
【0052】
(補正関数の作成結果)
図4から
図6に示すように、各ヒータ35の設定温度における、パイロット用水の設定流量に対する評価チューブ25の測定温度の関係を示した。ヒータ35の設定温度及びパイロット用水の設定温度によって、パイロット用水の設定流量が変化した際のヒータ35の設定温度の変化の程度が異なることが分かる。
この測定結果を元に第1近似直線の一次方程式を求め、各ヒータ35の設定温度及び各パイロット用水の設定温度における、パイロット用水の設定流量と評価チューブ25の測定温度との間の第1近似直線の傾き(以下、第1傾きという。)を得た。第1傾きは、パイロット用水の流量の変化によって評価チューブ25の測定温度が変化する程度を表すものである。
【0053】
次に、
図8に示すように、パイロット用水の設定温度ごとに評価チューブ25の測定温度と第1傾きの関係を示す第3近似直線を求め、第3近似直線の傾きから、測定を行っていないヒータ35の設定温度(60℃、80℃)における第1傾きを推定した。
図7に、各ヒータ35の設定温度におけるパイロット用水の設定温度と第1近似直線の傾きの関係と、
図8に示す第1近似直線の傾きの推定結果とを示した。各ヒータ35の設定温度におけるパイロット用水の設定温度に対する第2近似直線の傾きを示す第1近似直線を求めた。
このようにして、測定対象水の温度xを変数とした第1近似直線の傾きを算出する傾き算出関数を得た。得た傾き算出関数を表2に示す。傾き算出関数を用いることで、ある測定対象水の温度において、測定対象水の設定流量の変化によって評価チューブ25の測定温度が変化する程度を推定することができる。
【0054】
【表2】
【0055】
続いて、流量センサ54が測定した測定対象水の測定流量における評価チューブ25の測定温度が、測定対象水の設定流量(上述の補正関数の作成方法においてヒータ35の設定温度を設定した測定対象水の設定流量である5.0L/min)における補正された評価チューブ25の測定温度に補正されるように、表2に記載した第1近似直線の傾きを求める式を加えた補正関数を導出した。
補正関数:y=a×(5.0−z)+Ts
ただし、y:補正された評価チューブ25の測定温度、a:表2で求めた第1近似直線の傾き、z:測定対象水の測定流量(L/min)、Ts:評価チューブ25の測定温度
【0056】
(障害発生監視装置の運用方法)
(実施例)
上述の補正関数の作成方法で用いたモニタリングセンサ20及び通水装置を用いて、
図1に示すように測定対象水として冷却水を引き込んで監視を行った。モニタリングセンサ20の設定条件は以下の通りとした。
ヒータ35の温度設定 :70℃
測定対象水の設定温度 :30℃
測定対象水の設定流量 :5.0L/min
得られた監視結果(評価チューブ25の測定温度の経時変化)に上述の補正関数の作成方法で作成した補正関数を適用した。
【0057】
(比較例)
比較例では、モニタリングセンサ20の設定条件を以下の通りとし、また、得られた監視結果(評価チューブ25の測定温度の経時変化)に上述の補正関数の作成方法で作成した補正関数のうち、測定対象水の設定流量のみを変数とした補正関数を適用したこと以外は実施例と同じにした。
ヒータ35の温度設定 :50℃
測定対象水の設定温度 :20℃
【0058】
<結果>
スケールの付着がない場合(付着物がない場合)の結果を
図10に示し、スケールの付着があった場合の結果を
図11に示した。
図10及び
図11は、測定開始の時点における評価チューブ25の測定温度に対して変化した温度を変化量として表示している。また、
図10及び
図11における「補正前」は、評価チューブ25の測定温度を示す。
図10を参照するに、監視の過程で測定対象水の流量が4.6L/min程度まで低下し、補正前の評価チューブ25の測定温度の上昇が見られた。
図10に示すように、この監視結果に実施例及び比較例で得た補正関数を適用したところ、比較例では測定対象水の流量の低下に伴う評価チューブ25の測定温度の上昇傾向が見られたのに対し、実施例では測定対象水の流量の変動に対する評価チューブ25の測定温度の上昇を抑えることができた。このことから、ヒータ35の設定温度及び測定対象水の測定温度を変数とした補正関数を用いることにより、評価チューブ25の測定温度のより正確な補正が可能になることが分かった。
【0059】
また、
図11に示すように、モニタリングセンサ20の評価チューブ25の測定温度に約10℃の上昇が見られた(
図11の補正前)。また、測定終了後にモニタリングセンサ20を取り出したところ、モニタリングセンサ20の表面に顕著なスケールの付着が見られた。モニタリングの過程で測定対象水の測定流量の低下が見られたため、実施例で作成した補正関数を用いた補正を行ったが、補正後の値からも評価チューブ25の測定温度の顕著な上昇傾向が得られた(
図11の補正後)。
本発明で用いた補正関数を適用することで、測定対象水の測定流量の低下による評価チューブ25の測定温度の上昇と、付着物による温度上昇を判別できることが分かった。